小西康陽がボーカルに挑戦!
Title:失恋と得恋
Musician:小西康陽
かのピチカート・ファイヴのメンバーとしても知られ、数多くのミュージシャンたちへのプロデュースや楽曲提供を手掛けてきた小西康陽。ここ最近はPIZZICATO ONE名義でのソロ活動が続いてきましたが、今度は本名「小西康陽」名義でのアルバムがリリースされました。
今回、この小西康陽名義のアルバムの最大の特徴は、自らが歌っている、という点。なんでも2022年にギターの弾き語りライブを行ったところ、「過去の自作曲を自ら歌うこと」に目覚めたそうで、本作は主に2023年8月に丸の内コットンクラブで行われた「小西康陽・東京丸の内」のために編曲されたものだそうです。
まず楽曲のアレンジに関しては、そこはさすが小西康陽、文句のつけようのないクオリティーの高い作品を聴かせてくれています。今回はピアノ、ベース、ドラムス、ギター、チェロという5人編成での録音。ジャジーなサウンドが大きな特徴となっており、比較的シンプルながらもしっかりと聴かせるアレンジとなっています。
そんな中でもドラムのリズムだけをバックに歌い上げる「陽の当たる大通り」や、ボッサ風の「むかし私が愛した人」、チェロのみをバックに歌う「きみになりたい」、ピアノジャズアレンジの「動物園にて」など、バラエティーのある作風に。特に、ドラムのみ、チェロのみというアレンジは、小西康陽のボーカルをより際立たせるようなアレンジとなっており、ボーカリスト小西康陽として挑戦的なアレンジとなっていました。
さて、本作で一番の注目すべき点はやはり小西康陽のボーカルというポイントでしょう。正直言えば、彼のボーカルは決して上手いものではありません。穏やかな雰囲気の、大人の渋みも感じさせるボーカルというとポジティブな表現ですが、いかにも「おじさん」という感じのボーカルで声量もなければ、音程もいまひとつ安定していません。
ただ、とはいえ本人としてはそんなことは百も承知。このボーカルがジャズ主体のアレンジにちゃんとマッチして聴こえるあたり、さすがは小西康陽の力量の高さを感じさせます。彼の決して上手くはないボーカルが、ひとつの味として感じられるように、しっかりと作りこまれている感があります。
ただ、それでも、特にピチカートの楽曲を小西康陽が歌う点についてはかなりの違和感が・・・。やはりメロディーラインにしても歌詞にしても、あくまでも野宮真貴を前提としてつくられた曲なだけに、彼のような「おじさん」がそれを歌うと、正直なところ、かなりの違和感を覚えてしまいます。まあ、そのギャップも「味」と言われればそうなのかもしれないのですが・・・。この違和感の強さは最後までぬぐえませんでした。
楽曲自体の出来としては申し分ないですし、小西康陽のボーカルも、それなりの「味」として感じられると思います。ただ、前述の違和感を受け入れられるかどうかで、アルバムの印象は変わりそう。個人的には、違和感が違和感のまま残ってしまった感は否めません。もちろん、小西康陽の実力はしっかりと感じられる作品ではあるのですが、オリジナルは越せなかったかな、とも思う1枚でした。
評価:★★★★
小西康陽(PIZZICATO ONE) 過去の作品
ATTRACTIONS! KONISHI YASUHARU Remixes 1996-2010
11のとても悲しい歌(PIZZICATO ONE)
わたくしの二十世紀(PIZZICATO ONE)
なぜ小西康陽のドラマBGMは テレビのバラエティ番組で よく使われるのか。
井上順のプレイボーイ講座12章(小西康陽とプレイボーイズ)
前夜 ピチカート・ワン・イン・パースン(PIZZICATO ONE)
ほかに聴いたアルバム
Fujii Kaze Stadium Live “Feelin' Good”/藤井風
昨年8月24日、25日に横浜の日産スタジアムで行われたワンマンライブの模様を収録したライブ盤。Blu-ray形式でリリースされているほか、配信盤とCD盤でもリリースされています。全体的にメランコリックな歌をしっかり聴かせる、というイメージのパフォーマンスが多く、そういう意味ではスタジアムライブっぽくない感じもするのですが、それはそれで藤井風の魅力といったところでしょう。ただ、このスタイルのパフォーマンスをしっかりとスタジアムレベルでも聴かせてくれるというのはさすが。一度、彼のライブにも足を運んでみたい、と感じさせるようなライブアルバムでした。
評価:★★★★★
藤井風 過去の作品
HELP EVER HURT NEVER
HELP EVER HURT COVER
Kirari Remixes(Asia Edition)
LOVE ALL SERVE ALL
The Golden Age Of Punk Rock/Ken Yokoyama
ハイスタやBBQ CHICKENSなどで活躍する横山健の新作は、パンクロックのカバーアルバム。ただ選ばれているのは70年代のパンク勢ではなく、主に80年代から90年代にかけて活躍したNOFXやRANCID、Bad Religionなどといったバンドの楽曲。基本的に彼がリアルタイムで体験した、思い入れのあるミュージシャンたちということなのでしょう。パンクロックという枠組みにとらわれず、The Get Up Kidsのようなエモ系や、Blink-182などポップ寄りのバンドも選ばれているのもちょっと意外な印象も。全体的に有名所の王道を抑えたようなセレクションとなっており、奇をてらっていない感、純粋なパンクロックへの敬愛ぶりも感じさせます。横山健が好きな人は、逆にここに紹介されているバンドたちのアルバムを聴いてみるとよいかも。
評価:★★★★
Ken Yokoyama 過去の作品
Four
Best Wishes
SENTIMENTAL TRASH
Ken Yokoyama VS NUMBA69(Ken Yokoyama/NAMBA69)
Songs Of The Living Dead
4Wheels 9Lives
Indian Burn
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