2022年10月 5日 (水)

これで6週目の1位獲得!

今週のHot100

http://www.billboard-japan.com/chart_insight/

Adoの快進撃はまだまだ続いています。

今週の1位は「新時代(ウタ from ONE PIECE FILM RED)」が2週連続で獲得。ダウンロード数は2位から3位にダウンしていますが、ストリーミング数は8週連続、You Tube再生回数は4週連続、カラオケ歌唱回数は5週連続で、それぞれ1位をキープ。圧倒的な強さを見せています。これで17週連続のベスト10ヒット&9週連続のベスト3ヒット、さらに1位獲得回数も通算6週目に伸ばしています。

以下、今週は「私は最強(ウタ from ONE PIECE FILM RED)」が3位、「ウタカタララバイ(ウタ from ONE PIECE FILM RED)」が6位、「逆光(ウタ from ONE PIECE FILM RED)」が8位と今週も4曲同時ランクイン。ただし「私は最強」は2位から、「ウタカタララバイ」は4位から、「逆光」は5位から、それぞれランクダウンしており、若干失速気味。ストリーミング数も「私は最強」は先週と変わらず2位をキープしたものの、「ウタカタララバイ」は3位から4位、「逆光」は4位から6位にそれぞれダウン。7週連続続いていたAdoのストリーミング数上位4位までの独占が、ついに崩れてしまいました。

一方で、今週で「私は最強」「ウタカタララバイ」「逆光」いずれもベスト10ヒットが8週連続に伸びました。また「私は最強」は通算6週目のベスト3ヒットに。まだまだAdoの快進撃は続きそうです。

さて初登場曲最高位は、2位に=LOVE「Be Selfish」がランクイン。指原莉乃のプロデュースによる声優アイドルグループ。CD販売数は1位でしたが、PCによるCD読取数18位、Twitterつぶやき数12位で、その他はランク圏外。総合順位も2位に留まりました。オリコン週間シングルランキングでは初動売上14万3千枚で1位初登場。前作「あの子コンプレックス」の初動14万7千枚(2位)より若干のダウンです。

続いて4位以下の初登場曲ですが、まず4位にBUMP OF CHICKEN「SOUVENIR」が初登場。テレビ東京系アニメ「SPY×FAMILY」オープニングテーマ。配信限定シングルで、ダウンロード数1位、Twitterつぶやき数3位、ラジオオンエア数5位。一方、ストリーミング数は64位に留まり、総合順位はこの位置に。

また10位にはTani Yuuki「もう一度」が先週の23位からランクアップし、ベスト10入り。ダウンロード数9位、ストリーミング数7位、ラジオオンエア数22位、Twitterつぶやき数97位。Tani Yuukiは「W / X / Y」も今週6位からランクアップし5位にランクインしており、これで26週連続のベスト10ヒットとなりました。

今週のロングヒット曲はもう1曲。Official髭男dism「ミックスナッツ」が先週の8位からワンランクダウンながらも今週も9位をキープ。これでベスト10ヒットは25週連続となっています。一方、SEKAI NO OWARI「Habit」は今週12位にダウン。ベスト10ヒットは通算19週でとりあえずはストップです。

今週のHot100は以上。明日はHot Albums!

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2022年10月 4日 (火)

ドラマ主題歌3曲を収録

Title:瞳へ落ちるよレコード
Musician:あいみょん

約2年ぶりとなるあいみょんのニューアルバム。前作「おいしいパスタがあると聞いて」に引き続き、微妙なインパクトのあるアルバムタイトルが目を惹きます。またアルバムの中で特徴的なのが全13曲中、ドラマタイアップ曲が3曲もある点。「初恋が泣いている」「ハート」「愛を知るまでは」とドラマ主題歌が目立ち、あいみょんの楽曲とドラマ主題歌の相性の良さを伺わせます。

さて、そんなあいみょんの大きな魅力としてシンプルな歌詞とメロディーラインにあります。オルタナ系ギターロックの影響を垣間見せつつも、ベースにあるのは、90年代J-POPを通り越してむしろ70年代フォークソングにあるのでは?と思わせるほど、これが中高生に受けるのか・・・(「マリーゴールド」のヒットから4年経っているので、そろそろファンの年齢層が上にシフトしている可能性は高いのですが)と思うほど、むしろ40代や、ともすれば50代以降が気に入っても不思議ではないほど、懐かしさと暖かさを感じさせるメロとサウンドが魅力となっています。

例えば今回のアルバムでも「初恋が泣いている」はシンプルなギターロック路線ながらも切ない歌詞の描写が魅力的。

「電柱にぶら下がったままの初恋は
痺れをきかして睨んでいる」
(「初恋が泣いている」より 作詞 あいみょん)

なんていう表現は、そのシュールな表現を含めて耳に残りますし、「3636」も別れる直前の恋人どうしの日常風景が妙にリアリティーがあり、胸に響きます。ラップも取り入れた「ペルソナの記憶」などもメランコリックなメロとギターがフォーキーな雰囲気を醸し出しつつ

「オムライスの返り血を受けて
私はようやく恋の終わりに気づいた」
(「ペルソナの記憶」より 作詞 あいみょん)

という歌詞も非常にユニークで強いインパクトを覚えます。

そんな訳で、恋愛をめぐる心境を素直に、時としてユニークだったりシュールな表現を含めながら聴かせる楽曲が強いインパクト。楽曲によってはフォークロックやギターロック路線、「強くなっちゃったんだ、ブルー」みたいなメロウなシティポップ風の曲など、それなりにバラエティーを持たせつつも、基本的にはシンプルなポップソングが主軸となっています。

