2019年4月22日 (月)

がんばれ!メロディー

Title:がんばれ!メロディー
Musician:柴田聡子

柴田聡子のニューアルバムについて、まずそのタイトルの良さが目につきます。「がんばれ!メロディー」。ポップソングのアルバムタイトルとしてとてもかわいらしさを感じますし、また「メロディー」というポップソングの本質のような部分へのエールをタイトルにするあたり、ポップミュージシャンとしてのある種の意気込みを感じさせます。

個人的に柴田聡子のアルバムを聴くのはこれが3枚目となるのですが、いままでの彼女の曲はポップソングではあるものの、いまひとつポピュラリティーに欠けている内向きな雰囲気があり、その話題性とは反していまひとつピンと来ませんでした。しかし、今回の作品はそんないままでの作風から一変、非常にポップでキュートなメロディーラインが続く、誰が聴いても楽しめるようなポピュラリティーあるアルバムに仕上がっていました。

1曲目からしてタイトルからして明るく多幸感のある「結婚しました」から、明るい雰囲気のサマーポップに仕上がっていますし、続く「ラッキーカラー」もどこか切ないキュートなメロディーが強い印象に残るフォーキーな美メロが印象的。その後もギターアルペジオでフォーキーに聴かせる切ない「いい人」や暖かい雰囲気のサウンドにメロディーラインが心に残る「心の中の猫」などシンプルで、しっかりとメロディーラインを聴かせるポップチューンが並びます。まさに「がんばれ!メロディー」というタイトル通り、アルバムの中でなによりもメロディーががんばっているポップな歌モノのアルバムに仕上がっています。

一方、歌詞についても日常風景を描写した身近な題材がテーマの曲が多く、そういう観点からもポピュラリティーを感じさせるアルバムになっています。「結婚しました」などはまさにタイトル通り、「結婚」をテーマとした歌詞ですし、「ジョイフル・コメリ・ホーマック」とホームセンターの名前を並べたような、まさに日常をテーマとした曲もあります。

もっともそんな中でも楽曲にはバラエティーがあり、ピコピコポップチューンの「ワンコロメーター」なんていうユニークな曲が登場。こちらも犬が迷子になったという歌詞のネタもユニーク。また「セパタクローの奥義」というこれまたユニークなタイトルの曲はエキゾチックな雰囲気のサウンドが大きな魅力となっていますし、ラストの「捧げます」は爽やかながらもメロディーラインがどこかひねくれており、彼女の音楽的な奥行を感じさせるポップスとなっています。

歌詞にしても日常をテーマとする一方で「いい人」などは内省的な歌詞の中にどこか影を感じさせる作品。ここらへんもJ-POP的な単純な明るさとは一線を画しているように感じられました。

ただ間違いなく言えるのは今回のアルバムでポップスとしての強度が格段に増し、シンガーソングライターとして階段を一歩昇った、大きな成長を感じさせる傑作アルバムだったということでしょう。気持ちよい間口の広いポップアルバムですが、奥行の深さも感じます。シンガーとしてこれからがますます楽しみになってくる1枚でした。

評価:★★★★★

柴田聡子 過去の作品
柴田聡子
愛の休日


ほかに聴いたアルバム

坂本龍一 選 耳の記憶 前編 Ryuichi Sakamoto Selections / Recollections of the Ear

坂本龍一 選 耳の記憶 後編 Ryuichi Sakamoto Selections / Recollections of the Ear

坂本龍一が2011年から2015年にかけて「婦人画報」誌で掲載していたコラム「耳の記憶(12の調べが奏でる音楽の贈りもの)」で紹介した曲をまとめたオムニバスアルバム。彼が各回1曲ずつ紹介し、それにまつわる幼少期の思い出を綴ったコラムで、要するに音楽家坂本龍一の原点とも言える楽曲をまとめたアルバム。そういう意味ではファンにはたまらなそうですし、そうでなくても坂本龍一がどのような音楽体験を経てきていたのかを知れるというのは、興味深く感じます。収録されている曲は基本的にクラシック。比較的ピアノ曲が多いのは、やはり彼の音楽的原点はピアノからスタートしているということなのでしょうか。ただ、クラシックを聴く耳で聴き進めると、いきなりビル・エヴァンスのジャズの名曲「マイ・フーリッシュ・ハート」が登場してくるあたりはちょっと驚いてしまいます。

全体的には有名な作曲家の曲が多いのですが、必ずしも「よく知られているフレーズの登場する曲」が選ばれている訳でもなく、純粋にクラシックのオムニバスとして楽しめるのですが、クラシックの入門的な感覚で聴くとちょっと違うかもしれません。ただ、坂本龍一とは関係なく、手軽に聴けるクラシックのオムニバスとしても楽しめる1枚でした。

評価:どちらも★★★★

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2019年4月21日 (日)

結成10年目の最高傑作

Title:ドロン・ド・ロンド
Musician:チャラン・ポ・ランタン

今年、結成10年目を迎えた「歌とアコーディオンの姉妹ユニット」チャラン・ポ・ランタンの約1年4ヶ月ぶりとなるニューアルバム。10周年というのはかな~り意外な感がありますが・・・ただインディーズでの活動が長かったそうですね。そんな彼女たちも本作に収録されている「ガリレオ」が小学館の図鑑のCMソングに起用されたり、「ページをめくって」が映画「キスできる餃子」の主題歌に起用されたり、チャラン・ポ・ランタンの小春が楽曲提供した「ゾクゾクうんどうかい」がNHK「おかあさんといっしょ」で流れたりと、着実に活躍する場を広げていっています。

前作「ミラージュ・コラージュ」との間にインディーズ時代の楽曲をまとめたベスト盤「過去レクション」がリリースされました。そのアルバムがリリースされた後のアルバムなのでより強く思うのですが、ミュージシャンとしてどんどん成長しているな、ということを本作では強く感じられました。基本的にアコーディオンにホーンセッションを入れて、バルカン音楽やスカ、あるいはジンタなどといった音楽性を取り入れたスタンスはインディーズ時代からは大きく変わりませんし、その方向性は本作でも健在でした。

ただ、楽曲のバリエーションは本作では以前に増して広がっているように感じます。例えば「春のあお」ではダブの要素を入れてきていますし、「猛獣使いのマリー」はストリングスも入って優雅さを感じさせるアレンジになっていますし、「日が昇るまで」もアラビア風の妖艶な雰囲気が大きなインパクトとなっています。

