偉大なバンドのラストアルバム
Syrup16g
アーティスト:Syrup 16g | |
素晴らしいロックバンドが、またひとつ、その歴史に幕を閉じました。
Syrup16g
そんな彼らが、最後に残したアルバムが本作。アルバムタイトルに本人たちの名前を題した作品は、正直言ってしまえば、彼らの最高傑作、ではありません。また、彼らのその活動を総括したような内容、でもありません。
でも、彼らの最後を飾るにはふさわしいアルバムだったと思います。
このラストアルバム、最後であることを意識したような歌詞が多く収録されています。
例えば、「さくら」という曲では、
「すべてを失くしてからは
どうでもいいと思えた
枯れてしまった桜の花
かき集めているんだろう」
(「さくら」より抜粋 作詞 五十嵐隆)
どちらかというと、春になった喜びを歌った曲が多い「桜」ソングの中で、こういう失望感を歌った内容は、彼ららしいといえるのですが、この曲に限らず、失望感を歌った曲が多く収録されていました。
ただ、雑誌などのインタビューでは、解散することを決めてから書いたのではない、と言っているのですが・・・どこか終わりに向かうような感情はあったのでしょうか。
しかし、そんな失望感の中で、ひとかけらの希望や、優しさを追求しているのもまた、Syrup16gの大きな特徴であり、かつ、このアルバムの大きなポイントだったと思います。
具体的に言えば、このアルバムのラストを飾るレクイエムでもある「夢からさめてしまわぬように」の中でも、
「君からもらった空の色
風に吹かれ歩いてゆく
君から学んだその後で
僕は何を返すんだろうか
逢いたいよ」
(「夢からさめてしまわぬように」より抜粋 作詞 五十嵐隆)
というように、失望感の中に、どこか前向きさを感じさせます。
本作は、アルバム全体としては、激しいバンドサウンドもあまりありませんし、また、かつてのような、一度聴いただけで忘れられないような、インパクトの強い歌詞もありません。しかし、しっかりと、Syrup16gとしてのスタンスと、最後に向けてのメッセージを感じさせてくれる作品だったと思います。
ひとつの素晴らしいバンドが、幕をおろしました。
しかし、ひとつの物語は幕をおろしたものの、メンバーそれぞれの物語はまだまだ続きます。
今後の彼らの活動に期待すると共に、また、五十嵐隆が今後、どのような傑作を世に出してくれるのか、楽しみにしていたいと思います。
評価:★★★★★
ほかに聴いたアルバム
MIRACLE/Sherbets
決して悪くはない。悪くはないんだけど・・・ここ最近のベンジーの作品って、完全に一種の様式化しちゃってるよなぁ。本作は、特に、そんな印象を強く感じました。いや、いくら悪くないアルバムをつくっていても、様式化しちゃったら、ロックをやる人間として厳しいだろう・・・。
評価:★★★★
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コメント
シロップのアルバム評待っておりました!ゆういちさんのレビューを読むの楽しみにしていたんです。おっしゃるとおり最後を締めくくるのにふさわしいアルバムですよね。この作品といいラストの武道館ライブといい彼らは本当に音楽に対しても我々に対しても誠実なバンドであったと思います。これほど惚れ込む事の出来るバンドは後にも先にも自分の前に現れないと思います。それほど自分にとってはなくてはならない存在でした。
投稿: hemingway | 2008年3月14日 (金) 18時33分
>hemingwayさん
そうですね。ラストアルバムといいライブといい、最後はきちんと締めくくってくれた点は、彼らの誠実さを非常に感じます。
本当にいいバンドだっただけに、ここで解散というのは本当に残念です・・・。
ただ、五十嵐さんは、きっとまた音楽活動をしてくれるはず。それを今は待ちたいところですね!
投稿: ゆういち | 2008年3月17日 (月) 00時29分