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2008年9月16日 (火)

ポップスの新たな可能性

Title:Re:Package
Musician:livetune feat.初音ミク

Re:Package(初回限定盤)

ちょっと普段とは色合いの違うアルバムなのですが、気になるアルバムだったので聴いてみました。

なにが気になったか、というと、このアルバム、「初音ミク」という音声合成ソフトを全面的に使用したアルバムである、ということ。音声合成ソフト自体は、例えばRADIOHEADのアルバム「OK Computer」の中の「FITTER,HAPPIER」で使われているように、CDに使われた前例はいろいろあるでしょう。ただ、ボーカルのかわりとして、全面的に使用された例は、メジャーレーベル発売のCDとしては、ひょっとしたらこれがはじめてではないでしょうか。

また、livetuneというミュージシャンは、「同人音楽」というジャンルから出てきたミュージシャン。おたく系、アキバ系の流れから出てきた音楽ムーブメントで、少々内輪受け的な部分が否めないにしろ、興味深い流れだと思います。

実際、このアルバムにしても、テクノやエレクトロニカ、テクノポップなどの要素を上手くミックスし取り込んでいて、メジャー盤なので当たり前なのですが、プロとして十分なレベルに達しています。初音ミクのアニメ声からくる一種のおたくっぽささえ気にならなければ、テクノリスナーでも十分傾聴の値のあるアルバムだと思います。

そういう評価を前提として・・・

ただし、本作を音楽的な側面だけで評価するのなら、「ポップで聴きやすく、テンポのよいリズムは心地いいんだけども、個性があまり感じられない平凡な作品」になってしまいます。特に音の使い方に独創性が感じられず、これでもかと音を詰め込んでいるので、その音の壁が心地よい一方で、聴いていて、飽きが来るのも早くなってしまっています。もうちょっと緩急をつけた方がおもしろいと思うんですけどね。

以上、音楽の部分での評価。

以下、「初音ミク」の話。

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「初音ミク」は、おそらくネットをやっている方にはおなじみの音声合成ソフト。ソフトによって、人工的に歌を歌わせることができるソフトなのですが、これは、ひょっとしたら新たなポピュラーミュージックの可能性を広げることになるのではないでしょうか。

というのも、演奏の部分はいままでも機械によって表現することが可能でした。しかし、ボーカルに関しては、サンプリング等の技法はもちいることは出来ても、どうしても基本的には誰かが歌う必要性がありました。

しかし、このソフトを使用することにより、ボーカル曲も含めて、本人が歌わなくても、ひとりで楽曲を完成することが可能になったわけです。これにより、宅録のミュージシャンの幅がグッと広がったのではないでしょうか。音声合成ソフトの進化によって、今後の音楽シーンに、新たな可能性が産み出された・・・少々言いすぎかもしれませんが、それだけすごい事実なのかもしれません。

残念ながら現状では、上記のようなアニメキャラが用いていたり、ボーカルがアニメ声だったりと、一般受けしずらいソフトではあるかと思うのですが、これがもっと一般受けするようなソフトが誕生すれば、この音声合成ソフトを利用するミュージシャンが一気に増えるかもしれません→Gacktが参加したソフトとか出てきているみたいなので、この手のソフトが増えれば、もっと音声合成ソフトを使ったCDも増えてくるかもしれないですね。

最後に。

さて、「初音ミク」ははたして人間のボーカリストにとってかわるかどうか、という話。Wikipediaでも「歌手の存在を脅かすのではないか」として、協力を拒否された旨の記述があるのですが、この手の音声合成ソフトが人間のボーカリストにとってかわることは、いくら技術がすすんでも、絶対にありえません。

いや、もし、そういうことが起き得るのなら、既に機械によって代替できる生バンドなんて、とっくになくなっているはずですしね。

なぜか。単純な話。ボーカルというのは、決して楽譜通り歌を歌えばいいわけではありません。音楽を自分なりに解釈して自分の感情を歌に加えるからこそ、歌というのは私たちに感動をもたらすのです。下手くそなボーカリストでも、人間である以上、全く歌に感情がこもっていない、というのはまずありえません。一方で、音声合成ソフトは、どうしても感動の部分は表現できません。実際、このアルバムの「椛」などは、かなり本物の人間の声に近く感じられます。しかし、感情が全くこもっていないために、技術としては感動しても、決して心に響くような歌声ではありません。

