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2009年6月 4日 (木)

「音」にこだわる

Title:out of noise
Musician:坂本龍一

out of noise

某音楽誌で、彼が、このアルバムに関するインタビューで、「最近は、『音楽』よりも『音』に興味がある。」という趣旨の話をしていたのが、とても印象に残りました。

要するに、人が「音」を「音楽」として聴き始めたのは、ここ数百年のこと。それ以前に人間は、ずっと長いこと「音」を聴き続けてきた。そういう人間が昔から聴いていた「音」に興味がある・・・という話。

坂本龍一の5年ぶりとなるニューアルバムは、そんな彼の最近の興味を直接反映した作品となっています。

アルバム全体としてはアンビエントの静かな作風。とことんまで音を削り落としたシンプルな曲調が印象的です。

特に前半はエレクトロニカ的な要素が強く、カノン様式でミニマルなピアノを聴かせる「hibari」、同じくミニマルテイストな作風で、バイオリンの響きも美しい「hwit」と続いています。

一方、後半は、様々な音をサンプリングしているのが特徴的。「tama」では備長炭の音、「disko」ではグリーンランドの犬の鳴き声、「ice」「glacer」では、北極圏の氷や海の音が収録されている・・・・・・そうです。

・・・そうです、と書いたのは、あくまでも聴いてすぐわかったわけじゃないから・・・って当たり前か(^^;;

ただ、それらの曲に関しても聴いていて、水の音などの自然の音をダイレクトに感じられ、不思議な音感ながらも一方で暖かみも感じられる作風に仕上がっていました。

そんなある種「実験」的な作風になっている本作。それだけに一歩間違えると、非常に聴きにくい作品に仕上がりそうなのですが、それがこのアルバムに関しては、とてもポップに仕上がっているから不思議です。

それは、これら楽曲の根底には、しっかりとメロディーが流れているからなんじゃないかなぁ・・・と思いました。そのメロディーは決してヒット曲のキャッチーなメロディーラインではありません。それはおそらく坂本龍一が天性の才能としてもっているメロディーセンスや、あるいは自然の音が本来持っている「和音」が、マッチして、ポピュラリティーを形成しているのかなぁ・・・なんてことを思ったりしました。

まあ、正直、一歩間違えればニューエイジ風の環境音楽に走ってしまうギリギリ・・・という感じもしないわけもなくて、実際、後半に関しては、「うーん、ちょっとテレビの『自然』に関するドキュメンタリーのバックとかによく流れてそうな・・・」なんて思ったりもしてしまったもの事実(^^;;

ただ、それでも単純に自然の音を取り込むだけではなく、様々な今風の音を組み合わせることにより、単純な環境音楽になることをなんとか回避していました。

そんな訳で、「実験」的ながらも、とてもポップで聴きやすい傑作に仕上がっています。坂本龍一の、ある意味現段階での興味がそのままつまっています。自然の音の偉大さ・・・というよりも、それをベースにしっかりとまとめあげてくる坂本龍一の実力に、あらためて感服する作品でした。

評価:★★★★★

・・・で、坂本龍一の盟友といえば、高橋幸宏。そんな彼も3年ぶりに新作をリリースしてきました。

Title:Page by Page
Musician:高橋幸宏

Page By Page

こちらもエレクトロニカ、あるいはアンビエント系の影響を強く受けた作風。ただ、あくまでもメロディー、歌モノが中心となっています。また、アレンジも、かなり美しい雰囲気のアレンジになっていて、小難しいこと抜きで楽しめる作風だと思います。

ただ、全体的には、ちょっときれいにまとまりすぎている感も否めなかったかな?聴いている時は心地よく楽しめたのですが、どうも聴いた後のインパクトの薄さが気になる作品でした。

評価:★★★★

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