味わいのある作品
Title:Sing
Musician:GRAPEVINE
かなりあっさりとした薄味の作品だな。
ソウルのグルーヴを全面に押し出したアルバムだったり、あっさりとした雰囲気が特徴的なアルバムだったり、アルバムによって色合いの異なる作品をリリースしてくる彼らですが、本作は、「Here」や「From a smalltown」に近い作風と言えるでしょうか。
ただ、この2作に比べても、本作は、さらにあっさりな風味に仕上がっていました。
そんな中でも、ソウル風のグルーヴを楽しめる「鏡」や、ロックンロール風の「フラニーと同意」など、バンドサウンドをしっかりと聴かせる作品もあるのも彼らの大きな魅力なのですが。
そして、それに加えて、歌詞もかなりわかりやすくなった印象を受けました。
タイトルチューンの「Sing」も
「空はうたい
風はうたい
ただそれを
誰がうたう」
(作詞 田中和将 「Sing」より)
さわやかな雰囲気ながら、どこか孤独感を歌い上げる内容がしっかりと伝わってきます。
もともと、田中和将の書く歌詞は、文学的な雰囲気をもちながら、リズムとの融合をはかった、「韻」を重視した歌詞になっていて、歌詞の内容については、難解といえば難解、深読みできるといえば、いくらでも深読みできそうな、そんな歌詞が特徴的でした。
本作も、そんな文学的な雰囲気や、「韻」を重視した歌詞はそのままながら、比較的平易な言葉をつかって、アルバムの世界を構築していました。
このアルバム、はっきりいってしまえば、すごく地味な作品です。しかし、地味ながらも、聴きこめば聴きこむほど味が出てくるような、実にGRAPEVINEらしい作品だったと思います。
彼らの作品の中でも、正直「最高傑作!」というレベルではありませんが、ファンならば安心して受け入れられる、実に彼ららしい佳作だったと思います。
評価:★★★★★
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