Title:Wasted On Youth
Musician:The Molotovs

基本的にヒットチャートは、日米英のチャートを毎週チェックしているのですが、イギリスのヒットチャートはアメリカのビルボードと比べ市場が小さいため、アメリカに比べてバラエティー富んだミュージシャンたちがチャート上位に顔をのぞかせることが少なくありません。特に、ロックバンドについてはアメリカに比べて、まだまだロックの人気が高いため、おもしろいバンドがいきなりチャート上位にランクインしてくることも少なくありません。
今回紹介するバンドThe Molotovsも、そうやってイギリスのアルバムチャートをチェックしている中で見つけたバンドのひとつ。10代の兄妹、マシュー・カードリッジとイッセイ・カードリッジによる2人組バンドとなっています。異性の兄弟による2人組バンドと言えば、ご存じThe White Stripesを思い起こさせますが、こちらはおそらく本当の兄弟ではないかと思われます、多分。もともと2020年に結成。ただこの時は、例のCOVID-19によるパンデミックが起こり、イギリスでもライブハウスが軒並み閉鎖されたそうで、その影響で当初は路上や公園などでライブを行い、徐々に腕を磨き、The LibertinesやIggy Popのオープニングアクトに起用されるなど大きな話題を呼びました。そして2025年にマーシャル・レコードと契約。このレーベル、あの伝統的なアンプメーカーのマーシャルが2016年に立ち上げたレコードレーベルだとか。そして、デビューアルバムである本作が今年の1月にリリース。イギリスの公式チャートでいきなり3位を記録するなど、大ヒットとなっています。
そんな彼らの奏でるロックは、一言で言えば非常にストレートなパンクロック。アルバムの1曲目「Get A Life」は、いきなり「OK」というキューの音がそのまま入っているあたり、音源の一発録りのライブ感を意識したような感じになっていますし(本当に一発録りなのかはわかりませんが)、The JAMあたりを彷彿とさせる、イギリスの伝統的な、とも言えるストレートなパンクロックが展開するような作品となっています。
デビューシングルともなっていた「More More More」も3曲目に収録。こちらもかなりストレートで心地よい、ガレージロックの色合いも感じさせるストレートなロックチューン。メロディーラインもポップな感があり、デビューシングルだからこそ、The Molotovsらしさを表現した作品となっています。
そんな感じでストレートなロックナンバーが11曲つまったこのアルバム。それで全32分、1曲あたり3分弱という長さもまた、シンプルなパンクロックらしい好印象を受ける構成で、最後まで一気に聴ける内容となっています。ただ、おもしろいのは前述の通りのパンクロック、あるいはガレージロックをストレートに表現するロックチューンだけではなく、微妙に雑食性も感じさせる部分が顔をのぞかせている点。例えば2曲目の「Daydreaming」など、イントロのギターから完全にoasisの影響も感じられます。出だしの歌い方や、その後の節回しも完全にoasisって感じで、ちょっとストレートすぎない?と思ってしまう点も。
また、中盤の「Come On Now」のヘヴィーなギターリフも、パンクロックというよりはむしろハードロックからの影響を感じさせますし、中盤から後半にかけてのナンバー、例えば「Newsflash」あたりはむしろGREEN DAYあたりを彷彿とさせるメロパンク系の楽曲になっています。一方、中盤に配置された「Nothing Keeps Her Away」などはアコギでメランコリックに聴かせるナンバーとなっており、アルバムの中のチルアウト的なナンバーとしてちょうどよいインパクトも。また、ラストの「Today's Gonna Be Our Day」は軽快なロックンロールの色合いも強いナンバーとなっており、彼らの雑食性を感じさせる構成となっています。
ただ、全体的には軽快なパンクロックバンドで統一されており、勢いもあって最後まで一気に楽しめる楽曲。正直言うと、シーンを切り開くような圧倒的な目新しさ、みたいなのはちょっと欠ける部分はありますし、メロディーラインのインパクトという点でもちょっと物足りなさを感じる部分もありました。この手のロックバンドはいかにも日本人好み・・・というよりは、日本のロック系メディア好みなのに、さほど大きく盛り上がっていないのは、国内盤がリリースされていないから、というビジネス上の事情もありつつ、もろ手あげて大絶賛するには躊躇するような要素もあるからかもしれません。
しかし、気になる点はありつつも、やはりこのシンプルでストレート、なによりも勢いのあるパンクロックは実に魅力的。ライブもかなり盛り上がりそうだし、ロック好き、特にパンクロックやガレージロックが好きな層にはストレートにぶっささりそうなアルバムだと思います。ちなみにバンド名の「Molotov」とは、ソ連の政治家から名前をとった火炎瓶のことで、ここらへんのロックらしい、でも微妙にベタな命名センスもまたいい感じ。間違いなく、これからに期待したいロックバンドです。
評価:★★★★★
ほかに聴いたアルバム
Janji/Dayang Nurfaizah

2025年ベストアルバムで聴き逃していたアルバムを後追いで聴いた作品。本作は「Music Magazine誌」の「ワールドミュージック」部門で8位にランクインした1枚。1999年にデビューしたマレー語のポップスシーンを代表する女性シンガーによるアルバム。バラードを中心にしんみりと歌い上げるスタイルが特徴的で、楽曲的にはむしろ日本のムード歌謡曲にすら近い感じの哀愁たっぷりに聴かせるスタイル。ただし、途中、今風のR&Bな楽曲も聴かせてくれており、ベテランらしい、包容力あるボーカルにバリエーションの富んだ作品を聴かせてくれています。
評価:★★★★
Dayang Nurfaizah 過去の作品
BelaguⅡ
ESPERANSA(邦題 エスペランサ~希望~)/Nancy Vieira&Fred Martins

こちらも2025年ベストアルバムで聴き逃したアルバムを後追いで聴いた作品。本作も同じく「Music Magazine誌」の「ワールドミュージック」部門で10位を獲得したアルバム。カーボ・ヴェルデ出身の歌手、Nancy VieiraとブラジルのシンガーでギタリストでもあるFred Martinsによるデゥオ。カーボ・ヴェルデとブラジルの音楽性を取り入れつつ、他にもキューバやポルトガルなど様々な国の音楽を取り入れた作品。また「Saiko Dayo」という作品は、1970年代に日本のマグロ漁船がカーボ・ヴェルデに寄港した時に日本人が口にした言葉を元にしているなど、まさにワールドワイドな作品となっています。全体的にはブラジルのボサノヴァなどの影響を感じさせる、メロウで優しい雰囲気のポップが流れる作品で、いい意味で広い層に聴きやすい、暖かいポップチューンが流れる作品となっています。世界には素晴らしい音楽があふれていることを感じさせる1枚です。
評価:★★★★★
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