今の中高生の心の叫び・・・なのかな?
I LOVED YESTERDAY
アーティスト:YUI | |
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正直なことを言ってしまうと、YUIに関しては、いまひとつ、何がいいのかわかっていません。
いや、正確に言うと、「わからない」というよりも、「わかってはいるけど、共感ができない」といった方がいいかもしれません。
彼女が、その作品の中で歌っている内容は、現在の中高生の心の叫びそのもの。それが、既に三十路をすぎたおじさんに理解できないのは当然かもしれません。
そんな中高生の心の叫びを歌ったミュージシャンは、私がちょうど中高生の昔にも存在していました。
それは、尾崎豊。
そして本作では、尾崎豊を明確に意識したような歌詞がありました。
それが、「My Generation」の以下の歌詞。
「窓ガラス 割るような
気持ちとはちょっと 違ってたんだ
はじめから自由よ」
(作詞 YUI 「My Generation」より)
ここらへんの歌詞など、まさに尾崎豊の「15の夜」の「自由になれた気がした15の夜」や、「卒業」の「夜の校舎 窓ガラス壊してまわった」などをかなり意識していると思われます。
ただ正直、彼女の年齢からしても、彼女が尾崎豊に影響されたとは到底思えないんですよね。実際、彼女の影響を受けたミュージシャンとして、尾崎の名前は出していないし。そういう意味でも、上の歌詞は、少々、周りからの影響があったんじゃないかなぁ、なんて思ってしまいます。
実際、歌詞の内容に関しても、社会に対してやるせない束縛感をぶちまけ、怒りと攻撃的な態度を貫いた尾崎と比べると、彼女の歌詞はかなり内省的になっていて、素直に前向きな歌詞も目立ちます。
そういう意味では、同じ中高生の叫びを歌い、時として尾崎豊と比べられる、渡辺美里にタイプとしては近いのかもしれません。
ただ、個人的にどうもいまひとつ共感できないのが、ジェネレーションギャップという面が強いのでしょうが、その内容自体にいまひとつ共感できないんですよね。
尾崎や美里って、どこか大人や社会に対する反抗心が歌詞に感じられたのですが、彼女の歌詞って、尾崎や美里同様、思春期ならではの鬱屈した思いを表現しているのですが、どこか現状容認的というか、安直な前向き志向というか・・・「おやじ的価値観」と言われれば否定できないのかもしれないけど、どうも中高生世代の叫びにしては、おとなしすぎないか?なんて思ってしまいます。
そんな歌詞の内容を反映したかのように、メロディーやアレンジも、妙に保守的というか、一時代前のもの。耳障りはよく、それが売れた理由のひとつなのかもしれないけど、あまりにもひねりがなく面白みもありません。実験的ならいい、という訳でもありませんが、ちょっといくらなんでも・・・と思ってしまいました。
彼女がいまいち面白いと思えないのは、単なるジェネレーションギャップなのかなぁ。うーん・・・。
評価:★★★
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コメント
こんにちわ。
>周りからの影響があったんじゃないかなぁ、なんて思ってしまいます。
うーん、彼女くらいの年齢で、これだけ急激にヒットして、それでも周りの影響を受けないというのは、なかなか難しいと思います。
……周りから影響を受けることが、悪いことではないですし。
要は、本人がそれをどう受け止めて消化するか、ということなんでしょう。で、YUIが消化した答えが、件の歌詞の通り、「私達は自由なんだ」というものだとすれば、多分に、安直過ぎる気はしますねぇ。
デビュー当初、楽曲のイメージとは別に、彼女の軽いロックテイストな衣装に、妙な違和感を覚えていました。
で、ここ最近、いわゆるロック路線な曲もリリースされるようになり、やっとバランスが取れてきた印象があります。
元来、彼女本人がやりたかったのが、歌謡路線なのか、ロック路線なのかは分かりませんが、
これまでのちぐはぐさは、なにかしら彼女を縛り付けるものがあったんではないかと、邪推してしまいます。
そう思うと、「本当に、あなたは自由ですか?」と逆に聞き返したくなってしまいます。
もちろん、事情も実情も知らない、ただの外野の意見なんですが…
>どうも中高生世代の叫びにしては、おとなしすぎないか?
私も、そう思います。もっと思ったままに、やりたいようにやっていいんじゃないでしょうか。
もっとはじけてもいいし、もっとストイックに自分を見つめてもいい。
私の場合ですが、女性ボーカルに求めるものって、声質が大きなウェイトを占めているようです。
例えば、川本真琴、椎名林檎、aikoなど初見でその声を聴いたときは、凄い違和感と共に拒絶すら感じました。しかし、時間を置くことによって耳に馴染み、惹かれていきました。
YUIについても、最初、違和感を感じ、今もその違和感は続いています。ですから、将来的に『好きになるかもしれない』アーティストとして遠巻きに長めているというスタンスです。
もし彼女のやりたいことをセーブしている大人がいるなら、悲しいことです。
投稿: everblue | 2008年5月 9日 (金) 11時31分
>everblueさん
「影響があった」という表現はちょっと軽い感じだったかもしれないですね。
実際には、
「周りの人が書かせた」
くらいの印象を受けました。正直、ちょっとあまりにも唐突で、かつ、そのまんまな印象があったので・・・。
なんか、全体的につくられたような感じが否めないんですよね・・・。
>もっとはじけてもいいし、もっとストイックに自分を見つめてもいい。
そうなんですよね。「中高生の心の叫び」にしては、ちょっとおとなしすぎるんですよね。そういうのも含めて「今の時代」だとしたら、ちょっと寂しいなぁ。
渡辺美里とかも、ある種の作られたという側面も否定できないのですが(まあ、ファンですが)それにしても、もっと反抗的な叫びを歌にしていたと思うんですよね~。うーん・・・。
投稿: ゆういち | 2008年5月 9日 (金) 18時45分
>「周りの人が書かせた」
おお、そこまで言っちゃいますか(笑)
熱心なファンの反応が怖くて、言葉を濁したつもりだったんだけど、まあ、こちらの主が言っちゃったあとなら気にすることもないかな。
私、彼女から、彼女自身の主体性を感じないんです。だから、ファンに成れないんです。
一方で、やはり気になる存在なんで、始末が悪い(苦笑)
「天使の歌声」なんて騒ぐほど、特異な声でもないけど、初見での違和感っていう、自分の感性は信じたいなって思うので、今後もチェックして行きたいです。
…ただ、二年後、残っているでしょうか。
では、雑文にお付き合いいただきまして、ありがとうございましたm(__)m
投稿: everblue | 2008年5月 9日 (金) 20時48分
>everblueさん
そうなんですよね。このアルバムが顕著なんですけど、どうも周りからつくられた感が否めなくて。
まあ、例えばピストルズなんかも、ある種「作られた」ミュージシャンなんで、それはそれで否定しないのですが、それにしてもYUIの主体性を感じられないですよね。
本当に、2年後、残っているでしょうか??
投稿: ゆういち | 2008年5月11日 (日) 19時18分