さらにいままでの楽曲の方向性を引き継いだタイプの曲に関しても、楽曲の歌詞や方向性に応じて一本調子にならず雰囲気を変えています。例えば映画主題歌にもなった「ページをめくって」は全体的に明るい作風でバンドサウンドも前に押し出しJ-POPシーンの中でも聴きやすいようなアレンジに仕上げていますし、1曲目の「脱走」は逆にホーンセッションやアコーディオンが賑やかに鳴り響く、ある意味チャラン・ポ・ランタンらしさを前に押し出したナンバー。「100人のダディ」などは軽快なリズムのビートを前に押し出していますし、「マッドネス」はタイトルの元ネタとなったイギリスのスカバンドの作風に合わせたのでしょうか、裏打ちのビートをより強調したアレンジに仕上げています。

そこらへんの音楽性のバリエーションを一番上手く取り入れたのが「お惚気アベック」で、タイトル通り、イチャイチャしているカップルと、それを見てイライラしている人の心境が交互に語られるユニークな歌詞が特徴的なのですが、その2人の心境にあわせてアレンジもうまくチェンジ。歌詞はもちろんサウンドによって上手く1人2役の芝居を楽曲の中で成り立たせています。

そんな「お惚気アベック」のようなユニークな歌詞も登場するように、ユーモラスあふれる歌詞は本作も健在。ほかにも「麻イイ雀」ではタイトル通りに麻雀の役を歌に組み込まさせているユニークなナンバー。ちなみにサウンド的にもファンキーなサウンドを前に押し出した、いままでの彼女たちとはちょっと違った雰囲気の作品に仕上げてきています。

ほかにもサーカスの猛獣使いの女の子が主人公の「猛獣使いのマリー」などはチャラン・ポ・ランタンだからこそ使える歌詞の設定といったイメージですし、逆に少年時代のほのかな恋心をテーマとした「マッドネス」はある種、普遍的なノスタルジーあふれる歌詞の世界を作り上げており、歌詞の面でも胸に響かせる曲が並んでいます。

前作「ミラージュ・コラージュ」ではバンドとしての安定感を感じさせたのですが、今回のアルバムはそこからのさらなる成長を感じさせる傑作アルバム。バンドとしての最高傑作ですし、これはひとつの完成形のように感じます。また結成10年目にしてバンドのステージがさらに1つあがったように感じました。残念ながらいろいろな場所での活躍とは反してバンドとしてはいまひとつブレイクし切れていないのは残念ですが、これだけの傑作をリリースできれば、さらに彼女たちの活躍の場は広がりそう。これからの活躍も楽しみです。

評価:★★★★★

チャラン・ポ・ランタン 過去の作品
テアトル・テアトル
女の46分
女たちの残像
借り物協奏
トリトメモナシ
ミラージュ・コラージュ
過去レクション


ほかに聴いたアルバム

有頂天/ポルカドットスティングレイ

今年7月には初となる武道館ライブも予定されている人気上昇中のロックバンド、ポルカドットスティングレイの新作。彼女たちらしいエッジの効いたギターを聴かせる疾走感あるロックチューンを中心に、シティポップ風なナンバーやジャジーなアレンジを加えた曲なども収録されており、いままでのアルバムに比べて楽曲のバリエーションが一気に増した作品に。個人的にはメロディーラインにもうちょっとインパクトが欲しい印象もあり、惜しさも感じてしまうのですが、いままでのアルバムに比べればグッとよくなった印象も。バンドとしての大きな成長を感じるアルバムでした。

評価:★★★★

ポルカドットスティングレイ 過去の作品
大正義
全知全能
一大事

未来/NONA REEVES

今年、メジャーデビュー20周年を迎える彼らの約1年5ヶ月ぶりとなる新譜。ここ最近、彼らが奏でる80年代風のシティポップの見直しの気運が高まり、それに伴い彼らのアルバムもここ数作、いつも以上に勢いが増してきたように感じます。今回もRHYMESTERがゲストとして参加した「今夜はローリング・ストーン」をはじめ、ダンサナブルなリズムとメロウなサウンドというノーナらしい楽曲が並びます。そういう意味で純粋に楽しめたアルバムだったのは間違いありません。ただ、ここ数作に比べるとちょっと勢いは落ちてしまった感が否めず、良くも悪くも同じようなパターンの多い彼らの「マンネリ」さが少々気になってしまいました。じゃあ新機軸が必要か、と言われるとそれはそれで微妙な感じもするのですが・・・。デビュー20周年を迎えてひとつの岐路に立っている、と言えるかもしれません。これからの活動に注目したいところです。

評価:★★★★

NONA REEVES 過去の作品
GO
Choice
ChoiceII
BLACKBERRY JAM
POP'N SOUL 20~The Very Best of NONA REEVES
MISSION

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2019年4月20日 (土)

暖かくフォーキーなメロにラテンの血が加わる

Title:This Is How You Smile
Musician:Helado Negro

今回紹介するHelado Negroは1980年にアメリカはフロリダで、エクアドル移民の子どもとして生まれ、主にインディーシーンで活動をつづけたミュージシャン。日本では正直、かなり無名に近いミュージシャン。私も完全に初耳のミュージシャンでこのアルバムがPitchforkで高評価だったのが聴くきっかけ。ただPrefuse73としての活動でも知られるスコット・ヘレンの別ユニット、Savath and Savalasに参加していた・・・と言われると、ようやくその活躍のほどがわかるかと思います。

そんな知る人ぞ知る的なミュージシャンで、かつ奏でる音楽の紹介として「サイケデリック・ポップ」という書き方をしていたりするので、それを聞いただけだとちょっとマニア向けの取っつきにくいミュージシャン、という印象を抱いてしまうかもしれません。実際、アルバムの1曲目「Please Won't Please」を聴き始めた時にスピーカーから流れてくるのはサイケ風なエレクトロサウンド・・・からスタートしたかと思えば、それに続く彼の歌声は一転、とても暖かく優しい雰囲気。歌がはじまるとフォーキーな雰囲気を感じさせるぬくもりのあるポップソングが繰り広げられており、美メロともいえるメロディーラインと優しい歌声に癒されるポップチューンとなっています。

