2025年11月17日 (月)

復活後、2作目

Title:The Hives Forever Forever The Hives
Musician:THE HIVES

2000年初頭のガレージロックリバイバルの旗手としても大きな注目を集め、日本でも高い人気を誇ったスウェーデンのガレージロックバンドTHE HIVES。2012年にリリースした「Lex Hives」以来、活動休止状態でしたが、2023年にアルバム「The Death Of Randy Fitzsimmons」で見事復活。それから2年、復活後2作目となるフルアルバムがリリースされました。

前作「The Death Of Randy Fitzsimmons」はバンドとしての初期衝動が復活したような傑作となっていましたが、今回のアルバムも前作に引き続き、THE HIVESらしい力強くも軽快なガレージサウンド、疾走感あるギターサウンドにもマッチするようなポップなメロディーラインが特徴的なガレージロックの楽曲が並んでおり、実に彼ららしいアルバムに仕上がっていました。

イントロを挟んで事実上の1曲目の「Enough Is Enough」はまさに彼ららしいガレージロック。力強いギターリフに、わかりやすくポップなメロディーラインが特徴的。シャウト気味でタイトルを連呼するサビも、一発で耳に残ります。続く「Hooray Hooray Hooray」もヘヴィーなサウンドにポップなメロが印象的。ちょっとメロディアスパンクっぽさも彷彿とさせます。

「Paint A Picture」も、疾走感あるAメロから、サビでは一転、テンポがゆっくりとなりライブではみんなでサビを歌い上げると気持ちよさそうな、ある種のスケール感のある楽曲。1分40秒と、このアルバムの中でも(インターリュードなどを除くと)一番短い「O.C.D.O.D.」はヘヴィーなハードコアパンクな楽曲になっています。

後半に入っても勢いは止まりません。「Roll Out The Red Carpet」は、シャウト気味のボーカルで、こちらもTHE HIVESの王道を行くようなガレージロック。一方、「Born A Rebel」はカウベルが軽快でリズミカルながらも哀愁たっぷりのメロがアルバムの中でインパクトになっていますし、「Path Of Most Resistance」ではニューウェーヴ的なギターやシンセを取り入れてアルバムにバリエーションを加えています。そしてラストのタイトルチューン「The Hives Forever Forever The Hives」も、シンセを取り入れて明るくポップなナンバーで締めくくられています。

アルバムは13トラックのうち、2トラックがイントロとインターリュードなので、事実上11曲入り33分。1曲あたり約3分程度というガレージロックバンドらしい短い楽曲を並べる聴きやすさも魅力的。今回もTHE HIVESらしさをベースとしつつ、その中にバリエーションを加えているアルバムとなっており、前作に引き続きの傑作に仕上がっていたと思います。特に活動再開後、バンドとして求められるものにしっかり答えつつ、そんな期待の中で新たな音楽性も模索している、ある意味、理想的とも言える作品が続いており、バンドとして一段階レベルがアップしたように感じます。アルバムタイトル的に、見方によってはこれが最後・・・なんて見え方もしてしまう点は気になってしまいますが、これだけ勢いのある状況なので、今後も活動は続けてくれるでしょう。THE HIVESのこれからも楽しみになってくる傑作でした。

評価:★★★★★

THE HIVES 過去の作品
The Black and White Album
LEX HIVES
Live At Third Man Records
The Death Of Randy Fitzsimmons

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2025年11月16日 (日)

偉大なるロックバンドの全盛期と成熟期の貴重なライブ音源

Title:Live EP
Musician:Led Zeppelin

ハードロックやヘヴィーメタルの元祖的存在としてあげられ、現在でも伝説的なロックバンドとして多くのフォロワーを生み出しているレッド・ツェッペリン。先日も彼らの伝記的映画「レッド・ツェッペリン:ビカミング」が公開されヒットを記録。大きな話題となりました。そんな中、彼らが1975年にリリースしたアルバム「Physical Graffiti」の発売50周年を記念して、ライブアルバムがリリースされました。おそらく、「ビカミング」の映画公開にも合わせたリリースだと思われますが、あらたなライブアルバムの登場して話題となっています。

今回のアルバムに収録されているのは4曲。最初2曲「In My Time of Dying」「Trampled Under Foot」は1975年5月に、ロンドンのアールズ・コートで行った講演の模様を収録したもの。あとの2曲「Sick Again」「Kashmir」は、1979年8月に、イギリスのネブワース・ハウスで行われた、ネブワース・フェスティバルでのライブの模様を収録した作品となります。ツェッペリンはいままで何枚かライブアルバムをリリースしてきましたが、いずれも1972年から1973年頃のステージ。1975年はバンドとしてもっとも脂ののった時期、1979年はバンドとして成熟期の頃のステージということで、非常に貴重なライブ音源を聴ける作品となっています。

個人的に、なんといってもツェッペリンのカッコよさを感じるのはライブ音源だと思っています。正直、最初、彼らのオリジナルアルバムを聴いた時はさほどピンと来ませんでした。そんな彼らのカッコよさに気が付かされたのが2003年にリリースされたライブアルバム「伝説のライヴ」を聴いてからでした。現代の耳で聴いても全く衰えることのない、そのヘヴィーなバンド演奏に一気に惹かれた作品でした。

