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2009年6月 7日 (日)

歌謡曲 華やかなりしころ その2

昨日に続き、「ザ・ベストテン」コンピレーションのお話。今日は、6枚それぞれの感想をば。

ザ・ベストテン 1980-81

Title:1978-79

ピンクレディーとかキャンディーズとか山口百恵とか桜田淳子とか。時代的には、「ザ・ベストテン」全盛期のアイドル歌手より、一世代前って感じでしょうか?ただ、昨日も書いたとおり、このあたりがむしろ歌謡曲全盛期。

この時期は、アリスとかゴダイゴとか、むしろニューミュージック系の方が、様式化しちゃっている部分があって、今で言えば「歌謡曲っぽい」んですよね。アイドル歌謡曲と、地位が逆転しちゃっているという感じ。

ただ、ニューミュージック系も含めて、インパクトの強い曲が多いなぁ。「UFO」といい「関白宣言」といい「チャンピオン」といい、曲の良し悪し以前に強烈な個性を放つ曲が多いような印象を受けます。そういう点も含めて、歌謡曲全盛期をそのまま反映している作品ですね。

でも、とりあえず昨年話題になった水谷豊は、歌わないほうがいいと思う。

評価:★★★★

Title:1980-1981

田原俊彦に近藤真彦、松田聖子に河合奈保子と、ベストテン全盛期に突入といった感じでしょうか?一方、山口百恵の事実上のラストシングル「さよならの向こう側」を同時に収録している点、世代交代を強く意識させるような選曲になっています。

また、ちょっとおもしろいのがイモ欽トリオの「ハイスクールララバイ」。細野晴臣作曲・アレンジのテクノポップで、YMO人気を反映しているのが、これまた時代を感じさせます。

個人的には、「贈る言葉」やら「昴」やら「セーラー服と機関銃」やら「ランナウェイ」やら、結構好きなんですよね~。インパクトの強さは「1978-79」ですが、邦楽のスタンダードナンバーという点では、こちらの方が名曲が並んでいたかな?

評価:★★★★

ザ・ベストテン 1982-1983

Title:1982-83

あいかわらずアイドル歌謡曲全盛期ながらも、前作に比べると、少々インパクトという面で薄くなってきてしまった感もあります。それでも「赤いスイートピー」「時をかける少女」などのスタンダードナンバーが発表されたのもこの時期。

忌野清志郎&坂本龍一の「い・け・な・いルージュマジック」が収録されている点もポイント。時期が時期だけに、思わずしんみりしてしまいそうですが・・・。ただこの時代、華やかな歌謡曲の後ろで、脈々と勢いづいていたのが、RCサクセションやYMOといった、次の時代を形作るバンドたち。そんな、「ザ・ベストテン」的な歌謡曲とは異なる、ヒットシーンの潮流が、ほんの少しだけ「ザ・ベストテン」にも顔をのぞかしています。

評価:★★★★

Title:「1984-85」

「ザ・ベストテン」自体は1989年まで放送されていたのですが、オムニバスは1985年まで。ちょうどこの時期から、アイドル歌謡曲がすたれはじめ、バンドブームがはじまるのですが、それを象徴するような内容。純粋なアイドル歌謡曲がわずか7曲なのに対して、中村あゆみやレベッカ、安全地帯などの、ロック系ミュージシャンが急増しています。

また、チェッカーズや吉川晃司のように、アイドルとミュージシャンの中間あたりを狙ったミュージシャンも見受けられ、ここらへんも、新しい時代への幕開けを感じられます。

特にラストが、まさにバンドブームの先駆けともいえるレベッカの「フレンズ」で締めくくるあたり、アイドル歌謡曲からバンドブームへの流れを明確に意識した選曲なんでしょうね。そいう意味では、いろいろとよく考えられた選曲になっているな、このコンピレーション。

評価:★★★★

ザ・ベストテン 歌謡曲編(1978~85)

Title:歌謡曲編 1978-85

個人的に、この時代の歌謡曲の遍歴をあらわしているなぁ、と思ったのがこの歌謡曲編。ムード歌謡曲と演歌が収録されているのですが、この時期のムード歌謡曲や演歌って、完全に様式化しちゃった今の演歌と違って、メロディーが素直にいい曲が多いんですよね。「氷雨」とか「みちのくひとり旅」とか、一度聴いたらすぐ覚えられるようなメロディーで、しんみりと聴き入ってしまう名曲ですよね。

ただ一方、その後の演歌冬の時代を彷彿とさせるような、完全に様式化しちゃった演歌も少なくなく、「夢追い酒」とか「奥飛騨慕情」とか、もう、完全にド演歌ですね。こういう演歌やムード歌謡曲が様式化、パターン化するにつれ、徐々に時代から遅れていってしまったんでしょうね。

そして、このオムニバスがユニークだったのが、最後にとんねるずによる「雨の西麻布」が収録されている点。ある意味、ムード歌謡曲をパターン化してパロったこの作品は、様式化して、没落していくムード歌謡曲、演歌を皮肉っているようにも感じます。作詞が、これまた、アイドル歌謡曲を完全に素人化してしまって、その後のアイドル冬の時代の原因をつくりだした秋元康という点もまた、皮肉的。これを「歌謡曲編」の最後にもってくる点、狙っていたのか偶然なのか・・・。ともかく、歌謡曲の隆盛と衰退を象徴するような内容でした。

評価:★★★★

Title:スポットライト編 1978-85

売れて何ぼの歌謡曲を、これまたレコード会社がプッシュしているにも関わらず、あまり売れなかった曲たち・・・ということで、他のコンピレーションに比べると、その内容はどうしても一段落ちてしまいます。

いや、決して駄作ばかりじゃないんですが、あれだけ個性の強かった時代に、この曲たちはあまりに薄味・・・。なんとなく、なんで売れなかったのかが、わかってしまいます。

評価:★★★

こうやって、あらためて眺めると、70年代後半の歌謡曲の、個性の強かったこと強かったこと・・・。まあ、ある意味「個性重視」で、音楽性という面ではどうなんだろう、と思わなくもないんですが、逆にシーンを活性化するためには、とにかく個性第一の曲が必要なのかなぁ、とも思ってしまいました。

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