2023年12月10日 (日)

大黒ミサの模様を完全収録

Title:聖飢魔II 期間再延長再集結「35++執念の大黒ミサツアー -東京FINAL-」
Musician:聖飢魔Ⅱ

1980年代後半から1990年代にかけて人気を博し、当時、日本では「マイナー」な分野だったヘヴィー・メタルというジャンルを一気にメジャーなものに引き上げたロックバンド、聖飢魔Ⅱ。自らを「悪魔」と名乗り、バンドを音楽を媒体として「悪魔教」を布教する教団と名乗っている彼ら。その徹底したコンセプト作りは、おそらく熱心な信者じゃなくてもご存じのことでしょう。1999年に地球制服が完了した、としてバンドは解散したものの、2005年に地球デビュー20周年を記念して再集結。その後もほぼ5年毎に再集結しており、地球デビュー35周年を記念して2020年も再集結を予定していました。

ただ、2020年といえば、新型コロナが世界に蔓延し、ライブが一切できなくなった時期。「悪魔」とはいえ例外ではなく、大黒ミサツアー(=ライブツアー)は中止。ただ、ライブが徐々に再開できる状況になった後、まさに「執念」とも言える再結成ツアーを実施。この大教典(=アルバム)は、そんな彼らの大黒ミサツアーのファイナル、2023年2月15日に東京、代々木第一体育館で行われた黒ミサの模様を収録したものとなります。

こちらはその日の模様をおさめたアルバムなのですが、最大の特徴としてはオープニングからエンディングまで、大黒ミサの模様をほぼ全て納めているという点。途中のMCはもちろん、オープニングや途中の休憩時間に会場に流れたトーク、さらには客だしのエンディングまで収録されているという徹底ぶり。MCを含めて全体的な演出で楽しませてくれる聖飢魔Ⅱの大黒ミサの雰囲気が、CD音源であってもしっかり伝わってくる作品に仕上がっています。

楽曲は往年の代表曲に、2022年にリリースされた最新アルバム「BLOODIEST」の作品が間に挟まったような構成。「BLOODIEST」からの曲に関しては、かつての代表曲から20年以上のインターバルを持ってのリリースなだけに、若干、いかにも80年メタルの影響を感じるかつての曲に比べると、今風なヘヴィーロックの色合いが強い点も印象的。ただ、かつての代表曲も最新アルバムからの曲も並列に聴いてもさほど違和感のない点、しっかりと聖飢魔Ⅱとしての個性が楽曲に反映されているからでしょうし、また、20年以上たった今でも、その実力に衰えのない証拠とも言えるでしょう。また、最近の音にアップデートされた「BLOODIEST」からの楽曲が加わることによって、黒ミサ全体に新鮮味が加わり、彼らがいまでもしっかり現役のバンドなんだということが、はっきりと認識できるように感じました。

一方、10万歳を超える悪魔の彼らですが、「世を忍ぶ仮の身体」は老化は否めず、特にデーモン閣下のボーカルについては、かつてほどの声量が出ていない旨の指摘をレビューなどでも見かけました。確かに全盛期に比べれば衰えは否めませんが、それても今なおしっかり艶のある伸びやかなボーカルを聴かせてくれており、その歌唱力は天下一品。バンドの演奏についてももちろん衰えもなく、高い演奏力、高い歌唱力というバンドの実力は、しっかりその健在ぶりをうかがせます。

あえていえば3時間超えという時間にも関わらず休憩やトークも多く、全19曲という曲数はちょっと少なめで、その点、やはり体力の面で・・・という感は否めないのですが、MC自体、非常に楽しませてくれますし、そのステージのすばらしさはこの音源からもしっかりと伝わってきます。

コロナ禍による延長という自体もあって、既に再来年が結成40周年となってしまうそうで、MCでは結成40周年での再集結も(ほぼ)約束していました。ほぼ5年毎に集結するのって、もうバンドとして解散していないのでは??と思わなくもないのですが(笑)、この「代々木第一体育館」はバンドとして過去最大の動員数だったそうで、ここに来て人気が高まっている点は驚き。ただ、その理由も納得の、CDで聴いているだけでも楽しさ、すばらしさのわかる大教典でした。40周年の時は、是非とも足を運びたいなぁ。

評価:★★★★★

聖飢魔Ⅱ 過去の作品
XXX-THE ULTIMATE WORST-
BLOODIEST
聖飢魔Ⅱ 期間再延長再集結「35++執念の大黒ミサツアー -大阪-」


ほかに聴いたアルバム

Rest In Punk/HEY-SMITH

パンクロックバンドHEY-SMITHの実に約5年ぶりとなるニューアルバム。分厚いバンドサウンドにホーンセッションを入れたパンクロックが軽快で楽しく、ライブだととにかく盛り上がりそうな予感も。スカの要素も入ったリズムもとても軽快で楽しい感じに。長さも全11曲25分とあっという間に聴き切れる長さなだけに、ポップパンクらしい、難しいことを考えずにまずは楽しめる、そんなアルバムになっていました。

評価:★★★★

HEY-SMITH 過去の作品
STOP THE WAR

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2023年12月 9日 (土)

あれからもう20年・・・。

今回は最近見た映像作品の紹介です。

2003年に、エピックレコードの創立25周年を記念して行われたライブイベント「LIVE EPIC 25」の模様を収録したBlu-ray。もともと公演直後にDVDとして映像化されたのですが、このたび「LIVE EPIC 25(20th Anniversary Edition)」として、Blu-rayで再発売されました。

