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2008年8月

2008年8月31日 (日)

体育会系ノリのシンガーだと思いきや

Title:HB
Musican:九州男

HB

九州は長崎出身のレゲエシンガー。「九州男」と書いて「くすお」と読む・・・

と、いかにも「いまどきのレゲエシンガー」風なベタな雰囲気をかもし出しているシンガーで、先行シングルとなった「1/6000000000」が、ベタな純愛ソングだった点や、「九州男」というそのまんまなミュージシャン名から感じる、過剰な郷土愛を表に出している点から、例えば湘南乃風のような、少々保守的な、体育会気質のシンガー像をイメージしていました。

しかし、実際には、純情なラヴソングも、そのシングル「1/6000000000」や「music♪」が目立つ程度。「少年⇒爾来~やっと見つけた明日~」では、

「時は経ち、テレビの前でアクビしながらケツをかく
自覚がないゲームオタクになってた 繰り返すゲームオーバー
また無駄に1日が終わる
親は真剣に何か見つけろと言うけどそいつは無神経
そりゃ見つけられるのなら見つけてるさ
こう見えても苦しんでるんだ」

(「少年⇒爾来~やっと見つけた明日~」より 作詞 九州男)

なんて描写は、まるっきりニートのゲームオタクそのもの(笑)。体育会系の「た」の字も見えません。

他にも、「WORLD」では、社会派な歌詞を聴かせたり、等身大の、ダメ人間になった「今」を描いた「裸足」など、ただ純愛を売りにするような、いまどきの売れ線シンガーとは一線を画したような部分が多分に見受けられます。

また、レゲエにしても、レゲエ独特のビートみたいなものはさほど強くなく、全体的には、ポップでとても聴きやすいサウンドとメロディーに仕上がっています。レピッシュの杉本恭一と組んだ曲もあるなど、様々なミュージシャンとの積極的なコラボレートも好印象。売れている理由も十分に納得のできるアルバムでした。

評価:★★★★

<追記>

ミュージシャン名、「くお」ではなく「くお」が正しいみたいですね。修正しました。申し訳ありませんでした。

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2008年8月30日 (土)

ほのかな南国テイストがよい

Title:THE ACTION
Musician:YOUR SONG IS GOOD

THE ACTION

軽快なホーンセッションを取り込んだバンドサウンドに、軽快なテンポ、そしてポップなメロディーラインがとても心地よいアルバム。

基本的には、中南米系の音楽の影響を感じるバンドで、「ENJOY and JOY」では、スカの影響を強く感じ、タイトルそのまんまな「1-2-3-4! Calypso!」や、ラストの「THE HEY!」では、カリプソからの影響を強く感じさせます。

ただ、それ以上に影響を感じるのがパンクや90年代のオルタナ系ロックからの影響で、「A MAN FROM THE NEW TOWN」など、パンキッシュで、かつダンサナブルなテンポが魅力的な作品に仕上がっています。

他にも軽快なキーボードの音が魅力的な「THE CATCHER IN THE MUSIC」など、ニューウェーヴの影響を感じる曲があったり、パンクやオルタナ系をベースに、スカ、カリプソの要素を強く取り込みながらも、踊れてポップで楽しければなんでもあり、という姿勢が感じられるアルバムになっていました。

音楽の楽しさを素直に感じられる、とても楽しいアルバムでした。

評価:★★★★★

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2008年8月29日 (金)

日本語ロックの世界を切り開く

日本語でロックをする、70年代には、その是か非かで、論争すら起こったこの議題ですが、2000年代を生きる私たちは、日本語でロックする、というのを当たり前のものと捉えて音楽を聴いています。

しかし、そんな中、日本語でロックをする意味をあらためて問い直しているバンドが、90年代あたりから増加しているように憶えます。例えば、そのひとつの形として、「歌謡ロック」というスタイルを確立しているのがクレイジーケンバンドでしょうか。そして、もうひとつ、エモコアというジャンルにおいて、あくまでも日本語で歌を綴ることにこだわっているバンドが、今日紹介するeastern youthです。

今回取り上げるアルバムは、そんな彼らが2枚同時に発売したベストアルバム。

タイトルはそれぞれ、発表する時期にあわせて

「1996-2001」

1996-2001

そして

「2001-2006」

2001-2006

の2枚です。

この2枚のベストで、eastern youthというバンドを知ることが出来るわけですが、彼らの歌詞の中には、英語はもちろんのこと、カタカナ英語も皆無。徹底的に日本語にこだわった歌詞に、どこか哀愁のあるハードコアのサウンドをのせてきています。

ただ、日本語といっても、彼らの表現は、和語というよりも、むしろ漢詩的な表現が多く、言葉の使い方には和風のやわらかさというよりも、むしろ漢語的な鋭さ、堅さを感じます。

しかし一方で、彼らの描く歌詞の描写は、郷愁が漂い、詩的。「青すぎる空」「浮雲」「秋風と野郎達」のように、歌詞の世界を描くのに、その風景や空気感、気候などを織り込むことによって、より具体性を持たせようとしています。

また、今回、この2枚のアルバムを続けて聴けば、「2001-2006」の作品の歌詞が、「1996-2001」に比べると、非常にわかりやすくなっていることに気がつくでしょう。

「1996-2001」の頃の作品が、文学的で、ある種表現が難解。具体的な主張を読み解くより先に、雰囲気を楽しむような作品が多いのに対して、「2001-2006」の作品は、歌詞が具体的になり、表現も容易に。主張もわかりやすくなっています。

このわかりやすさゆえに、一時期、ポップになった、といった主張が聞かれたことがあったように記憶します。確かに、ここらへんの方向性は、賛否わかれそうな感じもします。ただ、あくまでも日本語にこだわるスタイルと、現実を踏みしめて、次の一歩を進みだそうという彼らの主張は、どちらのアルバムでも共通しており、根っこの部分はかわっていないんだなぁ、ということは、歌詞を読み解けば容易に理解できるかと思います。

そんな日本語ロックの可能性を切り開いていく彼ら。多くのミュージシャンからもリスペクトを集めているのは当然といえるでしょう。

ただ、その上で少々気になったのが、バンドサウンドが少々ワンパターン気味ではないか、という点。曲によって緩急をつけたり、他のジャンルの音を取り入れたりすることなく、ひたすら轟音のハードコア路線を突き進んでいます。

まあ、この愚直なまでのハードコアサウンドに対する信念も、彼ららしいといえば彼ららしいのですが、ここ最近、人気が頭打ち気味なのは、ここらへんに理由があるのかなぁ、とも思ったり思わなかったり。

もっともその点を差し引いても、このアルバムから伝わってくる情熱、パワーは素晴しいものがあります。まさにこれぞ日本語のロックといえる彼らの世界を、この2枚のベストで、是非体感してみてください。

評価:★★★★★

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2008年8月28日 (木)

ライブはカッコよさそうだな。

Title:picnic
Musician:THE NOVEMBERS

picnic

おもしろいバンドだなぁ、そうは感じました。

「こわれる」「Arlequin」と、轟音と絶叫が鳴り響く緊迫感あるナンバーが続くかと思えば、「アマレット」では一転、バラードを歌い上げ、続く「ewe」「僕らの悲鳴」ではポップなメロディーが楽しめる・・・轟音系のガレージパンクバンドという軸足がありながらも、しっかりとしたポピュラリティーを土台に持った多彩な音楽性を持っているバンドなのは間違いないでしょう。

ただね、多いんだよね、この手のバンド。

ミッシェルやモーサムあたりは言うまでもなく、様々なガレージパンクバンドが活躍していますし、消えていったバンドも多くあります。

それだけに、このタイプのバンドは、圧倒的な個性か、他に有無を言わさない、圧倒的な音の迫力が必要となります。それでも、なかなかブレイクとなると厳しい。圧倒的な音の迫力を持ったモーサムでも、いまひとつブレイクしきれていないのが現状です。

その観点で考えると、THE NOVEMBERS、少なくともCDで聴く限りでは、格段の個性を持っているとも思えませんでしたし、音も、他を圧巻するほどずば抜けているとも思えませんでした。

これで、ライブで見たら、また見方がかわるのかもしれないのですが・・・。

今後の成長次第という感じがするのですが、少なくとも現段階では、あまたいるインディーバンドの一組、という程度に過ぎない、それが率直な感想です。

評価:★★★

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2008年8月27日 (水)

メタル人気再燃か??

