2017年5月28日 (日)

ミニマルメロウがグルーヴ感が魅力的

Title:Tempest
Musician:D.A.N.

ここのサイトでもよく取り上げているのですがここ最近、メロウなグルーヴを聴かせるシティポップの系譜にあるミュージシャンがひとつのブームとなっています。昨年大きな話題となったサニーデイサービスの新譜もその系統ですし、先日紹介したばかりのBase Ball Bearの新譜にもそんな影響を強く感じます。さらに今年アルバム「THE KIDS」が大きな話題となったSuchmosなどはそんなムーブメントの中心にいるミュージシャンと言って間違いないでしょう。

得てしてブームというのは似たようなタイプのミュージシャンが雨後の竹の子のようにあらわれてつまんなくなってしまう傾向にあるのですが、このムーブメントはまだ大ブレイクしたミュージシャンが少ないからでしょうか、各々のミュージシャンが個性を発揮しており、「似たミュージシャンが乱立」という状況になっておらず、いまなお数多くの傑作がリリースされ続けています。そして今回紹介するD.A.N.というミュージシャンもその系譜の中で紹介されるようなミュージシャンの一組といえるかもしれません。

昨年4月にリリースしたアルバム「D.A.N.」が大きな話題となり2年連続でフジロックへも出演。公式サイトの紹介文をそのまま引用すると「ジャパニーズ・ミニマル・メロウをクラブサウンドで追求したニュージェネレーション」だそうですが、この紹介文が示すとおり、クラブ系にカテゴライズされる彼ら。メロウに聴かせるミニマルなサウンドにトリップできるようなそんな音を奏でています。

今回紹介するアルバムは新曲が3曲のみで残り2曲は別バージョンというスタイルなのですが、この3曲がまずとても心地よいサウンドを奏でています。1曲目「SSWB」はまずメロウにループするサウンドがとても心地よいのですが、ここにスチールパンの美しい奏がのることにより南国風の素敵な空気が流れてきます。また後半に流れてくるグルーヴィーなベースラインの心地よいこと。そのサウンドに軽くトリップできる作品になっています。

続く2曲目「Shadows」はダークなサウンドに物悲しげなメロディーラインが耳に残る楽曲。ちょっとチープさを感じるシンセの音色も楽曲に幻想的な雰囲気を与えていてとても心地よいものがあります。全体的に物憂げな雰囲気が流れるドリーミーなポップチューンに仕上がっています。

タイトルチューンとなった「Tempest」はトライバルなコーラスからスタートし、怪しげな雰囲気満点なスタート。その後もどこかサイケちっくなサウンドが耳をひく一方、スチールパンの奏でるさわやかなサウンドとベースが奏でるグルーヴ感の対比がおもしろいミニマルでメロウなサウンドが続いていきます。

アルバムの最後に収録された2曲のリミックスナンバーはいずれもD.A.N.の楽曲のミニマルグルーヴが強調されたようなアレンジに。「SSWB(AOKI takamasa Remix)」ではエレクトロサウンドが前面に押し出されており、オリジナルで感じた雰囲気とは異なる無機質的なアレンジに仕上げています。

わずか5曲入りのミニアルバムながらもどの曲もそれぞれ異なるアイディアのつまったトラックに惹きこまれる内容になっていました。ただいずれの曲に共通するのは、そのミニマルでメロウな心地よいグルーヴ感。これがとても心地よいリズムを作り出しており、聴いていてどんどんその世界に引き込まれます。軽くトリップ感を味わうことができる楽曲が並んでいました。

またどこかけだるさを感じるボーカルとメロディーラインもサウンドのトリップ感に大きく寄与しておりアルバムの大きな魅力となっています。このボーカルとメロディーの雰囲気、ちょっとOGRE YOU ASHHOLEに似たようなものを感じるかも。ボーカルやメロディーも一体となって楽曲のグルーヴ感を作り出していました。

話題となっているのも納得の傑作な1枚。また新たに注目すべきバンドがあらわれました。今回はミニアルバムということで曲数はわずか5曲でしたが、ぜひとももっと聴いてみたいです。これからの活躍がとても楽しみになってくるバンドでした。

評価:★★★★★


ほかに聴いたアルバム

TRACES VOL.2/the GazettE

the GazettE3枚目となるベスト盤。ただ選曲は「歌モノ」のみに絞っており、事実上のバラードベストとなっています。歌謡曲テイストの強い哀愁感あるメロディーの楽曲が並んでおり、良くも悪くもベタという印象も。耽美的な雰囲気の曲が多く、いかにも「ヴィジュアル系」らしい雰囲気が強くなってしまっているので、この手の曲が好きならはまりそうですが、そうでないとちょっと苦手な感じの選曲かも。