先日見てきた彼らの映画「ビカミング」でも感じたのですが、50年近く前の演奏にも関わらず、非常にズッシリと重いそのサウンドは、ハードロックやヘヴィーメタル、あるいはパンクロックやハードコアといったジャンルを経てきた今の耳を持っても、迫力ある演奏としてグッと惹かれるものがあります。いまから50年前に、既にロックバンドとしてこれだけの境地に達していたというのは、あらためてライブ音源を聴いても驚かされるものがあります。

また、今回のライブ音源を聴いて感じた彼らの大きな魅力は、4人のメンバーそれぞれが強烈に個性を主張し、そのヘヴィーなサウンドをぶつけ合いながら、しっかりとバンドとしての一体感を維持している点のようにも感じます。ライブ音源を聴いていると、ボーカルやギターはもちろん、ベースやドラムの音もしっかりとクリアに耳に飛び込んできます。そして同時に、この4つの音がしっかりと組み合わさり、ひとつのサウンドを作りあげているのも魅力的。もっともバンドとして脂ののった時期の演奏だからこその一体感を感じるライブ音源に思いました。

ちなみに前半2曲と後半2曲の聴き比べも楽しく、まだ若々しさと疾走感もある前半2曲に対して、ライブ会場の違いというのも大きいのですが、後半2曲はスケール感とある種の貫禄すら感じさせるステージ。たった4年という歳月ながらもバンドとしての変化も感じますし、また異なった側面での彼らのライブの魅力を感じさせる構成にもなっていました。

本作の長さ自体はたった4曲34分という短さで、もうちょっと聴いていたかったな、という気持ちはあります。ただ、それでも聴きごたえ十分な内容で、新たなライブアルバムの名盤誕生のような予感もする1枚だと思います。ロックリスナーなら年齢問わず聴くべし。偉大なるロックバンドの魅力をあらためて実感できるライブアルバムでした。

評価:★★★★★

Led Zeppelin 過去の作品
MOTHERSHIP


ほかに聴いたアルバム

JAPANESE SINGLES COLLECTION-GREATEST HITS-/Donna Summer

海外のミュージシャンが日本でリリースしたシングル盤を、販売順に収録した日本独自企画のベストアルバム「JAPANESE SINGLES COLLECTION」シリーズ。今回紹介するのは、主に80年代に活躍し、ディスコの女王という異名を持つ、ドナ・サマーのシングル集。80年代を彩った数多くのヒット曲が収録されており、いかにも80年代なアレンジにのせたリズミカルな曲調は、リアルタイムに聴いていなくても、どこかノスタルジックすら感じさせます。ディスコの女王という彼女らしく、全体的に並ぶダンサナブルな楽曲は今聴いてもワクワク感があります。全3枚組(+DVD)というボリューミーな内容ながらも、一気に楽しめたアルバムでした。

評価:★★★★★

A Danger to Ourselves/Lucrecia Dalt

若干、Aphex Twin味も感じさせるジャケットも特徴的な、コロンビア出身で、現在はニューメキシコ州在住の実験音楽家による、Lucrecia Dalt名義では7枚目となるアルバム。ループする打楽器のサウンドやエレクトロサウンド、インダストリアル的なダークなビートなどを用いつつ、一方で優しい彼女の歌声でメランコリックな歌を聴かせてくれる点も特徴的。特に英語とスペイン語を行き来する独特の歌が大きな魅力となっています。前作もそうでしたが、今回の作品も実験的要素の強いサウンドと反して、いい意味で、ポップな聴きやすさを感じさせるアルバムでした。

評価:★★★★★

Lucrecia Dalt 過去の作品
¡Ay!

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2025年11月15日 (土)

3人組となり、新たな一歩を進めた新作

Title:Double Infinity
Musician:Big Theif

現代のフォーク・ロックの旗手として注目を集める、アメリカのインディーロックバンド、Big Theif。毎回、アルバムは傑作が続き、高い評価を受けています。そんな中、2024年にベースのマックス・オレアンチックが脱退。彼らにとって6枚目となるアルバムながら、3人組となり、新たな一歩を歩みだした、初となる作品となります。

毎回、フォーク・ロックという枠組みの中でも、様々な音楽性を取り入れて、幅のある作品を作り出している彼ら。今回のアルバムは、特に様々な音楽性を取り入れた、バリエーションある作風が大きな特徴となっています。

まずアルバムの冒頭、「Incomprehensible」のイントロから、いきなりメタリックなサウンドからスタート。スペーシーなシンセを取り入れるなど、エレクトロ的な作風となっています。さらに続く「Words」では、なんと総勢12名にも及ぶプレイヤーが参加した楽曲。分厚く賑やかなサウンドで、ダイナミックな音楽性が展開される楽曲となっています。

中盤の「No Fear」では反復するサウンドが独特のグルーヴ感をかもしていますし、「Grandmother」ではアンビエント界の巨匠、Laraajiが参加。スペーシーな作風は、これまでのBig Theifの作品とはまたことなる雰囲気を作り出しており、アルバムの中でひとつのインパクトとなっています。

もちろん一方では「Los Angeles」のようなギターでフォーキーに聴かせる、郷愁感あふれるナンバーや、「All Night All Day」のような、美しいコーラスラインで清涼感たっぷりに聴かせるナンバーもありますし、タイトルチューンである「Double Infinity」は、まさに郷愁感たっぷりのフォーキーな作品。フォークロックバンドとして、シンプルで暖かい、メロディアスな作品を聴かせるという彼らの魅力は本作でももちろんしっかり感じられます。

