2023年9月30日 (土)

実に11年ぶり(!)のオリジナルアルバム

Title:Infinity
Musician:BONNIE PINK

「Heaven's Kitchen」や「A Perfect Sky」のヒットでおなじみのシンガーソングライターBONNIE PINK。最近、ちょっとその名前を聞かないな、と思っていたら、結婚・出産により活動休止状態となっていたようで、このアルバムはオリジナルアルバムとしては、2012年にリリースされたアルバム「Chasing Hope」以来、実に約11年ぶりとなるニューアルバム。久々となる新作となりました。

そんな、しばらくシーンからも遠ざかっていた彼女の久々となる新作。以前のアルバムにしても決して勢いのある傑作といった感じではありませんでしたし、この最近にしても決して目立ったヒット曲が収録されている訳ではありません。ただ、今回のアルバムは、洋楽テイストの強い爽やかなポップソングをベースとして、様々な音楽性をちりばめられている、BONNIE PINKらしい傑作に仕上がっていました。

冒頭を飾る「Spin Big」はまさに彼女らしい爽やかで明るいポップチューン。化粧品のCMあたりにピッタリと来そうな(?)作風になっていますし、「世界」は曲の中にちょうどよいインパクトとして入っているブルースの要素が、「宝さがし」はフォーキーな作品と、それぞれ洋楽的な要素も強い音楽性を感じさせます。

その後も「Control」ではロック的な要素が、「Irish Coffee」ではメロウなソウルの要素も取り入れ、さらに「Butter」ではファンキーなリズムが心地よい作品に。さらに「エレジー」ではピアノも入った分厚いサウンドでスケール感を持って聴かせるナンバーに。ラストを飾る「infinity」では再びメロウに歌い上げる楽曲と、最後まで様々な音楽性を聴かせつつ、アルバムは幕を下ろします。

前述のように決して派手さはありません。これといってインパクトのある核となるような曲もありません。ただ、全体的に爽やかで垢ぬけた洋楽テイストの強いポップスが流れ、その中でも様々な音楽性を聴かせてくれる構成となっており、最後まで飽きさせません。最近は女性ソロポップシンガーが数多くデビューしていますが、決して派手ではない曲調でここまでしっかりと聴かせてくれるという点で、ベテランらしい圧倒的な実力を感じさせてくれました。

久しぶりにBONNIE PINKのアルバムを聴いて、あらためて彼女が優れたシンガーソングライターであることを実感した1枚。また、彼女の魅力についても再認識することが出来ました。なにげにすでにデビューから27年目という彼女ですが、これからの活躍も楽しみです。

評価:★★★★★

BONNIE PINK 過去の作品
CHAIN
ONE
Dear Diary
Back Home-BONNIE PINK Remakes-
Chasing Hope


ほかに聴いたアルバム

HERE&NOW/ゴスペラーズ

ゴスペラーズの新作は5曲入りのミニアルバムなのですが、今回、5曲共に、他のミュージシャンから楽曲提供を受けた作品。それも若手の、新進気鋭のミュージシャンたちからの提供を受けており、さらに1曲については一般公募という、ある意味挑戦的な試みとなっています。ただ、ちょっと残念なのは、その結果が、全く新しいゴスペラーズというよりは、比較的ゴスペラーズのイメージ通りといった印象を受ける曲となっており、目新しさはあまり感じません。やはり提供するのが、若手ミュージシャンだとどうしてもゴスペラーズのイメージに寄り添ってしまう曲になりがちですよね。もうちょっといつものゴスペラーズと大きく異なる曲を聴きたかった感もあるのですが。

評価:★★★★

ゴスペラーズ 過去の作品
The Gospellers Works
Hurray!
Love Notes II
STEP FOR FIVE
ハモ騒動~The Gospellers Covers~
The Gospellers Now
G20
Soul Renaissance
What The World Needs Now
G25 -Beautiful Harmony-
アカペラ2
The Gospellers Works 2

懐かしい月は新しい月 Vol.2~ Rearrange & Remix works ~/サカナクション

2015年にリリースしたカップリング&リミックスアルバム「懐かしい月は新しい月 〜Coupling & Remix works〜」の第2弾となるアルバム。Disc1は「月の現 ~Rearrange works~」と題され、メンバーのうち、山口一郎を除く4人によるリアレンジアルバム、Disc2は「月の幻 ~Remix works~」と題され、CorneliusやFloasting Pointsなど豪華なミュージシャンによるリミックスアルバムとなっています。全体的にはエレクトロサウンドをベースとした実験的な作風に。正直、原作の新たなイメージを引き出したような驚かされるほどのアレンジはなく、全体的には良くも悪くも「良く出来た」感のある内容に。前作同様、ファンにとっては面白さを感じそうですが、どちらかというとファンズアイテム的な様相の強いアルバムになっていました。

評価:★★★★

サカナクション 過去の作品
シンシロ
kikUUiki
DocumentaLy
sakanaction
懐かしい月は新しい月~Coupling&Remix works~
魚図鑑
834.194
アダプト

| | コメント (0)

2023年9月29日 (金)

無難にまとまったソロ2作目

Title:Steppin' Out
Musician:KIRINJI

KIRINJIとしては約1年10か月ぶりとなるニューアルバム。デビュー当初から堀込兄弟のデゥオとして活動を進めていたキリンジが、メンバー堀込泰行のまさかの脱退を経て、バンドKIRINJIに。さらに堀込高樹以外のメンバーが脱退したことによりソロプロジェクトとなり・・・とその活動のスタイルを変え、今回のアルバムは堀込高樹のソロプロジェクトとなってから2枚目のアルバム。前作との間には新レーベル「syncokin」を設立し、本作は新レーベル設立後、初となるアルバムとなります。

