2026年4月15日 (水)

上位2作はロングヒットになるか?

今週のHot Albums

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上位2作はロングヒットの様相です。

今週1位はBTS「ARIRANG」が4週連続の1位獲得。特にストリーミング数はこれで4週連続の1位に。また2位にはHANA「HANA」が先週の3位からアップ。こちらもストリーミング数では4週連続2位。この2作が今度、ロングヒットとなっていきそうです。

3位には男性アイドルグループMAZZEL「Bonquet」が初登場でランクイン。CD販売数2位、ダウンロード数1位、ストリーミング数6位。BE:FIRSTやHANAが所属するBMSG所属のグループ。オリコン週間アルバムランキングでは初動売上8万2千枚で2位初登場。前作「Parade」の初動3万枚(3位)からアップしています。

4位以下の初登場盤では、4位に男性アイドルグループNEWSのメンバー、増田貴久によるカバーアルバム「増田貴久のカバー」が初登場。また10位にはラッパーKohjiya「TIMELESS」が初登場でランクインしています。

ロングヒット盤では「超かぐや姫!」が5位から6位にダウン。これで10週連続のベスト10ヒット。XG「THE CORE-核」が9位から8位にアップ。こちらは12週連続のベスト10ヒット。そしてKing&Prince「STARRING」は7位から9位にダウン。16週連続のベスト10ヒットとなります。


今週のHeatseekers Songs

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今週もクレイジーウォウウォ!!「トンツカタンタン」が3週連続の1位獲得。これで通算5週目の1位獲得となりました。中毒性の高い曲なので、こういう曲が1位になるのはHeatseekers Songsらしい感じもします。何かのきっかけがあれば一気にブレイクする可能性もありそうですが・・・。ただHot100は80位から86位にダウンしています。


今週のニコニコVOCALOID SONGS

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今週1位はルシノ「ループザルーム」が先週の9位からアップ。チャートイン16週目にして初の1位獲得となっています。もともと昨年11月に行われた、作詞作曲者不明の状態で投稿される「無色透明祭3」に投稿された楽曲。その後、作者であるルシノによって正式公開され徐々に人気を確保。今週、見事に1位獲得となっています。2位はぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬ「『ヒトグイ、」がランクイン。3位は東京真中「ブレインロット」が先週の8位からランクアップし、5週ぶりのベスト3返り咲きとなっています。

今週のHot Albums&Heatseekers&ボカロチャートは以上。チャート評はまた来週の水曜日に!

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アイドル系の新譜の中、健闘するロングヒット曲

今週のHot100

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アイドル系の新譜が目立つ中、ロングヒット系の奮闘が続いています。

まず1位は秋元康系女性アイドルグループ、乃木坂46「最後に階段を駆け上がったのはいつだ?」が初登場。CD販売数1位、ダウンロード数9位、ストリーミング数19位。楽曲タイトルがいかにも秋元康っぽい感じです。オリコン週間シングルランキングでは初動売上51万8千枚で1位初登場。前作「ビリヤニ」の初動55万4千枚(1位)からダウン。

2位はM!LK「爆裂愛してる」が先週の3位からアップ。ストリーミング数が4週連続の1位、動画再生回数も2位から1位にアップし、6週ぶりお1位返り咲き。これで9週連続のベスト10ヒット&通算6週目のベスト3ヒットに。M!LKは「好きすぎて滅!」も5位から4位にランクイン。動画再生回数は「爆裂愛してる」に譲る形で2位にダウン。一方、カラオケ歌唱回数は4週連続通算5週目の1位獲得となっています。これでベスト10ヒットは連続19週に。

3位には吉本興業所属の男性アイドルグループOWV「ROCKET MODE」がランクイン。CD販売数2位、ラジオオンエア数9位。オリコンでは初動売上5万枚で2位初登場。前作「BLACK CROWN」の初動4万1千枚(1位)からアップしています。

続いて4位以下での初登場盤ですが、こちらもアイドル系が初登場。まず9位ですがCLASS SEVEN「心にキスをした」が初登場。TOBE所属の男性アイドルグループ。CD販売数7位、ラジオオンエア数2位。前作に引き続き、CDはTOBE公式通販限定販売のため、オリコンではランキング圏外となっています。

そして10位にはBTS「2.0」が、ランクイン3週目にしてベスト10入り。ストリーミング数8位、動画再生回数3位。先日リリースされたアルバム「ARIRANG」収録曲。

そんな感じでアイドル系の初登場が今週も目立ちますが、一方、ロングヒット曲の奮闘も目立ちます。

まず米津玄師「IRIS OUT」は7位から5位にアップ。ストリーミング数はここに来て3位から2位にアップ。動画再生回数も5位から4位にアップ。これでベスト10ヒットは30週連続に。ダウントレンドだった先週から巻き返す結果となりました。

King Gnu「AIZO」も、先週から同順位の6位をキープ。こちらも通算13週目のベスト10ヒットに。ただ、こちらはストリーミング数が2位から3位に、動画再生回数も6位から8位にダウンしています。

さらにMrs.GREEN APPLE「lulu.」も先週から同順位の8位をキープし、しぶとい人気を見せつけています。ストリーミング数は先週から5位と同順位をキープ。こちらもベスト10ヒットを13週連続に伸ばしています。

今週のHot100は以上。明日はHot Albums&Heatseekers&ボカロチャート!

