2022年7月 6日 (水)

1位返り咲き

今週のHot100

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今週はロングヒット中のあの曲が1位返り咲きとなりました。

今週1位を獲得したのはOfficial髭男dism「ミックスナッツ」。7週ぶりの1位返り咲きとなりました。先週3位にランクインしたCD販売数は19位にダウン。ダウンロード数も1位から2位にダウンしているものの、ストリーミング数は今週も1位を獲得。PCによるCD読取数が先週と変わらず2位、You Tube再生回数も先週と変わらず6位をキープした結果、通算2週目の1位獲得となりました。これで12週連続のベスト10ヒット&通算10週目のベスト3ヒットとなります。

2位は先週1位のSEKAI NO OWARI「Habit」がワンランクダウン。You Tube再生回数は今週も変わらず1位をキープしたほか、ストリーミング数も先週と変わらず2位にランクインしていますが、ダウンロード数は3位から4位に、CD販売数は4位から27位にダウン。結果、2週連続の1位とはなりませんでした。ただ、これで8週連続のベスト10ヒットに。今後、ロングヒットとなりそうです。

3位は初登場曲。ハロプロ系女性アイドルグループつばきファクトリー「アドレナリン・ダメ」がランクインです。CD販売数は1位でしたが、ダウンロード数10位、PCによるCD読取数33位、Twitterつぶやき数72位にランクイン。総合順位は3位となりました。オリコン週間シングルランキングでは初動売上7万枚で1位初登場。前作「涙のヒロイン降板劇」の初動5万8千枚(3位)からアップしています。

続いて4位以下の初登場曲ですが、今週初登場曲は1曲のみ。NAYEON「POP!」が先週の51位から5位に大きくアップし、チャートイン2週目にしてベスト10入りを果たしました。NAYEON(ナヨン)は韓国の女性アイドルグループTWICEのメンバー。6月24日にリリースされたデビューEP「IM NAYEON」の代表曲となります。ストリーミング数が5位、You Tube再生回数が2位にランクインしたほか、ダウンロード数26位、ラジオオンエア数99位、Twitterつぶやき数29位にランクイン。総合順位は5位となりました。

続いてロングヒット曲ですが、まずはTani Yuuki「W / X / Y」は先週と変わらず7位をキープ。ストリーミング数は先週と変わらず3位、You Tube再生回数が11位から8位と再びアップしました。これでベスト10ヒットは13週連続となりました。

Saucy Dog「シンデレラボーイ」は先週の7位からさらに順位を上げ6位にアップ。今週、ストリーミング数が5位から4位にアップ。カラオケ歌唱回数も2位をキープし、総合順位はこの位置に。これで通算22週目のベスト10ヒットとなりました。

優里「ベテルギウス」が先週と変わらず8位をキープ。「ドライフラワー」は先週と変わらず9位にランクインしています。これで「ベテルギウス」は通算33週目、「ドライフラワー」は通算77週目のベスト10ヒットとなっています。

今週のHot100は以上。明日はHot100!

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2022年7月 5日 (火)

90年代に一世を風靡したボーカリストのオールタイムベスト

Title:永劫回帰Ⅰ
Musician:上杉昇

1990年代中盤、いわゆるビーイング系ブームの中で中心的存在だったバンドWANDS。1992年にシングル「もっと強く抱きしめたなら」が大ヒットを記録した後、ヒット曲を連発していきました。そのボーカリストとして一時期、時の人となったのが上杉昇です。しかし、このビーイングという事務所は、非常に商業主義の強い事務所であったため、当時のビーイング系ブームで一世を風靡したバンドの多くが、のちにビーイングを離れていきます。

そんな中でも、ビーイング系を離れた理由がもっとも明確だったのが彼、上杉昇。1997年に脱退した後、同じくWANDSを脱退した柴崎浩と共にal.ni.coというユニットを結成するのですが、明確な歌謡ロックだったWANDSの作風から一転、洋楽テイストの強いグランジ系ロック路線にシフト。WANDS時代にも、同じくグランジ系の曲をリリースしていたこともあり、あきらかにWANDSとは求める音楽性が大きく異なるのだな、ということが誰からも明確にわかる脱退理由となっていました。

その後、al.ni.coも解散。猫騙というバンドを結成するのですが、こちらも活動休止状態になり、現在はソロで活動を続ける彼。そんな彼もWANDS時代から既に活動30年というキャリアを誇るのですが、その活動30周年を記念してリリースされたオールタイムベストが本作。ラルクのプロデューサーとしても知られる岡野ハジメがレコーディングプロデューサーを手掛け、一部は2021年バージョンに再レコーディング。al.ni.coや猫騙、ソロ自体はもちろんのこと、WANDS時代の曲も収録されている、文字通りの上杉昇のキャリアを通じたオールタイムベストとなっています。

もちろんWANDS時代を含めたオールタイムベストとはいえ、「もっと強く抱きしめたらなら」のような歌謡ポップ色の強い作品は収録されておらず、基本的に彼の音楽的志向にマッチしたグランジ系ロック路線の曲が並びます。サウンドについては、グランジ系ロックの王道を行くような歪んだギターサウンドを中心に据えたヘヴィーなバンドサウンドというスタイルであり、目新しさは感じられません。ただ、その分、音楽性としてはある意味非常に素直という印象もあり、ロックミュージックへの率直な愛情を感じることが出来ます。

ダイナミックなバンドサウンドは迫力もあり非常にカッコよく、もし初期WANDSのようなイメージを持っているとしたらもったいない感じ。ちょっとくすんだ感じの世界も統一感もあり、サウンドにマッチ。グランジ系、オルタナ系ロックが好きなら文句なしにチェックしてほしいアルバムだと思います。