楽曲はそんなフォーキーな雰囲気が漂う暖かくメロディアスな歌モノがメイン。続く「Imagining What to Do」もアコースティックギターを奏でつつ、優しいメロを歌い上げています。そしてそんな彼の楽曲には、エクアドルからの影響でしょうか、どこかラテン的な要素を感じる部分が多々あります。「Imagining What to Do」も後半、スティールパンの音色が流れ、どこかラテンの影響を感じさせますし、アコギでしんみり聴かせる「Pais Nublado」もラテンのフレイバーが漂うポップス。このポップソングの中にちょっと含まれるラテンの血が、アルバムの中で彼の大きな個性となっているように感じました。

またそんな暖かみのある歌とは対照的にまさにサイケデリックな側面もアルバムの随所に感じられます。例えば「Fantasma Vaga」はちょっとトライバルな雰囲気を含んだエレクトロサウンドにサイケな要素を感じますし、「November7」もローファイでサイケなエレクトロチューン。ラストも「My Name Is for My Friends」も静かでサイケな雰囲気のインストチューンで締めくくられています。

ただ、そんな彼のサイケデリックな側面を強調したような曲に関してもメロディーラインがしっかりと流れており、ほかの曲の中で決して浮いたものとはなっておらず、アルバムを通じてひとつの流れをしっかりと感じられる構成となっていました。今回、前知識が全くなく聴いたミュージシャンなのですが、思った以上に素晴らしい出来栄えに聴き入ってしまいました。上にも書いた通り、暖かくフォーキーなメロディーラインが主軸となっているため比較的幅広い層が楽しめそうなアルバム。ただ一方では音楽的にユニークな要素も随所に感じられ、奥の深さも感じられる傑作アルバムでした。

評価:★★★★★

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2019年4月19日 (金)

60年の歴史を網羅

Title:MOTOWN60

アメリカを代表するブラックミュージックのレーベル、モータウン。ブラックミュージックとポップミュージックをクロスオーバーした数々のヒット曲で特に60年代にはアメリカのポップスシーンを席捲。その特徴的なサウンドは「モータウンサウンド」と呼ばれ、世界中のポップスシーンに大きな影響を与えました。その音楽はいまなお絶大な影響を与えており、日本でもこのモータウンサウンドの影響を受けたポップスは、今でも少なくありません。

そんなアメリカを、いや世界のポップスシーンを代表するレーベル、モータウンは1959年にベリー・ゴーディ・ジュニアによりタムラ・レコードとして設立されたのがそもそものスタート。今年はこの偉大なレーベルが生まれてからちょうど60年目という記念すべき年であり、様々な企画が計画されているようです。そんな中でリリースされたのがこのコンピレーションアルバム。モータウンの60年に及ぶ歴史を網羅するコンピレーションアルバムで、全3枚組60曲に及ぶモータウンを代表するポップチューンがリリース順に収録されています。

一般的に「モータウンサウンド」といってイメージするのは60年代あたりのヒット曲なのではないでしょうか。The Supremesや初期のThe Temptations、あるいはJackson5あたりまでがモータウンとして一般的にイメージされる曲ではないでしょうか。ブラックミュージックの要素を色濃くいれつつもサザンソウルのような癖のあるボーカルやこぶしなどはなく、すんなりと耳になじむポップなメロディーラインがモータウンサウンドの特徴。もちろん今回のコンピレーションアルバムでもモータウンの第1弾シングルとなったBarrett Strongの「Money」からスタートし、ビートルズやカーペンターズのカバーでも知られるThe Marvelettesの「Please,Mr.Postman」、ご存じThe Supremesの「Baby Love」にThe Temptationsの「My Girl」、Jackson5の「I Want You Back」など一般的にモータウンサウンドとして知られるような曲がズラリと並んでいます。

しかし、いかにもなモータウンサウンドが並んでいるのはDisc1まで。このDisc1のラストがMarvin Gayeがモータウンの反対を押し切ってリリースし大ヒットを記録した社会派な歌詞が特徴的の「What's Going On」という点にある種の区切りを感じさせます。モータウン自体は1988年にMCAに買収されてから、数多くの会社の手をわたり、今日はキャピタル・ミュージックの傘下となっており、紆余曲折をたどりました。しかしモータウンとしてはその後もコンスタントにヒット曲をリリース。今回のコンピでは80年代以降も直近の作品までしっかりと網羅しているのですが、そのサウンドが時代時代を経て変化していく様がこのコンピでよくわかります。モータウンが決して自ら作り上げた「モータウンサウンド」に固執することなく、時代時代に応じたサウンドを作り上げていったのが、いろいろな企業に買収されたとはいえ、レーベルとして60年という長さ続いてきた大きな秘訣なのでしょう。

これもモータウンだったのか、とちょっと意外性に感じる曲も少なくなく、Boyz II Men「End Of The Road」あたりはモータウンだったよな、と認識していたのですが、Shanice「I Love Your Smile」などはリアルタイムでも知っていたヒット曲なのですが、これがモータウンだったのは意外。そんな中でも一番以外だったのが最近話題のHIP HOPミュージシャンMigosの「Stir Fly」。モータウンというレーベルはHIP HOPというイメージがなかっただけに、Migosがモータウンだった、というのはかなり意外に感じました。

そんな意外なメンツにレーベルとしての柔軟性を感じたのですが、ただこのコンピに収録されている曲に共通して感じたのはどの曲も至ってメロディアスでポップな曲ばかりという点でした。上にも書いた通り、もともとモータウンの大きな功績としてブラックミュージックを白人を含む幅広いリスナー層に広げた点があげられます。そして時代を経てサウンドの雰囲気こそ変化したのですが、このコンセプトは時代を変わらず共通しているんだな、ということを今回のコンピレーションでは強く感じました。

まさにモータウンの歴史が網羅的にわかるコンピレーション。数多くのヒット曲が収録されているアルバムとしても楽しめる内容ですし、なによりもどの曲も幅広い方が楽しめるポップチューンが並んでいる点が大きな魅力。サブスクリプション全盛の時代、ここに収録されている曲はともすれば簡単に聴けてしまうのですが、こうやってコンピとして並べられ、その歴史を感じられるという点で大きな意義を感じます。いろいろな意味で楽しめたコンピレーションアルバムでした。

