2025年1月12日 (日)

ソウルミュージックの敬愛を感じさせつつ・・・

Title:Acoustic Soul 2021~2024
Musician:スガシカオ

スガシカオが、インディーズで活動していた2014年に、メジャー復帰を決意し、インディーズラスト作としてリリースした「ACOUSTIC SOUL」。そして2020年にリリースした「ACOUSTIC SOUL 2」。今年、メジャー復帰10周年を記念し、パッケージとしては通販及びライブ会場限定でリリースされた、その2作からの曲に新曲も追加してリリースされたのが本作です。ちなみに公式サイトの紹介では、この「ACOUSTIC SOUL」「ACOUSTIC SOUL 2」から4曲+新録6曲という記載となっていますが、4曲は「ACOUSTIC SOUL」から「見る前に跳べ.com」「きみが好きです」の2曲、「ACOUSTIC SOUL 2」からは「発芽」「ヤグルトさんの唄」の2曲を収録。ちなみに「ACOUSTIC SOUL」からは「情熱と人生の間」も収録されていますが、こちらは2024ver.なので新録扱い、ということなのでしょう。

ちなみに「Acoustic Soul」というタイトルなので、アコースティックアレンジのアルバム、といった印象を受けるのですが、そういう意味ではなく「ソウル黄金期のアナログ楽器をつかったソウル」という定義だそうです。そのため、アルバム全体としてはアコースティックアレンジの企画盤、みたいな感じではなく、いつものスガシカオのオリジナルアルバム、といった感覚で聴けるアルバムとなっています。

また、ソウルミュージックに対する敬愛と拘りを感じさせるアルバムとなっており、ミディアムファンクの「ゼロジュウ」からスタートし、エレピでメロウに聴かせる「発芽」、エレピで明るく聴かせつつ、ファンキーなリズムが楽しい「見る前に跳べ」、リゾネーター・ギターでブルージーに聴かせる「きみが好きです」、ホーンセッションも入れて軽快に聴かせるソウルチューン「情熱と人生の間」などなど、ソウルミュージックあるいはブルースからの要素を強く感じされる作風に、彼のブラックミュージックへの傾倒ぶりが感じます。

ただ、基本的にはそんなソウルミュージックの要素を色濃く入れつつも、ゴリゴリのソウルを前面に押し出す訳ではなく、楽曲としてはソウルへ興味のないようなリスナー層へも訴求できるようなポップな作品にまとめあげている、という点が大きな特徴。特に今回のアルバムでは、サウンド的な拘りとは相反するように、J-POP中心のヒットチャートの中でも違和感ないような、歌を前に押し出したポップミュージックが並んでいます。

さらにそんな中でも歌詞が強いインパクトを与える曲が多かったのも印象的で、例えば「ヤグルトさんの唄」は彼の母親に対する思いを歌った歌で、本作の初回盤では、自叙伝的小説の「ヤグルトさんの唄」がついてきます。残念ながら同書は読んでいないのですが、この曲に対する強い思いを感じさせます。また「Soul Music」はタイトル通り、彼のソウルミュージックへの想いを歌ったナンバーで、彼のその愛情を強く感じることが出来ますし、メッセージ性の強い「あなたへの手紙」も印象的。さらに「6月9日」は、この日に急逝した、彼の現場マネージャーへの追悼歌となっており、こちらの歌詞にも胸をうたれます。

そんな訳で、ソウルミュージックへの敬愛を感じさせつつ、全体としてはいつものスガシカオらしいポップミュージックをしっかりと聴かせてくれたアルバム。今回も彼の実力を実感できた傑作アルバムでした。

評価:★★★★★

スガシカオ 過去の作品
ALL LIVE BEST
FUNKAHOLiC
FUNKASTiC
SugarlessII
BEST HIT!! SUGA SHIKAO-1997~2002-
BEST HIT!! SUGA SHIKAO-2003~2011-

THE LAST
THE BEST-1997~2011-

フリー・ソウル・スガシカオ
労働なんかしないで 光合成だけで生きたい
SugarlessⅢ
イノセント

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2025年1月11日 (土)

こちらも紅白&レコ大の影響か?

今週(2025年1月8日付)のHot Albums

http://www.billboard-japan.com/chart_insight/

Hot100同様、紅白&レコ大の影響を感じさせるチャートとなっています。

まず1位はMrs.GREEN APPLE「ANTENNA」が先週の2位からランクアップ。通算16週目のベスト10ヒット&通算6週目のベスト3ヒットにして、初の1位獲得となっています。ストリーミング数は3週連続の1位。ダウンロード数も6位から3位にアップしたのに加えて、CD販売数も25位から5位にアップ。さらに「Attitude」も7位から2位にアップ。こちらも2019年10月9日付チャート以来のベスト3返り咲き。レコード大賞受賞&紅白出演による露出アップの影響を感じさせます。

さらに3位にはVaundy「strobo」が先週の6位からアップ。こちらはここに来て、自己最高位更新。「replica」も8位から4位にアップし、3位4位にもVaundyが並んでいます。「replica」はこれで通算8週目のベスト10ヒットとなっています。