評価:★★★

the GazettE 過去の作品
TRACES BEST OF 2005-2009
DIM
TOXIC
DIVISION
BEAUTIFUL DEFORMITY
DOGMA

まばたき/YUKI

約2年半ぶり、ちょっと久々となってしまったYUKIのニューアルバム。決して派手で強いインパクトがあるといった感じではないためちょっと地味にも感じられるのですが、ロックからジャズ、エレクトロなど様々な要素を取り込みながらもポップにまとめている幅広い楽曲が魅力的。特に洋楽っぽい雰囲気とJ-POP的なベタさをほどよくブレンドされたバランス感覚は絶妙。卒なく落ち着いた雰囲気でまとめあげた「大人のポップス」に仕上げています。ここらへんのセンスの良さがジュディマリ時代のような派手なヒット曲がなくても高い人気を持続させている大きな要素なんでしょうね。

評価:★★★★★

YUKI 過去の作品
five-star
うれしくって抱きあうよ
megaphonic
POWERS OF TEN
BETWEEN THE TEN
FLY

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2017年5月27日 (土)

全曲「GET WILD」

Title:GET WILD SONG MAFIA
Musician:TM NETWORK

出ました!ネタ的な意味でもかなり話題となった本作。全4枚組4時間超以上というボリュームある内容のすべての曲が「GET WILD」というとんでもないアルバム。私の記憶ではもともとネット上で全曲「Lifetime Respect」という三木道山のアルバムが発売されたという嘘情報のネタが発端。その後実際に織田裕二の「Love somebody」やm.c.A.T.の「Bomb A Head」、松崎しげるの「愛のメモリー」など、アルバム1枚が1曲の別バージョンの曲が並ぶというネタ的なアルバムがリリースされました。

本作はある意味、その「アルバム全曲が1曲の別ヴァージョン」の究極的な形態。もともと「GET WILD」はいろいろなアルバムに様々なバージョンが形をかえて収録されていたり、シングル曲としても別バージョンが何度も発売されていたりといろんなバージョンがあることは認識されていました。実際、「アルバム1枚すべて同じ曲」のアルバムの先駆け的な存在として2004年にリリースされたボックス盤「WORLD HERITAGE DOUBLE-DECADE COMPLETE BOX」の中に全曲が「GET WILD」という「ALL the “Get Wild” ALBUM」が既にリリースされていたりしました。

それだけTM NETWORKの代表曲として人気を誇る「GET WILD」というナンバー。ただアルバムの中でのメンバーへのインタビューでも語られているとおり若干不思議な曲で、TM NETWORKで一番売れた曲でもなければデビュー曲でもありません。またファンへの人気投票を行っても、ひょっとしたらこの曲が一番好きというファンは決して多くはないかもしれません。個人的にも同じ「シティーハンター」のエンディングテーマとしても「GET WILD」よりも「STILL LOVE HER」の方が好きかもしれません。

しかし楽曲が登場した時のインパクトとしては他の曲と比べてずば抜けたものがあるのではないでしょうか。何よりも本作がタイアップとなったアニメ「シティーハンター」のエンディングの衝撃は今でも忘れられません。アニメ本編の最後のシーンに重なるようにピアノのイントロが静かにスタート。そのアニメの余韻を残すように楽曲がはじまるのですが、このアニメ本編からエンディングテーマへの流れが鳥肌が立つほどカッコいいものがあります。このアニメタイアップの衝撃が「GET WILD」が話題となった大きな要因なのは間違いありません。

そんな「GET WILD」は時代を経て様々なアレンジを施して変化していきます。今回のアルバムではバージョンがリリースされた順に並んでいるだけに、メンバーが、特に小室哲哉が「GET WILD」に対するスタンスの変化がわかり興味深いものがありました。「GET WILD」が最初に大きな変化を見せるのが89年にリリースされた「GET WILD '89」。原曲に対して宇都宮隆のボーカルのサンプリングが効果的に用いていたりして、よりテクノ色が強くなる本作。小室哲哉本人が「最初に僕が『こうなったら良いな』というアレンジに仕上がった」と語っているとおり、完成形と考えていたのか、その後、TM NETWORKがTMNとなり1994年に解散するまでのバージョンは基本的に「'89」に準拠するバージョンとなっています。

ただ「'89」ではアニメでも印象的だったピアノのイントロが削除されています。おそらく小室哲哉はこのピアノのイントロはあくまでもタイアップ向けで楽曲にとっては本来不必要と考えていたのでしょう。ところがおもしろいことにDISC2以降、再結成後のバージョンについてはこのピアノのイントロが復活しており、「'89」よりもむしろ原曲に準拠したアレンジが多くなります。それだけ「シティーハンター」のエンディングに流れたピアノのイントロからスタートするバージョンがファンにとっては印象的だったということでしょうし、TM NETWORKとしてもそんなファンの意向は無視できなくなってきた、ということでしょう。また94年までの活動についてはメンバーの意向が第一となっていたのに対して、再結成後はそうはいかなくなかった、ということを意味しているのかもしれません。