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2026年4月14日 (火)

爽やかさとヘヴィネスさが絶妙にブレンド

Title:Singin'to an Empty Chair
Musician:Ratboys

今回紹介するのはアメリカはシカゴ出身のインディーロックバンド。ギターボーカルのジュリア・スタイナーと、彼女のパートナーのギタリスト、デイヴ・サガンによって結成され、現在は4人組バンドとして活動しているRatboysの6枚目となるアルバム。デビューが2015年なので、そろそろ中堅のバンドなのですが、今回、はじめてアルバムを聴きました。

楽曲としてはオルタナ系のギターロックにカントリーの要素を加えた楽曲で、カントリーらしい爽やかでサウンドに、ノイジーで、ちょっとヘヴィネスさもあるギターサウンドのバランスがちょうどよい感じ。さらにボーカルのジュリア・スタイナーのボーカルと歌が清涼感あって、ポップで心地よいメロディーラインを楽しむことが出来ます。アルバムの冒頭を飾る「Open Up」はまさにそんなタイプの曲で、最初は爽やかなカントリー風の曲調からスタートし、後半はここにノイジーなギターサウンドが加わる展開。比較的シンプルでポップなギターロックに仕上がっており、非常にポピュラリティーのある作風となっています。

全体的にとてもポップで聴きやすいアルバムという印象。ジュリア・スタイナーのボーカルはキュートでインパクトもあって、メロディーラインは至ってポップ。爽やかなサウンドをベースとしつつ、ノイジーなギターサウンドがほどよいヘヴィーさがスパイスとなっています。特に「Anywhere」など疾走感あるポップでキュートなメロがインパクトがあって、ともすればJ-POP的にすら感じてしまいます。

ミディアムポップの「The World,So Madly」もメロディアスでキュートな印象が強い作品ですし、「What's Right?」も軽快なポップチューンでメロディーにインパクトも。いい意味で広いリスナー層に聴きやすいポップロックなナンバーに仕上がっているような印象を受けます。一方、ミディアムチューンの「Strange Love」などはよりカントリー色の強い印象。「Burn It Down」もブルージーなギターをしっかりと聴かせて、泥臭さのあるカントリーロックになっており、バンドとしての音楽性の広さを感じさせます。

一方、ポップなイメージのサウンドやメロディーと異なり、歌詞は人間関係の断絶や誤解がテーマとなっているそうで、意外とヘヴィーさがある点も特徴のひとつ。「Open Up」は歌詞を直訳すると「心を開いて」となるのですが、タイトル通り、「心を開くには何が必要?」と問いかけるような内容。「Always」などでは歌詞に適用障害という単語まで登場する、かなりヘヴィーなラブソングとなっています。ポップで爽やかなメロとサウンドとは裏腹な、意外とヘヴィーな歌詞も、このバンドの魅力であると言えるでしょう。

ただ、ここらへんの英語詞は、日本人である私たちにはストレートにわからないという点はマイナスであり、かつ、純粋にポップなメロを楽しむためにはプラスの要素にもなるかもしれません。とにかく、ポップでキュートなメロと、爽やかながらもヘヴィネスさもあるサウンドの組み合わせが絶妙かつ非常に魅力的。個人的には今年のベスト盤候補の1枚と言っていいかも。インディーロック好きやオルタナロック好きはもちろん、広いリスナー層にお勧めできる傑作でした。

評価:★★★★★


ほかに聴いたアルバム

Marty Supreme(Original Soundtrack)/Daniel Lopatin

普段はOneohtrix Point Neverの名前で活躍しているミュージシャンが、本名名義でリリースした作品は、3月より日本でも公開している映画「マーティ・シュプリーム 世界をつかめ」のサントラ盤。彼らしいちょっとドリーミーで、80年代っぽさも感じるエレクトロの楽曲が並びます。映画は見ていないのですが、1950年代を舞台とした映画だそうで、そこにこういう、50年代基準では近未来的なサウンドを取り入れるというアンバランスなユニークさを感じます。映画のサントラということで、1曲あたりは短く、ワンアイディアで曲を構成されている感じですが、彼らしさはしっかりと感じられるため、Oneohtric Point Neverが好きならばチェックしておきたい作品でしょう。

評価:★★★★

Oneohtrix Point Never 過去の作品
Age of
Magic Oneohtrix Point Never
Again
Tranquilizer

Everybody's Gotta Learn Sometime/BECK

BECKのアルバムは8曲入りのコンピレーション。基本的に8曲中7曲はカバーで、オリジナル曲は「Ramona」1曲のみ。カバー曲も既発表の曲が多く、どちらかというと企画盤的な内容となっています。カバーの方はエルヴィス・プレスリーやジョン・レノンから、ブラジル音楽の巨匠Caetano Velosoまで幅広い内容なのですが、全体的にフォーキー、ブルージーにメランコリックに聴かせる作風が多く、統一感ある内容に。派手なカバーはありませんが、これはこれでBECKのひとつの魅力を感じさせるアルバムになっていました。

評価:★★★★

BECK 過去の作品
The Information
Mordern Guilt
Morning Phase
COLORS
Hyperspace

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2026年4月13日 (月)

ヘヴィーなノイズを展開するが、リズミカルなエレクトロに聴きやすさも

Title:URGH
Musician:Mandy,Indiana

イギリスのマンチェスターで結成し、マンチェスターとベルリンを拠点とする4人組のエクスペリメンタル・ロックのよる2作目のバンド。ボーカルのバレンタイン・コールフィールドはパリ出身のため、使われている言語はフランス語。イギリス、フランス、そしてドイツと、ある意味、ヨーロッパをまたにかけているバンドということになります。グローバルな・・・と言ってしまうにはヨーロッパだけ、なのですが。