バンド時代のKIRINJIは、兄弟デゥオ時代とは異なるバンドサウンドを前に出してきた作風が特徴的でした。そして前作「crepuscular」はバンドという枠組みを外れ、ソロミュージシャンとなったことにより、自由度の増した傑作に仕上がっていました。それに対して今回のアルバムは、基本的にはKIRINJI、というか堀込高樹らしいメロウなソウルチューンが並ぶアルバムになっていました。

「Runner's High」は文字通り、マラソンの際に生じる高揚感を曲にしたナンバーで、メロウなエレクトロソウルチューン。歌詞の中に出てくる「新しいスタジアム/切り倒された街路樹」という歌詞は、最近ニュースになっている神宮外苑の再開発を意識したものでしょうか?「nestling」は軽快で疾走感のあるナンバー。テレビ東京系ドラマ「かしましめし」の主題歌にもなった曲ですが、ドラマ主題歌らしいインパクトあるポップチューンとなっています。

中盤の「ほのめかし」は最近話題の韓国のバンド、SE SO NEONとのコラボ。HIP HOP的な要素も加わったメロウでドリーミーな作風が印象的。「I ♡ 歌舞伎町」はこちらも軽快でメロウなナンバーなのですが、歌舞伎町の今を描写した歌詞が意外とヘヴィーな内容なのが印象に残ります。そしてラストを飾る「Rainy Runway」はホーンセッションも入った、こちらも軽快でメロウなソウルチューン。最後までKIRINJIらしいナンバーで幕を締めくくります。

そんな感じで最初から最後までKIRINJI堀込高樹らしい曲が並ぶ今回のアルバム。1曲1曲のクオリティーは文句なしで、この点はさすがといった感じはします。ただ、ここ最近、挑戦的な作品が続き、バラエティー豊富な曲が並んでいたKIRINJIのアルバムの中では、全体的に無難といった印象を受けてしまいました。良くも悪くも昔ながらのKIRINJIといった感じで、目新しさはなく、インパクトという面でもかつての堀込高樹らしい、口語体の強い文体の独特な歌詞は少なく、ちょっと物足りなかったような印象も。様々な挑戦を続けたので、ここに来て少し原点に戻ったアルバムと言えるかもしれません。ただ、アルバムとしてのクオリティーは申し分ないのですが、ここ最近の挑戦的だったKIRINJIの作品の中ではもう一歩といった印象を受けるアルバムでした。

評価:★★★★

キリンジ(KIRINJI) 過去の作品
KIRINJI 19982008 10th Anniversary Celebration
7-seven-
BUOYANCY
SONGBOOK
SUPERVIEW
Ten
フリーソウル・キリンジ
11
EXTRA11
ネオ
愛をあるだけ、すべて
Melancholy Mellow-甘い憂鬱-19982002
Melancholy Mellow II -甘い憂鬱- 20032013
cherish
KIRINJI 20132020
crepuscular


ほかに聴いたアルバム

5am/milet

MAN WITH A MISSIONとのコラボ曲「絆ノ奇跡」がアニメ「鬼滅の刃」オープニングテーマに起用され、ロングヒットを起用したmiletのニューアルバム。同曲は残念ながら未収録なのですが、同じくMWAMとのコラボで「鬼滅の刃」エンディングテーマだった「コイコガレ」が収録。この曲も含めて、前半はかなりロック色の強いアルバムに仕上がっています。一方後半はメランコリックに歌い上げるような作風の曲が多い本作。以前から同様、J-POPらしい無駄に分厚い仰々しさを感じさせるアレンジは同様ながらも、それに負けない力強いボーカルはやはり魅力的。前作同様、サウンドについてはもうちょっと交通整理をした方がよいと思うのですが。

評価:★★★★

milet 過去の作品
eyes
Who I Am
visions

聖飢魔Ⅱ 期間再延長再集結「35++執念の大黒ミサツアー -大阪-」/聖飢魔Ⅱ

1999年の解散後も、たびたび再結成を行っているヘヴィーメタルバンド聖飢魔Ⅱ。2020年に地球デビュー35周年を記念して再集結する予定だったものの、コロナ禍で大黒ミサツアー(ライブツアー)が延期になりました。そしてその後、2022年によりようやく実施できた、タイトル通り「執念の大黒ミサツアー」の中から大阪での大黒ミサ(ライブ)の模様を収録した大教典(アルバム)。もともと、その演奏には定評のあった彼らだけに、演奏自体は文句なしの迫力。途中にはMCも収録されているのですが、こちらもユニークで楽しく聴かせます。細かい点まで悪魔であることに拘った構成も非常に楽しく、熱烈な信者ではなくても黒ミサに足を運びたくなるようなそんな大教典でした。

評価:★★★★★

聖飢魔Ⅱ 過去の作品
XXX-THE ULTIMATE WORST-
BLOODIEST

| | コメント (0)

2023年9月28日 (木)

ほぼK-POPばかり・・・

今週のHot Albums

http://www.billboard-japan.com/chart_insight/

ここ最近、K-POP勢の目立つアルバムチャートとなっていましたが、今週は10枚中7枚までK-POP系というチャートとなっています。

まず1位はJO1「EQUINOX」。吉本興業と韓国のCJ ENMの合弁会社LAPONEエンタテイメント所属の和製K-POPグループ。CD販売数及びダウンロード数で1位を獲得し、総合順位も1位。オリコン週間アルバムランキングでは初動売上22万5千枚で1位初登場。前作「KIZUNA」の初動26万1千枚(1位)からダウンしています。

2位は韓国の男性アイドルグループRIIZE「Get A Guitar」が7位からランクアップし、3週目にしてベスト3入りを果たしています。CD販売数が7位から2位にアップ。オリコンでも今週2位にランクインしています。

