バンドの勢いがあらわれた傑作
Title:アルトコロニーの定理
Musician:RADWIMPS
バンドにとって、その時の脂にのりまくった勢いがそのままあらわれた傑作、というのがあります。
例えば、ここ何年かで印象に残っている作品は、ASIAN KUNG-FU GENERATIONの「君繋ファイブエム」や、ケツメイシの「ケツノポリス3」あたりも、そんな勢いを感じる作品でした。
もうちょっとさかのぼると、ミスチルの「Atomic Heart」や、洋楽ではoasisの「(WHAT'S THE STORY)MORNING GLORY」なんかも、そんな類のアルバムと言えるかもしれません。
そして、RADWIMPSの新作に関しても、まさにそんな脂ののりまくった勢いが、そのまま体現化された傑作といえるでしょう。
まずは1曲目「タユタ」と2曲目「おしゃかしゃま」の展開が、ゾゾっとくるものがあります。
ギターのアルペジオをベースに、幻想的な雰囲気を与える不思議な曲が、このアルバムに対する期待と、その後の盛り上がりを否応なしに高めてくれる「タユタ」。そして、ファンキーなリズムに、ユーモアたっぷりの歌詞。ファンタジックながらも、シニカルな歌詞が、このアルバムを代表するナンバーとしてふさわしい「おしゃかしゃま」。
雰囲気の全く異なりながらも、インパクトの強いこの2曲を冒頭にもってくることによって、リスナーの耳をアルバムにひきつけることに、まずは成功しています。
このアルバムで一番感じたのは、メロディーやサウンドに関しての、彼らの大きな成長でした。
今回の作品に関しては、以前と同様、パワーポップや、オルタナ系のギターロック主体ながらも、テクノポップの要素を入れた「謎謎」や、アメリカンロック風の「七ノ歌」、アコースティックなバラードナンバー「メルヘンとグレーテル」など、様々なバリエーションをくわえてきているのは前作以前と同様。
ただ、一方で、メロディーに関して、あきらかに垢抜けてきたように感じます。
前述の「おしゃかしゃま」もそうなのですが、「One man live」や、「オーダーメイド」など、決してセルアウトという訳ではありません、しかし、しっかりと後に残り、かつ、インパクトを持ったメロディーラインを数多くこのアルバムでは聴くことが出来ます。
そういう面もあわせて、まさに勢いがあり、脂ののりまくった作品で、最後まで耳の離せない内容になっていました。
一方で、歌詞に関して言うと、前作に比べると、ユーモアのある歌詞が、少々減ってしまったかな、という印象は受けます。
しかし、それでも「おしゃかしゃま」のような
「来世があったって 仮に無くたって だから何だって言うんだ
生まれ変わったって 変わらなくたって んなこたぁどうだっていいんだ
天国行ったって 地獄だったって だからなんだって言うんだ
上じゃなくたって 下じゃなくたって 横にだって道はあんだ」
(「おしゃかしゃま」より 作詞 野田洋次郎)
のような、ユーモアさの中に、確実な自己主張と、自分は自分というスタイルを貫く内容の歌詞や、
孤独の中に、無上の愛情を歌い上げる「One man live」、
ファンタジックな内容の中に、愛情や人を思う気持ちの大切さを歌い上げる「オーダーメイド」などなど。
誰にも指図されない自分を貫く力と、人を思うこと、そして愛することを歌うRADWIMPSの歌詞の世界観は、このアルバムでもしっかりと貫かれています。
文句なしの傑作だと思います。バンド史上はもちろんのこと、今年を代表する傑作になりそうな予感のある1枚。今、もっとも勢いのあるバンドのひとつ、RADWIMPS。今後もさらに注目したいバンドなのは間違いないでしょう。
評価:★★★★★
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