2024年12月 7日 (土)

懐かしくも新しい2000年代にフォーカス

Title:Y2K!
Musician:Ice Spice

最近、アメリカで注目度が急速に高まっている女性ラッパーIce Spice。昨年リリースした「Like...?」は当サイトでも紹介しましたが、昨年はイギリスのシンガーソングライターPinkPanthernessとコラボした「Boy's a Liar Pt.2」がビルボードで3位、Nicki Minajとコラボした「Pincess Diana」が4位、さらには同じくNickiとコラボした「Barbie World」が7位と3曲がベスト10入り。一気に注目を集めました。

前作「Like...?」はEP盤でしたので、純然たるオリジナルアルバムとしては初となる本作。「Y2K」というタイトルは、ある一定以上の世代の方についてはちょっと懐かしさを感じさせる言葉ですが、彼女の誕生日である2000年1月1日にちなんでつけられた名前だとか。しかし、誕生日が2000年の1月1日というのはすごいですね・・・。

楽曲は、前作同様、全編、強いエレクトロビートがとにかく耳を惹く、リズミカルでダンサナブルなトラックがインパクト大。ちょっと不気味な雰囲気の「Phat Butt」からスタート。続く「Oh Shhh...」ではTravis Scottがゲストで参加。ただ、どちらかというとTravis Scott的な要素以上にIce Spiceらしさが前に出たような作品に。逆に同じくラッパーのGunnaが参加した「...Bitch I'm Packin'」ではトラップ色が強くなっており、こちらはゲスト側の影響でしょうか。

他にもメロディアスなフレーズが流れ、ポップに聴かせる「Did It First」や、ビートにトライバルな要素が加わった「Gimmie A Light」「GYAT」、どこかメランコリックさを感じるラップに、ポップさを感じる「Think U The Shit」など、バラエティーを加えつつ、ただ、全体的にはヘヴィーなエレクトロのビートをリズミカルに聴かせるスタイルのラップがメイン。正直、そういう意味では似たようなタイプの曲が多いのですが、一方でアルバム全体としても11曲25分という短さで、そのため、似たタイプの曲が多くても、最後まで飽きることなく一気に聴いてしまえるアルバムとなっていました。

また、今回のアルバムの大きな特徴なのが2000年代前後のヒット曲をサンプリングしている点。例えば「Phat Butt」ではDem Franchize Boyzの2004年のヒット曲「Oh I Think Dey Like Me」をサンプリング。「Gimmie A Light」では、Sean Paulの2002年のナンバー「Gimme the Light」からサンプリングしているなど、2000年前後のカルチャーを積極的に取り込んでいるとか。最近、2000年前後のファッションが再度注目を集めているそうですが、彼女もまた、流れに沿ったアルバムとなっています。日本でもかつて70年代が注目を集めたり、80年代が注目を集めたりしましたが、既に20年以上前になった2000年代。懐かしくも一定以下の世代には逆にある種の新しさを感じさせる点、注目を集めている要素でしょうか。(2000年代に青春期を過ごした世代が、会社の上席者となり、いろいろな意思決定が出来るような世代になった点も大きいかもしれませんが)

そんな懐かしくも新しい作品。ただ、HIP HOP等の詳しくない方にとっては、どこまで懐かしさを感じるのかは微妙なのですが…。ただ、リズミカルなエレクトロビートを軸とした楽曲は、HIP HOPをあまり聴かない層にとっても耳なじみやすく、25分という短さもあって、飽きることなく最後まで楽しめるアルバムになっていました。シングルのヒットにもかかわらず、本作はビルボードのHot Albumsではベスト10入りは逃しており、まだまだ彼女自身の人気の面ではこれからの部分もあるのですが、今後、さらなる人気の上昇も期待されます。今、もっとも注目すべきHIP HOPミュージシャンの一人であることは間違いないでしょう。今後の活躍にも注目です。

評価:★★★★★

Ice Spice 過去の作品
Like...?


ほかに聴いたアルバム

Absolute Elsewhere/Blood Incantation

アメリカのデスメタルバンドによる4枚目のアルバム。彼らのアルバムを聴くのは前々作「Hidden History Of The Human Race」以来となるのですが、ダイナミックでヘヴィーなバンドサウンドとデス声という組み合わせは、いかにもデスメタル然とはしているものの、今回のアルバムではエレクトロサウンドを取り入れたり、トライバルなリズムを取り入れたり、様式美に陥らない様々な試みがユニーク。バンドとしての挑戦心も感じられる作品でした。

評価:★★★★

Blood Incantation 過去の作品
Hidden History Of The Human Race

Maple to Paper/Becca Stevens

ジャズやフォークのジャンルで活躍するアメリカのシンガーソングライターによる新作。本編はすべて弾き語りによる作品で、アコースティックギターのみの演奏をバックにメランコリックに歌い上げる優しいボーカルが魅力的な作品に。清涼感あるボーカルで、時には優しく、時には切なくメランコリックに聴かせる歌声も魅力的な作品でした。

評価:★★★★

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2024年12月 6日 (金)

ブルースへの愛情を感じさせるコラム

今日は、最近読んだ音楽関連の書籍の紹介です。

ブルースバンド、ローラー・コースターのギタリストであり、ブルース評論家の第一人者として活躍していた小出斉。今年1月に66歳という若さで惜しまれつつこの世を去りました。そんな彼が、1993年から2017年まで、実に24年にわたってギター・マガジン誌に掲載していたコラム「ブルース雨アラレ」。その全285回に及ぶ連載を完全網羅したのが本作「小出斉のブルース雨アラレ~選りすぐりの名盤、迷盤、700枚超のディスク紹介を添えて~」です。

285回に及ぶ連載をすべて収録しているというだけあって、かなりのボリューム感。ページ数は592ページにも及び、書籍だと、まるで辞書のような分厚さとなっています。それだけ、この24年にわたる歴史の重み(?)を感じさせる1冊となっています。