3位はこちらも韓国の男性アイドルグループTREASURE「Reboot」が先週と同順位をキープ。2週連続のベスト3ヒットとなっています。

続いて4位以下ですが、こちらも4位Stray Kids「Social Path(feat.LiSA)」、5位V「Layover」、6位NiziU「COCONUT」、9位NCT「Golden Age」と、和製K-POPグループのNiziUも含めてK-POP系がズラリと並ぶ結果に。ビルボードチャートの普及によって、以前のようにシングルCDを大量に販売してヒットを演出する手法が取れなくなり、アイドルの市場がアルバムに移った結果でしょうか。アルバムというアイテムがアイドルグッズになりつつあるような感もあり、今後の音楽文化がどうなってしまうのか、考えさせられます。もっとも、非アイドルのミュージシャンも普通にアルバムを制作し続けていますので、アルバムという文化は簡単には終わらないのかもしれませんが。

そんな中で初登場は7位に蓮ノ空女学院スクールアイドルクラブ 「夏めきペイン」がランクイン。アニメキャラによるアイドルプロジェクト「ラブライブ!蓮ノ空女学院スクールアイドルクラブ」に登場する架空のアイドルグループ。CD販売数6位、ダウンロード数10位。オリコンでは初動売上1万枚で7位初登場。前作「Dream Believers」の初動9千枚(5位)から微増となっています。

8位初登場はDouble Face「あんさんぶるスターズ!!アルバムシリーズ 『TRIP』」。女性向け男性アイドル育成ゲーム「あんさんぶるスターズ!」に登場する架空のアイドルユニットによるアルバム。CD販売数7位、ダウンロード数18位。オリコンでは初動売上7千枚で10位初登場。同シリーズの前作、Ra*bits「あんさんぶるスターズ!!アルバムシリーズ『TRIP』」の初動8千枚(9位)からは若干のダウンとなっています。

最後10位には、こちらは日本のアイドルグループ、フィロソフィーのダンス「One Summer Dream」がランクイン。CD販売数10位。オリコンでは初動売上6千枚で11位初登場。オリコンでは初動売上6千枚で11位初登場。前作「愛の哲学」の初動7千枚(8位)より微減。

今週のHot Albumsは以上!チャート評はまた来週の水曜日に!

| | コメント (0)

2023年9月27日 (水)

3週目にして1位獲得!

今週のHot100

http://www.billboard-japan.com/chart_insight/

チャートインから3週目にして見事1位獲得です。

Ado_show

今週1位にはAdo「唱」が先週の3位から2ランクアップして、ランクイン3週目にして1位獲得となりました。ダウンロード数3位、YouTube再生回数2位は先週から変わらず。ラジオオンエア数は6位から8位と若干のダウン。一方、ストリーミング数は3位から1位にアップし、今回の1位の大きな要因となっています。ユニバーサル・スタジオ・ジャパンのハロウィンイベント「ハロウィーン・ホラー・ナイト」とのコラボ楽曲とタイアップ効果としてはさほど大きいとは思わないのですが、インパクトあるEDMチューンという楽曲自体の影響でしょうか、見事1位獲得となっています。

2位はYOASOBI「アイドル」が先週と同順位をキープ。YouTube再生回数は4位から3位にアップ。カラオケ歌唱回数も18週連続の1位となりましたが、ダウンロード数は6位から8位にダウン。さらに先週1位に返り咲いたストリーミング数は今週、Adoに押し出される形で2位にダウンしています。これで24週連続のベスト10ヒットとなりました。

3位は先週4位だったKing Gnu「SPECIALZ」が2週ぶりにベスト10返り咲き。ダウンロードすは4位から5位、ストリーミング数は2位から3位にダウンと、全体的に下落傾向となっているものの、先週までランク圏外だったYouTube再生回数が今週5位にランクインし、総合順位はワンランクアップとなっています。

続いて4位以下の初登場曲ですが、5位にはジャニーズ系男性アイドルグループSexy Zone「本音と建前」がランクイン。CD販売数1位、ラジオオンエア数21位、YouTube再生回数28位。フジテレビ系ドラマ「ウソ婚」主題歌。椎名林檎作詞作曲の曲で、タイトルは彼女らしい感じはするのですが、ジャニーズ系騒動の渦中でのタイトルとしてはちょっと微妙な印象も。オリコン週間シングルランキングでは初動売上22万6千枚で前作「Cream」の21万5千枚(1位)よりアップ。ジャニーズ系のこの状況の中、ジャニーズ事務所の「利」となるCDを買うという行為を行うファンの倫理観をかなり問いたいところなのですが。

6位にはサザンオールスターズ「Relay~杜の詩」がランクイン。ダウンロード数及びラジオオンエア数で1位を獲得。YouTube再生回数は86位に留まったものの、総合順位では6位にランクインしています。配信限定のシングルですが、現在、賛否の議論を巻き起こしている明治神宮外苑の再開発計画に対しての問題提起となっている曲。社会派的な曲を歌うことも少なくないサザンですが、具体的な事象に対してストレートに歌にするのは珍しい印象を受けます。

そして10位にはシャイトープ「ランデヴー」が先週の11位からランクイン。ベスト10に初登場しています。シャイトープは本作が配信シングルとしては3作目となる大阪のスリーピースバンド。TikTokを中心に話題となり、8月23日及び30日付のビルボードHeatseekers Songsで1位を獲得。その後も人気は伸び続け、ストリーミング数で6位にランクイン。ダウンロード数63位、ラジオオンエア数89位、YouTube再生回数49位、カラオケ歌唱回数64位を記録し、ついに総合順位でのベスト10入りを果たしました。ミディアムソングで切なく聴かせるギターロックで、タイプとしては優里やSaucy Dogの系統といったイメージ。このタイプの曲がTikTokでは受けるのでしょうか。