基本的にノイズやインダストリアルを前に押し出しているバンドなので、決して取っつきやすい訳ではありません。このアルバムも、冒頭を飾る「Sevastopol」はヘヴィーなノイズミュージックであり、決して万人受けするようなタイプの音ではありません。ただ、まずは聴きやすさを感じ、楽曲としてのインパクトを感じるのは続く「Magazine」。中盤からリズミカルなエレクトロビートが入ってきており、テクノやある意味、ビッグビートの色合いが強いナンバーに。Prodigyあたりが好きな人なら楽しめそうな感じで、いい意味での聴きやすさを感じる人も多いのではないでしょうか。

そして、一度、彼らのノイズ混じりのダイナミックでロッキンなビートに慣れると、そこからは非常に心地よい世界が待っています。ポエトリーリーディング気味のボーカルが力強い「try saying」、ダイナミックでヘヴィーなノイズを聴かせる「Life Hex」も、後半にはテンポよいエレクトロビートが楽しめます。

後半の「ist halt so」はヘヴィーなバンドサウンドをバックにラップが展開されるHIP HOP色の強いナンバー。さらに続く「Sicko!」では最近話題のラッパーbilly woodsが参加。ここらへんはHIP HOPのテイストの強い楽曲が続きます。かと思えば終盤の「Cursive」はリズミカルなエレクトロトラックが主導となるテクノ色の強いナンバーに。比較的、軽快な楽曲となっており、「ポップス」さも感じさせる曲になっています。

ちなみに前述の通り、ボーカルのバレンタイン・コールフィールドはフランス語が母語のため、歌は基本的にフランス語によるもの。海外のレビューコメントでは「フランス語であることが壁に感じる」とネガティブなコメントもついているようですが、それは我々日本人がいつも洋楽に関して感じることだよ・・・と思いつつ、ただ、フランス語の独特の響きもまた、バンドの味になっているような感じがします。ヘヴィーでとげとげしさを感じるバンドサウンドに対して、まろやかで丸みを帯びた印象を受けるフランス語とのバランスがユニークに感じました。

ヘヴィーでインダストリアル、ノイズも混じった楽曲は最初、聴きにくさもありますが、テクノ、ビッグビートの影響も感じるリズミカルなエレクトロサウンドはポップで聴きやすく、ダイナミックなロックサウンドも加えて、慣れていくと非常に癖になるような、完全にはまってしまうバンドだと思います。NINE INCH NAILSあたりのインダストリアル好きはもちろん、Prodigyあたりが好きな方でもお勧めできそうなアルバム。私もついついはまってしまった傑作でした。

評価:★★★★★

Mandy,Indiana 過去の作品
i've seen a way


ほかに聴いたアルバム

private music/Deftones

こちらは2025年ベストアルバムを後追いで聴いた1枚。こちらは「rockin'on」誌のベストアルバムで第〇位に入ったアルバム。アメリカのオルタナティヴ・メタル・バンドによる約5年ぶり10作目となるアルバム。「メタルバンド」というイメージが強かったので、いままでDeftonesについてはあまり聴いてきておらず、今回はじめて聴いた作品となるのですが、メタリックなサウンドを取り入れつつも、ノイジーなギターサウンドはオルタナ系の影響も色濃く感じられ、個人的には思ったよりも楽しめたアルバムになっていました。メランコリックなメロディーラインも耳なじみやすく、良い意味で聴きやすさも感じさせるアルバムとなっています。

評価:★★★★

hickey/Royel Otis

こちらも2025年ベストアルバムを後追いで聴いた1枚。こちらも「rockin'on」誌のベストアルバムで第〇位に入ったアルバム。てっきり男性ソロシンガー・・・かと思っていたのですが、オーストリア出身のロイエル・マッデルとオーティス・パブロビックによるデゥオだそうです。シンセも入りつつ、メランコリックでメロディアスなオルタナ系のギターロックな作品。いい意味で王道のストレートな感じのポップチューンになっており、気持ちよく楽しむことが出来ました。2月に初の単独来日公演が行われましたが、今後、日本での人気も高まりそう。

評価:★★★★★

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2026年4月12日 (日)

今度はクラシックの名盤100

今回は最近読んだ音楽関連の書籍の紹介です。

イースト・プレスから出版された「クラシック名盤100」。著者はクラシック音楽評論家の許光俊となります。本書はイースト・プレスから出版されている「名盤100」シリーズの最新作。いままで、「日本語ラップ名盤100」「ヒップホップ名盤100」「20世紀ジャズ名盤100」を紹介してきましたが、そのシリーズの第4弾となります。

この手の名盤ガイドというと、通常は初心者向けに書かれたものになるのですが、このイースト・プレスから出版されている「名盤100」シリーズは、一般的なそのジャンルの名盤とはちょっと異なる、一癖のある作品を紹介しており、素直に初心者がこの名盤ガイドに沿って聴き始めると、良くも悪くも、ちょっと異なる道に迷い込んでしまうような、そんなガイドになっていました。

そのため、この「クラシック名盤100」についても、一般的に初心者が最初に聴くべき名盤が収録されている・・・かどうかは、正直なところ、クラシック音楽にさほど知見がないためわかりません・・・。ただ、紹介されている曲に関して言えば、ヴィヴァルディの「四季」やモーツァルトの「トルコ行進曲」、ベートーベンの「運命」などといった、定番中の定番が並んでいます。ただ、もっともクラシック音楽にとっては、楽曲自体に加えて、指揮者やオーケストラ、演奏家なども重要な要素。そういう観点からは、本作で紹介されているアルバムが、王道を行くようなセレクトなのか、ちょっとひねったセレクトなのかはわかりません・・・。