そしてそんな中、ある程度以上の年齢の方なら聴いたことがあるかもしれないのが「Same Side」。1995年にリリースされたWANDSのシングル曲で、当時は最高位2位を記録するヒットナンバーとなっています。ノイジーなバンドサウンドをベースとしながらも、一方、メロディーラインは非常にポップにまとまっている曲調。これだけポップにしないとシングルリリースできなかったんだろうな、という点にビーイングとしての限界を感じる一方、バンドサウンドとポップなメロディーのバランスが逆に楽曲のおもしろさを作り出しており、このベスト盤の中でもちょうどよいインパクトとなっています。

また、今回あらためて聴くと上杉昇のボーカルも魅力的。曲によっては声をあえてつぶしてシャウト気味のボーカルを聴かせてくれるのですが、迫力がありつつも端正で、どこか色気を感じさせます。ここらへんの魅力的なボーカルが、WANDSとしてビーイング自体に神輿をかつがれた大きな要因だったのかもしれません。

素直にグランジロックの魅力を体感できるオールタイムベスト。また、WANDS時代から今まで、同じスタイルを貫いているあたりもロックが好きなんだろうなぁ、という点を素直に感じさせます。彼の作品を聴いたのはal.ni.co時代以来なのですが、あらためて魅力的なミュージシャンだと感じました。「未来永劫Ⅰ」というタイトル通り、「Ⅱ」もリリースされているので、そちらも近日中に聴く予定。楽しみです!

評価:★★★★★


ほかに聴いたアルバム

妙齢/中村中

シンガーソングライター、中村中のオールタイムベストアルバム。あれ?ちょっと前にベストアルバムをリリースしたばかりじゃ?と思ったら、前のベストアルバム「若気の至り」から、もう11年も経つんですね・・・あらためて、月日の経つのは早いなぁ・・・。楽曲は、哀愁感あるメロディーラインを彼女の力強い歌声でしっかりと聴かせるスタイルがメイン。その中でも一貫して、社会の中の弱者からの視点というスタイルは一貫しており、彼女の大きな特徴となっています。今回のベスト盤に収録された新曲「あいつはいつかのあなたなのかもしれない」もまさにそんな彼女らしい歌詞で、弱者に対して他人事とみがちな人たちへの警鐘を鳴らしている曲。ある意味、彼女流の「Like a Rolling Stone」とも感じられるような曲で、今に至っても全く変化のない彼女のスタンスを強く感じさせます。個人的には、常々、もっと注目されて売れてもいいミュージシャンだと思っているのですが・・・。

評価:★★★★★

中村中 過去の作品
私を抱いて下さい
あしたは晴れますように
少年少女
若気の至り
二番煎じ

聞こえる
世界のみかた
去年も、今年も、来年も、
ベター・ハーフ
るつぼ
未熟もの

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2022年7月 4日 (月)

よりファンクネスが増したライブ音源

Title:Live At Okinawa 2022
Musician:ZAZEN BOYS

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最近は、NUMBER GIRLとしての活動も再開させ、さらに多忙となった向井秀徳。もちろん、ZAZEN BOYSとしての活動もコンスタントに行っており、特に昨年は、無観客ライブとはいえ、ZAZEN BOYSとNUMBER GIRLの対バンという夢の共演ライブを実現させてくれたりもしています。ただ一方、ZAZEN BOYSとしての新作は2012年のアルバム「すとーりーず」以来発表されておらず、ファンとしてはちょっと寂しい気持ちも持っていたりします。

そんなファンとしてはZAZEN BOYSの新譜を渇望する中リリースされたのが今回のライブアルバム。タイトル通り、今年4月22日に沖縄で行われたライブの模様を収録した作品で、向井秀徳の公式サイト「向井秀徳情報」にて無料ダウンロードでのリリースとなりました。ライブアルバムも、以前はコンスタントにリリースしていたのですが、2014年に同じく無料ダウンロードでリリースされた「Live At 大牟田ふじ」以来、約8年ぶりの作品となっています。

全20曲入りとなる本作ですが、今回はmp3ファイルを3分割にしてのリリース。約50分のファイルが2本と、12分のファイルが1本の計3本、約2時間弱というかなりのボリュームの作品となっています。

おそらくほぼノーカットでの収録だと思うのですが、ライブの雰囲気をそのまま体験できるのが魅力的。コロナ禍の中、徐々にライブもスタートしているとはいえ、やはり以前に比べると若干、ライブに躊躇してしまう方もいるであろう中、ライブの雰囲気をそのまま、それも無料ダウンロードで味わえるというのはうれしい限りです。

ZAZEN BOYSといえば2017年にベースの吉田一郎が脱退。2018年に新ベーシストとしてMIYAが加入しました。それから約4年が経過したものの、本作がライブアルバムとしてリリースされる初のアルバムとなります。ベースが代わったことにより、バンドとしてどう変化するかも注目のポイントだと思うのですが、バンドとしてメンバーチェンジを全くものともせず。むしろ以前以上にバンドとしての一体感を覚えるようなライブパフォーマンスを感じます。

さらにこのライブアルバムで強く感じるのは、以前に比べてベースラインの厚みが増し、よりリズムのファンキーさが増した感があるという点でした。特に序盤の「Honnoji」のドラミングを主導としたファンキーなリズムがゾクゾク来るほどカッコよく、さらに中盤で(公式サイトのセットリストにはのっていないのですが)「泥沼」を触りだけ聴かせるのですが、ここで聴かせてくれるMIYAのベースプレイのファンキーさにも耳を惹かれます。そしてライブでもおなじみな「ポテトサラダ」でも以前以上にリズムのファンキーさが増していますし、ラストの「Action」も黒さを感じさせるリズムが印象的でした。

ここらへん、ファンクなリズムももちろんのこと、ZAZEN BOYSのサウンドを聴くと、以前よりサウンドに黒さが増してきたように感じます。ひょっとしてですが、ギターノイズで埋め尽くすタイプの疾走感あるサウンドを聴かせるNUMBER GIRLが活動を再開したことにつれて、NUMBER GIRLとの差異をより強調するためにも、よりファンクで、ある意味、空間を聴かせるようなスタイルをより強調してきたようにも感じました。

