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2009年8月 1日 (土)

足腰がしっかりしているからこそ

Title:TWANGS
Musician:GRAPEVINE

Twangs

新しいGRAPEVINE

このアルバムを聴いて、そう感じたファンは少なくないのではないでしょうか。

今回のアルバムで、GRAPEVINEは、いままでの作品ではなかったような試みに挑戦しています。

まず「Vex」では、初の英語詞に挑戦。さらには、ストリングスを大胆に導入し、バンドサウンド主体だったいままでの作品とは異なる部分をみせています。

このストリングスは、他にも「Darlin' from hell」「フラクタル」でも聴くことが出来、他にも「She comes(in colors)」でピアノを取り入れるなど、バンドサウンドにこだわらない、新しい作風を感じられるアルバムとなっています。

それにも関わらず、いつものGRAPEVINEだ、そう感じた方もいるのではないでしょうか。

ソウルやファンク、ブルースなどに裏づけされた、グルーヴィーなリズムは今回も相変わらず。しっかりとGRAPEVINEらしさというのは楽曲の隅々から感じることが出来ます。

新しいことに挑戦しつつ、いつものGRAPEVINEもしっかりと残す・・・こういう難しい芸当を簡単にこなしてしまうのは、やはりGRAPEVINEというバンドが、しっかりとソウルやブルースというルーツを踏まえたうえで、自分たちの曲づくりをしているからでしょう。

いわば自分たちの足腰がしっかりしたバンド。それだけに、その上に載っているものが、少々変わったところで、GRAPEVINEというバンドは変わりません。それこそが彼らの強さでしょう。

実際、デビュー以来、GRAPEVINEのアルバムは、多少の差こそあれ、基本的に傑作続き。はずれというのはありません。

その上でこのアルバム、そんな彼らのアルバムの中でも指折りの大傑作だったと思います。いままでのGRAPEVINEそのままに、新たな歩みも感じさせる作品で、7分にも及ぶ長さの中、ヘヴィーなロックサウンドからブルージーなギター、優しく聴かせるピアノなど、様々な顔を見せてくれる「Pity on the boulevard」やサイケデリックなサウンドに、ソウルやファンクのリズムを混ぜたGRAPEVINEらしいハードロックチューンが魅力的な「NOS」など、たくさんの聴きどころで楽しませてくれます。

おとといまで、森広隆、田辺マモル、THE BOOMと、「もっと評価されてもいいミュージシャン」たちを取り上げてきたのですが、彼らGRAPEVINEも、もっともっと評価されてもいいミュージシャンだと思うんですけどね。これだけ、ブルースやソウルの要素をロックに取り入れているバンド、日本では数少ないと思うのですが・・・。

ちなみに、ちょっと余談なのですが、このアルバムで気になったのが、やけに「別れ」を意識した歌詞が多かった点。

「おわかれを云わなきゃ
おわかれを云わなきゃ
成熟が訪れたんだ
成熟が訪れたらおわかれを云わなきゃ
云えなきゃ」

(「Afterwards」より 作詞 田中和将)

「手にまだ振動が残ってる
これ以上の寂しさが歌えるか
ただ力が
俺に力があれば」

(「Twang」より 作詞 田中和将)

「おわかれだったわダーリン
だけどきっといつかまた会えそうな
気がしてた」

(「Darlin' from hell」より 作詞 田中和将)

といった具合に、人と人の別れの中、一人の個人の無力さを描いたような歌詞が続きます。何かあったんだろうか、と邪推しちゃうのですが・・・うーん・・・。

評価:★★★★★


ほかに聴いたアルバム

hikari/シド

hikari

90年代のビジュアル系ブームの時のバンドサウンドそのまんま(^^;;

うーん、歌謡曲っぽいといえば必ずしもマイナスの意味ではないのですが、なんか、90年代のビートロックからあまりに進化もヒネリもないメロディーとサウンドは、いまさら・・・と思ってしまいます。適度にハードなバンドサウンドと、適度にポップなメロディーは、いい意味でも悪い意味でも「売れ線」って感じでした。

評価:★★★

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アルバムレビュー(邦楽)2009年」カテゴリの記事

コメント

バインの新作、素晴らしかったですね。これだけアルバムを出していて、マンネリがほとんどないだけでもすごいのに、ここに来てまた進化している……発売後しばらくは、バインしか聞けませんでした。

別れの歌が多い……いわれてみればそうですね。田中さんの詩は意外と私小説的なものが多いので、邪推もしたくなりますね(笑)

投稿: 風車 | 2009年8月 2日 (日) 11時11分

>風車さん
そうなんですよね~。決して、いろいろなタイプの音に手を出しているわけじゃないのに、マンネリがほとんど感じられないですよね。それもまた、彼らがしっかりとルーツに足をつけて音楽をつくっているから、なのかもしれないですね。今後もたくさん傑作が聴けそうです!

投稿: ゆういち | 2009年8月 3日 (月) 23時48分

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