童話の世界
Title:クロニクル
Musician:安藤裕子
安藤裕子の最高傑作!!
だと思いますよ、本作は。
今回の作品、アルバム全体でイメージされているのは、ファンタジックな童話の世界。
ただ、童話とはいっても「よい子のえほん」みたいに、毒を抜いて「めでたしめでたし」で終わるような話ではありません。どこか毒の入った、「童話」というよりは「民話」に近いような、そんな雰囲気をかもしだしているアルバムでした。
この作品、「六月十三日、強い雨」ではピアノの弾き語りからスタート。前半は、ピアノの音色が印象的なナンバーが続きます。
そんな中で違和感を感じるのが2曲目の「HAPPY」です。SUEMITSU&THE SUEMITHの末光篤作曲の本作は、軽快なピアノロックのナンバーながらも、ピアノの音に不協和音がまじっていて、不思議な雰囲気をかもしています。(ってか、末光も、自分の作品として、このくらいの曲をつくってほしいなぁ(苦笑))
その後は、ソフトロックやジャズ、フォークなどの影響を感じるような、ポップでメロディアスなナンバーが続くのですが、その中にも違和感が。6曲目「お祭り-フェンスと唄おう-」は、本作の中で一番童話風の、チャイルディッシュで明るいナンバーながらも
「私以外の女の子に 色目を使われることも
きっとあるでしょうから
今日は私から行く
私に付いてきて」
「クルノヨ クルノヨ クルノ クルノ クルノ
あー秘密のおまじない」
(「お祭り-フェンスと唄おう-」より 作詞 安藤裕子)
と、どこか不気味な雰囲気を感じさせます。
その後も、ポップなソフトロックの路線が続くのですが、「パラレル」のラストでは、いきなり不協和音のピアノのアルペジオが入り、このアルバムは決して明るいだけのおとぎ話ではないことを実感させられます。
全体として、ポップで楽しげな雰囲気が流れているにもかかわらず、どうにも消えようのない違和感と不気味さも同居する毒を持ったアルバムでした。
いや、これは本当に癖になりそうな、傑作のポップスアルバムだと思いますよ。
ちなみにオザケンの「ぼくらが旅に出る理由」のカバーもなかなか秀逸。こちらもあらためていい曲だなぁ、と実感させられました。
評価:★★★★★
| 固定リンク
「アルバムレビュー(邦楽)2008年」カテゴリの記事
- 堀込弟脱退!(2013.03.03)
- マイラバらしい作品(2009.12.26)
- ロックンロールの楽しさを伝える(2008.12.30)
- がんばる真夜ちゃん!(2008.12.28)
- 手堅いポップソング(2008.12.27)
コメント