エピックレコードといえば、1978年に設立。特に80年代から90年代にかけて、特に当時の日本のポップスシーンの中では「尖った」ミュージシャンを多くデビューさせ、注目を集めました。私自身も、「レーベル」という単位で注目したのはこのエピックレコードー当時は「エピックソニー」という名前でしたので、そちらの方がなじみがあるのですがーがはじめて。大ファンの渡辺美里の所属レーベルであり、他にもTM NETWORKや大江千里、もうちょっと時代は下りますが、JUDY AND MARYや久宝留理子など、個人的に好きだったミュージシャンが多く所属していたということもあり、エピックソニーという名前はまだ高校生だった当時から気になるレーベルでした。

それだけにこの「LIVE EPIC 25」というイベント、リアルタイムで足を運んでいます。今回のBlu-rayに収録されているのは2003年2月23日に行われた最終公演でしたが、私が足を運んだのは1日前の2月22日。当時のライブレポは既にサイトから消えているので、今回、あらためてアップしました。

LIVE EPIC ライブレポート(@代々木第一体育館 2003年2月22日)

まず、今回、20周年記念盤がリリースされるということで強く感じたことは、エピックレコード創立から25年目のイベントから、既に20年という月日が経過した、という驚き。このライブイベントの時点で、ここに出演していたミュージシャンの全盛期は「かなり昔」ということを感じていたのですが、その時点から既に20年も経ったとは・・・。月日の経過の早さをあらためて感じます。まあ、ただこの「20年間」に自分に起こった出来事を振り返ると、確かにそのくらいたったなぁ、とは思うのですが。

もうひとつ感じるのは、ここから20年を経過しているのですが、ここにいるミュージシャンたちの日本の音楽シーンにおける立ち位置に、おそらくほとんど変化がない、という驚きです。あえて言えば大江千里はニューヨークに移住し、ジャズミュージシャンになってしまいましたが、他のミュージシャンたちは、復活したBARBEE BOYSを含めてバリバリの現役ですし、おそらく人気の程度も当時とあまり変化はないのでは?おそらく今、「LIVE EPIC 45」として同じミュージシャンを集めても、同じように代々木第一あたりは十分埋まりそうな気がします。それだけ、参加ミュージシャンたちの実力があると感じる反面、20年間の日本の音楽市場にドラスティックな変化が起きておらず、停滞気味という事実も感じてしまうのですが。

また、今回久しぶりに20年前に書いたライブレポートを見たのですが、その当時感じたことと、今、映像を見て感じたことにほとんど変わりがないことに気が付きました。確かに懐メロ的な雰囲気は強く、大江千里なんて全然声が出ていませんし、TM NETWORKも、小室哲哉もまだglobeとしての活躍がメインだった時期で、TMとしての活動は限定的。どこか「懐かしのヒット曲」的な雰囲気が漂っている点は否めません。

一方、その日も感じたのですが、ベストアクトはBARBEE BOYS。今でこそ、その後、何度か再結成を行い、現在は復活している状況を知っているのですが、これが1999年の解散後、初となる再結成。それにも関わらず、往年と変わらないようなアグレッシブで、なおかつ緊張感のあるステージを見せてくれており、その実力が健在であることを感じました。特にBARBEE BOYSといえば、ボーカルのKONTAと杏子の緊迫感ある男女の掛け合いが魅力的なのですが、ひょっとして一度距離を置いて久々のステージだったからこそ、より緊迫感あるステージを見せてくれたのかもしれません。

ちなみに余談ですが、この「LIVE EPIC 25」、岡村靖幸が当初、参加を予定していたのですが、直前で急遽、参加が取りやめになった、ということがありました。ステージで、松岡英明がその旨を詫びて、自分の曲の中に岡村靖幸の「だいすき」のフレーズを取り入れていたりしていたのですが・・・今となってはよく知られているとおり、この時の参加中止は、覚せい剤所持で逮捕されていた影響。ちなみに鈴木雅之のステージでも、暗にMCで田代まさしの話をしており、覚せい剤の逮捕者が妙にイベントに関わっているのが印象的(苦笑)。ただ、20年を経った今、岡村ちゃんは何度も逮捕されて一時期、再起が危ぶまれていたものの、見事復活したのに対して、田代まさしは・・・。

ちなみに本作、映像特典として事前のリハーサルでの模様をおさめたドキュメンタリーが収録されています。7分程度の短い内容ながらも、参加者の人となりも知れる感じの映像で、こちらもなかなか見ごたえがあります。ただこちら、ジャケットに全く記載がなく、わざわざメニュー画面まで戻って選択しないと見れないような、「隠し映像」・・・ではないのですが、気が付かない人もいるかも・・・。なんでジャケットに何も記載がないのだろう?

そんな訳で、20年前のイベントを懐かしく思いつつ、今なお感じる魅力的なメンツに、3時間強というボリュームながらもまったくダレることなく一気に楽しめた映像作品になっていました。イベントに参加した方はもちろん、イベントに足を運び損ねた方、その後、エピックの魅力に触れた方、アラフィフ世代感涙の、お勧めの映像作品です。

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2023年12月 8日 (金)

キュートなギターポップを堪能

Alvvays Japan Tour 2023

会場 ElectricLadyLand 日時 2023年11月29日(水)19:00~

カナダのインディーロックバンド、Alvvays。2022年にリリースしたアルバム「Blue Rev」にはまり、2022年の私的年間ベストアルバムに選定するなどはまったのですが、このたびジャパンツアーが実施され、ちょうど日程的に行けそうだったので、足を運んできました。