そんなシンプルながらもインパクトの強いラブソングを書くからこそ、おそらく冒頭に書いたように、ドラマ主題歌との相性がよいのでしょう。今回のアルバムにドラマ主題歌が3曲も収録されていたというのは、決して偶然ではないようにも感じました。いつものあいみょんから大きな変化はなく、前作以前の路線を引き継いだ作風になっているのですが、いい意味で彼女らしさが確立されており、そして安心して聴ける傑作になっていたと思います。前にも書いたけれども、こういう外連味の無いシンプルな楽曲が素直に売れているという事実はやはりうれしいもの。これからもあいみょんの活動に期待したいところです。

評価:★★★★★

あいみょん 過去の作品
瞬間的シックスセンス
おいしいパスタがあると聞いて

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2022年10月 3日 (月)

コロナ禍を描くコンセプチャルな新作

Title:story of Suite #19
Musician:AA=

ご存じ長らく活動休止中のバンド、THE MAD CAPSULE MARKETSの上田剛士によるソロプロジェクトAA=。約3年ぶりにリリースされた今回のアルバムは、作品全編を通じてひとつの物語が綴られる、コンセプチャルな作品になっています。もともとは昨年3月にリリースされた、配信ライブ「DISTORT YOUR HOME」の映像作品に同封されていたシングル「Suite #19」がきっかけ。この「Suite #19」の世界を拡大させる形で作成されたのが、このアルバムとなります。

歌詞は、世界のすべてが閉ざされる「冬」の時代を描いた物語。閉ざされた世界の中での人々の混乱や疲労を描いたり、この世界に慣れてしまいそうになる恐れを描いたり、この閉塞的な「冬」を生き抜く人を描写した作品となっています。言うまでもないかと思いますが、この冬に閉ざされた世界というのは、完全にCOVID-19によって人々の行き来も自由にできなくなり、ある意味閉ざされてしまったコロナ禍の今の時代を描写したもの。(タイトルの#19はおそらくCOVID-19から取られたんでしょうね・・・)そんな世界を、ある時は皮肉に、ある時は諦念を込めて、またある時はそんな世界の中でも感じる美しさや希望を描いており、このコロナ禍の中を生きる私たちにとって、胸に響いてくる内容と言えるのではないでしょうか。

そんな物語の世界を、緩急をつけたサウンドで描きあげているのが今回の作品。「Chapter 1_冬の到来」では静かな語りからスタート。そのまま幻想的なエレクトロサウンドを聴かせる「Chapter 2_閉ざされた扉、その理」ですが、後半は一転、メタリックなエレクトロビートが繰り広げられます。

基本的に「静」な部分はギターやストリングスでしんみり聴かせるメランコリックなサウンドに静かな語りがメイン。一方、「動」の部分はメタリックでダイナミックなバンドサウンドにボーカルのシャウトというスタイルになっています。一番典型的なのが「Chapter 7_ある日の告白、広がる銀世界 / COLD ARMS」で、この静かな語りの部分とダイナミックなバンドサウンドが交互に展開される構成になっています。

この物語の部分も含め、サウンドも含めた世界観に引きこまれる作品となっているのですが、ただ残念ながらポップな要素は薄め。ラストを締めくくる「Chapter 9_SPRING HAS COME、取っ手のない扉が見る夢、またはその逆の世界」は疾走感あるギターロックとポップなメロディーラインが流れ、彼らしい作品と言えるのですが、その他の曲に関しては、どちらかというとコンセプト先行といった感は否めません。また、サウンドに関しても、ちょっと似たような展開が多かった点も気になります。良くも悪くもAA=らしいといった感じもするのですが、全体的にまずはコンセプトを聴かせる作品になっていました。

評価:★★★★

そして、この「story of Suite #19」をライブで再現した作品もリリース。映像作品もリリースされていたのですが、そこから、「story of Suite #19」の曲をピックアップしたライブアルバムもリリースされていたので、そちらを聴いてみました。

Title:LIVE story of Suite #19 AT LIQUIDROOM 20220226
Musician:AA=

そんな訳で、タイトル通り、今年2月26日にLIQUIDROOMで行われたライブの模様を収録したライブアルバム。当日は、もちろん「story of Suite #19」以外の曲も演ったようですが、こちらでは「story of Suite #19」の9曲のみ収録されています。

ただ、正直なところ、音源としては本編から大きな変更はありません。多少、ハードな部分についてハードコア的な要素が増して、よりダイナミックな感じになったような感じがしますが、そこは生演奏ならでは、とった感じでしょうか。拍手の音は入っていますが、MCもありませんし、演奏の完成度の高さもあって、逆に本編がそのまま演奏されているといった感じになっています。もっとも、コンセプチャルなアルバムですから、本編の内容を大きく変更することは難しいんでしょうね。

そういう意味では純然たるライブアルバムを求めると本編を聴けば十分といった感じはあります。もちろん、非常に完成度の高いライブ音源になっているので、むしろ本編以上にこちらをチェックするという手もあるかもしれません。ただ、「story of Suite #19」の2枚のアルバムを通じて、AA=の訴えたいものが非常に伝わってくるように思います。そして本編ラスト「Chapter 9_SPRING HAS COME、取っ手のない扉が見る夢、またはその逆の世界」はタイトル通り、冬の終わり=コロナ禍の終わりの希望を表現した内容。コロナ禍が終息・・・というよりも共生のモードが強くなってきた昨今ですが、早くこの異常な時代が終わるといいのですが・・・。