ただ、本書、サブタイトルで「700枚超のディスク紹介を添えて」と書かれていますが、期待するようなブルースのディスクガイドではありません。ここで紹介されているアルバムのほとんどは、ブルースの代表的な名盤、ではなく、連載当時にリリースされた新譜やリイシュー盤、企画盤ばかり。それが定番のアルバムとなり、今でもチェックすべきアルバムも少なくはありませんが、ブルース入門的にアルバムを聴こうとするのならば、彼が残した名著「ブルースCDガイドブック」などの方が今でも有効です。

本書でメインとなるのは、小出斉のエッセイ的なコラム。連載スタート当初は、CDのアルバム紹介がメインとなっていたのですが、中盤以降、アルバム紹介は徐々に減り、ほとんど彼の日々の生活やブルースへの想い、また自身のバンドのライブ活動などに関するエッセイがメインとなってきます。そのため本作は、ブルースの本、というよりも、あくまでも小出斉の本、というのが主眼となっていました。

また彼は、評論家であるため読ませる文章を書くのは間違いありませんが、正直、エッセイストとして特筆すべき視点のエッセイを書く・・・といったタイプではありません。そのため、小出斉にある程度思い入れのある方ではないと、なかなかこのボリューミーなコラムを読むのは難かしいかもしれませんし、そもそも本書の意義として、偉大なブルース評論家、小出斉の業績を残す、という記録的側面が強いのかもしれません。

ただ、そんな中で強く感じるのは、何よりも小出斉のブルースに対する愛情の深さでした。序盤から最後まで、昔のブルースミュージシャンのリイシューから、現役のブルースミュージシャンの新譜までしっかりとチェックし、愛情を感じさせるレビューを記載していますし、自らのライブ活動に関してのコラムに関しても、ミュージシャンとして本当にブルースを演奏をするのが楽しいんだろうな、ということはコラムを通じても伝わってきます。そういう意味でも彼のコラムを通じて、ブルースという音楽のすばらしさを感じさせるコラムになっていました。

また、本書を読んでもう一つ感じたのは、この24年を通じてのブルースをめぐる環境の大きな変化でした。このコラムがはじまった1993年の時点においては、まだ存命なブルースのレジェンドたちも少なくなく、リイシューも含めて多くのブルース関連のCDが発売され、さらに国内においても本場のブルースミュージシャンが来日・演奏するブルースのライブイベントがいくつか開催されていました。

それがこのコラムが終盤を迎える2010年代においては、ほとんどのブルースのレジェンドがこの世を去り、国内のブルースイベントは終焉を迎え、ブルースの新たなCDもあまり発売されなくなりました。ディスクガイドとしてはじまったコラムが、小出斉自身のエッセイとなってくるのはブルースの新たなCDのリリース数の激減も大きな要因だったのでしょう。単純にCDというメディアがストリーミングに変化していった、という理由もあるのでしょうが、それ以上にブルースの音源がほぼCDで出し尽くしてしまった、というのも大きな理由なのでしょう。この24年という年月はブルースというジャンルにおいては、あまりに長い年月だったということを実感させられました。

そんな訳で、ブルース関連書籍というよりも、小出斉個人のエッセイという要素が強い本作。そういう意味では純粋なブルースの入門書的にはあまりお勧めできません。ただ、小出斉のブルースへの愛情を通じて、ブルースという音楽のすばらしさを感じされるコラムであることは間違いなく、そういう意味でもブルース好きにとっては読んで損のない1冊です。

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2024年12月 5日 (木)

77歳でのベスト3入り

今週のHot Albums

http://www.billboard-japan.com/chart_insight/

今週のHot Albumsで注目なのは2位に初登場した小田和正「自己ベスト-3」でしょう。CD販売数2位、ダウンロード数3位。オリコン週間アルバムランキングでも2位にランクインしているのですが、77歳3か月でのベスト3入りは吉田拓郎が「ah-面白かった」で達成した76歳3か月を上回り、史上最高齢での記録だそうです。全体的にミュージシャン寿命が長くなってきている中、今後も記録は更新されそうですが、ただ、ベスト盤とはいえ新曲も含む本作。80歳間近になりつつ、まだ現役で人気を保ち続けているというのは驚かされます。末永く、お元気で!ちなみにオリコンの初動売上5万1千枚は直近のオリジナルアルバム「early summer 2022」の初動4万5千枚(3位)からアップしています。

一方、1位に初登場したのは旧ジャニーズ系男性アイドルグループHey!Say!JUMP「H+」。CD販売数1位、ダウンロード数6位。オリコンでは初動売上16万枚で1位初登場。前作「PULL UP!」の初動19万9千枚(1位)からダウンしています。

3位には韓国の男性アイドルグループATEEZ「GOLDEN HOUR:Part2」が初登場。オリコンでは先週のベスト50圏外から2週目にして、4万1千枚を売り上げて3位初登場。前作「GOLDEN HOUR:Part1」の初動4万2千枚(1位)から微減。

続いて4位以下の初登場盤は、4位にモーニング娘。'24「Professionals-17th」が初登場。17枚目となるオリジナルアルバム。5位にはボカロPとしても活躍しているEve「Under Blue」が初登場でランクイン。6位には龍宮城「裏島」がランクイン。ロックバンド女王蜂のアヴちゃんプロデュースによる男性アイドルグループのデビュー作。7位初登場は香取慎吾「Circus Funk」。配信限定アルバムで、ダウンロード数は本作が1位。最後10位にはVTuberグループにじさんじ「HE4RT BE4T!」がランクイン。四季をテーマとした4曲入り(+インスト4曲)のミニアルバム。


続いて各種チャートですが、なんと先週を最後にTik Tok Weeklyが突然の終了。ほとんど何のアナウンスもない状況での終了となっており、理由は不明なのですが・・・TikTokからの情報提供に基づくチャートだけに、両者の情報提供契約が何かの理由で終了したのでしょうか。

今週のHeatseekers Songs

https://www.billboard-japan.com/charts/detail?a=heat_seekers

今週のHeatseekers Songs1位は、今週も弌誠「モエチャッカファイア」が4週連続通算9週目の1位を獲得しています。ただし、動画再生回数では8位から11位にダウン。Hot100でも65位から75位にダウンしています。そろそろトップは入れ替わりか?


