2017年3月26日 (日)

1日1曲

今回紹介するのは、今年1年かけてリリースされる興味深いコンピレーションアルバムです。「大人のJ-POPカレンダー 365 Radio Songs」と名付けられたこのコンピシリーズは音楽評論家の田家秀樹が企画・構成・パーソナリティをつとめたTOKYO FM/JFN系ラジオ番組「JAPANESE POPS REFRAIN 1945-2015」に由来する企画。日本のポピュラーミュージックの歴史を紐解きながら700曲を選ぼうという番組。そしてその企画で紹介された曲のうち366曲を、1日1曲というコンセプトのもとに12枚のアルバムに収録。その月々の時節にあったテーマを決めて選曲し収録したコンピレーションとなっています。

Title:大人のJ-POPカレンダー~365 Radio Songs~「1月 新年」

まずスタートを切るのがこの作品。Disc1は「新年ハジマリの歌」、Disc2は「受験生応援ソング」となっています。どちらもポップスのテーマとしてはあまり題材にならなさそうなテーマで、ちょっと無理矢理感のある選曲も(笑)。どちらかというとDisc1は新年というよりも「始まり」をテーマとした曲、Disc2は前向き応援歌が並んでいます。

さてこのコンピレーションシリーズのもっともユニークな部分は「J-POP」と名乗っていますがここに収録されているのは戦後のポピュラーミュージック全般。それこそ60年代や70年代の歌謡曲から80年代、90年代のニューミュージックやいわゆるJ-POPといった曲が同列に並んでいるのが大きな特徴です。

例えばこのアルバムでもユニコーンの「お年玉」の次に藤山一郎・奈良光枝の「青い山脈」が続いていたり、吉田拓郎と岡村孝子、高石友也にクレージーキャッツ、さらにはウルフルズが同列に並んでいたりします。

それにも関わらず意外とサラッと聴けてしまうのがおもしろいところ。昔と今の曲にも共通項を感じたり、例えばクレイジーキャッツの「ホンダラ行進曲」みたいに今聴いても十分楽しめるようなモダンさを感じたり、ジャンル問わず戦後の日本のポップスを並列に聴けるとても楽しい企画になっていました。

評価:★★★★★

Title:大人のJ-POPカレンダー~365 Radio Songs~「2月 告白」

同列に並ぶというと非常におもしろいのがこのアルバムの中のDisc1。スノウソングをテーマとしているのですが、都はるみの「北の宿から」からいきなりGLAYの「Winter,again」へとつながります。さすがにド演歌からJ-POPへのつなぎは少々無理があるのを感じつつ、ただ「Winter,again」の歌謡曲的要素の強さを演歌と並べると再認識させられます。

Disc2は「告白バレンタインソング」として告白をテーマとした曲が並んでいるのですが、おもしろかったのは中盤。レベッカの「ラブ・イズ・Cash」から松田聖子、三木聖子、ピンキーとキラーズそして小川知子へと続く流れはガールズポップの歴史を遡っている流れとなっています。軽快なポップスから徐々に哀愁感ただよいムーディーになっていく流れに、日本のガールズポップの流れを感じました。

またなかなか渋い選曲なのがChageの「告白」。チャゲアスの大ヒット曲「SAY YES」のカップリング曲なので、実は知っている方も多いかも?なんとなくチャゲアスの曲が使えないからという事情も感じてしまうのですが、それを差し引いてもChageの実力を知れる名曲で、これはなかなか興味深い選曲です。同様にKANちゃんの「プロポーズ」が入っているのもとてもうれしかったりするのですが。

評価:★★★★★

Title:大人のJ-POPカレンダー~365 Radio Songs~「3月 卒業」

今回のこの企画、アルバムのCD1枚毎にコンセプトが設定されているのですが、そのコンセプトと選曲がもっともマッチしていたのが本作。Disc1は「出会いと初恋」ということでテーマには事欠きませんし、特にDisc2の「卒業」はポピュラーミュージックのテーマの定番中の定番。「卒業」というタイトルの曲だけで3曲も並んでいますし、基本的に「卒業」というテーマ性だけでほぼ全曲埋まっている選曲となっています。

Disc2なども川嶋あいの次の舟木一夫「高校三年生」を持ってくるなど時代やジャンルを超えた並びになっているのですが、楽曲のテーマが一緒である影響でしょうか、違和感はほとんどありません。テーマ的に時代を超えて似た曲が並んでいるだけに今回の3作の中ではもっともアルバム通じて最初から最後まで違和感なく楽しめたアルバムでした。

評価:★★★★★

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2017年3月25日 (土)

90年代に一世を風靡

Title:Greatest Hits 1991-2016~All Singles+~
Musician:大黒摩季

アラフォー世代なら説明するまでもない話かもしれませんが90年代に大ブームとなった「ビーイング系」。音楽事務所のビーイングに所属したミュージシャンたちが90年代中盤に次々とブレイクし、ヒットチャート上位を占めるなど文字通り一世を風靡しました。

