2018年1月20日 (土)

とても暖かい

Title:SHINJITERU
Musician:ハナレグミ

ハナレグミ約2年ぶりとなるニューアルバム。前作「What are you looking for」は数多くのゲストが参加したアルバムになっていましたが、本作にも前作に引き続き多くのゲストが参加。前作から引き続きの堀込泰行の他、かせきさいだあやスカパラの沖祐市、阿部芙蓉美というメンバーが名前を連ねています。

ただ前作ではRADWIMPSの野田洋一郎のようなちょっと意外なメンバーが加わっていたのに対して今回の参加メンバーはある程度は予想の範疇内。そのため楽曲的にも意外性のあるような曲はありませんでした。

そんなある意味「攻め」の姿勢が見られた前作に対して今回のアルバムは、語弊のある言葉かもしれませんが、ある意味「守り」的なアルバムと言えるかもしれません。実際、収録されている楽曲もアコースティックで暖かく聴かせるナンバーがメイン。ハナレグミらしい暖かさを強く感じさせる構成になっています。

特に前半から中盤にかけてその傾向が強く、アルバムはまずいきなりピアノでしんみり聴かせるバラードナンバー「線画」からスタートします。アコースティックでシンプルなサウンドと心理描写と風景を重ね合わせた歌詞をじっくりと聴かせるナンバー。暖かみを感じさせる一方でアルバムの1曲目としては地味という印象すら感じる作品ですが、本作の方向性も感じさせる楽曲とも言えるかもしれません。

その後も郷愁感あるサウンドとメロが心に残る「深呼吸」、ブルージーなサウンドが印象的な「My California」、打ち込みのサウンドを入れつつも歌詞とメロに暖かみを感じる素朴なラブソング「ののちゃん」など、彼の楽曲は以前からアットホームで、彼の人柄を反映するかのような暖かい曲が多いのですが、今回のアルバムはその傾向がより顕著にあらわれているように感じます。

ただ終盤にはダウンチューンの「Primal Dancer」や裏打ちのリズムが軽快なラテンナンバー「太陽の月」といった楽曲も顔をのぞかせます。もっとも、これらの曲に関してもシンプルなサウンドで暖かさを感じさせる楽曲となっており、アルバム全体の統一感を乱すものではありません。

最後は森の音色が加わり、まるで森の中でゆっくりと聴いているような、幻想的な雰囲気の「YES YOU YES ME」で締めくくり。最後までほっこりとした暖かさを感じる楽曲が並んでいました。

地味、と言われればひょっとしたらいままでのアルバムの中で最も地味な作品だったかもしれません。ただ一方、暖かさといえば、これまでのアルバムの中で最も暖かい作品だったと思います。シンプルだからゆえにハナレグミらしく、かつハナレグミの魅力が存分につまった傑作アルバムと言えるでしょう。聴いていて心がほっこりとする作品でした。

評価:★★★★★

で、ハナレグミからもう1作。

Title:Live What are you looking for
Musician:ハナレグミ

こちらはもともと2016年に配信限定でリリースされたライブアルバムが、「SHINJITERU」リリースにあわせてCDリリースされたもの。このたびはじめて聴いてみました。

内容はタイトル通り、前作「What are you looking for」リリース後のツアーの模様をおさめたライブアルバム。それも非常に評判がよかった2016年3月6日のNHKホールでのライブで披露された曲を全曲おさめたライブアルバムとなっています。

確かに、NHKホールというそこそこの広さのある会場ながらも、その広さを感じさせないアットホームな雰囲気をライブ音源を通じても感じることが出来ます。特にハナレグミ自身が会場の反応を見ながら曲をすすめたり、観客への呼びかけがあったりと、会場と一体となる空気を作り出しており、その一体となった空気感がこちらにも伝わってくるようです。

前作「What are you looking for」もとてもアットホームで暖かみを感じるアルバムだったのですが、その魅力をしっかりと伝えてくれているライブアルバム。彼のライブの魅力をしっかりと感じることのできた作品でした。

評価:★★★★★

ハナレグミ 過去の作品
あいのわ
オアシス
だれそかれそ
どこまでいくの実況録音145分(ハナレグミ,So many tears)
What are you looking for

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2018年1月19日 (金)

歌謡曲のパロディー

Title:HOMEMADE
Musician:半田健人

「仮面ライダー555」の主演としてブレイクし、活躍する俳優の半田健人。ここ最近では昭和歌謡曲への深い造詣を有し、歌謡曲の評論家的な活動、さらには自ら楽曲制作を行いアルバムをリリースするなど、音楽へその活動の主軸を移しつつあります。

本作はそんな彼の2枚目となるオリジナルアルバム。今回、はじめて彼のアルバムを聴いたのですが、きっかけは「MUSIC MAGAZINE」誌の2017年ベストアルバムJポップ/歌謡曲部門で1位を獲得したため。毎年、年末に発表される各種メディアの年間ベストアルバムのうち、未聴だったアルバムを聴いてみるのですが、その一環としてはじめて彼のアルバムを聴いてみました。

彼の趣味からある程度は予想していたのですが本作、完全に昭和歌謡曲を現在に再現したような作品。それも「昭和歌謡曲」といっても様々なバリエーションを聴かせてくれており、グループサウンズ風のギターインストナンバー「赤羽一番街の殺人」からスタート。続く「裁かれる者たちへ」は昔のサスペンスドラマの主題歌のような歌謡曲。さらに「江ノ島電車」は歌謡フォークな爽やかな楽曲と続きます。

さらにはムード歌謡曲の「西航路」や昔のアイドル歌謡曲風の「箱根に一泊」、シャンソン歌謡の「お茶の水シャンソン」など、歌謡曲を様々なタイプに分類分けし、バリエーション豊富に歌っています。どの曲もどこかで聴いたことあるよなタイプの曲ばかりで、歌詞もいかにもな歌謡曲風。またボーカルについても楽曲のタイプに応じて曲ごとに声色をつかいわけており、ここらへんさすが俳優といった印象を受けます。アルバム全体としての統一感は「歌謡曲」という点をのぞいて薄いのですが、このアルバムを聴くことによって歌謡曲の多様性を垣間見ることが出来、そういう意味で歌謡曲評論家のような批評的分析的な解釈で歌謡曲のパロディーを聴かせてくれるようなアルバムになっています。