評価:★★★★★


ほかに聴いたアルバム

ALLiSTER 20th ANNIVERSARY BEST ALBUM 「BEST OF… 20 YEARS & COUNTING」/ALLiSTER

アメリカのポップパンクバンド、ALLiSTERの世界デビュー20周年を記念してリリースされたベスト盤。スピッツや森山直太朗の曲をカバーしたり、ELLEGARDENとツアーを回ったり、またボーカルのスコット・マーフィーはWEEZERのリヴァース・クオモとJ-POPユニット「スコット&リバース」を結成。さらには細美武士を中心としたバンドMONOEYESに参加するなど、どちらかというと日本での活躍が目立ちます。そんなALLiSTERの楽曲をこのベスト盤ではまとめて聴ける訳ですが、確かにメロディーラインがわかりやすい、日本人受けしそうな軽快なポップスパンクのナンバーが並びます。ただ一方、底抜けに明るいメロディーラインは邦楽にはない洋楽的な要素も強く感じ、このわかりやすいメロという邦楽的な要素と底抜けに明るいメロという洋楽的要素のほどよいバランスが日本でうけた大きな要素のように感じます。全20曲入りのボリューム感ある内容ですが、ポップで楽しい楽曲ばかりなので一気に楽しめる反面、比較的似たタイプの曲も多く、少々平凡気味だな、ということも感じてしまったベスト盤。良くも悪くも昨今よくありがちなフェス向けのギターロックバンドに通じる雰囲気も・・・。

評価:★★★★

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2019年4月18日 (木)

2枚同時にランクイン

今週のHot Albums

http://www.billboard-japan.com/chart_insight/

今週は人気女性シンガーによるアルバムが2作同時にランクインしています。

それがAimer「Sun Dance」「Penny Rain」で前作が1位、後作が3位と2作同時ベスト3入りとなりました。「Sun Dance」はCD販売数3位、ダウンロード数2位、PCによるCD読取数8位を獲得。一方、「Penny Rain」はCD販売数2位、ダウンロード数4位、PCによるCD読取数6位を獲得。CD販売数では「Penny Rain」が上回りましたが、ダウンロード数の差で「Sun Dance」が見事1位を獲得です。一方、オリコン週間アルバムランキングでは「Penny Rain」が初動売上3万7千枚で2位、「Sun Dance」が3万6千枚で3位とHot100の順位とは逆となっています。ちなみに直近作は「BEST SELECTION"blanc"」「BEST SELECTION"noir"」で、こちらの3万4千枚(3位、4位)からは若干のアップ。ただしオリジナルアルバムの前作「daydream」の4万枚(2位)からはダウンしています。

そんな2枚のアルバムに割って入ったのが元東方神起のメンバーで、現在はJYJとしても活動しているジェジュンのソロアルバム「Flawless Love」が獲得。国内版では初のアルバムとなります。CD販売数は1位を獲得しましたが、ダウンロード数は6位、PCによるCD読取数が16位にとどまり、総合順位ではAimerに1位を譲る形となりました。オリコンでは初動売上4万2千枚で1位初登場。韓国版の直近作「NO.X」の1万7千枚(8位)からはアップしています。

続いては4位以下の初登場盤です。5位初登場はヨルシカ「だから僕は音楽を辞めた」。ボカロPとして活動していたn-bunaがsuisと共に結成したバンド。ネット発らしくダウンロード数は3位とベスト3入りしていますが、CD販売数は5位、PCによるCD読取数は10位にとどまり、総合順位では5位となりました。

6位は韓国のアイドルグループBTS(防弾少年団)「MAP OF THE SOUL:PERSONA」が初登場。こちらは4月20日リリース予定のミニアルバムですが、韓国では4月12日にリリースされており、それにあわせてCDリリースに先行する形でのダウンロードでの販売となり、ダウンロード数で1位を獲得し、ベスト10入りしています。

7位には女性声優水瀬いのり「Catch the Rainbow!」がランクイン。CD販売数6位、ダウンロード数8位、PCによるCD読取数15位を獲得。オリコンでは初動売上1万8千枚で6位初登場。前作「BLUE COMPASS」(7位)から横バイとなっています。

8位にも韓国のアイドルグループ、GOT7のメンバーJBとユギョムによるユニットJus2「FOCUS」が初登場で入ってきています。本作が日本ではデビュー作となるミニアルバム。CD販売数は7位でそのほかは圏外という結果に。オリコンでは初動売上1万3千枚で7位初登場。

初登場組最後は9位にランクインしてきた男性シンガーソングライターみやかわくん「REBECCA」。CD販売数8位、ダウンロード数7位を獲得。もともとTwitterなどへのペン回しや歌の動画が話題となってデビューしたシンガーだそうです。オリコンでは初動売上1万2千枚で8位初登場。前作「STAR LAND」の1万7千枚(8位)からはダウンしています。

ロングヒット組ではあいみょん「瞬間的シックスセンス」が先週の4位から10位にダウン。PCによるCD読取数は2位を獲得しているものの、CD販売数13位、ダウンロード数9位と後がなくなってきています。Hot100では「マリーゴールド」が相変わらずロングヒットを続ける彼女ですが、アルバムチャートは少々厳しい状況になってきています。

今週のHot Albumsは以上。チャート評はまた来週の水曜日に!

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2019年4月17日 (水)

女性アイドル系が目立つチャートに

今週のHot100

http://www.billboard-japan.com/chart_insight/

今週はHot100としては珍しく女性アイドルグループが目立つチャートとなりました。

まず1位は博多を拠点として活動するAKB系の女性アイドルグループHKT48「意志」がランクインしています。CD販売数1位、PCによるCD読取数8位、Twitterつぶやき数11位を獲得。一方、ダウンロード数は61位、ラジオオンエア数50位と伸び悩みました。オリコン週刊シングルランキングでは初動売上19万7千枚で1位を獲得。前作「早送りカレンダー」の16万5千枚(1位)からアップ。

2位もハロプロ系の女性アイドルグループ、アンジュルム「恋はアッチャアッチャ」が入ってきています。インド音楽風の妖艶なナンバー。CD販売数2位、ラジオオンエア数12位、PCによるCD読取数28位、Twitterつぶやき数24位を獲得。オリコンでは初動売上4万8千枚で2位初登場。前作「タデ食う虫もLike it!」の4万枚(5位)よりアップしています。

女性アイドル系は4位以下にも韓国の女性アイドルグループBLACKPINK「Kill This Love」が先週の14位から6位にアップし、ベスト10入り。先週のHot Albumsで9位にランクインしたEP盤から表題曲がHot100でもランクイン。ダウンロード数6位、ストリーミング数2位、You Tube再生回数ではなんと1位を獲得しています。ほかにラジオオンエア数68位、Twitterつぶやき数は33位にランクイン。