ただ新ベーシストMIYAとの相性もよく、バンドとしての勢いも感じるZAZEN BOYS。次はそろそろ待望のニューアルバムも期待したいところ。ここらへん、ナンバガもひょっとしたら・・・といった感じもありますし、さて次の向井秀徳の一手はどうくるのでしょうか?これからが非常に楽しみです。

評価:★★★★★

ZAZEN BOYS 過去の作品
ZAZEN BOYS IV
すとーりーず
Live At 大牟田ふじ


ほかに聴いたアルバム

気まぐれサーカス/及川光博

昨年、デビュー25周年を迎えたミッチーこと及川光博の、約2年ぶりとなるニューアルバム。コロナ禍の風潮もいい意味で全く感じさせない、ミッチーらしい明るく楽しいミッチー節が展開されるファンキーなポップチューンが並ぶ本作。いつも通り彼らしいアルバムですし、ミッチーとして求められる点にしっかりと答えている点、稀代のエンターテイナーであるミッチーらしい作品と言えるでしょう。ただ「フライドポテト」は寄る年波をコミカルに描写した作品になっており、ミッチーでも・・・と思っちゃいます(笑)。それはともかく、また久々にミッチーのライブに行きたくなってくるような、そんな楽しいアルバムでした。

評価:★★★★

及川光博 過去の作品
RAINBOW-MAN
美しき僕らの世界
喝采
銀河伝説
ファンタスティック城の怪人
さらば!!青春のファンタスティックス
男心DANCIN'
20 -TWENTY-
パンチドランク・ラヴ
FUNK A LA MODE
BEAT&ROSES
BE MY ONE
XXV

JR SKISKI 30th Anniversary COLLECTION

JR東日本のスキー旅行キャンペーン「JR SKI SKI」。1990年代にCMが放映され、その後一度中断。2006年からCM放送が再開され現在に至ります。毎年、CMソングが流れるのですが、特に90年代にはここで起用されたCMソングが必ずヒットすることでも話題になりました。本作は、その「JR SKI SKI」のCMソングを集めたコンピレーションアルバム。2000年代以降の曲についてはともかく、1990年代の曲については、タイアップ効果も盛んに言われていた、まさに「JR SKI SKI」発のヒット曲で、懐かしく聴くことが出来ました。Zooやglobeといった、名前を出すだけで懐かしく感じるようなミュージシャンたちの曲が並んでおり、アラフォー以上の世代にとっては、懐かしさを感じるコンピレーションだと思います。

評価:★★★★

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2022年7月 3日 (日)

久々の新譜は時代を反映

Title:Unite/Divide
Musician:TRICERATOPS

ここ数年、メンバーのソロ活動が中心となっており、バンドとして事実上、活動休止状態だった3ピースロックバンドTRICERATOPS。ただ、昨年より配信限定のシングルをリリースし、徐々に活動を再開してきた彼ら。そしてようやく、実に約7年4ヶ月ぶりにリリースされたアルバムが本作です。

今回のアルバム、正直言うと最初聴いた時は、いままでにない地味なアルバムといった印象で、彼ららしいポップでダンサナブルな楽曲も少なく、全体的にメロディーラインはメランコリック。方向性としては明確だったのですが、全体的におとなしい落ち着いたアルバムに、最初はちょっとがっかりとしたというのが率直な印象でした。

ただ今回のこの楽曲の方向性は、コロナ禍の中での彼らを巡る状況が大きく影響してきているのでしょう。実際、「Unite/Divide」というタイトルも、いかにもこの時代を反映させたようなタイトルですし、なによりも今回のアルバム自体、彼らの作品としては珍しいくらい、現在の時代性が反映されています。特に歌詞の面で強いインパクトを残したのが「いっそ分裂」。ニューウェーブ風の軽快なポップソングなのですが、歌詞は

「かつて「We Are One」って歌った
僕らそんなに違いはないって
苦悩とか闇とか 晒したくはないけど
信念が崩れかけているんです」
(「いっそ分裂」より 作詞 和田唱)

と歌われる内容はかなり衝撃的。歌詞で歌われる通り、トライセラ自体、あまり「苦悩とか闇とか晒す」タイプのバンドではないだけに、コロナ禍の中での社会情勢がバンドに与えた影響の大きさを感じさせます。

そんなこともあって、かなり違和感を覚えた今回のアルバムですが、ただ、よくよく聴くと、彼ららしいポップなメロはしっかりと流れていますし、軽快なギターリフ主導の曲がありますし、TRICERATOPSらしさはしっかり出ているアルバムになっていました。例えば「マトリクスガール」はメランコリックなメロですし、彼ららしい軽快なギターロックチューンですし、特にメロディーラインの良さが出ていたのは「キミにひとつ地球」で、アコギ弾き語りで聴かせる暖かいメロと歌詞のポップソングで、シンプルでポップなメロは個人的には、最近、トライセラと交流があるKANからの影響も感じてしまいました。

歌詞にしても終盤、「リメインズ」では

「額に飾った煌めき ゴミ箱の悲しみ
どっちを更新したって 僕はきっとこの世界を
抱きしめるだろう」
(「リメインズ」より 作詞 和田唱)

と、前向きなスタンスを感じさせますし、事実上のラストナンバーである「THE GREAT ESCAPE」では

「飛び出せ!さぁ飛び出せ!
夜を切り離して」
(「THE GREAT ESCAPE」より 作詞 和田唱)

とこちらも前向き。このコロナ禍で分裂が進むような社会の中でも、前向きなスタンスを忘れないのは、やはりTRICERATOPSらしいなぁ、と感じました。

ただ、それでも残念ながらアルバム全体としては、特にメロディーの点ではインパクトが薄いという印象は最後まで否めませんでした。特に「THE GREAT ESCAPE」などは彼らしいギターサウンド主導のアップテンポなロックチューンなのですが、メロディーは完全にインパクト不足。全体的に楽曲のバリエーションも多く、凝ったサウンドも多く聴かせてくれるのですが、TRICERATOPSの最大の持ち味とも言える、インパクト満点のポップなメロディーラインという点からはちょっと物足りなかったかな、というのが正直な印象でした。