そういう意味で非常によく出来たアルバムであることは間違いありません。で、以下は本作の内容とは全く関係ない話で非常に恐縮なのですが・・・・

このアルバムが2017年のベストアルバムってはありえないだろう・・・って話。

前述の通り、アルバムの出来として優れているのは間違いありません。ただ、内容的には完全に歌謡曲を模倣したパロディー的なアルバム。正直言って、半田健人としての新しい解釈、2017年ならではの今風の味付けというのはほとんどありません。

そういう意味ではこのアルバムが2017年を代表するアルバムというのは非常に疑問を感じてしまいます。本作から2017年という時代性を感じることはできませんし、過去の模倣的な作品を選ぶということ時代に非常に後ろ向きなものを感じてしまいます。クレイジーケンバンドのように昭和歌謡をベースに彼らなりの音楽性を加味しているのならともかく、本作はある種確信的にパロディーに徹しています。それはそれでもちろんスタンスとしてありなのでしょうが、その年を代表するアルバムか、と言われるとちょっと首をかしげてしまいます。

もちろん、個人が自分の好みで決めるベストアルバムで本作をベストアルバムにするのは全く問題ないと思います。ただ、批評的な判断を加えるべき音楽雑誌のベストアルバムでこういう過去のパロディー的な作品を、ベスト10の中の1枚に選ぶというのはともかく、その年の「顔」である1位に選ぶというのは非常に疑問。そもそもミュージックマガジンのこの手のベストアルバムの選考って、ポピュラーミュージックの中での位置づけなど全く考慮せずに、完全に自分の好みだけでベストアルバムを選んでいる評者もしたりして、以前から疑問に感じる部分が少なくなかったのですが、本作の1位についてはその疑問を強く感じてしまいました。

以上、半田健人のアルバムの内容自体には全く関係ないお話。ただ、どうしても強く疑問に感じてしまったので書かせていただきました。個人的には良く出来た優れたアルバムだとは思うのですが、完全にパロディーという意味で下記のような評価に。ただ、歌謡曲のパロディーアルバムとしては非常に楽しめるアルバムでした。

評価:★★★★


ほかに聴いたアルバム

LUV/LUNA SEA

純然たるオリジナルアルバムとしては再結成後2枚目、前作「A WILL」からちょうど4年ぶりとなるニューアルバム。その前作「A WILL」はポップな要素が強く、かなり物足りなさが残ってしまうアルバムでしたが、本作も残念ながらその路線を引き継いだような作風に。LUNA SEAのロックな側面よりもポップな側面を強調したような作風で物足りなさが残りました。中盤「Ride the Beat,Ride the Dream」というデジタルサウンドを取り入れた作品なども登場したのですが、これも一昔前のビッグビートみたいで、個人的には嫌いではありませんが、ちょっと時代遅れを感じてしまいます。再結成後、正直以前ほどのアルバム売上は見込めないんだから、ポップ寄りよりももっと尖った作品を聴きたいのですが・・・。

評価:★★★

LUNA SEA 過去の作品
COMPLETE BEST
LUNA SEA
A WILL
25th Anniversary Ultimate Best-THE ONE-
NEVER SOLD OUT 2

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2018年1月18日 (木)

新年2週目から新譜ラッシュ

今週のアルバムチャート

http://www.oricon.co.jp/rank/ja/

今週は対象週が1月2週目。通常、お正月休みの余波で新譜が少な目なのですが、今年は10枚中7枚が新譜という、新年早々の新譜ラッシュとなっています。

まず今週1位を獲得したのは乃木坂46「僕だけの君~Under Super Best~」。シングル表題曲の選抜メンバーに選ばれなかったメンバーがシングルのカップリング曲を歌う企画盤的なアルバムだそうです。初動売上は10万1千枚。直近のオリジナルアルバム「生まれてから初めて見た夢」の34万2千枚(1位)からは、企画盤ということもありさすがに大幅にダウンしています。

2位初登場は水樹奈々「THE MUSEUM III」。彼女3作目となるベストアルバムで、先のベスト盤「THE MUSEUM II」以降にリリースされた楽曲から選曲された17曲が収録されています。初動売上は4万5千枚。直近のオリジナルアルバム「NEOGENE CREATION」の4万6千枚(2位)から若干のダウン。2011年にリリースされた前のベスト盤「THE MUSEUM II」の8万2千枚(3位)からは大幅ダウンとなりました。

3位は安室奈美恵「Finally」がワンランクダウンながらもベスト3をキープ。まだまだ売れ続けています。

まず4位にはヤバイTシャツ屋さん「Galaxy of the Tank-top」がランクイン。現在、人気急上昇中のメロコアバンド。ベスト10入りはこれが2作目。初動売上2万3千枚は前作「We love Tank-top」の1万1千枚(7位)から倍増以上となっており、その勢いを感じます。

6位には大神環(稲川英里),宮尾美也(桐谷蝶々),百瀬莉緒(山口立花子),エミリー・スチュアート(郁原ゆう),真壁瑞希(阿部里果)「THE IDOLM@STER MILLION LIVE! M@STER SPARKLE 05」が初登場。ゲーム 「アイドルマスター ミリオンライブ! シアターデイズ」の登場キャラクターによる楽曲を集めたアルバム。初動売上は1万枚で、同シリーズの前作「THE IDOLM@STER MILLION LIVE! M@STER SPARKLE 04」(10位)から横バイとなっています。

7位初登場は女性アイドルグループ虹のコンキスタドール「レインボウフェノメノン」。SNSのpixvを運営する会社が企画したグループだそうです。初動売上は1万枚。前作「レインボウエクリプス」の6千枚(12位)からアップしています。

8位にはSOL(from BIGBANG)「WHITE NIGHT」が入ってきています。韓国の男性アイドルグループBIGBANGのメンバーによるソロ作。韓国でリリースされたアルバムの輸入盤です。初動売上は9千枚。直近作は国内リリースとなっている「RISE + SOLAR & HOT」で、こちらの初動4万8千枚(2位)からはダウンしています。

最後9位にはテレビ東京系バラエティー「THEカラオケ★バトル」での活躍で知名度を上げた歌手、林部智史「I」がランクイン。本作がデビュー作となり、初動売上9千枚でいきなりのベスト10ヒットとなりました。

今週のアルバムチャートは以上。チャート評はまた来週の水曜日に!

