間口は広く
Title:Ghost Apple
Musician:People In The Box
このアルバムを、最初に気になったのは、レコード店の店頭でした。注目のミュージシャンとしてディスプレイされており、さらにレコード会社はte'や、9mm Parabellum Bulletなどが所属している残響レコード。以前から名前だけは知っていたのですが、このアルバムをはじめて聴いてみることにしました。
しかし、最初にサラッと聴いた雰囲気では、かなりポップなバンドだな、というイメージを抱いてしまいました。特に「月曜日/無菌室」や「日曜日/浴室」あたりは、BUMP OF CHICKENあたりを思い出すようなポップなギターロックで、正直、ちょっと期待していた雰囲気とは違うかな?とすら思ってしまいました。
ところが、しっかり聴くと、その思い込みが大きな誤解であることに気がつきました。
まずリズム。パッと聴いた感じ、ポップな雰囲気を出していながらも、変拍子を多用することによって、奇妙なリズム感覚と、それに伴う不思議な楽曲の雰囲気をかもしだしています。聴いていて、ちょっと不安定な、微妙な感覚を覚えながらも、聴いていて癖になるようなリズムがとてもおもしろく感じられます。
サウンドも、シューゲイザー風のノイジーなギターサウンドを入れてきたり、アコギの音などを用いて、ちょっと神秘的な雰囲気を出してきたり。聴きこめば聴きこむほど、癖になりそうな音の世界が楽しめます。どこかシガーロスとかその近辺の影響も感じられました。
そして、やはり特筆するのは歌詞の世界でしょう。波多野裕文の書く歌詞は、抽象的ながらも文学的。人によって解釈がいろいろとわかれそうな、意味深で、雰囲気のある歌詞がとても耳を惹きつけられました。
今回の作品では、「Ghost Apple」というタイトルからして、歌詞によく「神様」の存在があらわれていました。
「このクラブのリーダーは神ではないのさ」
(「水曜日/無菌室」より)
「まったく神様のしつけがなってないな」
(「木曜日/寝室」より)
のように、どこか、神様みたいな、絶対的な存在の前であらがう男女の姿を描いたような、個人的には、そんな印象を受けた歌詞の世界でした。
彼らの音楽、いわば間口は広いものの、奥行きが深く、一度入り込むと、ズブズブとはまってしまう、そんな音を奏でています。今回の作品がメジャーデビュー作なのですが、これからが本当に楽しみなバンド。これから、ますます注目を集めていきそうな予感がします。お勧めです。
評価:★★★★★
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