現ちゃんに捧げる1枚
Title:カッシーニ
Musician:元ちとせ
妊娠・出産を経て、久々にリリースされた元ちとせのニューアルバム。
元ちとせといえば、今年はじめ、ショッキングなニュースが飛び込んできました。
上田現 急逝
元ちとせの名を世に知らしめた「ワダツミの木」を産み出し、その後も元ちとせの音楽活動にとってなくてはならない存在だった彼の突然の訃報。言うまでもなく、彼女にとってあまりにもショッキングな出来事だったと思われます。
その後発売された今回の作品。そのタイトル曲ともなっている「カッシーニ」が、上田現が元ちとせに書いた最期の曲となってしまいました。
そんなある種のターニングポイントとなっている今回のアルバムは、意識したのかしていないのか、まるで上田現に捧げるような内容になっていました。
例えばタイトルそのものずばり「あなたがここにいてほしい」(ピンク・フロイドの曲を意識したのでしょうか?)という曲が収録されていたりしますし、ラストの「空に咲く花」については
「空にも花が咲いたらいいな
君のあかるい その笑顔を
いつでも思い出してほしいよ
悲しみの中でも」
(「空に咲く花」より 作詞 丸山陽子)
と、まるで上田現に捧げるレクイエムのような楽曲になっています。この曲、原爆をテーマとしたNHKドラマの主題歌で、かつ作詞は一般公募によるものなので、おそらく、現ちゃんのことは全く意識していないものと思われるのですが、それでも、このアルバムのラストを飾るにはふさわしい曲になっていました。
また、この作品、菅野よう子やスキマスイッチの常田真太郎、COILの岡本定義、さらには坂本龍一など豪華なミュージシャンたちが参加していることでも話題となっています。
しかし、それら多様なミュージシャンの曲が、彼女のビブラートをきかせて歌う、包容力のある歌声で統一されることにより、全体として統一感のあるアルバムにしっかりと仕上がっていました。
全体としては、幻想的作風の「恵みの雨」や、ヨーロッパの民謡をほうふつとさせる「虹が生まれる国」などの作品はあったものの、元ちとせらしい、奄美系の民謡風をエッセンスとして加えた、エスニックな作風の曲がメイン。少々似たタイプの曲も目立つのですが、最後まで飽きないのは、彼女のボーカルの力によるところが大きいのでしょう。
おそらく今後、新たな一歩を踏み出していく彼女にとって、とても意味のある作品となったであろう本作。しかし、今後も次々と名曲を歌い続けていくだろう、ということを確信させてくれる作品に仕上がっていました。
評価:★★★★★
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