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2009年1月23日 (金)

現代の成り上がり

Title:Dream and Drama
Musician:Anarchy

Dream and Drama

昨年、日本のHIP HOPシーンで大きな話題となった作品。その評判の高さに、いまさらながら聴いてみました。

で、遅ればせながらその作品に衝撃を受けたわけですが。

なんか、いまだに日本のHIP HOPでは、衝撃を受けるような「新たなスタイル」を見せてくれるアルバムが次々と続いているんですよね。なんだかんだいっても、HIP HOPは、(特に日本では)もっとも先駆的で勢いのあるジャンルなんだなぁ、ということをあらためて感じます。

Anarchyの特徴は、決して斬新なトラックではなく、あくまでもそのリリック。

まず、言葉をひとつひとつかみ締めながら綴るラップは、内容がしっかりとリスナーの頭の中に入ってきます。ここらへん、日本のHIP HOPって、リズムを重視するあまり、聴いていて内容がわかんないラップが多いんですよね。その点、彼のラップはいい意味で「わかりやすい」ラップを綴ってくれています。

また、次々繰り広げられるライムが、ラップの大きな核になっている事実がとてもわかりやすいのも特徴的。これは、「内容がわかりやすい」という特徴から来ているのですが、HIP HOPをあまり聴いたことないリスナーにも、「ライム」とは何か、というのがよくわかるラップが繰り広げられています。

しかし、これらの要素は、あくまでも彼のラップの魅力の入り口の部分でしかありません。

彼のラップの魅力は、何よりもその内容にあります。

リリックの内容が、徹底した成り上がり主義。例えば、いかにもなブランド名や、「セレブ」なアイテムを並べた「60 Bars Dream」などが典型なのですが、いわゆる底辺に生きる人たちが、上を目指そうとする上昇志向を、隠すことなく素直に描いています。

しかし、もし彼の書くリリックが、単なる成り上がりであったなら、彼のリリックは必ずしも魅力的にはうつらなかったのではないでしょうか。底辺に生きる人たちの、粋がった上昇志向では、当事者にとってはリアルかもしれませんが、それ以外の人たちには共感を得られないからです。

彼の書くリリックが、単なる成り上がりに終らず、魅力的にうつるのは、底辺で日々を生きる人たちの心境を、ありがままにリアルに描写しているからだと思います。

例えば、そんな底辺で生きる人たちの日常をありのままに描いた「Fate」でも

「笑っているけど悲しい目
夜中の公園に裸足で
余裕なフリも頼もしいね
横には仲間がいて
バラバラでも家族あったかい家
夢掴め働いて
下向けば悲しいね」

(「Fate」より 作詞 K.Kitaoka)

と、どこか心の奥の心境も素直に描いています。

そんな心境をありのままに描いているからこそ、その境遇は異なっても、どこか共感を覚えるリアリティーがそのリリックから伝わってくるのです。

いままでの日本のHIP HOP、特にハードコアといわれるラップって、ともすれば悪ぶったり粋がったりするだけの歌詞が多かったように思います。しかし、そんな中で、間違いなく次の段階に大きく歩を進めた作品ではないでしょうか。

間違いなく、日本のHIP HOPシーンに大きな足跡を残した傑作です。

評価:★★★★★

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