なぜ安室奈美恵人気は復活したのか?
Title:BEST FICTION
Musician:安室奈美恵
最近、安室奈美恵の人気が、急上昇しています。
安室奈美恵といえば、90年代後半、小室系の代表的ミュージシャンとして爆発的な人気を誇っていました。しかし、その後、小室系の凋落に伴い、人気は下降線。小室哲哉プロデュースからは離れた後は、一応はベスト10ヒットは続けていたものの、同じavexの浜崎あゆみらの影にかくれたような状況になり、一時期の人気は見る影もなくなりました。
しかし、ここ最近、人気は再び急上昇。今年3月にリリースした「60s70s80s」は、なんと10年ぶり(!)にシングルチャートで1位を獲得。そして、その後リリースされたこのベストアルバムは、チャートで(現時点まで)3週連続の1位を獲得し、なんと、ミリオンセールスを記録しています!
ここに来て、人気が再び上昇してきている彼女。では、なぜ彼女に再び注目が集まるようになったのでしょうか?
まずひとつは、純粋に曲の良さだと思います。本作では、小室哲哉の手を完全に離れ、セルフプロデュースなども手がけるようになった「Wish On The Same Star」から、「60s70s80s」までの作品を発売順に並べていますが、どの曲も本格的で、かつ、アメリカの流行をいち早く取り入れたR&Bの曲が並んでます。それを、もともと小室系の時代から定評のあった、パワフルな彼女の歌唱力で歌い上げるわけですから、カッコいいに決まっています。
SUITE CHICとしての活動あたりから、音楽ファン近辺からの注目も集めるようになってきている彼女ですが、そんな評判が徐々に広がり、再び幅広い層の人気を得るようになったのではないでしょうか。
また、もうひとつの理由が、このベストアルバムのタイトルに隠されているのではないでしょうか。
このアルバムのタイトル「BEST FICTION」というのは、「最高の作り物」という意味だそうで、小室時代は彼女の年くらいの女性の姿をそのまま曲にしていたノンフィクションだったのに対して、最近の曲は、彼女の思い描く女性の理想像を曲にしているそうで、そういう意味で、「最高の作り物」=「BEST FICTION」というのをアルバムのタイトルに採用したそうです。
しかし、ここ最近、以前のような「等身大の自分」を描いたいわば「素人っぽさ」を表に出した作品よりも、彼女の言うような「作り物」を描いた「プロっぽさ」を表に出した作品の方が受け入れられている印象を受けます。
例えば最近話題のPerfumeなんかが典型例なのではないでしょうか。浜崎あゆみやモーニング娘。のような、等身大の自分を表現したり、素人っぽさを表に出したりするミュージシャンよりも、Perfumeや安室奈美恵のような、徹底的に作りこまれた作品を、プロとして勝負するミュージシャンが今、受け入れられている、そういう印象を受けます。
今、再び人気が出てきた彼女。その理由を探るためにはもってつけのベストアルバムです。いろいろと理屈っぽく彼女の人気復活について語ってきましたが、このアルバムを聴けば、次から次へと繰り広げられる、カッコいいR&Bの連続に、人気の秘密が否応なしにわかるのではないでしょうか。本格派R&Bのアルバムとして、間違いなくお勧めのベスト盤です。
評価:★★★★★
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