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場所は名古屋大須のElectricLadyLand。なんとなくのイメージだけど外タレでこの箱はちょっと珍しい印象も。どちらかというと、クワトロやボトムラインというイメージが強いので。

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ステージのバックには大きくバンド名が。ちょっとビックリしたのですが、会場はほぼ満員。後ろまで人がギッシリ詰まっていました。日本でも高い注目を集めているバンドということを実感しました。

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19時10分ちょっと前くらいにメンバーが登場。5人プラスサポートの1名という構成でライブはスタートとなりました。風貌としては失礼ながら、いかにもインディーバンドらしい、あか抜けない大学生5人組といった雰囲気。というか、この手のインディーバンドの風貌は、日本も海外も変わらないんだなぁ、と親近感(?)を覚えつつみていました。

楽曲は現時点での最新アルバム「Blue Rev」の1曲目「Pharmacist」からスタート。その後は、同じく「Blue Rev」の「After the Earthquake」へと続きます。その後も基本的に「Blue Rev」からの曲を中心に、過去のアルバムからの曲も披露されるような構成。彼女たちらしい軽快でキュート、ポップなギターロックナンバーが続きます。

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最新アルバムからは「Many Mirrors」「Tom Verlaine」「Belinda Says」「Bored in Bristol」などが続きます。全体的に比較的淡々と、キュートなポップチューンの美メロを聴かせていく展開。決して派手なパフォーマンスはなく、淡々としたプレイなのですが、そのメロディーラインの美しさに耳を傾けます。

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ギターボーカルのモリー・ランキン。バンドのソングライターでもあります。この日もギター片手にキュートなボーカルを聴かせてくれました。

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キーボードのケリー・マクラーレン。黒髪長髪の風貌が、いかにもインディーバンドっぽい雰囲気・・・。

本編ラストは「Dremas Tonite」から、「Easy on Your Own?」へと続き終了。もちろんその後はアンコールが起こりますが、比較的早いタイミングで、再びメンバーがステージ上に戻り、アンコールとなります。

アンコールは最新アルバムから「Velvetten」そして「Lottery Noises」の2曲を披露して締めくくり。全1時間半弱という、(予想はしていたのですが)比較的短い時間でのステージで幕を閉じました。

前述の通り、基本的にはキュートでポップなギターロックが淡々と続くようなスタイルで、大きな盛り上がり、みたいなものはありませんでした。ただ、終始、美しいメロディーラインが楽しめたステージで、モリーのキュートなボーカルもあって、最初から最後まで爽やかな雰囲気が会場を包む、とても心地よいステージになっていました。会場はほぼ満員で、これがはじめての名古屋公演、MCでも「はじめてきました」とコメントしていましたが、それにも関わらずこれだけの動員があるあたり、バンドへの期待の高さをうかがわせますし、それにしっかりと応えた素晴らしいステージだったと思います。

なによりも、シューゲイザーの影響も加わったほどよくノイジーなサウンドに、TFC直系のポップなメロディーが個人的には壺をつきまくり。また、名古屋に来ることがあればライブを見てみたいなぁ。非常に心地よく楽しめた1時間半でした。

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2023年12月 7日 (木)

見事、あのロックバンドが1位を獲得

今週のHot Albums

http://www.billboard-japan.com/chart_insight/

すっかり「アイドルグッズの人気投票」的な場所になりつつあるHot Albumsですが、今週は見事、あのロックバンドのアルバムが1位獲得です。

1位はKing Gnu「THE GREATEST UNKNOWN」が見事獲得。大ヒットを記録した「一途」や、現在もロングヒット中の「SPECIALZ」を含む全21曲入りの約4年ぶりとなるニューアルバム。CD販売数及びダウンロード数で共に1位を獲得。オリコン週間アルバムランキングでも初動売上20万3千枚を記録し、1位初登場。ただ、前作「CEREMONY」の初動売上23万8千枚(1位)からはダウンしています。

2位には、旧ジャニーズ系男性アイドルグループA.B.C-Z「5 STARS」が獲得。CD販売数2位。全8曲入りのEP盤となっています。オリコンでは初動売上3万3千枚で2位初登場。前作「BEST OF A.B.C-Z」の初動売上5万4千枚(1位)からダウンしています。

さらに3位4位にもロックバンドのアルバムがランクイン。LUNA SEA「MOTHER」「STYLE」がそれぞれ3位4位にランクインしています。こちらは1994年にリリースされた4thアルバム「MOTHER」と1996年にリリースされた5thアルバム「STYLE」のセルフカバーアルバム。2011年に同じく「LUNA SEA」のセルフカバーアルバムをリリースしていますが、それに続くセルフカバーとなります。「MOTHER」はCD販売数5位、ダウンロード数2位、「STYLE」はCD販売数6位、ダウンロード数4位。オリコンでは「MOTHER」が初動売上1万5千枚で4位、「STYLE」が1万4千枚で6位にランクイン。直近作はオリジナルアルバム「CROSS」で、同作の初動2万9千枚(3位)からダウンしています。

続いて4位以下の初登場盤です。まず5位に韓国の女性アイドルグループaespa「Drama」がランクイン。CD販売数3位、ダウンロード数65位。オリコンでは今週、1万4千枚を売り上げて5位にランクイン。ただ、輸入盤のリリースは11月10日にリリースされており、先々週のチャートで初動7千枚を売り上げて11位に初登場しています。おそらく12月3日より、特典付きのアルバムがワーナーミュージック・ストアでリリースされたため、その分が加味された影響かと思われます。

9位には声優内田雄馬「Y」が初登場。CD販売数8位、ダウンロード数45位。オリコンでは初動売上8千枚で9位初登場。前作「Equal」の初動1万1千枚(7位)からダウンしています。

最後10位には優里「響」がランクイン。CD販売数9位、ダウンロード数17位。「ドライフラワー」や「ベテルギウス」などの彼のヒット曲をオーケストラアレンジを施したアルバム。オリコンでは初動売上6千枚で10位初登場。直近作は80年代の邦楽をカバーしたカバーアルバム「詩-80's」で、同作の初動売上7千枚(7位)から若干のダウン。この手のオーケストラアレンジアルバムとしては健闘した結果ではないでしょうか。

今週のHot Albumsは以上。チャート評はまた来週の水曜日に!