ある意味画一的なビートロックにサビの先頭に決まって曲のタイトルをもってくるわかりやすい歌詞、良くも悪くも「90年代らしいJ-POP」を象徴するような楽曲を次々と発表し、CMやドラマとの積極的なタイアップや深夜番組帯での大量の楽曲CMの放送など、売り方を含めて後のJ-POPシーンに大きな影響を与える一方で、露骨ともいえる商業主義的なやり方や万人受けを追及するあまり一般的になり薄っぺらくなった歌詞、ワンパターンなメロディーラインやアレンジなど音楽的な評価はリアルタイムも現在もあまり高くありません。

個人的にはリアルタイムでも今でもビーイング系はB'zなど一部を除いて基本的に全くいいとは思わないのですが、ふとしたきっかけてちょっと見方が変わったミュージシャンがいました。それが彼女、大黒摩季。彼女もビーイング系全盛期、「DA・KA・RA」「ら・ら・ら」など大ヒット曲を連発。当時人気だったZARD、WANDS、T-BOLANなどと並んでビーイング系の代表的なミュージシャンとして一世を風靡しました。

彼女のイメージがちょっと変わったのが約4年前にリリースされたビーイング系とavex系のヒット曲を集めたオムニバスアルバム。懐かしさもあり聴いてみた一方、内容にはあまり期待はしていませんでした。実際、良くも悪くも期待どおりの内容だったのですが、その中で「あれ、意外といいな」と思ったのが大黒摩季。ビーイング系の曲の歌詞は万人受けを意識した一方、無難な内容に仕上がっていて薄っぺらさを感じるのですが、その中で彼女の曲は女性の本音をきちんと綴った歌詞が強い印象を受けました。

そんな彼女は2001年に一度ビーイングを離れたものの2016年にはビーイングに復帰。そしてリリースされたのが彼女初となるキャリア通じてのベストアルバム。ビーイング時代のみのベスト盤は何度もリリースしていますが、ビーイングを離れていた時代を含めてのオールキャリアでのベスト盤はこれが初。せっかくの機会という訳で、今回はじめて、まとめて彼女の楽曲を聴いてみました。

彼女のベストアルバムを聴いてまず純粋に感じたのは、1枚目、ビーイング系全盛期に彼女が次々と飛ばしたヒット曲に関しては懐かしいなぁと感じます。正直当時は「またビーイング系かぁ」と苦々しく思いながら聴いていた部分もあるのですが、それでもヒット曲をかたっぱしから聴いていた20年以上前のあの頃を懐かしく思い出してしまいます。

そして大黒摩季の曲をあらためて聴いてみると、女性の本音的な恋愛観をしっかりと描いているな、ということを再認識しました。例えば「あなただけ見つめてる」なんかは好きな人にはまっていって自分をなくしてしまっている女性を一途さと怖さの両面からしっかり描いています。一方では彼女の歌詞のセレクトに関してはちょっと癖があって悪い意味での引っかかりが生じてしまっています。例えば大ヒットした「ら・ら・ら」の2番で「TVやマスコミはいったい誰のもの?」という歌詞からスタートします。彼がいなくて寂しいからテレビをつけている女性の心境を歌っているのですが、その中で「マスコミ」という言葉がかなり違和感。ムダなひっかかりがある割には曲や歌詞の流れにもあっていませんし、言語感覚的に違和感があります。

大黒摩季のWikipediaによると彼女の歌詞には一時期「ビーイング・スタッフ」という表記がされていたことがあるようですが、おそらくいまひとつと思われる彼女の言葉の選び方について周りのスタッフが大きく修正していたのではないでしょうか。ただ逆にこの歌詞のセンスの垢抜けなさが、万人受けする表現を意識しすぎてともすれば非人間らしさを感じるビーイング系の歌詞の中で妙な人間味を感じられ、ひとつの魅力になっているように感じました。

逆に今回の曲から感じるマイナス面としては音楽的にいまひとつルースレスな部分。音楽的にルーツ性が薄いのはビーイング系に共通する特徴なのですが、他のミュージシャンたちは第三者による作曲が多いからか、楽曲に統一感があります。

彼女にしても「DA・KA・RA」「熱くなれ」などロックテイストの曲が多く、いかにも90年代的なハードロックテイストのポップスロックは聴いていて素直に楽しくなれるのですが、ポップ色が強い曲だったり、ベタな歌謡曲調の曲もあったり、特にここ最近の曲に関しては方向性がはっきりしません。全体的にサウンド面ではこれが大黒摩季といったスタイルはあまり感じられず、この点に関しては大きなマイナス要素に思います。

良くも悪くもビーイングらしい雰囲気は感じつつも、その中では他のミュージシャンとは異なる個性も感じられる彼女。ここ最近、その方向性にブレを感じる点、気になるところなのですが、このベスト盤を機に、本格的な再活動となった模様。今後、人気が再燃するのかどうかまだわからないのですが・・・いままでのキャリアを今後の楽曲にどう生かしていくのか、注目したいベテランミュージシャンの一人でしょう。

