ART-SCHOOLの今と昔
Title:Ghosts&Angels
Musician:ART-SCHOOL
「もっと売れてもいいのに」・・・ポピュラリティーやインパクトの観点から、そう思っているミュージシャンは何組かいます。ART-SCHOOLもその一組。メロディーもほどほどポップにまとめており、歌詞にもインパクトを感じさせる彼らは、もっともっとチャートの上位に食い込む売上を記録してもいいと思うんですけどね・・・。
ART-SCHOOL初のベストアルバムとなる本作は、そんなART-SCHOOLの魅力を存分に感じられるアルバムです。
まず魅力的なのはやはり歌詞でしょう。木下理樹の書く歌詞は、どこかセンチメンタルで情熱的。特にラブソングに関しては、その傾向が強く出ています。
例えば「君を失くしたら 僕は死ぬだけ 君を失くしたら 生きていけるはずがない」(「MISS WORLD」より 作詞 RIKI KINOSHITA)とあまりにもストレートな歌いだしが印象な「MISS WORLD」や
「あと10秒で 世界が終わる
そんな瞬間が もしも来たら
その10秒で 君に触る
それ以外は ねぇ」
(「あと10秒で」より 作詞 木下理樹)
と歌う「あと10秒で」などが特に典型的。あまりにもストレートながらも、それが逆に強いインパクトを感じさせる歌詞となっています。
また、バンドサウンドも、マンチェスター・ムーブメントや、シューゲイザー、あるいはブリットポップなどの流れを汲む正統派のオルタナロック。ただ、その一方で、「水の中のナイフ」では、ヘヴィーなギターリフをメインとしたハードロック路線、前述の「あと10秒で」は、4つ打ちのサウンドを取り込んだダンサナブルなチューンと、様々な作風にも挑戦しています。
加えて、彼らはそれらの新たな作風を、バランス感覚をもって取り入れているんですよね。ともすれば、新しい作風に挑戦しようとすると、かつての作風を捨て、完全に新たな作風にチェンジするミュージシャンが少なくありません。しかし、その試みは、得てして失敗し、いままでのファンを失望しがち。でも彼らの場合は、ハードロックやダンスミュージックに挑戦しながらも、主軸はデビュー当初以来、全くかわっていません。そういうバランス感覚の良さもまた、彼らの魅力のひとつと言えるでしょう。
それだけにもっと売れてもいいと思うのですが・・・ただ、一方で、いまひとつブレイクしきれない理由もなんとなくわかるんですよね。
いまひとつブレイクしきれない理由のひとつもまた、彼らのバランス感覚の良さではないでしょうか。メロディーにしろ歌詞にしろ、実に上手くまとめてくるのですが、しばしば人気を得るバンドっていうのは、どこか吹っ切っちゃったようなバンドだったりするんですよね。もちろん、そういう吹っ切れた場合、大失敗に終るケースも多いのですが・・・そういうバランスのよい、ある意味「優等生的」な部分が、いまひとつブレイクしきれない理由かもしれません。
そして、このベスト盤と同時に発売されたミニアルバムもまた、そんなバランス感覚の良さがよく出ています。
Title:ILLMATIC BABY
Musician:ART-SCHOOL
表題曲である「ILLMATIC BABY」は、DOPING PANDAのYUTAKA FURUKAWA。テンポのよいダンサナブルなテクノポップチューンで、新たな境地を感じる一方、バックではしっかりとギターロックのバンドサウンドが鳴り響き、主軸のぶれのなさを感じます。
その後の楽曲も、基本的には彼ららしいギターロックナンバーが続き、「ILLMATIC BABY」でテクノポップ路線を取り入れたからといって、ミニアルバムでも全曲テクノポップ路線とすることは避けています。
もちろん、そのため、いままでのファンにとっても新しい挑戦を楽しみつつ、彼ららしいナンバーを存分楽しむことが出来るアルバムになっています。こういうバランス感覚の良さが彼らの魅力だなぁ、と思う一方、ミニアルバムですら吹っ切れない姿勢が弱点なのかも、とも思ってしまいました。
しかし、そんな彼らですが、人気は徐々に、しかし確実にあげてきているみたいで、アルバムを出すごとにチャートでは自己最高位を更新。ベスト盤は最高位37位、このミニアルバムは25位とついにベスト30入りを果たしました。
そろそろ本格的なブレイク間近か??まだART-SCHOOLに触れたことない方、とりあえずこの2枚のアルバムでART-SCHOOLの今と昔に触れることをお勧めします。
評価:
「Ghosts&Angles」★★★★★
「ILLMATIC BABY」★★★★
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