続いて4位以下ですが、今週は初登場盤はなし。ただし、ベスト10圏外からの返り咲きが数枚あり、まず8位に米津玄師「LOST CORNER」が先週の14位からアップ。こちらは昨年10月16日付チャート以来のベスト10返り咲き。通算9週目のベスト10ヒット。9位にはback number「スーパースター」が11位からランクアップ。こちらは2週ぶりのベスト10返り咲き。さらに10位には優里「壱」が16位からアップし、こちらは2022年5月11日付チャート以来のベスト10返り咲き。通算11週目のベスト10ヒット。こちらは年末の紅白などには全く関係ないのですが・・・優里がこれだけ人気があるのはちょっと意外な感じもします。


今週のHeatseekers Songs

https://www.billboard-japan.com/charts/detail?a=heat_seekers

Heatseekers Songsは、柊マグネタイト「テトリス」が今週も1位獲得。これで4週連続の1位となります。動画再生回数は5位から6位にダウン。Hot100は先週と変わらず47位をキープしています。


今週のニコニコVOCALOID SONGS

https://www.billboard-japan.com/charts/detail?a=niconico

今週のボカロチャートは先週に引き続きDECO*27「モニタリング」が1位獲得。ちなみに柊マグネタイト「テトリス」は先週から引き続き2位に。また3位も3週連続ぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬ「み む かゥ わ ナ イ ス ト ラ イ」がキープと、ベスト3は先週から変わっていません。今後のこの3曲のデッドヒートも気になるところです。

4日連続のチャート評はこれでおしまい。来週のチャート評は、また通常通り、15日の予定です。

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2025年1月10日 (金)

新指標追加の2週目

今週(2025年1月1日付)のHot Albums

http://www.billboard-japan.com/chart_insight/

先週からストリーミング数がチャートに追加され、ガラリと様相が変わったHot Albums。今週も大きく変動のない結果となっています。

ただ今週も1位は主にCD販売数の影響。AKB48「なんてったってAKB48」が1位初登場。CD販売数1位、ダウンロード数12位。アイドルソングをカバーしたカバーアルバム。オリコン週間アルバムランキングでは初動売上18万4千枚で1位初登場。オリジナルアルバムの直近作「僕たちは、あの日の夜明けを知っている」の初動57万6千枚(1位)から大きくダウンしています。

2位はストリーミング数追加の影響でベスト10に返り咲いたMrs.GREEN APPLE「ANTENNA」が同順位をキープ。ストリーミング数は先週と変わらず1位、ダウンロード数は13位から6位にアップ。通算15週目のベスト10ヒット&通算5週目のベスト3ヒット。ちなみにMrs.GREEN APPLEは同じく先週ベスト10に返り咲いた「Attitude」も今週、2ランクダウンながら7位にランクインしています。

3位にはNumber_i「No.I」が4位から3位にランクアップ。ストリーミング数で2位を獲得。10月2日付チャート以来のベスト3返り咲きとなっています。

続いて4位以下の初登場盤ですが、今週は3枚がランクイン。4位に韓国の男性アイドルグループNCTの派生グループNCT WISH「WISHFUL」がベスト10初登場。CD販売数2位。また9位には、昨年解散したHIP HOPグループBAD HOP「BAD HOP」が先週の16位からランクアップでベスト10初登場。昨年2月にリリースされたアルバムですが、ストリーミング数が追加された影響でランクを大きく伸ばしました。これだけ人気があるというのは、正直、驚きです・・・。最後に10位にはSexyZoneの元メンバー、中島健人「N/bias」が初登場でランクイン。CD販売数4位、ダウンロード数2位。

今週のHot Albumsは先週、ベスト10にランクインしてきたアルバムのうち、back number「スーパースター」「シャンデリア」はベスト10圏外に落ちてしまいましたが、前述のMrs.GREEN APPLE、Number_iの他、Vaundy「strobo」「replica」もそれぞれ6位、8位にランクイン。今後、ここらへんのロングヒットが続きそう。ちょっとストリーミングが強すぎるような気もするのですが・・・。今後の動向にも注目です。


今週のHeatseekers Songs

https://www.billboard-japan.com/charts/detail?a=heat_seekers

Heatseekers Songsは、柊マグネタイト「テトリス」が3週連続で1位獲得。ただし、動画再生回数は4位から5位にダウン。一方、Hot100では55位から47位にアップしています。


今週のニコニコVOCALOID SONGS

https://www.billboard-japan.com/charts/detail?a=niconico

一方、ボカロチャートでは7週連続で「テトリス」が1位を獲得していましたが、今週、ついにDECO*27「モニタリング」が1位獲得しています。DECO*27は、2008年から活動を続ける、ボカロPとしては重鎮とも言えるミュージシャン。Adoのヒット曲「踊」の作詞も担当しています。

今週のHot Albums&Heatseekers&ボカロチャートは以上。明日は1月8日付Hot Albums&Heatseekers&ボカロチャート!

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2025年1月 9日 (木)

紅白&レコ大の影響は?