決して悪いアルバムではなく、むしろ彼ららしい良作とも言えるのですが、久々の新譜としてはちょっと残念だったかも。次の新譜はまた是非、彼ららしいポップなロックンロールを聴かせてほしいなぁ。これはこれで、こういう方向性を意図した作品なので、仕方ないのかもしれませんが。

評価:★★★★

TRICERATOPS 過去の作品
SHAKE YOUR HIP!!!
MADE IN LOVE
WE ARE THE ONE
WE ARE ONE-CERTIFICATE-
LOVE IS LIVE
DINOSOUL -BEST OF TRICERATOPS-
連載・おとといミーティング TRICERATOPS“12-Bar“
MIYATORA(宮沢和史&TRICERATOPS)
SONGS FOR THE STARLIGHT


ほかに聴いたアルバム

our hope/羊文学

同作がいきなりチャートでベスト10ヒットを記録した女性2名+男性1名からなる3ピースロックバンド、羊文学。「羊文学」という名前から、最初は空気公団にような系統のフォーキーなポップスロックのミュージシャンかと思いつつ、聴いてみると確かにそのような作風の曲もあったのですが、途中からしっかりとバンドサウンドが鳴り響くロックバンドでした。ただ、一方ではどこかフォーキーな作風の曲もあり、そういう点では独特な感じもします。ちょっとメロディーラインがベタかな、と思いつつも、そこらへんが急激にブレイクした理由なのかとも思ったりして・・・。今後もさらに名前が広がっていきそうな1枚でした。

評価:★★★★

たまらない予感/奇妙礼太郎

昨年、ミニアルバムのリリースはあったものの、フルアルバムとしては約3年7ヶ月ぶりとなる男性シンガーソングライターの新作。いままでの作品と同様、ピアノやアコギのようなアコースティックなサウンドと、一方では打ち込みも使いつつも、全体的には暖かみのある楽曲が魅力的。どこか郷愁感あるメロディーラインも、妙に耳に残ります。全体的には派手さはなく、インパクトという面では決して目立つ作品ではないものの、しっかりと心に残る暖かさのあるポップソング。良作という言葉がピッタリの1枚です。

評価:★★★★★

奇妙礼太郎 過去の作品
More Music
ハミングバード

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2022年7月 2日 (土)

海外での注目のSSW

Title:春火燎原
Musician:春ねむり

これがフルアルバムとして2枚目となるシンガーソングライターによる最新作。ただし、CDリリースの予定はなく、配信及びLPでのリリースのみというのが、今時な感じがします。私自身、彼女のアルバムを聴くのは本作がはじめて。もともときっかけとなったのはアメリカの音楽サイト、Pitchforkで紹介されていたことから。「Best New Album」とはなっていなかったものの、レビューで8.0という高評価をマーク。その時、はじめて彼女の名前を知って気になったのがきっかけで、本作を聴いてみることにしました。

もともと前作「春と修羅」がフランスのレーベルからリリースされたりと、海外での活動も積極的に行っていたようで、アメリカで行われている音楽祭「SXSW」にも2021、2022と2年連続で出場。日本以上に海外での活動も積極的に行っているようです。それが、Pitchforkへのアルバム紹介及び高評価へもつながったようで、徐々に日本でも逆輸入的に話題になってきているようです。

楽曲的にはおおざっぱに言ってしまうと、キュートな感じのアイドルテイストもある女性ボーカルが、ラップあるいはポエトリーリーディング的に歌うスタイルで、インタビュー記事で「DAOKOや水曜日のカンパネラみたいに雑に括られていた」という感じで書かれていたのを読みましたが、確かに、そう雑に括りたくなるのもわからないことはありません。

ただ、サウンド的にはそれらのミュージシャンたちとはかなり異なっており、非常に雑食的なのがユニーク。疾走感あるギターロックの「あなたを離さないで」から、続く「ゆめをみている(deconstructed)」は一転、エレクトロサウンドが主導する楽曲に。「シスターwith Sisters」ではトラップ風のリズムを取り入れていますし、「Kick in the World(deconstructed)」では、デス声調のボーカルを含めて、ハードコア風なサウンドを取り入れています。ハードコア、ヘヴィーロックからエレクトロ、HIP HOP、ノイズ、ポップス、ポエトリーリーディングなど、様々なジャンルを自在に取り入れている点が大きな特徴となっています。

ある意味、この自由度の高いサウンドは、良くも悪くもこだわりのない今風なものを感じさせます。あえて「可愛らしさ」を表に出したボーカルもそうですが、ここらへん、それこそHIP HOPからアイドルポップまで、様々なジャンルをこだわりなく同じレベルで取り入れるあたり、いかにも今のミュージシャンという印象を受けます。

そして彼女の大きなもう一つの特徴がその歌詞。歌詞は、現実社会の中に上手くフィットできず、もがき苦しむ中、それでも前向きに「生きる」ことに対してエールを送るような、そんな歌詞の内容が特徴的。例えばタイトルチューンである「春火燎原」では

「地上じゃ使えない羽だけを持っている
聖なる列にもぼくの番号はないけれど
炎に呑まれて溺れ続けるぼくを
憐れんだやつを端から殺してやる」
(「春火燎原」より 作詞 春ねむり)

のように、現実の中でもがき苦しむ中、その中でも乗り越えてやろうという意思が明確に感じられます。

こういうアイドルポップ的な部分を持ちながらも、自分を削り、メッセージを発するというスタイルは、彼女自身も影響を公言しているのですが、大森靖子からの影響を感じさせます。また、自分を削るような強烈なメッセージ性は、ある意味、Coccoに通じるような部分も感じました。とにかく、その世界観がズバズバと心に突き刺すような、そんな歌詞が強く印象に残りました。