評価:★★★★


ほかに聴いたアルバム

来し方行く末/高橋優

途中、ベスト盤のリリースがあったものの、オリジナルアルバムとしては約2年3カ月ぶり、ちょっと久しぶりとなったシンガーソングライター高橋優のニューアルバム。先のベスト盤の感想でも書いたのですが、高橋優といえば熱っぽいボーカルにあわせたかのような力強いアレンジ、さらに歌詞も自己主張たっぷりで「押し」ばかりのスタンスが聴いていてちょっと引いてしまう部分のあるミュージシャン。今回のアルバムもまさにそんな「押し」一辺倒なのがいつもの彼らしい感じ。家族の絆的なものを歌った「産まれた理由」や自らの生き方をゴキブリに例えた「Cockroach」などインパクト満点の歌詞も多く、非常に薄っぺらい歌詞ばかりが目立つ最近のJ-POPシーンの中で頼もしさを感じるのですが、いかんせん聴いていてちょっと疲れてきてしまいます。まあ、その「押し一辺倒」なある種のうざったさが彼の持ち味なのかもしれませんが。

評価:★★★★

高橋優 過去の作品
リアルタイム・シンガーソングライター
この声
僕らの平成ロックンロール(2)
BREAK MY SILENCE
今、そこにある明滅と群生
高橋優 BEST 2009-2015 『笑う約束』

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2017年3月24日 (金)

HIP HOP史に残る名盤を2010年代に「再建設」

Title:再建設的
Musician:いとうせいこう&リビルダーズ

日本のHIP HOPの草分け的作品として知られるいとうせいこう&TINNIE PUNXのアルバム「建設的」。2016年はそのリリースから30年という記念すべき年で、「建設的」にボーナストラックを加えたCDが再リリースされました。このサイトでもそのアルバムを紹介しましたが、本作はそのリリース30周年記念の企画の一環。「いとうせいこう&リビルダーズ」名義となっていますが、リビルダーズはこの日本HIP HOPの草分け的な存在であるいとうせいこうを尊敬してやまないミュージシャンたちの総称。このアルバムは、そんなミュージシャンたちによる「建設的」のトリビュートアルバムです。

以前の「建設的」の感想でも書いたのですが、「建設的」というアルバムは純粋なHIP HOPのアルバムではありません。アルバムの中でHIP HOPは2曲のみ(昨年再発されたアルバムではボーナストラックとしてHIP HOPがもう数曲追加されています)。他の曲はパンクだったりムード歌謡だったり、ノベルティー的な要素が強く、また時代性も強く反映されているため、HIP HOPが主眼というよりも、「建設的」がリリースされた1980年代の世相をアイロニカルにかつコミカルに取り上げた作品という印象を受けました。

今回の「再建設的」でももちろんノベルティー的な要素は強く残されています。例えば大竹まこと、きたろう、斉木しげるというシティボーイズのメンバーによる「俺の背中に火をつけろ!!」はパンクのパロディーともとれる原曲そのままなコミカルな作風になっています。

ただ今回のアルバム、「建設的」のリリースから30年を経過しており、このアルバムがリリースされたバブル経済絶頂期のあの時代と今とでは時代の風潮としては大きな違いがあります。そのためこのアルバムでは、原曲をそのまま取り上げるというよりも、原曲が持っていた音楽的な要素によりクローズして2010年代の音にアップデートしたカバーに仕上がっていました。

そのため原曲が持っていたノベルティー的な要素が若干薄くなっています。例えば「水の子チェリー」は原曲ではあえて裏声で歌うことにより、子供のアニメソングを茶化したようなつくりになっていましたが、この作品ではジャズアレンジに大幅に作り替え、ノベルティー的な要素を消しています。「だいじょーぶ」も原曲では同じく裏声のボーカルがコミカルさを感じましたが、本作でも同じく裏声のボーカルは残っていたものの音楽的な部分によりクローズアップしたアレンジになっており、ノベルティーな雰囲気はかなり薄れています。

「HEALTHY MORNING」も原曲では虚構な家族をパロった、ある意味バブルらしい時代性感じさせる歌詞になっています。今回のアルバムでもその歌詞はそのまま残ったものの、岡村靖幸によりエレクトロニックなアレンジのサウンドが前に押し出され、歌詞の印象はかなり薄くなっています。

原曲と比較して聴くと、原曲をリスペクトして原曲に沿ったようなアレンジの曲も多いのですが、そのような曲にしてもサウンドは現代風にアップデート。「建設的」で感じたいかにも80年代的といった時代性がなくなり、今聴いても全く違和感なく聴けるアルバムに仕上がっています。

個人的には今の時代に聴くと「建設的」よりもむしろ本作の方が楽しめたようにすら感じてしまいます。もっとも「建設的」はあの時代にリリースされたからこそ意味があった訳で、「建設的」よりもこちらが優れている、という訳ではありません。むしろ「建設的」が本来持っており、ともすればノベルティー的な要素のため影にかくれてしまっていた音楽的な部分を抽出し、時代を超えた今のリスナーにもわかりやすく表現してくれたのが本作ではないでしょうか。タイトル通りまさに「建設的」を2010年代に「再建設」したのが本作。「建設的」も日本音楽史上に残る名盤として聴いておきたい作品ですが、その前にこのアルバムを聴けばより「建設的」も魅力的に聴こえるかもしれません。

