ここから、いろいろはじまりそう。
Title:NOTEBOOK II~冒険ノート中~
Musician:榎本くるみ
BUMP OF CHICKENの藤原基央が楽曲を提供して話題となった「冒険彗星」がヒットし、いきなりブレイクした榎本くるみの2枚目のアルバム。
鬼束ちひろを思いおこさせるような、力強くも癖のあるボーカルが魅力的。その芯の通ったボーカルは、聴いていてひきつけられるものがあります。
ただ、このアルバムを聴いて、後半までは、聴いていて、厳しいなぁ・・・と感じるものがありました。
それは、彼女の楽曲に、あまりにもそのまんま90年代のガールズポップの路線を感じたからです。
ポップで、元気のある楽曲は、さながら全盛期の永井真理子・・・というにはボーイッシュさが少々足りないので、雰囲気としては、近藤名奈とか相馬裕子あたりを思い出しました(・・・ってこれまた懐かしい名前を・・・(^^;;)
例えば「エメラルド」や「みんな元気」など、まさに王道ともいえる90年代のガールズポップ。上にあげた名前に、懐かしいと感じられる方なら、これらの曲には、ノスタルジックすら感じられて、かなりはまってしまうのではないでしょうか。
確かに私も、こういう路線は決して嫌いではありません。むしろ好きな方です。ただ、あまりにも90年代そのまんまの路線に、あまり新鮮味は感じられず、高い評価も出来ずにいました。
特に「夕陽が丘」みたいにまんま昔のハードロックに、過剰ともいえるアレンジを加えるのは、90年代の売れ線そのまんま。今さら・・・とも思ってしまいました。
ただ、その認識に大きな変化がおきたのが、このアルバムの終盤。「雨ふり小僧」の、アコースティックギターとアコーディオンで、しっかり彼女の声を聴かせるポップスに「おおっ」と思い、「ぼくのうた」では、ファンタジックながらも、どこか歪んだアレンジが続き、最後はピアノの不協和音で突然に終る展開には、前半に見受けられたような、「きれいごとの応援歌」路線とは違う世界の展開に、少々ビックリもしました。
また、ラストの「CURE」も、メロディーこそ普通のポップだったのですが
「きれいなものが嫌いだよ だってそれはいつか醜く汚れるから」
「あなたのことを憎んでみたよ
まだどれくらい愛が残ってるか知りたかった
そんな苦しみに夢を重ねた 夢の孤独と重さを初めて知った」
(「CURE」より 作詞 榎本くるみ・MOR)
などといった、単純な前向きソングとは違う歌詞の世界に、彼女の大きな可能性を感じました。
17曲中8曲がシングル曲で、全体として、いかにも「売り」を狙ったような曲も多く、曲調もバラバラで統一感にも欠けて、決して「傑作」というアルバムではありません。
ただ、随所随所に、榎本くるみの可能性を感じる曲が見受けられます。いろいろなタイプの楽曲も、これからの彼女の路線を模索している過程だから、という印象を受けました。
これからがおもしろそうなシンガーなのは間違いないでしょう。まさにこのアルバムから、なにかがはじまりそう・・・そう感じさせてくれる1枚でした。
評価:★★★★
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