一方で、本書に書かれた紹介文の方は、初心者向けで非常にわかりやすかったように感じます。著書の許光俊は、以前、「はじめてのクラシック音楽」という著書をここまで紹介しましたが、かなり癖のある物言いのする評論家。もちろん、それはそれで彼の魅力とも言えるのですが、一方、好き嫌いはわかれそうな感じはします。実際、「はじめてのクラシック音楽」でも、カラヤンや小澤征爾といった、おそらくクラシック初心者でも名前くらい聞いた事ある程度に有名な指揮者をケチョンケチョンに悪く言っています。

ただ、本書に関しては、彼の文章は非常に読みやすかったように感じます。もともと、「はじめてのクラシック音楽」でも平易な文章は書いていたのですが、この手のクラシック本にありがちな、音楽性に言及する難易度の高い物言いは皆無。かといって、よく書店に並んでいる「クラシック音楽入門」みたいな音楽の教科書にそのまま出てきそうな程度の、表面をさらっとなぞる程度の浅い表現にもなっておらず、そういう意味では、「よくわかるクラシック名曲集」みたいな感じの、10枚組で3,000円くらいで売っていそうな、クラシックのよく知られた曲の有名な部分だけを集めたようなアルバムを卒業して、指揮者やオーケストラを基準に、クラシックの名盤を聴いてみよう、と心がける、「入門」の次の段階にはうってつけの名盤集になっているようにも感じます。特に「関連盤」としては、同じ楽曲の、他の指揮者、演奏家によるアルバムを紹介しており、「聞き比べ」も出来るような紹介方法をとっていました。

率直なところ、私自身も完全にクラシック音楽の初心者であるがゆえに、本書が本当に初心者向けなのか、またここで紹介されているアルバムが、一般的にどの程度の評価を受けているのか、正確なところはわかりません。ただ、初心者としても、読んでいて、本書を参考にいろいろと聴いてみたいな、と思わせるような1冊だったと思います。クラシック音楽に興味がある方は、チェックして損はない1冊ではないでしょうか。いろいろと参考になりそうな1冊でした。

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2026年4月11日 (土)

10代兄妹のバンドによる注目のデビューアルバム

Title:Wasted On Youth
Musician:The Molotovs

基本的にヒットチャートは、日米英のチャートを毎週チェックしているのですが、イギリスのヒットチャートはアメリカのビルボードと比べ市場が小さいため、アメリカに比べてバラエティー富んだミュージシャンたちがチャート上位に顔をのぞかせることが少なくありません。特に、ロックバンドについてはアメリカに比べて、まだまだロックの人気が高いため、おもしろいバンドがいきなりチャート上位にランクインしてくることも少なくありません。

今回紹介するバンドThe Molotovsも、そうやってイギリスのアルバムチャートをチェックしている中で見つけたバンドのひとつ。10代の兄妹、マシュー・カードリッジとイッセイ・カードリッジによる2人組バンドとなっています。異性の兄弟による2人組バンドと言えば、ご存じThe White Stripesを思い起こさせますが、こちらはおそらく本当の兄弟ではないかと思われます、多分。もともと2020年に結成。ただこの時は、例のCOVID-19によるパンデミックが起こり、イギリスでもライブハウスが軒並み閉鎖されたそうで、その影響で当初は路上や公園などでライブを行い、徐々に腕を磨き、The LibertinesやIggy Popのオープニングアクトに起用されるなど大きな話題を呼びました。そして2025年にマーシャル・レコードと契約。このレーベル、あの伝統的なアンプメーカーのマーシャルが2016年に立ち上げたレコードレーベルだとか。そして、デビューアルバムである本作が今年の1月にリリース。イギリスの公式チャートでいきなり3位を記録するなど、大ヒットとなっています。

そんな彼らの奏でるロックは、一言で言えば非常にストレートなパンクロック。アルバムの1曲目「Get A Life」は、いきなり「OK」というキューの音がそのまま入っているあたり、音源の一発録りのライブ感を意識したような感じになっていますし(本当に一発録りなのかはわかりませんが)、The JAMあたりを彷彿とさせる、イギリスの伝統的な、とも言えるストレートなパンクロックが展開するような作品となっています。

デビューシングルともなっていた「More More More」も3曲目に収録。こちらもかなりストレートで心地よい、ガレージロックの色合いも感じさせるストレートなロックチューン。メロディーラインもポップな感があり、デビューシングルだからこそ、The Molotovsらしさを表現した作品となっています。

そんな感じでストレートなロックナンバーが11曲つまったこのアルバム。それで全32分、1曲あたり3分弱という長さもまた、シンプルなパンクロックらしい好印象を受ける構成で、最後まで一気に聴ける内容となっています。ただ、おもしろいのは前述の通りのパンクロック、あるいはガレージロックをストレートに表現するロックチューンだけではなく、微妙に雑食性も感じさせる部分が顔をのぞかせている点。例えば2曲目の「Daydreaming」など、イントロのギターから完全にoasisの影響も感じられます。出だしの歌い方や、その後の節回しも完全にoasisって感じで、ちょっとストレートすぎない?と思ってしまう点も。

