左心室と右心室
Title:心臓
Musician:KREVA
KREVAのニューアルバムは、非常にコンセプチュアルな作品になっています。
「心臓」というタイトルになぞらえて、前半は「左心室」、8曲目の「心臓」を境として、9曲目以降の後半は「右心室」というテーマとなっています。
前半の「左心室」は、メロウなラブソングを並べた作品。男性の好きな女性に対する心境をストレートにつづった歌詞がとても魅力的。それを、甘く切ないメロディーにのせて歌い上げています。特に、女性の恋愛心理描写には定評のある古内東子を迎えた「シンクロ」は見事。男性パートのKREVAと女性パートの古内東子のやりとりがとてもおもしろい作品に仕上がっています。
一方で後半の「右心室」は、前半ほどテーマで統一はされていないのですが、とてもバラエティーに富んだ作品が並んでいます。
Mummy-Dとのやりとり・・・特に、その声の違いが際立つマイクリレーが魅力的な「中盤戦」や、産まれてきた子供への愛情をしんみりと歌い上げた、さかいゆうとのコラボ作「生まれてきてありがとう」、ユーモラスでドラマ性のある歌詞を聴かせてくれる「この先どうする?」など、1曲1曲がとても楽しい構成となっています。
ただ、コンセプトが異なるといっても、前半と後半、そんなに大きな違いがあるか、といわれればそうではありませんでした。どちらもポップなメロディーが主軸となっており、正統派のHIP HOPというよりも、ポップス色が強い作品になっています。もちろん、トラックもしっかりと作りこまれ、特に後半ではおもしろいトラックの作品も続くのですが、あくまでもメロディーと歌詞が売りの作品でした。
派手な作風の曲がないので、全体的には地味な印象を受けます。そういう意味ではパッと聴いた感じ、物足りなさを感じるかもしれません。
しかし、ポップなメロディーや時にはユーモラスな、時にはしんみりと聴かせる歌詞が魅力的。特に、聴いていて、歌詞がしっかりと耳に届いてくるのは彼の実力でしょうか?良質なポップスアルバム、そういう評価がピッタリの作品でした。
評価:★★★★★
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