海外での活躍が先行するような形となり、日本での知名度は決して高くありませんが、その歌詞のメッセージ性といい、雑食性なサウンドのユニークさといい、今後、間違いなく注目度はアップしていく予感があります。アルバムとしては全21曲1時間強というボリューム感ですし、その歌詞の世界からも、ある種の重さを感じさせる内容でしたが、それだけ心にもズシリとくるアルバムでした。間違いなく、要チェックの1枚。一度是非、春ねむりの世界を味わってほしいと感じさせる作品です。

評価:★★★★★

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2022年7月 1日 (金)

非常に重いメッセージ性を感じる

Title:笑い死に
Musician:般若

昨年、新レーベル「やっちゃったエンタープライズ」を設立。それまで所属していた「昭和レコード」から独立したラッパー、般若。その後、何作か配信でシングルを何枚かリリースしていたものの、前作から約1年9ヶ月ぶりとなるニューアルバムがリリース。「やっちゃったエンタープレイズ」独立後、初となるアルバムとなります。

このアルバムの中で、なんといっても大きな印象を残すのは「2018.3.2」でしょう。哀しげなピアノが流れる中、静かに綴られるラップが印象的なこの曲は、2018年に発覚し、ニュースでも大きく取り上げられた目黒5歳女児虐待事件をテーマとして扱ったもの。事件現場の向かいのマンションに住んでいた彼は、被害者の女の子が運ばれていく様子を目撃したということ。そのことに大きくショックを受けた彼が、悩んだ結果、書き上げたのが本作。ある種のドキュメンタリータッチで綴られたリリックはかなり具体的かつ印象的で、強く心に響く、作品になっています。

この、非常に重たいテーマの作品がひとつの主軸になっていたからでしょうか、今回のアルバムは「笑い死に」というタイトルとは反して全体的にメランコリックな雰囲気が漂うような作風となっていました。1曲目「とめてくれよ」から、かなりダウナーな雰囲気でのスタートとなりますし、「ハタチの君へ」もトラップ的なリズムでメランコリックなサウンド。さらに「2018.3.2」につながる「テキトー」「色の無い海の底」も郷愁感を覚えるようなトラックが印象的でした。

そしてそんな中で、特にこの時代を力強く「生きる」ことをテーマとしたリリックが目立ったように思います。まず「糞馬鹿野郎」は、まさにそんな今を生きている自分を描写としたリリックが印象的。「拝啓」でもまさに今を生きる日常を描いていますし、そしてなんといっても「じんせいさいこおお」はタイトル通りの人生讃歌。「宇宙の果てから見たら/俺達の存在すっげー小せえ」という、ある意味振り切れたリリックも印象的。さらに最後は「うまくいく」で、タイトル通り、前向きなメッセージを綴って本作は終了。最後は非常に前向きな気持ちでアルバムを聴き終える内容になっていました。

特に「2018.3.2」で気持ち的にもかなり落ち込みかねない本作だからこそ、そこから続く「じんせいさいこおお」「うまくいく」で一気に盛り返す構成も、おそらく考えられたものなのでしょう。他にも子供へのメッセージともとれる「ハタチの君へ」や、イジメやLGBTを扱った「色の無い海の底」など、全体的にテーマは重め。それだけにズシリと心に来るアルバムになっていますが、それだけにラスト2曲の前向きなメッセージが、より心に響いてくるアルバムになっていました。

決して派手ではないものの、非常に重たい、おそらく般若にとっても重要作とも言える作品になっており、聴き応えのある内容になっていました。文句なしの傑作アルバム。いつも印象的なリリックを聴かせてくれる般若ですが、その中でも特に印象的な作品が多かったアルバムだったと思います。普段、ラップを聴かないリスナー層でも、このメッセージは強く響いてくるはず。是非、チェックしてほしい1枚です。

評価:★★★★★

般若 過去の作品
ドクタートーキョー
HANNYA
グランドスラム
THE BEST ALBUM
話半分
般若万歳II
IRON SPIRIT
12發


ほかに聴いたアルバム

Same/SHERBETS

浅井健一率いるSHERBETSによる、実に6年ぶりとなるニューアルバム。今回のアルバムは、ピアノやストリングスを取り入れつつ、メランコリックで美しいメロディーラインをこれでもかというほど聴かせる作風に。ここ最近、比較的安定感のある作風を確立してきた感のあるSHERBETSでしたが、今回のアルバムは、SHERBETSとしての方向性がある程度固まったような、いい意味での安定感も覚える作品になっています。一時期は駄作を乱発気味で心配された浅井健一ですが、最近はリリースペースも落ち着いて、良作もしっかりとリリースしてくるようになりました。そんないい意味での安定感を覚える作品でした。

評価:★★★★

SHERBETS 過去の作品
MIRACLE
GOD
MAD DISCO
FREE
STRIPE PANTHER
きれいな血
CRASHED SEDAN DRIVE
The Very Best of SHERBETS「8色目の虹」

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2022年6月30日 (木)

今週も男性アイドルグループが1位

今週のHot Albums

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ここ最近、Hot Albumsでは男性アイドルグループの1位獲得が続いていますが、今週も韓国の男性アイドルグループが1位獲得です。

今週1位を獲得したのは、韓国の男性アイドルグループStray Kidsのミニアルバム「CIRCUS」。CD販売数1位、ダウンロード数8位、PCによるCD読取数15位。オリコン週間アルバムランキングでは初動売上13万1千枚で2位初登場。直近作は韓国盤「Oddinary」で同作の初動6千枚(13位)からは大きくアップ。国内盤の前作「ALL IN」の初動4万8千枚(2位)からも大きくアップしています。

2位には山下達郎「SOFTLY」がランクイン。CD販売数2位、PCによるCD読取数1位。オリジナルアルバムとしては実に11年ぶりという新作で、オリコンではなんと15万1千枚を売り上げて見事1位獲得。オリジナルアルバムとしての前作「Ray Of Hope」の初動10万4千枚(1位)からアップしています。11年前とは、明らかのCDを巡る状況に変化があり、CDの売り上げ全体が激減している中、彼ほどのベテランミュージシャンが、11年というブランクがありながらもアルバムのCD初動売上を1.5倍増加させているという事実は、本作の配信・ストリーミングが行われていないという事実を前提としても、驚いてしまいます。