今週(2025年1月8日付)のHot100

http://www.billboard-japan.com/chart_insight/

昨日に引き続き、今週は1月8日付のHot100の紹介。チャート集計対象期間が12月30日から1月5日ということで、紅白歌合戦やレコード大賞の影響を受けたチャートとなっています。

Lilac

まず今週1位には、レコード大賞受賞曲、Mrs.GREEN APPLE「ライラック」が昨年9月11日付チャート以来、実に約4か月ぶりの1位返り咲きを果たしています。ストリーミング数も2位から1位にアップし、こちらは10月23日付チャート以来の1位返り咲き。ダウンロード数も6位から1位に、動画再生回数も先週から2位をキープ。カラオケ歌唱回数も3位から2位にアップと軒並みランクアップ。その強さを見せつける結果となっています。これでベスト10ヒットは38週連続、ベスト3ヒットは通算24週目、また通算3週目の1位獲得となりました。

Mrs.GREEN APPLEは「ビターバカンス」も今週、ワンランクダウンながらも6位にランクイン。さらに「ケセラセラ」も今週15位から8位にアップし、こちらは10月2日付チャート以来のベスト10返り咲き。こちらは通算29週目のベスト10ヒットとなっています。さらに「Soranji」が14位から11位、紅白でも披露した「青と夏」が21位から15位、「familie」が22位から18位、「ダンスホール」が24位から19位、「点描の唄 feat.井上苑子」が先週と変わらず20位と、ベスト20のうち実に8曲をMrs.GREEN APPLEが占めるという結果に。レコ大の受賞については賛否を巻き起こしたものの、彼らが現時点で最も人気を獲得しているミュージシャンであることは間違いないでしょう。

2位はロゼ&ブルーノ・マーズ「APT.」がワンランクダウン。こちらは11週連続のベスト10ヒット&10週連続のベスト3ヒットに。ストリーミング数は1位から2位にダウンしたものの、動画再生回数は3週連続で2位をキープするなど、まだまだ高い人気を誇っており、ヒットは続きそうです。

そして3位も紅白&レコ大効果でしょう。Creepy Nuts「Bling-Bang-Bang-Born」が6位から3位にアップ。こちらは実に昨年の8月14日付チャート以来のベスト3返り咲きとなっています。特にストリーミング数が9位から5位にアップ。動画再生回数も6位から3位にアップ。これで通算48週目のベスト10ヒット&通算27週目のベスト3ヒットとなりました。ちなみにそれと入れ替わる形で「オトノケ」は4位にダウン。ただストリーミング数は先週から変わらず3位をキープ。こちらはこれで13週連続のベスト10ヒットとなりました。

今週は集計対象週が正月休み期間ということで新曲のランクインはなし。ただし、紅白出場ミュージシャンの曲が軒並みランクを上げています。まずこっちのけんと「はいよろこんで」は10位から5位にアップ。ダウンロード数が7位から2位、ストリーミング数が13位から9位、動画再生回数も11位から5位にアップ。これで通算21週目のベスト10ヒットとなりました。

Omoinotake「幾億光年」も8位から7位にアップ。総合順位の伸び幅は小さかったものの、ダウンロード数は12位から6位、ストリーミング数は12位から7位、動画再生回数もベスト20圏外から13位と各種チャートは大幅にアップ。これで通算35週目のベスト10ヒットとなりました。

さらに顔を見せない形での出演も話題となったtuki.「晩餐歌」も17位から9位にアップ。こちらは7月17日付チャート以来のベスト10返り咲きとなっています。ダウンロード数は20位から5位、ストリーミング数も21位から13位に、動画再生回数も17位から9位にアップ。これで通算32週目のベスト10ヒットとなっています。

ベスト10以下でも米津玄師「さよーならまたいつか!」が40位から17位、Vaundy「踊り子」が83位から24位、藤井風「満ちていく」がベスト100圏外から27位にランクアップするなど、紅白効果が強く感じられるチャートとなっています。また、紅白でおそらく一番話題となったB'zの「ultra soul」が49位、「LOVE PHANTOM」も57位にランクインし、こちらも紅白の影響を強く感じさせます。

ただ、ネット上であれだけ騒がれてた割には、思ったよりチャートアクションは低め。Download Albumsでベスト盤「B'z The Best "ULTRA Pleasure"」が1位獲得ということで話題となりましたがHot Albumsでは66位と、総じて思ったほど上位には食い込んできていません。また、5日までのチャートということで来週以降、一気にランクアップという可能性もありますが、ただ、ネットとの騒がれ方とのギャップは、何だかんだ言っても、チャート的にはこんなもの、ということなのでしょうか。また、もうひとつ考えられるのが、現在、おそらくネット上で最も目立つのが40代から50代前半のいわばB'z全盛期に青春を経験していた世代。それだけに今回の紅白で、ここらへんの世代が特に騒いでいるため、ネット上では目立っている、ということもあるかもしれません。とはいえ、来週以降、一気にベスト10入りという可能性もあるので、今後の動向にも注目したいところです。

1月8日付Hot100は以上。明日は1月1日付Hot Albums&Heatseekers&ボカロチャート!