タイトルの話はアルバムチャートで。

今週のシングルチャート
http://www.oricon.co.jp/rank/js/w/

今週のシングルチャート1位は「truth」が獲得。初動46万枚で、初動売上としては、今年1番の記録だそうです。

この手のアイドルの初動記録としては、固定ファンのみでほぼ横ばい・・・という印象が強いのですが、前作「One Love」の初動31万枚から、一気に15万枚もあげてきました。前作「One Love」も今週9位にランクインし、ジャニーズ系としては珍しくロングヒットの兆しをみせていて、強い人気のほどをうかがわせます。ただ、初回盤2通りに通常盤という、あいかわらずの底上げ商法はなんとも。

しかし、嵐といえば、例の大麻騒動で話題になったばかり。メディアのあいかわらずのスルーっぷりはなんとも。正直、こういうのにほとんど無批判なファンもいかがなものかと思うけど、メインとなるファン層が中高生じゃ仕方ないのかなぁ。ジャニーズ系に関しては、それなりにしっかりとした曲を作ってくるので、正直、アイドル歌手としては決して嫌いというわけじゃないけど、こういう話が出るにつれ、なんだかなぁ、と思ってしまいます。

嵐に続くベスト3は、今週は総入れ替え。2位ポルノグラフィティ「ギフト」に3位May'n「ライオン」。ポルノグラフィティは最近、爆発的な大ヒットこそないのですが、根強い人気ですね。May'nはここのコーナーではすっかりおなじみのテレビアニメ「マクロスF」の主題歌。こちらも根強い人気です。

初登場はもう1曲。6位のBuono!「ガチンコで行こう」。ハロプロ系アイドルなのですが、こちらも根強いですね。


今週のアルバムチャート
http://www.oricon.co.jp/rank/ja/

今週1位は・・・なんと、これで4週連続1位です。安室奈美恵「BEST FICTION」が1位を獲得しました。確かにちょうどお盆シーズンで、大物の新譜の発売がない時期とはいえ、この記録はすごい。120万枚を突破する目前だそうで、この勢いはしばらく止まらなさそう。

さて、今週のアルバムチャート、5枚の初登場があったのですが、うち3枚がヘヴィーメタル系(1枚は微妙だけど・・・)というチャートになりました。アメリカでは、最近、ヘヴィーメタルの人気が再燃している、という話を聴いたことがあるのですが、日本でも、「LOUDPARK」が盛り上がりをみせたり、ヘヴィーメタル人気が再燃するの・・・かも?

2位がスリップノット「オール・ホープ・イズ・ゴーン」で、一時は安室を抜いたとかで、大きな盛り上がりを見せています。ヘヴィーメタル方面だけではなく、オルタナ系リスナーにも人気のあるバンドなだけに、まだまだ人気は上昇しそう。

そして9位にはドラゴンフォース「ウルトラ・ビートタウン」がランクイン。イギリスのバンドだそうで、日本でも根強い人気を見せています。

で、その中に入れていいのか微妙なのが(笑)4位デトロイト・メタル・シティ「魔法遊戯」。このサイトでも何度か取り上げている人気漫画「デトロイト・メタル・シティ」が実写映画化。その映画に連動して実際にリリースされちゃった企画モノです。DMCは、メタルファンには評判が芳しくないみたいなのですが、でも、これはこれでヘヴィーメタルに注目が集まっている証拠(良くも悪くも)だと思うのですが。

他に今週4位にはオムニバス盤「クライマックス ロマンティック・ソングス」がランクインしています。これは、90年代のヒット曲を収録したオムニバス盤で、先日はドラマ主題歌を集めたバージョンがヒットしましたが、それに続くアルバム。個人的には思いっきりど真ん中に懐かしさを感じるセレクトなのですが、こういうのがリリースされると自分も歳をとったなぁ、と複雑な気分になります(苦笑)。

そして最後、10位にランクインしてきたのがSOFFetのベストアルバム「SOFFet BEST ALBUM~ALL SINGLES COLLECTION~」でした。mihimaruGTと組んでリリースしたシングルがスマッシュヒットを記録したのですが、ベストアルバムが、なんとベスト10入り。SOFFetって、デビュー当初から、「ブレイク最右翼」的な扱いをされていたのですが、ここにきて、ついにブレイクか???

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2008年8月26日 (火)

貴重な音源集

Title:細野晴臣アーカイヴスvol.1
Musician:細野晴臣

細野晴臣 アーカイヴス vol.1

細野晴臣が、テレビ番組などに提供した貴重な楽曲をまとめた音源集。

ただ、「ある種の目的を持った音源」を集めた作品なのですが、どの音源も、なにげにしっかり細野晴臣の興味のある分野の音を作り出しているんですよね。

基本的にアンビエントやエレクトロニカの作品がメインとなっていて、楽曲だけ聴いているだけでは、どの曲が、どんな番組でつかわれていたのか、想像が難しいです(笑)。

あえていえば、東洋風の「Roochoo Divine」が琉球王国をテーマとした音楽劇「万国津梁」につかわれた、という点や、「Amazing Grace」を織り込んだ「Tragic Suite Of Titanic」がタイトル通り「タイタニック・エキシビジョン」で使われたという点が容易に想像できるくらいでしょうか。

ただ、他の曲も、提供されたイベント、テレビ番組などの中で聴けば、ピッタリとマッチするのでしょうか?それにしても、楽曲の自由度、実験精神から、そんなテーマは横に置いて、彼の興味のある音楽を自由に制作したのでは?と感じてしまうようなアルバムでした。

評価:★★★★

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2008年8月25日 (月)

職人技

Title:ギャルソン
Musician:COIL

ギャルソン

最近、ミュージシャンへの楽曲提供や、福耳への参加などではその名前を耳にするのですが、単独でのCDリリースなどが途絶えてしまっていた彼ら。今後、どうするんだろう、と心配していたのですが、久しぶりにCOIL名義でのアルバムがリリースされました。

女性ミュージシャンへの楽曲提供曲を集めたセルフカバーアルバムである本作は、タイトル

「ギャルソン」

・・・そのままですね(^^;;まあ、それもまたCOILらしいということで。

しかし、いまさらなのですが、COILというミュージシャンはポップス職人という称号がふさわしいなぁ、ということを、このセルフカバーアルバムを聴いて、より強く感じました。

ここに収録されている曲は、いずれも完成度が高く、非常に隙のないポップス。それも、提供するミュージシャンにあわせて、ロック、ポップスから、民謡の要素を入れてきたり、ニューウェーヴの要素を入れてきたりと自由自在。さらに、どの曲も、COILというミュージシャンの個性をあまり感じさせません。

「個性を感じさせない」というのは、ミュージシャンとしてはマイナス点なのですが、他人への楽曲提供曲に関しては、大きなプラス要素となるのは言うまでもないでしょう。これだけの作品群を聴き、かつ、残念ながらCOILとしてはいまひとつブレイクしきれていない現状を考えると、COILって、どちらかというと、職業作家のような位置付けが天職なのかもしれないなぁ、なんて思ってしまいます。

とはいえ、そろそろCOILとしての新作も聴きたい今日このごろ。なにげにオリジナルアルバムは3年のインターバルがあいているんですよね。次は純然たるオリジナルアルバムを期待したいところです。

評価:★★★★


ほかに聴いたアルバム

よすが/渚にて

現代流のフォークソング+シティーポップ。あまりにも静かで、淡々と流れるポップス。聴いていて心地がいいが、少々、内向きすぎるような感じもするなぁ。

評価:★★★★

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2008年8月24日 (日)

3枚組フルボリュームのオールタイムシングルベスト

Title:歌うたい15 SINGLES BEST 1993~2007
Musician:斉藤和義

『歌うたい15』SINGLES BEST 1993~2007

この作品に収録されているせっちゃんのシングルのうち、なんといっても大好きな作品なのが「アゲハ」です。

 斉藤和義/アゲハ

20代から30代にかけての、ひとりの女性の自分さがしと成長を、第三者的視点で、描いている本作。その率直な心理描写は多くのリスナーの共感を呼び、なんでも、女性のファンにとっては、No.1人気の曲だとか。その理由もよくわかる気がします。また、おそらく男性にとっても共感を呼ぶ内容ではないでしょうか。なんど聴いても、胸がキュンとなってしまうような傑作だと思います。

「アゲハ」が女性心理をついた傑作ならば、男性心理を素直に歌った傑作が、「真夜中のプール」でしょう。これまた、個人的に大好きな傑作です。

真夜中のプール

こちらは、かつての彼女が結婚した話を聴き、どこか寂しく感じてしまう男性の率直な心境を歌った曲。モトカノに対して決して未練があるわけではなく、「今が好き」と素直に歌っていながらも、ノスタルジックな心境を抱く感覚は、男性なら(女性でも?)共感を呼ぶ内容だと思います。これまた、個人的に、聴いていて、胸がキュンとなってしまいます。

そして、逆にほのぼのとした日常描写がほほえましい傑作が、「やわらかな日」。これもまた、私が大好きな作品です。

やわらかな日

なにげない恋人(夫婦?)の日常のヒトコマを描いて、なにげない日常に幸せを感じさせる曲です。なんでもないことが幸せだ、と声高に叫んでいるわけではないのですが、なにげない日常会話が繰り広げられて、それがとてもほほえましく感じられる曲です。シングルのジャケットともども(笑)、かわいらしい曲といったところでしょうか。

そして、これらの曲に共通して、斉藤和義というミュージシャンの大きな魅力があらわれていると思います。それは、現実に対するゆるやかな肯定という点。例えばデビュー作「僕が見たビートルズはTVの中」でも、ビートルズがいた時代を懐かしみながらも「タイムマシンはない」と、今を受け入れて、生きるべきことを歌っています。