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2023年12月 6日 (水)

今週もAdo vs YOASOBI

今週のHot100

http://www.billboard-japan.com/chart_insight/

今週もAdoとYOASOBIが並びました。

Ado_show

まず1位はAdo「唱」。これで6週連続通算10週目の1位獲得となります。ストリーミング数は11週連続、YouTube再生回数は9週連続の1位を獲得。ただし、ダウンロード数は1位から3位にダウンしています。

一方、YOASOBI「アイドル」は先週と変わらず2位をキープ。これで34週連続のベスト10ヒット&通算32週目のベスト3ヒットとなっています。ただ、ストリーミング数、YouTube再生回数は先週の2位から3位にダウン。ダウンロード数は先週から変わらず10位をキープしています。一方、「勇者」も4位から6位にダウン。こちらもダウンロード数は2位から4位、YouTube再生回数も3位から4位にダウン。ストリーミング数は5位をキープしています。ただ、こちらも10週連続のベスト10を維持しています。

3位は初登場曲。女性声優アイドルグループ=LOVE「ラストノートしか知らない」がランクイン。CD販売数1位にランクイン。そのほかのチャートはすべてランク圏外でしたが、総合チャートでベスト3入りとなりました。オリコン週間シングルランキングでは初動売上20万6千枚で1位初登場。前作「ナツマトペ」の初動17万9千枚(1位)よりアップしています。

続いて4位以下の初登場曲ですが、まず4位にKID PHENOMENON「存在証明」がランクイン。CD販売数2位、ラジオオンエア数1位ながら、その他のチャートはランク圏外となり、総合順位はこの位置に。LDH所属のダンスグループによる2枚目のシングル。オリコンでは初動売上6万5千枚で2位初登場。前作「Wheelie」の初動8万4千枚(4位)からダウンしています。

8位にはtuki.「晩餐歌」が先週の13位からランクアップし、ベスト10初登場。若干15歳の女性シンガーソングライターによるデビュー作。SNSから大きな話題となり徐々にランクアップし、チャートイン9週目にしてベスト10入りとなりました。ダウンロード数7位、ストリーミング数6位、YouTube再生回数13位。今後のロングヒットも期待できそうです。

続いてロングヒットですが、まずKing Gnu「SPECIALZ」が先週と変わらず5位をキープ。ダウンロード数は6位から18位、YouTube再生回数も4位から6位にダウンしているものの、今週、ストリーミング数が「アイドル」を抜いて4位から2位にアップしています。これで14週連続のベスト10ヒットとなりましたが、今後のさらなるロングヒットも期待できそうです。

Vaundy「怪獣の花唄」は先週の8位からワンランクアップの7位。カラオケ歌唱回数は今週も6週連続、通算18週目の1位を獲得。これで通算47週目のベスト10ヒットとなっています。

さらにシャイトープ「ランデヴー」は7位から9位にダウン。こちらは先週まで3週連続の3位だったストリーミング数が4位にダウン。ダウンロード数は24位から31位、ストリーミング数も28位から37位にダウンといまひとつ伸び悩んでいます。ただ、これで通算10週目のベスト10ヒットとなりました。

今週のHot100は以上。明日はHot Albums!

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2023年12月 5日 (火)

架空のラジオ番組を楽しめる、良質なシティポップコンピ盤

今回は、話題のシティポップのコンピレーションアルバムの紹介です。

Title:FM STATION 8090~GOOD OLD RADIO DAYS~ DAYTIME CITYPOP by Kamasami Kong

Title:FM STATION 8090~GENIUS CLUB~ NIGHTTIME CITYPOP by Katsuya Kobayashi

架空のFMラジオ局「FM STATION 8090」から流れるラジオ番組をイメージしたコンピレーションアルバム。ラジオ番組そのままに、曲の間にMCのコメントや簡単な曲紹介が入るスタイル。曲間のMCも全て英語となっており、FM局でも、特にInter FM系、もしくは(90年代あたりの?)JFL系を彷彿とさせる雰囲気となっています。

そして参加しているMC勢も豪華。「DAYTIME CITYPOP」の方はカミサマ・コング、「NIGHTTIME CITYPOP」は小林克也と、FMのMCとしてはおなじみの大御所が参加しています。その名前を知らなくても、声を聴けば、おそらく「ああ、あの人」と誰もが思うような声だと思います。

「架空のラジオ番組」という点ではかなりこだわりがあるようで、特に「DAYTIME CITYPOP」の方では、曲間になんとゲストとして早見優が登場し、曲をリクエストする、なんていう、いかにもラジオ番組らしいコーナーもあったりして。聴いていて本当にラジオ番組を聴いているかのように錯覚してしまいそうな、凝った構成になっています。