今週のニコニコVOCALOID SONGS

https://www.billboard-japan.com/charts/detail?a=niconico

ボカロチャートも先週に引き続き柊マグネタイト「テトリス」が4週連続で1位獲得しています。ただ、こちらもDECO*27「モニタリング」が先週の3位から2位にじわりと順位を上げてきており、そろそろトップの入れ替わりがあるのでしょうか?

今週のHot Albums&各種チャートは以上!チャート評はまた来週の水曜日に!

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2024年12月 4日 (水)

ロゼ&ブルーノ・マーズのヒットが続く

今週のHot100

http://www.billboard-japan.com/chart_insight/

かなり中毒性の強いサビで、ロングヒットが続きそうです。

Apt

今週1位はロゼ&ブルーノ・マーズ「APT.」。これで3週連続の1位。ストリーミング数が4週連続、ラジオオンエア数も2週連続1位を獲得しているほか、動画再生回数も今週1位を獲得。1位独走態勢に入ってきた感があります。

2位は韓国の男性アイドルグループSEVENTEEN「消費期限」がランクイン。CD販売数1位、その他はランク圏外。オリコン週間シングルランキングでは初動売上41万8千枚を売り上げて1位初登場。

3位はCreepy Nuts「オトノケ」がワンランクダウンながらもベスト3をキープ。ストリーミング数は4週連続の2位、ダウンロード数は2週連続の5位、動画再生回数は3位から5位にダウン。ただ、今週でついに8週連続のベスト10ヒット。ベスト3ヒットも7週連続。1位獲得週は1週のみに留まっており、「Bling-Bang-Bang-Born」ほどではないものの、2作連続のロングヒットを記録。タイアップ効果もあるものの、ミュージシャンとしての勢いを感じさせます。ちなみに「Bling-Bang-Bang-Born」も今週、先週と変わらず8位をキープ。ベスト10ヒットを通算44週に伸ばしています。

続いて4位以下の初登場曲ですが、今週の初登場曲はあと1曲のみ。Mrs.GREEN APPLE「ビターバカンス」が6位に初登場。ダウンロード数1位、ストリーミング数8位、動画再生回数10位。映画「聖☆おにいさん THE MOVIE~ホーリーメンVS悪魔軍団~」主題歌彼ららしい祝祭色あふれる明るいポップスに仕上がっています。ちなみにMrs.GREEN APPLEは「ライラック」も先週から変わらず4位をキープ。ストリーミング数は5週連続の3位。動画再生回数は4位から2位にアップしています。これで33週連続ベスト10ヒットに。

また、ベスト10返り咲き曲も1曲。韓国の女性アイドルグループaespa「Whiplash」が先週の11位から9位にランクアップ。3週ぶりのベスト10返り咲き。ストリーミング数は4週連続の5位をキープしています。

ロングヒット曲はこっちのけんと「はいよろこんで」が先週から変わらず7位をキープ。ダウンロード数は先週から変わらず8位、ストリーミング数はワンランクダウンの9位、動画再生回数は5位から7位にダウン。これで通算18週目のベスト10ヒットとなりました。

一方、先週ベスト10に返り咲いたOmoinotake「幾億光年」は今週11位にダウン。ベスト10ヒットは通算33週でストップ。ただ、今後、紅白出演に合わせて再び返り咲きそう。

今週のHot100は以上。Hot Albums&各種チャートはまた明日に!

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2024年12月 3日 (火)

挑戦的でありつつ、懐かしさと暖かさも

Title:EELS
Musician:Being Dead

Eels

アメリカはテキサス州オースティンで活動する3人組インディーバンド、Being Deadの2枚目となるアルバム。デビュー作「When Horses Would Run」も一部で注目を集めたようですが、この2枚目となるアルバムは各種メディアでも高い評価を集め、注目のバンドとなっているようです。

楽曲は、オルタナ系のギターロックを主軸としつつ、同時にフォークソングの影響を受けているような楽曲で、オルタナ系ギターロックのドリーミーで、時としてダイナミックさを感じるサウンドに魅了されつつ、同時にフォークソングのなつかしさを同居している点が大きな特徴。また、ポップでキュートなメロディーラインは、オルタナ系ギターロックバンドとフォークソングの共通項とも言えるのでしょう。

実際、1曲目「Godzilla Rises」はまさにそんなギターロックのアレンジながらもメロディーラインはどこか懐かしさを感じさせるフォークロック風。続く「Van Goes」はむしろ80年代あたりのインディーギターロックを彷彿とさせる懐かしさを感じさせるポップなギターロックになっていますし、かと思えば「Nightvision」は、こちらはむしろ70年代的とすら感じさせる、懐かしいフォークロック風の楽曲に。

さらに「Love Machine」などは女性ボーカルで軽快なポップスとなっており、こちらはむしろネオアコ的な要素を感じさせる楽曲に。かと思えば「Gazing at Footwear」は不穏な雰囲気のノイジーなギターを前に押し出した作品となっており、リバーブをかけたボーカルも加わり、こちらはむしろサイケな作風となっています。

基本的にキュートでどこか懐かしさと暖かさを感じさせるポップなメロを軸に、バラエティー富んだ作風を聴かせる彼らですが、もうひとつ大きな魅力は、その歌を爽やかさを感じさせる男女のツインボーカルで歌われているという点。今回、詳細なバンドプロフィールは今一つわからなかったのですが、ジャケ写を見る限り、おそらく女性2人+男性1人というバンド編成のようですが、男女ボーカルを上手く組み合わせたボーカルスタイルが大きな魅力になっています。

例えば「Problems」では男女のボーカルのハモリが楽曲に暖かさを与えていますし、「Ballerina」は男女のやり取りがどこかコミカルさを感じさせる軽快でリズミカルなギターロックのナンバーとなっています。一方で「Big Bovine」では清涼感ある女性ボーカルで哀愁感漂う楽曲に仕上げていますし、全体的に非常に男女ボーカルの声質を上手く使い分けた楽曲が並んでいるように感じました。