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2018年1月17日 (水)

AKBグループが目立つ

今週のHot 100

http://www.billboard-japan.com/chart_insight/

今週のチャートはやけにAKBグループが目立つチャートとなりました。

まず1位は名古屋を中心に活動をするAKBの姉妹グループSKE48「無意識の色」が1位獲得。サビでの転調が実にJ-POPらしい作品。CD売上・ダウンロード・ストリーミング数(以下「実売数」)で1位を獲得したほか、PCによるCD読取数2位、Twitterつぶやき数で3位を獲得。一方、ラジオオンエア数は26位に留まっています。オリコンでも初動売上27万8千枚で1位獲得。前作「意外にマンゴー」の27万2千枚から若干のアップとなっています。

2位は欅坂46「風に吹かれても」が先週の6位からランクアップしベスト3入り。実売数が4位から2位にアップしておりベスト3入りの要因に。オリコンチャートでも5位から4位にランクアップしています。

今週はこのほかにも乃木坂46「いつかできるから今日できる」が16位から4位にランクアップし、昨年11月13日付チャート以来、10週ぶりのベスト10返り咲きとなっています。実売数で3位を記録。オリコンチャートでは2位にランクインしています。

こちらはいずれもオリコンのデジタルシングルチャートでは上位に入ってきておらず、いずれもCD売上メインとなっています。乃木坂46はオリコンアルバムチャートで1位を獲得しており、その余波でしょうか。また正月明けのチャートということでお年玉による小中学生あたりの購買力が増した影響もあるのかもしれません。

3位はRYUJI IMAICHI「ONE DAY」が初登場でランクイン。三代目J Soul Brothersのメンバーによるソロデビュー作で、配信オンリーの作品。ハイトーンボイスで歌い上げるソウルバラードに仕上がっています。実売数及びTwitterつぶやき数5位。ほかにラジオオンエア数は47位、You Tube再生回数69位と奮いませんでしたが、ほかに強力曲がなかったということもあり見事ベスト3入りです。

続いて4位以下の初登場曲です。5位にアニソンを中心に歌う女性シンガーLiSA「Thrill, Risk, Heartless」が初登場でランクイン。ゲーム「ソードアート・オンライン フェイタル・バレット」主題歌。J-POPらしいハードロックテイストのロック風ナンバーになっています。配信限定のシングルで実売数6位、Twitterつぶやき数7位を獲得し、この位置でランクインです。

7位にはRe:vale「NO DOUBT」が初登場。ゲーム「アイドリッシュセブン」に登場するアイドルグループだそうです。実売数7位、PCによるCD読取数8位、Twitterつぶやき数6位を獲得。オリコンでは初動1万1千枚で7位初登場。前作「SILVER SKY」の1万5千枚(6位)からダウンしています。

最後10位には韓国の女性アイドルグループTWICE「Candy Pop」が初のベスト10入り。実売数は53位でしたが、Twitterつぶやき数4位、You Tube再生回数で2位を獲得し、見事ベスト10入りです。

さて先週1位だった安室奈美恵「Hero」ですが、今週は残念ながら9位に大幅ダウン。実売数は4位とまだまだ強さを見せつけたのですが、ラジオオンエア数41位、Twitterつぶやき数65位とほかのチャートが奮わず、大幅ダウンとなってしまいました。

一方荻野目洋子「ダンシング・ヒーロー」は4位から6位と2ランクダウンに留まりました。実売数15位、PCによるCD読取数54位、Twitterつぶやき数57位と奮いませんが、You Tube再生回数は今週も1位をキープ。まだまだ強さを感じます。

さて、ここ最近、長らくロングヒットを続けていたDAOKO×米津玄師「打上花火」でしたが、今週はついに12位にダウン。21週連続ベスト10入りというロングヒットを続けていましたが、ついにベスト10陥落となりました。またTWICE「TT」も先週の5位から11位にダウン。ベスト10返り咲きは2週に留まりました。

今週のHot100は以上。アルバムチャートはまた明日!

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2018年1月16日 (火)

豪華コラボで勢いを増した新作

Title:THANK YOU BLUE
Musician:DAOKO

「恋」「前前前世」など、ここ最近では珍しくヒット曲が続発した2016年から一転、昨年2017年はほとんどヒット曲らしいヒット曲のない1年となってしまいました。そんな中で数少ないヒット曲らしいヒット曲といえばDAOKOの「打上花火」。米津玄師とのコラボによるこの曲はビルボードチャートで昨年8月21日付チャートで3位にランクインし、翌々週に1位を獲得すると年末までベスト10をキープし続けるロングヒット曲となりました。

またDAOKOといって昨年話題になったのは岡村靖幸とコラボした「ステップアップLOVE」。個人的な2017年度の楽曲ベスト10を作るとするとおそらくベスト3には食い込んでくるような名曲。以前、ヒットチャートのコーナーでも紹介したのですがPVがアラフォー世代の岡村ちゃんファンにとってはうれしくなってくる内容になっています。

これも以前のチャート評で書いたことなのですが、出だしに岡村靖幸がDAOKOにバスケでロングシュートを決められてビックルする顔が映し出されるのは、岡村靖幸の代表曲「あの娘ぼくがロングシュート決めたらどんな顔するだろう」のオマージュ。またPVの中でも彼のキレッキレのダンスがめちゃくちゃカッコいいPVになっています。また昨年、ミュージックステーションにDAOKOと岡村靖幸が一緒に出演し、岡村ちゃんがダンスを披露。岡村靖幸を知らない世代の人にも一部話題になったのもうれしいニュースでした。