続いてロングヒット曲ですが、まずキタニタツヤ「青のすみか」は6位から7位とワンランクダウン。ダウンロード数は12位から17位、YouTube再生回数も7位から10位にダウン。ストリーミング数は先週と変わらず4位をキープ。これで12週連続のベスト10ヒットとなっています。

相変わらずしぶとさを見せているVaundy「怪獣の花唄」は先週と変わらず8位をキープ。カラオケ歌唱回数は18週連続の2位をキープ。ダウンロード数は25位から22位、ストリーミング数は9位から8位、YouTube再生回数も15位から14位と、ここに来て若干のアップとなっています。これで39週連続のベスト10入り。

最後、Jung Kook「Seven(feat.Latto)」は7位から9位にダウン。YouTube再生回数はここに来て9位から16位と大幅ダウン。ただストリーミング数は6位から5位と若干のアップに。これで11週連続のベスト10入りとなりました。

今週のHot100は以上。明日はHot Albums!

| | コメント (0)

2023年9月26日 (火)

亡き親に捧げる

Title:everything is alive
Musician:Slowdive

Everything_is_alive

日本はおろか、世界的にもいまだに一部で根強い支持を受けているシューゲイザー系。その四天王とも御三家とも呼ばれるバンドのひとつがSlowdive(まあ、呼び方的にも日本だけでしょうが)。1995年に解散したものの2014年に再結成。2017年に実に22年ぶりとなるアルバムをリリースした後、約6年のスパンを経て、無事、再結成後、2枚目となるニューアルバムを完成させました。

そんな久々となる今回のアルバムは2020年に亡くなったボーカル、Goswellの母親とドラマー、Scottの父親に捧げられているそうです。そのため、アルバム全体として悲しみにつつまれつつも、どこか荘厳な雰囲気を感じさせる楽曲が特徴的。メランコリックな「shanty」からスタートし、「prayer remembered」「andalucia plays」は荘厳な雰囲気のサウンドをゆっくりと聴かせる楽曲になっています。「kisses」「skin in the game」なども悲しみあふれるメロディーラインが印象に残りますし、最後を飾る「the slab」もダイナミックなサウンドにメランコリックと荘厳さを感じさせる楽曲に。亡き親に捧げるというイメージにピッタリ来るようなメランコリックなアルバムに仕上がっていました。

また、もうひとつの大きな特徴としては全体的にシューゲイザーなサウンドを散りばめながら、ポストロックやドリームポップにカテゴライズされそうなサウンドも特徴的。まあ、シューゲイザーもポストロックもドリームポップも、明確に区別されるようなジャンルではないのでしょうが・・・。もともと「ミニマルなエレクトリック・レコード」を構想していたそうですが、その構想は随所に残されており、アルバムの冒頭「shanty」はいきなりエレクトロなイントロからスタート。すぐにギターサウンドが入ってくるのですが、このスタートは明らかに当初の構想の名残りでしょう。その後も「andalucia plays」や「chained to a cloud」にもエレクトロサウンドが残されており、アルバムの中でもちょうどよいインパクトとなっています。

また、荘厳なサウンドが特徴的な「prayer remembered」はMOGWAIを彷彿とさせるようなポストロック的な作風になっていますし、メランコリックに美しく聴かせる「alife」なども、ドリームポップという呼び方をされそうなポップチューンになっています。後半の「skin in the game」はいかにもシューゲイザー的なギターノイズを聴かせてくれるのですが、おそらくエレクトロサウンドに起因するような、ドリーミーなサウンドがアルバムの中に散りばめられている作品に。メランコリックな雰囲気と混ざり合うことにより、聴いていて心地よく、夢見心地になるような作品に仕上がっていました。

エレクトロサウンドを構想し、ポストロック的な要素を入れた・・・と言っても、全体的には決して目新しい訳ではありません。ただ、メランコリックでドリーミーなメロディーやサウンドは、シューゲイザー系の雄として高い支持を得ていたバンドの実力を感じさせるには十分すぎるほど魅力的なものでした。とにかく聴いていて心地よさを感じる傑作アルバム。再結成後も全く衰えていないバンドの魅力を感じられる1枚でした。

評価:★★★★★

Slowdive 過去の作品
Slowdive


ほかに聴いたアルバム

Perfect Saviors/The Armed

Perfect

アメリカはデトロイト出身のハードコアバンドによる3枚目のアルバム。前作「ULTRAPOP」はハードコアなサウンドの中にエレクトロサウンドも加えてカオス感を出しつつ、ポップな要素が加わったメロの対比がユニークで、個人的に2021年の洋楽私的ベストアルバムの1位に選ぶなど、かなりはまったアルバムでした。それに続く待望のアルバム。今回もパンキッシュなロックにエレクトロやらサイケやらの要素を加えたサウンドがユニークなのですが・・・ただ全体的にポップなメロが前面に押し出されて、カオスな要素がかなりクリアになってしまったアルバムに。ポップな要素が増して聴きやすくなった反面、前作にような勢いはちょっと後退してしまった感も。ちょっと期待していた方向性からは外れてしまった感のある作品でした。

評価:★★★★

The Armed 過去の作品
ULTRAPOP

Fly or Die Fly or Die Fly or Die ((world war))/Jaimie Branch

新進気鋭のジャズトランぺッターとして注目されていたものの、昨年、わずか39歳という若さでこの世を去ってしまったジェイミー・ブランチによる遺作。トライバルなリズムやラテンの要素を取り入れつつ、リズミカルでダイナミックに聴かせる演奏が魅力的。ジャズの要素を入れつつも、ロック的なダイナミズムも感じさせるサウンドが独特で、ジャズリスナーに留まらず広い層が楽しめそうな非常に迫力ある作品に仕上がっていました。