だからこそ、例えばドラえもんのような感情をもったロボットがあらわれない限り、人間のボーカリストが音声合成ソフトにとってかわらえることはありえないのです。

以上より。

評価は音声合成ソフトを使用し、ポピュラーミュージックの今後の可能性を感じさせるアルバムという点を考慮して。純粋に楽曲だけの評価なら、残念ながら★★★といった感じで、もうひとつふたつ、乗り越えるべき壁があるかも。ただ、いろいろな観点から、今後のミュージックシーンにおいて意味のあるアルバムだと思います。

評価:★★★★

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コメント

こんばんは

>感情をこめる
パラメータを操作してこめればいいんですよ><;
と言っても篭めきれないという話なんだと思いますが現在の技術でも操作の上手い人だと↓程度にはできるみたいです
http://www.youtube.com/watch?v=dXodOBCCMVg
http://www.youtube.com/watch?v=-hZNtYfErfE
http://www.youtube.com/watch?v=o4BWG_-H-mk

投稿: | 2009年9月22日 (火) 20時41分

追記
http://www.youtube.com/watch?v=LXonWCiFSCI
今度「初音ミク」の追加ライブラリとして声の幅を広げるという手法があるらしいですが
開発中のデモソングも貼っておきます

投稿: | 2009年9月22日 (火) 21時50分

You Tubeの作品、聴いてみました。
確かに、かなりの出来ですね。CD収録曲よりも、「人間」の声に近い印象があり、まだまだ技術として伸びしろを感じさせます。
ただ、それでもやはり微妙な感情のヒダみたいなのを表現するのは厳しいなぁ、と思います。それはパラメーターとかそういう話とは違うので・・・。
それだけに、初音ミクは「生」の歌声では表現できないような表現方法を模索してほしいなぁ、とも思います。とりあえず、このジャンルの今後の発展に期待したいところですね。

投稿: ゆういち | 2009年9月24日 (木) 00時22分

たしかにボーカロイドでいくら人間のまねしても生歌の味わいは出ませんよね。
ライブにも行けないしw

個人的にはガクトの声のボーカロイドが
カバーしたロマンポルシェの「全裸で描いたラブレター」が面白かったです。
なんというか本人が絶対歌わなそうな曲なので(笑)

関係ないですがGジャンという人がカバーしたアニメソングをトムヨーク風にアレンジしたのが結構良かったと思います。

Gジャン アレンジまとめ
http://www.nicovideo.jp/watch/sm7822455

失礼しました―。

投稿: ちゃめ | 2009年9月26日 (土) 07時59分

>ちゃめさん
>ガクトの声のボーカロイドが
カバーしたロマンポルシェの「全裸で描いたラブレター」

わぁ、それすごくおもしろそうです(笑)。かつ上手い組み合わせですね。こういうユーモアセンスの効いた楽曲、楽しそうですよね~。
Gジャンのアレンジもちょっとおもしろそうですね。ただ、ニコニコ動画はアカウントとっていないので見れないのですが(^^;;ちょっと聴いてみたいです。
情報ありがとうございました~。

投稿: ゆういち | 2009年10月 1日 (木) 00時37分

全裸で描いたラブレターはこれですね
http://b.hatena.ne.jp/entry/www.nicovideo.jp/watch/sm5081266
Gジャンアレンジはこっちです
http://b.hatena.ne.jp/entry/www.nicovideo.jp/watch/sm7822455

変り種をひとつ貼っておきます
こどもっぽい歌声を出させております
http://b.hatena.ne.jp/entry/www.nicovideo.jp/watch/sm7188752

動画下 右端のふきだしでコメントは消せます

投稿: | 2009年10月20日 (火) 21時24分

おお!ありがとうございます~。
さっそく「全裸で描いた~」を聴いて大爆笑してしまいました(笑)。
こういう使い方から、新しい可能性が産まれてこればおもしろいですよね。
他の作品も、あとでゆっくり聴いてみます~♪

投稿: ゆういち | 2009年10月21日 (水) 00時49分

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