2024年12月11日 (水)

Mrs.GREEN APPLE強し!

今週のHot100

http://www.billboard-japan.com/chart_insight/

ロゼ&ブルーノ・マーズの1位が続くと思いきや、今週はMrs.GREEN APPLEが1位獲得です。

Bitter

今週1位はMrs.GREEN APPLE「ビターバカンス」が先週の6位からランクアップ。ランクイン2週目にして1位獲得となりました。ダウンロード数3位、ストリーミング数及びラジオオンエア数2位、動画再生回数5位で総合1位を獲得。一方、ロゼ&ブルーノ・マーズ「APT.」は今週2位にダウン。1位は3週連続でストップです。ただ、ストリーミング数及び動画再生回数では1位を獲得。ダウンロード数4位、ラジオオンエア数6位は「ビターバカンス」の後塵を拝する結果となりましたが、かなり根強い人気を感じさせられるため、来週以降の1位返り咲きもありそうです。

ちなみにMrs.GREEN APPLEは「ライラック」が今週も4位にランクイン。今週も2曲同時ランクインに。ストリーミング数は6週連続の3位、動画再生回数も先週から変わらず2位をキープ。これでベスト10ヒットは連続34週となっています。

3位には、Number_i「HIRAKEGOMA」が初登場。TOBE所属の元King&Princeのメンバーによる男性アイドルグループによる配信限定シングル。ダウンロード数及びラジオオンエア数1位、動画再生回数4位で総合順位は3位獲得となりました。

続いて4位以下初登場曲ですが、まず5位にはBALLISTIK BOYZ from EXILE TRIBE「SAY IT」がランクイン。CD販売数4位、ラジオオンエア数3位。LDH所属の男性アイドルグループ。オリコン週間シングルランキングでは初動売上3万2千枚で4位初登場。前作「HIGHER X」の初動2万3千枚(9位)からアップしています。

7位には韓国の男性アイドルグループTWS「Last Festival」が初登場。CD販売数1位。オリコンでは同作が収録された「Last Bell」が初動売上7万3千枚で1位初登場。本作が初のCDシングルとなります。

8位にはDXTEEN「Level Up」がランクイン。吉本興業と韓国のCJ ENMの合弁によるLAPONEエンタテイメント所属の男性アイドルグループ。オリコンでは初動売上4万4千枚で2位初登場。前作「Snowin'」の初動3万5千枚(1位)よりアップ。

一方、ロングヒット曲ですが、まずはCreepy Nuts。今週、「オトノケ」は3位から4位にダウン。9週連続のベスト10ヒット。ただし、ベスト3ヒットは7週連続でストップです。ダウンロード数は3週連続の5位ながらも、ストリーミング数は2位から4位、動画再生回数も5位から6位にダウンしています。また今週「Bling-Bang-Bang-Born」も8位から11位にダウン。ベスト10ヒットは通算44週で再びストップとなりました。

また今週、AKASAKI「Bunny Girl」が10位にランクイン。これでベスト10ヒットは連続8週となり、ロングヒットとなっています。彼は現在18歳のシンガーソングライター。16歳の時にTikTokで発表した「弾きこもり」で注目を集め、本作がさらなる注目を集め、ヒットを記録しています。ただ、先週の5位から10位に大幅にダウンしており、今後、ヒットがどこまで続くのかも気になるところです。

なお、先週7位だったこっちのけんと「はいよろこんで」は今週12位にダウン。残念ながらベスト10ヒットは通算18週で再びストップとなりました。

今週のHot100は以上。明日はHot Albums&Hot Seekers&ボカロチャート!

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2024年12月10日 (火)

インパクトは十分!

Title:ベスト・オブ・マハラージャン
Musician:マハラージャン

いろいろなポップミュージックを聴いていると、正直、このミュージシャンは何で売れないんだ!?と思うケースは多々あります。特に個人的に結構はまったポップミュージシャンが、思ったほど売れず、徐々にフェイドアウトしてしまうほど残念なケースはありません。森広隆とか、SUEMITSU&THE SUEMITHとか、個人的にはまって、「これは!」と思いつつ、結局売れなかったミュージシャンは何人もいます。

今回紹介するのはこのサイトでも何回か紹介しているポップミュージシャンのマハラージャン。特に2021年のデビュー作「セーラ☆ムン太郎」は話題を呼び注目を集めました。個人的にも2021年にリリースされたアルバム「僕のスピな☆ムン太郎」ではじめて彼の曲を聴いて、「これは!」と思ってはまったのですが・・・ただ、残念ながらこの時点に至ってもブレイクには至っていません。

このマハラージャンというミュージシャン、名前からして大きなインパクトがあるミュージシャン。マネジメント事務所の名前が「油田LLC」という会社なので、その名前にちなんでいるそうです(でもマハラジャはインドの王様で油田は関係ない・・・)。ファンクをベースとしたリズミカルなポップソングが魅力的で、話題となった「セーラ☆ムン太郎」もちょっとブラックミュージックの要素も入った軽快なポップチューンとなっているのですが、同じくファンキーな「いいことがしたい」「適材適所」など、そのリズムが魅力的。また、ディスコ風の「蝉ダンスフロア」やエレクトロチューンの「ラジオネーム オフトゥン大好き」など、ダンスチューンという点を共通項としてバラエティー富んだポップな作品を聴かせてくれますし、「その気にさせないで」のようなアイドルポップのような爽やかなポップチューンも。全体的にいい意味で耳障りのよいポップな楽曲を聴かせてくれており、ヒットポテンシャルは十分ある楽曲が並びます。

さらに大きな魅力であり彼の特徴と言えるのがその歌詞。ちょっとシニカルで、コミックソング的でありつつも真面目なテーマ性も垣間見れる歌詞が魅力的で、ノベルティー的な要素と純粋に真面目なポップソング的な要素がほどよくバランスしている絶妙なポップチューンに仕上げています。