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2025年1月 8日 (水)

新年一発目のチャートはクリスマスソングが大幅ランクアップ

今週(2025年1月1日付)のHot100

http://www.billboard-japan.com/chart_insight/

正月休みの週を挟んだため、今週、Hot100は2週同時更新となっています。そのため、まずは2025年1月1日付のHot100の紹介です。この週は、集計対象期間が2024年12月23日から29日と、まさにクリスマスを挟んだ週となり、その影響で多くのクリスマスソングがランクアップしています。

まずは先々週からベスト10入りしているback number「クリスマスソング」。ストリーミング数は5位をキープしているほか、動画再生回数が13位から9位、ラジオオンエア数も14位から11位、カラオケ歌唱回数は2週連続の1位と軒並み上位にランクイン。これで通算16週目のベスト10ヒットとなります。もちろん、翌週には一気にランク圏外にダウンするのですが、ただ、来年もまたランクインしそう。完全にクリスマスソングの定番として定着した感じがあります。

これに続いたのがマライア・キャリー「恋人たちのクリスマス」で、こちらは19位から13位にアップ。90年代のクリスマスソングの定番が、いまだに高い支持を受けているというのは意外な感じがします。以下、桑田佳祐「白い恋人達」が32位から25位、山下達郎「クリスマス・イブ」が39位から26位、アリアナ・グランデ「サンタ・テル・ミー」が52位から35位、BoA「メリクリ」が57位から41位、ワム!「ラスト・クリスマス」が58位から44位と、いずれもベスト50入りしています。

ただ、ちょっと気になるのはback number「クリスマスソング」も、2015年と10年近く前の曲。他の曲もいずれそれ以前の曲と、ここ10年近く、新たなクリスマスソングの定番が登場していません。そろそろ新たなクリスマスソングの定番があらわれてもいいような気もするのですが、クリスマスシーズンの短期間に集中的に売れるクリスマスソングは、ヒットには長期間に渡って聞かれる必要性があるストリーミング主体の昨今のヒット形態にマッチしていないのでしょうか。

Apt

そして1位は今週もロゼ&ブルーノ・マーズ「APT.」が獲得。これで2週連続通算5週目の1位&10週連続のベスト10ヒット&9週連続のベスト3ヒットとなっています。ストリーミング数は8週連続1位をキープ。動画再生回数は先週から変わらず2位、ラジオオンエア数も20位から13位にアップ。ただし、ダウンロード数のみ1位から4位にダウンしています。年末ギリギリにヒットした曲の宿命で、年末の賞レースや紅白には登場しないのですが、来年の賞レースや紅白には登場する可能性はあるのでしょうか?

一方、2位は、レコード大賞受賞でも大きな話題となったMrs.GREEN APPLE「ライラック」が2週連続の2位。ストリーミング数は3週連続の2位、動画再生回数は3位から1位にアップし、こちらは10月2日付チャート以来の1位獲得。ダウンロード数は先週から変わらず6位をキープ。これでベスト10ヒットは37週連続、ベスト3ヒットも通算23週目となっています。Mrs.GREEN APPLEは「ビターバカンス」も先週から変わらず5位をキープしており、今週も2週同時ランクインとなっています。

3位はCreepy Nuts「オトノケ」が先週の4位からランクアップ。4週ぶりのベスト3返り咲きとなっています。ストリーミング数は3週連続の3位。ただし動画再生回数は5位から7位、ダウンロード数も3位から7位にダウン。これで12週連続のベスト10ヒット&通算8週目のベスト10ヒットに。なお、Creepy Nutsも「Bling-Bang-Bang-Born」が7位から6位にアップ。こちらは通算47週目のベスト10ヒットを記録しています。

続いて4位以下の初登場曲ですが、今週、初登場曲はなし。ただし、ベスト10からの返り咲きが何曲かランクインしています。まずKing Gnu「ねっこ」が先週の21位からランクアップし、9週ぶりにベスト10返り咲き。ストリーミング数が18位から8位、ダウンロード数も8位から2位と大きくアップ。同作が主題歌となっているTBS系ドラマ「海に眠るダイアモンド」が12月22日に最終回を迎えた影響が大きいと思われます。

Omoinotake「幾億光年」も先週の15位からアップし、5週ぶりのベスト10返り咲き。ストリーミング数は3週連続12位と変わらないものの、ダウンロード数が17位から12位へとアップ。総合順位でベスト10入りを果たしました。

9位には女性アイドルグループCUTIE STREET「かわいいだけじゃだめですか?」が先週の12位からランクアップし、6週ぶりのベスト10返り咲き。「THE FIRST TAKE」出演の影響で、主に動画再生回数が先々週のランク圏外から6位⇒4位とランクアップしている影響が大きいようです。

さらにロングヒット曲ではこっちのけんと「はいよろこんで」が先週から同順位をキープし、10位にランクイン。レコード大賞では最優秀新人賞を受賞するなど、昨年はこの曲のヒットで大きく飛躍した彼。これで通算20週目のベスト10ヒットとなりました。ただ、躁うつ病の影響で今後の活動はしばらくセーブするというニュースが入ってきました。非常に残念なのですが、無理は禁物。ゆっくり静養して、その後の活躍に期待したいところです。

