両者の良さを上手く融合
Title:Step Into Paradise -LIVE IN TOKYO-
Musician:矢野顕子×上原ひろみ
ご存じ、日本を代表するシンガーソングライターの一人として数多くの名曲を世に生み出してきた矢野顕子と、同じく日本を代表するジャズピアニストとして、日本のみならず世界を股にかけて活躍を続ける上原ひろみ。もともと2004年にテレビの音楽番組での共演を通じて意気投合。いままで2枚のコラボアルバムをリリースしてきましたが、このたび、その第3弾がリリースされました。今回は2024年9月24日25日の2日間、東京オペラシティコンサートホールにて行われたレコーディングライブの模様を収録したもの。レコーディングライブということで音源リリースを前提としたパフォーマンスながらも、ライブとして臨場感あふれる演奏を聴かせてくれています。
20年にもわたって共演を続けているあたり、二人の相性の良さを感じるのですが、確かにこの演奏を聴いても2人の相性の良さが感じられます。大きな特徴として、2人ともフリーキーな演奏に共通項があります。上原ひろみも、もちろんジャズピアニストとして自由に鍵盤の上を行き来する自由な演奏が特徴的ですし、矢野顕子もまた、ピアノの演奏以上にその歌のスタイルはかなり自由度が高く、これでもかというほどフェイクを取り入れた歌を聴かせてくれています。
ある意味、同じ方向性のミュージシャンなのですが、一方で主戦場は上原ひろみはピアノ、矢野顕子はボーカルということで微妙に異なっているあたり、両者が激突しないで、お互い尊重しつつ曲を作り上げているという点でも相性がいいのでしょう。今回のアルバムでも、1曲目は矢野顕子の「変わるし」のカバーですが、矢野顕子のボーカルと、それと同じくらい主張する上原ひろみのピアノがしっかりとマッチしたコラボらしい曲に仕上がっています。
両者のコラボという意味でピッタリなのがそれに続く「げんこつアイランド」で、前半は、童謡「げんこつ山のたぬきさん」を矢野顕子流のアレンジで歌い上げており、一方、ハービー・ハンコックの「カンタロープ・アイランド」を取り入れ、こちらでは上原ひろみがフリーキーなピアノを力強く聴かせてくれています。ジャズと童謡というユニークな組み合わせもまた、このコラボならでは、といった感じでしょう。
「Just the Two of Us」のカバーもまた魅力的。こちらに関してはメロウな矢野顕子のボーカルも魅力的ですが、それ以上に上原ひろみが力強く美しいピアノプレイを聴かせてくれます。序盤の美しく歌うように聴かせるピアノも印象的ですが、特に後半に行くにつれて徐々に力強くなっていくピアノが印象的。彼女のピアノの魅力を存分に聴かせてくれます。
また終盤の「ラッパとあの娘」も印象的。朝ドラで話題となった笠置シヅ子のカバーで、おそらく朝ドラでの話題を意識した選曲と思います。矢野顕子のボーカルは、笠置シヅ子みたいに力強く歌い上げるタイプではないのですが、軽快にスウィングするそのスタイルは、笠置シヅ子とはまた異なる魅力がありますし、上原ひろみのスウィングするピアノも迫力たっぷり。矢野顕子と上原ひろみ流のカバーも笠置シヅ子に決して負けていません。
今回もまた相性の良さを感じさせる作品になっていましたし、さらにコラボが進むにつれて、より矢野顕子と上原ひろみのそれぞれの良さを上手く引き出したカバーに仕上がて来ているように感じます。今後もこのコラボは数多くの名演奏を聴かせてくれそう。これからの活躍も楽しみです。
評価:★★★★★
矢野顕子 過去の作品
akiko
音楽堂
荒野の呼び声-東京録音-
Get Together~LIVE IN TOKYO~(矢野顕子×上原ひろみ)
矢野顕子、忌野清志郎を歌う
飛ばしていくよ
JAPANESE GIRL - Piano Solo Live 2008 -
さとがえるコンサート(矢野顕子+ TIN PAN)
Welcome to Jupiter