例えば「セーラ☆ムン太郎」はタイトルからしてあきらかにセーラームーンのパロディー風の歌詞なのですが、歌詞の内容については、目立たないところでがんばるような人たちへのエールともとれるような内容に。「蝉ダンスフロア」は長く土の中で時間を過ごし、地上に出てくる蝉をテーマとしつつ、コミカルながらもどこか悲哀さを感じさせる歌詞が特徴的。コミカルな歌詞ながらも、単純に「笑い」を目指したようなコミックソングとは一線を画する歌詞が印象に残ります。

そんなヒットポテンシャルのあるメロも書け、個性もあるミュージシャンながらも、残念ながら現在に至るまで大ブレイクには至っていません。非常に残念でありつつ、これほどのミュージシャンがブレイクできないのが不思議にすら感じてしまうのですが、ただ一方、その理由がなんとなくわからないでもない曲があって、それがエレクトロナンバー「ラジオネーム オフトゥン大好き」。こちら、水曜日のカンパネラでおなじみのケンモチヒデフミが参加した曲なのですが、正直、メロにしろサウンドにしろインパクトの強度がワンランク違います。メロや歌詞もさることながらも、そのサウンドも一度聴けば一発で覚えるような、マハラージャンの他の楽曲に比べてもさらに強いインパクトがあり、ポップミュージシャンがブレイクするためには、このレベルのインパクトがないとダメということかなぁ、ということを感じたりもしてしまいました。

ちなみにこのベスト盤を区切りにマハラージャン、ミュージシャン名義をMHRJとあらため(呼び方は変わらずマハラージャンだそうです)、トレードマークだったターバン姿もやめたそうです。若干迷走気味のような気もしないでもないのですが・・・。とはいえ、彼の曲が魅力的であることは間違いなく、もしまだチェックしていない方がいたら、このベスト盤、是非ともチェックしてほしい1枚。このまま埋もれてしまうにはあまりにも惜しいミュージシャンです。

評価:★★★★★

マハラージャン 過去の作品
僕のスピ☆なムン太郎
正気じゃいられない
ミーンミーンミーン☆ゾーンゾーンゾーン


ほかに聴いたアルバム

King Gnu Dome Tour THE GREATEST UNKNOWN at TOKYO DOME/King Gnu

Kinggnulive

今年1月に開催された東京ドームでのKing Gnuのライブ音源を収録した配信限定のライブアルバム。「W●RK」では椎名林檎本人もゲスト参加。東京ドームでのライブなだけに、全体的にかなりスケール感を覚える作品。全30曲1時間42分に及ぶ楽曲は、King Gnuの代表曲も並びます。全体的にメランコリックに聴かせる楽曲が多く、いい意味でわかりやすいメロディーラインにKing Gnuのポップ志向も感じられます。ただ、正直、東京ドームレベルの大箱にはちょっと合ってない感じも否めないような・・・。

評価:★★★★

King Gnu 過去の作品
Sympa
CEREMONY
THE GREATEST UNKNOWN

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2024年12月 9日 (月)

90年代に一世を風靡したバンドのレア音源集

キュートなボーカルとポップなメロで、90年代に日本でも一世を風靡したスウェーデンのバンド、The Cardigans。かなり久しぶりに聞いた名前ですが・・・今回、そんな彼女たちのアルバム未収録音源などを収録したレア音源集が2枚同時にリリースされました。

Title:The Rest Of The Best - Vol.1
Musician:The Cardigans

Title:The Rest Of The Best - Vol.2
Musician:The Cardigans

個人的にも、大学時代にoasisやblurと並んで、大好きではまっていたバンドの一つだっただけに、久々に彼女たちのアルバムを聴いてみて、懐かしいという気持ちがいっぱいです。収録されている音源は、シングルのカップリングやサントラへの提供曲、限定リリースされたリミックス版や、日本、フランス、イギリスでリリースされたアルバムのボーナストラックに収録された曲が収録されているそうです。

また、今回、完全に初のアルバム収録曲・・・ばかりではなく、日本及びオーストラリアの限定リリースで1997年にレア音源集「The Other Side Of The Moon」をリリースしており、多くの曲が同作と重複していますし、2008年にリリースした「ベスト・オブ・カーディガンズ」のデラックスエディションに収録されていたレア音源とも重複しています。ただ、両作とも、既に製造中止しているため、本作をリリースする意味はあるのですが。ただ、同作は個人的にリアルタイムで聴いていた音源。うっすらと聴き覚えのあるような曲もあるのは、その時聴いていたからでしょうか・・・。

今回、レア音源集ということなのですが、本作の収録曲を聴き、あらためてThe Cardigansというバンドが実に魅力的だったなぁ、ということを強く感じました。本作収録曲でも、アルバム未収録曲とは思えないようあ充実したポップ作も少なくありません。例えばVol.1の冒頭に収録されている「Pooh Song」もそんな1曲でしょう。1994年にリリースしたシングル「Sick&Tired」のカップリング曲なのですが、非常に温かみがあるサウンドとキュートでポップなメロディーラインが実にカーディガンズらしく魅力的。Vol.2に収録されている「(If You Were)Less Like Me」もメロにインパクトがあり魅力的。(おそらく)後期の作品らしく、ボーカルのニーナには大人の魅力を感じさせますし、バンドもロックテイストが強くなり、力強いサウンドが魅力的。こちらは後期カーディガンズの魅力を感じさせる曲となっています。

一方、ただ単純に、暖かいサウンドとキュートなメロのポップバンドというだけではなく、例えばVol.1収録の「Blah Blah Blah」は微妙にひねくれたメロとサウンドに妙なインパクトがありますし、「War(First Try)」のような、ヘヴィーなバンドサウンドを入れて、ロックな側面を強調した曲も。Disc2では「Hold Me」のようなブルージーなギターを聴かせる作品も聴かせてくれたりします。