一方、先週までベスト10ヒットを続けていたAKASAKI「Bunny Girl」は今週12位にダウン。ベスト10ヒットは連続10週でストップとなりました。

2025年1月1日付Hot100は以上。明日はこの翌週、1月8日付Hot100の紹介を予定しています。

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2025年1月 7日 (火)

メジャーデビュー15周年で新たな一歩を踏み出した新作

Title:WILD BUNNY BLUES / 野うさぎのブルース
Musician:a flood of circle

今年、メジャーデビュー15周年を迎えたa flood of circle。相変わらず積極的な活動を続ける彼らの約1年9カ月ぶりとなるニューアルバムとなります。

アルバムの冒頭はタイトルチューン「WILD BUNNY BLUES/野うさぎのブルース」からスタート。彼ららしいガレージロックなサウンドに、意外とポップなメロの乗る楽曲なのですが、歌詞も印象的。メジャーデビュー15周年で一区切りをつけた彼らの、特に佐々木亮介の新たな決意を歌っており、

「Baby,夢だった 幻だった 憧れはそのままで
マサムネにも カートにも なれずに死ぬんだな

Bayb,夢じゃない 幻じゃない 俺が叶える日まで
誰にも選ばれない世界を走ってく」
(「WILD BUNNY BLUES/野うさぎのブルース」より 作詞 佐々木亮介)

と、草野マサムネやカート・コバーンという憧れのボーカリストたちの名前を出しつつ、自分は独自の道を進んでいこうという、決意が歌われています。

今回のアルバムでは、他にも「ゴールド・ディガーズ」ではストレイテナーのホリエアツシをプロデューサーに起用。力強く分厚いバンドサウンドに、メランコリックなメロがインパクトのガレージロックを聴かせてくれます。また先行EPともなった「キャンドルソング」ではアジカンの後藤正文をプロデューサーとして起用。こちらも分厚いバンドサウンドは、どこかアジカンっぽさも感じられます。

全体的にはa flood of circleらしい疾走感のあるガレージサウンドに、メランコリックでポップなメロディーラインという彼ららしいスタイルはいつもと同様。というよりは、シンプルでポップなガレージロックは原点回帰的なものも感じさせます。そういう意味でも、15周年を一つの区切りとした新たな一歩を踏み出した作品とも言えるでしょう。

ただ、全体的にはメランコリックに聴かせるミディアムチューンの「Eine Kleine Nachtmusik」やゆっくりと歌い上げるロックバラードの「屋根の上のハレルヤ」などを挟んだり、ポップなメロを聴かせるタイプの曲がメイン。個人的には彼らはポップ寄りの曲が増えると、ちょっと今一つという傾向があるので、やはりガレージロックを追求したアルバムの方が良かったとは思うのですが、アルバム全体としては比較的よく出来ていた良作に仕上がっていたと思います。それだけやはり新たな一歩の作品として力を入れていたといった感じでしょうか。これからの彼らの活躍に期待したい新作でした。

評価:★★★★

a flood of circle 過去の作品
泥水のメロディー
BUFFALO SOUL
PARADOX PARADE
ZOOMANITY
LOVE IS LIKE A ROCK'N'ROLL
FUCK FOREVER
I'M FREE
GOLDEN TIME
ベストライド
"THE BLUE"-AFOC 2006-2015-
NEW TRIBE
a flood of circle
CENTER OF THE EARTH
HEART
2020
GIFT ROCKS
伝説の夜を君と
花降る空に不滅の歌を
CANDLE SONGS


ほかに聴いたアルバム

Laundry/Penthouse

今、注目のピアニスト角野隼斗が所属していることでも知られるロックバンドPenthouseの新作。自称「シティソウル」バンドだそうで、AORの要素を上手くポップにまとめ上げたポップ志向のシティポップが特徴的なのは前作と同様。ただ、前作でも感じたのですが、非常によく出来ているものの、楽曲として上手くまとまりすぎている感じのあるアルバム。東大出身5名+青学出身1名という高学歴バンドなのですが、悪い意味で優等生的になってしまっている点が非常に気になってしまいました。

評価:★★★

Penthouse 過去の作品
Balcony

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2025年1月 6日 (月)

メンバー4人の個性が発揮されたEP

Title:EP2 TSTST
Musician:TESTSET

Ep2tstst

昨年、デビューフルアルバム「1STST」をリリースしたTESTSETが早くも次のアルバムをリリースしました。とはいっても今回のアルバムは、2022年にリリースしたEP「EP1 TSTST」に続く2枚目のEP盤。配信限定シングルとしてリリースした「Sing City(Edit)」を含む、全4曲入りのミニアルバムとなっています。

一応、説明が必要かと思いますが、TESTSETは砂原良徳、LEO今井、GREAT 3の白根賢一、相対性理論の永井聖一の4人からなる、いわゆるスーパーグループ。もともとは高橋幸宏を中心に結成されたバンドMETAFIVEが母体となり、2021年のフジロックで、小山田圭吾の例の件が生じたため、METAFIVEのメンバーの砂原良徳とLEO今井が、白根賢一、永井聖一の2人をサポートに迎え、METAFIVEの特別編成として出演したのがきっかけ。よっぽど相性があったのでしょう、そのままその4人でTESTSETとして活動をスタートさせ、今に至っています。