もう1曲、10位にときめき宣伝部「ときめき宣伝部のVICTORY STORY」が初登場でランクイン。スターダストプロモーション所属の女性アイドルグループ。CD販売数が3位のほか、すべて圏外というCDをアイテム的に購入する固定ファン層以外に楽曲として一切波及していないヒットとなっています。オリコンでは初動売上3万8千枚で3位初登場。前作「DEADHEAT」の1万9千枚(5位)からアップしています。

さてベスト3に戻ります。今週3位はあいみょん「マリーゴールド」。先週から変わらず。ストリーミング数は15週連続の1位を獲得。You Tubeは3位にダウンしましたが、カラオケ歌唱回数は2位をキープ。ロングヒットはまだまだ続きそうです。また「ハルノヒ」も今週、8位から7位にアップし、2週連続2曲同時ランクインという結果となりました。

続いて4位以下の初登場曲ですが、アイドル系を除くと1曲のみ。三代目J SOUL BROTHERSの登坂広臣ことHIROOMI TOSAKA「SUPERMOON」が5位初登場となっています。CD販売数4位、ダウンロード数12位、ストリーミング数89位、PCによるCD読取数5位、Twitterつぶやき数4位という結果に。配信シングルやアルバムのリリースはありましたがCDでのシングルリリースは本作が初。オリコンでは初動売上3万3千枚で4位にランクインしています。

ロングヒットではまずおなじみ、米津玄師「Lemon」が4位をキープ。ダウンロード数はなんと2月25日付チャート以来、8週ぶりに1位返り咲き。You Tube再生回数も3位から2位にアップしています。You Tubeやストリーミングで「聴いている」のではなく、いまだにダウンロードで「購入」する人が多いというのは驚きです。back number「HAPPY BIRTHDAY」は残念ながら7位から9位にダウン。ただ、You Tube再生回数が先週の18位から7位にアップしており、ロングヒットとしてのよい傾向が見受けられます。

今週のHot100は以上。明日はHot Albums!

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2019年4月16日 (火)

ヒリヒリ感や危うさも感じさせるステージをそのまま収録

Title:2018 Tour「SKANKING JAPAN」"スカフェス in 城ホール" 2018.12.24
Musician:東京スカパラダイスオーケストラ

昨年、12月24日に大阪は大阪城ホールで行われた東京スカパラダイスオーケストラワンマンライブの模様を収録したライブアルバム。この日のライブは、昨年4月から行われてきたツアーのファイナル公演となったステージ。ツアーは全会場ソールドアウト。この大阪城ホールでも12,000人収容の会場をソールドアウトさせるなど、変わらぬ人気のほどを伺わせます。この日はゲストにエレカシの宮本浩次、BRAHMANのTOSHI-LOW、銀杏BOYZの峯田和伸、UNISON SQUARE GARDENの斎藤宏介が参加するなど、超豪華なラインナップでのライブとなっています。

ちなみに今回紹介するのはCD2枚組によるライブアルバムの紹介。DVDもしくはBlu-rayによる映像付のアイテムもリリースされていますが、こちらは残念ながら見れていません。

今回のライブアルバム、まず一言でいうと、とにかくカッコいい!特に序盤の展開が素晴らしく、「The Battle of Tokyo」からスタートし「ペドラーズ」「DOWN BEAT STOMP」と彼らの代表曲が続くのですが、ハイテンポのリズムにサックスやらトロンボーンやらトランペットやらと次々と畳みかける迫力あるサウンド、とにかく賑やかに展開されます。これらの曲に関してはアップテンポなリズムで会場にいれば思わず踊りだしそうになるのですが、それと同時にエッジの効いた勢いあるサウンドにどこか危うさやヒリヒリ感を覚えます。スカパラというと、正直ここ最近の彼らの方向性については「ポップになった」といって初期からのファンが否定的にとらえるケースも少なくないのですが、確かにこのライブの序盤で感じられる「危うさ」や「ヒリヒリ感」が彼らの魅力だとすると、最近の彼らの曲からはこういう感じは覚えないよな(・・・とはいいつつ「The Battle of Tokyo」は最近のナンバーなのですが)と思ってしまいます。

この勢いはその後も続いていき、6曲目以降に展開される彼らの代表曲や懐かしのナンバー、レア曲など6曲で構成された「トーキョースカメドレーSKANKING JAPAN 2018」まで一気に流れ込んでいきます。本当にこの前半、Disc1の勢いはとても魅力的でライブの雰囲気がそのまま伝わってくるよう。途中、ちょっと脱力感ある「恋するCha Cha Cha」などもちょうどよいスパイスとなりつつ、CDを通じても彼らのライブについつい引き込まれてしまいます。

Disc2については前半に比べると彼らの「ポップ」な側面をより前に出したような曲が並びます。特にゲストが参加した歌モノの曲も多く、ポップという印象がより強く。ポップなスカパラも決して悪くないのですが、ただ前半の危うさを感じる演奏からすると、物足りなさも感じてしまうのも事実。とはいえ、会場の盛り上がりを感じるナンバーの連続で、ライブの魅力はしっかりと伝わってきます。

そんな中でもアンコールではギムラがかつて歌っていた「ジャングルブギ」をBRAHMANのTOSHi-LOWがボーカルをとって披露。ギムラのボーカルで感じられるオリジナルほどの「大人の色気」や「危うさ」は残念ながら感じられなかったのですが、それでもその雰囲気は伝えており、TOSHI-LOWも十分検討した魅力的なステージが伝わってきます。

実はスカパラってイベント系のステージやフェスなども含めて1度もステージを見たことがありません。一度見てみたいとは思っていたのですが、このライブ盤を聴く限りだと、自分が想像している以上に迫力ある魅力的なステージが楽しめそう。これは一度見てみなくてはいけなさそうです!残念ながらこのライブ盤、当日のMCなどを含めてフル収録ではありませんが、ただ終盤、メンバーの谷中敦がバンドへの思い、特に「脱退したわけでもないのにいっちゃったメンバーも一緒に立っている気がする」というMCはそのまま収録。このメッセージには胸が熱くなりました。