矢野顕子+TIN PAN PARTⅡ さとがえるコンサート (矢野顕子+ TIN PAN)
矢野山脈
Soft Landing
ラーメンな女たち(矢野顕子×上原ひろみ)
ふたりぼっちで行こう
音楽はおくりもの
君に会いたいんだ、とても(矢野顕子・野口聡一)
上原ひろみ 過去の作品
BEYOUND THE STANDARD(HIROMI'S SONICBLOOM)
Duet(Chick&Hiromi)
VOICE(上原ひろみ featuring Anthony Jackson and Simon Phillips)
MOVE(上原ひろみ featuring Anthony Jackson and Simon Phillips)
Get Together~LIVE IN TOKYO~(矢野顕子×上原ひろみ)
ALIVE(上原ひろみ THE TRIO PROJECT)
SPARK(上原ひろみ THE TRIO PROJECT)
ライヴ・イン・モントリオール(上原ひろみ×エドマール・カスタネーダ)
ラーメンな女たち(矢野顕子×上原ひろみ)
Spectrum
Silver Lining Suite(上原ひろみ ザ・ピアノ・クインテット)
BLUE GIANT(オリジナル・サウンドトラック)
Sonicwonderland(上原ひろみ Hiromi's Sonicwonderland)
ほかに聴いたアルバム
こんなところに居たのかやっと見つけたよ/クリープハイプ
怖い怖い怖い怖い怖い・・・・・・このアルバムタイトルにジャケットのイラスト、完全にホラーかサスペンスで、主人公(もしくはヒロイン)が、敵から逃げ回り、なんとか物陰に隠れたところに敵がやってきて、敵が言うセリフとその時の「絵」ですよね、完全に。狙ったのかわかりませんが、どう考えてもこのアルバムタイトルとジャケットはホラーだ・・・。
といっても内容的にはいつものクリープハイプ。切なくも、現実を見据えたようなラブソングや、かなり皮肉めいた歌詞を尾崎世界観の一度聴いたら忘れられないハイトーンボイスで聴かせるギターロックというスタイル。良くも悪くもいつものクリープハイプといった感じで、いい意味で安定感はありますし、ちゃんとメロもインパクトを抑えています。ある意味、このジャケットとタイトルも彼ららしいといった感じもしますが。
評価:★★★★
クリープハイプ 過去の作品
吹き零れる程のI、哀、愛
クリープハイプ名作選
一つになれないなら、せめて二つだけでいよう
世界観
もうすぐ着くから待っててね
泣きたくなるほど嬉しい日々に
どうにかなる日々
夜にしがみついて、朝で溶かして
だからそれは真実
生きるとは/熊木杏里
ちょうど2年ぶりとなる熊木杏里のニューアルバム。メランコリックで爽やかなポップソングを聴かせるスタイルはいつも通り。今回の作品は、特にアレンジにシンセを入れたサウンドが特徴的で、ちょっといままでのフォーキーさは薄れた感もあります。一方、今回の大きな特徴は、タイトル通り「生きるとは」をテーマとしたちょっと重めの作風で、タイトル曲の「生きるとは」や「一度死んだぼくら」では、まさに「生」をテーマとした曲に。「地球から愛はなくならない」では「愛」をテーマにするなど、ちょっと重めな作風となっています。かと思えば、ちょっとコミカルさもある牛乳讃歌「牛乳サンキュー」なんかが飛び込んできたりして、アルバム全体が重くなりすぎないようにバランスを保っている感もあるのですが。しっかりと強いテーマ性を感じさせるアルバムでした。
評価:★★★★★
熊木杏里 過去の作品
ひとヒナタ
はなよりほかに
風と凪
and...life
光の通り道
飾りのない明日
群青の日々
殺風景~15th Anniversary Edition~
人と時
熊木杏里 LIVE “ホントのライブベスト版 15th篇" ~An's Choice~
なにが心にあればいい?
風色のしおり
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