今回のミニアルバム、わずか4曲入りというミニマムな内容ですが、エレクトロポップという点を共通項にしつつも、4曲ともタイプの異なるバリエーションが楽しめる作品となっていました。

先行シングルとなった「Sing City(Edit)」はちょっとノスタルジーを感じられる街の風景を描写した歌詞に、メロディーラインもメランコリックで郷愁感を覚える暖かい「歌」がメインとなる内容。メロにもインパクトもあり、シングル曲らしい、いい意味で「売れる」ことも狙ったような看板的なナンバー。作詞はLEO今井、クレジットは4人の共作となっていますが、おそらくLEO今井が主導した感があります。

続く「Interface」は、跳ねるような軽快なエレクトロのリズムに、ギターサウンドが重なるようなテンポよいナンバー。こちらは砂原良徳とLEO今井の共作となっていますが、まさにこの2人の音楽性、テクノとロックを融合させたような楽曲に仕上がっています。3曲目「Crybaby Drop」はこちらもリズミカルなエレクトロチューン。ダウナーなメロディーラインに軽快なエレクトロビートが特徴的で、ハウスの要素が強い楽曲となっています。こちらのクレジットは作詞作曲とも、白根、今井、砂原の並びになっており、この並びからすると、白根賢一が主導した曲ということでしょうか?このような音楽性を嗜好していたというのはちょっと意外な感じもしました。

ラストを締めくくる「Yume No Ato」は永井聖一作詞作曲による楽曲で、ボーカルもおそらく永井聖一本人でしょうか。爽快なギターサウンドをバックとしたポップチューンとなっており、ノスタルジックな歌も印象的。永井聖一単独作ということで、他の曲とは少々異なった感じもするのですが、それでもTESTSETのパーツの一部としてしっかりと組み込まれている印象を受けた作品となっていました。

この4曲、おそらくメンバーそれぞれが主導権を握った楽曲が並んだ結果の選曲といった感じがしますし、それだけにメンバーそれぞれの個性が発揮された4曲といった印象を受けます。ただ、そういうアルバムとなると、メンバーが既にバラバラの解散直前のアルバム(ビートルズのホワイトアルバムのような)となることがよくあるのですが、本作に関しては完全にバラバラといった感じではなく、誰かが主導権をとりつつも、他の人の要素も入っているという、いい意味でスーパーグループらしい、ほどよく4人が個性を主張しつつも、ほどよく4人の個性が溶け合った、そんなアルバムになっていました。

TESTSETがバンドとして上手くいっていることも感じさせるアルバム。この手のスーパーグループは、比較的早く内部分裂してしまうケースが多いのですが、彼らの場合は大丈夫そう。今後の活動も、まずは次のフルアルバムのリリースも楽しみです。

評価:★★★★★

TESTSET 過去の作品
EP1 TSTST
1STST

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2025年1月 5日 (日)

アルバムとして非常に惜しい作品

Title:Night Palace
Musician:Mount Eerie

アメリカのシンガーソングライター、Phil Elverumの音楽プロジェクト、Mount Eerie。Mount Eerieとしては2003年から活動を続け、本作でアルバムは11作目となる中堅ミュージシャンですが、アルバムを聴くのは今回がはじめてとなります。

まずアルバムとしては非常にバリエーション豊富な構成となっている作品でした。冒頭を飾るタイトルチューン「Night Palace」はノイズを前面に押し出したサイケな楽曲からスタート。続く「Huge Fire」はミディアムテンポに聴かせるギターロックのナンバーなのですが、続く「Breaths」は、歌こそフォーキーな雰囲気ながらも、サウンドはインダストリアル的な作品。さらに「Swallowed Alive」はわずあ52秒という短い曲ながらも、シャウトが鳴り響く、ハードコア的な楽曲となったかと思えば、「My Canopy」も一転、アコースティックな雰囲気で聴かせるネオアコ風の作品となっています。

その後は、基本的にハードコア的な曲やメタリックな曲はなくなり、メロディアスなギターロックの作品が主軸となります。「Empty Paper Towel Roll」のような、オルタナ系ギターロックの王道を行くような、ポップなギターロックチューンがあったり、「Blurred World」のようなアコギを入れてフォーキーにしんみり聴かせる作品があったり、「Myths Come True」のようなサイケ気味なアレンジにポエトリーリーディングを入れたような曲もあったり、ローファイなギターロックを軸としてバラエティーある作品を聴かせてくれます。

特に印象的なのが「I Spoke With A Fish」のような、コーラスラインを入れて美メロとも言えるメロディーラインの歌を聴かせてくれる曲や、「I Saw Another Bird」のようなメランコリックなメロが切ないナンバー。全体的に派手さはなく、曲によってはバンドサウンドの後ろで細々と歌われるだけというケースもあるものの、美しいメロディーラインをしっかりと聴かせてくれる点、彼の大きな魅力でしょう。