楽曲は、最近では海外からも高い評価を受けているシティポップの楽曲が並びます。「DAYTIME CITYPOP」はタイトル通り、昼間に聴くのにピッタリな明るく爽やかなポップス、「NIGHTTIME CITYPOP」はムーディーな雰囲気漂う、夜に聴くのにピッタリな曲が並んでいます。どちらも「8090」というタイトル通り、80年代90年代の楽曲がメイン。聴いていて懐かしさを醸し出すような構成になっていました。

「懐かしさ」という点では、非常に印象的なのはそのジャケット写真ではないでしょうか。かつてFM専門誌として発売されていた「FM STATION」をイメージした構成。当時、「FM STATION」の表紙を手掛けていたイラストレーターの鈴木英人が手掛けています。このジャケットを眺めながら、当時の曲を聴くと、その時代を思い起こして懐かしさを彷彿させるのではないでしょうか・・・

・・・と言っておいて、若干、この「懐かしさ」という点では疑問もあります。まず第一に、「懐かしい」といってもこの英語MCのトークを挟んだスタイルって、Inter FMとかだと今も変わらないですよね?最近はFMもあまり聞かなくなってしまったので、今のスタイルは詳しくはわからないのですが・・・。もうひとつ、どちらかというとこちらの方が疑問点なのですが、ここで流れていたようなポップスって、洋楽中心だった80年代90年代にはあまりFMで流れなかったのでは?という疑問。特に「NIGHTTIME CITYPOP」に収録されている大橋純子の「シルエットロマンス」や寺尾聰の「出航 SASURAI」あたりは、今でこそ「シティポップ」的な評価をされるようになりましたが、80年代は完全に「歌謡曲」の枠組みで、Inter FMはもちろん、JFL系でもまず流れなかった曲なのでは?なんとなく、本当に80年代90年代のFMラジオ番組を再現した、というよりは、懐かしいというイメージだけをピックアップしたフェイクなのでは?と感じました。

もっとも、エンタテイメントにとって、ある種の「フェイク」というのは重要で、そういう意味では「フェイク」だからといってこのコンピレーションの価値が下がるものではありません。最近では、むしろ海外で高い評価を受けている松原みきの「真夜中のドア~Stay With Me」をはじめ、おなじみ杏里「オリビアを聴きながら」や杉山清貴、来生たかお、EPOなど、豪華なメンバーがズラリと並んでおり、最近評価の高い、「シティポップ」とは何か、ということを知るには最適なコンピレーションアルバムだったと思います。

ちょっと残念だったのは、松任谷由実の「ルージュの伝言」「やさしさに包まれたなら」「CHINESE SOUP」が権利の関係か、ユーミン歌唱ではなく、絢香と土岐麻子によるカバーだった点。このカバーももちろんよかったのですが(純粋な歌唱力という意味ではユーミンよる上かも?)、他がオリジナルだっただけにちょっと残念。他にもシティポップの名曲はいろいろとあるのだから、無理にユーミンを入れなくてもよかったとは思うのですが。それとも、若手(というよりももうキャリア的にはベテランなのですが)のシンガーを入れることによって、もっと下の世代を呼び込みたかったのでしょうか?

個人的には「NIGHTTIME」の方は、ちょっとムーディーな曲が多くて、悪い意味で「歌謡曲」すぎないか?という疑問もあったのですが、その点を差し引いても、全体的にラジオ番組を聴いているように楽しめたコンピレーションアルバムでした。80年代90年代にリアルタイムで聴いていた方はもちろん、最近、評価が高くなっているシティポップを知りたい若い世代の方にもおすすめのコンピです。

評価:DAYTIME CITYPOP ★★★★★
NIGHTTIME CITYPOP ★★★★


ほかに聴いたアルバム

カラタチの夢/大橋トリオ

大橋トリオの新譜は5曲入りのEP盤。ただ、この収録曲のタイアップがかなり豪華。5曲中3曲がドラマ主題歌。あと1曲もテレビ番組のテーマソングと、5曲中4曲までがタイアップ付きという内容となっています。確かにアコースティックアレンジにメランコリックに聴かせるポップソングは、いい意味で癖のなく、万人受けしそうな「良質なポップソング」。テレビのタイアップ曲としてはピッタリなんだろうなぁ、とは思います。ただ、良質なポップソングはポップソングなのですが、もうちょっとある種の「毒」は欲しい感じはしてしまうのですが。

評価:★★★★

大橋トリオ 過去の作品
A BIRD
I Got Rhythm?
NEWOLD
FACEBOOKII
L
R

FAKE BOOK III
White
plugged
MAGIC
大橋トリオ
PARODY
10(TEN)
Blue
STEREO
植物男子ベランダー ENDING SONGS
植物男子ベランダーSEASON2 ENDING SONGS
THUNDERBIRD
This is music too
NEW WORLD
ohashiTrio best Too
ohashiTrio collaboration best -off White-

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2023年12月 4日 (月)

笠置シヅ子の魅力を強く感じる

「笠置シヅ子 ブギウギ伝説」刊行記念トーク!