評価:★★★★★

いとうせいこう 過去の作品
建設的(いとうせいこう&TINNIE PUNX)

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2017年3月23日 (木)

低水準なアルバムチャート

今週のアルバムチャート

http://www.oricon.co.jp/rank/ja/

ここ最近、アルバムチャートはかなり低水準な週が多いのですが今週もかなりの低水準。10位はわずか4千枚という結果に・・・アルバムチャートもCDのみでのランク付けは厳しくなってきているのでしょうが。

ただ1位は先週よりも売上は増加しています。初動売上3万枚で1位を獲得したのはYUKI「まばたき」。前作「FLY」は2位にとどまりましたが前々作「megaphonic」以来2作ぶり、オリジナルでは5作目となる1位獲得です。ただし初動売上は前作の4万4千枚からダウン。ここ数作の初動売上22万→10万2千→7万6千→4万4千枚とい凋落傾向に歯止めはかかりませんでした。

2位はロックバンドKEYTALK「PARADISE」が獲得。シングルアルバム通じて初となるベスト10ヒットです。初動売上は1万4千枚。直近作はライブアルバム「KEYTALKの武道館で舞踏会~shall we dance?~」でこちらの2千枚(36位)からは大きくアップ。前作「HOT!」の1万3千枚(4位)からは微増。人気上昇中というイメージがありましたがちょっと伸び悩んだ結果となりました。

3位は映画「ラ・ラ・ランド」のサントラ盤「ラ・ラ・ランド(オリジナルサウンドトラック)」が先週と同順位をキープ。さらに売上を先週の1万2千枚から1万3千枚に伸ばしており、その人気のほどを伺えます。ロングヒットとなりそうです。

続いて4位以下初登場盤です。まず4位に男性アイドルグループw-inds.「INVISIBLE」がランクインです。ベスト10入りは前々作「Timeless」より2作ぶり。初動売上1万2千枚は前作「Blue Blood」の1万枚(11位)よりアップしています。

5位には人気声優同士のコンビ神谷浩史+小野大輔「Coin toss Drive」がランクインです。この2人がパーソナリティーをつとめるラジオ番組「神谷浩史・小野大輔のDearGirl~Stories~」からうまれたユニットで、同名義でのアルバムはこれで2枚目。初動売上は9千枚。同名義の前作「Stories」の1万3千枚(12位)からダウン。ちなみに神谷浩史名義の直近作「Theater」の2万枚(4位)からも小野大輔名義の直近作「Doors」の1万5千枚(4位)からもダウン。

7位9位には韓流男性アイドルグループが並びました。7位にはU-KISS「U-KISS solo&unit ALBUM」が、9位にはGOT7「FLIGHT LOG:ARRIVAL」がそれぞれランクイン。U-KISSはタイトル通り、メンバーのソロや別ユニットの曲を集めた企画盤。初動売上7千枚。直近はベストアルバム「U-KISS JAPAN BEST COLLECTION 2011-2016」で、こちらの1万4千枚(8位)よりダウン。GOT7は韓国でリリースされたアルバムの輸入盤。初動売上4千枚で、直近の国内盤「Hey Yah」の3万8千枚(3位)よりダウン。

最後10位には大森靖子「kitixxxgaia」がランクインです。エキセントリックな楽曲や言動が話題の女性シンガーソングライター。本作ももともと「キチガイア」というタイトルでしたが、そのままだと宣伝できないということからタイトル変更となったいわくつきのアルバム。本作がメジャー3作目にしてシングルアルバム通じて初のベスト10ヒットとなりました。ただし、初動売上4千枚は前作「TOKYO BLACK HOLE」(19位)から横バイという結果になっています。

今週のアルバムチャートは以上。チャート評はまた来週の水曜日に!

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2017年3月22日 (水)

まずは予想通りの1位

今週のHot 100

http://www.billboard-japan.com/chart_insight/

まずは無難に1位獲得。

今週1位はAKB48「シュートサイン」。CD販売・ダウンロード・スクリーミング数(以下「実売数」)及びPCによるCD読取数で1位。Twitterつぶやき数は4位、ラジオオンエア数は8位にとどまりましたが、見事1位獲得。楽曲はかなりベタな80年代のアイドル歌謡曲風。卒業を発表している小嶋陽菜の最後のシングルになるそうです・・・って前作でも書いたんですが、最近毎作誰かの卒業シングルになっているような・・・もうそれしか「売り」がないんだろうなぁ。オリコンでは初動102万5千枚で1位。ただし前作「ハイテンション」の118万枚(1位)よりダウンしています。

2位初登場はV6「Can't Get Enough」。韓流も彷彿させるようなエレクトロなナンバー。実売数2位、PCによるCD読取数3位、Twitterつぶやき数12位を記録していますが、ラジオオンエア数33位なのはジャニーズ系アイドルらしい感じ。オリコンでも初動売上12万8千枚で2位を獲得。前作「Beautiful World」の11万6千枚(1位)からアップしています。