3位は二宮和也「〇〇と二宮と」が先週の8位からランクアップし、チャートイン2週目にしてベスト3入り。先週はファンクラブによるCDリリースに対する「PCによるCD読取数」のチャートだけでベスト10入りを果たしましたが、今週は配信でもリリースが開始。ダウンロード数で1位を記録し、見事総合チャートでベスト3入りを果たしました。

続いて4位以下の初登場盤です。まず5位に宮内國郎・鷺巣詩郎「シン・ウルトラマン音楽集」がランクイン。CD販売数5位、ダウンロード数3位、PCによるCD読取数7位。タイトル通り、大ヒット中の映画「シン・ウルトラマン」のサントラ盤。オリコンでも初動売上1万1千枚で6位にランクインしています。

7位にはMONGOL800×WANIMA「愛彌々」が初登場。人気パンクバンドMONGOL800とWANIMAによるスピリットEPで、2バンドの共作となるタイトル曲のほか、それぞれのバンドがお互いのバンドに楽曲提供をした2曲と、それぞれのバンドが相手の曲をカバーした曲、2曲の5曲入りの作品。ラジオ番組で「コラボしよう」と約束したことからきっかけで誕生したスピリット盤だそうです。オリコンでは初動売上1万枚で8位初登場。MONGOL800としては、前作「Pretty Good!!」の7千枚(12位)からアップ。一方、WANIMAの「Cheddar Flavor」の3万枚(2位)からはダウンしています。そうか、もうMONGOL800よりWANIMAの方が人気あるのか・・・。

8位は「FINAL FANTASY XIV: ENDWALKER」が獲得。オンラインゲーム「ファイナルファンタジーXIV: 暁月のフィナーレ」のパッチ6.1「新たなる冒険」に使用されている楽曲を集めた、配信限定のサントラ盤ミニアルバム。ダウンロード数で2位を獲得し、総合順位もベスト10入りを果たしています。

最後、9位にはスターダストプロモーション所属の女性アイドルグループ超ときめき♡宣伝部「ハートギュッと!」がランクイン。CD販売数4位、ダウンロード数24位。オリコンでは初動売上1万2千枚で5位初登場。前作「すきすきすきすきすきすきっ!」の5千枚(15位)からアップしています。

今週のHot Albumsは以上。チャート評はまた来週の水曜日に!

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2022年6月29日 (水)

ダンス動画が話題の曲がついに1位に

今週のHot100

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今週の1位は、MVのダンスが大きな話題となったあの曲が獲得。

今週1位を獲得したのはSEKAI NO OWARI「Habit」。先週の2位からランクアップ。今週、CDシングルがリリースとなり、CD販売数が4位にランクイン。ほか、You Tube再生回数が1位を筆頭に、ダウンロード数3位、ストリーミング数及びラジオオンエア数2位、PCによるCD読取数6位、Twitterつぶやき数42位、カラオケ歌唱回数46位を獲得し、ベスト10入り7週目にして1位獲得となりました。映画「ホリック xxxHOLiC」主題歌。MVのダンス動画が大きな話題となり人気を博し、ついに1位まで上り詰めました。オリコン週間シングルランキングでは初動売上2万3千枚で4位初登場。前作「Diary」の1万9千枚(3位)よりアップしています。

2位は先週3位だったOfficial髭男dism「ミックスナッツ」がワンランクアップ。これで11週連続のベスト10ヒット&通算9週目のベスト3ヒットとなりました。こちらもCDシングルがリリースとなり、CD販売数が3位にランクイン。さらにダウンロード数及びストリーミング数も1位にアップ。ほか、ラジオオンエア数5位、PCによるCD読取数2位、Twitterつぶやき数43位、You Tube再生回数6位、カラオケ歌唱回数6位にランクインし、総合順位は2位となりました。オリコンでは同作も収録した「ミックスナッツEP」が初動3万1千枚で3位初登場。前作「Universe」の3万7千枚(3位)からダウンしています。

3位は初登場。博多を拠点に活動するAKB系女性アイドルグループHKT48「ビーサンはなぜなくなるのか?」がランクイン。CD販売数で1位ランクイン。その他、PCによるCD読取数49位、Twitterつぶやき数22位、そのほかはランク圏外となり、総合順位は3位に。オリコンでは初動売上12万7千枚で同作が1位獲得。前作「君とどこかへ行きたい」の初動14万1千枚(2位)からダウンしています。

続いて4位以下の初登場曲ですが、今週は1曲のみ。J-JUN with XIA(JUNSU)「六等星」が10位にランクイン。元東方神起のメンバーで、現在はJYJのメンバーであるキム・ジェジュン(J-JUN)が、同じく元東方神起、現JYJのキム・ジュンス(XIA)と組んだシングル曲。CD販売数2位、PCによるCD読取数17位、Twitterつぶやき数71位、そのほかはランク圏外となり、総合順位は10位に留まりました。オリコンでは初動売上3万6千枚で2位初登場。J-JUN1の前作「BREAKING DAWN」の初動3万8千枚(1位)からダウン。

今週、ベスト10返り咲きも1曲。優里「ドライフラワー」が先週の14位から9位にランクアップ。3週ぶりのベスト10返り咲きを果たしています。特にストリーミング数が12位から10位にアップ、またカラオケ歌唱回数は変わらず1位。これで通算76週目のベスト10ヒットに。また「ベテルギウス」も10位から8位にアップ。こちらも通算32週目のベスト10ヒットとなっています。

また、他のロングヒット曲は、Tani Yuuki「W / X / Y」が7位から4位にアップ。You Tube再生回数は10位から11位にダウンしましたが、ストリーミング数は4位から3位にアップ。これで12週連続のベスト10ヒットとなっています。

Saucy Dog「シンデレラボーイ」も8位から7位にアップ。こちらはストリーミング数は先週と変わらず5位をキープしていますが、総合順位はワンランクアップ。これで通算21週目のベスト10ヒットとなりました。

今週のHot100は以上。明日はHot Albums!