また、個人的に良かったのは終盤の「Happy with You」で、エイドリアン・レンカーの清涼感あふれるボーカルがたまらない、爽やかなギターポップの楽曲。ほどよく軽快なバンドサウンドもまたとても心地よい1曲となっています。

Big Theifらしさをちゃんと維持しつつも、さらなる挑戦を感じさせる今回のアルバム。3人組となって新たな一歩のアルバムだからこそ、アルバムの内容ももBig Theifとして新たな一歩を進めた、そう感じた作品でした。そして、それがまた傑作になったのもやはり彼らの実力を感じさせます。今後の彼らの活躍にも俄然期待したくなる作品でした。

評価:★★★★★

Big Thief 過去の作品
U.F.O.F.
Two Hands
Dragon New Warm Mountain I Believe in You


ほかに聴いたアルバム

The Fateful Symmetry/Mark Stewart

イギリスのポストパンクの代表的グループ、THE POP GROUPのボーカリスト、Mark Stewart。2023年に62歳という若さでこの世を去った彼ですが、それから2年、彼の遺作となるアルバムがリリースされました。もともとポストパンクの旗手として知られる彼ですが、このアルバムでもダブやエレクトロ、ディスコサウンドなど様々な音楽的要素を取り入れて、独特のポップスを構築しています。ただ、全体的に小難しい感じはなく、ポップで楽しい雰囲気も感じさせます。ある意味、ラストとして集大成とも言える作品。あらためて早すぎる彼の死を残念に思いつつ、ご冥福をお祈りしたいと思います。

評価:★★★★★

Mark Stewart 過去の作品
EDIT

Burnover/Greg Freeman

アメリははヴァーモント州バーリントンを拠点に活動するオルタナティヴ・カントリーのシンガーソングライターによる2枚目のアルバム。カントリーの影響を強く受けた作風なのですが、全体的にはちょっと気だるいローファイ気味なボーカルと、ノイジーなギターサウンドがベースの、インディーロックの色合いの強いミュージシャン。楽曲によってはサイケやドリームポップ的な色合いの強い作品もあり、カントリーというよりもオルタナティブロックが好きな層がはまりそうな感じな作風になっていました。

評価:★★★★

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2025年11月14日 (金)

社会と個人の断絶/分断をテーマに

Title:Antidepressants
Musician:Suede

oasis再結成によりにわかに注目を集めるブリットポップ・・・といった感じではありませんが、oasis再結成に合わせたoasis関連の書籍で、彼らと同時代のバンド、ミュージシャンたちも取り上げられるような機会も増えたような感もあります。ただ、ブリットポップムーブメントは遥か過去に去ってしまいましたが、往年のバンドたちのうちいくつかは、いまだに積極的に活動し、90年代に勝るとも劣らない出来栄えのアルバムをリリースしていたりします。ブリットボップの代表格のひとつとも言うべきSuedeも、まさにそんなバンドのひとつと言えるかもしれません。

2011年の再結成以降、比較的コンスタントに活動を続ける彼ら。本作は2022年にリリースされた「Autofiction」以来、約3年ぶりとなる新作。再結成以降の作品はチャート的にも高評価を維持しているようで、前作は全英チャートで2位を記録。それに続く本作も、前作に引き続き2位を獲得し、いまなお人気の高さを感じさせる結果となっています。

今回のアルバムに関しては、比較的シンプルでストレートなギターロック、ほどよくゴシックロックの要素が入ったSuedeらしいアルバムといった印象を受けました。基本的にポップなメロディーラインが主導となっており、いい意味でリスナー層を限定しない聴きやすさを感じさせ、また、ゴシックの側面についても、必要以上に耽美的にならず、ほどよくSuedeらしさを出した作品で、ブリットポップという言葉にピンと来るような方にとってはおすすめできる作品になっていたと思います。

アルバムの冒頭を飾る「Disintegrate」は力強いリズムと荒々しいギターサウンドが特徴的。よりヘヴィネスさを加えてダイナミックに聴かせる楽曲からスタートし、まずはリスナーの耳を惹きつけます。タイトル自体「崩壊/分解」という意味だそうで、アルバムの冒頭の「Connected/Disconnected」という警告音が印象的。社会や個人の断絶というのは本作のテーマとなっており、不気味な雰囲気が、社会の分裂が続く現在の社会情勢への警告になっているような印象も受けます。

そんな「断絶」というテーマ性から考えると、続く「Dancing With The Europeans」は印象的。タイトル通り、ヨーロッパ人と一緒に踊るという題された、軽快でメロディアスなナンバーとなっており、スケール感のある楽曲。人々のつながりを歌ったような楽曲となっています。

その後もタイトルチューン「Antidepressants」は、伸びやかに歌い上げるゴシック色も取り入れたようなスケール感あるロックチューン。ミディアムテンポでゆっくりと歌い上げる「Somewhere Between An Atom And A Star」もまさに、哀愁感たっぷりに聴かせるナンバーで、Suedeらしい楽曲となっています。特に後半になるにつれて「Trance State」「June Rain」のようなメランコリックに歌い上げるような楽曲が目立つような印象を受けます。