また、中盤の「Come On Now」のヘヴィーなギターリフも、パンクロックというよりはむしろハードロックからの影響を感じさせますし、中盤から後半にかけてのナンバー、例えば「Newsflash」あたりはむしろGREEN DAYあたりを彷彿とさせるメロパンク系の楽曲になっています。一方、中盤に配置された「Nothing Keeps Her Away」などはアコギでメランコリックに聴かせるナンバーとなっており、アルバムの中のチルアウト的なナンバーとしてちょうどよいインパクトも。また、ラストの「Today's Gonna Be Our Day」は軽快なロックンロールの色合いも強いナンバーとなっており、彼らの雑食性を感じさせる構成となっています。

ただ、全体的には軽快なパンクロックバンドで統一されており、勢いもあって最後まで一気に楽しめる楽曲。正直言うと、シーンを切り開くような圧倒的な目新しさ、みたいなのはちょっと欠ける部分はありますし、メロディーラインのインパクトという点でもちょっと物足りなさを感じる部分もありました。この手のロックバンドはいかにも日本人好み・・・というよりは、日本のロック系メディア好みなのに、さほど大きく盛り上がっていないのは、国内盤がリリースされていないから、というビジネス上の事情もありつつ、もろ手あげて大絶賛するには躊躇するような要素もあるからかもしれません。

しかし、気になる点はありつつも、やはりこのシンプルでストレート、なによりも勢いのあるパンクロックは実に魅力的。ライブもかなり盛り上がりそうだし、ロック好き、特にパンクロックやガレージロックが好きな層にはストレートにぶっささりそうなアルバムだと思います。ちなみにバンド名の「Molotov」とは、ソ連の政治家から名前をとった火炎瓶のことで、ここらへんのロックらしい、でも微妙にベタな命名センスもまたいい感じ。間違いなく、これからに期待したいロックバンドです。

評価:★★★★★


ほかに聴いたアルバム

Janji/Dayang Nurfaizah

Janji

2025年ベストアルバムで聴き逃していたアルバムを後追いで聴いた作品。本作は「Music Magazine誌」の「ワールドミュージック」部門で8位にランクインした1枚。1999年にデビューしたマレー語のポップスシーンを代表する女性シンガーによるアルバム。バラードを中心にしんみりと歌い上げるスタイルが特徴的で、楽曲的にはむしろ日本のムード歌謡曲にすら近い感じの哀愁たっぷりに聴かせるスタイル。ただし、途中、今風のR&Bな楽曲も聴かせてくれており、ベテランらしい、包容力あるボーカルにバリエーションの富んだ作品を聴かせてくれています。

評価:★★★★

Dayang Nurfaizah 過去の作品
BelaguⅡ

ESPERANSA(邦題 エスペランサ~希望~)/Nancy Vieira&Fred Martins

こちらも2025年ベストアルバムで聴き逃したアルバムを後追いで聴いた作品。本作も同じく「Music Magazine誌」の「ワールドミュージック」部門で10位を獲得したアルバム。カーボ・ヴェルデ出身の歌手、Nancy VieiraとブラジルのシンガーでギタリストでもあるFred Martinsによるデゥオ。カーボ・ヴェルデとブラジルの音楽性を取り入れつつ、他にもキューバやポルトガルなど様々な国の音楽を取り入れた作品。また「Saiko Dayo」という作品は、1970年代に日本のマグロ漁船がカーボ・ヴェルデに寄港した時に日本人が口にした言葉を元にしているなど、まさにワールドワイドな作品となっています。全体的にはブラジルのボサノヴァなどの影響を感じさせる、メロウで優しい雰囲気のポップが流れる作品で、いい意味で広い層に聴きやすい、暖かいポップチューンが流れる作品となっています。世界には素晴らしい音楽があふれていることを感じさせる1枚です。

評価:★★★★★

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2026年4月10日 (金)

若干、テーマ設定がわかりにくいが・・・。

TM NETWORK TOUR 2026 QUANTUM

会場 愛知県芸術劇場 大ホール 日時 2026年4月2日(木) 19:00~

2024年に行ったライブ以来、ちょうど2年ぶりにTM NETWORKのライブに足を運んできました。今回は名古屋の愛知県芸術劇場。会場は満員。私は先行予約だったにも関わらず、5階席の後ろの方という、ほぼ最後尾。芸術劇場は何度も足を運んできたのですが、5階席ははじめて。ステージ全体は見渡せるのですが、さすがに遠い・・・。

ライブはちょうど19時にスタート。最初は「RESISTANCE」からスタート。メンバー3人はいずれも真っ白い服に身を固め、「RESISTANCE」はアコースティックなアレンジで聴かせてくれます。ステージ上はグランドピアノが設置され、小室哲哉はピアノでの演奏。木根尚登はアコギを惹いての演奏となりました。

さらに、「DON'T LET ME CRY」へと続き新曲「We Can't Stop That Way」へ。その後、スクリーン上にメッセージが。「QUANTUM=量子」と名付けられた今回のツアーのテーマは「量子のもつれ」だそうで、量子のもつれの説明がされていたのですが、これ、作っている人、ちゃんと理解してテーマ設定したのかな?という疑問はふつふつとわいてきました(笑)。まあ、あくまでも「イメージ」なんでしょうが。

その後はインスト曲が続きますが、このライブツアーで披露された新曲「組曲 QUANTUM」だそうです。続く「RUN THROUGH THE NIGHT」は、木根尚登ボーカルでウツがアコギという珍しい編成での曲をしんみり聴かせ、その後は「Human System」へ。感情たっぷりのナンバーで、個人的にも大好きな楽曲なのでしんみり聴き入ります。