評価:★★★★

AA= 過去の作品
#1
#2
#
4

#5
(re:Rec)
THE OIO DAY
#6

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2022年10月 2日 (日)

現在、話題沸騰中

Title:ウタの歌 ONE PIECE FILM RED
Musician:Ado

現在、ビルボードチャートHot100で、このアルバムに収録されている曲を同時に何曲もランクインさせ、話題沸騰中のシンガー、Ado。もちろんこのアルバムも大ヒット中ですが、本作は、アニメ映画「ONE PIECE FILM RED」の中でAdoが歌っている曲をまとめたアルバム。映画のサントラ的な作品ですが、楽曲はいずれもそれだけで完結している歌モノのポップソングであり、事実上、Adoのニューアルバムとして楽しめる作品となっています。映画の中でのキーパーソンとなる「ウタ」が劇中で歌っている曲のようで、この「ウタ」の歌パートをAdoが担当しているそうです。別に声優パートと歌パートをわけなくても、例えば坂本真綾なんかを起用すれば、どちらのパートも1人で行けたんじゃないの?と思ってしまうんですが、そこは大人の事情なのでしょうか。

ちなみに私は、この「ONE PIECE FILM RED」については一切見ていません。それなので基本的に映画の中でどう使用されたのかを一切考慮せず、純粋にこのアルバムを聴いた限りでの感想となりますので、その点、ご留意ください。

まず今回のアルバムで大きな特徴となっているのは、非常に豪華な作家陣が参加している点。主題歌となっている「新時代」を中田ヤスタカが提供しているほか、Mrs.GREEN APPLEの大森元貴、Vaundy、澤野弘之、折坂悠太、秦基博という豪華な作家陣がズラリと名を並べています。ただ、正直、今回の作家陣に関しては少々複雑な気持ちにもなりました。というのも、Adoのいままでの楽曲は、いわゆるボカロPにより楽曲が提供されており、ネット界という彼女の出自を現した作家陣となっていました。それが歌手としてブレイクして、「ONE PIECE」の曲を歌うとなった途端、呼び出された作家陣は「ネット界」とは無縁のポップスミュージシャンばかり・・・。今回参加している中では唯一、FAKE TYPE.がネット系に出自を持つミュージシャンのようですが、ここらへん、Adoには責任はないのでしょうが、このセレクトはいかにも「大人の事情」といった感じで、参加したミュージシャンだけ見れば、もろ手を挙げて絶賛できるような豪華な面子だけに、複雑な心境を抱いてしまいました。

また、これら豪華な作家陣を、今回のアルバムではあまり生かし切れていないようにも思いました。映画の中で統一感を持たせるためでしょうか、それとも「画」に負けないサウンドを志向したためでしょうか、全体的にアレンジが分厚く音を詰め込んだ、いかにもJ-POP的なアレンジで、のっぺりした印象を抱いてしまいます。特に折坂悠太や秦基博といえば、シンプルなアレンジが持ち味のミュージシャンだけに、彼ららしさがあまり出ていないようにも感じました。

さらにAdoのボーカルについても、緩急をつけて聴かせるところでは静かに聴かせる・・・というタイプではなく、どちらかというと力強い歌声で押し一辺倒のボーカリスト。もちろん、力強いボーカルは、決して「下手」ではないのですが、ドスを聴かせつつ、陰の部分を力強く歌い上げるタイプの曲には非常にマッチするものの、バラード系で静かに歌い上げるタイプの曲については、あまり得手ではないように感じました。その結果、全体的にも押し一辺倒なボーカルに終始してしまい、アレンジと悪い意味でマッチしてしまい、のっぺりとした印象を抱いてしまいました。

その結果、全体として一言で言ってしまうと、分厚いアレンジに、とにかく力強く押すボーカルという、良くも悪くもいかにもJ-POPといったアルバムになってしまった感があります。ただ、その点を差し引いても、ポップスアルバムとしては比較的よくまとまっていたようにも感じました。ここらへんはいかにもJ-POP的な部分が良い方にも作用した結果で、まずは楽曲としてどの曲も強いインパクトを持っているということ。主題歌「新時代」も、サビ先でインパクトたっぷり。中田ヤスタカらしいポピュラーセンスは間違いなく感じますし、「Tot Musica」にしても、これでもかというほど分厚いエレクトロサウンドはインパクトたっぷり。折坂悠太作詞作曲の「世界のつづき」にしても、ストリングスにアレンジ過剰感を覚えても、彼らしいメランコリックなメロはやはり魅力的です。

ボーカルにしても押し一辺倒とはいえ、やはりパワフルなボーカルは魅力的で、「ウタカタララバイ」や「Tot Musica」のようなドスを効かせたようなボーカルはAdoの魅力を存分に発揮していますし、どの曲もAdoの色に染めた結果、アルバム全体としての統一感も出しています。そういう意味で、「J-POP的」という表現を使いましたが、J-POPの良い面と悪い面が両方とも効果を発揮したアルバムになっていたように感じます。

ただ、全体としてはAdoの前作「狂言」の方が、よりAdoのボーカリストとしての魅力を引き出し、バランスよくアルバムとして着地させていたようにも感じました。そういう意味では、いままでのAdo同様、ボカロPをメインで起用した方が良かったのでは?とも思ってしまったのですが・・・。もっとも、逆に、ボカロP以外と組んだAdoという意味で彼女の新たな可能性も見えた、という言い方も出来ない訳ではないですが・・・。悪いアルバムではなく、確かに映画抜きにしてもヒットポテンシャルはある作品なのですが、いろいろな「大人の事情」も感じてしまった1枚でした。