収録曲は、Vol.1は比較的初期の作品、Vol.2は後期の作品が収録されているようで、そのため、Vol.1ではおそらく日本でのカーディガンズの一般的なイメージに沿ったような、キュートなポップソングが多く、一方、Vol.2では後期カーディガンズで聴かせてくれたような、哀愁感ただよう大人の雰囲気の楽曲が多く収録されています。レア音源集でありつつ、カーディガンズの歩みも感じられる構成になっていました。

ちなみに大ヒットした「Carnival」「Lovefool」は「Puck Version」として収録。こちらは以前、アナログ盤でリリースされたリミックス盤に収録されていたバージョンのようで、アコギ1本で物憂げな雰囲気で聴かせるナンバー。「Carniva」に至っては、ボーカルがニーナではありません(おそらくギターのピーターか?)。ただ、原曲の持つポップスさはそのままで、これはこれで魅力的な楽曲となっています。

レア音源集ということでデモ音源も多く入っていますが、ただ、どれも楽曲としては完成しており、デモ音源でありがちな、明らかに未完成な作品というのはありません。そういう点も含めて、レア音源集とはいえ、基本的にカーディガンズの魅力をしっかりと伝えてくれるような「アナザーベスト」のようなアルバムに仕上がっていました。これが最初の1枚、というのはさすがに厳しいかもしれませんが、少なくともコアなファン向けではなく、カーディガンズというバンドを知っている方だったら、間違いなくお勧めできるアルバム。今は、彼女たちは活動休止状況のようですが、かのoasisも活動を再開させた今、彼女たちも再び、本格的に活動を再開してくれないかなぁ。

評価:どちらも★★★★★


ほかに聴いたアルバム

Beautiful Happening/Fairground Attraction

1988年にリリースしたデビューシングル「Perfect」が大ヒットを記録。それに続くアルバム「First Kiss」も大ヒットを記録し、一躍注目を集めるものの、1990年に突然解散したFairground Attraction。「First Kiss」はいまだに名盤という評価を受け、伝説のバンドとすらなっていた彼らでしたが、なんと昨年、奇跡の再結成を発表。そしてついにリリースされた2枚目となるアルバムが本作です。

作品は全編、アコースティックギターがメインのフォーキーで暖かい作風。楽曲によっては、ブルースやカントリーの要素も入れつつ、全体的には優しくも懐かしさを感じさせるフォークロックな作風となっています。そのため、全体的に地味という印象も否めず・・・。とはいえ、メロディアスなメロディーラインは魅力的ではあり、35年以上の年月を経て、いまだにその実力を感じさせてくれる1枚でした。

評価:★★★★

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2024年12月 8日 (日)

もう結成20周年

Title:SUB MACHINE, BEST MACHINE
Musician:UNISON SQUARE GARDEN

バンド結成20周年を記念してリリースされたUNISON SQUARE GARDENのベストアルバム。CD3枚組の本作は、Disc1としてレアトラック集が収録。Disc2、3では過去の代表曲がシングル曲を中心に、リリース順に収録。特に初期の作品については再レコーディングも行われています。さらに初回盤では2015年に行われた日本武道館ライブの模様を収録したBlu-rayを収録。BOX仕様の受注生産限定盤では、ライブやMVを収録したBlu-ray5枚組というボリューミーな内容に仕上がっています。

UNISON SQUARE GARDENといえば、まだまだ若手バンドという括りで見ていたのですが、もうバンド結成から20年もたっているんですね・・・。もっとも、メジャーデビュー2008年なので、そこからは16年なのですが。とはいってもメジャーデビュー16年。昨今ではバンド寿命も長くなったので、デビュー16年というのは、まだ「中堅」くらいのカテゴリーなのですが、時の流れの速さを感じます。

さて、今回のベスト盤、いきなり最初はレア音源集からスタートというちょっと異例(?)な構成になっているのですが、このレア音源集がちょっとユニークで、シングル曲中心のベスト盤と比べると、バンドサウンドを前に押し出した、ロックバンドとしての側面を強く感じさせる曲が目立ちます。

結成後、はじめてスタジオ入りして演奏したという「星追い達の祈り」にしても、分厚いバンドサウンドが目立つ作品となっていますし、「ミカエルは雲の上」にしても、オルタナ系ギターロックのメインストリームを行くようなバンドサウンドを聴かせてくれています。現時点で最新のアルバム「Ninth Peel」では、比較的バンドサウンドを前に押し出して、ロックバンドらしさを感じさせる作風になっていましたが、彼らのとしては、初期から一貫してロックバンド志向であるということを感じました。

じゃあ、それらの作品が彼らに合っているのか、というとちょっと微妙な部分があり、確かに彼らの「売り」であるポップなメロディーや個性的な斎藤宏介のボーカルを生かす形という意味では、ヘヴィーなバンドサウンドを前に押し出したスタイルはあまり合っていない部分も。もっとも、Pixesはじめ、オルタナ系ギターロックバンドの特徴としてヘヴィーなバンドサウンドと相反するようなポップなメロという特徴もあるのですが、正直、彼らのバンドサウンドは、このアルバムの収録曲を聴く限りでは平凡で特に個性もない内容であるため、彼らの「売り」が十分生かされていない感があります。

そういう意味では初期のシングル曲から、バンドサウンドを抑えめにして歌やメロを前に押し出したスタイルを取った彼らに関しては彼らの慧眼を感じさせます。実際、やはりシングル曲の方が彼ららしさがしっかり出ていて、かつボーカルのスタイルにもピッタリ。特にDisc2から3にかけて楽曲の勢いはどんどん増していき、ブレイクポイントとなった「リニアブルーを聴きながら」「シュガーソングとビターステップ」あたりは彼らの勢いを最も感じさせます。

その後の曲、特にDisc3からの曲に関しては、同じような軽快でポップな作品がメインということもあって、正直、少々マンネリ気味というのは否めないのですが、それでも比較的最近の作品「kaleido proud fiesta」もインパクト十分な作品で、彼らの魅力を十分に感じることが出来ます。挑戦心という意味ではちょっと薄いのですが、ここ最近の作品に関しては、中堅バンドらしく安定してきた、と言えるのかもしれません。