評価:★★★★★

| | コメント (0)

2023年9月25日 (月)

バンドの実力を感じさせる傑作

Title:大人の涙
Musician:マカロニえんぴつ

フルアルバムとしての前々作「hope」、前作「ハッピーエンドへの期待は」で続けざまに傑作をリリースしてきたポップバンド、マカロニえんぴつ。正直、その前にリリースされたアルバム「season」や、その間にリリースされたミニアルバムの出来は決して良くはなかったこともあって、率直な感想としては、前の2作はバンドとしての勢いによってつくられた作品・・・という評価でした。そして、それに続く約1年7ヶ月ぶりの新作となる本作。これが先の2作に勝るとも劣らない傑作アルバムに仕上がっていた日には、もう、これがマカロニえんぴつとしての実力と言わざるを得ないでしょう。マカロニえんぴつとしてのポップミュージシャンとしての実力を感じる作品となっていました。

序盤から、どの曲もシングルカットできそうなポップでインパクトある楽曲が続くのですが、前半で特に核になっていたのが「ペパーミント」でしょうか。サビ先のインパクトあるポップスなのですが、明るさを感じるポップの中に隠し味のように切ないフレーズが混ざっているあたりが印象に残ります。さらにこれに続く「ネクタリン」もポップなメロがインパクトある作品。Eテレ「天才てれびくん」テーマ曲のセルフカバーで、子供が見ている関係で原曲を何度も聴いているのですが、マカロニえんぴつバージョンも思った以上に違和感ないどころか、しっかりと彼らの新たな代表曲になりそうなセルフカバーに仕上がっています。

その後も切ないメロと歌詞が印象に残る「リンジュー・ラヴ」や打ち込みのリズムを入れつつ、メランコリックなメロを聴かせる「だれもわるくない」、歌謡曲的な哀愁メロを聴かせてくれる「TIME」、メロディアスなギターロックチューン「星が泳ぐ」とインパクトあるポップチューンは続いていきます。特に後半に関しては、ポップなメロに主軸を置いたシンプルなナンバーの並んだ前半と比べると、音楽的にもバリエーションある楽曲が並ぶのも特徴的。前述のように打ち込みを入れた「だれもわるくない」、歌謡曲風の「TIME」はもちろん、「Frozen My Love」ではパンクロックにも挑戦しています。ラストを飾る「ありあまる日々」はアコギ1本で聴かせるフォーキーな楽曲に。録音状態もデモ音源的なラフな録音となっており、このいい意味での生々しさもひとつのインパクトとなっています。

ただ、この中盤に配された「嵐の番い鳥」はちょっと違和感。ガールズロックバンド、ヤユヨのボーカリスト、リコをゲストに迎えた男女デゥオのナンバーなのですが、ベタなムード歌謡風のノヴェルティーソング。この手のノベルティーソングをアルバムの中に入れてくるのも彼らの特徴なのですが、ちょっと異質すぎて、アルバムの流れを邪魔しているような・・・。最後にボーナストラックやシークレットトラック的に入れた方がよかったようにも思います。

一方、いい意味で異質なものに感じたのはアルバムの冒頭を飾る「悲しみはバスに乗って」で、メロディーラインこそ彼ららしいポップなものなのですが、「死」を織り込ませつつ、生きることの意味を問うような歌詞が印象的で、ポップバンドとしてはあきらかにヘヴィーな作品。こういった曲をアルバムの最初に配してくるあたり、バンドとしての挑戦心や自信のようなものを感じますし、バンドとしての深みを感じさせる構成にもなっているように感じました。

全体的にはシンプルなポップソングにルーツレスな楽曲、サビ先だったり転調だったりも用いた良くも悪くもJ-POP的な要素も強い作品なのですが、一方でメロディーラインは決して派手はないもののメロディーラインの展開でしっかりと聴かせる良質な歌を聴かせてくれますし、ほどよいバリエーションにもミュージシャンとしての音楽性の幅も感じさせます。なによりも歌を聴かせるポップチューンが並ぶだけに最後までワクワクしながら聴きとおすことの出来たアルバムで、個人的には年間ベストクラスの傑作アルバムに仕上がっていたと思います。

ただ、アルバムの出来と反比例して、売上的には前々作から下落傾向なのは気になるところ。確かに派手なわかりやすさがない分、なかなかシングル単位でのヒットが続かないのかもしれませんが、これだけの傑作をリリースし続ければ、また人気が再燃する日は近いような気がします。彼らの実力を存分に感じた傑作でした。

評価:★★★★★

マカロニえんぴつ 過去の作品
season
hope
愛を知らずに魔法は使えない
ハッピーエンドへの期待は
wheel of life

| | コメント (0)

2023年9月24日 (日)

どす黒いグルーヴがカッコいい!

Title:ROLL
Musician:EMILAND

2019年、16年に及ぶ活動に幕を下ろしたガールズソウルバンド、ズクナシ。そのメンバーの衣美と茜がその後、すぐに活動を開始したバンドが、その名もEMILAND。2020年にデビューアルバム「OPEN」をリリースしましたが、その後、コロナ禍を経て、約3年8ヶ月ぶりとなるニューアルバムをリリースしました。

そのデビューアルバムとなった「OPEN」は、EMILANDとしての挨拶がわりとなったアルバム。ソウルバンドという様相が強かったズクナシに比べて、明確にファンクの要素が強くなり、ズクナシとは異なる新たな一歩を感じさせたアルバムでしたが、それに続く2枚目のアルバムは、EMILANDとしてのバンドの方向性がより明確となった作品になっていました。