フォークソングとオルタナ系の融合という意味では、同じようにカントリーとシューゲイザーの両方から影響を受けたWednesdayも思い起こされるのですが、アメリカではこの手のバンドが流行りつつあるのでしょうか。ただ、挑戦的な作風がありつつも、懐かしさと暖かさを同居されたメロディーやサウンドが非常に魅力的。今後、さらに注目を集めそうなインディーロックバンドの傑作です。

評価:★★★★★


ほかに聴いたアルバム

JAPANESE SINGLES COLLECTION-GREATEST HITS-/Huey Lewis & The News

1985年に、映画「バック・トゥ・ザ・フューチャー」の主題歌として起用された「The Power Of Love」が大ヒットを記録し、一躍ブレイクを果たしたアメリカのロックバンド、Huey Lewis&The News。日本でも人気を博した彼らの、本作は日本でのシングルを集めたおなじみのシリーズ。もちろん、前述の「The Power Of Love」も収録されています。彼らは現在でも活動を継続しているようですが、やはり基本的に人気を博していたのは80年代。そういうこともあって、楽曲は全体的にいかにも80年代なロックというイメージが。とにかくアップテンポで明るく、時としてシンセも加わったスタイル。徹底的に陽気さが前面に押し出されている作風は、社会全体が明るかったんだろうなぁ、ということを感じさせます。ポップな楽曲が素直に楽しいアルバムでした。

評価:★★★★

Electric Lady Studios:A Jimi Hendrix Vision/Jimi Hendrix

最近、権利関係が整理され、次々と新たな音源がリリースされているJimi Hendrix。今回は、彼の逝去直前の1970年6月から8月にかけて、エレクトリック・レディ・スタジオで収録された39曲が収録。うち38曲が未発表音源となっています。さらに、レコーディングスタジオ誕生を追ったドキュメンタリー「エレクトリック・レディ・スタジオ:ヴィジョン」がBlu-rayでついてくるという豪華なボックスセットになっています。ただ、未発表音源と言え、基本的には既発表曲のテイク違い。想像力あふれるジミのギタープレイはやはりカッコよく、魅力的とはいえ、デモ的な作品も多く、CDだけで3枚組というフルボリュームのアルバムは、やはりどちらかというとマニア向けといった感は否めません。熱心なファンなら、そのテイク違いを聴き比べて、曲の変化を楽しめそうですが・・・。

評価:★★★★

Jimi Hendrix 過去の作品
VALLEYS OF NEPTUNE
People,Hell And Angels
MIAMI POP FESTIVAL(THE JIMI HENDRIX EXPERIENCE)
BOTH SIDES OF THE SKY
Live in Maui
Los Angeles Forum - April 26, 1969(The Jimi Hendrix Experience)
Jimi Hendrix Experience: Live At The Hollywood Bowl: August 18, 1967

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2024年12月 2日 (月)

KANへのオマージュソングで感涙

Title:A museMentally
Musician:スキマスイッチ

2023年にデビュー20周年を迎えたスキマスイッチ。今年はトリビュートアルバムのリリースがあったり、地元名古屋で「スキマフェス」なるイベントを行ったりと、新たな一歩を歩み出した彼ら。ただ、新作としては2021年に2枚同時にリリースされた「Hot Milk」「Bitter Coffee」以来となる、約2年7ヶ月ぶりのニューアルバムとなりました。

今回のアルバムで、なんといってもまずは特筆しなくてはいけないのは、9曲目に収録されている「魔法のかかった日」でしょう。本作は、2023年に逝去した、KANに対するオマージュソング。出だしのフレーズは、完全にKANの名曲「Songwriter」を彷彿とさせますし、そこに流れるピアノのアルペジオは、KANの楽曲によく取り入れられる、ビリージョエル直系のピアノのフレーズを彷彿とさせますし、歌詞の中には「青春の風」「ときどき雲と話をしよう」「涙の夕焼け」「遥かなるまわり道の向こうで」「世界でいちばん好きな人」「永遠」とKANの代表曲のタイトルが織り込まれています。

最初、この曲に関しては、前情報が全くなしに聴いて、最初のイントロからして「KANちゃんっぽいなぁ~」と思いながら聴いたのですが、歌詞に次々とKANの曲のタイトルが登場し、「これは、KANに対するオマージュなのでは?」と気が付きました。そうして歌詞を聴くと、あきらかにKANに対する敬愛の念を感じさせるような内容となっており、正直、KANのファンとして、聴いていて涙が流れてきました。まさにスキマスイッチのKANに対する愛情を強く感じさせる楽曲になっています。

もともと、スキマスイッチとKANの関係といえば、2017年にリリースされた、スキマスイッチの曲をリアレンジした「re:Action」というアルバムの中で、スキマスイッチの曲を分析し、解体し、新たなスキマスイッチっぽい新曲「回奏パズル」という曲をKANが作り上げたことがあったのですが、この曲は、まさに「回奏パズル」に対するスキマスイッチからの回答といっていい楽曲とも言えるでしょう。スキマスイッチの実力も感じさせる楽曲にもなっていました。

この曲を含んで今回のアルバム、スキマスイッチのポップミュージシャンとしての力量のよくわかる、バラエティー富んだポップアルバムに仕上がっていました。初期のスキマスイッチらしさを感じる、彼らの王道路線といえる「逆転トリガー」や、恋人との日常でのよくあるような喧嘩の風景を描いたコミカルな「ごめんねベイビー」、ピアノの音色が軽快な、明るいポップチューン「コトバリズム」や、さらにストリングスとピアノでクラシカルに聴かせるバラードナンバー「君と願いを」と、いい意味で安定感を覚えるポップチューンが並びます。