さてこの2曲がいずれもアニメタイアップというタイアップの良さに助けられつつ、見事ヒットチャートでベスト10入りを果たした彼女。もともとは「女子高生ラッパー」として話題になった彼女ですが、既に20歳の「大人の女性」となったDAOKOのニューアルバムはボーカリストとして自由度の高さを感じさせるアルバムになっていました。

もともと彼女はラッパーとして出てきたものの今回のアルバムでは「ラップ」はあまり披露していません。大ヒットした「打上花火」は米津玄師のメロディーが光るポップチューンになっていますし、「ステップアップLOVE」は岡村ちゃん主導のファンクチューンになっています。

彼女のボーカルもウィスパー気味の澄んだ歌声が非常に魅力的なのですが、透明感が強く独特の癖みたいなものはあまりありません。そのため、どんなタイプの曲でも容易にマッチすることが出来るという点が彼女にとっての大きな強みになっています。

今回のアルバムはそんな彼女の特性を反映して、多くの豪華ミュージシャンとのコラボがひとつの特徴となっています。話題となった「打上花火」の米津玄師、「ステップアップLOVE」の岡村靖幸の他に「同じ夜」では今話題のバンドD.A.N、「ワンルーム・シーサイド・ステップ」ではTempalay、「ダイスキ」ではTeddyLoid、「Juicy」は玉屋2060%、さらには「GRY」ではTHA BLUE HERBのO.N.O.と豪華ミュージシャンとのコラボがズラリと並びました。

結果、アルバム全体としてはエレクトロなポップチューンが中心となりつつ、彼女のウィスパーボイスのかわいらしさを生かしたアイドルポップ風の「Juicy」や「BANG!」のような曲があったかと思えば、ムーディーでジャジーな雰囲気満点の「同じ夜」のような作品、エッジの利いたリズムトラックがカッコいい「GRY」のような曲が同居した、バラエティーに富んだ、まさに前述の通り自由度の高いアルバムに仕上がっています。

このミュージシャンとして、ボーカリストとして自由度の高さが彼女の大きな魅力でしょうし、また同時に多くのミュージシャンとのコラボを成功させることが出来た最大の理由でしょう。ただ一方、この点が彼女にとって同時に大きな弱点とも感じられました。要するにミュージシャンとしての核の部分が若干弱い。豪華なミュージシャンとコラボとしているうちは傑作をリリースできるものの、そこから離れた場合は不安が残る、そう感じてしまいました。

本作に関しても全体としてはちょっとバラバラな感じがマイナス要因として気にかかる部分もありました。ただ本作に関しては、ヒットした2曲を含むDAOKOのミュージシャンとしての勢い、豪華ミュージシャンとのコラボの出来の良さ、そしてなによりも彼女がボーカリストとしての自らの強みに関して自信を持ち、そしてそれをしっかりと生かしている作品になっており、弱点を十分に上回る魅力を感じさせてくれる傑作となっていました。次回作以降の展開は良くも悪くも気にかかりますが、本作に関しては文句なしの傑作アルバム。彼女が大きく成長した2017年という年を締めくくるにふさわしいアルバムだったと思います。

評価:★★★★★

DAOKO 過去の作品
DAOKO


ほかに聴いたアルバム

SOAK/ねごと

エレクトロ路線にシフトしたガールズロックバンドねごとの新作。ここ最近増えてきたガールズロックの中で「エレクトロ」路線ということでひとつ個性を確保しつつある印象が。今回のアルバムではギターロックサウンドを加えて「undone」のようなシューゲイザー色の強い作品があったりして、かなり凝った音使いをしてきています。ただメロディーに関してはインパクトは薄く、サウンドも非常に凝っているのですが、目新しさというインパクトはあまり感じられません。悪いアルバムではないのですが少々中途半端さも感じてしまうアルバムでした。

評価:★★★★

ねごと 過去の作品
Hello!"Z"
ex Negoto

"Z"OOM
VISION
アシンメトリe.p
ETERNALBEAT

歌祭文-ALL TIME BEST-/一青窈

「もらい泣き」「ハナミズキ」のヒットでおなじみの女性シンガーによるデビュー15周年のオールタイムベスト。2枚組のアルバムで、Disc1には彼女の代表曲をリリース順に収録。Disc2は新曲や新録音源、タイアップ曲など「今の彼女」をあらわすような楽曲が収録されています。

一青窈のイメージといえばヒット曲「もらい泣き」「ハナミズキ」のように、ちょっとアジアンテイストを感じられる哀愁感あるバラードナンバーというイメージがあるのですが、このベスト盤に収録されている曲を聴くと、基本的にそのイメージに沿ったナンバーがメイン。ただ一方でRhymesterのMummy-Dをフューチャーしたエレクトロチューン「dots and lines」やらSOIL&“PIMP”SESSIONSをフューチャーしたラテンチューン「他人の関係」など、彼女のパブリックイメージから脱却しようと試みる楽曲も多く、彼女の苦労が痛いほど伝わってきます。

それら挑戦的なナンバーも出来も悪くないのですが、このベスト盤の中では新曲を含めて結局は彼女のイメージに沿った楽曲に戻ってきてしまっているのが辛いところ。彼女のイメージとは異なるヒット曲がうまれれば状況は一気に変わりそうなのですが・・・。結果としてアルバム全体としては「似たような曲が多い」という印象を持ってしまいます。今度の彼女の活躍は「もらい泣き」「ハナミズキ」のイメージからいかに脱却するかが大きなポイントになってきそうです。

評価:★★★★

一青窈 過去の作品
key
花蓮街
歌窈曲
一青十色
私重奏

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2018年1月15日 (月)