その方向性とは、ズクナシ以上にバンド色が強く、またどす黒いグルーヴを聴かせてくれるファンクバンドとしての方向性。1曲目を飾る「On and On」はまさにそんなバンドの方向性を決定づける、非常にどす黒いバンドサウンドを聴かせてくれる1曲。「Clean Up This World」も比較的シンプルなサウンドながらも軽快でグルーヴ感あるバンドサウンドを前に押し出した疾走感のあるナンバーになっていますし、その後もベースラインのチョッパーがファンキーなインスト「Chicken in the Pocket」、タイトル通り、ファンクを前面に押し出した「JJ FUNK Ⅱ」など、どす黒いファンクサウンドを前面に押し出している点が大きな特徴となっています。

一方で、どこかユーモラスさを感じさせる歌詞も特徴的で、そんな歌詞をソウルやファンクのトラックに上手く載せている点もユニーク。「せねば」はまさにそんな楽曲で、やらなくてはいけないのになかなか出来ない、よくありがちな心境の愚痴を、上手くメロウなサウンドに載せ、実に絶妙なソウルバラードに仕上がていますし、「エスカルゴ」も、有名な童謡の一節を使い、ユーモラスながらもぶっといサウンドのファンクナンバーに仕上げている曲。のろまな自分の性格をかたつむりに合わせた歌詞もユニークで、こちらも新たなライブの定番になるそう?また、単純にユーモラスな曲ばかりではなく「誰のものでも」のように社会派な歌詞を聴かせてくれる曲もあります。

基本的にファンクナンバーがメインなのですが、ラストを締めくくる「FREEWAY」ではフィリーソウルを聴かせてくれたりと、それなりのバリエーションを持たせつつ全11曲入り48分、最初から最後までソウルやファンクからの影響が顕著なグルーヴ感あふれるバンドサウンドが心地よいナンバー。ほどよくユーモラスさもアルバムを楽しむ要素として加えられており、ライブでも文句なしに盛り上がりそうなアルバムになっていました。バンドとしての方向性がより明確になった1枚。今後の活躍も楽しみです。

評価:★★★★★

EMILAND 過去の作品
OPEN


ほかに聴いたアルバム

gravity/androp

Gravity_androp

andropの、ミニアルバム、フルアルバム含めて13枚目となる新作。全7曲入りなので、ミニアルバムとしての様相の強い作品なのですが、たった7曲ながらもギターロックあり、HIP HOP風のナンバーあり、ダンスチューンあり、サイケ風な曲ありとバラエティーのある楽曲は最近のandropらしい感じ。ただ一方で、その結果、バンドとしての主軸がいまひとつはっきりせずインパクトも薄く、印象も薄くなってしまっているのも残念な感じ。ここ数作、人気面でも下落傾向なのはそのようないまひとつバンドとしての軸がはっきりしない点が要因なような・・・。

評価:★★★★

androp 過去の作品
door
relight
one and zero
period
androp
best [and/drop]
blue
cocoon
daily
effector

T-BOLAN COMPLETE SINGLES~SATISFY~/T-BOLAN

1990年代のビーイング系ブームの代表格的なバンド、T-BOLAN。1999年に解散後、現在は2度目の再結成により活動を再開しているようですが、このたびそんな彼らの再結成後の作品を含めたシングル集がリリースされました。懐かしさもあり、今、彼らの曲を聴いたらどう感じるかな、という興味もありアルバムで聴いてみたのですが・・・確かに、懐かしいという印象は受けつつも、悪い意味でいかにもビーイング系だな、ということを再認識させられました。特にDisc1の方は、今でいえばAIが作ったんじゃないの?と思うような、インパクトこそあれど、似たような曲ばかりが並んで、なぜこれが90年代にあれだけ売れたのか、疑問に感じてしまいます。Disc2の方は、もうちょっとバンドテイストも増して、個性を感じさせる曲も少なくなかったのですが。彼らに対して抱いていた印象が何も変わらなかったシングル集でした。

評価:★★★

| | コメント (0)

2023年9月23日 (土)

戦前戦後のヒット曲

10月から、笠置シヅ子をモデルとしたのNHK朝の連続テレビ小説「ブギウギ」の放送が予定されています。それをきっかけに日本コロムビアで「笠置シヅ子とブギウギの時代」と題された企画CDがリリースされたのですが、そのうち、笠置シヅ子と淡谷のり子のアルバムに関しては以前紹介しました。今回はそれに続く形で8月にリリースされた2枚のアルバム、笠置シヅ子と同様に戦前戦後に一世を風靡した女性歌手、渡辺はま子と、笠置シヅ子の「東京ブギウギ」や淡谷のり子の「別れのブルース」などを作曲し、戦前戦後を代表する作曲家、服部良一の曲を集めたオムニバスアルバムです。

Title:渡辺はま子の世界~蘇州夜曲~
Mucisian:渡辺はま子

今でも多くの歌手がカバーしている「蘇州夜曲」を1940年にヒットさせたほか、戦前戦後に数多くの曲をヒットさせ一世を風靡した女性歌手、渡辺はま子。戦後も活躍し、紅白歌合戦には第1回から第9回まで連続出場。特に第1回の紅白歌合戦の紅組のトリをつとめるなど、その名を歴史に刻んでいます。

アルバムではその「蘇州夜曲」に続いて「シナの夜」「広東ブルース」と中国をイメージしたような曲が並びます。中国を侵略していた戦前の日本にとって、今以上にエキゾチックさを感じさせる遠くて近い土地だったのでしょうか。特にDisc1に収録されている曲に関しては、そんなエキゾチックなイメージを強く感じさせる曲が並びます。