そんな中でもブルージーなバラードナンバー「遠くでサイレンが泣く」や、同じくブルージーなミディアムチューン「Lonelyの事情」あたりは、彼らの曲の中でも比較的洋楽テイストも強く、かつ「大人」な雰囲気も感じさせます。ここらへんにも、20周年を迎えてベテランの領域に入ってきた彼らの、ミュージシャンとしての力量を感じさせました。

個人的に、この「魔法がかかった日」が収録されているだけで非常に惹かれる作品なのですが、それを差し引いても、ここ数作の中でも特によく出来た秀作だったように感じます。バラエティー富んだ作品には、安定感を覚えると同時にベテランとしてのある種の余裕も感じました。彼らの実力を強く感じさせてくれる作品でした。

評価:★★★★★

スキマスイッチ 過去の作品
ARENA TOUR'07 "W-ARENA"
ナユタとフカシギ
TOUR2010 "LAGRANGIAN POINT"
musium
DOUBLES BEST
TOUR 2012 "musium"

POP MAN'S WORLD~All Time Best 2003-2013~
スキマスイッチ TOUR 2012-2013"DOUBLES ALL JAPAN"
スキマスイッチ 10th Anniversary Arena Tour 2013“POPMAN'S WORLD"
スキマスイッチ 10th Anniversary“Symphonic Sound of SukimaSwitch"
スキマスイッチ
TOUR 2015 "SUKIMASWITCH" SPECIAL
POPMAN'S ANOTHER WORLD
スキマスイッチTOUR2016"POPMAN'S CARNIVAL"
re:Action
新空間アルゴリズム
スキマノハナタバ~Love Song Selection~
SUKIMASWITCH TOUR 2018"ALGOrhythm"
SUKIMASWITCH 15th Anniversary Special at YOKOHAMA ARENA ~Reversible~
スキマスイッチ TOUR 2019-2020 POPMAN'S CARNIVAL vol.2
スキマノハナタバ ~Smile Song Selection〜
スキマスイッチ TOUR 2020-2021 Smoothie
Hot Milk
Bitter Coffee
スキマスイッチ TOUR 2022 "cafe au lait"
POPMAN'S WORLD -Second-
SUKIMASWITCH 20th Anniversary "POPMAN'S WORLD 2023 Premium"


ほかに聴いたアルバム

OVER HEAD POP/浅井健一

一時期ほどのオーバーワーク気味ではなくなったものの、今年はUAと組んだバンドAJICOとして久々にEPをリリースするなど、相変わらず精力的な活動が目立つ浅井健一。AJICOのEPに続いてリリースされたのがソロ名義となるアルバム。1曲目の「Fantasy」は彼らしい、くすんだ感じのギターサウンドと、アイロニックな歌詞が非常にかっこよく、前半に関しては、これぞベンジーといった感じの、退廃的な雰囲気漂うカッコいいロックチューンが並んで、さすがの実力を感じさせるのですが、比較的似たようなタイプの曲が多いだけに後半はちょっと飽きが来るのが最近のベンジーの作品の共通項といった感じで・・・。そういう意味ではAJICOみたいな別の才能を加えると、ベンジーの実力ももっと生きるのかもしれませんが。

評価:★★★★

浅井健一 過去の作品
Sphinx Rose
PIL
Nancy
METRO(浅井健一&THE INTERCHANGE KILLS)
Sugar(浅井健一&THE INTERCHANGE KILLS)
BLOOD SHIFT
Caramel Guerrilla
Mellow Party -LIVE in TOKYO-(浅井健一&THE INTERCHANGE KILLS)

Back To The Pops/GLAY

2023年にデビュー30周年を迎えたGLAY。オリジナルアルバムとしては約3年ぶりのため、30年目を迎えた彼らにとって30年後初となるアルバムですが、本作のテーマ「30年目のGLAYのデビューアルバム」だそうです。そのため、全体的にいかにもGLAYらしい楽曲が並んだ本作。「会心ノ一撃」あたりはいかにも90年代っぽい作品ですし、「その恋は綺麗な形をしていない」もいかにもGLAYらしい作品。「whodunit」では韓国の男性アイドルグループENHYPENを迎え、デジタルロックやラップの要素を加えた作品なのですが、基本的なメロはGLAYらしい作品ですし、GLAYのイメージをガラリと変えることなく、そこに適度に「目新しさ」を加えてくるあたりも彼ららしいといった印象。GLAYとして求められることにきちんと答えているという点、目新しさはない一方、ここらへんのバランス感覚をしっかりとれるあたりはさすがだな、とも感じさせます。良くも悪くも、いかにもGLAYらしいアルバムでした。

評価:★★★★

GLAY 過去の作品
GLAY
JUSTICE
GUILTY

MUSIC LIFE
SUMMERDELICS
NO DEMOCRACY
REVIEWII~BEST OF GLAY~
REVIEW 2.5 〜BEST OF GLAY〜
FREEDOM ONLY
HC 2023 episode 2 -GHOST TRACK E.P-

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2024年12月 1日 (日)

賛否のあるロックバンド

Title:BOYS&GIRLS
Musician:ヤングスキニー

最近、特に若い世代を中心に話題になっている(らしい)人気上昇中のロックバンド、ヤングスキニー。本作に収録されている「ベランダ feat.戦慄かなの」がTikTokチャートで1位を獲得するなど、高い人気を確保しています。ただ一方で、かなり批判も多く受けているバンドで、ネット上で検索すると、かなり辛辣な評価も容易に見つけることが出来ます。ルックス面でアイドル的に人気を確保しているだけ、とか、ファンの女の子に手を出したとか、音楽的に直接関係ない評価もありますし、「恋愛の歌詞しか書かない」「歌詞が薄っぺらい」など、音楽性に具体的に言及した批判も少なくありません。どちらかというとネット上ではネガティブな評価が多くみられるようにも思います。