彼の現実に対する肯定は、決して安直な現状容認ではありません。ただ、今の現実をありのままに受け入れて、その上で、次の一歩を進んでいこう、というのが彼の各曲を通じてのメッセージではないでしょうか。まさに、前述の「アゲハ」のラストでこう歌っているように。

「もう許してあげよう 月を見上げた時
あの日見かけたアゲハが肩に舞い降りる」

(「アゲハ」より 作詞 斉藤和義)

また、彼の曲のもうひとつの大きな魅力、それは等身大の自分の素直な感情を歌った曲が多いという点ではないでしょうか。「君の顔が好きだ」なんていうのは素直すぎるにしても(笑)、別れた彼女についてある意味、女々しい感情を吐露する「彼女」や、前述の「真夜中のプール」など、これでもかというほどの素直な感情を歌にしています。

まあ、ストーカー(?)に対する感情をそのまま歌にしてしまった「ポストにマヨネーズ」みたいな曲を作っちゃう(そしてシングルカットしてしまう)ところはすごいとは思うのですが(笑)。

もちろん、言わずもがな、そんな歌詞をうまくのせて歌い上げるポップなメロディーもまた魅力的。ビートルズやボブディランあたりからストレートな影響を感じるポップスは、ひねりこそないものの、歌詞の内容にあわせて、時には激しく、時には優しく、そして時にはブルージーに、歌い上げています。あくまでも歌詞とメロディーが主体の曲づくりをしているだけに、より歌詞の世界がストレートに心に届くのです。

そんな彼の魅力がつまった、3枚組フルボリュームのシングルベスト。まあ、最近は、「黒盤」「白盤」に「紅盤」だの、企画盤が続いていたりして、その上でのベストなだけに、ちょっとリリースしすぎなんじゃないの?なんてことも思ったりするのですが、それを差し引いても余りある、魅力的な作品がつまっています。3枚組なだけに、最初に彼の曲を聴くには、ボリュームありすぎる気もするし、そういう意味では、前述の「黒盤」と「白盤」の方がお勧めかもしれませんが、是非とも聴いてみてほしいベスト盤です。あらためて、斉藤和義の魅力にはまってしまうアルバムでした。

評価:★★★★★

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2008年8月23日 (土)

原田郁子という素材を多彩に使用

Title:ケモノと魔法
Musician:原田郁子

 

ケモノと魔法

クラムボン原田郁子のソロ2作目。

本作は、その楽曲の方向性が前半と後半で大きくわかれていました。

前半は、実験的な作風が特徴的な内容。ポストロック色が強く、フォーキーなメロディーと、アコースティックなサウンドが主眼におかれていて、いわば「アシッドフォーク」といった感じでしょうか。

冒頭の「青い闇をまっさかさまにおちてゆく流れ星を知っている」では、当初、アコースティックギターメインの静かなサウンドからスタートするのですが、中盤以降、サックスやギター、チェロ、クラリネットなど様々な音が交わり、サイケデリックな雰囲気に変化していきます。

また、その後も「ピアノ」では、タイトルさながらピアノのみをバックに用いた曲なのですが、ピアノが奏でる音は高音域のみで、不思議な感覚を覚える曲になっていますし、

「あいのこども」では、サウンド全体にリヴァーヴがかかり、荘厳な雰囲気に仕上がっていましたし、

また、「感嘆符と溜め息」では、ピアノのインストながらも、現代音楽のような楽曲に仕上がっていたりと、いずれも実験色が強く、また、原田郁子のボーカルも、あくまでも楽器のひとつのように、扱われていました。

しかし、この雰囲気が後半からガラッと変わりました。

「やわらかくてきもちいい風」以降の楽曲は、基本的にシンプルなギターやピアノの弾き語り+原田郁子がやさしく歌う、素直なポップソング。ここらへんは、最近の実験色が強い作品よりも、昔のポップバンドとしてのクラムボンが好きなファンには納得の作品ではないでしょうか。

後半の曲は、どれもとても優しい雰囲気の曲ばかりで、万人が楽しめるポップスといえるかもしれません。ボーカリストとしての原田郁子を、存分に発揮していた楽曲ばかりでした。

そんな訳で、原田郁子というミュージシャンの、様々な側面を聴くことができるソロアルバムでした。ただ、個人的には、後半みたいなポップな曲がもうちょっと多かったほうがよかったかも(もっといえば、弾き語りだけじゃなくて、バンド形式の曲も・・・)。

もっとも、もっと言えば、そろそろクラムボンの新曲を・・・。

評価:★★★★

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2008年8月22日 (金)

いい意味で金太郎飴ロック

Title:ELLEGARDEN BEST(1999~2008)
Musician:ELLEGARDEN

ELLEGARDEN BEST(1999~2008)

今年、突然の活動休止を宣言したELLEGARDENが、活動の区切りとしてリリースしたベストアルバム。

ELLEGARDENというと、個人的には、デビュー作「DON'T TRUST ANYONE BUT US」で、イギリスのギターロック直系のバンドというイメージでデビューしたのが、2作目「BRING YOUR BOARD!!」で、メロパンクバンドとして大きくイメージチェンジ・・・というイメージがあり、それだけに、ベスト盤の中で、「DON'T TRUST~」の作品がどのように扱われているのか気になっていたのですが

思いっきり収録されていますね。それも3作も。

また、並べて聴いてみると、「DON'T TRUST~」時代から、思ったほど大きくイメージチェンジしていないんだなぁ、と実感しました。「DON'T TRUST~」、久しぶりに聴いてみると、全然イメージ変わるかもしれないですね。

ただ、それらの作品も含めて、彼らの作品は、やはり似たタイプの曲が並んでいますね。彼らの楽曲は、洋楽からの影響をストレートに感じる、突き抜けた明るさを持った、メロディアスパンク。最初から最後まで、終始勢いのある曲が並んでいます。

ここで「似ている」というとミュージシャンにとっては、ともすればワンパターンというネガティヴイメージに捉えられるかもしれません。ただ、彼らみたいなタイプのパンクバンドは、ある程度、似た曲を並べて、ファンの期待に答えて、ライブを盛り上げることが重要な訳です。そういう意味で、彼らの曲が似ているというのは、ネガティヴというよりも、むしろ大きな強みのように感じられました。

もっとも「似ている」とはいえ、それぞれの曲に個性も感じられ、勢いもあわせて最後まで飽きずに楽しめたアルバムでした。これを最後に活動休止に入ってしまう彼ら。早い段階でまた戻ってきて、また勢いのある名曲を聴かせてくれることを期待したいところです。

評価:★★★★★

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2008年8月21日 (木)

なぜ安室奈美恵人気は復活したのか?

Title:BEST FICTION
Musician:安室奈美恵

BEST FICTION(DVD付)

最近、安室奈美恵の人気が、急上昇しています。

安室奈美恵といえば、90年代後半、小室系の代表的ミュージシャンとして爆発的な人気を誇っていました。しかし、その後、小室系の凋落に伴い、人気は下降線。小室哲哉プロデュースからは離れた後は、一応はベスト10ヒットは続けていたものの、同じavexの浜崎あゆみらの影にかくれたような状況になり、一時期の人気は見る影もなくなりました。

しかし、ここ最近、人気は再び急上昇。今年3月にリリースした「60s70s80s」は、なんと10年ぶり(!)にシングルチャートで1位を獲得。そして、その後リリースされたこのベストアルバムは、チャートで(現時点まで)3週連続の1位を獲得し、なんと、ミリオンセールスを記録しています!

ここに来て、人気が再び上昇してきている彼女。では、なぜ彼女に再び注目が集まるようになったのでしょうか?