地方都市からのメッセージ

Title:地方都市のメメント・モリ
Musician:amazarashi

ここに来て、まだまだ人気上昇中のロックバンドamazarashi。本作にも収録されている「命にふさわしい」がゲーム「ニーア オートマタ」とのコラボ曲になったり、「空に歌えば」がアニメ「僕のヒーローアカデミア」のオープニングになったりとタイアップも増加。楽曲的には決して「広くお茶の間で支持」といった感じではないはずなのですが、その知名度を着実に伸ばしています。

本作はそんな知名度上昇に伴ってでしょうか、良い意味で非常にわかりやすいアルバムに仕上がっていたと思います。まあもともとがamazarashiの楽曲はなんだかんだ言っても楽曲にわかりやすさがあったのですが、本作はそんな「わかりやすさ」がより明確になったように感じます。

例えば歌詞。「地方都市のメメント・モリ」というタイトル。「メメント・モリ」はラテン語で「自分がいつか必ず死ぬことを忘れるな」という意味の警句だそうですが、そのタイトル通り、今回は「地方都市」をテーマとした楽曲が多く収録されています。

まずは冒頭の「ワードプロセッサー」。THA BLUE HERBからの影響が顕著なラップスタイルのボーカルが印象的なのですが、ここで歌われるのは荒涼とした地方都市の風景描写とその中での焦燥感。「水槽」に至っては地方都市のリアリティーをありのままに描写しており、地方と都心の格差が社会現象となっている中では、ある種の「社会派」とすらとらえられる作品になっています。

さらには「悲しみ一つも残さないで」はそのものズバリ「青森駅」が歌詞に登場。青森出身で、今も在住しているバンドのシンガーでメインライターの秋田ひろむだからこそ書ける歌詞でしょう。そしてラストを飾る「ぼくら対せかい」も地方で必死に生きる人たちの姿を描写しています。

もちろん「たられば」「命にふさわしい」のように内省的な歌詞の曲などもありますが、全体的にはアルバム全体を貫くわかりやすいテーマ設定がなされています。興味深いのがこの地方と都心というテーマ設定。歌謡曲の世界ではお決まりのテーマなのですが、ニューミュージックやさらにそれに続くJ-POPの世界ではほとんど見かけなかったテーマ。それをamazarashiではあえてテーマとして取り上げている点が興味深く感じます。ただ一方で、自分の生まれ故郷をテーマとするのはHIP HOPではよくありがちな話。秋田ひろむ自身、HIP HOPからの影響も強く受けているようで、今回の地方都市というテーマ性はひょっとしたらそこからの流れなのかもしれません。

またわかりやすいというメロディーラインも顕著に見受けられます。先行シングルにもなっている「空に歌えば」は非常にポップでインパクトあるメロディーラインの曲に仕上がっていますし、「悲しみ一つも残さないで」もシンプルながらもわかりやすくポップなメロディーラインが印象的。このキャッチーともいえるポップなメロは賛否もあるみたいですが、個人的にはいい意味で垢抜けたといった印象を受けました。

本作の「わかりやすさ」というのは、それだけ彼らの歌詞の内容がより広い層に伝えることができたというのも意味しており、そういう意味でも彼らのさらなる成長を感じさせるアルバムだったと思います。これからも楽しみになってくる傑作アルバムでした。

評価:★★★★★

amazarashi 過去の作品
千年幸福論
ラブソング
ねえママ あなたの言うとおり
あんたへ
夕日信仰ヒガシズム
あまざらし 千分の一夜物語 スターライト
世界収束二一一六
虚無病
メッセージボトル


ほかに聴いたアルバム

ASYNC-REMODELS/坂本龍一

今年3月にリリースした「非同期」をテーマとしたアルバム「async」。本作はそのリミックスアルバムとなります。基本的にはメタリックなエレクトロサウンドがメイン。「非同期」というテーマから離れて、リミックスはメロディーが流れており「async」で感じた非同期性から来る違和感は薄かったように感じます。ただシンプルながらも作りこまれたサウンドは非常に惹きこまれるものがあり、「async」とは異なるサウンドの実験性も感じるアルバムになっていました。

評価:★★★★★

坂本龍一 過去の作品
out of noise
UTAU(大貫妙子&坂本龍一)
flumina(fennesz+sakamoto)
playing the piano usa 2010/korea 2011-ustream viewers selection-
THREE
Playing The Orchestra 2013
Year Book 2005-2014
The Best of 'Playing the Orchestra 2014'
Year Book 1971-1979
async
Year Book 1980-1984

Λ/ACIDMAN

ACIDMAN3年ぶりとなるアルバム。「Λ」はギリシャ文字で11番目を意味するそうで、その名の通り、11枚目のアルバムとなります。今回もACIDMANらしいダイナミックなサウンドに切ないメロディーを聴かせる作品が並んでいます。一方でアシッドジャズやサイケなどの要素も加えて全体的にはバラエティーもある内容に。結成20周年を迎えた彼らですが、いい意味で安定感と、そして新たな挑戦心も感じさせるアルバムでした。

評価:★★★★

ACIDMAN 過去の作品
LIFE
A beautiful greed
ALMA
Second line&Acoustic collection
ACIDMAN THE BEST 2002-2012
新世界
有と無
Second line&Acoustic collection II
ACIDMAN 20th Anniversary Fans'Best Selection Album "Your Song"

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2018年1月14日 (日)

民謡しなけりゃ意味ないね!!