とはいえ、最近、人気上昇中のバンドであることは間違いなく、私も2枚目となるアルバムをチェックしました。ただ、このネガティブな評価で、いかにもひ弱なバンド、というイメージをもって聴くと、ちょっと意外に感じるかもしれません。イントロに続く事実上の1曲目「有線ラジオで僕の歌が流れていたらしい」は、力強くパンキッシュでノイジーなバンドサウンドが流れてきますし、「死ぬまでに俺がやりたいこと」もかなりパンキッシュなナンバー。「禁断症状」もかなり力強くパンキッシュな作品になっています。

特に中盤、TikTokでヒットを記録した「ベランダfeat.戦慄かなの」のようなメロウな女性ボーカルを入れたラブソングや、「愛すべき日々よ」のようなポップなギターロックなど、ひ弱な側面も感じる部分もあるのですが、ただアルバムとしては、この「ひ弱さ」もバリエーションのひとつとして受け止められるような構成で、全体としてはむしろバンドとしての骨太な部分も感じさせる、しっかりと「ロック」しているサウンドに仕上がっていたと思います。

ただ、じゃあ私がこのバンドを高く評価し、ネガティブな評価に関しては事実誤認と思っているか・・・というとそうでもありません。アイドル的とか、ファンに手を出した、とかの評価はわからないのですが、歌詞に関してのネガティブな評価は確かに納得できるという印象も受けてしまいました。

歌詞に関してかなりネガティブに感じてしまったのは、彼らの、というよりもボーカルのかやゆーの書く歌詞が、かなりいきっている一方、紋切り的で、視点に面白みがない、という点を強く感じたからです。例えば「死ぬまでに俺がやりたいこと」では、タイトル通り、死ぬまでにやりたいことを歌詞に羅列しているのですが、その「やりたいこと」が陳腐で面白味がなく、最後は「あの子を幸せにしたい」という、お決まりのオチ。

「禁断症状」にしても

「最近はなんだかうざってぇ社会になった
コンプラがどうとかうるせぇ社会になった」
(「禁断症状」より 作詞 かやゆー)

なんて、ネット上であまりにも頻発してそうな陳腐な表現に正直ちょっとうんざり。ロックについて歌った「精神ロック」や、女性に対して暴言気味の歌詞を書いている「不純愛ラブストーリー」など、歌詞のテーマについては悪くはないものの、いかにもいきったような歌詞なのに、視点が非常に平凡で、「どう、こんなこと歌えちゃう俺、すごいだろ?」みたいな部分がどうにも鼻につく、確かに歌詞については薄っぺらさを指摘されても否めない内容になっていたと思います。

ただ、とはいえこういう薄さもある種の「若さ」と言えなくもなく、若手バンドとして(生)暖かく見守っていっても悪くはないバンドではないか、とも一方では感じます。ボーカルのかやゆーは現在22歳。うーん、20代前半までかな、こんな歌詞が書いて許されるのは。そこらへん、今後、どううまく脱皮していくのかが注目されるところですが、ちゃんと「大人」のバンドになれるように期待しつつ。

評価:★★★★

ヤングスキニー 過去の作品
不器用な私だから


ほかに聴いたアルバム

REPSYCLE~hide 60th Anniversary Special Box~/hide

今でも高い人気を誇るX JAPANのギタリストであり、1998年に33歳という若さでこの世を去ったhideの、生誕60周年を記念してリリースされたボックスセット。彼が生前にリリースした3枚のソロアルバムの最新リマスターと、昨年開催されたhide with Spread Beaverのワンマンツアーの東京公演の模様を収めたBlu-rayが収録された内容となっています。彼の生前のソロアルバムを聴くのは、実は今回はじめてとなるのですが、あらためて感じるのはメタルからインダストリアル、さらにはオルタナ系ギターロックまで、幅広い彼の興味がわかると同時に、生前、いろいろな音楽を演りたかったんだな、ということを作品からは感じられます。その結果、若干、ごちゃごちゃしてしまっている部分も否めないのですが、そんなごちゃごちゃ感も含めて、今からするとhideの大きな魅力だったように感じます。あらためて、hideの才能を感じさせられるボックスセットでした。

評価:★★★★★

hide 過去の作品
子 ギャル

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2024年11月30日 (土)

RADIOHEADの詰め合わせ?

Title:Cutouts
Musician:The Smile

RADIOHEADのトム・ヨークが2020年に立ち上げた新バンドThe Smile。メンバーは同じRADIOHEADのギタリストであるジョニー・グリーンウッド、Sons of Kemetのドラマー、トム・スキナーの3人組。今年の1月に2枚目となるアルバム「Wall Of Eyes」をリリースしたばかりですが、それからわずか9か月という短いスパンで、早くもニューアルバムがリリースされました。

今回のアルバムは、OxfordとAbbey Road Studioで、前作「Wall Of Eyes」と同時期にレコーディングされた作品だとか。そういう意味では前作「Wall Of Eyes」とは姉妹盤のようなアルバムと言えるでしょう。その前作「Wall Of Eyes」は個人的にRADIOHEADが「OKコンピューター」の後にリリースしたかもしれないアルバム、と評しました。そういう意味では今回のアルバムも楽曲の方向性としては同じ。もっと言えば、いかにもRADIOHEAD的な作品を詰め合わせたようなアルバムと言ってしまえるかもしれない作品でした。

アルバム冒頭の「Foreign Spies」のスペーシーなエレクトロ路線もいかにもといった感じですし、「Instant Psalm」のようなアコースティックなサウンドをベースとして聴かせるメランコリックな歌は、こちらもいかにもトム・ヨークらしい、と言ってもいいかもしれません。特に「Colours Fly」のような、サイケ気味のギターサウンドでちょっと不気味に、でもメランコリックに聴かせるスタイルなど、いかにも「OKコンピューター」の頃のRADIOHEADというイメージがあります。

ただ、そんな中で印象に残るのがまず「Zero Sum」。こちらはリズミカルなドラムに、ファンキーさを感じる軽快なギターサウンドが特徴的。ちょっとサイケ気味なギターのエフェクトがトム・ヨークらしい感じもするのですが、ロックンロール的な色合いも感じさせる軽快なギターロックが、こちらはちょっとRADIOHEADとは異なる路線の、方向性も感じさせる曲になっています。