そんなUNISON SQUARE GARDENの20年を総括した・・・とも言えそうなベストアルバム。3枚組はそれなりのボリュームですが、ポップな作品が多く、いい意味で聴きやすい内容でした。ここ最近、若干大きなヒットに乏しいような感もあるのですが、これだけインパクトのあるポップソングを書けるのならば、また近いうちに大きなヒットソングも生まれそうです。

評価:★★★★

UNISON SQUARE GARDEN 過去の作品
CIDER ROAD
Catcher In The Sky
DUGOUT ACCIDENT
Dr.Izzy
MODE MOOD MODE
Bee-Side Sea-Side 〜B-side Collection Album〜
Patrick Vegee
Ninth Peel

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2024年12月 7日 (土)

懐かしくも新しい2000年代にフォーカス

Title:Y2K!
Musician:Ice Spice

最近、アメリカで注目度が急速に高まっている女性ラッパーIce Spice。昨年リリースした「Like...?」は当サイトでも紹介しましたが、昨年はイギリスのシンガーソングライターPinkPanthernessとコラボした「Boy's a Liar Pt.2」がビルボードで3位、Nicki Minajとコラボした「Pincess Diana」が4位、さらには同じくNickiとコラボした「Barbie World」が7位と3曲がベスト10入り。一気に注目を集めました。

前作「Like...?」はEP盤でしたので、純然たるオリジナルアルバムとしては初となる本作。「Y2K」というタイトルは、ある一定以上の世代の方についてはちょっと懐かしさを感じさせる言葉ですが、彼女の誕生日である2000年1月1日にちなんでつけられた名前だとか。しかし、誕生日が2000年の1月1日というのはすごいですね・・・。

楽曲は、前作同様、全編、強いエレクトロビートがとにかく耳を惹く、リズミカルでダンサナブルなトラックがインパクト大。ちょっと不気味な雰囲気の「Phat Butt」からスタート。続く「Oh Shhh...」ではTravis Scottがゲストで参加。ただ、どちらかというとTravis Scott的な要素以上にIce Spiceらしさが前に出たような作品に。逆に同じくラッパーのGunnaが参加した「...Bitch I'm Packin'」ではトラップ色が強くなっており、こちらはゲスト側の影響でしょうか。

他にもメロディアスなフレーズが流れ、ポップに聴かせる「Did It First」や、ビートにトライバルな要素が加わった「Gimmie A Light」「GYAT」、どこかメランコリックさを感じるラップに、ポップさを感じる「Think U The Shit」など、バラエティーを加えつつ、ただ、全体的にはヘヴィーなエレクトロのビートをリズミカルに聴かせるスタイルのラップがメイン。正直、そういう意味では似たようなタイプの曲が多いのですが、一方でアルバム全体としても11曲25分という短さで、そのため、似たタイプの曲が多くても、最後まで飽きることなく一気に聴いてしまえるアルバムとなっていました。

また、今回のアルバムの大きな特徴なのが2000年代前後のヒット曲をサンプリングしている点。例えば「Phat Butt」ではDem Franchize Boyzの2004年のヒット曲「Oh I Think Dey Like Me」をサンプリング。「Gimmie A Light」では、Sean Paulの2002年のナンバー「Gimme the Light」からサンプリングしているなど、2000年前後のカルチャーを積極的に取り込んでいるとか。最近、2000年前後のファッションが再度注目を集めているそうですが、彼女もまた、流れに沿ったアルバムとなっています。日本でもかつて70年代が注目を集めたり、80年代が注目を集めたりしましたが、既に20年以上前になった2000年代。懐かしくも一定以下の世代には逆にある種の新しさを感じさせる点、注目を集めている要素でしょうか。(2000年代に青春期を過ごした世代が、会社の上席者となり、いろいろな意思決定が出来るような世代になった点も大きいかもしれませんが)

そんな懐かしくも新しい作品。ただ、HIP HOP等の詳しくない方にとっては、どこまで懐かしさを感じるのかは微妙なのですが…。ただ、リズミカルなエレクトロビートを軸とした楽曲は、HIP HOPをあまり聴かない層にとっても耳なじみやすく、25分という短さもあって、飽きることなく最後まで楽しめるアルバムになっていました。シングルのヒットにもかかわらず、本作はビルボードのHot Albumsではベスト10入りは逃しており、まだまだ彼女自身の人気の面ではこれからの部分もあるのですが、今後、さらなる人気の上昇も期待されます。今、もっとも注目すべきHIP HOPミュージシャンの一人であることは間違いないでしょう。今後の活躍にも注目です。

評価:★★★★★

Ice Spice 過去の作品
Like...?


ほかに聴いたアルバム

Absolute Elsewhere/Blood Incantation

アメリカのデスメタルバンドによる4枚目のアルバム。彼らのアルバムを聴くのは前々作「Hidden History Of The Human Race」以来となるのですが、ダイナミックでヘヴィーなバンドサウンドとデス声という組み合わせは、いかにもデスメタル然とはしているものの、今回のアルバムではエレクトロサウンドを取り入れたり、トライバルなリズムを取り入れたり、様式美に陥らない様々な試みがユニーク。バンドとしての挑戦心も感じられる作品でした。

評価:★★★★

Blood Incantation 過去の作品
Hidden History Of The Human Race

Maple to Paper/Becca Stevens

ジャズやフォークのジャンルで活躍するアメリカのシンガーソングライターによる新作。本編はすべて弾き語りによる作品で、アコースティックギターのみの演奏をバックにメランコリックに歌い上げる優しいボーカルが魅力的な作品に。清涼感あるボーカルで、時には優しく、時には切なくメランコリックに聴かせる歌声も魅力的な作品でした。

評価:★★★★

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2024年12月 6日 (金)