3位は、まだまだ強いですね星野源「恋」が先週の4位からランクアップし2週ぶりにベスト10返り咲き。You Tube再生回数ではいまだに1位を獲得しているほか、PCによるCD読取数5位、Twitterつぶやき数でも7位と上位をキープ。なにげに実売数も12位に位置しており、驚異的なロングヒットを続けています。

続いて4位以下の初登場曲です。5位に乃木坂46「インフルエンサー」が先週の26位からランクアップしてベスト10入り。3月22日発売予定のシングルからの先行配信。こちらも1位AKB48と同様に昔ながらのアイドル歌謡曲を彷彿とさせるマイナーコード主体のアップテンポなナンバーになっています。

7位には西内まりや「Motion」が初登場でランクインです。フジテレビ系ドラマ「突然ですが、明日結婚します」主題歌。いわゆるフジテレビの月9ドラマですが、月9史上最低視聴率という点が逆に話題となってしまっているドラマ。月9主題歌といえば過去において数多くのヒット曲を生み出してきましたが、本作は実売数6位、ラジオオンエア数9位、PCによるCD読取数12位とまずまずの成績。大ヒットとはいかないまでも、ドラマ主題歌としてそれなりの面目躍如とはなりました。ただしオリコンでは18位止まりなので、ダウンロードでの売上の影響が大きそう。また初動売上4千枚は前作「BELIEVE」の8千枚(11位)からダウンしています。

今週のHot100は以上。明日はアルバムチャート!

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2017年3月21日 (火)

アンビエントがテーマの2枚組

Title:Principe del Norte
Musician:Prins Thomas

今年に入ってから2016年に話題となったアルバムの中で聴き逃したアルバムをいまさらながらいろいろと聴いているわけですが、おそらくそんなアルバムもこれが最後。ノルウェーのDJ/プロデューサー、Prins Thomasがリリースした2枚組のニューアルバム。ミュージックマガジン誌の「ハウス/テクノ/ブレイクビーツ」部門で2016年度の1位を獲得したアルバムです。

Prins Thomasというプロデューサーの名前は今回初耳。いろいろと調べていく中で「コズミック・ディスコ・プロデューサー」という肩書に出会ったのですが、この「コズミック・ディスコ」というジャンル、調べてみてもどんな感じのジャンルなのかいまひとつわからない・・・。彼の楽曲は非常にスペーシーな曲が多いので、こんな雰囲気のディスコミュージックを「コズミック・ディスコ」というのでしょうか??

今回のアルバムのコンセプトはアンビエントということで全体的に淡々としたサウンドが延々と続いていきます。楽曲のタイトルもアルファベットをAから順番に並べただけという非常にシンプルなもの。楽曲の色などをほとんど感じさせない、ある意味サウンドが並んでいるだけ、とでもいうようなアルバムになっています。

ただ2枚組となる本作ですが、あきらかに1枚目と2枚目とではその方向性が異なります。1枚目はスペーシーなサウンドに淡々としたミニマルテイストのメロディーが続いていく感じ。アンビエントらしく抑えめのサウンドを延々と聴かせる構成になっておりメロディーラインが意外とポップで耳なじみやすいのが印象的でした。また楽曲は1曲あたり6分から長い曲で14分弱。その中でミニマル的に淡々とサウンドが続いていくわけですが、所々でサイケデリックなサウンドが加わったり、ドリーミーな雰囲気となったりと徐々に変わっていくサウンドがまたユニークにも感じました。

一方2枚目に関してはテンポのよいリズムが前面に出てきている構成に。こちらも抑えめなサウンドで高揚感はないとはいえ、例えば四つ打ちのリズムでトランシーなリズムを楽しめる「G」などはフロアで流れれば十分踊れるだけのダンサナブルな楽曲に。「E」などもファンキーなリズムを楽しめ、軽快でリズミカルなサウンドが楽しめる楽曲になっています。

アンビエントというテーマらしく淡々としているという印象はあるのですが、1曲の中で楽曲が徐々に変化して様々な構成を楽しむことが出来、そして意外とポップなメロディーが根底に流れていることもあり、2枚組95分程度というボリュームのアルバムながらも全く飽きることなく楽しむことが出来る内容でした。年間1位という感じなのかどうかはちょっとよくわからないのですが・・・テクノ/ハウス界隈が好きなら文句なしに要チェックのアルバムです。

評価:★★★★★

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2017年3月20日 (月)

彼女たちの魅力が8曲に凝縮

Title:トリトメモナシ
Musician:チャラン・ポ・ランタン

前作から1年ぶり。チャラン・ポ・ランタンのニューアルバムは全8曲入りの"ほぼ"フルアルバムという作品になっています。この1年間のチャラン・ポ・ランタンといえばまず「進め、たまに逃げても」が話題になったドラマ「逃げるは恥だが役に立つ」のオープニングテーマに起用されました。シングルカットはされていないので星野源の「恋」のような大ヒットとはなってしませんが、おそらくドラマを見た方ならこの曲はみなさんご存じではないでしょうか?また、SKE48の松井玲奈と組んでリリースした「シャボン」がベスト10ヒットを記録。松井玲奈の人気に引っ張られてのヒットなのですが楽曲自体はチャラン・ポ・ランタンらしい曲になっており、このヒットで彼女たちの名前も間違いなく広まったものと思われます。