一方でライブで盛り上がりそうなロックアンセムとして「Broken Music For Broken People」が印象的。伸びやかで力強いバンドサウンドに、爽やかに歌い上げるポップなメロがインパクト十分。タイトルの通り、分断された社会や人々に対する力強いメッセージとなっており、まさにライブでも盛り上がりそうなナンバー。そしてアルバムラストの「Life is Endless,Life is A Moment」は力強く歌い上げるダイナミックな楽曲で締めくくり。まさにアルバムを締めくくるにふさわしいラストとなっています。

「社会や個人の断絶/分断」というテーマ性を掲げつつ、彼ららしいゴシックな要素を取り入れ、一方ではシンプルでポップなギターロック路線が印象的な作品。バンドとしての目新しさはありませんが、Suedeらしさをしっかり抑えた作品になっていたと思います。何よりも、2020年代の今となっても、バンドとして十分すぎるほどの現役感を覚える勢いも感じさせる作品。ファンならずとも、ブリットポップが好きだった、あるいは、ギターロックが好きな方はおすすめできる作品だと思います。今なおSuedeの健在さをアピールする作品でした。

評価:★★★★★

suede 過去の作品
night thoughts
The Blue Hour
Autofiction


ほかに聴いたアルバム

The Passionate Ones/Nourished by Time

前作も大きな話題となったアメリカ人シンガーソングライターの2作目のアルバム。R&Bやシンセポップなどを取り入れた楽曲はいずれもポップでいい意味で聴きやすく、80年代あるいは90年代のR&Bを彷彿とさせる、どこか懐かしいポップチューンが並んでいます。「9 2 5」のようなダンスチューンもあったり、前作以上にエレクトロ色が強くなった印象も。いい意味で聴きやすいポップチューンが並び、前作同様、比較的広いリスナー層が楽しめるポップアルバムになっていました。

評価:★★★★★

Nourished by Time 過去の作品
Erotic Probiotic 2

Live Laugh Love/Earl Sweatshirt

Odd Futureのメンバーであり、現在は主にソロとして活躍するEarl Sweatshirtの新作。毎回、1分~2分程度の長さのラップでアルバム全体も30分程度という短く、聴きやすい作品が続いていますが、本作も全11曲ながらも24分という長さに留まる作品となっています。今回も、全体としては淡々としたラップが続き、1曲あたり2分程度の長さのため、楽曲が次々と展開していく構成。ムーディーな雰囲気の作品から、コミカルな作風の曲まであり、全体的に聴きやすいアルバムとなっています。ただ一方、全体として目新しさはちょっと薄かったような感じも。いままで聴いてきた2作に比べると、ちょっと物足りなさも感じてしまいました。

評価:★★★★

Earl Sweatshirt 過去の作品
Some Rap Songs
FEET OF CLAY

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2025年11月13日 (木)

男性アイドルグループが並ぶ

週のHot Albums

http://www.billboard-japan.com/chart_insight/

今週は1位から3位まで男性アイドルグループが並ぶ結果となっています。

まず1位は旧ジャニーズ系。Snow man「音故知新」がランクイン。CD販売数1位。オリコン週間アルバムランキングでは初動売上103万1千枚で1位初登場。前作「RAYS」の初動108万1千枚から若干のダウン。

2位はBE:FIRSTのベストアルバム「BE:ST」が先週の3位からランクアップ。特にストリーミング数が3位から2位にアップしています。さらに3位にはNumber_i「No.Ⅱ」が5位からアップ。4週ぶりのベスト3返り咲き。ストリーミング数は3週連続の1位を獲得しています。

3位以下の初登場盤は、6位に加賀美ハヤト「ULTIMATE CITY」がランクイン。にじさんじ所属のバーチャルYouTuber。一方、ロングヒット盤では藤井風「Prema」が6位から4位にアップ。これで10週連続のベスト10ヒットに。「KPOPガールズ! デーモン・ハンターズ (Soundtrack from the Netflix Film)」も7位から5位にアップ。こちらは18週連続のベスト10ヒット。Mrs.GREEN APPLE「10」も9位から7位にアップ。こちらも18週連続のベスト10ヒット。さらに「ANTENNA」も13位から9位にアップし、2週ぶりにベスト10返り咲き。これで通算57週目のベスト10ヒットとなりました。


今週のHeatseekers Songs

https://www.billboard-japan.com/charts/detail?a=heat_seekers

今週1位を獲得したのはGen Kakon「Boy,Don't Cry」が初登場。Gen Kakonは中国出身で14歳の時、日本に移住したシンガーソングライター。爽やかなシティポップ風のナンバーは、ちょっと90年代的な雰囲気が漂い、ある種のなつかしさも漂います。ラジオオンエア数で2位を獲得。Hot100ではベスト100圏外となっています。


今週のニコニコVOCALOID SONGS

https://www.billboard-japan.com/charts/detail?a=niconico

今週ははろける「目撃!テト31世」がランクイン。はろけるは若干19歳のボカロP。昨年12月に講評した「キャンディークッキーチョコレート」が1000万再生回数を突破し、注目を集めているそうです。2位はDECO*27「カイコ」がこちらも初登場でランクイン。3位はサツキ「メズマライザー」が先週と同順位をキープしています。

今週のHot Albums&Heatseekers&ボカロチャートは以上。チャート評はまた来週の水曜日に!

