肩の力が抜けた傑作
HEART STATION
アーティスト:宇多田ヒカル | |
宇多田ヒカル5枚目となるニューアルバム
まず、このアルバムで耳をひかれるのが、2曲目から6曲目まで、ズラリとシングル曲が並んでいる点。普通、このようにシングルが並んでると、インパクトはあるものの、アルバムとしての流れがとても悪くなってしまいます。
それにも関わらず、このアルバム、特に前半の流れはひとつの物語のように、とてもスムーズ。最初から、アルバムを頭に入れてシングルをつくっていたんじゃないの?と勘ぐってしまうほど。実際は、相当、曲順については悩んだみたいですけどね。
そして、ちょうどレコードでいえば、6曲目までがA面で、7曲目以降B面といった感じで、曲の流れがガラリと変わります。後半は、ちょっと癖のある曲が並んでいます。しかし、本来なら浮いてしまうようなシングル「ぼくはくま」も含め、アルバム全体としての流れが作られており、アルバムの構成の見事さに、まず驚かされました。
そして、本作は、これは本人も語っているみたいですが、メロディーも歌詞もとてもシンプルになっています。
特に歌詞は、本音ベースの歌詞を、飾らない言葉で綴っています。例えば冒頭「Fight The Blues」から、いきなりこんな本音ベースの歌詞にドキリとさせられます。
「女はみんな女優
か弱いフリして めっちゃ強い
それでも守られたいんです」
(「Fight The Blues」より 作詞 宇多田ヒカル)
彼女の書く歌詞は、以前から口語ベースの型にはまらない歌詞が魅力的だったのですが、ここに来て、変な装飾をつけずに、思ったことをストレートに曲にのせた歌詞が目立っています。
また、メロディーやアレンジもとてもシンプル。特にメロディーは、ここ最近、ポップで、ともすればキャッチーであることも素直に受け入れるような内容になっています。
アメリカ進出が失敗して、「本格派R&B」なんて肩書きがはずれたからこそ、素直な曲調を書けるようになったのかもしれませんね。
・・・と思ったら、どうもUtadaとしての2枚目を作成中らしいですね。ということは、
ポップでキャッチーな曲調⇒宇多田ヒカル
本格派R&B⇒Utada
と使い分けるつもりなのかな?
個人的には、ひょっとしたら、いままででの最高傑作かも?と思うほどの出来でした。結婚、離婚を経て、大人になった彼女のそのままがあらわれている、いい意味で、肩の力の抜けた傑作だったと思います。
評価:★★★★★
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