評価:★★★★

Ado 過去の作品
狂言


ほかに聴いたアルバム

THE NIGHT SNAILS AND PLASTIC BOOGIE(夜行性のかたつむり達とプラスチックのブギー)/THE YELLOW MONKEY

1992年にリリースされたTHE YELLOW MONKEYのメジャーデビューアルバム。彼らのデビュー30周年を記念して、デラックスエディションがリリースされました。今回、本作をはじめて聴いたのですが、デビュー当初ながらも、グラムロックやハードロックと歌謡曲を融合させようとしたTHE YELLOW MONKEYのバンドとしての方向性をしっかりと感じられます。ただ、残念ながら両者の融合はこの時点では中途半端。変にロック方面にシフトした曲と歌謡曲的な曲がチグハグに収録されており、試みとしては良いものの、まだまだバンドとしての未熟さを感じさせます。とはいえ、バンドとしての原点を知るには最適とも言える作品。ファンならずともチェックして損のない1枚です。

評価:★★★★

THE YELLOW MONKEY 過去の作品
COMPLETE SICKS
イエモン-FAN'S BEST SELECTION-
砂の塔
THE YELLOW MONKEY IS HERE.NEW BEST
9999
Live Loud
30Years 30Hits

(Re)quest -Best of Plastic Tree-/Plastic Tree

デビュー25周年を記念したPlastic Treeのベストアルバム。今回のベストアルバムはファンからのリクエストに基づく選曲になっているそうです。メタルやハードロックの影響が強いヴィジュアル系界隈の中、数少ないオルタナ系やシューゲイザーからの影響を強く受けている彼らですが、歪んだノイジーなギターサウンドにやはり気持ちよさを感じさせる内容に。全体的にメランコリック一本やりなメロディーラインがちょっと単調のようにも感じるのですが、オルタナ系やシューゲイザーが好きなら、間違いなくチェックしておきたいバンド。通常盤2枚組のこのベスト盤は入門盤としても最適な作品です。

評価:★★★★

Plastic Tree 過去の作品
B面画報
ウツセミ
ゲシュタルト崩壊
ドナドナ
ALL TIME THE BEST
アンモナイト
インク
echo
剥離
doorAdore
続 B面画報
十色定理

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2022年10月 1日 (土)

決して目新しさはないけれども・・・

Title:Curtain Call 2
Musician:ENIMEM

ご存じ、アメリカでもっとも人気のあるラッパーとして日本でも高い知名度を誇るEMINEM。本作は、2005年にリリースされた「Curtain Call」以来2作目となるベストアルバムとなります。2009年にリリースされたアルバム「Relapse」以降の発表された曲を収録しているほか、現時点でアルバム未収録となっている最新シングル「The King&I」「From the D2 the LBC」も収録。さらには50Centと共演した未発表曲「Is This Love('09)」も収録されているなど、豪華な内容となっています。

さて、EMINEMといえば、一時期ほどの勢いはない、とはいえ、2000年にリリースされた「The Marshall Mathers LP」以来、2020年にリリースされた現時点での最新アルバム「Music To Be Murdered By」までオリジナルアルバムが9作連続チャート1位を獲得するなど、押しも押されぬアメリカを代表する大スターであり、間違いなく「セレブ」と言える1人。まず今回のベストアルバムで目立つのは、そんなアメリカを代表する大スターらしさを反映するような、超豪華なゲスト陣でした。

「Lighters」のBruno Mars、「Walk On Water」のビヨンセ、「Love The Way You Lie」「The Monster」のリアーナ、「Won't Back Down」のP!nk、「River」のエド・シーランといった超豪華なメンバーがズラリと顔を揃えています。そして彼らは楽曲の中で歌のパートを担当しているのですが、そのメロディーラインが楽曲の中で大きなインパクトとなっており、アルバムの中でも実に効果的な役割を担っています。「The Marshall Mathers LP」ではアメリカの「セレブ」を揶揄しまくっていた彼ですが、いまやすっかりそんな「セレブ」の仲間入りに・・・。ちょっと複雑な感もなきにしろあらずですが、それだけ豪華なゲストを揃えられるのは、まさに今の彼の地位を如実にあらわしているといっていいでしょう。

また、これら豪華ゲストの「歌」が大きなインパクトになったのも一つの要因でしょうが、聴いていていい意味でポップでわかりやすく、かつバリエーションが豊富というのもEMINEMの大きな魅力ですし、またこれだけ売れ続けている大きな要因だということが、今回のベストアルバムを聴いていて強く感じました。正直言って、EMINEMのラップは、今となって目新しさはほとんど感じられません。楽曲によってはトラップ的な要素を入れている作品もあるのですが、楽曲の移り変わりの激しいHIP HOPというジャンルの中では、ともすれば「時代遅れ」とすら捉えられかねない内容とも言えます。

ただ、そんな中、ラテン風なトラックにリアーナのボーカルを入れて哀愁感たっぷりに聴かせる「Love The Way You Lie」、ギターリフ主導でダイナミックでロッキンなビートが強いインパクトのある、ロックリスナーにも訴求力がある「Berzerk」、アコギも入って、「泣きメロ」とも言えるようなメロディーすら感じられる「Space Bound」、「Sound Of Silence」のフレーズをサンプリングし、悲しげに聴かせるトラックがインパクト大の「Darkness」などなど、バリエーションがあってインパクトたっぷりの楽曲が並びます。全35曲、2時間40分というボリュームたっぷりのベストアルバムでしたが、聴いていて飽きることなく最後まで一気に楽しむことが出来る内容になっていました。