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2025年11月12日 (水)

ロングヒット曲、復活

今週のHot100

http://www.billboard-japan.com/chart_insight/

先週は新譜ラッシュだったため、ロングヒット曲が軒並みランクダウンしましたが、一方今週は新譜が少な目のため、一気にランクアップしています。

それでもなお強いのが米津玄師「IRIS OUT」。ついに今週で8週連続の1位。ストリーミング数、動画再生回数は8週連続の1位、カラオケ歌唱回数も5週連続1位。ダウンロード数も先週と変わらず3位をキープしています。さらに米津玄師、宇多田ヒカル「JANE DOE」が5位から2位にアップし、2週ぶりのベスト3返り咲きを果たしており、米津玄師「1991」も9位から5位にアップ。米津玄師は今週も3曲同時ランクインとなっています。

さらに3位にはHANA「Blue Jeans」が先週の11位からランクアップで、2週ぶりのベスト10返り咲き。またベスト3は9月17日付チャート以来の返り咲きを果たしいます。これで通算16週目のベスト10ヒット、通算10週目のベスト3ヒットとなります。さらに「My Body」も10位から6位にアップ。今週は2曲同時ランクインとなっています。

4位以下でも4位にアイナ・ジ・エンド「革命道中」が先週の12位からランクアップし、こちらも2週ぶりのベスト10返り咲き。通算12週目のベスト10ヒットを獲得しています。

一方、初登場曲では8位にMAZZEL「Only You」が初登場。ダウンロード数1位、動画再生回数3位。SKY-HIが代表をつとめるBMSG所属の男性アイドルグループ。

10位にはHUNTR/X「Golden」が先週の16位からランクアップ。Netflix映画「K-POPガールズ!デーモン・ハンターズ」に登場する架空のK-POPグループが歌う楽曲。ダウンロード数17位、ストリーミング数9位、動画再生回数16位。チャートインから16週目にして初のベスト10ヒットを記録しています。

今週のHot100は以上。明日はHot Albums&Heatseekers&ボカロチャート!

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2025年11月11日 (火)

応援歌的な前向きなメッセージが印象的

Title:ラストアンサー
Musician:般若

テレビ番組「フリースタイルダンジョン」にラスボスとして登場したり、日本武道館でのワンマンライブを行うなど、高い人気を誇るラッパー、般若の約2年ぶりとなるニューアルバム。今回のアルバム、紹介文では「日常と葛藤、怒りと愛情、絶望と希望。そのすべてを言葉にして刻み込み、般若の“今”をストレートに映し出す全11曲を収録。」という紹介がなされています。

今回のアルバムもいつもの般若の作品と同様、非常に力強い彼のラップが前面に押し出された作品。一言一言丁寧に綴り、言葉をしっかり届けるラップが特徴的なのですが、今回のアルバムもそんな力強い言葉の並ぶラップが綴られています。そんな中、今回のアルバムでは非常に前向きな、「応援歌」的な作品が多かったように感じます。例えば「ふと」では「だから死ぬまで生きるって今言いたい」と非常に力強いメッセージを届けてくれていますし、「Once Again」でも彼の生い立ちを綴りつつ

「だから強くあれ 強くあれ
例え駄目だって Once again
ここじゃ終わらねえ」
(「Once Again」より 作詞 般若/Red Eye)

という前向きなメッセージが特徴的。ラストを飾る「こんな夜を」

「揉めまくったあの夜 泣いた事もそりゃある
クソな事ばっかだよ 死にてえとか言うなだ
俺のLIVE来て言え 俺のLIVE見てから」
(「こんな夜を」より 作詞 般若)

という前向きなメッセージを届けてくれます。

そんな力強い前向きなメッセージを感じる応援歌的なアルバムなのですが、ちょっと気になった曲もありました。それが「konnichiwa」で、サビでは「あくまで俺等日本人」と綴るこの曲、「行儀悪い外人引っ叩く」というリリックも登場する、若干、右よりな感じのリリックが気にかかります。もともと般若が心から敬愛する長渕剛自体、右寄りの思想の持ち主。般若自体もうっすらと保守的な思想も垣間見れることがあったりします。先日紹介したShing02のレビューでも書いたのですが、最近、ミュージシャンでも排外主義的な発言を平気でするような人もチラホラあらわれてきてしまったりしており、今回の般若に関しても、正直、若干気になりました。

とはいうものの、この楽曲自体、外国人に対する差別を煽るようなものではなく、「RESPECTの気持ちみんなにある」「悲しい歴史のリバイバルはやっちゃいけねえって事は理解ある」と、ちゃんと協調の精神も綴られています。ひと昔前ならば、気にすることもないような内容だったのでしょうが・・・。

一方、今回のアルバムで非常にユニークだったのが「愛人~また来る必ず~」で、最初、禁断の恋を歌ったようなラップ・・・かと思いきや、実はラーメンへの愛情を綴ったという、叙述トリック的なラップが非常にユニーク。こういうラップもさらっとできるユーモアセンスもまた、般若の大きな魅力に感じます。

トラックに感じては、呼吸魔、AUDIO RADICALなどが参加。こちらに関しては非常にシンプルなトラックで、あくまでも般若のラップを邪魔しないようなスタイル。ラップを通じて届けないメッセージが重要であることをより感じさせます。こういうスタイルもまた、般若らしい、と言えるでしょう。

