原田郁子という素材を多彩に使用
Title:ケモノと魔法
Musician:原田郁子
クラムボン原田郁子のソロ2作目。
本作は、その楽曲の方向性が前半と後半で大きくわかれていました。
前半は、実験的な作風が特徴的な内容。ポストロック色が強く、フォーキーなメロディーと、アコースティックなサウンドが主眼におかれていて、いわば「アシッドフォーク」といった感じでしょうか。
冒頭の「青い闇をまっさかさまにおちてゆく流れ星を知っている」では、当初、アコースティックギターメインの静かなサウンドからスタートするのですが、中盤以降、サックスやギター、チェロ、クラリネットなど様々な音が交わり、サイケデリックな雰囲気に変化していきます。
また、その後も「ピアノ」では、タイトルさながらピアノのみをバックに用いた曲なのですが、ピアノが奏でる音は高音域のみで、不思議な感覚を覚える曲になっていますし、
「あいのこども」では、サウンド全体にリヴァーヴがかかり、荘厳な雰囲気に仕上がっていましたし、
また、「感嘆符と溜め息」では、ピアノのインストながらも、現代音楽のような楽曲に仕上がっていたりと、いずれも実験色が強く、また、原田郁子のボーカルも、あくまでも楽器のひとつのように、扱われていました。
しかし、この雰囲気が後半からガラッと変わりました。
「やわらかくてきもちいい風」以降の楽曲は、基本的にシンプルなギターやピアノの弾き語り+原田郁子がやさしく歌う、素直なポップソング。ここらへんは、最近の実験色が強い作品よりも、昔のポップバンドとしてのクラムボンが好きなファンには納得の作品ではないでしょうか。
後半の曲は、どれもとても優しい雰囲気の曲ばかりで、万人が楽しめるポップスといえるかもしれません。ボーカリストとしての原田郁子を、存分に発揮していた楽曲ばかりでした。
そんな訳で、原田郁子というミュージシャンの、様々な側面を聴くことができるソロアルバムでした。ただ、個人的には、後半みたいなポップな曲がもうちょっと多かったほうがよかったかも(もっといえば、弾き語りだけじゃなくて、バンド形式の曲も・・・)。
もっとも、もっと言えば、そろそろクラムボンの新曲を・・・。
評価:★★★★
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