そんな訳でスカパラの魅力をうまくパッケージしたライブ盤。選曲はベスト的ですし、スカパラの魅力を知るには最適なライブ盤だったと思います。スカパラ、一度ライブを見てみないといけないなぁ、ということを強く感じた作品でした。

評価:★★★★★

東京スカパラダイスオーケストラ 過去の作品
Perfect Future
PARADISE BLUE
WILD SKA SYMPHONY
Goldfingers
HEROES
Sunny Side of the Street
on the remix
Walkin'
欲望
Diamond In Your Heart
SKA ME FOREVER
The Last
TOKYO SKA Plays Disney
The Last~Live~
TOKYO SKA PARADISE ORCHESTRA~Selecao Brasileira~
Paradise Has NO BORDER
GLORIOUS


ほかに聴いたアルバム

THE OIO DAY/AA=

THE MAD CAPSULE MARKETSでの活躍で知られる上田剛士のソロプロジェクトAA=。昨年の10月20日はAA=の活動開始となった配信シングル「PEACE!!」のリリースからちょうど10年目となる記念すべき日だったのですが、その10周年を記念して東京・TSUTAYA O-EASTで開催されたスペシャルワンマンライブTHE OIO DAYの模様を収録した配信限定のライブアルバムがリリースされました。

疾走感あるヘヴィーでロッキンなバンドサウンドと音圧あるデジタルサウンドに心地よさを感じるステージ。その迫力はこのライブアルバムを通じても伝わってきます。ただ、AA=のオリジナルアルバムでも感じる、THE MAD CAPSULE MARKETSと似た方向性なのに、なぜか感じる物足りなさが今回のライブ盤でも感じてしまいます。ボーカルの弱さと、いまひとつ吹っ切り切れていないデジタルビートとへヴィーなバンドサウンドが物足りなさを感じる要因なのかなぁ。

評価:★★★★

AA= 過去の作品
#1
#2
#
4

#5
(re:Rec)

4REAL/ACE OF SPADES

GLAYのHISASHIやEXILEのTAKAHIROが参加して話題のACE OF SPADESの1stアルバム。もともとは2005年のGLAYとEXILEのコラボレーションがきっかけとした誕生したバンドで、当初は期間限定のバンドとしてデビューしたものの、その後、不定期に活動を継続。当初の結成から7年目にしてはじめてリリースされたアルバムが本作です。

ギターでリーダーのHISASI、ボーカルのTAKAHIROのほかはベースにRIZEなどで活動していたTOKIE、ドラムスは元THE MAD CAPSULE MARKETSのMOTOKATSU MIYAGAMIという本格的なメンバー。そのため特にアルバムの前半についてはメロディーラインはベタベタのJ-POPながらもバックの演奏は、正直ちょっとオールドスタイルなハードロックではあるものの、本格的かつヘヴィーなサウンドを響かせています。ある意味、若干今更感もあるハードロックなサウンドと、J-POPらしいわかりやすいメロディーラインから来るベタベタな感じが逆に気持ちよく、前半に関しては間違いなく楽しく聴ける内容になっていました。

ただ後半になるとバンドサウンドが後ろに下がり、歌謡曲的なメロディーが前に出てきた平凡なJ-POPナンバーになってしまい、せっかくのバンドスタイルが生かされていませんでした。そのため後半は聴いていて、かなりダレてしまいました・・・。もうちょっとロックな感じを前に押し出したほうがカッコいいと思うのですが。かなり惜しい感じのするアルバムでした。

評価:★★★

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2019年4月15日 (月)

注目の新プロジェクト

オリジナルアルバムは2016年の「Barbara Barbara,We Face A Shining Future」以降少々ご無沙汰なのですが、昨年はIggy PopとのコラボEPをリリースしたUnderworld。なにげに積極的な活動を続けている彼らが昨年11月に「Drift」というプロジェクトをスタートされました。これは自らも所属するデザイン集団TOMATOのほか、脚本家からジャズDJ、テクノDJ、画家、詩人など様々なジャンルの友人たちと立ち上げた、音楽のみならず映像や物語などで新たな創作を継続していくプロジェクト。Episode1では毎週木曜日に新曲とMVをアップ。まずは昨年12月に「Drift」で発表した曲をEPとしてまとめてリリースしています。

Title:DRIFT Episode "DUST"
Musician:Underworld

いまさらながらこのアルバムを紹介するのは、実はリアルタイムに彼らのプロジェクトを追いかけてなくて、先日リリースされたEpisode2のEPリリース時にようやくこのプロジェクトのことを知ったためです(^^;;そんな訳で後追い的にこのEPを聴いてみた訳ですが、これが非常に気持ちの良いUnderworldらしいミニマルテクノが収録された傑作に仕上がっていました。

今回のプロジェクトは1つのアルバムとしてまとめる必要もなく、かつ気心知れた仲間たちとのプロジェクトだからかもしれませんが、とてもシンプルでUnderworldらしさをきちんと体現化させたような、肩の力が抜けたかのようなエレクトロチューンが並んでいました。「Universe Of Can When Back」も軽快なミニマルテクノが心地よいナンバーなのですが、続く「Dexters Chalk」はトランシーなサウンドに聴いていてまさしくアゲアゲな気分となっていきますし、さらに今回のプロジェクトの第1弾となった「Another Silent Way」は心地よいビートを奏でるエレクトロサウンドに気分があがってくるダンスチューンに仕上がっています。まずは第1弾ということで飛び切りのキラーチューンからスタート、といった感じなのでしょうか。

ラストはチルアウト的な「A Very Silent Way」で締めくくられ良い意味で落ちがついているアルバムとなっています。ちなみに今回のEP盤はプロジェクトの発表順とは異なりアルバムとしての流れも考えられた構成になっています。そのため中盤にアゲアゲのナンバーが並び、最後はチルアウトチューンで締めくくりという心地よい展開に。ある意味目新しい曲はありませんが、Underworldらしさをしっかりと感じるリスナーの期待にしっかりと応えた傑作アルバムになっていたと思います。

評価:★★★★★

Title:DRIFT Episode2 "ATOM"
Musician:Underworld

そしてこちらが続くプロジェクト第2弾。こちらも今年1月から毎週木曜日に新曲を発表。それをまとめてEPとしてリリースしています。

アゲアゲで気持ち良いミニマルテクノナンバーが中心だったEpisode1と比べると、1曲目「Appleshine」からいきなりアンビエント的なナンバーからスタートしたEpisode2。続く2曲目の「Molehill」もストリングスとピアノに美しいハーモニーが加わる幻想的なナンバーに仕上がっています。一方でそれに続く「Threat Of Rain」「Brussels」はテンポよい四つ打ちがリズムを刻むミニマルテクノなナンバーに。ただこれらのナンバーもアゲアゲというよりもサウンドは抑え気味。淡々とリズムが続くようなナンバーとなっています。