若干気になる部分はあったものの、全体的に非常に前向きなメッセージで、リスナーの背中を押してくれるような応援歌的な内容に心強さを感じさせるアルバム。あらためて般若のラッパーとしての魅力を強く感じさせてくれた作品でした。

評価:★★★★★

般若 過去の作品
ドクタートーキョー
HANNYA
グランドスラム
THE BEST ALBUM
話半分
般若万歳II
IRON SPIRIT
12發
笑い死に


ほかに聴いたアルバム

ロデオ・タンデム・ビート・スペクター/thee michelle gun elephant

デビュー30周年を記念したリマスター企画としてリリースされた2001年にリリースされた彼らの6枚目のアルバムのリマスター盤。チャート的には最高位3位を記録し、結果としてバンドの最高位を記録しています。全体的にロックンロールの色合いが強くなったのと、以前に比べて内省的になった歌詞が特徴的な作品。いままでの彼らの音の集大成的な構成ながらも、歌詞の世界では新たな模索も感じさせる1枚。正直、売上面の成功と反して、彼らの代表作とも言える「ギヤ・ブルーズ」「カサノバ・スネイク」と、ラストのフルアルバムとなった「SABRINA HEAVEN」に挟まれて、ちょっと印象的に地味な印象も。とはいえ、ミッシェルの魅力がしっかりつまった文句なしにかっこいい傑作です。

評価:★★★★★

THEE MICHELLE GUN ELEPHANT 過去の作品
THEE GREATEST HITS
cult grass stars
High Time
Chciken Zombies
GEAR BLUES
カサノバ・スネイク

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2025年11月10日 (月)

HIP HOPへの思いを綴る久々の日本語詞アルバム

Title:抒情詩歌/JOJŌSHĪKA
Musician:Shing02

独特のポエトリーリーディング的なラップが独自の世界を切り開き注目を集めるラッパー、Shing02の、実に約6年ぶりとなるニューアルバム。さらに最近は様々なミュージシャンとのコラボ作が続いていたので、純粋にShing02単独名義で、かつ日本語詞のオリジナルアルバムとしては、実に2008年の「歪曲」以来になるのでは?

そんな久しぶりとなる、Shing02らしさのつまったHIP HOPのアルバムなのですが、久々がゆえにShing02の思いのつまった傑作に仕上がっていました。まず、アルバム全体を流れるトラックが耳を惹きます。岡山を拠点に活動するJO-JAYがサウンドプロデュースを手掛けたのですが、全編、ジャジーな雰囲気を漂わせるトラックが魅力的。アルバムとしてはもちろん主軸になるのはShing02のラップなのですが、必要上に前に出ることはなく、しかししっかりと主張するトラックが耳を惹きます。「燻銀/IBUSHIGIN」「柘榴/ZAKURO」などジャジーなトラックが続いたかと思うと、「摩天牢/MATENRŌ」ではサンプリングを上手く使った、ムーディーでソウルなトラックが魅力的。後半では、「私小説/SHISŌSETSU」のような、哀愁たっぷりの泣きのギターを聴かせるトラックなどもあり、ムーディーな作風の中にバラエティーも備えたトラックが並びます。

そして、なんといってもアルバムの中で最大の魅力と言えば、Shing02の綴るラップでしょう。今回のアルバムでもまた、淡々としたポエトリーリーディングのようなラップで、しっかりとそのメッセージをリスナーの耳に届けてくれます。

今回の歌詞で特徴的なのは、その内省的な歌詞。特に、ラッパーとしてHIP HOPに対する想いを綴ったリリックが目立ちます。「舞台に立つ渋さはいぶき銀」と自らを鼓舞する「燻銀/IBUSHIGIN」から、「テクニクス二台こそ聖なる祭壇」と、まさにストレートにラップへの思いを綴った「聖/HIJIRI」「何小節書いても書き足らん」とリリックへの意欲を綴った「私小説/SHISHŌSETU」に、そのままストレートにHIP HOPについてラップした「摩天牢/MATENRŌ」や「回想録/KAISŌROKU」など、内省的なリリックの中で、自らのHIP HOP、ラップにかける思いを感じさせるリリックが目立ちます。

また、そんな中でも印象に残ったのが「聖/HIJIRI」の中への一節

「この洋上に国境は見当たらず
人種と性、年齢の差別もなく」
(「聖/HIJIRI」より 作詞 Shingo Annen)

HIP HOPというジャンルの特徴を綴ったこの一節ですが、特に排外主義はびこる現在の世界の中だからこそ、グッと心に響くものがあります。特に昨今、日本において一部ラッパーが排外主義的な作品を発表し物議をかもしたことがありましたが、こういうHIP HOPの本質を誤ったような一部ラッパーの言動には非常に残念に感じる部分がありますし、そんな思いがこのリリックでより強くなりました。

久しぶりの日本語詞のアルバムがゆえに、Shing02の思いを強く感じさせる傑作アルバム。ムーディーでジャジーなトラックとのバランスも絶妙で絶品でしたし、HIP HOPリスナーのみならずチェックしてほしい傑作でした。

