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2009年3月17日 (火)

次の一歩を探る問題作

Title:告白
Musician:チャットモンチー

告白

メジャーとして3作目となるフルアルバム。ここまで順調に人気を伸ばしてきた彼女たち。ただ、3枚目になって、そろそろしのびよってくるのが、「マンネリ」というロックバンドにとっては、もっとも恐れるべき影でしょうか。

自分たちのスタイルをとことん追及し、大いなるマンネリを目指す、という手もあるのですが、彼女たちが選択したのは、あらたなるチャットモンチーとしての音楽性の確立でした。

この作品は、そんな彼女たちにとって、次の一歩を模索する、いわば「問題作」ともいえる作品になっています。

一番具体的に彼女たちの行方を指し示しているのは、やはりシングル曲でしょうか。「ヒラヒラヒラク秘密ノ扉」「風吹けば恋」は、テンポのよいリズムにポップなメロディーと耳障りはいいのですが、ひねくれたメロディー展開や、次から次へと違った展開をみせる楽曲の構成が実に魅力的。チャットモンチーの売りであるポピュラリティーセンスに着地しながら、次の一歩を模索している、彼女たちの実力とバランス感覚の良さを感じさせる名曲になっています。

その他にも、ちょっと幻想的な雰囲気を感じる「あいまいな感情」や、リズムが次々と変化していき、うねるような雰囲気を作り出している「ハイビスカスは冬に咲く」、地元徳島の阿波踊りのリズムを取り入れて話題の「LOVE is SOUP」、同じく、どこか和風のテイストを感じる「やさしさ」など、多彩なタイプの楽曲で、新たなる方向性を模索しています。

これだけ、いろいろな作風に挑戦していながらも、しっかりとチャットモンチーらしさがアルバム全体を貫いているのは見事。そして、おそらく、その最大の理由は、歌詞にあるのではないでしょうか。

彼女たちの描く歌詞は、女の子の本音の恋愛感情を、かわいらしく、時にはちょっとドキッとするような表現で描き出しています。

例えば、「長い目で見て」と訴える、ちょっと甘えんぼでかわいらしい女の子を描いた「長い目で見て」や、

「はっきり言って努力は嫌いさ
はっきり言って人は人だね」

とちょっとニヒリズムを貫きながらも

「走り出した足が止まらない
行け!行け!あの人の隣まで」

(以上斜字2パラグラフ 「風吹けば恋」より 作詞 高橋久美子)

と、元気いっぱいに恋をがんばる女の子を描く「風吹けば恋」など、こちらの方は、デビュー当初より全くぶれがありません。

こういうぶれのない歌詞の世界観を描いているからこそ、逆に音楽の方では「遊び」を入れることが出来るのではないでしょうか。

アルバム全体としては、ミディアムテンポの曲が多く、インパクトも少なめ。出来としては、いままでの彼女の作品の中では一番いまひとつかもしれません。

ただ、今の彼女たちにとっては、どうしても産み出さなければならない1枚だったことは間違いないでしょう。これを大きな一歩として、次にさらなる傑作を産み出してほしい、そう感じ、そして、来るべき傑作の到来を期待させる作品でした。

評価:★★★★★

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