会場 TOKUZO 日時 2023年11月28日(火)19:00~

今回のライブレポートは、先日実施されたトークライブのレポート。現在、NHK朝の連続テレビ小説で、笠置シヅ子をモデルとしたドラマ「ブギウギ」が放送されています。それに伴い、笠置シヅ子関連の書籍がいろいろと発売されています。以前も近代音楽史研究家の輪島裕介による笠置シヅ子の評伝「昭和ブギウギ 笠置シヅ子と服部良一のリズム音曲」を取り上げたことがありますが、そんな中に発売されたのが「笠置シヅ子 ブギウギ伝説」という評伝。同書を書いた娯楽映画研究家、佐藤利明氏と、ここでもよく紹介する戦前SP盤復刻レーベル「ぐらもくらぶ」の主宰者である保利透氏を迎えてのトークライブが行われて、非常におもしろそうだったので足を運んできました。

Kasagi_talk

実は佐藤氏のトークイベント、5年前に行われたクレイジーキャッツをテーマとした回に足を運んだことがあり、非常におもしろかったので今回、足を運んだ経緯があります。前回は、クレイジーキャッツのリアルタイム世代が多かったのですが、今回もおそらく60代以上がメイン。いくら60代でも歌手の笠置シヅ子のリアルタイム世代ではないと思うのですが・・・。

トークライブはほぼ19時ピッタリにスタート。基本的には今回のトークライブの元となった著書「笠置シヅ子 ブギウギ伝説」に沿った形で、笠置シヅ子の生涯を追った形でのトーク、主に芸能生活をスタートさせた大阪松竹少女歌劇団(OSK)時代からのスタートとなりました。朝ドラの内容との比較を挟みつつだったのですが、自分自身は朝ドラを全く見ていないので、朝ドラとの比較についてはよくわからず。ただ、トークに沿った形での貴重な映像や音源を流しながらのトークとなりました。

トークライブは途中休憩を挟んでの2部構成。1部から戦前「スウィングの女王」と呼ばれた彼女の、そして彼女の曲の大半を手掛けた作曲家、服部良一のすごさについて語られていたのですが特に1部で印象的だったのが、戦前にリリースされた「ラッパと娘」のエピソード。同曲はもともと、アメリカのルイ・アームストロングと女性コメディアンの掛け合いからヒントを手掛けた取り入れたそうですが、笠置シヅ子とトランペット奏者の掛け合い、さらには彼女のスキャットがあらためて聴くと実に見事。今聴いてもモダンな印象を受けます。この日は「元ネタ」の映像も流れたのですが、いかにアメリカの「元ネタ」を笠置シヅ子が上手く取り入れていたのか、さらにトランペットの部分まで自らのスキャットにより表現した、彼女の表現力のすごさも見て取れ、非常に印象的でした。

さらに佐藤氏のトークが冴えまくったのが2部。主に笠置シヅ子と服部良一のリズムへの挑戦をテーマに、服部良一が戦前から戦後にかけて、いかに斬新なリズムを取り入れていったか、そしてその服部良一の挑戦にしっかりと応え、素晴らしいパフォーマンスを行う笠置シヅ子のすごさを、映像や音源を交えながら紹介していきました。特に映像に関しては、昨今ではアップされている映像も多いのですが、この日はYouTubeにアップされていない貴重な映像も数多く紹介してくれました。

やはりまず印象的だったのは服部良一のすごさ。ブギウギのリズムをいち早く取り入れ、戦後にはビバップも取り入れた他、今で言えばワールドミュージックにカテゴライズされるトライバルなリズムもいち早く音楽に取り入れていたそうです。リズムに対する挑戦は、「昭和ブギウギ 笠置シヅ子と服部良一のリズム音曲」でも取り上げられており、知識として知ってはいたのですが、あらためて音源と映像、そして佐藤氏のトークにより、そのすごさを再認識しました。特に歌詞はほとんど意味不明、リズムを聴かせるような笠置シヅ子の曲も紹介されており、ここらへんの曲は、今聴いても全く古さを感じず、むしろモダンにすら感じるほど。服部良一のその先見の明のすごさをあらためて実感しました。

そしてこの日のトークライブで一番印象的だったのが、笠置シヅ子の歌う時の演技で、佐藤氏が「彼女は歌に合わせて演技する。OSK時代の経験が生きているが、それがすごい」(意訳)と言及していたのですが、確かに曲にあわせて変化させる豊かな表情やパフォーマンスが印象的。映像を見ていて非常に惹きつけられるものがあります。この点についてはこの日はじめて知った事実でしたので大きな驚きでもありました。

そう考えると、笠置シヅ子の本当の魅力って、音源を聴くだけではわからないんでしょうね。この日は映像も合わせて、佐藤氏の詳しい解説や見どころを聴くことによって、笠置シヅ子の本当の実力、そして魅力を強く実感することが出来ました。

最後は、彼女が最晩年まで出演していた「カネヨン」のCMが流れて締めくくり。おそらくこの日の客層(50代~60代)あたりの世代にとっては、笠置シヅ子といえばこのイメージなのでしょうが、私は全く見たこともないので、特に懐かしさは感じませんでした(^^;;ただ、この日の映像で見てきた昭和20年~30年代の30代の彼女と、もうおばあちゃんになった彼女のギャップに驚いたくらいでした(笑)。

そんな訳で、佐藤氏の解説も非常に濃く、同席していた保利氏も、戦前SP盤の専門家として、様々な知見を提供しており、興味深いトークイベントでした。途中休憩15分をはさんで終わったのが9時50分ちょっと前でしたので、約2時間半強というボリュームたっぷりのトークライブ。非常に楽しく、そしていろいろと勉強になった濃い時間でした。ちなみに来年はかの喜劇王、エノケン生誕120周年の年だそうで、それに関するトークライブをやりたい、といっていたので、そちらも見に行きたいなぁ。

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2023年12月 3日 (日)