「The Marshall Mathers LP」で大きな話題となって既に20年以上を経過し、すっかり「ベテランミュージシャン」の一員でもあるEMINEM。確かに目新しさはないものの、ただ、それでも今なお人気を持続し続けるその理由が十分すぎるほどわかるようなベストアルバムになっていたと思います。このいい意味でのポピュラリティーとインパクトの強さは他のラッパーにはなかなか持ちえないものでしょう。まだまだEMINEMが王者の座を維持し続けそうです。

評価:★★★★★

EMINEM 過去の作品
RELAPSE
RECOVERY

THE MARSHALL MATHERS LP 2
REVIVAL
Kamikaze
Music To Be Murdered By
Music To Be Murdered By - Side B


ほかに聴いたアルバム

I Am The Moon: III. The Fall/Tedeschi Trucks Band

「I Am The Moon」と名付けられ、全24曲を4枚のアルバムにわけてリリースする壮大なプロジェクトの第3弾。ブルースロックなどルーツロックの要素をふんだんに取り入れて、哀愁たっぷりのメロディーをゆっくり歌い上げるスタイルは、ある意味、彼らにとっての王道を行くようなスタイル。第1弾、第2弾と続き、彼ららしさを存分に押し出した良質なロックミュージックという印象でした。

評価:★★★★

TEDESCHI TRUCKS BAND 過去の作品
Revelator
MADE UP MIND
Let Me Get By
Signs
I Am The Moon:Ⅰ.Cresent
I Am The Moon:Ⅱ.Ascension

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2022年9月30日 (金)

シティ・ポップの要素が前面に

Title:樹影
Musician:クレイジーケンバンド

結成25周年を迎え、すっかりベテランの域に達しているものの、まだまだ精力的な活動を続けるクレイジーケンバンド。相変わらず1年に1度ペースでの新作をリリースし続けており、ちょうど1年前はカバーアルバムをリリース。オリジナルアルバムとしては2年ぶりとなるアルバムを今年もリリースしてきました。昨年は横山剣のデビューから40周年ということで記念のカバーアルバムのリリースとなったのですが、25周年の今年は通常ペースでのリリース、というマイペースなところが、CKBらしい・・・と言えるかもしれません。

さて、そんな2年ぶりとなる彼らのニューアルバムですが、まずアルバム全体としての印象として、シティ・ポップの要素を強く感じました。もちろん、いままでの彼らの作品もシティ・ポップというのは彼らの音楽を構成する重要な要素となっていましたが、今回のアルバムではその要素をより前面に押し出したような作風になっていたように感じます。冒頭を飾る「Almond」などはまさに典型例。シンセを用いたイントロに薄くストリングスが重なるスタートなど、いかにもシティーポップ然とした感じ。続く、タイトル通りにちょっとエキゾチックさを加えた「ドバイ」も同じく、軽快でメロウなサウンドがシティーポップらしい作風の楽曲となっています。

もちろん、このシティーポップという要素を縦軸に、ジングルを含めて全18曲、バラエティー富んだ作風の曲が次々と展開されてくるのもいつものCKBらしいところ。ボッサ風の「夕だち」にピアノを入れたジャジーな「強羅」。打ち込みを入れたダンサナブルなダンスチューン「Orange Cinnamon Sunset」に、ホーンセッションを入れた彼ららしいファンクチューン「Honmoku Funk」など、様々な音楽性を取り入れた曲が続きます。ただ、彼ららしい歌謡曲的な要素も入りつつも、ジャズ、ソウルなどの要素をふんだんに取り入れた爽やかであか抜けた都会的な雰囲気を感じさせる、まさに「シティ・ポップ」な側面を、どの曲からも強く感じます。

ただ、後半に関しては、シティ・ポップ的な要素を感じつつも、クレイジーケンバンドの大きな特徴のひとつである、「歌謡曲」的な要素も強く感じる作風になっていました。ムーディーにゆっくり歌い上げる「おじさん」に、「コウタイ」など特に後半はムード歌謡の要素が強い作風に。ここ最近は、以前ほど「昭和歌謡」という要素を押し出さなくなった彼らですが、この楽曲に関しては、まさに「昭和」というムードが漂う1曲に。実に彼ららしさを感じる作品になっています。

アルバム全体的には、クレイジーケンバンドらしさは強く感じられる、いい意味でベテランの彼ららしい安定感のある作品に仕上がっていたと思います。ここ最近の彼らの作品と同様、決して目新しさはあるわけではありませんが、クオリティーの高いポップスを仕上げてきているだけあって、「マンネリ」さもあまり感じられません。そういう意味ではデビュー25年を経て、いまだに脂がのった状態と言えるかもしれません。いい意味で安心して聴ける傑作アルバムでした。

評価:★★★★★

クレイジーケンバンド 過去の作品
ZERO
ガール!ガール!ガール!
CRAZY KEN BAND BEST 鶴
CRAZY KEN BAND BEST 亀

MINT CONDITION
Single Collection/P-VINE YEARS
ITALIAN GARDEN
FLYING SAUCER
フリー・ソウル・クレイジー・ケン・バンド
Spark Plug
もうすっかりあれなんだよね
香港的士-Hong Kong Taxi-
CRAZY KEN BAND ALL TIME BEST 愛の世界
GOING TO A GO-GO
PACIFIC
NOW
好きなんだよ