また「GET WILD」の傾向としてもうひとつ顕著だったのが、最近のバージョンになればなるほどイントロが長くなってくるという点でした。もともと94年の最初の解散時までのバージョンも徐々に長くなっていたのですが、ここ最近ではそれがさらに顕著。Disc3に収録されている2015年以降のバージョンでは20分近い長いバージョンとなっているのですが、10分以上がイントロと、既にイントロ部分だけで別の曲になってしまっています。

その長~いイントロを聴いて気がついたのですが、(うすうす感じていたのですが)正直言って、このイントロ部分がいまひとつつまんない・・・。はっきりいって単調なトランスで、特におもしろみもない単調なリズムが鳴っていて、音としてもはっとするような驚きのある一音がほとんどありません。

その事実にあらためて気が付いたのが今回のアルバム、あの石野卓球によるリミックスが収録されていたため。この石野卓球によるリミックスは、電気グルーヴの最新作「TROPICAL LOVE」に通じるような雰囲気を持ったラテン風のリミックスなのですが、リズムパターンとかも聴かせるものがあり、また宇都宮隆のボーカルをサンプリングしているのですが、このサンプリングもリズムパターンやサウンドとピッタリマッチ。見事ラテン風な雰囲気の曲に仕上がっています。

しかし興味深いのはインスト曲としてはおもしろさを感じない小室哲哉のサウンドがポップスの「アレンジ」として流れると断然おもしろく曲を引き立てているという点。この言い方がピッタリ来るのが微妙なのですが小室哲哉が立っている土俵ってあくまでも「テクノ」ではなく「J-POP」なんでしょうね。本作ではそのことを再認識することが出来ました。

また今回のアルバム、DISC4として「GET WILD」の曲を様々なミュージシャンがカバーしていたのですが、女性ボーカル曲がイマイチで男性ボーカル曲が曲にマッチしていた点も興味深かったです。おそらく原曲が宇都宮隆のボーカルを意識して作られた影響なんでしょうね。カバー曲をこうやって並べることによってその事実にも気が付かされました。

流れてくる曲が次から次への「GET WILD」なのでファン以外にはあまりお勧めできません。ただ楽曲によってバリエーションが様々だったため、4時間以上の長さにも関わらず、意外とダレずに最後まで聴くことが出来ました。またこれがおそらく「GET WILD」という曲が持っている「曲の力」なんでしょう。万人にお勧めのアルバム、という訳ではありませんがファンにとっては間違いなく聴くべきアルバムでしょう。

評価:★★★★

TM NETWORK 過去の作品
SPEEDWAY
TM NETWORK THE SINGLES 1
TM NETWORK THE SINGLES 2
TM NETWORK ORIGINAL SINGLES 1984-1999
DRESS2
QUIT30


ほかに聴いたアルバム

SHISHAMO 4/SHISHAMO

人気上昇中の女性3人組ロックバンドSHISHAMOのニューアルバム。チャットモンチーブレイク以降、ねごととか赤い公園とか女性オンリーのバンドが増えていますね。彼女たちはその中でも非常にシンプルなギターロックが特徴。歌詞も素直な女の子の気持ちをストレートに描いた曲が多く、良くも悪くも癖のないギターロックを聴かせてくれます。サウンドにもメロにももう一癖あればよりおもしろいと思うのですが・・・。

評価:★★★★

SHISHAMO 過去の作品
SHISHAMO 3

LIFE IS A MIRACLE/黒猫チェルシー

黒猫チェルシーといえば最近はバンドよりもボーカル渡辺大知の俳優としての活躍が目立ちますが、バンドとしても活動を再開。約4年3ヶ月ぶり、久々のアルバムがリリースされました。黒猫チェルシーといえば以前からガレージサウンドがメインながらもどこかポップの色合いを強く感じましたが、久々の新作に関してもガレージサウンドをメインとしつつポップで端整にまとめあげているのが特徴的。以前の作品に比べてより「ポップ」としての側面が強調されたアルバムになっていました。もっと多くのリスナー層に受け入れられてもよさそうな印象が。残念ながら俳優渡辺大知の知名度がバンドに及んでいないようで売上的には苦戦しているようですが、今後の彼の活躍次第ではバンドのブレイクもありえそう。

評価:★★★★

黒猫チェルシー 過去の作品
All de Fashion
猫Pack
NUDE+
猫Pack2
HARENTIC ZOO
Cans Of Freak Hits

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2017年5月26日 (金)