ブルースへの愛情を感じさせるコラム

今日は、最近読んだ音楽関連の書籍の紹介です。

ブルースバンド、ローラー・コースターのギタリストであり、ブルース評論家の第一人者として活躍していた小出斉。今年1月に66歳という若さで惜しまれつつこの世を去りました。そんな彼が、1993年から2017年まで、実に24年にわたってギター・マガジン誌に掲載していたコラム「ブルース雨アラレ」。その全285回に及ぶ連載を完全網羅したのが本作「小出斉のブルース雨アラレ~選りすぐりの名盤、迷盤、700枚超のディスク紹介を添えて~」です。

285回に及ぶ連載をすべて収録しているというだけあって、かなりのボリューム感。ページ数は592ページにも及び、書籍だと、まるで辞書のような分厚さとなっています。それだけ、この24年にわたる歴史の重み(?)を感じさせる1冊となっています。

ただ、本書、サブタイトルで「700枚超のディスク紹介を添えて」と書かれていますが、期待するようなブルースのディスクガイドではありません。ここで紹介されているアルバムのほとんどは、ブルースの代表的な名盤、ではなく、連載当時にリリースされた新譜やリイシュー盤、企画盤ばかり。それが定番のアルバムとなり、今でもチェックすべきアルバムも少なくはありませんが、ブルース入門的にアルバムを聴こうとするのならば、彼が残した名著「ブルースCDガイドブック」などの方が今でも有効です。

本書でメインとなるのは、小出斉のエッセイ的なコラム。連載スタート当初は、CDのアルバム紹介がメインとなっていたのですが、中盤以降、アルバム紹介は徐々に減り、ほとんど彼の日々の生活やブルースへの想い、また自身のバンドのライブ活動などに関するエッセイがメインとなってきます。そのため本作は、ブルースの本、というよりも、あくまでも小出斉の本、というのが主眼となっていました。

また彼は、評論家であるため読ませる文章を書くのは間違いありませんが、正直、エッセイストとして特筆すべき視点のエッセイを書く・・・といったタイプではありません。そのため、小出斉にある程度思い入れのある方ではないと、なかなかこのボリューミーなコラムを読むのは難かしいかもしれませんし、そもそも本書の意義として、偉大なブルース評論家、小出斉の業績を残す、という記録的側面が強いのかもしれません。

ただ、そんな中で強く感じるのは、何よりも小出斉のブルースに対する愛情の深さでした。序盤から最後まで、昔のブルースミュージシャンのリイシューから、現役のブルースミュージシャンの新譜までしっかりとチェックし、愛情を感じさせるレビューを記載していますし、自らのライブ活動に関してのコラムに関しても、ミュージシャンとして本当にブルースを演奏をするのが楽しいんだろうな、ということはコラムを通じても伝わってきます。そういう意味でも彼のコラムを通じて、ブルースという音楽のすばらしさを感じさせるコラムになっていました。

また、本書を読んでもう一つ感じたのは、この24年を通じてのブルースをめぐる環境の大きな変化でした。このコラムがはじまった1993年の時点においては、まだ存命なブルースのレジェンドたちも少なくなく、リイシューも含めて多くのブルース関連のCDが発売され、さらに国内においても本場のブルースミュージシャンが来日・演奏するブルースのライブイベントがいくつか開催されていました。

それがこのコラムが終盤を迎える2010年代においては、ほとんどのブルースのレジェンドがこの世を去り、国内のブルースイベントは終焉を迎え、ブルースの新たなCDもあまり発売されなくなりました。ディスクガイドとしてはじまったコラムが、小出斉自身のエッセイとなってくるのはブルースの新たなCDのリリース数の激減も大きな要因だったのでしょう。単純にCDというメディアがストリーミングに変化していった、という理由もあるのでしょうが、それ以上にブルースの音源がほぼCDで出し尽くしてしまった、というのも大きな理由なのでしょう。この24年という年月はブルースというジャンルにおいては、あまりに長い年月だったということを実感させられました。

そんな訳で、ブルース関連書籍というよりも、小出斉個人のエッセイという要素が強い本作。そういう意味では純粋なブルースの入門書的にはあまりお勧めできません。ただ、小出斉のブルースへの愛情を通じて、ブルースという音楽のすばらしさを感じされるコラムであることは間違いなく、そういう意味でもブルース好きにとっては読んで損のない1冊です。

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2024年12月 5日 (木)

77歳でのベスト3入り

今週のHot Albums

http://www.billboard-japan.com/chart_insight/

今週のHot Albumsで注目なのは2位に初登場した小田和正「自己ベスト-3」でしょう。CD販売数2位、ダウンロード数3位。オリコン週間アルバムランキングでも2位にランクインしているのですが、77歳3か月でのベスト3入りは吉田拓郎が「ah-面白かった」で達成した76歳3か月を上回り、史上最高齢での記録だそうです。全体的にミュージシャン寿命が長くなってきている中、今後も記録は更新されそうですが、ただ、ベスト盤とはいえ新曲も含む本作。80歳間近になりつつ、まだ現役で人気を保ち続けているというのは驚かされます。末永く、お元気で!ちなみにオリコンの初動売上5万1千枚は直近のオリジナルアルバム「early summer 2022」の初動4万5千枚(3位)からアップしています。

一方、1位に初登場したのは旧ジャニーズ系男性アイドルグループHey!Say!JUMP「H+」。CD販売数1位、ダウンロード数6位。オリコンでは初動売上16万枚で1位初登場。前作「PULL UP!」の初動19万9千枚(1位)からダウンしています。

3位には韓国の男性アイドルグループATEEZ「GOLDEN HOUR:Part2」が初登場。オリコンでは先週のベスト50圏外から2週目にして、4万1千枚を売り上げて3位初登場。前作「GOLDEN HOUR:Part1」の初動4万2千枚(1位)から微減。

