シンプルなポップスかと思いきや・・・
秘密
アーティスト:aiko | |
いつも思うのですが、aikoというミュージシャンは、ポップスや歌謡曲のフィールドに留まらず、広い評価を受けるべきミュージシャンだと思っています。
約1年半ぶりとなる本作は、まず印象に残るのは、その切ない恋愛表現をつづった歌詞の世界でしょう。
冒頭の「You&Me Both」から、恋人を思う気持ちに、こんな表現をつかっています。
「フライパンの流星群
蒸発する水は綺麗
空っぽの頭に響いた
あなたを想う程に弾ける
小さなマイナスは破裂する」
(作詞 AIKO 「YOU&ME BOTH」より)
抽象的ながらも恋人を思う気持ちを実にわかりやすく、ストレートに表現していると思いません?
また、「片想い」や「別れ」の描写も実に見事。「二人」の中の
「一緒に撮った写真の中に夢見る二人は写っていたのね
後ろに立ってる観覧車に本当は乗りたかった...」
(作詞 AIKO 「二人」より)
という表現も、その瞬間、その写真が目にうかんで切なくなるようですし、ラストの「約束」の
「夏の雲が作るグランドに引いた白線の様な石灰舞う瞬間
あなたの斜め後ろにいた時いつも想い描いた強く淡い明日」
(作詞 AIKO 「約束」より)
も、学生時代の切ない恋愛を思い出しません?
ここらへんの描写も、抽象的な表現と具体的な描写を織り交ぜつつ、見事に恋愛感情を描き出していて、実に見事です。
しかし、それ以上に彼女で素晴らしいのは、その独特な節回しではないでしょうか。
彼女の曲は、パッと聴いただけだと普通のポップスに聴こえるのですが、ところどころ「え?こう来るの?」と思うような意外な展開を次々と見せる意外性を聴かせてくれます。
例えば表題曲の「秘密」など、ピアノの音が印象的なバラードなのですが、そのピアノの和音の展開など、かなりひねった展開になっています。また、ロック風なサウンドが印象的な「星電話」も同様、決してパターンにとらわれない、先の読めない展開が魅力的な作品になっています。
その一方で、ともすれば奇抜さ、ばかりが先にたってしまうそういうひねくれた展開も、実にポップにまとめあげていて、パッと聴いただけだと、そのひねくれた展開にすら気づかせません。
そういう独特の展開が、彼女の楽曲に普通のポップスとは異なる、一種の「グルーヴ」を産み出していると思います。
本作は、そんな彼女の魅力がメロディー、サウンド、歌詞、いずれにもつまった傑作だと思います。以前のCD評で、前々作あたりから「貫禄がついた」という表現をつかったのですが、この作品は、「貫禄」という、マンネリをさらに打破し、再びポップスシンガーaikoとしての輝きを感じさせてくれる作品でした。彼女の底力ははかりしれない・・・これからも、どんどんと傑作を産み出してくれそうです。
評価:★★★★★
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