「宇多田ヒカル」との使い分け
Title:This Is The One
Musician:Utada
Utada名義での2枚目となるアルバム。Utada名義での前作同様、アメリカでの発売を前提とした作品だそうで、5月にはアメリカでも発売を予定しているそうです。
「宇多田ヒカル」名義での前作の感想の時にも書いたのですが、明確に
宇多田ヒカル⇒日本向け
Utada⇒アメリカ向け
を意識したんでしょうね。歌謡曲テイストが強くなっている最近の宇多田ヒカル名義作品とは対照的に、かなり本格的+今風のR&Bテイストあふれる作品となっていました。
また、jpegやらmp3やらMySpaceやら、「今時」のアイテムをたくみに楽曲の中に入れてくるのも彼女らしいなぁ。こういう今時のアイテムをさらりと入れてくるのって、エバーグリーンであるよりも、今、この瞬間だからこそ輝くポップソングを彼女が目指しているということもよくわかります。
さらにアメリカ向きである一方、坂本龍一の「Merry Christmas Mr.Lawrence」のカバーを入れてくるあたりは、日本人であることを意識したカバーなのでしょうか。さらに「Automatic Part II」なんて曲も入っていたりしています。この曲、宇多田ヒカルの自己紹介ともいえる曲。彼女を一躍世に送り出した大ヒット曲「Automatic」の第2弾として、アメリカでも一気にブレイクしたい、そういう気持ちがこめられているのでしょう。彼女らしい、ユーモアセンスのあるタイトルの選び方のような印象を受けました。
さて、そんな宇多田ヒカルらしいユーモアセンスを随所に感じる作品。そのセンスのよいポップセンスも相変わらずで、今、再び勢いにのっている彼女らしい傑作であるのは間違いないと思います。
ただ、一方でこのアルバムがアメリカでも受け入れられるのか、といわれると非常に微妙かなぁ、という感想を抱いてしまいます。
というのも、このアルバム、確かによく出来たアルバムだと思います。しかし、本格的な実力派シンガーが群雄割拠しているアメリカのシーンの中で、(ちょっと言い方は悪いかもしれませんが)得体の知れない東洋人のこのアルバムを、あえて手に取るだけの個性を持っているか、といわれると、微妙といわざるを得ません。
むしろ、宇多田ヒカル名義の作品の方が、適度に入った「和」のテイストが、逆にアメリカでは受けるのではないか?とすら思ってしまいます。
ひょっとしたら、彼女自身、「日本人として」売れることを拒否し、「一人のシンガーとして」売れることを希望するため、あえて「日本人」のテイストを楽曲から排除したのかもしれません。
でも、そうだとすると、現状としてはとても厳しい。結局は、本場のR&Bの延長線上の作品でしかない以上、アメリカでこのアルバムが大ブレイクするのは、厳しいのではないでしょうか。
宇多田ヒカルのアルバムとしては傑作だと思うんですけどね。また、前作同様、「日本でだけ」大ヒットしそうだよなぁ・・・。
評価:★★★★★
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