続いて4位以下の初登場盤は、4位にモーニング娘。'24「Professionals-17th」が初登場。17枚目となるオリジナルアルバム。5位にはボカロPとしても活躍しているEve「Under Blue」が初登場でランクイン。6位には龍宮城「裏島」がランクイン。ロックバンド女王蜂のアヴちゃんプロデュースによる男性アイドルグループのデビュー作。7位初登場は香取慎吾「Circus Funk」。配信限定アルバムで、ダウンロード数は本作が1位。最後10位にはVTuberグループにじさんじ「HE4RT BE4T!」がランクイン。四季をテーマとした4曲入り(+インスト4曲)のミニアルバム。


続いて各種チャートですが、なんと先週を最後にTik Tok Weeklyが突然の終了。ほとんど何のアナウンスもない状況での終了となっており、理由は不明なのですが・・・TikTokからの情報提供に基づくチャートだけに、両者の情報提供契約が何かの理由で終了したのでしょうか。

今週のHeatseekers Songs

https://www.billboard-japan.com/charts/detail?a=heat_seekers

今週のHeatseekers Songs1位は、今週も弌誠「モエチャッカファイア」が4週連続通算9週目の1位を獲得しています。ただし、動画再生回数では8位から11位にダウン。Hot100でも65位から75位にダウンしています。そろそろトップは入れ替わりか?


今週のニコニコVOCALOID SONGS

https://www.billboard-japan.com/charts/detail?a=niconico

ボカロチャートも先週に引き続き柊マグネタイト「テトリス」が4週連続で1位獲得しています。ただ、こちらもDECO*27「モニタリング」が先週の3位から2位にじわりと順位を上げてきており、そろそろトップの入れ替わりがあるのでしょうか?

今週のHot Albums&各種チャートは以上!チャート評はまた来週の水曜日に!

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2024年12月 4日 (水)

ロゼ&ブルーノ・マーズのヒットが続く

今週のHot100

http://www.billboard-japan.com/chart_insight/

かなり中毒性の強いサビで、ロングヒットが続きそうです。

Apt

今週1位はロゼ&ブルーノ・マーズ「APT.」。これで3週連続の1位。ストリーミング数が4週連続、ラジオオンエア数も2週連続1位を獲得しているほか、動画再生回数も今週1位を獲得。1位独走態勢に入ってきた感があります。

2位は韓国の男性アイドルグループSEVENTEEN「消費期限」がランクイン。CD販売数1位、その他はランク圏外。オリコン週間シングルランキングでは初動売上41万8千枚を売り上げて1位初登場。

3位はCreepy Nuts「オトノケ」がワンランクダウンながらもベスト3をキープ。ストリーミング数は4週連続の2位、ダウンロード数は2週連続の5位、動画再生回数は3位から5位にダウン。ただ、今週でついに8週連続のベスト10ヒット。ベスト3ヒットも7週連続。1位獲得週は1週のみに留まっており、「Bling-Bang-Bang-Born」ほどではないものの、2作連続のロングヒットを記録。タイアップ効果もあるものの、ミュージシャンとしての勢いを感じさせます。ちなみに「Bling-Bang-Bang-Born」も今週、先週と変わらず8位をキープ。ベスト10ヒットを通算44週に伸ばしています。

続いて4位以下の初登場曲ですが、今週の初登場曲はあと1曲のみ。Mrs.GREEN APPLE「ビターバカンス」が6位に初登場。ダウンロード数1位、ストリーミング数8位、動画再生回数10位。映画「聖☆おにいさん THE MOVIE~ホーリーメンVS悪魔軍団~」主題歌彼ららしい祝祭色あふれる明るいポップスに仕上がっています。ちなみにMrs.GREEN APPLEは「ライラック」も先週から変わらず4位をキープ。ストリーミング数は5週連続の3位。動画再生回数は4位から2位にアップしています。これで33週連続ベスト10ヒットに。

また、ベスト10返り咲き曲も1曲。韓国の女性アイドルグループaespa「Whiplash」が先週の11位から9位にランクアップ。3週ぶりのベスト10返り咲き。ストリーミング数は4週連続の5位をキープしています。

ロングヒット曲はこっちのけんと「はいよろこんで」が先週から変わらず7位をキープ。ダウンロード数は先週から変わらず8位、ストリーミング数はワンランクダウンの9位、動画再生回数は5位から7位にダウン。これで通算18週目のベスト10ヒットとなりました。

一方、先週ベスト10に返り咲いたOmoinotake「幾億光年」は今週11位にダウン。ベスト10ヒットは通算33週でストップ。ただ、今後、紅白出演に合わせて再び返り咲きそう。

今週のHot100は以上。Hot Albums&各種チャートはまた明日に!

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2024年12月 3日 (火)

挑戦的でありつつ、懐かしさと暖かさも

Title:EELS
Musician:Being Dead

Eels

アメリカはテキサス州オースティンで活動する3人組インディーバンド、Being Deadの2枚目となるアルバム。デビュー作「When Horses Would Run」も一部で注目を集めたようですが、この2枚目となるアルバムは各種メディアでも高い評価を集め、注目のバンドとなっているようです。

楽曲は、オルタナ系のギターロックを主軸としつつ、同時にフォークソングの影響を受けているような楽曲で、オルタナ系ギターロックのドリーミーで、時としてダイナミックさを感じるサウンドに魅了されつつ、同時にフォークソングのなつかしさを同居している点が大きな特徴。また、ポップでキュートなメロディーラインは、オルタナ系ギターロックバンドとフォークソングの共通項とも言えるのでしょう。

実際、1曲目「Godzilla Rises」はまさにそんなギターロックのアレンジながらもメロディーラインはどこか懐かしさを感じさせるフォークロック風。続く「Van Goes」はむしろ80年代あたりのインディーギターロックを彷彿とさせる懐かしさを感じさせるポップなギターロックになっていますし、かと思えば「Nightvision」は、こちらはむしろ70年代的とすら感じさせる、懐かしいフォークロック風の楽曲に。