評価:★★★★★

Shing02 過去の作品
歪曲
SURDOS SESSIONS: Nike+ Training Run
1200Ways(Shing02+DJ $HIN)
S8102(Sauce81&Shing02)
246911(SPIN MASTER A-1&Shing02)


ほかに聴いたアルバム

Running Through the Fire/MONOEYES

細美武士率いるMONOEYESの約5年ぶりとなるニューアルバム。ELLEGARDENやthe HIATUSも同時並行で稼働する中、さすがに全バンドをフルに回転させるのは難しいようで、前作からちょっとインターバルのあるリリースとなりました。ただ、楽曲的には英語詞の曲がメインの中、日本語詞の曲がちょうどよいアクセントとなっているほか、肩の力が抜けたような、ポップで疾走感あるギターロックのナンバーが並んでいます。楽曲的には目新しさはないのですが、バンドサウンドの力強さや、全12曲入り35分程度という短さもあって非常に聴きやすい内容に。ファンにとっては待ったかいのある1枚と言えるのではないでしょうか。

評価:★★★★★

MONOEYES 過去の作品
A Mirage In The Sun
Dim the Lights
Between the Black and Gray

OWARI DIARY/SIRUP

途中、EPのリリースはあったものの、純然たるオリジナルアルバムとしては約4年半ぶりとなる新作。今回は「終わりの始まり」がテーマで、「終わりを受け入れつつ、新たな希望に向かう」というテーマ性のある作品に。基本的に以前のSIRUP同様、ソウル、R&Bの要素の強いメロウなポップチューンがメインの反面、リズミカルなダンスミュージックの要素を取り入れた新たな試みも感じられ、まさにテーマ設定に沿った、どこか明るい希望も感じさせる作風となっています。

評価:★★★★

SIRUP 過去の作品
FEEL GOOD
cure
BLUE BLUR

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2025年11月 9日 (日)

oasis全曲を豊富なエピソードに絡めて紹介

今年、再結成を果たし、先日の日本公演も大盛況で大きな話題となったoasis。その再結成や来日公演に合わせて、oasis関連の書籍がいろいろと販売されています。その中でも面白そうなもの、手軽に読めそうなものをピックアップし、いろいろと読んでいるのですが、今回紹介するのは、そんな中、私が読んでみたoasis関連の書籍の1冊です。

「What's the story? オアシス全曲解説」。NMEの音楽ジャーナリスト、テッド・ケスラーとヘイミッシュ・マクベインによる著書。タイトル通り、oasisが過去に発表した全曲を取り上げて、1曲1曲解説を加えた1冊。「全曲解説」という建付けは伊達じゃなく、アルバムやシングルのカップリング曲はもちろん、日本盤のみでボーナストラックに収録された曲も網羅。まさに文字通り、全曲取り上げて、1曲1曲に解説を加えています。

それだけにかなりボリューミーな1冊で、全452ページ、ハードカバーの本書。そんな読み応えのある一方、文章は比較的平易で読みやすく、スラスラ読める、読みやすい内容に。これは訳者の力でもあるのかもしれませんが・・・。そして、エピソード満載の内容で、個人的には、ここ最近読んだoasisの関連書籍の中で、ダントツで面白い1冊だったと思います。

全曲解説ということで、oasisの楽曲が発表順に並び、それぞれの解説がついている内容となっています。ただ、解説といっても音楽的な分析とかはほとんどなく、基本的にそれらの曲にまつわるエピソードが並んでいる構成。また、楽曲解説の間に、ライブや記者会見など、著者2人がoasisと関わった「現場」でのレポート記事も載っており、こちらもエピソード満載となっています。

このエピソードが非常におもしろく、ドキュメンタリー映画「オアシス:スーパーソニック」で紹介されたエピソードも引用されているのですが、その一方、初耳のエピソードも満載。初期のエピソードはもちろん、本書ではoasis解散まで追った作品になっているため、「スーパーソニック」では取り上げられていない時期のエピソードも多く、特にoasis後期については、自分も一時期に比べて「熱」が醒めていたこともあって、逐一話題を追っていなかったため、今回、はじめて知ったようなエピソードも数多くありました。また、イギリス国内で、CMやテレビ番組などでどのように取り上げられてきたのか、というのは日本でも紹介されないケースが多いため、日本だとあまり知られていないような曲が、本国では人気があったり、また、他のミュージシャンのカバーや、ソロとなってからのノエル、リアムがライブなどでレパートリーに入れた曲もコメントされており、意外な曲が人気だったり、評価が高かったりして、日本での見方とは違った視点での取り上げられ方もまた、新鮮味を覚えました。

また、非常に興味深かったのは、それぞれの曲の元ネタになりそうな曲、「パクリではないか」と話題になった似たようなタイプの曲、影響を受けたような曲も紹介されているのもおもしろいところ。特に元ネタや似たようなタイプの曲は、日本のメディアでは取り上げられることがほとんどないため、こういうところをズバズバ指摘するのも、いい意味でイギリスらしいな、とも感じます。また、元ネタや影響を受けたような曲に関しては、ちょっと意外なミュージシャンや日本ではあまり知名度が高くないバンドなども少なくなく、これを機に、oasisに影響を与えたミュージシャンとしてチェックしてみようかな、とも感じました。