Title:エコーズ・オブ・ジャパン
Musician:民謡クルセイダーズ

今回紹介するバンドは、まずミュージシャン名からしてその方向性がわかるかと思います。福生在住のギタリスト、田中克海と民謡歌手、フレディ塚本を中心として結成されたバンド、民謡クルセイダーズ。各地のライブイベントに出演して話題を集め、さらにはライ・クーダーがTwitterで彼らに言及して注目を集めています。このたび、彼らにとって初となるアルバムがリリース。さっそく聴いてみました。

彼らのキャッチフレーズは「民謡しなけりゃ意味ないね!!」。日本に根付いている民謡をバンドアレンジで今風にまとめているのが彼らのスタイル。それだけでもおもしろいものの、民謡を今風にアレンジして歌うバンドはさほど珍しくありません。しかし、彼らが非常にユニークなのは民謡をラテンやカリブ、さらにはアフリカ音楽などのリズムにあわせて大幅にアレンジしているという点。まさに日本文化と世界の融合を目指したアルバムとなっています。

たとえば有名な民謡としては「おてもやん」をレゲエ風にアレンジ。横ノリでダビーなサウンドが心地よく、そしてどこかコミカルに仕上げていますし、「炭鉱節」はブーガルーという60年代~70年代にニューヨークで流行したラテン音楽風のアレンジに仕上げています。こちらもラテン風の軽快なリズムが「炭鉱節」に意外なほどピッタリとマッチしています。

「会津磐梯山」もボーカルパートだけ取り出すと、完全に民謡そのもののこぶしを利かせるのですが、ここに重なるラテンのリズムとの相性はなぜか抜群。「串本節」はなんとクンビアによるアレンジ。クンビアの独特のリズムが、これまた「串本節」にしっかりと合っていて、とても心地よいリズム感が味わえます。

個人的にはエチオピアンファンクのリズムにのせた「秋田荷方節」がお気に入り。うねるようなグルーヴ感のあるリズムがとても気持ちのよい楽曲で、このグルーヴと民謡のこぶしが一体となって心地よいサウンドを作り上げています。

もともとボーカルのフレディ塚本は民謡歌手ということでボーカルパートは紛うことなく日本の民謡。節回しは日本人にとって無意識のうちに身体になじんでおり、民謡に縁がないような方でもおそらく耳なじみあるかと思います。

そして、そんな純和風なメロディーがラテンやクンビア、アフロやレゲエといった遠い中南米やアフリカのビートにピッタリマッチするというのが驚かされます。ただ、よくよく考えれば、ラテンやレゲエといったリズムも、その土地土地の人々が日々の暮らしの中でうまれてきた土着のリズム。一方で民謡もやはり、私たち日本人が日々の暮らしの中でうまれてきたサウンド。同じ人間、やはり心地よく思うようなリズムは一緒なわけで、遠く離れた日本と中南米、アフリカのリズムがマッチしても不思議ではないかもしれません。

「エコーズ・オブ・ジャパン」というタイトルも絶妙で、ここにおさめられている民謡は、まさに日本の一般大衆たちの声。純和風の音楽というと、どうしても太鼓やら琴やら「いかにも」な楽器が奏でる音色に注目があつまりがち。もちろんそういう音も日本らしいものかもしれませんが、ただ、ここで歌われている民謡こそが、ある意味本当の日本人の「歌」と言えるのかもしれません。そういう意味でも、こういう形で民謡がもっともっと受け入れられると、日本の音楽シーンもさらにおもしろくなってくるかも。

民謡の独特のこぶしも心地よかったですし、さらにそれが載っているリズムも非常に心地よかったこのアルバム。その音楽的な方向性も意義深いですし、2017年の年間ベスト候補の傑作アルバムだったと思います。ちなみに本作最後の「相撲甚句」はアカペラで収録。フレディ塚本の民謡歌手としての実力を申し分なしに収録。「民謡歌手」としてちゃんと土台があるからこそ、こういう傑作が生みだせるのでしょうね。今後の活躍も楽しみです。

評価:★★★★★


ほかに聴いたアルバム

3周まわって素でLive!~THE HOUSE PARTY! ~/久保田利伸

昨年行われたライブハウスツアーの模様を収録したライブアルバム。ちょっと意外なことに彼にとって初となるライブアルバムとなるそうです。彼のステージは見たことはないのですが、ファンキーな楽曲で盛り上げる一方、しんみりと聴かせるバラードナンバーでは如何なくそのボーカルの魅力を発揮。会場の熱気と楽しさが伝わってくるライブアルバムになっており、一度彼のステージも見てみたくなりました。

評価:★★★★★

久保田利伸 過去の作品
Timeless Fly
Gold Skool
THE BADDEST~Hit Parade~
L.O.K.
THE BADDEST~Collaboration~

INTELLIGENCE/夜の本気ダンス

そのバンド名の通り、アップテンポでダンサナブルなギターロックがメインのアルバム。私が彼らの作品を聴くのはこれが2枚目となるのですが・・・正直言って、いまひとつ。突き抜けたようなダンサナブルなギターロックがあるわけでもなく、メロディーに強いインパクトがあるわけでもなく、どうも中途半端。よくありがちなギターロックの一組といった感じで、これといった個性が感じられませんでした。

評価:★★★

夜の本気ダンス 過去の作品
DANCEABLE

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2018年1月13日 (土)

セルフカバー第2弾

Title:逆輸入~航空局~
Musician:椎名林檎

椎名林檎のニューアルバムはセルフカバーアルバム第2弾。前作「逆輸入~港湾局~」をリリースしたのが2014年で、それから約3年半。かなり早いペースでのリリースとなりました。元曲はおもに2000年以降に発表された作品なのですが、特に2014年以降の楽曲も多く、それだけここ最近、彼女の楽曲が数多くのミュージシャンから求められているということが言えるのでしょう。

前作では楽曲毎にアレンジャーを変え、アレンジャー同士がその出来栄えを競争しているかのような内容でした。今回のアルバムでアレンジに参加しているのは斎藤ネコ、 村田陽一、名越由貴夫、朝川朋之。いわば椎名林檎作品ではおなじみのメンバー。そのため、非常に椎名林檎らしいアレンジの作品が並んでいます。

ミュージカル風の「人生は夢だらけ」からスタートし、サスペンスチックな「少女ロボット」もとても椎名林檎らしい作品。「暗夜の心中立て」も石川さゆり提供曲らしいムーディーな歌謡曲ナンバーですが、イントロのダイナミックなホーンの節回しは椎名林檎作品ではよく聴くようなパターンになっています。

基本、村田陽一アレンジの作品がホーンセッションを入れたダイナミックなミュージカル風のナンバーになっている一方で、「重金属製の女」「野性の同盟」など名越由貴夫がアレンジを手掛けた作品はへヴィーなギターサウンドが印象的なロックなアレンジ。特に「重金属製の女」はイントロのパーカッションのトライバルな音色も強い印象に残ります。

