夢を諦めきれない男たち
先日、最近、一部で大きな話題となっている評判の音楽ドキュメンタリー映画を見に行きました。
アンヴィルという、80年代の一時期に、数多くのバンドに影響を与えたものの、全く売れず、その後、忘れ去られたバンドの今を追ったドキュメンタリーです。
個人的に、メタルはほとんど聴かず、当然、このアンヴィルというバンドも全くの初耳でした。
ただ、ネット上の評判を見てみると、なかなか高い評価を得ているよう。メタルが好きではない・・・とはいえ、「売れていないバンドを追ったドキュメンタリー」というテーマにも興味を抱き(これが「同情」ってやつか??byクラウザー様(笑))、映画館まで足を運びました。
で、感想なのですが・・・
素晴らしかったです!
音楽ドキュメンタリーといえば、淡々とメンバーの動向やライブを追っただけ、という、ファンにはうれしいけど・・・という内容が多い中、このドキュメンタリーにはひとつのドラマがありました。
詳しい展開は下のネタバレの感想で書きたいのですが、このドキュメンタリー、売れないバンドの物語、というよりも、オリジナルメンバーのリップスとロブ、夢を追う2人の、友情以上ともいえる強い絆を描いた物語、といった方がいいかもしれません。
男同士の絆・・・というと、ジャンルは違いますが、「まんが道」で描かれる藤子F不二雄先生と藤子不二雄A先生の物語を思い出してしまいました(作品中では才野と満賀)。
こういう男の絆の物語って、なんかいいですよね。映画を見ていると、こちらの胸が熱くなってきました。
以下、ネタバレな感想
いまだにロックスターになるという夢を追い続けている彼ら。50歳を過ぎても、一言でいえば、子供っぽさを強く感じました。
「売れないのはレコード会社が悪いんだ」と叫ぶような、いわば中2病的なメンタリティーや、トイレの絵を嬉々として飾る子供っぽさ。そんなメンタリティーと対比させるかのように、合間合間に彼らが倉庫や解体現場で日々の糧を得るために働く姿や、時として残酷な、しかし、大人の現実的な視点からの家族や兄弟の証言が加わります。
そんないい意味でも悪い意味でも少年のメンタリティーを持ち続ける彼ら。でも、なんか見ていてうらやましくも感じてしまいます。その人生をかけられる夢に出逢えたこと。そして、その夢をかけがえのない友人とともに追えること。うーん、やはり素直にうらやましいです。普通、なかなか人生をかける何かに出逢えないですからね。
途中、リップスがロブに、「30年間、続けてきたことが評価されている」みたいなセルフを語り掛けるシーンがあります。単なるなぐさめのセリフかもしれません。ただ、同じ夢を諦めず、長く追い求めている・・・その姿に惹かれてしまいます。
この映画、最初は日本のヘヴィメタのイベントからスタートし、ラストは日本の「ラウドパーク」への出演で終わるなど、日本という土地がひとつのキーとなっています。最後の最後に、最新作の日本盤がソニーからリリースされることが決まったという告知が入り、(彼らにとって)遠い異国の地で、彼らを求めるファンがいる、という一種のハッピーエンドで終わります。私自身、メタルはあまり聴かないのですが、日本人として、ちょっとうれしくなるような展開でした。
笑えるシーンもたくさんある一方、おもわずほろりと来るシーンも展開されるなど、とても心に響いてくるドキュメンタリー。ひとつの物語として、とてもよく出来た作品だと思います。「音楽のドキュメンタリー」という枠組みを超えて、二人の男の物語として、お勧めできる映画だと思いました。
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