印象に残るという意味では、中盤の「Don't Get Me Started」も耳に残ります。最初は無機質なエレピのリフからスタートし、ドリーミーなトムの哀愁たっぷりの歌が重なります。後半にはここにトライバルなパーカッションが加わり、サイケさが増します。こちらはRADIOHEADらしさを感じさせる作品となっています。

後半には「The Slip」「No Words」のようなギターロック路線の作品も並び、こちらは「The Bends」のあたりのRADIOHEADも彷彿とさせる感じでしょうか。最後はアコギでフォーキーに聴かせる「Bodies Laughing」で締めくくり。最後はしっかりと「歌」で締めくくるアルバムとなっていました。

いろいろな挑戦的なサウンドを取り入れつつも、一方ではしっかりとしたメロディーラインの歌を聴かせて、意外とポップにまとめ上げている点も大きな特徴ですし、こちらもRADIOHEADに通じるものの。この点もトム・ヨークらしい、と言えるのかもしれません。前作と同様、一時期のRADIOHEADのような目新しさは少ないのかもしれません。ただ、こちらも前作と同様、トム・ヨークが演りたい音楽を演りたいように演ったアルバムと言えるかもしれません。前作同様の傑作アルバム。特にRADIOHEADが好きならたまらなく感じられる作品でした。

評価:★★★★★

The Smile 過去の作品
A Light For Attraction Attention
Wall Of Eyes


ほかに聴いたアルバム

In Wave/Jamie xx

イギリスのロックバンドThe xxのメンバー、ジェイミー・スミスのソロプロジェクト、Jamie xxの、実に約9年ぶりとなるニューアルバム。テンポよく軽快なエレクトロチューン。基本的にハウスの要素を強く感じさせつつ、楽曲によってはアンビエントの色合いが強い曲や、よりメロウなR&B的な色合いの強い曲、リズミカルなダンスチューンなど、バラエティー富んだ作風が魅力的。ただ、高揚感一歩手前の抑え気味なサウンドで、全体的には聴き終わった後、どうも印象が薄く感じてしまう点がちょっと気になってしまいました・・・。

評価:★★★★

Jamie xx 過去の作品
In Colour

Harlequin/Lady Gaga

Lady Gagaの新作は、映画「ジョーカー:フォリ・ア・ドゥ」で自身が演じるキャラクターからインスパイアされた曲を収録したアルバム。インスパイアされて作成された新曲から、「聖者の行進」「ザッツ・エンターテイメント」「遥かなる影」などカバー曲も多く収録されています。楽曲的にはムーディーなジャズ風の曲からビックバンド風の曲など、レトロな楽曲が目立ちながらも、ヘヴィーなバンドサウンドを聴かせるロッキンなナンバーも。バラエティーを富み、ほどよくポップに聴かせる、Lady Gagaらしい作品になっていました。

評価:★★★★

LADY GAGA 過去の作品
The Fame
BORN THIS WAY
ARTPOP
Cheek to Cheek(Tony Bennett & Lady Gaga)
Joanna
A Star Is Born Soundtrack(アリー/ スター誕生 サウンドトラック)(Lady Gaga & Bradley Cooper)
Chromatica
BORN THIS WAY THE TENTH ANNIVERSARY
Dawn Of Chromatica
Love For Sale(Tony Bennett & Lady Gaga)

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2024年11月29日 (金)

歌詞の世界には「ブルース」を感じる

Title:しゅー・しゃいん
Musician:寺尾紗穂

女性シンガーソングライター寺尾紗穂の約2年ぶりとなるニューアルバム。シンガーソングライターとしての活動のみならず、エッセイストや書評家としても精力的な活動が目立つ彼女。今回のアルバムに関しては、そんな文筆業としての活躍が楽曲にも反映されているような、歌詞に強い印象が残る作品が目立ったように感じます。

サウンドやメロディーラインについては基本的にシンプル。1曲目のタイトルチューン「しゅー・しゃいん」ではホーンセッションも入ってジャジーなサウンドを聴かせてくれたり、「ゴールはどこだい」ではノイジーでサイケなテイストのギターが入ってきたりするのですが、シンプルなピアノの音色に基本的にはアコースティックなサウンドをベースとした、シンプルなサウンド構成がメイン。そこに清涼感あふれる彼女の優しい歌声が重なり、魅力的な「歌」をしっかりと聴かせてくれるような作品になっていました。

そして、今回のアルバムに関しては、そんなシンプルな「歌」でしっかりと聴かせてくれる歌詞が大きなインパクトとなっていました。彼女の描く歌詞は、いわば社会の中で必死に生きていく人たちにスポットをあてた内容が印象的。まずタイトルチューンである「しゅー・しゃいん」。戦後間もないころの日本において、靴磨きでその日その日に必死に生きている人が主人公。時代背景的には戦後すぐという時代をターゲットにしつつも、どこか苦しい社会事情の中に必死で生きている現代の人たちの姿も反映されているように感じてしまいます。

アルバムの最後を締めくくる加川良のカバー「こんばんはお月さん」も、まさにそんな人々の生活にスポットをあてた歌詞が印象的。日常の辛さを月に吐露する歌詞が胸に響いてきます。また、印象に強く残る歌詞といえば「骨の姉さん」もまさにそんな1曲。おそらく、既に死んでしまった姉さんに対して、語り掛ける歌詞になっており、胸にしみる歌詞になっています。

また歌詞が印象的なのは「悲しみが悲しみであるうちに」も同じ。

「検索しても検索しても終わらないの
僕のかなしみ」

からスタートし、

「検索しても検索しても
見つからないの
戦争のやめ方」

まで、続く内容で、シニカルにインターネット依存的な世の中を取り上げつつ、社会派な歌詞が強烈な印象を残すような作品になっていました。

そして、これらの歌詞を聴いて感じられるのは、彼女の歌詞からはどこか「ブルース」の要素を感じられる点でした。まあ、ブルースといってもいろいろなタイプがあるので、ちょっとイメージ論的に語っている部分もあるのですが、いわば社会の中で必死に生きている人たちの吐露という点で、ブルースとの共通点を強く感じさせます。楽曲的には、決してブルースの要素は強くないのですが、その歌詞の世界にブルースとの共通項を感じてしまう、そんなアルバムだったように思います。