しかし、1つ1つの楽曲だけ取ると、非常に素晴らしい作品だったのですが、一方でそれだけのプラス評価を覆すぐらいの厳しい部分がありました。それはアルバムとして長すぎるという点。今回のアルバム、全26曲1時間20分にも及ぶ内容。これはさすがに長すぎます・・・。

確かにバリエーションに富んだ内容ではあるものの、全体的にローファイで地味な作風の曲が多く、その点、後半はダレてくる点は否めません。さらに前半はメタリックな作品があったりと、明確に違う雰囲気の楽曲が紛れ込んできて大きなインパクトになっているのですが、後半は徐々にメロディアスなギターロック路線に収縮していきます。結果、後半は比較的似たタイプの曲が並んでしまい、聴いていて、飽きてきてしまいました。

さらに、さすがにダレて来たな・・・と感じる頃に、いきなり12分にも及ぶポエトリーリーディングの「Demolition」という曲をぶちこんできます。ここに来て、この展開はさすがにちょっと辛い・・・。

このアルバム、もし曲数を絞って1時間弱の長さとなれば、文句なしの傑作どころか、年間ベストクラスの作品にすらなっていたように思います。また、後半に、もっとぶっ飛んだ曲調の楽曲をアクセントとして入れてこれば、また印象は異なっていたと思います。ただ、さすがに楽曲が詰め込みすぎだし、構成ももうちょっと工夫した方がよかったのでは?楽曲としては優れていても、ただ優れた楽曲を集めただけで傑作のアルバムが出来上がる訳ではないということを、実感できた作品でした。

評価:★★★★


ほかに聴いたアルバム

JAPANESE SINGLES COLLECTION-GREATEST HITS-/HOWARD JONES

日本でリリースされたシングルをまとめた国内独自企画のベスト盤シリーズ。今回は、主に80年代に、シンセポップのミュージシャンとして日本でも高い人気を誇ったイギリスのミュージシャン、ハワード・ジョーンズのシングル集。正直、名前くらいしか聞いたことないミュージシャンなのですが・・・。前半は実に80年代っぽい明るいシンセポップが並んでいます。ただ後半になるに従い、ギターを前に押し出した作品が多くなり、徐々に方向性が変わったことが伺わせます。ただ、結果、あまり特色のないような楽曲になってしまっている点、90年代以降の失速の原因なのでしょう。ただ、特に前半、80年代らしさを楽しめるポップアルバムに仕上がっていました。

評価:★★★★

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2025年1月 4日 (土)

大胆にリアレンジしつつ、原曲の良さはしっかりと残した理想的な攻めのカバーアルバム

Title:HOSONO HOUSE COVERS

はっぴいえんどやYMOのメンバーとしても活躍し、間違いなく日本を代表するミュージシャンの一人、細野晴臣。その彼が1973年にリリースし、こちらも日本の邦楽史に残る名盤として誉れ高いのが、彼のソロデビューアルバム「HOSONO HOUSE」です。そのリリースから50年が経過し、今なお高い評価を受ける同作ですが、今年の2月から同作のカバープロジェクトがスタート。2月より様々なミュージシャンたちが「HOSONO HOUSE」の楽曲をカバーしましたが、その作品をまとめた形でアルバムがリリースされました。

今回、なかなかおもしろいのが、国内版で「HOSONO HOUSE COVERS」としてリリースされたのですが、一方、海外でも同時にリリース。こちらは「Hosono House Revisited」とタイトルも代え、さらに海外から2組のミュージシャンが参加。全12曲でのリリースとなりました。なお、リリースはフィジカルとしてはLP盤のみでのリリース。ストリーミングなどでの配信も行われているのですが、こちらではちゃんと「Revisited」収録の2曲も加えた、全12曲というスタイルで配信されています。

ちなみに参加ミュージシャンとしては、矢野顕子やTOWA TEI、corneliusといった、ある意味、細野晴臣界隈(?)ではおなじみのメンバーから、never young beachの安部勇磨や原田郁子と角銅真実のユニット、くくくなどといったミュージシャンが参加。さらに海外から韓国のバンド、SE SO NEONやさらにはここにも登場するか!とワーカホリックぶりが目立つSam Gendel。さらに「Revisited」ではフランスのサイケポップデゥオPearl & The Oysters、アメリカのシンガーソングライターJerry Paperが参加しています。

そしてそんな豪華ミュージシャンたちによるカバーは、原曲の良さを重視しつつ、しっかりと個々のミュージシャンの色を自由に残している、ある意味、実力のあるミュージシャンだからこそ出来るカバーに仕上げています。

やはりまず耳を惹くのはrei harakamiの「終わりの季節」でしょう。rei harakamiは2011年に逝去していますので、本作は2005年にリリースされたアルバム「lust」収録の曲。rei harakamiらしい独特なサウンドに、聴けば一発で「ハラカミの曲だ!」とわかるような内容。フォーキーな原曲をかなり大胆にアレンジしているものの、暖かさのある作風に原曲の良さもしっかりと残されています。