2017年を象徴する1枚

Title:DAMN.
Musician:Kendrick Lamar

今、最もアメリカで高い人気と話題を誇るラッパー、Kendrick Lamar。アルバムをリリースするたびにアメリカのみならず世界中で大きな話題となり、かついずれもアルバムも高い評価を受けているのですが先月、突然ニューアルバムのリリースを発表。そこからわずか1週間でリリースされたアルバムが本作です。チャート的にもビルボードチャートでは初動売上60万3千枚という今年1番という驚異的な売上を記録。3週目にしてミリオンセールスを達成するなど相変わらず怒涛の勢いを続けています。

彼は毎回、アルバムの中でアメリカの現代社会が抱える問題点や矛盾を鋭く描写し、それが賛否両論含めて大きな話題となっています。そのため彼の楽曲の何が話題になるかと言えばやはりそのリリック。ただ残念ながら突然リリースされたということもあってか、対訳付きの国内盤リリースは今年の7月を予定とかなり先になっています。ここらへん、確かに彼の書くリリックはアメリカ社会、それも黒人社会を反映しているため日本人にとっては複雑でわかりにくい部分も多いのでしょうが、これだけ話題になっているアルバムなだけにリリースから3ヶ月もインターバルが出来てしまうのは非常に残念に感じます。

以前のDrakeのアルバムでも参考にしたのですが、今回も「RO69」のサイトで音楽評論家の高見展氏により1曲毎に彼が何を綴っているのか解説したページがあったので今回もそれを参考にしつつアルバムを聴きすすめました。英語が出来ない私にとっては非常に参考になります。

【完全解読】ケンドリック・ラマー『DAMN.』は、これを読みながら聴け(前編)
【完全解読】ケンドリック・ラマー『DAMN.』は、これを読みながら聴け(後編)

このサイトを参考にすると本作でもこのアルバムで綴られているのはアメリカ社会が抱える問題点。それも単純な白人vs黒人みたいな手法ではなく、アメリカ社会の問題点を自分たちの内面で抱えている問題ではないかと問いかけています。この単純に「社会の責任」としないような手法は前作でも見られましたが、ここらへんの考察が賛否を産むとともに大きな評価を得る要因ではないでしょうか。

このリリックが直接的には理解できないのは非常に残念なのですが、本作が日本人にとっても十分楽しめるアルバムである点は間違いありません。例えば前作に収録されていた「Aright」に対する批判報道に対する反論として話題となった「DNA.」はまさにその強いメッセージ性を反映するかのような力強いラップが耳を惹きます。

今回の作品は、ソウルやファンク、ジャズ寄りの嗜好が強かった「To Pimp A Butterfly」や「untitled unmastered.」に比べてアーバン・ヒップホップ寄りに戻った作品となっていますが、それでもやはりジャジーでメロウなトラックやファンキーなサウンドが大きな魅力に。前作にも参加し、先日も傑作アルバムをリリースしたばかりのThundercatが参加した「FEEL.」はグルーヴィーなベースラインが非常に心地よいサウンドを醸し出していますし、RIHANNAが参加した「LOYALTY.」もスローファンクなナンバーがとても気持ちの良いグルーヴ感を作り出しています。

また「XXX.」ではあのU2が参加して話題も。ただテンポよいエレクトロトラックのどこにU2が?と思いつつ、最後にオチのように顔を出してくるという構成がユニーク。ほかも全体的に音を絞ったシンプルなトラックでメロウでグルーヴィーに聴かせるサウンドが非常に魅力的。聴いていてうっとり来るようなトラックだけでも十分聴ける傑作となっていました。

7月にリリースされる国内盤も対訳がついてくるだけに非常に気になるのですが・・・とりあえず今の段階でも十二分に今年を代表するアルバムと言える作品だと思います。トランプが大統領に就任した2017年という年を象徴するようなアルバムです。

評価:★★★★★

Kendrick Lamar 過去の作品
Good Kid M.a.a.D City
To Pimp A Butterfly
untitled unmastered.