「TIMEMECHINE」とまた懐かしいナンバーから「組曲 Major Turn Round」でインスト曲を聴かせ、「FOOL ON THE PLANET」へ。ここらへんは聴かせる曲が続きます。続く小室哲哉のソロパートでは、小室哲哉のボーカルパートもあり、珍しく小室哲哉の歌声を聴けるシーンとなっていました。

ここからライブは後半戦へ。「BEYOND THE TIME~メビウスの宇宙を越えて~」から「Kiss You」へ。ここでウツはマリリン・モンローの絵が描かれたジャケットを着て登場。このジャケット、「Kiss You」のMVで使われたものだそうで、会場からは歓声があがります。そして、さらに「Get Wild」へ。ここではバックのスクリーンに当時のMVが流れ、昔の映像と、今の彼らがリンクするという演出が。ここらへんは「量子のもつれ」を意識したのでしょうか??

さらに、ここで今度は木根尚登がグランドピアノの演奏を披露。一度バックに下がったウツが再び戻ってくると、なぜか名古屋市のキャラクター、はちまるのぬいぐるみとダンシングフラワーをもって登場。この2つをグランドピアノの上に置くと、「You Can Dance」へ。アップテンポなダンスナンバーで盛り上がります。ラストは「CUBE」で締めくくり。最後はメンバー3人がステージ前で挨拶をして締めくくり。メンバーが去ると、スクリーンにはエンディングのメッセージとクロージングが流れ、最後の最後に新曲を作るというメッセージも。うれしいサプライズでライブは幕を閉じました。

終了はほぼ21時。今回もTMらしい、時間通りのスケジュールでのライブとなっていました。今回も、懐かしいナンバーもたくさん聴けたし、特に終盤は盛り上がりましたし、とても楽しい時間を過ごせたライブでした。また、サポートメンバーが入っていた前回のライブと異なり、今回は3人のみのステージ。特に小室哲哉と木根尚登がお互いの持ち場を入れ替わって演奏したり、ウツがアコギを弾いたりと、3人のみだからこそのパフォーマンスも見どころだったように感じます。

ただ、途中の組曲のパートは、ミディアムテンポの聴かせる曲が多く、また正直なところ、小室哲哉のインスト曲であまりおもしろい曲がないので、ちょっと中だるみしてしまった感も・・・。また、「量子のもつれ」というテーマ設定が、わかりにくなったような感じもしました(というか、テーマ設定した本人が本当にわかっているのかも疑問・・・)。

まあ、そんな気になる点はあったものの、全体的にはやはりとても楽しいステージだったのは間違いありません。また近いうちに新曲も聴けそうですし、また是非、TM NETWORKのライブ、足を運びたいです!

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2026年4月 9日 (木)

3週連続の1位獲得

今週のHot Albums

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これで3週連続の1位獲得となりました。

今週1位はBTS「ARIRANG」が先週に引き続いての、これで3週連続1位を獲得です。CD販売数は3位から4位にダウンしましたが、ダウンロード数2位、ストリーミング数1位は先週から変わらずとなります。

2位はNiziU「GOOD GIRL BUT NOT FOR YOU」が獲得。CD販売数1位、ダウンロード数11位。2枚目となるEP盤。オリコン週間アルバムランキングでは初動売上19万2千枚で1位初登場。前作のフルアルバム「New Emotion」の初動17万1千枚(1位)からアップしています。

3位はHANA「HANA」が先週と同順位でランクイン。ストリーミング数は3週連続で2位を獲得しています。

4位以下の初登場盤では8位にYe「BULLY」がランクイン。ストリーミング数で7位獲得。こちら、アメリカの人気HIP HOPミュージシャン、カニエ・ウェストの現在の名義。カニエ人気はもちろん、RADWIMPS野田洋次郎が参加したことが話題になった影響でしょう。カニエは過去に反ユダヤ的な発言を行ったり、ヒトラーを礼賛するような曲を作ったりと、問題となる言動を多く行っています。最近、日本移住が噂されているそうで、よく来日しているそうですが、ここらへんの発言でアメリカにいられなくなりつつある、という要素も大きい模様。そんな中、野田洋次郎が嬉々として参加しているのは、まあ、ミュージシャンとしてはカニエに声をかけられたら参加するよね、というのはあるし、実際、アメリカでもトラビス・スコットやらローリン・ヒルやらカニエの作品に参加するミュージシャンは今でも多いようですが、それにしても、参加に関して少しはエクスキューズが合ってもよいのでは?とは思ってしまいます。

ロングヒット盤では「超かぐや姫!」が7位から5位にアップ。これで9週連続のベスト10ヒット。King&Prince「STARRING」も8位から7位にアップ。こちらは15週連続のベスト10ヒット。XG「THE CORE-核」は先週から同順位の9位をキープ。こちらは11週連続のベスト10ヒットとなっています。


今週のHeatseekers Songs

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今週もクレイジーウォウウォ!!「トンツカタンタン」が2週連続の1位獲得。これで通算4週目の1位獲得となりました。ちなみにHot100では88位から80位にアップ。若干盛り返しています。


今週のニコニコVOCALOID SONGS

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今週1位はOmoi「スパイラル・メロディーズ」が先週の10位からランクアップし、チャートイン4週目にして初の1位獲得。ポケモンと初音ミクのコラボ企画「ポケモン feat. 初音ミク Project VOLTAGE 18 Types/Songs High↑」から生まれた曲となります。2位はカラスヤサボウ「たびだちのうた」が先週の6位からランクアップ。こちらも同じコラボ企画から生まれた曲。3位も同じくポケモンとのコラボ企画から、kz×TAKU INOUE「クロスロード」が、こちらは先週の2位からワンランクダウンとなっています。今週、ベスト3にポケモンとのコラボ曲が並びましたが、こちらは3月20日から22日に、同企画のイベント「ポケモン feat.初音ミク VOLTAGE Live!」が開催された影響と思われます。

今週のHot Albums&Heatseekers&ボカロチャートは以上。チャート評はまた来週の水曜日に!