そんな徐々に知名度をあげてきた彼女たちがリリースしたニューアルバム。1曲目はいきなり「進め、たまに逃げても」からスタート。続く「Sweet as sugar」もアコーディオンサウンドが軽快なキュートで楽しいポップチューン。チャラン・ポ・ランタンらしい楽曲でまずはリスナーを楽しくさせるようなバルカン風のポップチューンが並びます。これがはじめてのチャラン・ポ・ランタンというリスナーにとっては、まずはウキウキワクワクするような楽曲でグッと惹きつけられるという訳です。

ユニークなのは続く「まゆげダンス」。こちら打ち込みを取り入れた4つ打ちのエレクトロダンスチューン。彼女たちにとっては異色作で、わずか8曲入りのアルバムの中での彼女たちの挑戦心を伺うことが出来ます。

その後、しんみり聴かせる「夢ばっかり」にエキゾチックにムーディーな雰囲気を醸し出す「月」と聴かせる楽曲が並んだかと思えば、続く「恋はタイミング」は彼女たちの真骨頂といった感じの楽曲。アコーディオンメインの明るく軽快なポップチューンなのですが、恋人の出会いと別れまでを描いた物語性ある歌詞がコミカルだけどちょっと切なく、耳を惹きます。

「雄叫び」は力強いボーカルやホーンセッションが耳を惹くスウィングのナンバー。そしてラスト「かなしみ」はなんとMr.Childrenがアレンジ&演奏で参加(!)。バンド色も強く、チャラン・ポ・ランタンらしさはちょっと薄いポップチューンになっていますが、アルバムを締めくくるにはピッタリの切なくも爽やかに聴かせるミディアムナンバーに仕上がっていました。

そんな訳で8曲入りというミニアルバムながらもチャラン・ポ・ランタンの様々な側面がつまったアルバムになっていました。"ほぼ"フルアルバムという呼び名の通り、フルアルバム並にバリエーションの富んだレパートリーが楽しめるアルバムだったと思います。

タイアップの良さとか、ミスチルやSKEのメンバーとのコラボとか、レコード会社的にはかなり「売ってもらっている」感じのする彼女たち。そんな中、なかなか大ブレイクまで行かないのは気にかかるところなのですが・・・。今回のアルバムでは新たな挑戦を感じさせる部分もありますし、次回作にさらなる期待、といった感じなのでしょうか。とにかく聴いていてワクワク楽しくなれるポップソング。2017年も彼女たちの活躍に期待です。

評価:★★★★★

チャラン・ポ・ランタン 過去の作品
テアトル・テアトル
女の46分
女たちの残像
借り物協奏


ほかに聴いたアルバム

デも/demo /有村竜太朗

Plastic Treeの初のソロアルバム。「デモ」といってももちろんデモ音源ではなく完成された楽曲が収録されているのですが、楽曲的にはPlastic Treeに比べるとかなり趣味性の強い作品になっています。具体的には彼が大きく影響を受けたシューゲイザー系からの影響がより顕著にあらわれた作品。耽美的な雰囲気も保っておりPlastic Treeとの共通項も多いのですが、個人的にはPlastic Treeの曲よりも好きかも。ソロアルバムなだけに彼の好きなことを思いっきり歌った、ソロらしいアルバムでした。

評価:★★★★★

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2017年3月19日 (日)

メロディーもはっきりと流れるものの

Title:Oczy Mlody
Title:The Flaming Lips

ここ最近、ビートルズのカバーアルバム「With a Little Help From My Fwends」をリリースしたり、ピンクフロイドのカバーアルバムをリリースしたりと積極的な活動が目立ったためちょっと意外な感じもするのですがオリジナルアルバムとしては4年ぶりとなるThe Flaming Lipsのニューアルバム。「Oczy Mldoy」(=オクシィ・ムロディ)というタイトルは非常に奇妙な印象を与え、インパクトあるタイトルとなっているのですがこれはポーランド語で「eyes of the young」という意味だそうです。なんか語感から受ける印象とかなり異なる感じがしますね。

事前にこのアルバムのレビューなどを見ると、メロディーが際立ったアルバム、といった評価が多かったため、個人的には最初、かなりポップな作風を想像していました。そういうイメージを持ったうえでこのアルバムを聴くと、最初はかなり戸惑うかもしれません。イントロ的な役割を果たすタイトル曲「Oczy Mlody」は確かに美しいメロディーラインは流れているものの、かなりサイケなノイズが前に出たような作品。続く「How??」もとてもスペーシーなサウンドが前に出ている作品になっています。

確かにそのメロディーラインが比較的はっきりあらわれており、ポップなメロが確実に流れているアルバムだとは思います。特に終盤、「The Castle」から「Almost Home(Blisko Domu)」「We a Famly」と続く3曲は憂いを帯びたようなメロディーラインが印象に残る作品。そのメロディーセンスがはっきりとあらわれた作風になっています。