ほかに聴いたアルバム

Sometimes I Sit & Think & Sometimes I Just Sit/Courtney Barnett

本作は先日聴いたグラミー賞ノミネート作品を集めたオムニバスアルバム「2016 Grammy Nominees」ではじめて知ったオーストラリアの女性シンガーによるアルバム。グラミー賞最優秀新人賞にノミネートされた彼女ですが、80年代から90年代のオルタナ系インディーギターロックを彷彿とさせる粗いギターサウンドが特徴的。イメージで言えばPIXIESやSONIC YOUTHを一人で演っているような感じ。そんな粗いギターロックに対してメロディーラインは至ってポップ。個人的には完全に壺にはまりました。本作は2015年リリース作なのでちょっと前のアルバムということなのですが・・・そろそろ次のアルバムがリリースされないかな。これからが非常に楽しくなってくるミュージシャンです。

評価:★★★★★

automaton/Jamiroquai

多分アラフォー世代にとってはその名前だけで懐かしさを覚えるイギリスのロックバンドJamiroquaiの7年ぶりとなる最新作。オリコンチャートではきちんとベスト10入りを記録し根強い人気を感じさせます。楽曲的にはJamiroquai風のダンスポップを今時なエレクトロサウンドにきちんとアップデートしてきた作品に。目新しさみたいなものは感じませんが、一方できちんと現役感は伝わってくる作品になっており、まだまだ第一線で活躍を続けるバンドなんだということがヒシヒシと伝わってくるアルバムになっています。

評価:★★★★

Jamiroquai 過去の作品
Rock Dust Light Star

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2017年5月25日 (木)

19年2ヶ月ぶりの1位獲得

今週のアルバムチャート

http://www.oricon.co.jp/rank/ja/

根強い人気を感じます。

今週1位を獲得したのはTHE YELLOW MONKEY「THE YELLOW MONKEY IS HERE. NEW BEST」。昨年再結成を果たした彼らの再結成後初となるアルバムでもある本作はタイトル通りのベスト盤。え?またベスト盤・・・?と思ってしまうそうなのですが本作はベスト盤はベスト盤なのですが全曲新録という内容。2013年にリリースしたベスト盤「イエモン-FAN'S BEST SELECTION-」の楽曲を新たに録音したアルバムとなっており、ファンにとってはオリジナルアルバム感覚で聴けるうれしいアルバムであるのと同時に、メンバーにとっては再度自分たちの立ち位置を確認した再結成後の第一歩としてふさわしいアルバムとも言えるかもしれません。

初動売上は4万5千枚。直近作はベスト盤の「イエモン-FAN'S BEST SELECTION-」の初動4万2千枚(2位)よりアップ。なんと彼らがアルバムで1位を獲得したのは1998年の「PUNCH DRUNKARD」以来19年2ヶ月ぶりという快挙。もっともいくらCDが売れないからといって初動4万5千枚はちょっと寂しい感じもするのですが、ただ本作はデビューした記念日にリリースされたということで月曜日のリリース。チャート的にはもっとも不利な発売日でのリリースとなり、それでも1位を獲得するあたり、彼らの人気の高さをうかがわせます。

2位初登場はLinked Horizon「進撃の軌跡」がランクイン。Sound Horizonの別名義でのプロジェクトによる2枚目のアルバム。アニメ「進撃の巨人」に使用されたタイアップ曲を中心とした選曲になっています。初動売上2万5千枚は前作「ルクセンダルク大紀行」の1万6千枚(15位)からアップ。Linked Horizonとしてはアルバムでの初のベスト10ヒットとなりました。

3位にはさユり「ミカヅキの航海」が入ってきました。これがアルバムではデビュー作となる女性シンガーソングライター。「酸欠少女」というキャッチコピーを使用したり、彼女をそのまま描いたアニメキャラを登場させ「2.5次元パラレルシンガーソングライター」と名乗ったり、中2病的な雰囲気がちょっと狙いすぎな感じもします。初動売上2万3千枚でデビューアルバムながらも見事ベスト3入り。

続いて4位以下の初登場盤です。まず5位に小泉今日子「コイズミクロニクル~コンプリートシングルベスト 1982-2017~」がランクインしてきました。デビュー35周年を記念してリリースされた、彼女の全シングルを網羅した3枚組のベスト盤。最近では天野春子名義で歌ったNHKの「あまちゃん」に使用された「潮騒のメモリー」がヒットして話題となりましたが、音楽活動としては散発的な活動が続いている彼女。そんな彼女ですが、このベスト盤では見事ベスト10ヒットを果たしました。初動売上1万6千枚。直近作「Koizumi Chansonnier」の3千枚(21位)より大幅増。彼女のアルバムでのベスト10入りは1992年3月にリリースしたベスト盤「K2 Best Seller」で記録した2位以来、25年2ヶ月ぶり(!)となります。

5位には日本でも高い人気を誇るアメリカのロックバンドLinkin Park「One More Light」が初登場でこの位置に。初動売上1万5千枚は前作「The Hunting Party」の2万7千枚(4位)からダウン。ただし全世界同時リリースの影響で金曜日リリースとなった影響も。

7位初登場は「機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズ COMPLETEBEST」。タイトル通りTBS系アニメ「機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズ」を収録したベスト盤。初動売上1万3千枚でベスト10入りを記録しています。

初登場最後は8位にランクインしたカイワレハンマー「BegInner2」。You Tuberである男性2人によるラップユニット。初動売上8千枚で前作「Prequel」の2千枚(24位)からアップ。初のベスト10入りとなりました。しかし、You TuberがこうやってCDデビューしちゃう時代なんですね・・・。

今週のアルバムチャートは以上。チャート評はまた来週の水曜日に!