矢野顕子の「ろっかまいべいびい」も、ピアノの弾き語りで聴かせる作品で、ちょっと歌い方を崩したボーカルスタイルといい、完全に矢野顕子の曲に仕上がっていますし、Corneliusの「薔薇と野獣」も、ドリーミーなエレクトロポップに仕上がっており、こちらもいかにもCorneliusっぽいナンバー。原曲も、どこかドリーミーさを感じさせる味わいもありましたので、そこをCornelius流に引き出したといった感じでしょうか。

他にもラフな女性ボーカルにちょっとエロティシズムも感じられてユニークなJohn Caroll Kirbyの「福は内 鬼は外」やサイケフォーク風でエキゾチックなサウンドもユニークなくくくの「CHOO CHOO ガタゴト」、静かなアコギの弾き語りでメランコリックに聴かせるSam Gendelの「恋は桃色」など、どれも魅力的。いずれのナンバーも、自分たちの色を出すために大胆にリアレンジを施している一方、楽曲のコアな魅力はそのまま残しているという、ミュージシャンとしての実力があるからこそ出来る理想的な「攻め」のカバーを聴かせてくれています。

外国のミュージシャンも多く参加し、かつ海外でのリリースもあるという点からも、細野晴臣というミュージシャンが、日本のみならず海外でも高い評価を受けていることも実感できます。まさに細野晴臣のアルバムだからこそ出来る、理想的なカバーアルバム。また、カバーアルバムというだけではなく、数多くの実力派が参加したオムニバスという観点でもおすすめできる作品で、オリジナルを聴いたことある人もない人も、チェックして欲しい傑作です。

評価:★★★★★

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2025年1月 3日 (金)

感情が高まっていく

Title:Songs Of A Lost World
Musician:The Cure

実に約16年ぶりとなるイギリスのロックバンド、The Cureのニューアルバム。The Cureはボーカル、ロバート・スミスを中心に1978年に結成され、1979年にデビュー。現在、結成45年目を迎えたベテランバンド。メンバーは入れ替わりながらも、断続的に活動を続けていました。ゴシックロックをベースとしつつ、ポップなメロを加味したサウンドが特徴的で、数々のミュージシャンに影響を与えているそうです。そんな彼らの久々となったニューアルバムは、現在、各種メディア等で大絶賛を受け、年間ベストアルバムの上位にランクインし、大きな話題となっています。

今回のアルバム、楽曲の構成については似たようなタイプの曲が多く、力強いバンドサウンドにストリングスも入ってメランコリックに美しく聴かせるインストからスタート。感情たっぷりのサウンドをこれでもかというほど聴かせて、中盤あたりからようやく歌がスタート。こちらもそんな美しく聴かせるインストに重なるような、ロバート・スミスが哀愁たっぷりに歌い上げる美しいミディアムテンポの歌を聴かせてくれます。

アルバムに先立って発表された「Alone」はまさにそんな楽曲となっており、オープニングにふさわしく、なおかつアルバムを代表するかのようなナンバー。続く「And Nothing Is Forever」も同じく、ストリングスにピアノも重なるような透明感のある美しいインストが長く続き、中盤あたりからようやくメランコリックな歌がスタートします。

ここ最近の曲は、特にストリーミングでいかに聴かせるかというナンバーが多く、特に日本での話になるのですが、イントロが短くなってきている、ということがひとつの話題となっています。一方、そういう流れからすると、このThe Cureの楽曲はまさに真逆。ゆっくりと哀愁たっぷりのイントロを、これでもかというほど聴かせてくれます。ただ、この長いイントロによって、聴くものの感情が徐々に高ぶっていき、中盤からようやく歌が流れ始めたころには、その高ぶった感情を、ロバート・スミスの歌でより盛り上げていく、そんな感情の高ぶりによって聴く者を魅了するアルバムになっていました。

後半は、「Drone:Nodrone」「All I Ever Am」など、前半のストリングスとは代わって、ノイジーなギターサウンドを前に出している楽曲も。ただ、これらの曲も長い哀愁たっぷりのイントロで感情たっぷりに聴かせるというスタイルには大きな変化はありません。そしてそんなアルバムの締めくくりのような楽曲がラストのタイトル通り「Endsong」。最初はストリングスにピアノやバンドサウンドも入って、メランコリックなサウンドでスケール感をもって徐々に盛り上げていきます。10分にも及ぶ楽曲で、歌がスタートするのはようやく6分を過ぎたあたり。メランコリックでノイジーなサウンドに埋まるように感情込めてうたわれるロバート・スミスの歌がこれまた魅力的。最後を締めくくるにふさわしいスケール感あふれる楽曲に仕上がっていました。

確かに、各種メディアで絶賛されているのも納得。ゴシックな部分とポップな部分がほどよく融合し、これでもかというほど感情のたかぶりを感じさせるThe Cureの傑作アルバムでした。デビューから45年を迎えつつ、これだけのアルバムをまだリリースしてくるあたりも驚きを感じる1枚。ゴシックなサウンドは良くも悪くも癖はありますが、ポップなメロはいい意味で聴きやすいので、広い層が楽しめそうな、特にロック好きにはお勧めできる1枚です。

評価:★★★★★

The Cure 過去の作品
4:13 Dream

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