もともと椎名林檎の楽曲を手掛けてきたアレンジャーによる作品なだけに椎名林檎のボーカルももちろん楽曲にピッタリとマッチ。基本的にはほとんど違和感はなく、完全に椎名林檎の作品になっています。なじみのアレンジャーと彼女のボーカル、そして楽曲がとにかくしっくりとはまっており、まずはとてもおさまりのいい楽曲という印象を受けるセルフカバーアルバムでした。

また他のシンガーへの提供作ということもあって、楽曲は比較的シンプルでメロディアスなポップが主体。そのためメロディーと歌という椎名林檎の良さが存分に発揮されていたアルバムにもなっていました。ここ最近は彼女の作品、比較的シンプルにメロディーを聴かせる曲が続いていましたが、その流れにそったセルフカバーアルバム。彼女の魅力を存分に味わえた1枚でした。

評価:★★★★★

椎名林檎 過去の作品
私と放電
三文ゴシップ
蜜月抄
浮き名

逆輸入~港湾局~
日出処


ほかに聴いたアルバム

ON THE AIR/VIDEOTAPEMUSIC

ちょっと奇妙な名前のミュージシャン。公式サイトによると「地方都市のリサイクルショップや閉店したレンタルビデオショップなどで収集したVHS、実家の片隅に忘れられたホームビデオなど、古今東西さまざまなビデオテープをサンプリングして映像と音楽を同時に制作している。」だそうで、このアルバムもメロディアスなインスト曲がメインながらも、ムーディーなサウンドからメロディアスなポップまでバラエティー富んだ「音」を詰め込んだ、実験的な要素を強く感じるアイディア集のようなアルバム。聴いていてちょっと不思議な感覚の音世界が楽しめました。

評価:★★★★

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2018年1月12日 (金)

ほっこり暖かいメロと風景描写が魅力

Title:20/20
Musician:スカート

インディーズからリリースした前作「CALL」も大きな話題となった澤部渡のソロプロジェクト、スカート。今回、ポニーキャニオンから無事メジャーデビューが決定。本作がメジャーデビュー後、初となるフルアルバムとなります。

彼自身、以前からサポートミュージシャンとしても活躍しており、特にスピッツのサポートとしてMステに出演した時に話題となったというのは前作「CALL」でもここに書いたとおり。また楽曲の作風としても比較的スピッツに近いものがあるという点も書きました。

今回のアルバムに関しても、スピッツの楽曲に通じるような暖かさを感じるギターポップがひとつの大きな魅力となっています。特に1曲目を飾る「離れて暮らす二人のために」などはアコギではじまる暖かい雰囲気の作風がまさにスピッツっぽい感じ。特に途中のベースラインの入り方などスピッツっぽさを感じます。一方、歌詞については叙情的ながらも比較的わかりやすい風景描写が特徴的で、ここらへんはスピッツとは異なる雰囲気も感じます。

前作でもスピッツ風のギターポップという一言ではとどまらないようなバリエーションある音楽性が大きな魅力でしたが、本作ではその傾向がより強くなっています。「視界良好」ではファンキーなギターを聴かせてくれますし、「手の鳴る方へ急げ」ではヘヴィーなギターリフが入り、ピアノも含めてダイナミックなロックサウンドを聴かせてくれます。

テレビ東京系ドラマ「山田孝之のカンヌ映画祭」主題歌に起用されて話題となった「ランプトン」はちょっと切ないメロディーが印象的なシティポップになっていますし、ラスト「静かな夜がいい」もブルージーなギターが印象に残るシティポップ(ちょっと曽我部恵一っぽい?)ナンバーになっています。

歌詞も都会的・・・というよりも都市郊外の風景について具体的な描写が印象的。特に「わたしのまち」が象徴的ですが、街の風景についての描写が多く、そういう意味でもまさに「シティポップ」と言い方がピッタリかもしれません。またその一方で、その風景にはどこか暖かさも感じられ、生音重視のサウンドと相まって、とてもほっこりとしあ雰囲気の作風に仕上がっています。

ちなみに歌詞で印象的だったのは「私の好きな青」

「僕らが旅に出ない理由なんて
本当はただのひとつだってないんだ」

(「私の好きな青」より 作詞 澤部渡)

というフレーズ。なんとなく小沢健二の大名曲「ぼくらが旅に出る理由」の「ぼくらが住むこの世界では 旅に出る理由があり」というフレーズに呼応しているように感じたのですが、気のせいでしょうか?

基本的にはそんなこともあり、前作「CALL」と同じようなタイプのアルバムに仕上がっていました。ただその反面、目新しさがなく物足りなさも感じた前作に比べると、今回は楽曲のインパクトも増し、アルバムの出来がグッと良くなったように思います。例えば「さよなら!さよなら!」などは十分なヒットポテンシャルのあるようなサビが展開されたりして、メロディーラインの良さもグッとレベルアップしたように感じます。

個人的には非常に心に染みいってくるメロディーの良さもあり、文句なしにはまってしまった大傑作。スカートというミュージシャンの魅力が最大限に発揮された作品でした。

評価:★★★★★

スカート 過去の作品
CALL


ほかに聴いたアルバム

Long Long Time Ago/Nulbarich

最近、話題上昇中のNulbarichの新作は4曲入りのEP盤。ソウルやアシッドジャズなどの要素を取り入れたポップスはSuchmosなどと並んで、今の流行を感じさせます。基本的な路線は前作「Who We Are」と同様。次はフルアルバムを聴きたいかも。

評価:★★★★

Nulbarich 過去の作品
Who We Are

OYSTER-EP-/NICO Touches the Walls

NICOの最新作は5曲入りのEP盤。最近、楽曲に勢いを感じられる彼らですが、最新アルバムは5曲入りとはいえ、いままでにないバラエティー豊富な作風に。1曲目「mujina」は彼ららしいギターロックからスタートするのですが、ピアノを軽快に聴かせる「Funny Side Up!」やシティポップ風の「bud end」など、いままでの彼らとは少々違った傾向のバラエティー富んだ作風に仕上がっています。その分、少々散漫な印象を受け、インパクトも薄めなのですが・・・その分、次のアルバムがこのEPをどのように生かしてくるのか、楽しみになってきました。

