岐路に立つブーム
以前から、このサイトでもたびたび取り上げている音声合成ソフト初音ミクをつかったCD作品なのですが、このたび、動画サイトなどで投稿された作品をまとめたベスト盤が発売されました。
インパクトのある作品をまとめたこちらと・・・
Title:初音ミクベスト~Impact
メロディアスな作品をまとめたこちら。
Title:初音ミクベスト~Memories
初音ミクの作品として話題となった(らしい)これらの曲を聴いてまず思うのは・・・
やはり、コンピューターの人工合成の歌を1時間にわたって聴くのは厳しい・・・
ということ。
ネット上ではさかんに「すごい」とか「人間のボーカリストがいらなくなる」みたいな論調もあったのですが、正直、全く知らない人に聴かせたら、10人中10人、コンピューターの音と言うと思うよ、これは(^^;;
インストメインの曲で、ボーカルを楽器のように使う楽曲なら、大いに「あり」だとは思うのですが、歌メインのボーカル曲で使うには、特に初音ミクに何ら思いいれのない層にアピールするには、まだまだかなり厳しいレベルだと思います。
で、それにつれて感じるのですが、どーも異常なまでも内輪的なノリが気になります。
特に「Impact」の方の前半なのですが、ネットコミュニティーを知らない人には、何を歌っているか、すらわからない曲が続きます。
ネット上の動画投稿サイトなどで盛り上がる分には、こういう内輪のノリも全く構わないと思うのですが、CD化して、メジャー流通で載せる作品で内輪ノリというのは、かなり違和感があります。
ただ、今回のこのアルバムに限らず、一歩ひいたところから見ていて、初音ミク近辺の内輪的な盛り上がりって、ちょっと残念に感じるんですよね。せっかく、ネット主導のシーンの盛り上がりはおもしろい現象だと思っているのですが、一部のユーザー層から一歩も外に出ないのでは、結局、時代の徒花に終わってしまうと思うんですよ。
なんてことを思いながら2枚のアルバムを聴いていたのですが、うーん、アレンジに関しては、ちょっといまひとつな曲も多いなぁ。あくまでも素人による投稿作品だからかもしれないけど、音自体に安っぽさを感じる曲も少なくありません。
メロディーや歌詞に関しても、「よくありがちなポップソング」の枠組みを超えていなくて、初音ミクという要素を除くと、「悪くはないけど、やはり素人レベルだよね」と思ってしまいます。
ただ、一方では、キラリと光る作品も随所にあって、例えば「Impact」収録の「方向音痴」なんかは、哀愁を感じるメロと、恋人とわかれた喪失感を、「方向音痴」というキーワードを用いて展開する歌詞は見事。他にも「Memories」収録の「ハジメテノオト」など、名曲も少なくありませんでした・・・・・・が、なら、もっと上手い「人間の」ボーカリストに歌って欲しいなぁ、と思ってしまうんですよね(^^;;
また、以前にここでも初回したsupercellの作品に関しては、正直、頭ひとつどころか、頭ふたつくらい突出している印象が。特にアレンジに関しては傑出していますね。売上面で、既にヒットを続けているのも納得がいく感を受けました。
で。総じていえることは、一時期のようなブームも一段落した今、「初音ミク」という文化は岐路に立っているのかなぁ、と思います。ネットコミュニティーの枠組みを超えるような作品をリリースできれば、一気におもしろいムーブメントになると思うし、以前のような内輪受けにとどまれば、一気に終息する可能性もあると思います。
せっかく、ネットに生じたおもしろい文化であるだけに、もっとがんばってほしいところなのですが・・・さらなる実力のあるクリエーターの登場に期待といった感じでしょう。
評価:
「Impact」★★
「Memories」★★★
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