ロックの未来、模索中
Title:Dear Science
Musician:TV On The Radio
「ロックは死んだ」・・・はっきりいってかなり陳腐な言い回しで、ジョン・ライドンをはじめ、こういう発言がなされて久しいのですが、ここ最近、「ロック」というジャンルがひとつの行き詰まりをみせているような印象を受けます。
グランジムーブメントははるか昔。ラップ・ロックというジャンルも一息つき、エレクトロニカ、ポストロックという流れも、結局は一部の音楽マニアに受けたという領域にすぎず。次につながるロックの新しい流れというのを、今のシーンは提示できていません。
話はかわって私事。年末から年始にかけて、新譜がほとんど発売されていない状況が続いているのですが、この隙に(?)、2008年に評価の高いアルバムで未聴の作品をあさりまくっています。
そんな中、聴いてみたのがこの作品。発売当初も気になって、聴こうかどうか迷ったのですが、本作。で、聴いてみて、良くも悪くも話題になっている理由を強烈に感じることが出来ました。ぶっちゃけていうと、「評論家筋や音楽マニア系の受けがよさそうな作品だなぁ」と感じたからです。
ロックというカテゴライズをされているのですが、とにかくジャンルレスなのが特徴的。ロックが主軸になっているのでしょうが、エレクトロニカ風の電子音ながらも4つ打ちのリズムがダンスミュージックを意図しているようにも感じる「Crying」やら、ラップを取り入れ、HIP HOPからの影響を感じる「Dancing Choose」やら、テクノの影響を感じる「Golden Age」やら、メロディーをじっくりと聴かせて、AORなんていうジャンルすら頭に浮かぶ「Family Tree」やら・・・
アルバム全体としては、ブリストルサウンドからの影響やら、フリージャズやらといった言葉も出てくるのかもしれませんが、とにかく、ありとあらゆるジャンルをぶちまけた感じ。しかし、必要以上に頭でっかちにならず、そこにポップという要素を強く加えることによって、聴きやすい内容に仕上がっています。ちょっと意地悪な言い方をしちゃうと、この手の「新しい雰囲気があるけどポップな音」って、評論化筋や音楽マニア受けがいいんだよなぁ。ま、人のことはいえないけど(^^;;
で、話は冒頭に戻って。
意図しているのか意図していないのかはわからないのですが、彼らは今、様々なジャンルを取り込むことによって、ロックの未来を模索しているように感じました。
もともと「ロック」というジャンル自体、R&Bとカントリーの融合から生まれ、その後もジャズやらクラッシックやらレゲエやらHIP HOPやら、様々なジャンルを飲み込んで今に至っています。
しかし、様々なジャンルを飲み込んでしまった今、ロックは行き詰まりを見せています。そしてそんな中、ロックが次に何を飲み込めばロックはさらなる進化を迎えるのか、このアルバムで探しているようにも感じました。
現段階では、正直、まだ次の一歩は発見できていないように感じます。なにより「ジャンルレスでごちゃまぜ」と感じてしまう点が、まだ、ロックの新たな進化形として体系化していない証拠でしょう。
ただ、新たなジャンルを産み出すような、混沌とした雰囲気の中から、一種のパワーを感じました。「評論家筋受けする」なんて皮肉めいた書き方をしましたが、素直にお勧めできるアルバムなのは間違いないでしょう。とりあえず、チェックしておきたい1枚です。
評価:★★★★★
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