ただ、ある意味時流に乗っているイメージも強く、「愛国の花」「軍国銀座娘」のような戦前歌謡、あるいはいわば軍国歌謡と言うべき楽曲も多く、また楽曲としてもエキゾチックな楽曲からスタートしつつ、アルバムを聴き進めると急激にムード歌謡曲、演歌的な作品になっていく点も特徴的。洋楽からの影響も強く感じる笠置シヅ子や淡谷のり子の作品とは対照的にも感じられましたし、ある意味、自らのスタイルを時流にのせていくような笠置シヅ子や淡谷のり子のスタイルとは異なり、どちらかというと、時流にそってスタイルも変えていくように感じます。その結果として軍国歌謡も少なからず披露していたのでしょう。

個人的には笠置シヅ子や淡谷のり子と比べると、今となってはより時代を感じさせてしまう部分が大きいのかな、とも思います。ただ、これはこれで戦前戦後の日本歌謡界の歩みを知ることが出来るオムニバスアルバムでした。

評価:★★★★

Title:服部良一の世界~青い山脈~

このオムニバスのサブタイトルも「青い山脈」ですし、笠置シヅ子の「東京ブギウギ」などのヒットもありますし、服部良一と言うと戦後歌謡界を代表する作曲家というイメージがありますが、戦前から数多くのヒットを飛ばしていた人気作曲家でした。このオムニバスがユニークなのは、1枚目の冒頭に「青い山脈」を持っていきつつも、その後のDisc1は基本的に戦前の彼の代表曲が、Disc2には戦後の代表曲が収録されている構成となっています。

ただ、服部良一について戦後の活躍が目立つのは、やはり楽曲が全体的に洋楽の影響が強く、洒脱な雰囲気の曲が多いのが、「アメリカの文化が入ってきて、一気にあか抜けた」という戦後の勝手なイメージとマッチする部分が大きいのでしょう。実際、以前、当サイトでも紹介した「昭和ブギウギ 笠置シヅ子と服部良一のリズム音曲」でもサウンドやリズムは洋風、メロディーは和風という点が服部良一の特徴として描かれていました。

実際、服部良一の楽曲にはベタな演歌もある一方、ジャズやスウィングを取り入れた曲が目立ちますし、「バラのルムバ」「香港チャチャチャ」ではラテンのリズムを取り入れているほか、「東京べべ」という曲に至っては、サウンドは和製ブルースではなく、本場アメリカのブルースの要素すら感じさせる曲になっています。

ところが興味深いことに今回、Disc1に戦前の曲、Disc2に戦後の曲が並んでいるのですが、同じ作曲家の作品なのである意味当たり前と言えるのかもしれませんが、そこに作風の断絶はありません。戦前の曲にも淡谷のり子の「おしゃれ娘」や笠置シヅ子の「ラッパと娘」のような、ジャズやスウィングの要素の強い曲が並んでおり、決して洋風の作品が戦後に突然現れたわけではないことを物語っています。前述の「昭和ブギウギ 笠置シヅ子と服部良一のリズム音曲」の著者、輪島裕介は、同書での目的として「一九四五年の敗戦を決定的な文化的断絶とする歴史観への挑戦」をあげていましたが、奇しくもこのオムニバスアルバムは、戦前戦後に文化的にも連続性があったことを如実に物語る内容になっていました。

そういう意味でも戦前戦後の服部良一の代表曲が並んだ本作は、その戦前戦後の文化的連続性を感じされる非常に興味深い内容になっていたと思います。戦前戦後のヒット曲を知るには最適なオムニバスアルバム。これを機に、服部良一の世界に触れるにはピッタリの作品でした。

評価:★★★★★


ほかに聴いたアルバム

RESPECT ALL/AI

ちょうど1年半ぶりとなるAIのニューアルバム。全体的に彼女らしい力強いソウルチューンが特徴的。子供との関係を歌った「指を握る小さな手」など印象的だが、全体的に歌詞は前向きな応援歌的なものが多い印象を受けます。その点については好きな人は好きかもしれないのですが、若干、鼻白む印象も受けてしまう点も・・・。まあ、もともとこのタイプの曲は多かったので、その点も含めてAIらしいアルバムと言えるのかもしれないのですが。

評価:★★★★

AI 過去の作品
DON'T STOP A.I.
VIVA A.I.
BEST A.I.
The Last A.I.
INDEPENDENT
MORIAGARO
THE BEST
THE FEAT.BEST
和と洋
感謝!!!!! Thank you for 20 years NEW&BEST
IT'S ALL ME - Vol.1
IT'S ALL ME - Vol.2
DREAM

| | コメント (0)

2023年9月22日 (金)

デビュー50周年のオールタイムベスト

Title:Greatest Hits
Musician:Aerosmith

日本でも高い人気を誇るロックバンド、エアロスミス。1973年にデビューした彼らは、今年デビュー50周年の年を迎えたそうです。そのデビュー50周年を記念して、彼らの全キャリアを網羅したオールタイムベストがリリースされました。通常盤はCD1枚。ただ、Deluxe EditionとしてCD3枚に収録したバージョンがリリースされたほか、日本独自企画として、それにライブアルバムをつけ、最大、CD6枚組となるバージョンもリリースされたそうです。今回は、私はCD3枚組のDeluxe Editionをチェックしました。

エアロスミスというと、典型的なハードロックバンドというイメージが強くあります。特に最近では本作にも収録されている映画「アルマゲドン」のテーマ曲「I Don’t Want To Miss A Thing」のイメージも強く、スケール感のあるバラードであるこの曲の印象から、スタジアムロックバンド的なイメージも強くついている感じもします。ただ、「I Don't Want To Miss A Thing」は、もう25年も前の曲になるのですね・・・。

今回のベスト盤、3枚組のDeluxe Editionでは全44曲が発表順に並べられています。そのため、バンドとしての歩みがよくわかるような構成になっているのですが、確かに、典型的なハードロックといった印象の曲も少なくありません。例えば「Let The Music Do The Talking」などは、まさに典型的なハードロックといったナンバー。比較的最近の曲だと「We All Fall Down」もスケール感もって聴かせるハードロック的なバラードナンバーとなっています。