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2017年5月24日 (水)

アイドル勢の1位獲得が続く

今週のHot 100

http://www.billboard-japan.com/chart_insight/

アイドル勢の1位獲得が続いている最近のHot100。今週はジャニーズ系。1位は亀と山P「背中越しのチャンス」が獲得しました。名前の通り、KAT-TUNの亀梨和也と山下智久とのユニット。2人が共演している日テレ系ドラマ「ボク、運命の人です。」主題歌として起用されています。CD販売・ダウンロード・ストリーミング数(以下「実売数」)及びPCによるCD読取数1位、Twitterつぶやき数3位を獲得し、CD販売にあわせて先週の41位からランクアップして1位獲得となりました。ちなみにこの2人、2005年に修二と彰名義でシングル「青春アミーゴ」をリリースしており、それ以来の顔合わせとなっています。なおオリコンでも初登場1位を獲得。初動売上17万5千枚は12年前の「青春アミーゴ」で記録した初動52万枚(1位)から大幅減。まあ、12年前とはCD市場の状況が全く違うので単純比較はできませんが。

2位にはスリーピースパンクバンドWANIMA「CHARM」が先週36位からCD発売にあわせてランクインです。リクルート「タウンワーク」CMソング。爽快なポップスパンクなナンバーで、おそらくパンク系では最も今、勢いのあるバンドと言えるでしょう。実売数3位、ラジオオンエア数3位、PCによるCD読取数7位、Twitterつぶやき数8位、You Tube再生回数10位と万遍なく上位にランクインしています。オリコンでも同曲が収録されたシングル「Gotta Go!!」が3位初登場。初動売上4万5千枚は前作「JUMP UP!!」の3万6千枚(4位)からランクアップし、シングルアルバム通じて初のベスト3ヒットとなりました。なお前作「JUMP UP!!」の間に配信シングル「やってみよう」がリリースされておりHot100では最高位8位を記録しています。

3位は韓国の男性アイドルグループMONSTA X「HERO」が初登場でランクインしています。実売数2位、PCによるCD読取数6位、Twitterつぶやき数5位を記録。ラジオオンエア数が圏外なのは相変わらずのK-POPらしい傾向。途中、効果音としてスーパーマリオでつかわれる効果音が入ってくるのですが、歌詞にも「囚われの城からだって救い出して」「マンマミーアじゃ済まされないかも」など明らかにマリオを意識した歌詞が登場するので、そういうことなのでしょう。本作がデビューアルバムでいきなりのベスト10入り。オリコンでも初動売上4万8千枚で2位に入ってきています。

今週は他にもK-POP勢も目立つチャートに。4位に防弾少年団「血、汗、涙」が先週の1位からランクダウンしながらもこの位置をキープしていますし、さらに5位にはTWICE「SIGNAL」が初登場でランクイン。こちら9人組のK-POPの女性アイドルグループなのですが、メンバーのうち3人が日本人、1人が台湾人と日台での販売を意識した構成になっています。本作はシングルリリースはありませんが、You Tube再生回数で1位、Twitterつぶやき数で2位を獲得し、見事ベスト10入りしてきました。6月28日に日本でのデビューアルバム「#TWICE」のリリースも予定されていて注目されているのですが、以前、彼女たちが行っている「TTポーズが女子中高生の間で流行」なんていうかな~~り怪しいニュースが流れただけに、一部メディアによるごり押しぶりが気になるところなのですが・・・。

今週の初登場組は以上。なおロングヒット組ですが、まず星野源「恋」。今週は9位から8位にランクアップ。You Tube再生回数はついに1位を明け渡したものの、まだ2位をキープ。PCによるCD読取数でも10位に入っており、まだまだ根強い人気を感じます。またロングヒットの気味だった倉木麻衣「渡月橋~君 想ふ~」は6位から10位にランクダウンし、後がない状況になりました。

また主にダウンロードの売上のみで先週4位にランクインしたChe'nelle「Destiny」が今週6位をキープ。また西野カナ「パッ」は先々週の3位から5位→7位とランクダウンしているもののスローペース。今後の動向も気になります。

今週のシングルチャートは以上。アルバムチャートはまた明日に!