まずひとつは、純粋に曲の良さだと思います。本作では、小室哲哉の手を完全に離れ、セルフプロデュースなども手がけるようになった「Wish On The Same Star」から、「60s70s80s」までの作品を発売順に並べていますが、どの曲も本格的で、かつ、アメリカの流行をいち早く取り入れたR&Bの曲が並んでます。それを、もともと小室系の時代から定評のあった、パワフルな彼女の歌唱力で歌い上げるわけですから、カッコいいに決まっています。

SUITE CHICとしての活動あたりから、音楽ファン近辺からの注目も集めるようになってきている彼女ですが、そんな評判が徐々に広がり、再び幅広い層の人気を得るようになったのではないでしょうか。

また、もうひとつの理由が、このベストアルバムのタイトルに隠されているのではないでしょうか。

このアルバムのタイトル「BEST FICTION」というのは、「最高の作り物」という意味だそうで、小室時代は彼女の年くらいの女性の姿をそのまま曲にしていたノンフィクションだったのに対して、最近の曲は、彼女の思い描く女性の理想像を曲にしているそうで、そういう意味で、「最高の作り物」=「BEST FICTION」というのをアルバムのタイトルに採用したそうです。

しかし、ここ最近、以前のような「等身大の自分」を描いたいわば「素人っぽさ」を表に出した作品よりも、彼女の言うような「作り物」を描いた「プロっぽさ」を表に出した作品の方が受け入れられている印象を受けます。

例えば最近話題のPerfumeなんかが典型例なのではないでしょうか。浜崎あゆみやモーニング娘。のような、等身大の自分を表現したり、素人っぽさを表に出したりするミュージシャンよりも、Perfumeや安室奈美恵のような、徹底的に作りこまれた作品を、プロとして勝負するミュージシャンが今、受け入れられている、そういう印象を受けます。

今、再び人気が出てきた彼女。その理由を探るためにはもってつけのベストアルバムです。いろいろと理屈っぽく彼女の人気復活について語ってきましたが、このアルバムを聴けば、次から次へと繰り広げられる、カッコいいR&Bの連続に、人気の秘密が否応なしにわかるのではないでしょうか。本格派R&Bのアルバムとして、間違いなくお勧めのベスト盤です。

評価:★★★★★

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2008年8月20日 (水)

オリンピック真っ盛り

今週のシングルチャート
http://www.oricon.co.jp/rank/js/w/

オリンピック真っ盛り!テレビではオリンピック関連番組が続き、日本勢の活躍も次々と報じられています。そんな中、1位を取ったSMAPも、TBS系のオリンピックテーマソングに起用されています。

ただ、初動で9万枚。どちらかというと、チャートの谷間的な週に上手く入り込んできたという感じで・・・。NHKのオリンピックテーマソングのミスチルの方も、今週は6位にランクダウンしてしまっていますし、オリンピックの話題性と反して、タイアップ曲は少々苦戦気味といったところでしょうか。

4位にFLOWの新曲「WORLD END」がランクインしています。ここ最近のシングルは、最高位を徐々に落として行っていて、正直、「落ち目」気味だったのですが、テレビアニメ「コードギアス」のタイアップを得て、見事復活。ただ、この手のアニメタイアップって、曲にばかり人がついて、ミュージシャン人気に還元されないのが特徴的で、それだけに、今回の一発ヒットも素直に喜べないかも。

今週のチャートにまた見慣れない名前が一組。7位にランクインしたSpontania feat.JUJU「君のすべてに」がそれ。Spontaniaは、男性2人組のHIP HOPユニット。以前はHi-Timezとして活躍していたので、こちらの名前なら聞いたことある方もいるかも。

曲は、女性ボーカルのメロディアスなR&Bのナンバーにラップがミックスされたような曲。青山テルマの「そばにいるね」や童子-Tの「もう一度」とかと似たようなタイプの曲で、この手の曲が最近のヒットの鉄板なんでしょうか?ただ、そうすると、今後、この手の曲が粗製濫造されそうだなぁ・・・。

8位は、これがベスト10初登場となる谷村奈南「If I'm not the one」で、ドラマ「四つの嘘」の主題歌に起用され、ヒットに至りました。谷村奈南って、こんな記事でPRするくらいだから、てっきりグラビア系アイドルかと思ったら、歌手が本職なんですね。なら、こういう売り方だと、違う方面のファンがたくさんつきそうなんですが。

10位初登場GARNET CROW。また「コナン」タイアップかと思ったら、「ゴルゴ13」のテーマ曲ですか。探偵から殺し屋まで、なんでもありだな、ビーイング(笑)。


今週のアルバムチャート
http://www.oricon.co.jp/rank/ja/

アルバムチャート1位は、これで3週連続となる安室奈美恵「BEST FICTION」!今週で、見事ミリオン達成となったわけですが、なんでも、これで彼女は、ソロとしては史上初、10代20代30代の3世代にわたってのミリオン達成だそうです。また、オリコンらしい重箱の隅をつついたような記録ですが(苦笑)、ただ、記録的には純粋にすごい記録といえるでしょう。それも10代20代の頃の作品はともかく、一度人気が落ち目になってからの復活だから、それもそれですごいよなぁ。

落ち目からの復活組といえば、2位の徳永英明もその仲間といってもいいかもしれないですね。彼の全シングルのうち、人気の高いシングルを選曲したシングルベストで、「レイニーブルー」や「壊れかけのRadio」などオーバーサーティーには感涙モノのラインナップとなっています。ただ、初回限定盤が2種類出ていて、それぞれ内容が違うという売り方は、ちょっとあざといと思うんですが。

他には、5位にクレイジーケンバンド「ZERO」が、10位にシド「Side B complete collection」が、それぞれランクインしています。

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2008年8月19日 (火)

企画盤の多さがちょっと気になる

Title:デパナツ~drive!drive!!drive!!!~
Musician:DEPAPEPE

デパナツ~drive!drive!!drive!!!~(初回生産限定盤)(DVD付)

まあ、このタイトルがすべて、なんですけどね。

昨年は4月にインディーズベストを出して、11月にはクラッシックのカバーアルバムを出して。

そして本作は、「夏」をテーマとした曲を集めた企画盤。

・・・ちょっと多くないかいな、この手の企画盤が。

今年の4月にはアルバムもリリースしているので、決して制作に行き詰っているという感じでもなさそうだし、この夏もコンスタントにライブへ出演しているだけに、決して事実上の活動休止状態でもないんですけどね。

確かに、一歩間違えるとイージーリスニング的な扱いを受けそうなミュージシャンだけに、この手の企画盤をリリースしやすいのかもしれませんが。

だとしたら、余計、この手の企画盤は出すべきじゃないと思うんですけどね。実際、このアルバムにしても、夏のドライブにピッタリの曲を選曲した結果、単なるイージーリスニングテイストな、聴きやすい曲が並んでいて、決してDEPAPEPEとしての魅力を伝えているとは思えません。

ま、彼女とのドライブのお供に、なんかで聴くには悪くはないかもしれないですけどね。でも、こんな企画盤で勝負するよりも、素直にオリジナルアルバムで勝負してほしいんだけどなぁ。

評価:★★★

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2008年8月18日 (月)

幻想的な世界観はおもしろいが

Title:灰色とわたし
Musician:湯川潮音

灰色とわたし

西洋のおとぎばなしの世界を思い起こさせるようなファンタジックな雰囲気に、アコースティックなサウンド、そして彼女のウィスパーボイスが特徴的な作品。

フルアルバムとしては、前作という位置付けになる、セルフタイトルの「湯川潮音」では、彼女の作り出した、ファンタジックな世界観と、彼女のウィスパーボイスをうまくむすびつけ、かつ、ポピュラリティーもしっかりと確保した名作に仕上がっていました。

本作に関しても、基本的には、「湯川潮音」の路線を引き継いだ作風に仕上がっていましたが。

が、厳しいことを言ってしまうと本作は、「湯川潮音」の縮小再生産的な仕上がりになっていた、といわざるを得ません。

メロディーにしろサウンドにしろ、ほとんど新たな発見は見受けらませんでした。むしろ、よりベタなポップになってしまった結果、メロディーばかりに主眼が置かれて、彼女のウィスパーボイスを聴かせるという点では、大きく後退してしまったようにも感じてしまいました。

悪く言ってしまうと「普通のポップスアルバムになってしまったなぁ」そう感じてしまう作品でした。

評価:★★★

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2008年8月17日 (日)

これはあざとい・・・

Title:the ジブリ set
Musician:DAISHI DANCE

the ジブリ set

札幌を中心に活躍するハウス系DJ、DAISHI DANCEがリリースした新譜は、あのスタジオジブリの映画で使われておなじみの名曲を、ピアノハウス風にアレンジした企画盤的な作品。ヒットチャートでも上位に食い込んでおり、話題を呼んでいます。

でもさあ。以下、激辛

これはないよなぁ。

はっきりいって、どの曲に関しても、既存の曲のアレンジを、ちょっと変えただけ。大胆にハウス風にアレンジしている訳でも、元曲のイメージをガラリと変えたわけでもありません。多分、BGM的に流して聴いていると、元曲と違うことすら気がつかないのでは?というレベル。

いやね、アルバムとして聴く分には、心地よいことこの上ないです。でも、この心地よさって、原曲を作曲した、久石譲の仕事によるものであって、DAISHI DANCEは、その上にのっかかっているだけ。アルバム全体として、DAISHI DANCEとしての解釈をほとんど感じられませんでした。

なんかさぁ、このアルバムって、ジブリの名前を借りて、DAISHI DANCEという名前を世に売り込みたいだけじゃないの?少なくとも、このアルバムからは、DAISHI DANCEのミュージシャンとしての意思みたいなものをほとんど感じられません。

上にも書いた通り、アルバムとして、BGMとして聴くにはとても心地よいアルバムです。そういう意味でイージーリスニング的にはお勧めできる作品。ただし、DAISHI DANCEというミュージシャンの作品としては、完全に欠陥作だと思います。本当に、一言で言ってしまうと「あざとい」、その言葉があまりにピッタリとする作品でした。

評価:★★

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2008年8月16日 (土)