そんな訳でEpisode1とはまた様相の異なる曲が収録さているアルバムとなったEpisode2。ちなみに今回のアルバムはプロジェクトの発表順そのままとなっており、プロジェクト自体、最初からEPを意識したリリースになっていたようです。この淡々と進むエレクトロチューンもなかなかよかったのですが・・・ただアルバムラストに収録されている「Appleshine Continuum」はなんと47分にも及ぶナンバー。そのためEP盤なのですが、全90分近くに及ぶ長いナンバーになってます。そしてラストの「Appleshine Continuum」は淡々と進むアンビエント的なナンバーで・・・正直言って、最後は完全にダレてしまいました。アルバムとして聴いた場合は少々バランスの悪さも感じますし、ちょっと蛇足だったような印象も。Episode1とは異なるUnderworldの音楽性を聴けるのは楽しいのですが、最後まで聴くとちょっと飽きてしまったアルバムでした。

ちなみに3月からはEpisode3をスタート。すでに発表されているEpisode3の1曲目「Dune」はちょっとメロウでダウナーな雰囲気が心地よいナンバーで、これまたEpisode1とも2とも違う雰囲気に。こちらはどんな感じの展開を見せるのでしょうか。Episode3も楽しみです。

評価:★★★★

UNDERWORLD 過去の作品
Oblivion with Bells
The Bells!The Bells!
Barking
LIVE FROM THE ROUNDHOUSE
1992-2012 The Anthology
A Collection
Barbara Barbara, we face a shining future
Teatime Dub Encounters(Underworld&Iggy Pop)

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2019年4月14日 (日)

豪華なゲストも話題の12年ぶりの新作

Title:To Believe
Musician:The Cinematic Orchestra

今年、結成20周年を迎えるイギリスのバンドによる約12年ぶりの新譜。もっとも12年前のアルバムは聴いたことがなく今回のアルバムの評判がよかったようなので、本作ではじめて彼らの音に触れてみました。ジャンル的にはトリップポップやニュージャズという紹介をされる彼ら。どちらかというとインディーシーンで知る人ぞ知るといったイメージでしょうか。

本作はかなり豪華なゲスト陣も大きな話題に。ボーカルには注目の新人SSW、モーゼス・サムニーやイギリスのHIP HOPシーンで活躍を続けるルーツ・マヌーヴァといったメンバーが参加。「A Caged Bird/Imitations of Life」ではオランダの交響楽団メトロポール・オーケストラが参加しているほか、ミックスエンジニアにはアデルやU2などといったミュージシャンも手掛け、グラミー賞も受賞しているトム・エルムハーストを起用。豪華なゲストがズラリと参加した作品になっています。

と、ここまで書くと、どうも「音楽通」向けの小難しい音楽・・・・なんてことをイメージしてしまうかもしれません。しかし実際にアルバムは決して初心者お断りといったタイプの小難しいポップスではありません。まずアルバムはタイトルチューン「To Believe」からスタートするのですが、この曲はピアノやアコギ、ストリングスなどの静かなサウンドをバックにモーゼス・サムニーのファルセットボイスで優しく静かに聴かせるメロディアスなナンバー。そのモーゼス・サムニーの狂おしいまでに美しい歌声とメロディーが心に響いてくるナンバーにまずは強く惹かれます。

その後も「Wait for Now/Leave The World」もロンドンで注目を集めるSSWのTawaiahが伸びやかなボーカルを聴かせるソウル風のバラードナンバー。こちらもいい意味で聴きやすいポップな唄モノ。「Zero One/This Fantasy」も優しい雰囲気の男性ボーカルによるメロディアスなポップチューンに仕上がっていますし、ラストを飾る「A Promise」もThe Cinematic Orchestraのライブではおなじみ(らしい)のハイディ・ヴォーゲルによる伸びやかで透き通る歌声が心地よいバラードナンバーで締めくくられています。

そんな訳で全体的にはまずはポップなメロディーや心に響いてくるボーカルがまずは印象に残るアルバムで、そういう意味では聴きやすさのあるポップなアルバムに仕上がっています。しかしもちろんそんなボーカルトラックが乗るサウンドも彼らの大きな魅力であることは間違いありません。ミュージシャン名通り、エレクトロサウンドをふんだんに取り入れて、映画音楽のようなスケール感を覚えるサウンドが彼らの大きな魅力。今回のアルバムでも唄モノの間にはインストチューンが組み込まれており、しっかりと彼らのサウンドも聴くことが出来ます。

ただし、これらのインストチューンに関しても「The Workes of Art」ではエレクトロサウンドにストリングスを組み込んだ壮大なサウンドを作り上げつつ、切ない哀愁感漂うメロディーがしっかりと流れてるナンバーになっていますし、「The King's Magician」もサックスを前に出したムーディーでジャジーな作風で、こちらも物悲しげなメロディーがしっかり流れているナンバーになっています。

そういう意味ではこれらのインストナンバーを含めてバンドとしての歌心を感じさせるアルバムに仕上がっている、といってもいいかもしれません。そんな訳で、知る人ぞ知る的なミュージシャンかもしれませんが、比較的広い層が楽しめそうなポップアルバムに仕上がっていました。どこかAOR的な色合いも感じさせるサウンドもいい意味で今風な印象も。サウンド面でもメロディーの側面でもまたボーカルもどこをとっても非常に魅力的な1枚でした。

評価:★★★★★

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2019年4月13日 (土)

歌詞が強く印象に残る

Title:阿部真央ベスト
Musician:阿部真央

今年メジャーデビュー10周年を迎える女性シンガーソングライター阿部真央。10周年を迎えた彼女がひとつの区切りとしてリリースしたのが今回のベストアルバムです。全2枚組となる今回のベストアルバムはデビューアルバムの1曲目に収録された「ふりぃ」からスタート。純粋な発表順ではないようですが、ほぼ彼女の活動に沿った形での曲順になっており、彼女のミュージシャンとしての歩みがわかる構成となっています。