ほかに聴いたアルバム

Tumbling Ice/カーリングシトーンズ

寺岡呼人、奥田民生、斉藤和義、浜崎貴司、YO-KING、トータス松本といった50代半ばの同世代大物ミュージシャンたちが集まったユニット、カーリングシトーンズ。同年代のミュージシャンたちが企画モノ的に集まったのかと思いきや、まさかの2枚目リリースということで、よっぽど楽しかったんだろうなぁ、ということを感じます。ただ、2枚目ということでユニークなパロディー風な曲を楽しく演っていることはわかるのですが、前作に比べると若干ネタ切れ気味か?それでもハードロックからガレージ、ラテンにスタジアムロック風な作品まで、主に70年代や80年代風のサウンドを中心に卒なくユニークにまとめあげているのは、さすが実力者揃いといった感じはありますが。

評価:★★★★

カーリングシトーンズ 過去の作品
氷上のならず者
カーリングシトーンズ デビューライブ! ~カーリング・シトーンズと近所の石~

焦年時代/PUNPEE&BIM

ラッパーPUNPEEとBIMによるダブルネームの5曲入りのEP。タイトルからして「少年時代」のパロディーなのですが、そのイメージ通り、「Kids Return」「蛍火」などノスタルジックな雰囲気を感じさせる曲が目立ちます。また、ZEEBRAが参加した「Jammin'97」のように、ねっちりとした夏の曲も。去り行く夏を惜しみつつ、ノスタルジックな気持ちで楽しめる作品。ただ、次はそろそろPUNPEEのフルアルバムを聴きたいのですが。

評価:★★★★

PUNPEE 過去の作品
MODERN TIMES
MODERN TIMES-Commentary-

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2022年9月29日 (木)

日韓男性アイドルが上位に

今週のHot Albums

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今週は日韓の男性アイドルグループが1位2位に並ぶチャートとなりました。

まず1位初登場はジャニーズ系アイドル。Snow Man「Snow Labo. S2」がランクイン。CD販売数及びPCによるCD読取数で1位獲得。オリコン週間アルバムランキングでも初動売上89万枚で1位初登場。前作「Snow Mania S1」の初動84万1千枚(1位)からアップしています。

一方、2位には韓国のアイドルグループNCT127「2 Baddies」が先週の7位からランクアップ。先週はダウンロード数のみでのランクインでしたが、今週、CD販売数が加わったようです。CD販売数2位、ダウンロード数13位、PCによるCD読取数83位。オリコンでは初動売上9万枚で2位初登場。前作「Sticker」の初動5万2千枚(1位)よりアップしています。

そして3位にはAdo「ウタの歌 ONE PIECE FILM RED」がワンランクダウンながらもベスト3をキープ。ただ、ダウンロード数は今週も1位をキープしたものの、CD販売数は2位から6位、PCによるCD読取数も1位から2位とそれぞれダウンしています。

続いて4位以下の初登場盤です。まず4位に韓国の女性アイドルグループBLACKPINK「BORN PINK」が先週の11位からランクアップし、ベスト10入り。CDの売上が加わった影響で、CD販売数3位、ダウンロード数5位、PCによるCD読取数47位にランクインし、総合順位はこの位置に。オリコンでは初動売上2万3千枚で3位初登場。前作「THE ALBUM」の初動2万2千枚(4位)から若干のアップに。

5位には聖飢魔Ⅱ「BLOODIEST」がランクイン。CD販売数4位、ダウンロード数8位、PCによるCD読取数17位。1980年代から90年代にかけて一世を風靡に、地獄から来た悪魔だと自称するヘヴィーメタルバンド…というのは、今の若い世代でもボーカルのデーモン閣下の活躍からご存じの方も多いでしょう。1999年に解散したものの、その後、散発的に再結成。そしてこのたび、実に23年ぶりにリリースされたオリジナルアルバムが本作となります。ちなみに8月24日にカセットテープという形態で先行リリースされていたため、オリコンではベスト10圏外からのランクアップという形で、1万7千枚を売り上げて4位初登場。23年前の前作「LIVING LEGEND」の初動1万6千枚から何とアップしています。CDが売れまくっていた23年前と比べて、CDでの売上枚数が増えたというのは驚くべきことですが、それだけ根強い人気を保ち続け、新作が待ち望まれていたということでしょう。

6位初登場はsumika「For.」。CD販売数5位、ダウンロード数10位、PCによるCD読取数18位。タイトル通り、バンド4枚目となるオリジナルアルバム。オリコンでは初動売上1万5千枚で5位初登場。前作「AMUSIC」の2万5千枚(3位)からダウンしています。

7位には女性アイドルグループ私立恵比寿中学「Major Debut 10th Anniversary Album 中吉」がランクイン。CD販売数7位、ダウンロード数29位、PCによるCD読取数60位。タイトル通り、メジャーデビュー10周年を記念してリリースされたベスト盤。オリコンでは初動売上1万1千枚で7位初登場。直近のオリジナルアルバム「私立恵比寿中学」の初動1万3千枚(4位)からダウンしています。

9位にはBUCK-TICK「CATALOGUE THE BEST 35th anniv.」が初登場。CD販売数8位、PCによるCD読取数33位。こちらはデビュー35周年を記念し、彼らの過去の作品を5つのコンセプトを元に編纂された5枚組のベストアルバム。5年前にもベストアルバム「CATALOGUE 1987-2016」をリリースしており、この時は4枚組だったので、1枚増えました。オリコンでは初動売上1万枚で8位初登場。直近のオリジナルアルバム「ABRACADABRA」の初動2万枚(3位)からはダウン。ベスト盤の前作「CATALOGUE 1987-2016」の9千枚(6位)よりは若干のアップとなっています。

最後10位にはBAND-MAID「Unleash」がランクイン。CD販売数9位、ダウンロード数7位、PCによるCD読取数81位。メイド服に身を包みつつ、HR/HM路線の曲を演奏する5人組バンドによるEP盤。オリコンでは初動売上6千枚で9位初登場。オリジナルアルバムの前作「Unseen World」の初動1万枚(8位)からはダウンしています。

今週のHot Albumsは以上。チャート評はまた来週の水曜日に!