洋楽に興味をもった方に

このサイトは、最初、邦楽オンリーのサイトとしてスタートしたので、おそらく、読んでくださっている方にも邦楽メインのリスナーが多いかと思います。

そんな普段、邦楽メインで聴いている方が、洋楽も聴いてみようかなぁ、と思った時に、とりあえず、ガイドブック的にお勧めしたいのがこの新書本。

この50枚から始めるロック入門 (中公新書ラクレ 265) Book この50枚から始めるロック入門 (中公新書ラクレ 265)

販売元:中央公論新社
Amazon.co.jpで詳細を確認する

とりあえず、最近、いわゆる名盤ガイドみたいなたぐいの本をいろいろと読んでいるのですが、この本は決して名盤ガイドではありません。

タイトル通り、あくまでも「洋楽のロックを聴いたことない人のための入門書」という位置づけを徹底しています。だから、THE BEACH BOYSも、名盤中の名盤だけれども、少々マニア向けの「PET SOUNDS」を取り上げないで、ポップで聴きやすい「Surfin' U.S.A」を紹介していますし、多分、普通のロック名盤ガイドでは絶対選ばれないような、アヴィリル・ラヴィーンの作品も取り上げたりしています。

また、アルバム紹介の間に、ロック史を簡単に紹介していて、この本を読みながら、紹介されている50枚を聴けば、自然にロックの歴史を知ることが出来る、よく出来た新書本だなぁ、と思います。

ただ、一方で、欠点としては、「ロック」と定義づけられるものが狭く、純然たるロックの作品しか取り上げられていない点。ソウルやブルースはほとんど取り上げられていないし、テクノなども、ちらっとコラムだけで取り上げられているのは残念。特にソウルやブルースは、ロックに多大な影響を与えているジャンルなだけに、もうちょっと取り上げてもよかったんじゃないかなぁ。

とりあえず、洋楽に、特にロックに興味を持った方が、最初に参考とするのには、よく出来た本だと思います。まあ、ある程度、ロックの名盤を聴きあさった方には物足りない本だとは思いますが・・・。ただ、再確認のため、読んでみるのも悪くないかも。

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2008年8月15日 (金)

耳触りはいいけど

Title:Repro
Musician:Jazztronik

Repro

この暑いシーズンにピッタリの、清涼感あるポップなサウンドがとても心地よいミニアルバム。

活動10周年を記念し、CMやテレビドラマなどに提供してきたタイアップ曲を収録した企画盤的なミニアルバムだそうです。

タイアップ曲を収録したアルバムなだけに、間違いなく耳触りはいいです。耳触りはいいんだけど・・・はっきりいって、どの曲もどこかで聴いたような曲なんだよなぁ。はっきりいってしまえば、オリジナルティーが感じられない。

1曲目「Sweet Rain」も、一昔前のダンスミュージックって感じだし、「Rising in My Heart」なんて、どちらかというとイージーリスニングの領域。もともとポップで聴きやすい曲が多いJazztronikですが、CMやテレビタイアップということもあって、「聴きやすさ」ばかりが追求されているように感じました。

部屋のBGM的に聴くには悪くはないんだけどねぇ。物足りなさが残りました。やはり、いくらタイアップとはいえ、もうちょっと独自性がほしいかも。

評価:★★★

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2008年8月14日 (木)

現ちゃんに捧げる1枚

Title:カッシーニ
Musician:元ちとせ

カッシーニ(初回生産限定盤)(DVD付)

妊娠・出産を経て、久々にリリースされた元ちとせのニューアルバム。

元ちとせといえば、今年はじめ、ショッキングなニュースが飛び込んできました。

上田現 急逝

元ちとせの名を世に知らしめた「ワダツミの木」を産み出し、その後も元ちとせの音楽活動にとってなくてはならない存在だった彼の突然の訃報。言うまでもなく、彼女にとってあまりにもショッキングな出来事だったと思われます。

その後発売された今回の作品。そのタイトル曲ともなっている「カッシーニ」が、上田現が元ちとせに書いた最期の曲となってしまいました。

そんなある種のターニングポイントとなっている今回のアルバムは、意識したのかしていないのか、まるで上田現に捧げるような内容になっていました。

例えばタイトルそのものずばり「あなたがここにいてほしい」(ピンク・フロイドの曲を意識したのでしょうか?)という曲が収録されていたりしますし、ラストの「空に咲く花」については

「空にも花が咲いたらいいな
君のあかるい その笑顔を
いつでも思い出してほしいよ
悲しみの中でも」

(「空に咲く花」より 作詞 丸山陽子)

と、まるで上田現に捧げるレクイエムのような楽曲になっています。この曲、原爆をテーマとしたNHKドラマの主題歌で、かつ作詞は一般公募によるものなので、おそらく、現ちゃんのことは全く意識していないものと思われるのですが、それでも、このアルバムのラストを飾るにはふさわしい曲になっていました。

また、この作品、菅野よう子やスキマスイッチの常田真太郎、COILの岡本定義、さらには坂本龍一など豪華なミュージシャンたちが参加していることでも話題となっています。

しかし、それら多様なミュージシャンの曲が、彼女のビブラートをきかせて歌う、包容力のある歌声で統一されることにより、全体として統一感のあるアルバムにしっかりと仕上がっていました。

全体としては、幻想的作風の「恵みの雨」や、ヨーロッパの民謡をほうふつとさせる「虹が生まれる国」などの作品はあったものの、元ちとせらしい、奄美系の民謡風をエッセンスとして加えた、エスニックな作風の曲がメイン。少々似たタイプの曲も目立つのですが、最後まで飽きないのは、彼女のボーカルの力によるところが大きいのでしょう。

おそらく今後、新たな一歩を踏み出していく彼女にとって、とても意味のある作品となったであろう本作。しかし、今後も次々と名曲を歌い続けていくだろう、ということを確信させてくれる作品に仕上がっていました。

評価:★★★★★

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2008年8月13日 (水)

これが最後・・・じゃないよね?

今週のシングルチャート
http://www.oricon.co.jp/rank/js/w/

今週のシングルチャートで、圧倒的な強さをみせつけ1位を記録したのはサザンオールスターズの新曲「I AM YOUR SINGER」でした。

ご存じの通り、今年いっぱいで無期限の活動休止に入る彼ら。デビュー30年を迎えた彼らのシングルは、タイトルからして、いろいろな意味を憶測したくなってしまいたくなりますね。ちなみに、本作で、通算42作目の1位獲得で、これは、SMAP、ZARD、B'zを抜いて単独1位だそうです。

以下、ベスト3は2位ミスチル、3位ポニョと、どちらもロングヒットが期待できそうなラインナップ。

そんな強豪勢の壁に阻まれたのか、新譜は6位以下にずらりと並ぶチャートになっています。

6位アリス九號.「RAINBOWS」、7位中川翔子「Shiny GATE」、8位デトロイト・メタル・シティ「SATSUGAI」、9位BONNIE PINK「鐘を鳴らして」そして10位THE ポッシボー「いじわるCrazy Love」という順位になっています。

BONNIE PINKは、コンスタントにベスト10に入ってくるようになりましたね。固定ファンを確実に確保しています。そして注目は8位のデトロイト・メタル・シティなるミュージシャン・・・って、このサイトでも何度か取り上げたのでご存じの方も多いかと思います。ギャグマンガ「デトロイト・メタル・シティ」が実写映画になることに伴い、なんと、デトロイト・メタル・シティの代表曲「SATSUGAI」が実際にシングルとして発売されちゃいました!

ま、曲調の方はデスメタルじゃなくて、一般受けしやすいハードコアになってしまったのは仕方ないのでしょうが、歌詞が漫画ほぼそのまんまなのがおもしろい(笑)。つーか、なんか大きな事件が起こったら、販売中止になりそうな内容だな(笑)。ちなみに、作曲はK.A.Z.になっていたんですが、Oblivion DustのK.A.Z.でしょうか??詳細不明なのですが・・・。

また、カップリングは、同じく漫画に登場した「甘い恋人」(笑)。こちらは、原作通り、いかにも狙ったような渋谷系の曲を、なんとカジヒデキが作曲+歌で参加。しっかりとあま~くおしゃれなポップスに仕上げています。しかし、それでもなお、歌詞のセンスの悪さを感じてしまうのがすごい。これだけ「渋谷系風」ながらもセンスの悪い歌詞をつくれちゃうのは、作者の才能だよなぁ。


今週のアルバムチャート
http://www.oricon.co.jp/rank/ja/

アルバムチャート1位は2週連続で安室奈美恵のベスト。ミリオン目前だそうで、今の彼女、本当に一時期みたいな勢いがありますね。

初登場組でトップは2位にランクインしてきた九州男「HB」でした。これがメジャーでは初となるアルバムなのですが、インディーズ時代から高い人気を誇っていた(名前通り)九州出身のレゲエシンガー。昨年リリースした2枚のミニアルバムもベスト10入りを記録していますが、ついに本作では自己最高位の2位を記録。次はついに1位か?