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2017年5月23日 (火)

3人組となった新たな一歩

Title:光源
Musician:Base Ball Bear

昨年、ギターの湯浅将平が脱退。それも突然、レコーディングの現場にあらわれなくなり「失踪」という形での脱退という非常に衝撃的な脱退劇となりました。その結果、制作活動が一時ストップしたのかベスト盤を挟み、1年5ヶ月ぶりにリリースされたのが本作。メンバーが3人となって初のオリジナルアルバムとなりました。

そんな突然の脱退劇という予期せぬ事態で3人組となったBase Ball Bearですが今回のアルバムを聴くと、その脱退劇がむしろプラスに働いたのではないか、と思うほどの出来になっていました。今回のアルバムの大きな特徴は楽曲的にブラックミュージック寄りになったという点。前作「THE CUT」でもファンクやソウル的な要素を強く感じましたし、いままでのBase Ball Bearの楽曲にもそのような要素は感じることが出来たのですが、今回のアルバムではファンクやソウルの要素をより明確に感じることが出来ます。

「すべては君のせいで」はファンキーなサウンドでリズミカルに聴かせるディスコチューンでいきなり黒っぽいギターとベースの音が楽しめますし、「(LIKE A)TRANSFER GIRL」も同じくファンキーなサウンドが楽しいディスコチューンになっています。さらにアルバムの中で耳をひくのが「Low way」「寛解」で、メロウな雰囲気あふれる楽曲になっておりサウンドにもグルーヴ感を感じとても心地よいシティポップ風な楽曲に仕上がっています。

いままではギターロックバンドというイメージが強く、実際にあくまでもバンドサウンドを重視した曲作りをしていた彼ら。ただ今回、メンバーのうちギタリストが抜けることによりバンドサウンドという枠組みにとらわれない曲づくりが出来、その結果、より黒さが増したサウンドになったように思います。特にサウンドのバランスとしてベースラインを前に出したような曲が多く、この点もギタリストがサポートとなった結果、遠慮なく本人たちのやりたい音づくりが出来た結果かもしれません。

最後2曲に関しては以前の彼らと同様のギターロックになっていましたがこちらに関しては悪くはないのですが平凡という印象でちょっと残念な締めくくり。ただアルバム全体としては間違いなく傑作アルバムだったと思います。特にいままでのBase Ball Bearらしさをきちんと残した上で新機軸をきちんと押し出したという意味では非常にバランスのよい作品だったと思います。

ちなみに今回の歌詞は「青春」をテーマとしているそうで、この点もBase Ball Bearらしい感じ。特に1曲目「すべては君のせいで」は学生時代の恋愛を描写しており、甘酸っぱい気持ちになれます。ここらへんもBase Ball Bearらしさをきちんと保ったアルバムになっており、歌詞の側面でも楽しむことが出来るアルバムになっていました

ギタリストが失踪、脱退という衝撃的な展開となっていまったBase Ball Bearでしたが、むしろこれからの活動が楽しみになってくるようなアルバムをリリースしてきました。3人組となって新たな一歩を踏み出した彼ら。その第1弾としてこれからの彼らの方向性をしっかりと示すことができたアルバムでした。

評価:★★★★★

Base Ball Bear 過去の作品
十七歳
完全版「バンドBについて」
(WHAT IS THE)LOVE&POP?
1235
CYPRESS GIRLS
DETECTIVE BOYS

新呼吸
初恋
バンドBのベスト
THE CUT
二十九歳
C2
増補改訂完全版「バンドBのベスト」


ほかに聴いたアルバム

Q/女王蜂

フルアルバムとしては復帰後2作目となるアルバム。前作に比べるとダンサナブルなエレクトロサウンドがメイン。妖艶さとダンサナブルでポップな楽曲のバランスが中途半端に感じた前作に比べると、ダンサナブルなポップという方向性に舵を切った印象が。全体的にはグッとポップで聴きやすいアルバムに仕上がっています。一方、妖艶さという観点ではかなり薄味になってしまった印象が。ポップスさ妖艶さどちらも中途半端だった前作から比べるとグッとよくなっている感じはするのですが、彼らの個性という意味では妖艶さという要素ももうちょっとほしいような。

評価:★★★★

女王蜂 過去の作品
孔雀
蛇姫様
奇麗
失神

SPLASH☆WORLD/miwa

途中、バラードベストのリリースを挟み、1年10ヶ月ぶりとなるmiwaのニューアルバム。もともと典型的なJ-POPというイメージが強い彼女でしたが、本作では悪い方向にそれが顕著にあらわれてしまっています。楽曲にはインパクトはあるものの単調でおもしろみがありません。安易にストリングスを入れてスケール感を出そうとしているのも悪い意味でJ-POP的。いままで聴いた彼女のアルバムの中で、一番厳しい出来だったかも・・・。

評価:★★★

miwa 過去の作品
guitarium
Delight

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2017年5月22日 (月)