ただそれらの曲を含めてアルバム全体としてかなりへヴィーなノイズが流れたサイケデリックで、かつスペーシーな作品に仕上がっています。重厚感あるサウンドが特徴的な「Sunrise(Eyes of the Young)」やダークなエレクトロサウンドが楽曲の根底で流れつづける「One Night While Hunting for Faeries and Witches and Wizards to Kill」、哀愁感を帯びたダークでドリーミーなサウンドが流れる「Listening to the Frogs with Demon Eyes」など、楽曲毎にパターンを変えながらもノイジーなサウンドが流れ続ける作品が続きます。

アルバムとして「歌」としての美しさは楽しめるものの、やはり全体のバランスとしてはサイケ、ノイズの部分が強く出たアルバムのように思います。もちろんThe Flaming Lipsらしいキュートなポップが楽しめるアルバムではあるのですが・・・個人的にはそのサイケデリックな音の洪水に最後の方はちょっと疲れてしまったというのが正直な感想。良作だとは思うのですが、好き嫌いはわかれそうな作品といった感じでしょうか。

評価:★★★★

THE FLAMING LIPS 過去の作品
EMBRYONIC
The Dark Side Of The Moon
THE FLAMING LIPS AND HEADY FWENDS(ザ・フレーミング・リップスと愉快な仲間たち)
THE TERROR
With a Little Help From My Fwends

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2017年3月18日 (土)

2016年最も話題になったミュージシャン

Title:人間開花
Musician:RADWIMPS

2016年は様々な楽曲が話題となりました。それこそ下半期に大きな話題となったピコ太郎やRADIOFISHのようなお笑い枠もあったのですが、なによりも2016年話題のミュージシャンといえば星野源と、そして彼らRADWIMPSでしょう。本作にも収録している「前前前世」などの彼らの楽曲が映画「君の名は。」に使用され、映画の大ヒットとあわせて楽曲も大ヒット。年末には紅白歌合戦へ出演もしています。

昨年はその映画のサントラも大ヒットしましたがそれに続く絶好のタイミングでリリースされたのが本作・・・なのですが、そのジャケ写が大きなインパクト(^^;;グロ画像一歩手前のようなジャケット写真に一部では非難も殺到。本来、もっとも「売れる」タイミングでリリースされたアルバムをこのようなジャケットにしてしまうあたり一筋縄ではいかない感じがします。ただ、その写真にも負けず(?)アルバムは前作の売上を大きく上回る大ヒットを記録したようです。

ただ、「君の名は。」のサントラ盤の時にも書いたのですが、私は大ヒットした「前前前世」についてはRADWIMPSにとって絶賛できる名曲とは思っていません。確かに「君の前前前世から僕は 君を探しはじめたよ」というストーカー一歩手前どころか言う相手を間違えると下手なストーカーより質の悪い(笑)情熱的でインパクトある歌詞は野田洋次郎らしいといった印象を受けるのですがメロディーラインやサウンドについては平凡なギターロック。彼らの大ブレイクしたころの楽曲のように、その展開が読めないようなインパクトあるメロディーラインではありません。

今回のアルバムに関しても目立ったのは「前前前世」をはじめとする少々平凡さを感じてしまうギターロック。序盤の「光」も比較的ストレートなギターロックですし、「トアルハルノヒ」もパッと聴いた感じだと歌い方を含めてBUMP OF CHICKEN?と思ってしまうような良くありがちなポップスロックの楽曲となっています。

一方、RADWIMPS野田洋次郎といえば自身のソロプロジェクトillionとしても活動しています。illionではエレクトロサウンドを取り入れた挑戦的な作風の曲も目立ちますが本作ではその活動がRADWIMPSに還元されているような曲も見受けられました。例えばパンキッシュな「AADAAKOODAA」やポストロック的なサウンドが目立つ「アメノヒニキク」のような作品がその例でしょうか。もちろんいままでのRADWIMPSの作品にも挑戦的な作風の曲は少なくありませんでしたが、本作ではその方向性がより強くなったような感じがします。

ただ本作に関してはこれらの作品がアルバムの中で完全に浮いてしまったようにも感じました。いままでのRADWIMPSの楽曲はメロディアスでポップなギターロックという要素と挑戦的で刺激的なサウンドという要素が上手く融合していて、そこに野田洋次郎の書く見方によってはストーカー的な歌詞がRADWIMPSらしさを作り上げていたのですが、今回のアルバムはRADWIMPSを構成する要素が分離を起こしてしまったようにも感じました。

もちろんそうはいってもアルバムの中にはRADWIMPSらしい魅力もきちんと残されています。映画「君の名は。」でRADWIMPSの良さに気が付いた方もおそらく十分気に入る内容だったのではないでしょうか。個人的には特に「週刊少年ジャンプ」が気に入りました。