本来の意味での・・・「エモい」アルバム

Title:Desolation's Flower
Musician:Ragana

今回紹介するのは、ワシントン州オリンピアで結成された2人組ヘヴィーデゥオRagana。MariaとColeyの2人からなるユニットなのですが、姓は明らかにされていないそうで、謎めいた部分を残したユニットとなっています。音源はもちろん、名前を聞くのもこれがはじめて。本作は高い評価を得ているそうで、今回はじめて本作をチェックしてみました。

ブラックメタルやスクリーモを取り入れた非常にヘヴィーな作風が特徴的。まず1曲目はいきなりタイトルチューン「Desolation's Flower」からスタートするのですが、ヘヴィーでメランコリックさもあるサウンドをゆっくり聴かせつつ、途中から空間を切り裂くかのような、女性ボーカルのシャウトが入ってきます。続く「Woe」も同様。ギターノイズを前面に押し出したサウンドは、メタルやスクリーモというよりもインディーロック的な要素を感じさせますが、メランコリックさを感じさせるサウンドに、胸をかきむしりたくなるような、焦燥感のある女性ボーカルのシャウトが印象的です。

このスクリーモ的なヘヴィーでメランコリックなサウンドに、女性ボーカルのシャウトというスタイルが続く前半に対して、後半はちょっと雰囲気が変わります。「Pain」では静かなギターサウンドに、メランコリックで清涼感のある女性の歌が入るというスタイルに。ラストを締めくくる「In the Light of the Burning World」も同様に、静かなギターのアルペジオに狂おしいほど切ない女性の歌が印象的な作品。前半の作品では空間を切り裂くのが女性のシャウトでしたが、後半は、静かなサウンドの中に時折入る、ヘヴィーでダイナミックなギターノイズが空間を切り裂いてきました。

スタイル的には大きく前半と後半でわかれる本作ですが、ただ、荒涼とした雰囲気の世界観はアルバム全体を貫かれています。また、前半の女性のシャウトといい、後半のヘヴィーなサウンドといい、胸をかきむしりたくなるほどのエモーショナルなサウンドである点も大きな特徴と言えるでしょう。「エモい」と言えば、最近の若者言葉として知られており、非常に汎用的な使われ方をしていますが、もともとは音楽のジャンルとしての「エモ」を語源としたもの。彼女たちの音楽は「エモ」ではありませんが、エモーショナルなそのサウンドは、もともとの用語の使い方通り「エモい」と言えるアルバムだったと思います。

ブラックメタルやスクリーモを取り入れたメタリックでヘヴィーなサウンドは好き嫌いがわかれる部分はあるかもしれませんが、そのメランコリックでエモーショナルなサウンドは、おそらく広いリスナー層の心をかきむしるような、切なさを感じさせる作品だと思います。サウンド面でも感情的な面でもガツンと響いてくる本作は、年間ベストクラスの傑作アルバムだったと思います。今後にも注目のユニットです。

評価:★★★★★

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2023年12月 2日 (土)

齢90。バリバリ現役

Title:All My Love For You
Musician:Bobby Rush

いろいろなところで話題となっている話なのですが、今年に入り、著名なミュージシャンの訃報が相次いでいます。坂本龍一、高橋幸宏、谷村新司、大橋純子、もんたよしのり、X JAPANのHEATH・・・特にBUCK-TICK櫻井の急逝はショックでしたが、個人的に非常にショックだったのが、なんといってもKANちゃんの逝去・・・。個人的に大ファンなミュージシャンなだけにかなりのショックでいまだに引きずっています・・・。

この相次ぐミュージシャンの逝去のニュースに陰謀論的なものを持ち出す人もいるみたいですが、ただ単に、ポップス全盛期のミュージシャンたちが年を取って、お迎えが来るような世代に差し掛かったから、という理由だけだと思います。もっと言えば、ミュージシャンたちの健康寿命が延びた点や、ポピュラーミュージックの新陳代謝が以前ほど激しくなくなったため、年を取っても第一線で活躍するミュージシャンが増えたため、大きなニュースとして取り上げられるミュージシャンの逝去のニュースが増えた、という点も大きいでしょう。

なんでここでこんな話を持ち出すかと言えば、ロックやJ-POP系よりももっと昔に黄金期を迎えたブルースの世界では、とっくの昔から逝去者が相次いでいるからで、特にブルースとオールドソウルの専門誌「Blues&Soul Records」では、毎号のように追悼の特集記事が載っていますし、ニュース欄では、1ページまるごと逝去者のベタ記事というケースも毎号のお決まりのようになっています。そういう意味では、著名なポップミュージシャンの逝去のニュースは今後も続くでしょうし、それはそれで仕方ないことなのかもしれません。

で、ブルースの世界では既に「レジェンド」と言われるようなミュージシャンが、ほとんど鬼籍に入ってしまったのですが、その中で数少ないリビングレジェンドであるのが彼、Bobby Rush。なんと御年90歳!!しかし、約3年ぶりとなるニューアルバムをリリースし、その健在ぶりと、バリバリの現役であるをアピールしています。

1曲目「I'm Free」からして、ホーンセッションを入れて、いまだに艶すら感じさせる力強い歌声を聴かせるファンクブルースからスタート。「Running In And Out」も軽快に力強く聴かせる正統派のブルースナンバー。「I Want To」も、年齢を感じさせないパワフルでロッキンな歌声を聴かせるファンクブルースのナンバーと続いていきます。

その後も伸びやかな歌声でゆっくりと歌い上げるソウルナンバーの「One Money Can Stop a Show」や、ギターとハープをバックに聴かせるミディアムブルースの「I'll Do Anything For You」「You're Gonna Need A Man Like Me」など、現役感バリバリに聴かせる楽曲が並びます。