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2022年6月27日 (月)

ポップな第7弾

Title:レキシチ
Musician:レキシ

すっかり人気ミュージシャンとして、その地位が定着した感のあるレキシの、約3年7ヶ月ぶり、タイトル通り、7枚目となるニューアルバム。あらためてレキシについて紹介すると、もともとSUPER BUTTER DOGのメンバーとして活動し、100sのメンバーでもあった池田貴史が、自らの趣味である日本史をコンセプトとして立ち上げたソロプロジェクト。最初は、若干、余興感もあったのですが、豪華なゲスト陣と、なによりもファンクやソウルミュージックに裏打ちされたクオリティーの高い音楽性と日本史をテーマとしたコミカルな歌詞のギャップが大きな評判を呼び、人気沸騰。このアルバムを含め、2作連続チャートでのベスト3入りを達成しています。

今回のアルバムでも多くの豪華ミュージシャンがゲストで参加。参加ミュージシャンには、日本史にちなんだニックネーム、レキシネームがつけられるのですが、レキシネームあ、たぎれんたろうことAwesome City Clubのatagi、にゃん北朝時代ことカネコアヤノ、さらにぼく、獄門くんこと打首獄門同好会が参加。それぞれが楽曲の中でもしっかり個性を発揮。あ、たぎれんたろうが参加した「たぶんMaybe明治」はAwesomeらしいシティポップ、にゃん北朝時代が参加した「マイ草履」はしっとりと聴かせるバラードチューンに仕上げています。

そしてアルバムの中で強いインパクトにもなっているのがぼく、獄門くんが全面的に参加した「鬼の副長HIZIKATA」で、打首獄門同好会の曲として違和感がないメタルチューン。ちょっと異色な楽曲となっています。ただ、どの楽曲もゲストミュージシャンに沿ったような曲調になっているのですが、作詞作曲はあくまでもレキシこと池田貴史本人。彼の音楽性の広さと、音楽的素養の深さを感じます。

そんな豪華なゲスト勢が参加したバラエティーある音楽性が特徴的なのですが、今回のアルバムはそんな中でも、全体的によりインパクトのあるポップな作風、あえていえば90年代や80年代後半あたりの匂いも感じさせるような楽曲が並んだような印象を受けます。先行シングルにもなった「ギガアイシテル」はホーンセッションも入ったメロディアスなポップチューン。続く「だぶんMaybe明治」も前述のように、90年代の空気感のあるAORですし、それに続く「だって伊達」もピアノ弾き語りからスタートし、バンドサウンドで盛り上がる展開のバラードナンバーはJ-POPの王道のような作風になっています。

その後も「Let's FUJIWARA」はディスコチューンでいかにも80年代ですし、「鬼の副長HIZIKATA」もメタルで、これまた80年代的な空気も感じます。最後を飾る「フェリーチェ・ベアト」も、シンセなども入った分厚いサウンドをバックに、感情たっぷりに聴かせるバラードナンバーはいかにもJ-POP的。全体的にポップでインパクトのある楽曲が並ぶ作品になっていました。

もちろんJ-POP的といっても、その根底にはしっかりとファンクやソウルの要素が感じられるのが池田貴史の実力。ここらへん、「洋楽風だけどルーツレス」という、よくありがちなJ-POPとは一線を画する点は強調しておきたいところ。今回も相変わらず、日本史をテーマとしたコミカルな歌詞も光っており、今回は特に幕末や明治をテーマとした曲が多く収録。今回のアルバムにちなんだアーティスト写真も明治の軍服を着たレキシの姿になっており、グッと近代に寄った内容になっています。

そんな訳で今回もいい意味で安定感のあるレキシの新作。特にここ数作、楽曲的にも歌詞的にもレキシらしい完成度が増し、完全にレキシとしての方向性が定まってきた感もあります。今後、この方向性が歌詞的にもサウンド的にも、さらにどのように展開・進化していくのか・・・とても楽しみです。

ただ今回のアルバム、ちょっと残念だったのが付属のDVD。いつもは豪華ゲストが参加したバラエティー的なノリのドキュメンタリーが収録されているのですが、コロナ禍で外での収録ができなかったからなのか、レコーディング風景を収録という、よくありがちなパターンに。これは以前の方がよかったなぁ。この点だけちょっと残念。まあ、アルバムとしての価値には全く影響しない話なのですが。

評価:★★★★★

レキシ 過去の作品
レキツ
レキミ
レシキ
Vキシ
ムキシ

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2022年6月26日 (日)

コロナ禍での音楽表現

Title:アダプト
Musician:サカナクション

前作「834.194」以来、約2年9カ月ぶりとなるサカナクションのニューアルバム。今回のアルバムは、昨年11月に行われた無観客オンラインライブからその後の観客を入れてのライブツアー、そしてこのアルバムへと続くプロジェクトの一環としてリリースされた作品。コロナ禍で作品を表現する企画の第一章と位置付けられているそうで、第二章「アプライ」へと続くことがアナウンスされています。

前作「834.194」もコンセプチャルな作品でしたし、ちょっと理念先行的な「頭でっかち」な方向性を感じてしまうのは気になってしまうのですが、それを差し引いても、今回のアルバム、ポップ作品としても非常に優れた作品に仕上がっていました。今回のアルバムは全9曲入りのミニアルバム的な作品(ただし、うち1曲はCDのみの収録となっており、配信では全8曲)。また、1曲目「塔」はアルバムの中でイントロ的なインスト作でしたので、実質的に8曲入りなのですが、どの曲もしっかりとそれぞれの曲の個性を主張するような楽曲が並んでいました。

