引き算の美学
Title:MONDO ROCCIA
Musician:ザ・クロマニヨンズ
ザ・クロマニヨンズとして、早くも4枚目となるニューアルバム。一言で言うと、かなり力の抜けた作品だなぁ、と感じました。
ヒロト&マーシーの楽曲は、ザ・クロマニヨンズになってから、シンプルな歌詞とメロディーの曲が、以前に増して増えてきた感があります。それが如実にあらわれたともいえるのが本作。アレンジはシンプルなギターロックがメイン。メロディーにしても、奇をてらったような曲は皆無。冒頭こそ、ジャングルのリズムのようなドラムの音に驚かされますが、その後は、いかにもヒロト&マーシーといったシンプルなロックンロールナンバーが続きます。
歌詞もユーモアセンスを持ちながらもシンプルにまとめあげていて、あげくの果てに、モノラル録音と、録音形態までシンプルにしてしまいました(笑)。ジャケットも、昔のレコジャケを彷彿とさせるようなデザイン。ロックンロールがシンプルだった、昔に戻ったような作風でした。
そんな作風なだけに、ファンの間でもかなり賛否が出ているみたいですね。確かに、ポップでメロディアスな名曲や、聴かせるような歌詞という側面では、少々物足りない部分もあるかもしれません。
ただ、こういう、「引き算の美学」を表現できるのって、ベテランの彼らの実力があってからこそ、なのではないでしょうか。様々な音を入れたり、歌詞の世界を広げたりすることによって、名曲をつくりあげようとするミュージシャンが多い中、あえてシンプルさを目指すというのは、さすがはヒロト&マーシー。その力量を伺えます。
そして、なにげにシンプルでユーモラスな歌詞が妙に印象に残ったりもするんですよね。特に11曲目。「あのね」だけをただひたすら繰り返す、とても奇妙な歌詞。しかし、そのタイトルが「恋に落ちたら」・・・・・・うーん、見事。恋に落ちた人の心境を見事に歌い上げています。こういう手法、考え付く人はいるかもしれないけども、よほどの自信がない限り、やらないよね~。
賛否はあれど、ザ・クロマニヨンズの実力と、彼らの今後を見事にあらわした1枚だと思います。「引き算の美学」というのを、あらためて実感した作品でした。
評価:★★★★★
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コメント
クロマニヨンズももう4枚目なんですね。結成されたのがつい最近のような感じが…
ジャケット帯がレコードのようで面白いですね
甲本ヒロトは、忌野清志郎の葬儀での弔辞が印象的だったし、彼の死がこれからの活動に影響を与えたりするのかなあ
初期衝動が戻ったような、シンプルなクロマニヨンズも好きなんですけど、ハイロウズの「リラックシング」「ホテルティキポト」のような何とも言えないノスタルジックなものも聞きたいんですよね
というかマーシーのソロも聞きたい…
それとクロマニヨンズにはブルーハーツ、ハイロウズにあったような極上の必殺チューンがないような気がします…
良い曲はあると思うのですが
投稿: たくちゃん | 2009年11月28日 (土) 22時27分
>たくちゃん さん
そうですね~。ちょっとクロマニヨンズになってから、1曲これは、という曲にまだ出逢えてないような感じがしますね。これから、といった感じなのでしょうか?
ただ、確かにクロマニヨンズ4枚目というのは、僕も早いなぁ・・・という印象を受けました(笑)。デビューからもう3年もたつんですね・・・。
投稿: ゆういち | 2009年11月29日 (日) 17時50分