特に印象的なのは先行シングルにもなっている「I'm The One」で、こちらも力強いブルースナンバーなのですが、歌詞が印象的。おそらく日本人にとっても聞き取れるようなわかりやすい歌詞で、Muddy WatersやB.B.KING、ハウリンウルフなどといったブルースのレジェンドたちの名前を並べつつ、自分は彼らとは違うと異なり、「俺は俺だ」と歌い上げる、そのキャリアに裏付けされたBobby Rushのプライドを感じさせる楽曲となっていました。

正直なところ、さすがにこの年になってからの作品ですので目新しさは感じません。Bobby Rushらしさを体現化したアルバムとも言えるでしょう。ただ一方で、齢90歳になりながらも、これだけ現役感のあるアルバムを作り上げるのは驚異の一言。アルバムの出来としては4つくらい相当なのですが、そのキャリアと、90歳を超えてもお元気なところに敬意を評して1つ追加で。この調子で行くと、これがラストのオリジナルアルバムではない可能性も高いなぁ。これからも末永くお元気で!!

評価:★★★★★

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2023年12月 1日 (金)

実にラッパ我リヤらしい作品

Title:CHALLENGER
Musician:ラッパ我リヤ

1990年代前半という、HIP HOP黎明期から活動を続け、日本のHIP HOPシーンのレジェンドの一組とも言えるグループ、ラッパ我リヤ。2009年以降、一時期活動休止状態になるものの、2017年には久々のアルバム「ULTRA HARD」をリリース。本作は同作に続く、約6年ぶりのニューアルバムとなります。

今回のアルバムタイトル、「CHALLENGER」というタイトルになるのですが、公式サイトの案内によると「『ベテランアーティストである自分達の様な年代でも、常にチャレンジャー精神が必要だ!』と言う彼らの自身に対する戒めの想いと、今作が『最後のアルバム』になるかも知れない、と言う決意が込められている。」ということ。25年以上のキャリアを誇るベテランの彼らですが、今なお、前向きに進んでいこうという強いスタンスを感じます。

・・・・・・なのですが、ただアルバム自体については、実にラッパ我リヤらしい内容に仕上がっていたと思います。ラッパ我リヤのスタイルというと、非常に硬いライムと、暑苦しさも感じさせる自己主張の強いリリック。今回の作品については、そんなラッパ我リヤらしさが貫かれた作品になっていました。

「飛んでいくぜお前のとこへ」と彼ららしい押しつけがましさ(笑)を感じる「CODE NAME」からスタートし、「俺らが達人」と、ある意味、非常に強い自己主張が特徴的な「TATSUJIN」、自分たちの歩みを振り返る「この道ひとすじ」に、タイトルからして暑苦しい「情熱だけが燃料の蒸気機関車」と、まさにラッパ我リヤらしい、自己主張の強いリリックを、ヘヴィーなトラックにのせて力強くラップするスタイルの楽曲が続きます。

ちなみにゲスト陣もかなり豪華で、かの般若やR-指定をはじめ、梅田サイファーのKZ、KBDに、異色なところではドラえもんのジャイアン役としてもおなじみの木村昴も参加。こちらもかなり暑いラップを聴かせてくれています。

前作「ULTRA HARD」は彼ららしいヘヴィーな楽曲と、ポップな作品がほどよくバランスされており、音楽的な幅も広がった傑作と感じました。ただ正直なところ本作に関しては、良くも悪くもラッパ我リヤらしい作品が並んでおり、音楽的な広がりという点では前作と比べると、物足りなさを感じました。また、「CHALLENGER」というタイトルとは裏腹に、作風としては「いつものラッパ我リヤ」といった感じで、挑戦的な作品はあまりありません。ラッパ我リヤのファンにとっては、おそらく「待ってました」といった感じのする彼らの王道とも言えるアルバムだったのですが、挑戦という観点では、むしろ前作の方が「CHALLENGER」な内容だったように感じました。

実にラッパ我リヤらしいアルバムになっていた本作。正直、この「暑苦しさ」「自己主張の強さ」は好き嫌いがありそうですし、個人的にも正直、ちょっと苦手に感じてしまう部分も否定できません。そういう意味でも前作の方がよかったと思うのですが・・・。ただ逆に、この「暑苦しさ」「自己主張の強さ」が壺にはまるのならば、かなり気に入る傑作になっていたのではないでしょうか。そういう意味では彼ららしい作品ですが、若干人を選ぶアルバムかな、とも感じた1枚でした。

評価:★★★★

ラッパ我リヤ 過去の作品
ULTRA HARD


ほかに聴いたアルバム

Neo Standard/Night Tempo

主に80年代の日本の歌謡曲を取り上げ、再構築したアルバムで注目を集める韓国人DJのNight Tempo。特に、今、海外でも注目を集めているシティポップというジャンルを広めた功績でも注目を集めています。本作はそんな彼の「新作」をあつめたアルバム。小泉今日子や中山美穂、渡辺満里奈や早見優といった往年の80年代アイドルがズラリと参加者に名前を並べている点でも注目を集めています。ただ・・・内容的には残念ながらいささか中途半端。リズミカルなエレクトロチューンがメインなのですが、特に80年代っぽさも感じませんし、シティポップ的な要素も薄い感じ。Night Tempoの追い求めているジャンルのイメージはあまり反映されていません。本人がつくる楽曲は、DJとして取り上げる楽曲とは別といった感じでしょうか。これはこれで悪いアルバムではないかもしれませんが、期待はずれだったかも・・・。

評価:★★★

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