そして、こちらも興味深かったのが、日本に関するエピソードも結構取り上げられていること。日本のメディアでのインタビューなどで日本のファンについて言及することは多いのですが、あくまでも日本のファン向けのファンサービスと思っていましたが、特に結成初期において、英語の通じない、イギリスから遥か遠い島国の日本で熱烈に受け入れられたことは、メンバーにとっても相当うれしかったようです。特に、oasisがはじめてアンコールに応じたライブが名古屋のクラブクアトロでのライブだったそうで、名古屋が意外な形で登場してきたのもちょっとうれしかったりします。

そんな訳で、非常にボリューミーな内容でしたが、読み応え満載の1冊。oasisファンならば、まずは読むべき1冊だと思います。oasisに関しては、アルバムはもちろん全曲聴いているのですが、シングルのカップリングについては聴いていない曲も多く、これを機に、あらためてoasisの楽曲を全曲聴きなおしてみたくなりました。oasisの魅力を再認識できたのはもちろん、これだけ多くのエピソードを曲にからめて紹介した、著者2人のジャーナリストとしての力量に感服した、そんな力作でした

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2025年11月 8日 (土)

BARBEE BOYSのラストとなった傑作2作

Title:√5デトックス
Musician:BARBEE BOYS

以前から紹介しているBARBEE BOYSデビュー40周年を記念した過去作のリマスター版。今回はその第7弾。1989年にリリースされた彼らの6枚目となるオリジナルアルバム「√5」。彼らにとって、初となるチャート1位を獲得している他、彼らの代表作ともいえる「目を閉じておいでよ」も収録。アルバムでの彼らの代表作とも言って間違いない1枚となっています。

そして今回、そのアルバムのリマスターとなるのですが、この作品に関しては、「√5デトックス」と名付けられ、サウンドも大幅に変化。さらには曲順まで変わっており、全く新しくリメイクされた作品に生まれ変わっています。ちなみにこの「デトックス」という名前、いまみちともたかとKONTAが電話でやり取りした際、「リミックス」に代わる面白い言い方をいろいろと探した結果、出てきた言葉だそうです。

まずサウンド面で大きく変わったのも非常にわかりやすくなっています。オリジナルに比べてギターを前に押し出したアレンジになった上、そのギターもノイズを前に押し出したサウンドは、明らかに90年代のオルタナ、グランジ系以降を意識したようなサウンドとなっており、80年代っぽさを感じたオリジナルに比べると、「現代のサウンド」へと「デトックス」されています。

また、曲順も大きく変わっているのですが、1曲目にギターサウンドを前に押し出した「さあ どうしよう」を持ってきた点が特徴的。そこに続いて「噂ばなしはM4」と続き、ロック色が強いイメージとなっています。一方、オリジナルでは、最初にポップ色の強い「ト・キ・メ・キ」から、シングル曲「目を閉じておいでよ」へと続いており、よりポップな雰囲気に。オリジナルはやはり「売れる」ことを意識したのに対して、「デトックス」では、よりこのアルバムの本質の部分を前に押し出した曲順になった、と言えるかもしれません。

もちろんアルバム全体としてもBARBEE BOYSとして完成度の高い、しっかりと彼らの持ち味である男女のデゥオを生かしたヒリヒリするような緊張感も特徴的な楽曲が並びます。文句なしに彼らの代表作とも言える傑作。サウンド的にも今のひとの耳にも違和感なくなじめる作品なだけに、最初の1枚としても最適な作品だと思います。

評価:★★★★★

Title:eeney meeney barbee moe
Musician:BARBEE BOYS

そして本作は、1990年にリリースした彼ら6枚目となるオリジナルアルバム。2年後の1992年の渋谷公会堂ライブを最後に彼らは解散してしまいましたので、本作は解散前ラストのアルバムとなります。

ラストアルバムと言うと、よく解散前らしい、メンバーのソロのような作品が目立ったり、バンドとしてどこかチグハグだったり、逆に最後ならではの集大成的なアルバムをつくってきたりと、いかにも解散前らしい作品になりがち。ただ本作は、まだ解散まで2年ある、という点もあるのでしょうが、あまり解散前の作品といった雰囲気はありません。

ただ一方で彼ららしい、KONTAと杏子のデゥオを上手くいかしたスリリングな曲がある一方、杏子がメインボーカルを取る「静けさに」に、KONTA主導の「Waltz」、さらには「クラリネット」ではいまみちともたかがボーカルを取っており、メンバーそれぞれが個性の主張が若干強まっているように感じます。もちろん、バンドとしてバラバラといった印象はなく、そういう意味で「解散前らしさ」は感じないのですが、一方で後となって考えると、このメンバーそれぞれの主張が強かった点、バンドとしての終幕に徐々に近づいていた証だったのかもしれません。

また、一方、BARBEE BOYSとしての新たな一歩はなく、良くも悪くも「らしい」アルバムになっている点も、これが最後になった理由のひとつなのかもしれません・・・。とはいうものの、そんなメンバーそれぞれの主張の強さを含めて、しっかりBARBEE BOYSらしさも出ていた作品。ラストアルバムながらも文句なしの傑作に仕上がっています。最後まで彼らが魅力的なバンドだったということを実感できる作品でした。

評価:★★★★★

BARBEE BOYS 過去の作品
Master Bee
1st OPTION
Freebee
3rd.BREAK
LISTEN! BARBEE BOYS 4
JUST TWO OF US(RADIO-K・BARBEE BOYS)

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