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2022年9月28日 (水)

Adoの快進撃はまだまだ続く

今週のHot100

http://www.billboard-japan.com/chart_insight/

今週はさらにAdoの快進撃が目立つチャートとなりました。

まず今週の1位には、「新時代(ウタ from ONE PIECE FILM RED)」が先週の2位からランクアップ。見事1位返り咲きを果たしています。ダウンロード数2位、ストリーミング数、You Tube再生回数及びカラオケ歌唱回数1位は先週から変わらず。これで16週連続のベスト10ヒット&8週連続のベスト3ヒット&通算5週目の1位獲得となりました。

今週も、「新時代」を筆頭に、さらにAdoの楽曲が並びます。2位には「私は最強(ウタ from ONE PIECE FILM RED)」が先週の3位からランクアップ。結果、Adoが1、2フィニッシュを決める結果に。さらに「ウタカタララバイ(ウタ from ONE PIECE FILM RED)」が4位、「逆光(ウタ from ONE PIECE FILM RED)」が5位と先週と同順位をキープ。「Tot Muisica(ウタ from ONE PIECE FILM RED)」は今週13位にダウンしてしまいましたが、今週もAdoの曲が4曲同時ランクインという結果になっています。特にストリーミング数は今週も1位「新時代」2位「私は最強」3位「ウタカタララバイ」4位「逆光」と、1位から4位を独占する結果に。まだまだAdoの快進撃は続きそうです。

そんなAdoに割って入ったのが3位初登場NMB48「好きだ虫」。CD販売数では1位を獲得。ただ、PCによるCD読取数40位、Twitterつぶやき数35位の他はいずれのチャートもランク圏外となり、総合順位も3位に留まりました。オリコン週間シングルランキングでは初動売上16万枚で1位初登場。前作「恋と愛のその間には」の初動15万2千枚(1位)からアップしています。

続いて4位以下の初登場曲ですが、今週、初登場曲は1曲のみ。10位になとり「Overdose」がランクイン。ストリーミング数で6位を獲得。その他、ダウンロード数50位、Twitterつぶやき数54位という結果でしたが、総合順位ではベスト10入りを果たしました。なとりは主にTikTokで話題となったシンガーソングライター。Hot100には未反映ですが、ビルボードのTikTok Weekly Top20でも見事2位に輝いています。

今週は初登場曲が少な目でしたが、その分、ロングヒットが目立ちました。まずTani Yuuki「W / X / Y」は先週と変わらず6位をキープ。ストリーミング数は今週もAdo4曲に続く5位にランクインしています。これで25週連続のベスト10ヒットに。

Official髭男dism「ミックスナッツ」は7位から8位にダウン。ただこれで24週連続のベスト10ヒットとなっています。ストリーミング数が7位から8位に、You Tube再生回数も12位から15位にダウンしましたが、一方、ダウンロード数は11位から9位にアップし、ベスト10返り咲きを果たしています。

先週、8位にランクインしてベスト10に返り咲いたSEKAI NO OWARI「Habit」はワンランクダウンの9位ながらもベスト10を今週もキープ。これで通算19週目のベスト10ヒットとなっています。

今週のHot100は以上。明日はHot Albums!

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2022年9月27日 (火)

70年代の「日本の」ロック風

Title:Into The Time Hole
Musician:GLIM SPANKY

ルーツ志向の音楽を奏でる女性ボーカル+男性ギタリストのユニット、というミュージシャン、なぜか日本では、まるで系譜のように続いていて、LOVE PSYCHEDELICO、Superfly、そして彼女たちGLIM SPANKYと、特に影響を公言していないものの、似たようなタイプのユニットが少なくありません。ただ、どのユニットも活動を続けるうちに徐々にスタイルをシフトさせ、最近では3ユニットとも、それなりに別のベクトルを向いた音楽を奏でています。

LOVE PSYCHEDELICOはそのうち、もっとも愚直にルーツミュージックを志向しているイメージ。Superflyは直近のアルバムではいきなりポップなアルバムをつくりビックリしたのですが、基本的にはハードロックや90年代J-POPを取り入れる方向にシフトしています。そんな中、比較的デビュー当初から変わらずルーツ志向のロックを奏でてきた彼女たちですが、今回のアルバムは一つの方向性を示したように感じました。それは、歌謡曲的要素を取り入れる方向性。今回のアルバムは、イメージで言えば70年代あたりの洋楽志向の日本のロックバンドをなぞったような、そんなイメージでしょうか。ルーツ志向を感じさせつつ、どこか強く感じる日本人的な歌謡曲の要素、それを強く感じさせるアルバムでした。

例えば「レイトショーへと」は気だるい感じるのロックを奏でつつ、哀愁感たっぷりのメロディーラインは日本人的なウェットさを感じさせますし、「風は呼んでいる」もメランコリックな作風で、どこか感じるフォーキーな要素は70年代的な空気感も覚えます。「未完成のドラマ」も同じく哀愁感たっぷりのメロディーラインが涙腺を刺激します。