非常に魅力的かつインパクトのある歌詞の世界が胸に響いてくるそんなアルバム。メロディーやサウンドの側面で派手さはありませんが、聴き終わった後、強い印象を残す作品になっていました。その「歌」をじっくりと味わいたい作品でした。

評価:★★★★★

寺尾紗穂 過去の作品
余白のメロディ


ほかに聴いたアルバム

WONDER BOY'S AKUMU CLUB/野田洋次郎

RADWIMPSのボーカル、野田洋次郎のソロアルバム。いままでソロ活動はillion名義での活動となっていましたが、今回から本名、野田洋次郎での活動になるとか。楽曲的にはエレクトロを取り入れたり、HIP HOPやトラップの曲があったり、ジャジーな曲があったりと、様々なサウンドに挑戦しており、RADWIMPSとして演れないことをソロとして演っているというスタンスはillionと同様。ただ、かなり実験性の強かったillion名義の曲と比べると、基本的にメロディアスでポップな曲がメイン。そういう意味で頭でっかちさを感じたillionと比べると、ポップな要素とのバランスは良くなったように感じます。ただ一方、メロディーのインパクトという面は、やはりちょっと物足りなさは否めず、様々なサウンドに挑戦したため、アルバム全体としてもとっちらかしているような印象も。まあ、あくまでもRADWIMPSの活動がありきで、そこで演りきれない部分をソロで演っているといった感じなのでしょう。

評価:★★★★

illion 過去の作品
UBU
P.L.Y

F(U)NTASY/木村カエラ

メジャーデビュー20周年を記念してリリースされた5曲入りのEP盤。特に彼女自身が作詞した「Twenty」は、この20年間を振り返りつつ、未来を見据える、20周年を記念すべき楽曲となっています。この曲を含めて5曲、どれも陽気で明るいポップな楽曲が並んでおり、木村カエラの良さを、より前に押し出したような作品に。アニバーサリーイヤーを記念するにふさわしいEPに仕上がっていました。

評価:★★★★

木村カエラ 過去の作品
+1
HOCUS POCUS
5years
8EIGHT8
Sync
ROCK
10years
MIETA
PUNKY
¿WHO?
いちご
ZIG ZAG
KAELA presents on-line LIVE 2020 “NEVERLAND”
MAGNETIC

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2024年11月28日 (木)

今週もK-POP勢+LDH

今週のHot Albums

http://www.billboard-japan.com/chart_insight/

Hot Albumsのベスト3、先週は韓国勢2組+LDHといった組み合わせでしたが、今週も同じ組み合わせで・・・

まず今週1位は韓国の男性アイドルグループENHYPEN「ROMANCE:UNTOLD -daydream-」が獲得。CD販売数1位、ダウンロード数12位。7月にリリースしたアルバム「ROMANCE:UNTOLD」に新曲2曲を加えてパッケージも一新した、いわゆる「リパッケージアルバム」。オリオン週間アルバムランキングではリリース日の関係上、先週にベスト50圏外でランクイン。今週、18万4千枚を売り上げて1位に初登場しています。本作のオリジナル盤「ROMANCE:UNTOLD」は初動売上28万9千枚(1位)でしたので、さすがに前作よりは大幅ダウン。

2位はLDH系の男性アイドルグループTHE JET BOY BANGERZ「UNBREAKABLE」が初登場。3曲入りのEP盤。事実上のシングルなのですが、シングルだとHot100で上位に食い込めそうもないため、アルバム扱いにしてリリースしたのでしょう・・・。CD販売数2位。オリコンでは初動売上4万2千枚で2位初登場。同じく3曲入りのEP盤だった前作「What Time Is It?」の初動5万2千枚(3位)よりダウン。

3位は先週1位だった韓国の男性アイドルStray Kids「GIANT」が2ランクダウンながらもベスト3をキープしています。

続いて4位以下の初登場盤です。4位には男性アイドルグループTHE SUPER FRUIT「どーぱみんみん サクセス論」がランクイン。7位には日本でも高い人気を誇るアメリカのロックバンドBON JOVIのベストアルバム「ALL TIME BEST 1984-2024」が初登場でランクイン。8位にはスマホ向けゲーム「アイドリッシュセブン」よりIDOLiSH7「LEADiNG TONE」が初登場でランクインしています。

また今週は返り咲き組も。4位に韓国の男性アイドルグループTOMORROW X TOGETHER「The Star Chapter: SANCTUARY」が先週の19位からランクアップし、2週ぶりにベスト10返り咲き。またあいみょん「猫にジェラシー」が先週の52位からランクアップし、9週ぶりにベスト10返り咲き。こちらはアナログ盤がリリースされた影響となっています。


今週のHeatseekers Songs

https://www.billboard-japan.com/charts/detail?a=heat_seekers

今週のHeatseekers Songs1位は、今週も弌誠「モエチャッカファイア」が3週連続通算8週目の1位を獲得しています。ただし、動画再生回数では7位から8位にダウン。Hot100でも55位から65位にダウンしています。


今週のTikTok Weekly

https://www.billboard-japan.com/charts/detail?a=tiktok

今週、TikTok Weeklyでも先週と変わらずROSE&ブルーノ・マーズ「APT.」が3週目の1位を獲得。今週もHot100とダブルで1位獲得となっています。


今週のニコニコVOCALOID SONGS

https://www.billboard-japan.com/charts/detail?a=niconico

ボカロチャートも先週に引き続き柊マグネタイト「テトリス」が3週連続で1位獲得しています。これで3週連続、Heatseekrs、TikTok、ボカロチャートに同じ顔触れが並ぶ結果となりました。

今週のHot Albums&各種チャートは以上!チャート評はまた来週の水曜日に!

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