そして4位には斉藤和義のシングルベスト「歌うたい15」がランクインしています。3枚組でボリュームのある内容ながらも、上位ランクインは立派。なにげに根強いファンがついていますね。

また、8位にはCrystal Kay「Color Change!」が入ってきています。こちらは逆に、一時期のような勢いが感じられず、少々心配。今後は大丈夫か??

他には5位にアニメ名探偵コナンの主題歌集「THE BEST OF DETECTIVE CONAN 3」が、10位には、同じくアニメのキャラクターソング+ミニドラマを収録した「『コードギアス 反逆のルルーシュR2』Sound Episode2」が、それぞれランクイン。根強い人気を見せつけています。

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2008年8月12日 (火)

アンバランス

Title:ギャロップ
Musician:pe'zmoku

ギャロップ

最近は、海外での活動等も話題となっているジャズバンドPE'Zが、オルタナティヴ・フォークのミュージシャン、suzumokuと結成した新ユニットpe'zmokuとしての新作。

PE'Zらしい軽快なホーンセッションの上に、suzumokuのフォーキーな雰囲気のメロディーが心地よいポップスアルバム

なのですが

聴いていて、どーも何か違和感を憶えてしまうんですよ。

何かなぁ、と聴きながら、ずっとその「違和感」の原因を考えていたのですが、ずっと聴いていて、その違和感の原因がようやくわかりました。

それは

PE'Zの奏でるサウンドと、suzumokuのボーカルのアンバランスさ

PE'Zはご存じの通り、インストバンド。それゆえに、そのサウンド自体に強烈な個性を宿しています。

一方、suzumokuというミュージシャンについては、私は不勉強で全く知らなかったのですが、「オルタナティヴ・フォーク」というジャンルや、このアルバムでの彼のボーカルを聴く限り、メロディーと歌詞を主軸としたシンガーなのでしょう。

その2組のミュージシャンが共演することによって、バンドサウンドと、ボーカルが、それぞれ個性を主張しあってしまい、楽曲全体としてのアンバランスさを感じてしまうのではないでしょうか。

本来なら、どちらかとミュージシャンがサブ的な地位におさまるのがいいのでしょうが、このアルバムでは、どちらのミュージシャンもメインを主張してゆずりません。

古今東西を問わず、個性を持った実力派ミュージシャン同士のコラボレーションは、なかなか長続きしないことが多いのですが、このバンドもまた、そのよくある事例に陥ってしまっているように感じました。

正直なところ、決して相性のいい組み合わせだと思わないんですよね。PE'Zメインで来るのなら、個性をおさえた「楽器のひとつ」みたいにふるまえるボーカリストがピッタリ来ると思うし、suzumokuメインで来るのなら、PE'Zはもっと抑えたプレイが必要になると思うんですよね。

ちょっと残念な結果に終わってしまった1枚でした。もし次があるのなら、今度はもうちょっとどちらかに華をもたせるような内容が望ましいと思うのですが。

評価:★★★

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2008年8月11日 (月)

個性が強すぎるのも強すぎても問題なわけで・・・

Title:MOTEL RADIO SiXTY SiX
Musician:The Birthday

MOTEL RADIO SiXTY SiX

チバがボーカルをとってしまっている時点で、ミッシェルの影がいつになってもちらつくんだよなぁ。

The Birthdayとして3枚目のアルバム。いかにミッシェルらしさをふりほどき、The Birthdayというバンドの個性を確立するか、が彼らの大きな課題となっています。

1作目はミッシェルではありえなかったような、様々な音を取り入れることによりその方向性を広げ、2作目では、ミッシェルの後継者的立場を否定しないまま、新たな路線を模索する、というスタイルをとっていました。

で、続く3枚目のミニアルバム。

基本的には、2枚目「TEARDROP」と同じく、ミッシェル・ガン・エレファントの後継者的地位を否定しないまま、新たな路線を模索する作風になっています。

というよりも、ミッシェルと同様、ガレージパンク、ブルースロックをベースとしながら、そのベクトルをミッシェルとは微妙にずらしている感じといった方がいいでしょうか。

具体的には、もっと、オールディーズを指向する、さらにルーツ指向なロックになっていたように感じました。

特に「カレンダーガール」「6つ数えて火をつけろ」「ガーベラの足音」は、アップテンポでダンサナブルなロックンロールを、シンプルなサウンドで聴かせる、まさにロックンロールの原点である、シンプルで、ポップで、かつ踊れるサウンドを模索しているようにも感じられました。

ただ、The Birthdayとして3枚目ということを考えると、これだけだと少々物足りないかも・・・。

もうそろそろThe Birthdayとしてのスタイルを確立すべき時期であって、模索すべき段階は終わったと思うんですよね。

そういう意味で、悪くはないのですが、このままで大丈夫か、と思ってしまうようなミニアルバムでした。次あたり、勝負だよなぁ。

評価:★★★★

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2008年8月10日 (日)

個性の強弱

Title:VIBES
Musician:Jackson Vibe

VIBES

Jackson Vibeの新譜は、5曲入りのミニアルバム。しかし!ただのミニアルバムではありません。なんと、5曲が5曲とも、他のミュージシャンたちとのコラボレーションを実現!!具体的には、以下の通りのコラボレーションとなっています。

「LOVER'S ROCK」・・・曽我部恵一
「愛のバラ」・・・スネオヘアー
「SEASIDE RAIN」・・・西寺郷太(NONA REEVES)
「ONE WAY SOLDIER」・・・Herman H.&The Pacemakers
「ミス・ブランニュー・デイ」・・・yoheyOKAMOTO(Herman H.&The Pacemakers)

どうです!この豪華な顔ぶれ!サブカル好きの音楽ファンには特に、ビビっと来るものがありませんか?そしてなんといっても注目はHerman H.&The Pacemakers!現在、活動休止中のバンドなのですが、今回は、このコラボのためだけに活動再開し、新曲を提供しています。

しかし、これだけ豪華なミュージシャンが共演していながら、実際に聴いてみると、意外と、個々のミュージシャンの「顔」が見えてこないんですよね。

いや、よくよく聴くと、確かに「愛のバラ」はスネオヘアーらしい、ダウナーなギターロックになっていますし、「SEASIDE RAIN」はNONA REEVESからの流れを感じるダンスチューンになっているし、「ONE WAY SOLDIER」は、ヘルマンらしいポップチューンに仕上がっているんですよね。

でも、通して聴くと、淡泊なギターロックになってしまっているんですよ。

それは単純にJackson Vibeの力不足かもしれないのですが、しかしラストの「ミス・ブランニュー・デイ」。いわずと知れたサザンの名曲のカバーなのですが、黙っていても、桑田佳祐の個性が端々から感じるナンバーで、誰がやっても桑田らしさが強烈に曲に残っています。

もちろん、自分たちが歌う曲と、他人に提供した曲を単純比較は出来ません。ただ、ヘルマンにしてもスネオヘアーにしてもNONA REEVESにしても、またJackson Vibeにしても、いい曲を書いていてもいまひとつブレイクしきれないのって、黙っていてもそれぞれのミュージシャンの顔が見えてくるような個性が薄いから、なんじゃないかなぁ。そんなことを感じてしまいました。

ただ、ヘルマンは完全復活してほしいなぁ・・・。

評価:★★★

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2008年8月 9日 (土)

さわやかポップス

Title:Summerin'
Musician:土岐麻子

Summerin'

暑い日々が続いています。そんなシーズンにあわせるように、数々のさわやかなポップスアルバムがリリースされていますが、その中でもまた、とてもさわやかな1枚が届けられました。

タイトルからしてそのまま「Summerin'」なのですが、真夏にピッタリの、爽快なポップスナンバーがおさめられています。

カバー曲5曲、オリジナルナンバー2曲で収録されているミニアルバムなのですが、どの曲も、いわゆるシティーポップス風にアレンジされた曲ばかり。オリジナルナンバーである「LIBERTINE」からアルバムはスタートするのですが、転調が続くマニアックな雰囲気のナンバーながらも、さわやかなアレンジと彼女のみずみずしい歌声により、ポップな曲に仕上がっています。

原曲からすると、一番意外性があったのが、それに続く「サマーヌード」でしょう。ご存じ真心ブラザーズのナンバーなのですが、原曲は、倉持陽一のガラガラ声で骨太に聴こえるのですが、今回のアレンジでは、一気にさわやかなシティーポップに変身。実はメロディーライン自体、かなりソフトロック系のおしゃれな雰囲気を持っていたんだなぁ、ということに気がつかされます。

後半マドンナのカバー「La Isla Bonita」や大貫妙子のカバー「都会」では、ジャズ風のカバー。ここらへんは、以前、ジャズアルバムをリリースしていた彼女の本領発揮というところでしょうか。しっとりとした歌声を聴かせてくれます。

今年も暑い夏になりましたが、そんな中、部屋の中でのんびりと、あるいは、ドライブの途中で聴きたいアルバムです。ひとときの清涼剤となりそう・・・。

評価:★★★★★

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2008年8月 8日 (金)