アルバム全体としては、マイナーコード主体のメロディーラインで、メランコリックな作風が特徴的。その中でミディアムファンクやダブの要素を取り入れて、湿度の高い音楽をねっとりと聴かせる「キャラバン」からスタートし、彼ららしいエレクトロダンスチューンに、歌謡曲的なメロと歌詞が印象的な「月の椀」、ダイナミックなバンドサウンドで疾走感があり、ロックテイストの強い「プラトー」と続いていきます。

アルバムの中である種の核となっているのが5曲目の「ショック!」で、ラテン調のリズミカルで、不穏な雰囲気の作風のサスペンス調の作風が強いインパクト。ここまでグッと盛り上げておいて、そのあとにチルアウト的な、ドリーミーなインストチューン「エウリュノメー」を入れてくる構成がまた見事。ピアノやストリングスのアコースティック主体のアレンジで切なく聴かせる「シャンディガフ」から、ラストの「フレンドリー」はけだるいAOR風のミディアムチューンとなっています。

そしてこの最後「フレンドリー」の歌詞が強く印象的。

「正しい
正しくないと
決めたくないな
そう
考える夜」
(「フレンドリー」より 作詞 Ichiro Yamaguchi)

という歌詞に、まず、いろいろな意見についてすぐに正否をつけてさわぎたてる最近のネットの風潮を憂慮している感がありますし、さらに隠喩的ながらストレートなのが

「左側に寄って歩いた
側溝に流れてる夢が
右側に寄って歩いた
そこには何があるんだ」
(「フレンドリー」より 作詞 Ichiro Yamaguchi)

と、いかにもネット上で顕著な左右の対立を皮肉ったような歌詞になっています。隠喩にとどめている歌詞やメランコリックな曲調から、決して激しい主張にはなっていないものの、コロナ禍の中でより顕在化した意見の対立について憂慮するような歌詞が印象的でした。

配信やサブスクではここで終了。メランコリックなサカナクションらしいメロディーを軸としつつ、バラエティー富んだ作風が並んだ内容は、「コロナ禍での音楽表現を模索」というコンセプトに沿った、いわばいろいろな音楽の方向性を試した、とも言える作品に仕上がっていました。

ただ一方で、ここまで8曲という短さと、彼ららしいといえ、ちょっとメランコリックに偏りすぎな曲調に若干の物足りなさを感じていた本作ですが、私の本作での感触をさらに一段階、良いものとしたのがラストを締めくくる「DocumentaRy of ADAPT」。ライブではメンバー5人並んでパソコンでの演奏となった作品だそうですが、8分に及ぶミニマルテクノの作品が、最後の盛り上がりを作り出しており、またアルバムの幅もグッと広げています。配信やサブスクで聴けないのが残念ですが、これは是非、CD版で聴いてほしい作品。この作品を含めてアルバムとして完成しているのでは、とも感じてしまいました。

もっとも、このアルバムだけで完成ではなく、次にリリースされる「アプライ」を含めて完成される今回のプロジェクト。次の作品も非常に楽しみになってきます。あと個人的にはサカナクションのボーカル、山口一郎が最近、ナゴヤ球場の外野フェンスの広告枠を自費で購入し、サカナクションの広告を出したというニュースがあり、もともとドラゴンズファンだとは知っていたのですが、ここまで熱心なファンだったのか・・・と衝撃を受けています(笑)。そういうこともあってますます応援したくなってしまったサカナクション。これからの活躍も期待です!

評価:★★★★★

サカナクション 過去の作品
シンシロ
kikUUiki
DocumentaLy
sakanaction
懐かしい月は新しい月~Coupling&Remix works~
魚図鑑
834.194


ほかに聴いたアルバム

Still Dreamin'/布袋寅泰

60歳の誕生日に発売された、20枚目となるオリジナルアルバム。「まだ夢を見ている」というタイトル通りの積極的な音楽活動を感じさせますが、アルバムの方は、全体的に90年代っぽさを強く感じさせるようなメロディアスでポップな作品が主体。新たな挑戦というよりも、あらためて過去を振り返っているような印象も受けました。良くも悪くも無難な印象もあるのですが、60歳を迎えて、あらためて自らの地盤を固めているという感もあるのかもしれません。初回盤では昨年10月に、地元群馬のGメッセ群馬で実施した「HOTEI 40th Anniversary ~Double Fantasy Tour~ "BLACK or WHITE ?"『Hometown GIGS』」のライブ盤がついてきます。自身のソロ曲のみならずBOOWYの曲もセルフカバー。ベスト盤的なセレクトが楽しいのですが、ただ、やはり氷室ボーカルの曲で彼がボーカルを取るのは、いろいろな意味で違和感も・・・。

評価:★★★★

布袋寅泰 過去の作品
51 Emotions -the best for the future-
Paradox
GUITARHYTHM VI
Soul to Soul

It's the moooonriders/ムーンライダーズ

1975年に結成し、日本を代表するロックバンドとして長らく活動を続けてきたものの、2011年に無期限の活動休止となったムーンライダーズ。その後、何度かの再結成ライブを経て、昨年8月に活動再開を発表。活動休止前ラストのアルバムだった「Ciao!」から実に約10年半ぶりとなるニューアルバムがリリースされました。

ムーンライダーズとして久々の新譜となったものの、久々ということを全く感じられない、いい意味でいままでのムーンライダーズらしい、ポップだけど様々なサウンドが入って挑戦的で、そしてユーモラスな楽曲が並びます。曲によっては、若干、いかにも「おじさん」なユーモアさがノイズとなっていたりするのですが、そこを差し引いても、エキゾチックなサウンドや正統派ギターロック、ラップ風のボーカルまでも入った自由度の高い音楽性は健在。新加入の夏秋文尚以外全員が70歳前後という超ベテランバンドの彼らですが、バンドとしての意欲は全く衰えていないよう。今後の活躍にも期待です。

評価:★★★★★

ムーンライダーズ 過去の作品
Ciao!
moonriders Final Banquet 2016 ~最後の饗宴~

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