中村一義の原風景
Title:世界のフラワーロード
Musician:100s
中村一義って、デビューしたころは、その独特の節回しとポップスセンスが衝撃を与えたのですが、100sになってからは、そういう衝撃を感じないよなぁ・・・・・・
なんてこと漠然と思いながら聴いていたのですが、よくよく聴くとそうではないんですよね。いまだの中村一義らしい天性のポップスセンスと独特の節回しは健在。慣れちゃった、といえば語弊があるのですが、それ以上に、そんな小難しいことを感じさせないポップスさと楽しさが100sの音楽から流れてくるのではないでしょうか。
特に100sになってからは、仲間と音楽を奏でる楽しさが、楽曲から伝わってくるようです。今回の作品は、にぎやかなサウンドがより楽しさを伝えてくれる作品。特に前半はテンポの良さもあいまって、軽快でとても楽しい楽曲が連続していました。
後半は、ミディアムテンポの聴かせるナンバーが多いのですが、中村一義のポップスセンスや独特の節回し、また、にぎやかに奏でる100sの演奏で、しんみり聴きながらもさらっと楽しむことが出来ました・・・
が。中村一義の生まれ育った街の原風景を描いたというこの作品。Wikipediaによると、「幼い頃より、家庭内不和があり、両親との離縁を経て父方の祖父母の家へと移住する。」という経歴を持つらしい彼。あらためて歌詞を聴くと、実にヘヴィーな歌詞が、彼独特の節回しでさらっと歌われていたことに気がつきます。
「いろんな物語が生まれ、死んだ、この場所で」
(「フラワーロード」より 作詞 中村一義)
と歌う「フラワーロード」もそうですし、
「赤が青に黄色になって赤に。
ボーッとかしても常にこの視線は空に。
ボーッとかしてるうちに、黄色になって赤に。
もう数時間もすればあの星が空に。」
(「最後の信号」より 作詞 中村一義)
と歌われる「最後の信号」の風景も、どこか寂しげです。
しかし、どの曲も最後は明確に前向きの希望が歌われています。こういう歌詞を書いてくるのって、本当に彼自身、今100sとして仲間と音楽を奏でられるのが楽しいんだろうなぁ~なんてことを、思ってしまいました。
そしてラストの「空い赤」は、また楽しくてにぎやかなポップチューンで締めくくられます。本当に音楽の楽しさが伝わってくるようなアルバムでした。やはり音楽を楽しく、素直に鳴らし続けるミュージシャンの曲って、聴いていて気持ちいいよなぁ・・・。
評価:★★★★★
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コメント
こんばんは
確かに、特に、今作は、前の曲を彷彿とさせる部分がある気がします。「モノアイ」が、ハニコム、「フラワーロード」が新世界、とアレンジとかちょっと似ているかな。
あと、このアルバムの場合、より、味わうためには、中村氏のインタビュー、背景、などを知っておく必要があるのかなと思ったり(そういう聴き方はあまり好きではなかったり、なくても良いとも思いますが)
しかし、歌詞に関しては、今まで以上に、じっくり見て聴くと、優しさある前向きな歌詞だと思います(言葉遊びもあり)
一曲、中村氏の味のあるドラムが聞けてよい感じでした
芸人ダイノジの大谷のブログにも、本作に関して、熱いレビューがあって面白かったです。
次回作はこれ以上の物を出せるのかな、と不安もありますが、毎度のこと、期待を裏切らない曲を作ってくれる気がします
投稿: たくちゃん | 2009年10月14日 (水) 22時09分
>たくちゃん さん
>より、味わうためには、中村氏のインタビュー、背景、などを知っておく必要があるのかなと思ったり
そうですね~。僕も、そういう「知識を前提とないと楽しめない」というのはあまり好きではないのですが、でも、今回のアルバムは、彼の生い立ちとも大きく関係ありますからね。
もっとも、そういう知識なしでも十分楽しめると思います。
>芸人ダイノジの大谷のブログ
おお、そうなんですか~。あとで見てみよう~。情報Thanksです。
これだけのアルバムを作っちゃうと、確かに次回作が逆に心配になるかも。でも、中村一義はいつも、想像以上の作品をつくってくるだけに、多分、傑作を聴かせてくれるのではないでしょうか。やはり彼はすごいなぁ・・・。
投稿: ゆういち | 2009年10月21日 (水) 00時46分