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2009年6月 6日 (土)

歌謡曲 華やかなりしころ

Title:ザ・ベストテン

ザ・ベストテン 1978-1979

1978年から1989年、足掛け11年にわたって放送され、最高視聴率が40%を超えたお化け番組「ザ・ベストテン」。ある世代以上の方なら、毎週、テレビの前で楽しみにこの番組を見ていた、という方も多いのではないでしょうか。

今回、この番組でベストテン入りし、ヒットした楽曲を集めたコンピレーションアルバムが発売されました。年代別に「1978-79」「1980-81」「1982-83」「1984-85」の4枚と、演歌・ムード歌謡曲を中心にあつめた「歌謡曲編」、ベストテン入り直前の曲を紹介したスポットライトのコーナーで取り上げた「スポットライト編」の計6枚のアルバムが同時にリリースされています。

これに、「ザ・ベストテンのテーマ」、「ミラーゲートのテーマ」、「スポットライト編」では「スポットライトのテーマ」、さらに番組の最後に撮られた集合写真のシャッター音の効果音を最後に入れて、CD全体で、「ザ・ベストテン」を思い出すような内容。これに「ザ・ベストテン」をリアルタイムに見た世代が反応し、好調な売上を見せているようです。

ただ、内容的には企画の勝利というか、少々ボッタクリ気味というか・・・(^^;;80年代のヒット曲を集めたこの手のコンピレーションは、それこそ深夜の通販などでも、もっと安く販売してそうな代物ですし、歌詞カードに関係者のインタビューやコラムが掲載されているのですが、たった2ページの薄っぺらい内容。正直、コンピレーションとしてはあまりよく出来た内容とは思えません。

それでも今回聴いてみたのは、私が「ザ・ベストテン」世代だったから・・・・・・ではないんですよね。はっきりいって、「ザ・ベストテン」ほとんど見た記憶がありません。なので全く思いいれもありません。今回聴いてみたのは、単純に70年代から80年代のヒット曲を聴いてみたかったから。それだけ。

青春歌年鑑 1979

実はちょっと前から、「過去のヒット曲」をあさって聴いていまして、いままでは主に、邦楽に関しては、「青春歌年鑑シリーズ」で戦前から80年代までのヒット曲を一通り聴いてみました。今回のシリーズ、収録曲はかぶる部分もかなりあるのですが、あらためて、今回のコンピレーションで、この時代のヒット曲を聴いてみたわけです。

この「青春歌年鑑シリーズ」で、編年的にヒット曲を聴いていると、時期によって、名曲が多く生み出され、シーン全体に勢いのあった時期と、似たタイプ、パターン化された曲が増え、シーンがつまらなくなった時期が繰り返し訪れていることに気がつきます。

そんな日本のヒットシーンがおもしろかった時期が、まず60年代後半。ビートルズや、その後の欧米でのロック全盛を受け、日本でもGSからフォークへと、実力のあるミュージシャンたちがたくさんあらわれた時代でした。

そして、その後、シーンがおもしろくなるのが70年代後半から80年代初頭にかけて・・・そう、ちょうど「ザ・ベストテン」がスタートした時期。「ザ・ベストテン」があれだけ人気があった背景には、この頃、数多くの名曲がヒットシーンに産み出されたから、なのではないでしょうか。

では、なぜこの時期、ヒットシーンが活気付いたのでしょうか?

これはあくまでも個人的な推測なのですが、60年代後半の、ビートルズをはじめとする全盛期の欧米のロックに強く影響を受けた人たちが、作曲家として花開き、かつもっとも脂がのっていた時期だったから、ではないでしょうか。

例えば、
都倉俊一(作品「UFO」他)・・・1946年生まれ
井上大輔(作品「ランナウェイ」他)・・・1941年生まれ
筒美京平(作品「ギンギラギンにさりげなく」他)・・・1940年生まれ
小田裕一郎(作品「青い珊瑚礁」他)・・・1950年生まれ

・・・・・・と、だいたい60年代に青春期を迎え、この時期は、もっとも脂ののった30代あたりの作曲家ばかり。他にもユーミンや大滝詠一、細野晴臣など、層々たる面子が、作曲家として名を連ねています。

まさに、この時期は最も歌謡曲が華やいでいたころ。歌謡曲のバリエーションも、様々でかつユニークで聴いていて飽きません。逆に、皮肉なことに特に70年代後半は、ヒットシーンに出てくるようなニューミュージックやフォーク系のミュージシャンの方が、変に様式化してしまって、面白みに欠けるなぁ・・・なんて思ってしまいました。

しかし、残念なことに、このシーンの勢いは80年代になると急速に落ちてくるように感じます。

その理由は・・・80年代あたりから出てくるアイドル歌手のヘタなことヘタなこと・・・(^^;;

いまさら具体的に名前をあげるのもあれなんですが、田原俊彦や近藤真彦、小泉今日子も微妙ですし、松田聖子も決して上手くありません。

ここらへんから、楽曲の良し悪し以上に、歌手のルックスやアイドル性に重点がおかれてきたことが、如実にわかるんですよね。

このコンピレーションではカバーされていないのですが、70年代までって、アイドル歌手でも多くはそれなりの力量があったように感じます。ピンクレディーしかり、山口百恵しかり。

しかし、この時期から、歌手が露骨に下手くそになっていくように感じました。でもこれって、完全に推測なんですが、「ザ・ベストテン」をはじめとするテレビの歌番組の影響なのではないでしょうか?

結果、アイドル歌手はどんどんルックス重視、むしろ「素人っぽさ」が受けるようになっていき、徐々に大人や、本格的に音楽を聴きたいような若者の層にそっぽをむかれるようになってきたのではないでしょうか。

そう考えると、皮肉なことに、歌謡曲全盛期を作り出した「ザ・ベストテン」が同時に、歌謡曲衰退の原因を作り出した、と言えるのかもしれません。

そんな歌謡曲華やかなりしころの姿と、徐々に衰退していく姿がおさめられたコンピレーション。通して聴くと、あの頃のシーンがよくわかる内容でした。

次回、1枚1枚について、簡単な感想を書いていこうかなぁ、と思います。

捕捉

ちなみに、「歌謡曲全盛期」は70年代後半から80年代にかけてなのですが、ここでも何度も言っているように、決して「昔の方がヒット曲はおもしろかった」というつもりはありません。特にビーイング系・小室系ブームが過ぎ去ったあとの1990年代後半あたり(宇多田ヒカルや椎名林檎、aikoがデビューしたころ)も、日本のヒットシーンが最もおもしろかった時期のひとつだと思っていますし・・・。

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