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2026年4月 8日 (水)

アイドル系の新譜が目立つ

今週のHot100

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今週もアイドル系が目立つチャートとなりました。

まず1位は=LOVE「劇薬中毒」が獲得。元AKB48の指原莉乃プロデュースによる声優アイドルグループ。CD販売数1位で、その他はランク圏外ながらも総合チャートでも1位獲得。オリコン週間シングルチャートでは初動売上36万枚で1位初登場。前作「ラブソングに襲われる」の初動33万枚(1位)からアップ。

2位はavex所属の男性アイドルグループSTARGLOW「USOTSUKI」がランクイン。CD販売数3位、ダウンロード数2位、ラジオオンエア数1位。オリコンでは初動売上2万8千枚で3位初登場。前作「Star Wish」の初動4万2千枚(1位)からダウン。

3位はM!LK「爆裂愛してる」が先週の2位からダウン。ストリーミング数が3週連続の1位を獲得し、これで8週連続のベスト10ヒット&通算5週目のベスト3ヒットとなりました。ちなみに「好きすぎて滅!」もワンランクダウンながらも5位にランクイン。動画再生回数は2週連続、カラオケ歌唱回数は3週連続通算4週目の1位獲得。これで18週連続のベスト10ヒットとなっています。

4位以下の初登場曲では、まず9位にHANA「Bad Girl」がランクイン。Apple「グループセルフィーをiPhone 17 Proで」キャンペーンソング。いままでの彼女の曲とは異なりロック調の曲になっています。ダウンロード数及びラジオオンエア数が7位、ストリーミング数及び動画再生回数が9位。ただ一方、「Blue Jeans」は今週13位にダウン。ベスト10ヒットは通算33週で再びストップしています。

10位にLDH所属の男性アイドルグループKID PHENOMENON「Mirror」がランクイン。CD販売数2位。オリコンでは初動売上4万4千枚で2位初登場。前作「Black Flame」の初動4万5千枚(3位)より微減。

ロングヒット曲では、King Gnu「AIZO」がここに来て8位から6位とランクアップ。特にストリーミング数が5位から2位に大幅にアップしています。これで通算12週目のベスト10ヒットとなります。

一方、米津玄師「IRIS OUT」は5位から7位にダウン。ストリーミング数は今週2位から3位にダウン。一方、動画再生回数は6位から5位にアップ。これで29週連続のベスト10ヒットとなりましたが、このままじり貧となるか、再度の巻き返しがあるか??

Mrs.GREEN APPLE「lulu.」も6位から8位にダウン。ストリーミング数は4位から5位にダウン。一方、ダウンロード数は12位から9位にアップしています。これでベスト10ヒットは12週連続となりました。

そんな訳で、アイドル系が目立った今週のチャートでしたが、そんな中、嵐「Five」は9位から14位にダウン。ベスト10ヒットはわずか4週で終了となりました。現在、ラストライブツアー中の彼らで、各地でそれに伴う混雑ぶりも大きな話題となっていますが、ただ、この売上の結果から考えると、ファンの間では盛り上がっているものの、それ以外への波及は限定的で、やはり今話題のM!LKやHANAなどと比べると「過去のアイドル」となってしまった感は否めません・・・。

今週のHot100は以上。明日はHot Albums&Heatseekers&ボカロチャート!

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2026年4月 7日 (火)

横山剣の思い出がたっぷり語られる昭和歌謡の評論本

今回は最近読んだ音楽関連の書籍の紹介です。

ご存じ、クレイジーケンバンドのボーカリスト、横山剣が、昭和歌謡曲の名曲を紹介する「昭和歌謡イイネ!」。週間ポストで2022年から2025年にかけてコラムとして掲載されたものをまとめた1冊となります。今年2026年は昭和元年から起算し、ちょうど「昭和100年」にあたる年。その影響もあってか、昨年あたりから、昭和歌謡曲をテーマとして紹介する書籍が多く出版されています。ただ、そんな中でも本書を書いた横山剣と言えば、彼が率いるクレイジーケンバンドは、昭和の歌謡曲的要素を楽曲に取り入れているバンドとして知られ、特に昭和歌謡曲の再評価の嚆矢的なバンドとも言えるバンド。それだけに、彼が語る「昭和歌謡」に興味を抱き、この本を読んでみました。