爆音の快感

Title:HAKAI
Musician:WAGDUG FUTURISTIC UNITY

HAKAI(初回生産限定盤)(DVD付)

現在、活動休止中のTHE MAD CAPSULE MARKETのKYOによる新プロジェクト。スリップノッドのシドや、JUSTICE、デフトーンズ、マキシマムザホルモンの亮や、JOUJOUKAといった、ハードコア勢や、テクノ・トランス勢を中心とした、豪華なミュージシャンたちが参加しています。

さて、このアルバムを聴いて感じるのは

爆音の快感

でしょうか。

ハードコアなゴリゴリのヘヴィーなサウンド+デスボイスに、トランス、テクノ系の四つ打ちの電子音が加わった、これでもか、というほどに音を詰め込んで響かせる爆音がとても心地よいです。

ま、ある意味、コッテリとしたとんこつラーメンのような、密度の濃いカロリー高めの(笑)サウンドの洪水に身を任せるのが、非常に心地よいんですよね。

また、ハードコアって、しばしばヘヴィーな音ばかり追求し、マッチョな内容になってしまいがちなのですが、一方では、「G.O.D.SPACE」のような、ポップなメロディーが展開されるナンバーや、「MASS COMPRESSION」のようなトランス色の強いナンバーなども収録されていて、ハードなサウンドの中に鳴っている、トランスのリズムが、ハードコアのマッチョイズムを中和していて、聴きやすい内容になっています。

あえていえば、前半の方がハードコア指向、後半の方がトランスあるいはエレクトロ系の指向が強いかな?ハードコアサウンド+デジタルサウンドというスタイルは、THE MAD CAPSULE MARKETSからの流れなだけに、MADのファンも気に入りそうな作品です。

ただ、全体的には詰め込んだ爆音の勢いを主軸に据えているだけに、ひょっとしたら今後何度も聴いたら飽きがくるかも、という予感も。何度か聴いた今の段階では、素直に爆音の快感を楽しんでいるのですが、さてさて・・・?

評価:★★★★★

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2008年8月 7日 (木)

突然のブレイク。果たして・・・?

Title:ZUSHI
Musician:キマグレン

ZUSHI

先日のアルバムチャート。初登場1位となったそのアルバムに驚かされました。

キマグレンのニューアルバム「ZUSHI」が初登場1位を獲得したのです!

キマグレン、というミュージシャンは、名前こそ聞いたことがあったのですが、きちんと音源は聴いたことはなく、また、雑誌や音楽系のサイトなどで大きく騒がれていたということも(あくまでも私の知る限りでは)ありませんでした。

それだけに、突然の1位獲得というのは正直ビックリ。で、今回、そのアルバムを聴いてみたわけです。

ただ、正直言うとあまり期待していませんでした。というのも、Aqua TimezとかGReeeeNとか、最近の売れ線タイプのミュージシャンみたいなタイプの、ヒップホップとかをとりまぜつつ、メロディーはベタな歌謡曲風、というミュージシャンを想像していたからです。

しかし、実際にアルバムを聴いてみて、その期待はいい意味で裏切られました。

はっきりいって、想像以上に素晴しいポップスソングを聴かせてくれるミュージシャンだったからです。

オーガスニックソウルやラテン、ソウルなどをベースとしたサウンドを、さわやかなアコースティックのアレンジでまとめあげ、かつポップで耳なじみやすいメロディーを奏でる彼らの音楽に、一気に魅了されました。

1曲目「恋がよんでる」から、ラテン調のアップテンポでさわやかなメロディーを、軽快なホーンセッションをベースとしたアレンジでまとめあげる、これでもかというほどさわやかで踊れるナンバーからスタート。その後、同じくノリのよいアップテンポな「LIFE」へと続き、3曲目は一転バラードナンバー「あえないウタ」へと続く展開。序盤からグイグイとリスナーを引きずり込ませます。

ただ、残念なことに、中盤から後半にかけては、聴かせるタイプのナンバーが続くのですが、こちらは似たタイプの曲が多く、少々失速気味。「月光浴」のような、独特な、幻想的なナンバーもあったり、本編ラストの「ダメ男」のように、ユニークな歌詞の曲を、スタジオの模様そのままで収録した、アットホームなナンバーもあるのですが、まだまだ曲のバリエーションという観点からは課題を感じました。

とはいえ、確かな実力と、ポピュラリティーを感じるミュージシャンで、これからが非常に楽しみ。こういうミュージシャンがブレイクする、というのは素直にうれしいですね。

評価:★★★★

ちなみに、同時にインディーズ時代にリリースしたアルバムも聴いてみました。

LIFE/キマグレン

個人的には、こちらの方がおすすめ。「ZUSHI」にも収録されている「LIFE」も収録されています。楽曲のタイプとしてはほぼ同じ雰囲気。こちらの方が、収録時間が短いだけに、「ZUSHI」で感じたような、似たタイプの曲が多いなぁ・・・という感想もほとんど感じる間もなく終わってしまいます。

評価:★★★★★

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2008年8月 6日 (水)

大物の貫禄

今週のシングルチャート
http://www.oricon.co.jp/rank/js/w/

今週のチャートは、シングルもアルバムも、「大物」と呼ぶにふさわしい2組が1位を飾りました。

まずシングル。Mr.Childrenのニューシングル「GIFT」が見事1位を獲得。表題曲はあさってからスタートする北京オリンピックのNHKのテーマソングだそうで、今後、頻繁にテレビからそのメロディーが流れてきそうですね。ロングヒットになりそうな予感が。

で。ミスチルが初動19万枚というところ、15万枚という売上で迫ったのが2位のアラジン「陽は、また昇る」でした。あの羞恥心を生んだ「クイズヘキサゴンII」から生まれたアイドルユニットで、羞恥心の3人+以前、Paboとしてデビューした女性3人からなるユニットだそうです。

ただ、感触として、完全にこれがピークだろうなぁ・・・。つーか、羞恥心のヒットは純粋におもしろかったけど、ここまで立て続けに続くと、完全に飽きた。ここらへんが、ちょうど「引き時」だと思うんですが。

2枚の初登場曲に、3位にポニョが続いて(笑)、4位には、なんとTHE ALFEEの高見沢俊彦のソロ「月姫」がランクインしてきました。特に大きなタイアップがついていないみたいなんだけど、なんで???と思って公式サイトを見たら

「「月姫」のシングル3種類(TOCT-40221、TOCT-40222、TOCT-40223)の初回生産分を合わせてご購入いただきました方を対象に、抽選で合計800名様に当たる3種類のスペシャル特典!!!」

・・・・・・

ま、このためとは断言できないけどね。アイドルとかならこの手の商法もわかんなくはないけど、高見沢みたいなベテランがやらないでほしいよなぁ。

で、アイドル系℃-uteの新曲が5位に続いて、6位レミオロメン、7位RIP SLYMEが初登場。どちらも、もうちょっとがんばってほしいなぁ。ちなみにレミオロメンが1位ミスチルと同様、北京オリンピックのテレビ中継のテーマソング(こちらはフジ系)。北京オリンピック開幕とともに、ロングヒットになるか?

9位にはALI PROJECTがランクイン。基本的にアニメタイアップによるヒットがメインなのですが、最近、ヒットチャートでもよく名前を見かけるようになりました。10位Kalafinaも同じくアニメ系。劇場版アニメ「空の境界」のために結成された音楽ユニット、だそうです。


今週のアルバムチャート
http://www.oricon.co.jp/rank/ja/

アルバムチャート第1位は、なんと、安室奈美恵のベスト盤「BEST FICTION」がランクイン!最近は、以前のようにアイドル的な人気ではなく、実力派のR&Bシンガーとしての人気を確保してきた彼女。1位獲得は予想していたのですが、初動68万枚でEXILEのベストを抜いて、今年の初動売上では最高売上を記録しています。

まさに女王完全復活といった感じでしょうか?ただ、一方で、今週のチャートのように、ミスチルや安室奈美恵のような、90年代に人気を博したミュージシャンがいまだにヒットチャート上位を締めていて、それを追い抜くようなミュージシャンがあまり多くないのが気になります。

なんとなく、宇多田、椎名林檎のブレイクあたりから、圧倒的な人気を獲得しているようなミュージシャンが出てきていない感じがするんですよね。ORANGE RANGEが一時期人気があったけど、最近はいまひとつだし、GReeeeNもまだまだって感じだし。あえていえばEXILEくらいかな?

