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2008年9月26日 (金)

言葉の重さが響きます。

Title:戦場カメラマンの唄~鴨志田穣・西原理恵子ラストコラボレーション

鴨志田穣・西原理恵子ラストコラボレーション 戦場カメラマンの唄

西原理恵子という人気漫画家がいます。

破天荒な体当たりエッセイ的な漫画と、叙情的なストーリーを両立させる、おそらく日本でも唯一の漫画家で、「恨ミシュラン」や「ぼくんち」などの漫画をヒットさせています。最近では、毎日新聞に連載されている「毎日かあさん」が話題になったりしているので、名前はご存知の方も多いかと思います。

で、その旦那さん(だった)のが鴨ちゃんこと鴨志田穣氏。もともと戦場カメラマンとして活躍しており、西原理恵子との結婚後は、数々のエッセイ集や小説も手がけています。しかし、戦場カメラマンとして過酷な現実に直撃するうちに、アルコール依存症にかかり、その後、アルコール依存症は克服するものの、ガンをわずらい、昨年、42歳の若さでこの世を去りました。

そんな鴨ちゃんが、生前に残した詩に、ミュージシャンたちがメロディーをつけてリリースしたのが今回のこの作品です。CDブックの仕様となっていて、西原理恵子がイラスト&漫画を描いていて、鴨ちゃんに縁の深い人々や、この企画に参加したミュージシャンがコラムをよせています。

で、今回、このアルバムを聴いたのは、もちろん私自身が西原理恵子の熱烈なファンだから、というのが一番の理由だったりします(笑)。

さて、ここ数日で取り上げたソウルフラワーユニオンや、ONE DAY AS A LIONも、戦争に対して強烈なアンチのメッセージを送っています。しかし、リアルに戦場を見てきた鴨志田穣氏の書く歌詞は、誰の歌詞よりもリアリティーがあり、かつ重みがあります。

表題曲の「戦場カメラマンの唄」では、戦場で起こった現実をストレートに描写した後に

「知らなくていいんだ
見なくていいんだ
感じなくていいんだ
そのために撮るんだ」

(「戦場カメラマンの唄」より 作詞 鴨志田穣)

と締めくくります。あまりにリアリティーのある表現と、そして彼がなにより、戦場カメラマンという仕事に感じていた重みに、心が締め付けられます。

また、「苦しくなる」はアルコール依存症の現状を描く、こちらもユーモアを交えながらも、その実、重いナンバー。そして一転、子供たちへの愛情たっぷりな歌詞を親の視点で書いた「おおきくなあれ」「夢を追って」は、とても心が暖まる歌詞に仕上がっています。

そして妻(だった)西原理恵子への惜しみない愛情を歌った「大切な人」は、聴いていて恥ずかしくなるほどの最上級のラブソング。西原理恵子の漫画でも、二人の愛情はよくわかるものの、どこかぼかしたりちゃかしたりして書いているだけ(この歌詞のイラストでも、西原は舌を出しておどけてますしね)に、あまりに具体的な内容にもちょっとドギマギしちゃいます。

どれもあまりに私的な表現が強く、それだけにリアリティーがあり、ひとつひとつの言葉に重みを感じました。

そんな歌詞と対照的に、歌やアレンジは、特段の特徴もなく、あっさりテイストだったかも。ただ、それは、この歌詞を生かそうとした結果の選択だったのかもしれません。シアターブルックやおおはた雄一など豪華メンバーが参加しているだけに、どの曲もしっかりとしたメロディーとアレンジで、この歌詞をしっかりと受け止めています。そういう意味では、曲としては主張は薄めながらも、この鴨ちゃんの歌詞を生かすには、ちょうどよいバランスだったのかもしれません。

正直、鴨ちゃんと西原理恵子については、どーしても、既存のサイバラの漫画などを読んでいるかどうかで、この作品の印象がかなり変わるような感じがします。そういう意味で、個人的にはかなり気に入りましたが、サイバラのファンじゃない人に受け入れられるかどうかは少々微妙。そういう意味では、個人的には、このCDを聴く前に、「毎日かあさん」を読んでみることをお勧めします。サイバラの作品の中では、比較的癖が薄めですし、また、鴨ちゃんと西原理恵子や子供たちの関係もよくわかる作品なので・・・。

評価:★★★★

毎日かあさん カニ母編 Book 毎日かあさん カニ母編

著者:西原 理恵子
販売元:毎日新聞社
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