さて彼女はいまから10年前、まだ19歳という若さでデビューを果たしました。この頃の彼女の書く歌詞は19歳という彼女の年齢をそのまま反映した「大人と子どもの狭間で悩む10代の本音」を描くスタイル。本作に収録されている「17歳の唄」がまさに典型的なのですが、まさにそんな微妙な年ごろのティーンエイジャーの心境を描く歌詞が大きな特徴となっています。

この微妙な年ごろのティーンエイジャーの本音を描く、と言うと一人思い出されるミュージシャンがいます。それは渡辺美里。彼女のデビュー当初の歌詞のテーマも、まさに大人と子どもの狭間で悩む10代の本音。ポップ寄りのロックという音楽のスタイルも似ていますし、デビュー当初の阿部真央のスタイルは何気に渡辺美里と被る部分が多いことにいまさらながら気が付かされました。

ただ、その後比較的すんなりポップス路線にシフトした渡辺美里と比べると阿部真央の場合はその後、その方向性に悩んだように感じます。特にデビュー2枚目のアルバムとなる「ポっぷ」はこのベスト盤に収録されている「モンロー」のようないきなりきゃりーぱみゅぱみゅか?と思うようなアイドル風のエレクトロポップが登場するなど、あきらかに方向性の迷いが見えます。私はこの「ポっぷ」というアルバムではじめて彼女のアルバムを聴いたのですが、あまりにもバラバラな方向性を当時酷評しました。ただいまから考えると、10代から20代になって大人になった彼女の音楽性の迷いが反映されていたアルバムだったんだな、ということにこのベスト盤で気が付きました。

しかしその後の彼女については、ギター主体のシンプルなポップスロックというスタイルを軸に女の子の本音をわかりやすい言葉で歌うというスタイルをしっかりと確立したように感じます。異性のおもわせぶりな行動に勘違いして恋してしまった人の切ない心境を描く「じゃあ、何故」は女性ならずとも男性にも歌詞が胸に迫ってきますし、恋人を思う気持ちを歌う「天使はいたんだ」は恋が成就した歌詞なのですが、彼女の思う気持ちに切なさを感じてしまう表現が見事。また、「Believe in youself」など力強い前向きのメッセージソングも目立ちます。

一方では「ストーカーの唄~3丁目、貴方の家~」のようなストーカーじみた行動を描くちょっと怖い曲もあったり、「クソメンクソガールの唄」のような言葉は悪くても自分に自信がなく自分なんてと思っているような人たちに対して力強く応援するような優しさを感じさせる曲もあったりとテーマ性を含めてインパクトのある楽曲も少なくありません。

楽曲面では比較的シンプルなギターロックがメインなのですが、シンプルなだけに歌と歌詞がしっかりと心に届いてくるような曲が多いのが魅力的。デビュー直後はいろいろと方向性に悩んでいたような彼女でしたが、今はしっかりと阿部真央のスタイルを確立したように感じます。

ただちょっと気になるのは、来年30歳になる彼女。さらに大人な女性となっていくわけですが、そんな中、彼女の歌詞のスタイルがどのように変化していくのか気になります。渡辺美里の場合、20代は見事な大成功をおさめましたが、30代以降、「大人の女性」へのシフトに完全に失敗し、人気的にも音楽的にも失速してしまいました。彼女の場合は本作でも「母である為に」のような子どもに対する母としてのメッセージソングがあったりと、それなりに大人の女性へのシフトを果たしていますが、ただ全体的には20代らしい若々しさを感じる歌詞がメイン。30代となり上手く年齢なりのスタイルにシフトできるのか・・・これから10年は彼女にとってさらなる勝負が待ち構えていると言えるかもしれません。

そんな訳で、いままで10年を振り返ると同時に、来年30歳を迎える彼女にとっては間違いなくひとつの区切りの時期である今だからこそリリースされたベスト盤と言えるかもしれません。これからの彼女がどのように進んでいくのか不安もありますが楽しみでもあります。これからも彼女の活動には要注目と言えるでしょう。

評価:★★★★★

阿部真央 過去の作品
ポっぷ
シングルコレクション19-24
おっぱじめ
Babe.
YOU


ほかに聴いたアルバム

誰もが勇気を忘れちゃいけない~大事なことはすべて阿久悠が教えてくれた~

名実ともに日本歌謡界を代表する作詞家として知られる阿久悠。本作は彼の膨大な仕事の中からアニメソング、特撮ソング、キッズソングなどを収録したオムニバスアルバム。「ウルトラマンタロウ」「宇宙戦艦ヤマト」などリアルタイムで聴いていない世代でも知っているような有名曲も収録されていますが、大半はリアルタイム世代以外にはなじみのない曲が並びます。ただ、アニソンにしろ特撮ソングにしろ、番組を見ていなければわからないような固有名詞や番組の内容に沿った歌詞が並ぶ曲が多く、最近のアニソンとの違うは感じます。表現にしても今となっては微妙な表現も少なくなく、「昭和」という時代を感じる内容に。そんな中にこのオムニバスアルバムのタイトルのような子どもたちへのメッセージも巧みに織り込まれており、作詞家としての力量を感じさせます。ジャケットは最近話題の漫画「王様ランキング」から取られているようで、若い世代が惹きつけられそうですが、内容的にはむしろ50代、60代あたりが懐かしく感じる内容かも。

評価:★★★★

CENTER OF THE EARTH/a flood of circle

ギターにアオキテツが正式メンバーとして加わった後に制作された初となるアルバム。いままでのアルバムに比べてかなりポップス色が強いアルバムで、「Youth」などは歌詞も含めて一時期流行った青春パンクか?と思うような内容に。ボーカルの佐々木亮介は声が端整なため、ポップ色に走ると途端に悪い意味での平凡なJ-POP的な作風に陥ってしまう危険性が大きいのですが、ガレージ色が薄くなってしまった本作は残念ながらその傾向が強くなってしまった印象も。疾走感ある「ハイテンションソング」などカッコいいナンバーもあるのですが・・・。

評価:★★★

a flood of circle 過去の作品
泥水のメロディー
BUFFALO SOUL
PARADOX PARADE
ZOOMANITY
LOVE IS LIKE A ROCK'N'ROLL
FUCK FOREVER
I'M FREE
GOLDEN TIME
ベストライド
"THE BLUE"-AFOC 2006-2015-
NEW TRIBE
a flood of circle

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