さらに「Love Machine」などは女性ボーカルで軽快なポップスとなっており、こちらはむしろネオアコ的な要素を感じさせる楽曲に。かと思えば「Gazing at Footwear」は不穏な雰囲気のノイジーなギターを前に押し出した作品となっており、リバーブをかけたボーカルも加わり、こちらはむしろサイケな作風となっています。

基本的にキュートでどこか懐かしさと暖かさを感じさせるポップなメロを軸に、バラエティー富んだ作風を聴かせる彼らですが、もうひとつ大きな魅力は、その歌を爽やかさを感じさせる男女のツインボーカルで歌われているという点。今回、詳細なバンドプロフィールは今一つわからなかったのですが、ジャケ写を見る限り、おそらく女性2人+男性1人というバンド編成のようですが、男女ボーカルを上手く組み合わせたボーカルスタイルが大きな魅力になっています。

例えば「Problems」では男女のボーカルのハモリが楽曲に暖かさを与えていますし、「Ballerina」は男女のやり取りがどこかコミカルさを感じさせる軽快でリズミカルなギターロックのナンバーとなっています。一方で「Big Bovine」では清涼感ある女性ボーカルで哀愁感漂う楽曲に仕上げていますし、全体的に非常に男女ボーカルの声質を上手く使い分けた楽曲が並んでいるように感じました。

フォークソングとオルタナ系の融合という意味では、同じようにカントリーとシューゲイザーの両方から影響を受けたWednesdayも思い起こされるのですが、アメリカではこの手のバンドが流行りつつあるのでしょうか。ただ、挑戦的な作風がありつつも、懐かしさと暖かさを同居されたメロディーやサウンドが非常に魅力的。今後、さらに注目を集めそうなインディーロックバンドの傑作です。

評価:★★★★★


ほかに聴いたアルバム

JAPANESE SINGLES COLLECTION-GREATEST HITS-/Huey Lewis & The News

1985年に、映画「バック・トゥ・ザ・フューチャー」の主題歌として起用された「The Power Of Love」が大ヒットを記録し、一躍ブレイクを果たしたアメリカのロックバンド、Huey Lewis&The News。日本でも人気を博した彼らの、本作は日本でのシングルを集めたおなじみのシリーズ。もちろん、前述の「The Power Of Love」も収録されています。彼らは現在でも活動を継続しているようですが、やはり基本的に人気を博していたのは80年代。そういうこともあって、楽曲は全体的にいかにも80年代なロックというイメージが。とにかくアップテンポで明るく、時としてシンセも加わったスタイル。徹底的に陽気さが前面に押し出されている作風は、社会全体が明るかったんだろうなぁ、ということを感じさせます。ポップな楽曲が素直に楽しいアルバムでした。

評価:★★★★

Electric Lady Studios:A Jimi Hendrix Vision/Jimi Hendrix

最近、権利関係が整理され、次々と新たな音源がリリースされているJimi Hendrix。今回は、彼の逝去直前の1970年6月から8月にかけて、エレクトリック・レディ・スタジオで収録された39曲が収録。うち38曲が未発表音源となっています。さらに、レコーディングスタジオ誕生を追ったドキュメンタリー「エレクトリック・レディ・スタジオ:ヴィジョン」がBlu-rayでついてくるという豪華なボックスセットになっています。ただ、未発表音源と言え、基本的には既発表曲のテイク違い。想像力あふれるジミのギタープレイはやはりカッコよく、魅力的とはいえ、デモ的な作品も多く、CDだけで3枚組というフルボリュームのアルバムは、やはりどちらかというとマニア向けといった感は否めません。熱心なファンなら、そのテイク違いを聴き比べて、曲の変化を楽しめそうですが・・・。

評価:★★★★

Jimi Hendrix 過去の作品
VALLEYS OF NEPTUNE
People,Hell And Angels
MIAMI POP FESTIVAL(THE JIMI HENDRIX EXPERIENCE)
BOTH SIDES OF THE SKY
Live in Maui
Los Angeles Forum - April 26, 1969(The Jimi Hendrix Experience)
Jimi Hendrix Experience: Live At The Hollywood Bowl: August 18, 1967

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2024年12月 2日 (月)

KANへのオマージュソングで感涙

Title:A museMentally
Musician:スキマスイッチ

2023年にデビュー20周年を迎えたスキマスイッチ。今年はトリビュートアルバムのリリースがあったり、地元名古屋で「スキマフェス」なるイベントを行ったりと、新たな一歩を歩み出した彼ら。ただ、新作としては2021年に2枚同時にリリースされた「Hot Milk」「Bitter Coffee」以来となる、約2年7ヶ月ぶりのニューアルバムとなりました。

今回のアルバムで、なんといってもまずは特筆しなくてはいけないのは、9曲目に収録されている「魔法のかかった日」でしょう。本作は、2023年に逝去した、KANに対するオマージュソング。出だしのフレーズは、完全にKANの名曲「Songwriter」を彷彿とさせますし、そこに流れるピアノのアルペジオは、KANの楽曲によく取り入れられる、ビリージョエル直系のピアノのフレーズを彷彿とさせますし、歌詞の中には「青春の風」「ときどき雲と話をしよう」「涙の夕焼け」「遥かなるまわり道の向こうで」「世界でいちばん好きな人」「永遠」とKANの代表曲のタイトルが織り込まれています。

最初、この曲に関しては、前情報が全くなしに聴いて、最初のイントロからして「KANちゃんっぽいなぁ~」と思いながら聴いたのですが、歌詞に次々とKANの曲のタイトルが登場し、「これは、KANに対するオマージュなのでは?」と気が付きました。そうして歌詞を聴くと、あきらかにKANに対する敬愛の念を感じさせるような内容となっており、正直、KANのファンとして、聴いていて涙が流れてきました。まさにスキマスイッチのKANに対する愛情を強く感じさせる楽曲になっています。