小中学生の頃、週刊少年ジャンプの世界にはまったことのある方には間違いなく共感を呼びそうな歌詞で、

「週刊少年ジャンプ的な未来を 夢みていたよ
君のピンチも 僕のチャンスと 待ち構えていたよ」

という発想はいかにも「中2病」的ながらも昔、同じようなことを考えたことがあったなぁ、と恥ずかしくも思い出すような方も少なくないのではないでしょうか。その上のラストの

「きっとどんでん返し的な未来が僕を待っている
血まみれからの方がさ 勝つ時にはかっこいいだろう
だから今はボロボロの心を隠さないで 泣けばいい」

(「週刊少年ジャンプ」より 作詞 野田洋次郎)

という締めくくりは週刊少年ジャンプの黄金期をリアルタイムで経験したアラフォー世代の心にもヒットしそうです。

そんな感じでRADWIMPSらしい名曲ももちろん少なくないですし、アルバム全体として決して悪い出来ではないのですが・・・いままでの彼らの作品と比べると少々見劣りがしてしまう内容だったように感じました。昨年、彼らが話題になったのもRADWIMPSとしてバンドが勢いにのっているというよりは楽曲のタイアップという外部的要因が大きかったからなぁ。今後、このチャンスを生かしてさらなる飛躍が出来るのか否か、これからが勝負でしょう。

評価:★★★★

RADWIMPS 過去の作品
アルトコロニーの定理
絶対絶命
×と○と罰と
ME SO SHE LOOSE(味噌汁's)
君の名は。

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2017年3月17日 (金)

ブルースの歌詞の世界へようこそ

今日紹介するのは最近読んだ音楽関連の本の紹介。今回は日本のブルース研究の第一人者である小出斉氏の書いたブルースの「歌詞」にスポットをあてた一冊です。

タイトルは「意味も知らずにブルースを歌うな!」。かなり刺激的なタイトルですが、そのタイトルの通りブルースの名曲についてその歌詞を掘り下げて紹介しています。内容は3章にわかれており、第1章ではロバート・ジョンソンの「クロスロード・ブルース」やTボーン・ウォーカーの「ストーミー・マンディ」なんていうブルースを聴き始めたら真っ先に出会うような超スタンダードナンバーを紹介。第2章ではB.B.キングの「ロック・ミー・ベイビー」やアルバート・キングの「悪い星の下に生まれて」のような、これまたブルースの有名曲のうち、いかにも「ブルース」らしい素材を取り上げた曲を紹介。そして第3章はちょっと異色で、ブルースの題材としてあまり取り上げられないようなテーマを歌った曲を紹介しています。

1曲につきさかれているページは6ページ程度。1ページ目は楽曲のイメージがイラストで描かれていて、2、3ページ目は楽曲の解説。3ページ目に英文の歌詞が記載されており、欄外では歌詞の中で使われている英単語の訳が数点記載されているほか、コード進行も記載されています。その後はシンガーの紹介、紹介された楽曲が収録されているアルバムの紹介、聴き比べてみたいカバー曲の紹介と続いています。

そんな構成になっているため歌詞についての解説は2、3ページ程度。歌詞の中の要点を絞って解説しているという印象。ただきちんと楽曲の肝は抑えられており、その曲の歌詞のおもしろさはきちんと伝わってきます。特にブルースの場合は歌詞にダブルミーニングが用いられていたり、リアルタイムのブラックコミュニティーの人たちにしか通じないような言い回しが用いられていたりして、英語に詳しくてもなかなか読み取れない部分が多いのですが、そういったポイントもしっかりと抑えられた解説になっています。

ただし、短い内容に要約されているため全訳はついておらず、また背後にある当時の黒人社会の状況への言及もあまりありません。この点に関しては若干物足りなさも感じるような解説もあったのですが・・・ただおそらく著者はブルースのマニア向けに深く掘り下げるというよりは、ブルースを聴き始めた初心者向けに、ブルースの歌詞のおもしろさを伝えることを最優先にしているように感じます。

実際、ブルースをこれから聴き始めようとする初心者にとっては最適な構成になっていると思います。まずブルースを聴くなら抑えておきたい曲が並び、その曲を歌うミュージシャンと曲が収録されているアルバムの簡単な紹介が続いており、ブルースといってなにを聞いたらいいかわからないという方にとっては最適な入門書ともいえる内容になっていました。

もちろん、ある程度ブルースを聴いているような方にとっても、ともすればあまり深く考えず聴いてしまう歌詞の世界をあらためて味わうことの出来る一冊になっていると思います。この本でブルースの歌詞の裏側に広がる世界をもっともっと知りたいというのならば、さらに他の本を読んでみてほしいといったところなのでしょうか。個人的にはそういうブルースの歌詞の世界にはまってしまった人が次に読むべき本をブックガイド的に載せておいてほしかったかも、とも思いました。

そんな訳で物足りなさを感じたような部分はありつつも、とても楽しむことできました。特に紹介されている曲を自分が持っているCDやYou Tubeなどで聴きながら読むと、より楽しめる本だと思います。ブルースの入門書的にも、あらためて歌詞の魅力に触れたい方にとっても要点がおさえられたわかりやすい1冊でした。

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