評価:★★★★

NICO Touches the Walls 過去の作品
Who are you?
オーロラ
PASSENGER
HUMANIA
Shout to the Walls!
ニコ タッチズ ザ ウォールズ ノ ベスト
Howdy!! We are ACO Touches the Walls
勇気も愛もないなんて

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2018年1月11日 (木)

HIP HOP、ロックの垣根なく

Title:NO ONE EVER REALLY DIES
Musician:N.E.R.D

まさか新譜が出るとは思わずビックリしてしまいました。ファレル・ウイリアムズを中心に結成されたユニット、N.E.R.D。HIP HOPとロックを融合させたような楽曲で幅広い支持を集め、2000年代に4枚のアルバムをリリースしたものの、その後はメンバーそれぞれのソロ活動に意向。ご存じの通り、ファレル・ウイリアムズは「HAPPY」が世界的に大ヒットし、ソロで大成功をおさめました。

それだけに活動休止状態になっているN.E.R.Dをいまさら引っ張り出すことはないのかな・・・と勝手に思っていたのですが・・・なんとここに来て7年ぶりとなるニューアルバムがリリース。タイトルである「NO ONE EVER REALLY DIES」とは和訳すると「誰も本当の意味では死なない」という意味。略すると「N.E.R.D」となり、要するに事実上のセルフタイトルとなるアルバムだそうです。

N.E.R.Dというと、ファレル・ウイリアムズの「HAPPY」もそうでしたが、非常にポップで楽しい楽曲が特徴的。HIP HOPとロックを融合させたような、と最初に書いたのですが、要するにジャンルにとらわれない自由度の高いポップソングを聴かせてくれるのですが、その方向性は7年ぶりの新作でも全く変わっていませんでした。

1曲目「Lemon」は先行シングルとして話題になった曲。軽快なリズムがダンサナブルな楽曲で、リアーナが参加していることでも話題になっていますが、とにかくリズミカルなサウンドが楽しいナンバー。続く「Deep Down Body Thurst」は、最初はメロウなフィリーソウルからスタートするのですが、途中からラップや分厚いサウンドも加わり軽快なポップチューンへと展開。その後もフィリーな部分と軽快でポップな部分が交互に続くのですが、この展開がなかなかユニークな楽曲になっています。

この曲に限らず、1曲の中でいろいろと楽曲が展開していき、とても楽しくかつ先の読めない楽曲がひとつの大きな魅力にもなっています。例えば「Voila」も軽快でリズミカルなHIP HOPナンバーとなっているのですが、後半はいきなりトライバルなリズムが登場。ゆっくりなペースで太鼓のリズムが入るサウンドは日本人からするとちょっと盆踊り風?なコミカルな楽曲になっています。

展開のおもしろさという意味で言えば、このアルバムのひとつの核になっている「Don't Don't Do It!」もまさにそんな楽曲。最初はメロウなソウルナンバーからスタート。その後は軽快なラップが登場し盛り上がります。基本的にトラックにメロウなエレピが流れるソウルテイストの強いナンバーなのですが、途中でいきなりロックなギターリフがあらわれたりするのもユニーク。さらに後半には、今、もっとも注目を集めているラッパー、ケンドリック・ラマーが参加し、機関銃のようなラップを展開していきます。

この曲がさらに注目を集めているのがそのタイトルの由来。2016年にノースカロライナ州で起きた警察官による黒人男性射殺事件で、被害者の妻の叫び声がもとになっているそうで、ポップな作風ながらも歌詞は警察批判の社会性の強い内容になっています。

その後もポップながらもどこかユニークなサウンドと展開が耳を惹かれるナンバーが続きます。正直、後半に関してちょっとダレたかな、という部分もなきしもあらずなのですが、最後はエド・シーランも参加した「Lifting You」は横ノリのサウンドがユニークな楽曲。ただメロディアスなメロディーをしっかりと聴かせており、彼ららしい独特でユーモラスなサウンドの曲で締めくくっています。

久々のアルバムながらもその魅力は全く衰えることなく、今回もHIP HOP、ソウル、ロックリスナーを含めいい意味で広い層に訴求できるようなポップで楽しいアルバムを聴かせてくれました。文句なしの傑作アルバム。まさに様々な音楽ファンが垣根なく楽しめるアルバムでした。

評価:★★★★★

N.E.R.D 過去の作品
SEEING SOUNDS
NOTHING


ほかに聴いたアルバム

THE VISITOR/NEIL YOUNG+PROMISE OF THE REAL

御年70歳を超えた今でも積極的な活動が続くNEIL YOUNG。本作は「The Monsanto Years」に続きWillie Nelsonの息子たちのバンドPROMISE OF THE REALとタッグを組んだ新作。ブルース、ラテン、フォークからミュージカル風の楽曲までいままで以上にバラエティー豊富な楽曲が魅力的。NEIL YOUNGの衰えることない創作意欲をうかがえるアルバムになっています。

評価:★★★★★

Niel Young 過去の作品
Fork In The Road
Psychedelic Pill(Neil Young&Crazy Horse)
Storytone
The Monsanto Years(Neil Young+Promise Of The Real)
Peace Trail

REPUTATION/Taylor Swift

海外では絶大な支持を誇るテイラー・スイフトの3年ぶりとなるニューアルバム。基本的にカントリー歌手である彼女はアコースティックな作風がメインだったのですが、今回の作品では打ち込みを多く取り入れ、エレクトロテイストの強い作品に。彼女の新たな挑戦は買いたいところなのですが、ただ正直、メロディーラインのインパクトも薄く、平凡な作品になってしまった印象が。ちょっと残念に感じたアルバムでした。

評価:★★★

TAYLOR SWIFT 過去の作品
FEARLESS
RED
1989

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