HIP HOPのポップ化
クレバのベスト盤 アーティスト:KREVA,Mummy-D,草野マサムネ | |
![]() |
いままでアンダーグラウンドだった音楽のジャンルが、オーバーグラウンドに出てくる時に見せる輝き、その一瞬の輝きがたまらなく好きです。
例えば、グランジロックでいえば、NIRVANAの「NEVERMIND」みたいな作品。アンダーグラウンドシーンが持つ一種のチャレンジスピリッツとオーバーグラウンドの世界が持つ、圧倒的なポピュラリティー、そして、アンダーからオーバーにあがろうとする勢い・・・あるジャンルが、アンダーグラウンドからオーバーグラウンドにあがってくる時には、そういうものが混じり合って、大きな輝きを見せてくれたりします。
おそらく、日本のHIP HOPシーンにおいて、アンダーグラウンドとオーバーグラウンドの橋渡しをしたのが、Dragon Ash、RIP SLYME、そしてKICK THE CAN CREWではないでしょうか。HIP HOPにおいてセルアウトという行為は非常に嫌われ、結果、彼らも多くのミュージシャンからディスの対象とされましたが、彼らの持つポピュラリティーは、他のどのHIP HOPミュージシャンも持ち得なかったものです。
そんなKICK THE CAN CREWのクレバが、ソロとして活動した作品を集めたベスト盤をリリースしてきました。
クレバの活動の大きな特徴は、前述のNIRVANAのカート・コバーンと大きく異なり、売れることに対して自覚的ということ。このアルバムのタイトルからして、宮崎アニメのヒットの法則に従い、「クレバのベスト盤」と「の」を入れたのだとか(出典:wikipedia)。しかし、その一方、あくまでもHIP HOPの枠組みに従った作品を目指している点も大きな特徴です。
今回のベスト盤で、その彼の活動がもっともよくあらわれているのが、スピッツの草野マサムネをフューチャーした「くればいいのに」と、RhymesterのMummy-Dをフューチャーした「ファンキーグラマラス」でしょう。「くればいいのに」は、異なるジャンルのミュージシャンが参加した、非常にポップでメロディアス、HIP HOPを聴かないリスナー層をも取り込むことを狙った作品。一方、「ファンキーグラマラス」は、タイトル通り、ファンキーで、ブラックミュージックのフォーマットにしっかりとのかった、HIP HOPらしい作品に仕上げています。
そんなHIP HOPのポップ化を狙っている彼ですが、最近は、すっかりHIP HOP・・・というかラップミュージックもポップ化が進行し、既にHIP HOPというよりも歌謡曲になってしまっています。いい意味でも悪い意味でも、完全にJ-POPシーンに浸透した今、KREVAの目指す目標が、達成してしまった、といってもいいかもしれません。
そういう意味で、大きな区切りとなった本作。これで今の彼の活動を総括し、次の一歩に進み出すわけですが、次はどのような展開を見せるのでしょうか?その点も注目していきたいところでしょう。
評価:★★★★★
ほかに聴いたアルバム
寄り道/宮沢和史
2006年に行った弾き語りコンサート「寄り道」ツアーの模様を収録したライブ盤。THE BOOMの曲も多く収録してあり、内容的には、ベスト盤的なラインナップを、アコースティックな弾き語りで聴かせてくれます。ワールドミュージックテイストが強い作品なだけに、アコギ1本のアレンジには、少々違和感も感じる部分もありますが、メロディーの良さをあらためて感じることの出来るライブ盤です。
評価:★★★★
| 固定リンク
「アルバムレビュー(邦楽)2008年」カテゴリの記事
- お腹いっぱいです。(2008.07.12)
- 狂乱のサウンド(2008.06.13)
- 最前線の戦場にて(2008.10.06)
- 新たなる音の世界を求めて(2008.07.29)
- 堀込弟脱退!(2013.03.03)
コメント