基本的に本書に紹介されている「昭和歌謡曲」は、あくまでも横山剣自身がピックアップしたものであり、彼の思い入れのある楽曲が紹介されています。本書では発売順に紹介されているのですが、美空ひばりの「お祭りサンボ」からスタートし、「ブルー・ライト・ヨコハマ」や「喝采」など、この手の書籍に大抵紹介されるような歌謡曲の王道を紹介。一方ではイエロー・マジック・オーケストラの「ライディーン」やプラスチックスの「トップ・シークレット・マン」など、昭和の曲ながらも、歌謡曲の範疇からは外れそうな曲も取り上げられています。さらにユニークなのは、「11PMのテーマ」や「ウルトラセブンの歌」、「マッハGoGoGo主題歌」などといった曲も紹介。横山剣の思い入れのある曲が多岐にわたって紹介されています。逆に、彼の好みではなかったような曲はあまり紹介されておらず、特に顕著なのがフォーク系で、完全に彼の好みから外れているようで、ほとんど取り上げられていない他、ロック系も、彼が所属していたクールスや矢沢永吉近辺が多く取り上げられている一方、RCサクセションは取り上げられておらず、はっぴいえんど近辺もYMOや大瀧詠一近辺は取り上げられている一方、細野晴臣は取り上げられておらず、ここらへん、彼の趣味性が多く反映された選曲となっていました。

そんな少々癖のある選曲にはなっているのですが、ただ、これが読んでいて非常におもしろい内容になっており、読んでいる手が止められないような内容でした。横山剣の文章自体、とても軽快な文章でありつつ、軽薄になりすぎない読みやすい文章だったのもあるのですが、全体的に、横山剣の自叙伝を読んでいるような、彼のこれまでの思い出を反映させた文章がとても印象的な内容になっています。

基本的に歌謡曲の紹介なのですが、文章の主体となっているのは、横山剣の曲に関する個人的な思い出がメイン。もちろん、楽曲自体の簡単な紹介や、プロならではの曲の分析もあるのですが、これを読んでいると、楽曲自体よりも、むしろ横山剣個人のこれまでの歩みについて印象に残るような内容になっていました。

要するに、歌謡曲を使って「自分語り」をしている訳で、これが凡百の音楽ライターがこれをやってしまうと(某ロケノン系みたいに)不快感の残るレビューになってしまうのですが、横山剣のこれまでの人生自体がとても洒脱であり、読んでいて惹かれてしまいます。もともと彼は、父親がTBSに勤めていたりして、芸能関係とは比較的近い環境に育った上、高校はかの堀越高校(一般コースらしいのですが)。さらに高校中退後はちょっと不良になっていたようですが、横浜近郊で自由気ままに遊んでいたようで、芸能界の華やかな世界とも近い、都会的な生活をしていたようで、それだけに曲に関する思い出も、独特で、ちょっとうらやましくなるような都会的なキラキラ感のあるエピソードも多く、それだけでも読んでいて楽しくなってきました。

また、本書では特別対談として、昭和歌謡を彩って来た人達との対談が組まれているのですが、堀越高校出身の岩崎宏美、浅野ゆう子とは、まさに「同じ高校出身」らしいトークが繰り広げられており、こちらも横山剣ならではの対談となっています。とても読み応えのある対談でした。

まさに横山剣しか書けないような「昭和歌謡曲」の評論となっており、おそらく昭和歌謡曲に直接興味がなくても楽しめる1冊だったと思いますし、クレイジーケンバンドが好きならば、昭和歌謡以上に横山剣の本として、必読の1冊だと思います。昭和歌謡に対してだけではなく、この本自体に対して「イイネ!」と言いたくなるような良書でした。


ただ、この本については、前述の通り、「良書」だと思うのですが、最近、この手の「昭和歌謡」を語る書籍に関して、強烈な違和感を覚えることが少なくありません。それは、この「昭和歌謡」として、いわゆるヒットチャートの中心で歌謡曲として人気となっていた曲と、例えば(本書でも取り上げられている)YMOや山下達郎や松任谷由実といった「ニューミュージック」や「ロック」で括られるような曲が、ともすれば「昭和歌謡」の一言で同一視されている点に、どうにも違和感を覚えます。この「ニューミュージック」「ロック」と呼ばれた、いわばサブカルチャー的な音楽は、ともすれば「アンチ歌謡曲」的に当時はリリースされたはずなのに、それも「昭和歌謡」と一緒にされて、ともすれば「現在の音楽」に対する批判にすら用いられている点には、疑問にも感じてしまいます。

この点、以前、本サイトでも紹介した、「演歌=日本の心」のような議論を実証的に検討し、その虚偽性を暴いたとして高い評価を受けた輪島裕介著「創られた『日本の心』神話」の中でも批判的に取り上げられており、「『歌謡曲』『昭和歌謡』といった言葉で、昭和四〇年代から昭和末期までの主流的なレコード歌謡をあたかも一つのジャンルとして括る」という「歴史の読み替え」は、「かつて『演歌』ないし『艶歌』という言葉で昭和三〇年代までのレコード歌謡をジャンル化したことと、ある種の類似性を持っており同程度のバイアスを含んでいる」と記載しています。要するに、本書の中で取り上げられている、「演歌=日本の心」というある種のバイアスにまみれた歴史を作り上げた構造と類似している、と指摘しています。

そういう意味で、確かに昭和時代のポップスは、非常に幅広く多様性があったのは間違いないと思うのですが、それを「昭和歌謡」という言葉で括ってしまうのは、ちょっとその時代のポップスを単純化しすぎてしまっているのではないか、という疑問は強く抱いてしまいます。本書では横山剣個人の好みが強く反映されているので、そこまで違和感は抱かなかったのですが・・・これが、昨今の「昭和歌謡」本に関して、私が強く疑念を抱いている大きな要因だったりします。変に単純な「昔はよかった」論に陥らないようにしたいものです。

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«m-floの「新たな一歩」とは言えないが・・・