最近、音楽CDの売上が減っていて、それをネットでの違法ダウンロードなどの影響にされているのですが、それ以前に、純粋に圧倒的な人気を獲得できるようなミュージシャンが育っていない、という理由も大きいんじゃないかなぁ。

他にはアルバムチャートでは、R&B系ユニットCOLORのニューアルバムが6位にランクイン。さらに、昨年亡くなった作曲家の阿久悠に捧げるトリビュートアルバム「歌鬼(GA-KI)~阿久悠トリビュート~」が10位にランクインしています。

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2008年8月 5日 (火)

電子音なのに暖かい

Title:floating pupa
Musician:pupa

floating pupa

大物ミュージシャンたちが集まって結成され、話題となった新バンド。高橋幸宏を中心に結成され、原田知世、高野寛、高田漣(フォークシンガー高田渡の長男)、堀江博久、権藤知彦といった、そうそうたるメンバーが名を連ねています。

基本的には、エレクトロニカテイストのサウンドをベースとしながらも、ポップなメロディーがのることにより、全体としては、むしろフォークやソフトロックの色合いが強くなる、不思議な作風になっています。

なんというか、ベースに流れているのは無機質な電子音なのに、アルバム全体としては、暖かさが漂っているんですよね。

特に原田知世がメインボーカルをとった「Anywhere」「marimo」など、とてもメロディアスでしっとりと聴かせるポップチューンになっていて、彼女の優しい歌声がとても暖かく響く楽曲。無機質なはずの打ち込みのサウンドが、なぜか暖かさをはなっているような作品に仕上がっています。

他も、「Creaks」などはギターポップテイストが強く、ロックリスナーには耳なじみのよいポップスに仕上がっていますし、「Laika」は、男女のデゥオを展開し、しんみりとメロディーを聴かせてくれます。また、「Tameiki」「New Order」など、ソフトロックのテイストが強く、そのポップなメロディーラインなど、ある意味、シングル向けかもしれません。

この作品、全体的には聴きやすいポップなアルバムとなっています。広いリスナー層に支持されるようなポップの枠組みで、いかにエレクトロニカの要素と融合させるか、という試みといえるかもしれません。

また、高橋幸宏や原田知世といった名前が前面に出されがちですが、アルバム全体としては、メンバーそれぞれが対等の役割を担っています。バンドといっても誰かが中心という訳ではなく、ゆるい連帯といった感じで、そういう「ゆるさ」もいい意味で、楽曲に反映しているように感じました。

しっとりとした、今風のポップスを聴きたい方、おすすめです。

評価:★★★★

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2008年8月 4日 (月)

インパクトとノリの良さは文句なしだけど

Title:パーティー野郎Aチーム
Musician:アルファ

パーティー野郎Aチーム

いやぁ、いきなりルー大柴ですか(笑)。

テクノとHIP HOPを融合させ、テンポのよいダンサナブルなHIP HOPが特徴的なアルファのベストアルバム。

テクノとHIP HOPの組み合わせって、おもしろい視点だと思うし、リズム主体の音楽どうし、相性があうと思うんですよね。

でも、残念ながら、彼らの通った道って、既に電気グルーヴが通った道なんですよね。それも、もっと遙かな高みを。

あんまり他のミュージシャンと比較しちゃうのは申し訳ないのですが、ポピュラリティーの側面も、音の選び方という側面も、さらにはユーモアという側面も、すべて電気グルーヴの方が一枚上手。

実際、彼らにしても、とてもノリのいい曲を多くつくっているし、ポピュラリティーという面でも優れていると思うし、もっと注目されてもいいとは思うのですが、やはりどこかもう一歩の物足りなさを感じてしまいます。

ちなみに、ルー大柴は、タイトル曲で参加しています。もっとも、おなじみの決めゼリフをサンプリングした程度。ま、この程度じゃないとウザクなってしまうんでしょうが(笑)。

最近の曲に関しては、以前のダンスミュージック調が薄れ、ポップの色合いが濃くなったように感じます。新たな展開を模索しているのでしょうか。ただ、それだけにかつての勢いが薄れて、物足りなさが強くなってしまった印象も受けてしまいます。

ベスト盤をリリースして活動に一区切り。ただ、そろそろもうちょっとがんばってくれないと、今後が厳しいようにも感じるのですが・・・。

評価:★★★★

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2008年8月 3日 (日)

王道ラブソング

Title:60
Musician:東京60WATTS

60

ラブソング。ポップスシンガーがもっともその歌の題材として取り入れるテーマ。人間の感情がもっとも発露する恋愛という胸の高まりは、もっとも歌の素材として取り上げられやすいテーマです。それこそ、万葉集の時代から(笑)。

個人的な好みの問題も含まれるのですが、やはりラブソングは、歌から、具体的なカップル像が映し出されるような曲が王道であり、かつ、心をうつのではないでしょうか。例えば槇原敬之。言うまでもなく、彼の書くラブソングには、男女のドラマと、具体的なカップル像が明確に映し出されています。

そして彼ら東京60WATTSのラブソングも、歌の中にしっかりとしたドラマとカップル像が映し出されているのではないでしょうか。「ソラミミソファ」では、同棲していた彼女とわかれて間もない男性が、ソファに彼女の思い出を重ね合わせる様子が具体的に展開されていますし、「うたたね」では、おそらく20代後半くらいの、ちょっと子供っぽいところがかわいらしい彼女の様子が描かれています。

また、一方で、スキマスイッチの常田真太郎プロデュースで話題となった「たまにはこんなラブ・ソング」では、長いつきあいのカップル(夫婦?)の様子が描かれていたり、さらに「ボサノババア」では、既に子供も大きくなったお母さんの日常が描かれていたりと、ユニークな視点の曲も楽しめます。

ただ、全体的には登場人物は、20代後半以降とちょっと大人向きかな?それを、ジャズ、ソウル、ボサノヴァ、ポップスなどの要素をうまく取り込んだ、暖かく、ポピュラリティーのあるメロディーで聴かせてくれます。

ある種の新鮮さみたいなものはないのですが、大人が素直に楽しめるポップスアルバムだと思います。

評価:★★★★

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2008年8月 2日 (土)

これからの季節にピッタリな1枚

Title:山と海
Musician:LITTLE TEMPO

山と海

さて、今日はこれからの暑い季節にピッタリな1枚をご紹介します(通販番組風)。

すべての曲に共通する、スティールパンやスティールギターのさわやかでキラキラとした清流のような響きに、サックスが奏でる、メロウなメロディーライン。そして、レゲエ特有の横揺れのゆったりとしたリズム。暑いこれからの季節、例えば山の中で緑にかこまれて。例えば海辺で、波の音を聴きながら、のんびりと聴きたい、そんな1枚です。

まあ、「山と海」というそのまんまなタイトル名からして、本作は、かなり狙ったアルバムなんだろうなぁ。

特に「Tropical Rock」「山と海」「ランデブー」と続く流れは、サックスのメロウな音が耳に残る、ロマンチックなナンバー。特にタイトル曲「山と海」は、南国の雰囲気満点で、音楽を聴きながら、はるか南の島国にトリップできるような作品になっています。

ただ一方で、例えば「Dance Killer」のような、アップテンポながらもどこか影を潜ませたようなナンバーを入れてきたり、他の曲にしても、レゲエやスカなどのリズムをしっかりと奏でるそのサウンドは、単純な「気持ちいいムードミュージック」とは一線を画するのは間違いありません。

そんな中でも、「Over The Rainbow」で聴かせてくれる、キラキラしたスティールパンのサウンドは、彼らの、そしてスティールパンという楽器の魅力を存分に聴かせてくれます。まあ、カバーの選曲としては少々ベタ、というのは否めないのですが、実に魅力的なカバーに仕上がっています。

これからの季節、海に山に、レジャーのおともに1枚いかがでしょうか?

評価:★★★★★

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2008年8月 1日 (金)

ソロでやる意義は薄めかな。

Title:Drunk Monkeys
Musician:大橋卓弥

Drunk Monkeys(初回生産限定盤)(DVD付)

人気のポップスデゥオ、スキマスイッチのボーカリストによる、ソロ第1弾アルバム。

ただ、基本的にはスキマスイッチの延長線上のような曲がほとんどで、わざわざこれをソロでやる意義は薄いような感じがします。

ただ、あえていえば、タイトルそのまんまな「ブルース」では、スキマスイッチではあまり聴かせてくれなかったような本格的なブルースの雰囲気が出ている曲を歌ってくれたり、よりパーソナルなラブソングを聴かせてくれる「帰り道」のような曲があったり、確かに、スキマスイッチの時よりは自由に彼が歌いたい曲を歌っていて、そういう意味では、ソロとしての意味はあるのかな、とは感じられます。

しかし、スキマスイッチでも比較的パーソナルなラブソングは歌っていたし、シングル曲でもある「はじまりの歌」「SKY」も、スキマスイッチの曲としてリリースされても全く違和感ないし、なんでスキマスイッチとして勢いのある今の時期に、わざわざソロで活動するのだろう、という疑問がわいてしまいます。

変な勘ぐりをしてしまえば、スキマの2人の間に何らかの溝が生じてしまい、それを解消するため、冷却期間としてソロ活動をはじめたのかなぁ・・・なんて心配もしてしまったりして。

ま、そんな変な勘ぐりは置いておいて。

このアルバムだけで評価すれば、素直な等身大のポップスソングが詰まった良作なのは間違いありません。スキマとしてもソロとしても、今の大橋卓弥の勢いを感じさせてくれるアルバムだと思います。

評価:★★★★

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