ただ、ある意味典型的だったのがラストの「ウイスキーが、お好きでしょ」のカバーでしょう。ご存じ1991年に坂本冬美が歌った曲のカバー。竹内まりややハナレグミなど数多くのミュージシャンがカバーしており、カバー曲の定番とも言える楽曲なのですが、まさに歌謡曲なこの楽曲がアルバムの流れとしてもピッタリとマッチ。締めくくりとしてピッタリの構成となっています。

もちろんダイナミックなバンドサウンドを聴かせる「シグナルはいらない」があったり、「未完成なドラマ」でもギターリフをしっかり聴かせてくれたりとロックとしてのカッコよさはこのアルバムでも健在。ただデビュー当初からのブルース色はちょっと薄れてしまって、全体的には今まで以上にポップテイストが強くなってしまった、そんな印象も受けます。

GLIM SPANKYとしては一つの方向性を示したアルバムというようにも感じた反面、賛否はわかれそうなアルバムだったかもしれません。個人的には(いままでの彼女たちの作品にも感じていたのですが)どちらの方向性に行くにしても、もうちょっと吹っ切れた方がおもしろかったのでは?とも思ってしまうのですが、ここらへんは今後のアルバム次第といった感じでしょうか。今後、どのような方向性に彼らが進んでいくのか、試金石のようなアルバムでした。

評価:★★★★

GLIM SPANKY 過去の作品
ワイルド・サイドを行け
Next One
I STAND ALONE
BIZARRE CARNIVAL
LOOKING FOR THE MAGIC
Walking On Fire


ほかに聴いたアルバム

PHALARIS/DIR EN GREY

約3年9ヶ月ぶりとなるDIR EN GREYのニューアルバム。非常にダイナミックなサウンドに対応するメランコリックなメロディーラインも魅力的。曲によってはストリングスやシンセを取り入れた曲も。今回のアルバムに関しては、前作同様、ヘヴィネスさが以前に比べてグッと増した印象も。一方で哀愁感たっぷりのメロを前面に押し出した歌モノも目立ち、いい意味で緩急のつけたアルバムになっていました。

評価:★★★★

DIR EN GREY 過去の作品
UROBOROS
DUM SPIRO SPERO
THE UNRAVELING
ARCHE
VESTIGE OF SCRATCHES
The Insulated World

PLASMA/Perfume

途中、ベスト盤のリリースを挟みつつ、オリジナルアルバムとしては約4年ぶりとなる新作。安定の中田ヤスタカ作詞作曲+プロデュース作で、彼らしいインパクトあるエレクトロポップが魅力的。非常にPerfumeらしさを感じる作品は、目新しさはないのですが、一方でこれだけ長く活動を続けていながら、一定以上のクオリティーを保ち続けるのはさすが。中田ヤスタカが他のミュージシャンに提供する作品は、結構良しあしがあるのですが、Perfumeに関しては軸がぶれていない感じがします。

評価:★★★★

Perfume 過去の作品
GAME
Future Pop
Perfume The Best "P Cubed"

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2022年9月26日 (月)

資本主義の矛盾を突く

Tilte:God's Country
Musician:Chat Pile

いままで2枚のEPをリリースし、本作がオリジナルアルバムとしてのデビュー作となるアメリカはオクラホマ・シティで結成された4人組ロックバンド、Chat Pile。ジャンル的には「スラッジメタルバンド」にカテゴライズされるバンドで、自らを「デス・グランジ」と形容しているそうです。

アルバムは、ダイナミックでメタリックなギターとシャウト気味のボーカルを聴かせる「Slaughterhouse」からスタート。どこか不穏な雰囲気の曲調が、まずは印象に残ります。その後も非常に不穏な雰囲気のメタリックなサウンドにシャウト気味のボーカルという組み合わせの作品が続きます。続く「Why」はヘヴィーなサウンドを前に押し出していて、どちらかというとメタル的な要素が強く感じますし、「Wicked Puppet Dance」などはアップテンポなサウンドにハードコアからの影響も強く感じます。

ただ、「デス・グランジ」を自称するように、サウンド的にはむしろグランジやオルタナティブロックからの影響も垣間見えます。例えば冒頭の「Slaughterhouse」のギターの音は、どこかグランジからの影響も感じさせますし、「Anywhere」などは、そのギターサウンドとボーカルから、個人的にはPixiesにつながる要素も感じさせます。ここらへん、スラッシュメタルとカテゴライズされる彼らですが、むしろメタルをあまり好まない、グランジ、オルタナ系ロックのリスナーでも楽しめる要素は大きいのではないでしょうか。

また加えて、彼ら、作品の中に社会的な要素を多分に取り入れているそうで、もともとChat Pileというバンド名自体、オクラホマシティーにある有害な鉱業廃棄物の山に由来するそうですし、今回のアルバムタイトルも、劣悪な環境で悪名高いオクラホマシティーの刑務所に由来するそうです。

他にも「The Mask」では銃乱射事件をテーマにしていたり、「Why」ではホームレスが増えているアメリカの現状を取り上げたりと、社会的テーマ性の高い音楽も特徴的。資本主義社会の中の矛盾をついたようなイメージでしょうか。残念ながらテーマ的にはいまひとつなじみのない部分もありますし、英語詞のためストレートに伝わらない部分もあります。ただ、彼らの社会に対する怒りは、このヘヴィーなサウンドを通じて、私たちにも響いてくるものはあるようにも思います。

前述のように、スラッシュメタルというカテゴリーに留まらず、意外と幅広いリスナー層にも受け入れられそうな部分もありますし、今後にも注目したいバンドでしょう。今後は、日本でも徐々に注目が集まるかも・・・。なんとなく、この手のバンドは来年あたりのサマソニで来日、という話もある、かも。

評価:★★★★★

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