エレカシの全て
エレファントカシマシが、1989年以来毎年行っている日比谷野音でのライブ。その20周年を記念して、3組のベストアルバムが発売されました。「創世記」「浪漫記」「胎動記」と名づけられた3組のアルバムは、それぞれエピック、ポニキャン、EMIとエレカシが所属したレコード会社ごとに宮本浩次選曲のもとに選ばれたベストアルバム。「創世記」「胎動記」はそれぞれ2枚組みになっており、かつ、どれも60分を超えるボリュームのある作品になっています。全部聴くだけで、かなりの体力を使いそう・・・(^^;;
彼らは、エピック、ポニキャン、EMIとレコード会社を代えるたびに、その作風を大きく変化させています。そういうこともあり、3組のアルバムを聴き比べることによって、エレカシの歴史がよくわかるベスト盤になっていました。
まずは、エピック時代の作品。
Title:エレカシ自選作品集EPIC 創世記
Musician:エレファントカシマシ
ちょっと前、某FM番組で、パーソナリティーが、エレカシの作品を評して「食べにくい」といったところ、宮本浩次が切れた、という事件がネット上でちょっとした話題となりました。まあ、事件自体は実に宮本らしいなぁ、といった感じなんですね。
ただ、万が一本人が見ていたら、切れられそうなのですが、初期の彼らの作品、はっきりいってしまうと、とても「食べにくい」作品になっています(笑)。
エレカシのパッションをそのままぶつけたようなメロディーにサウンドは、いわゆるポップというものからはほど遠く、録音にしてもかなり荒々しい内容になっていて、「これがメジャーレーベルで発売できたのか?」と少々驚いてしまうほど。強烈に好き嫌いがわかれそうな、癖の強い作品になっています。
それだけに、エレカシのコアの部分を最も忠実に切り取った作品だと思いますし、一度はまると、抜け出せないような、強いパワーも感じられます。「エレカシ=今宵の月のように」のイメージを持っているのなら、単純に薦められないベスト盤なのですが・・・ただ、ロックファンなら、是非とも聴いておきたい作品群ばかりだと思います。
しかし、そんな作風がガラリとかわるのが、ポニキャン時代の作品。
Title:エレカシ自選作品集PONY CANYON 浪漫記
Musician:エレファントカシマシ
「今宵の月のように」のヒットなどもあり、一般的に知られているエレカシの作品といえば、ポニキャン時代の作品になるんでしょう。
ただ、EPIC時代からのファンにとっては、この変わりようは驚いただろうなぁ。あくまでも推測ですが、本人たちも音楽性を変えることには、相当の葛藤があったのではないでしょうか?
メロディーはポップに、メロディアスに。歌詞は、英語を極力つかわず、文語体も姿を見せる和風なスタイルは相変わらずながらも、叙情的で、攻撃性は薄め。総じてヒットチャート向けを狙ったような作品になっています。
この時期からファンになった方も多いのでしょうが、古くからのファンにとってはこの時期の作品は賛否両論あるのではないでしょうか?しかし、この時期の作品が大ヒットを記録することによって、その後もエレカシが順調に活動を続けられるようになったのは事実でしょうし、また、この時に宮本浩次が手にいれたポップスセンスは、その後の彼らにとって、大きな武器になったと思います。
実際、「今宵の月のように」や「悲しみの果て」は、やはり普遍的な名曲だと思います。ポニキャンでの活動期間は短かったものの、彼らにとっては大きな意味を持った時代だと思います。
Title:エレカシ自選作品集EMI 胎動記
Musician:エレファントカシマシ
ただ、今回、あらためてこの時期の宮本の作品を聴いて思ったのは、彼は揺れ動いていたというよりも、エピック時代とポニキャン時代の良い部分をあわせたような曲を作ろうとしていたんだなぁ、ということでした。
例えば名曲「ガストロンジャー」。この曲で見せる荒々しいバンドサウンドと、攻撃性の強い歌詞は、まさにエピック時代そのもの。その一方ではサビの部分はポップにまとめあげていて、録音状態も比較的クリア。ポニキャン時代に獲得したポップスセンスも随所に感じます。
この時期の代表曲は、やはりエピック時代、ポニキャン時代を経た宮本浩次だからこそ書けた傑作ではないでしょうか。
正直、ポップな作品と荒々しい作品が混ざっていて、迷走という印象もなお、否定しきれない部分もあるのですが、それでも、彼らが新たな一歩を踏み出そうとしている、強い意志を感じることが出来ます。
そしてさらにユニバーサルミュージックへ移籍した彼ら。まだまだ彼らの活躍は続きそう。これからも、エレカシの活動に期待したいところです。
評価:
創世記 ★★★★★
浪漫記 ★★★★★
胎動記 ★★★★★
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