もともと、スキマスイッチとKANの関係といえば、2017年にリリースされた、スキマスイッチの曲をリアレンジした「re:Action」というアルバムの中で、スキマスイッチの曲を分析し、解体し、新たなスキマスイッチっぽい新曲「回奏パズル」という曲をKANが作り上げたことがあったのですが、この曲は、まさに「回奏パズル」に対するスキマスイッチからの回答といっていい楽曲とも言えるでしょう。スキマスイッチの実力も感じさせる楽曲にもなっていました。

この曲を含んで今回のアルバム、スキマスイッチのポップミュージシャンとしての力量のよくわかる、バラエティー富んだポップアルバムに仕上がっていました。初期のスキマスイッチらしさを感じる、彼らの王道路線といえる「逆転トリガー」や、恋人との日常でのよくあるような喧嘩の風景を描いたコミカルな「ごめんねベイビー」、ピアノの音色が軽快な、明るいポップチューン「コトバリズム」や、さらにストリングスとピアノでクラシカルに聴かせるバラードナンバー「君と願いを」と、いい意味で安定感を覚えるポップチューンが並びます。

そんな中でもブルージーなバラードナンバー「遠くでサイレンが泣く」や、同じくブルージーなミディアムチューン「Lonelyの事情」あたりは、彼らの曲の中でも比較的洋楽テイストも強く、かつ「大人」な雰囲気も感じさせます。ここらへんにも、20周年を迎えてベテランの領域に入ってきた彼らの、ミュージシャンとしての力量を感じさせました。

個人的に、この「魔法がかかった日」が収録されているだけで非常に惹かれる作品なのですが、それを差し引いても、ここ数作の中でも特によく出来た秀作だったように感じます。バラエティー富んだ作品には、安定感を覚えると同時にベテランとしてのある種の余裕も感じました。彼らの実力を強く感じさせてくれる作品でした。

評価:★★★★★

スキマスイッチ 過去の作品
ARENA TOUR'07 "W-ARENA"
ナユタとフカシギ
TOUR2010 "LAGRANGIAN POINT"
musium
DOUBLES BEST
TOUR 2012 "musium"

POP MAN'S WORLD~All Time Best 2003-2013~
スキマスイッチ TOUR 2012-2013"DOUBLES ALL JAPAN"
スキマスイッチ 10th Anniversary Arena Tour 2013“POPMAN'S WORLD"
スキマスイッチ 10th Anniversary“Symphonic Sound of SukimaSwitch"
スキマスイッチ
TOUR 2015 "SUKIMASWITCH" SPECIAL
POPMAN'S ANOTHER WORLD
スキマスイッチTOUR2016"POPMAN'S CARNIVAL"
re:Action
新空間アルゴリズム
スキマノハナタバ~Love Song Selection~
SUKIMASWITCH TOUR 2018"ALGOrhythm"
SUKIMASWITCH 15th Anniversary Special at YOKOHAMA ARENA ~Reversible~
スキマスイッチ TOUR 2019-2020 POPMAN'S CARNIVAL vol.2
スキマノハナタバ ~Smile Song Selection〜
スキマスイッチ TOUR 2020-2021 Smoothie
Hot Milk
Bitter Coffee
スキマスイッチ TOUR 2022 "cafe au lait"
POPMAN'S WORLD -Second-
SUKIMASWITCH 20th Anniversary "POPMAN'S WORLD 2023 Premium"


ほかに聴いたアルバム

OVER HEAD POP/浅井健一

一時期ほどのオーバーワーク気味ではなくなったものの、今年はUAと組んだバンドAJICOとして久々にEPをリリースするなど、相変わらず精力的な活動が目立つ浅井健一。AJICOのEPに続いてリリースされたのがソロ名義となるアルバム。1曲目の「Fantasy」は彼らしい、くすんだ感じのギターサウンドと、アイロニックな歌詞が非常にかっこよく、前半に関しては、これぞベンジーといった感じの、退廃的な雰囲気漂うカッコいいロックチューンが並んで、さすがの実力を感じさせるのですが、比較的似たようなタイプの曲が多いだけに後半はちょっと飽きが来るのが最近のベンジーの作品の共通項といった感じで・・・。そういう意味ではAJICOみたいな別の才能を加えると、ベンジーの実力ももっと生きるのかもしれませんが。

評価:★★★★

浅井健一 過去の作品
Sphinx Rose
PIL
Nancy
METRO(浅井健一&THE INTERCHANGE KILLS)
Sugar(浅井健一&THE INTERCHANGE KILLS)
BLOOD SHIFT
Caramel Guerrilla
Mellow Party -LIVE in TOKYO-(浅井健一&THE INTERCHANGE KILLS)

Back To The Pops/GLAY

2023年にデビュー30周年を迎えたGLAY。オリジナルアルバムとしては約3年ぶりのため、30年目を迎えた彼らにとって30年後初となるアルバムですが、本作のテーマ「30年目のGLAYのデビューアルバム」だそうです。そのため、全体的にいかにもGLAYらしい楽曲が並んだ本作。「会心ノ一撃」あたりはいかにも90年代っぽい作品ですし、「その恋は綺麗な形をしていない」もいかにもGLAYらしい作品。「whodunit」では韓国の男性アイドルグループENHYPENを迎え、デジタルロックやラップの要素を加えた作品なのですが、基本的なメロはGLAYらしい作品ですし、GLAYのイメージをガラリと変えることなく、そこに適度に「目新しさ」を加えてくるあたりも彼ららしいといった印象。GLAYとして求められることにきちんと答えているという点、目新しさはない一方、ここらへんのバランス感覚をしっかりとれるあたりはさすがだな、とも感じさせます。良くも悪くも、いかにもGLAYらしいアルバムでした。

評価:★★★★

GLAY 過去の作品
GLAY
JUSTICE
GUILTY

MUSIC LIFE
SUMMERDELICS
NO DEMOCRACY
REVIEWII~BEST OF GLAY~
REVIEW 2.5 〜BEST OF GLAY〜
FREEDOM ONLY
HC 2023 episode 2 -GHOST TRACK E.P-

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