インストバンドはロックの未来形か?
Title:Phantasia
Musician:LITE
ほぼ同時期の記事なので、偶然だとは思うのですが、「ROCKIN' ON JAPAN」と「bounce」の両方で、全く同時期にインストバンドの特集が掲載されました。
確かに、ここ最近、日本のロックシーンにインストバンドが目立ちます。YOUR SONG IS GOODやSPECIAL OTHERS、ROVO、MONOなどなど、このサイトでも多くのインストバンドを紹介しています。
ただ、インストロックというスタイル自体、特に斬新というわけではありません。例えば、ロックの黎明期から、ベンチャーズみたいなインストバンドは活躍し、日本でも大きな人気を博していました。
それとも、ロックシーンが成熟し、ジャズみたいに、メロディーや歌詞ではなく、演奏を楽しむスタイルが定着した、ということでしょうか。
いいえ、演奏を楽しむスタイルなら、プログレッシブロックというジャンルもありましたし、ともすればビートルズの時代から、バンドとしての演奏に着目するリスニングスタイルは定着しています。決して、ここ最近、急に演奏という側面からロックを楽しむスタイルが出てきたわけではありません。
インストバンドが(特に日本において)注目されてきているのは、日本のロックシーンが多様化し、いままでマイナーな存在だったインストロックが相対的に浮かび上がってきたのではないでしょうか。
もっと突っ込んで言えば、インディーズバンドも、CDを容易に全国流通できるようになった結果、インストバンドみたいな、マイナーな存在も、広くリスナーの耳に届くようになったのかもしれません。
また、少々いじわるな視点から考えると、日本語をつかわないインストロックバンドは、比較的、世界という舞台で受け入れられやすく、結果、ロック雑誌なども喜んでとりあげる傾向にあるのではないでしょうか。
例えば前述のMONOなども、欧米でもツアーを実施するなど、一定の支持を確保していますし、今回紹介するLITEも、アルバムをイギリスで発売し、話題になったそうです。
そんな訳で、インストバンドというのは、ロックの未来形、というよりも、ロックの多様化に伴い浮かび上がってきた存在、といえるかもしれません。
さて、そんな流れの中で今回はじめて聴いてみたのが、このLITEのニューアルバムです。
インストロックといっても、フュージョンみたいに、わかりやすいメロディーが流れている「ただ歌のないポップス」では決してありません。
しかし、かといって、ポストロックのように難解でも、サイケロックみたいに、音の洪水で攻めてくるわけでもありません。
楽曲としては、むしろシンプルなロックといっていいかもしれません。特に、ギターのリフをメインに構成され、ファンキーなリズムを聴かせる楽曲などが多く、王道のロックンロールの流れを引き継いでいる、ともいえる側面も見て取れます。
「Shinkai」のような、サイケなノリを感じる曲もあれば、「Sequel to The Letter」のような、美しいバイオリンのストリングスを取り入れた曲もあるのですが、全般的には、シンプルでノリのよいロックナンバーがメインとなった本作。
決して難解ではないけど、決してコンビニやファミレスのBGMにもなりえない、そんなアルバムだったと思います。インストだから、という枠組みではなく、純粋に1枚のロックのアルバムとして評価したい1枚です。
評価:★★★★
ほかに聴いたアルバム
あぶらだこ/あぶらだこ
彼らのアルバムはすべて同じタイトルなので・・・(^^;;ここで取り上げるのは、今年6月にリリースされた、船のジャケットが特徴の、通称「舟盤」。
あぶらだこは、その独特なボーカルがどうも受け入れられなかったのですが、本作に関しては、ボーカルがあまり前に出ていなかったこともあって、純粋に前に出てきていた、サウンドを楽しめました。音数を絞りながら、サイケデリックな雰囲気をかもし出し、変拍子を多様することによって、独特な変態チックな音を作り出しています。ここらへん、はまりだしたら、ズブズブとはまっていきそうな世界だなぁ。
評価:★★★★
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