ただ一方ではこのベストアルバムを聴いて、エアロスミスを典型的なハードロックバンドと単純視できたい音楽性も感じました。そもそも80年代前半に人気が落ち込んでいた彼らを復活させた「Walk This Way」はHIP HOPユニット、Run D.M.C.とのコラボでしたし(正確にはRun-D.M.C.が「Walk This Way」をサンプリングした形ですが)、最初期のナンバー「Dream On」などはむしろフォークロック的な雰囲気すらあります。

もっとも顕著なのはルーツロック、ロックンロールからの影響で、「Adam's Apple」「Bright Light Fright」のようなロックンロール亭なナンバーは少なくありません。「Dude(Looks Like Lady)」なんかはローリングストーンズ的な雰囲気も感じさせます。最近の曲になればなるほど、比較的、いかにもなハードロックナンバーは多く、良くも悪くもベテランらしいベタなスケール感を覚えるのですが、最後に収録された「Just Push Play」など、軽快なギターリフが躍動感のあるロックナンバーに仕上がっており、いまだに若々しさを感じられる曲になっていました。

もちろん、力強いギターリフ主導のハードロックナンバーも文句なしにカッコいいのも事実。音楽的な幅広さを含めて、あらためてやはりロックバンドとしてのエアロスミスのカッコよさを感じられたオールタイムベストだったと思います。50年間の活動は伊達じゃない、と思い知らされたアルバムでした。

評価:★★★★★

AEROSMITH 過去の作品
Devil's Got A New Disguise(エアロスミス濃縮極極ベスト)
Music From Another Dimension!


ほかに聴いたアルバム

Live in Brooklyn 2011/Sonic Youth

2011年8月12日にニューヨークのブルックリンで行われたライブの模様を収録されたライブアルバム。バンドはその後、南米をツアーした後に解散を発表していますので、まさにバンドとして最終期のパフォーマンス。ある意味、非常に貴重な音源となっています。ただ、パフォーマンスとしては、決してこれが最後といった雰囲気はなく、30年以上、活動を続けたバンドなだけにいい意味で安定感のあるパフォーマンス。激しいノイズは圧巻で、ライブを一度見たかったな、と感じてしまいました。

評価:★★★★★

Sonic Youth 過去の作品
The Eternal
In/Out/In

| | コメント (0)

2023年9月21日 (木)

今週も韓国系が目立つ

今週のHot Albums

http://www.billboard-japan.com/chart_insight/

今週もK-POP勢が目立つチャートとなりました。

まずは韓国の男性アイドルグループStray Kids「Social Path(feat.LiSA)」が先週から引き続き、2週連続の1位を獲得。ダウンロード数は4位から84位に大幅にダウンしたものの、CD販売数は先週から変わらず1位をキープ。オリコン週間アルバムランキングでも2週連続の1位を獲得しています。

2位初登場はさとみ「Never End」。YouTuberのアイドルグループ、すとぷりのメンバーによるソロデビューアルバム。CD販売数2位、ダウンロード数16位。オリコンでは初動売上7万1千枚で2位初登場。

3位には、こちらも韓国の男性アイドルグループTREASURE「Reboot」が先週の4位からランクアップ。5週ぶりのベスト3返り咲きとなっています。

続いて4位以下の初登場盤ですが、7位にRIIZE「Get A Guitar」が先週の13位からランクアップし、2週目にしてベスト10初登場。CD販売数が先週の11位から7位にアップしています。本作がデビューミニアルバムとなる韓国の男性アイドルグループ。オリコンでも先週、初登場12位(初動売上1万1千枚)から、今週も1万枚を売り上げて6位にランクアップしています。

今週はほかに5位にNCT「Golden Age」、6位にSEVENTEEN「SEVENTEEN JAPAN BEST ALBUM『ALWAYS YOURS』」がランクインし、今週もベスト10のうち5枚が韓国の男性アイドルグループとなっています。

一方、日本勢はまず4位に布袋寅泰「GUITARHYTHM VII」がランクイン。CD販売数5位、ダウンロード数3位。布袋が続けているアルバムプロジェクトシリーズ「GUITARHYHM」シリーズの第7弾。オリコンでは初動売上1万3千枚で3位初登場。前作「Still Dreamin'」の初動1万2千枚(8位)から若干のアップとなっています。

8位初登場は吉井和哉「20th Anniversary BEST ALBUM『20』」。THE YELLOW MONKEYのボーカリストによるソロ活動20周年を記念してリリースされた2作目のベストアルバム。CD販売数8位、ダウンロード数46位。オリコンでは初動売上8千枚で8位初登場。直近作はライブアルバム「SOUNDTRACK ~Beginning & The End~」で、同作の初動売上7千枚(7位)から微増。10年前にリリースされた、ベストアルバム「18」の初動3万枚(4位)からはダウンしています。ちなみに10年前のリリースされているのに「18」と数字が2つしか小さくないのは、前作の「18」は吉井和哉の「十八番」という意味でつけられたから、らしいです。

初登場最後は9位に龍宮城「2 MUCH」がランクイン。CD販売数9位。スターダストプロモーション所属の男性アイドルグループで、本作がデビュー作となる5曲入りのEP盤となります。オリコンでは初動売上8千枚で9位初登場。

また、ベスト10返り咲き組も。女性アイドルグループNiziU「COCONUT」が26位からランクアップし、3週ぶりのベスト10返り咲きを果たしています。

今週のHot Albumsは以上。チャート評はまた来週の水曜日に!

| | コメント (0)

«ジャニーズ系を下して