ハイペースでの3枚目

Title:Arca
Musician:Arca

Kanye West、FKA Twigs、さらにはBjorkのアルバムへプロデューサーとして参加するなど、数々の大物ミュージシャンとのコラボで話題となったベネズエラ出身のトラックメイカーArcaの約1年5ヶ月ぶりとなるアルバム。オリジナルアルバムのインターバルが1年5ヶ月というのは比較的短めのスパンなのですが、その前のアルバム「Xen」から前作「Mutant」の間もわずか1年弱というインターバルでのリリース。さらにはその間に無料ダウンロードで「Sheep」をリリースしており、そのハイペースなリリースぶりが目立ちます。

今回のアルバムは1曲目「Piel」ではいきなり人の声からスタートします。ハイトーンボイスで静かに歌い上げつつ、そのバックに静かだけども無機質なエレクトロサウンドが鳴る展開。さらに2曲目「Anoche」も静かなエレクトロサウンドの響きの中で静かに歌い上げるハイトーンボイスの悲しげな歌声が響きます。1、2曲も幻想的な曲調の中、徐々にスケール感が増していくのですが、3曲目「Saunter」はダイナミックなエレクトロサウンドの中、静かな歌声が響く荘厳さを感じるナンバー。教会音楽にも通じるような荘厳な響きをエレクトロサウンドで再現した聴かせるナンバーが続きます。

この音数を絞ることにより空間を聴かせ、結果重厚感を醸し出しているサウンドにハイトーンボイスの歌声がのるというスタイル。その後も「Reverie」「Coraje」と続き、このアルバムの中で示されたひとつの方向性となっています。彼の奏でる無機質で散発的なエレクトロサウンドの響きは決して聴きやすいものではなく、実験的と感じられるものなのですが、今回は重厚な歌が重なることによりアルバム全体として非常に聴きやすい楽曲が並んでいました。

特に後半、「Desafio」などはメロディーラインにもインパクトがありポップとすら感じられる楽曲になっていますし、続く「Fugaces」も重厚なエレクトロサウンドの中で歌われる歌は、どこか物悲しく、しんみり心に響くようなポップソングに仕上がっています。楽曲はいずれもどこか底知れない不気味さを同時に感じさせる部分はありつつも、ポップという印象を受けるアルバムでした。

もっともポップで意外と聴きやすいという印象はいままでのアルバムでも感じられました。今回のアルバムに関しては、「歌」の部分を押し出すことによりそのポピュラリティーがより強まったように感じます。また1曲あたり3、4分という、1曲をだれずに聴くにはちょうどよい長さなのは本作も同様。今回はさらに全13曲43分という短さにおさめており、前作のように最後の方はだれてしまった・・・ということもありませんでした。Arcaらしい強い癖はそのままにいい意味で聴きやすく仕上がっているアルバムだったと思います。その勢いはまだまだ続きそうです。

評価:★★★★★

Arca 過去の作品
Xen
Sheep(Hood By Air FW15)
Mutant


ほかに聴いたアルバム

ArtScience/Robert Glasper Experiment

新世代のジャズミュージシャンとして高い注目を集めているピアニスト、Robert Glasperの最新作。ジャズピアニストといっても、ジャズをベースにAOR、サイケロック、フリージャズ、HIP HOP、R&Bなどの多彩なジャンルを自由自在に取り入れ、なおかつポップにまとめあげている作品になっています。自由度が増した反面、良い意味でよりポップに聴きやすくなった印象も。

評価:★★★★★

Robert Glasper 過去の作品
Black Radio
Black Radio 2(Robert Glasper Experiment)

Paradise/ANOHNI

昨年リリースされた「Hopelessness」が大きな話題となった、Antony&the Johnsonsとして活動していたAntony Hegartyの新名義、ANOHNI。「Hopelessness」に続く新作は6曲入りのEP盤。ダイナミックで破壊的なサウンドを聴かせるエレクトロサウンドを主軸に据えつつ、そこに美しい彼女のボーカルがのるというスタイルは「Hopelessness」と同様。非常にスケール感も覚えるアルバムで、力強さを感じさせるアルバムでした。

評価:★★★★★

ANTONY AND THE JOHNSONS(ANOHNI) 過去の作品
The Crying Light
SWANLIGHT
CUT THE WORLD

Hopelessness

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2017年5月21日 (日)

25周年企画第1弾

Title:ウルフルズTribute~Best of Girl Friends~

今年デビュー25周年を迎えたウルフルズ。25周年という記念の年の今年、ニューアルバムのリリースや野外ライブの開催など様々な企画が用意されているようですが、その第1弾的企画になるのが本作。様々なミュージシャンが参加して彼らの曲をカバーするトリビュートアルバムです。

〇周年企画にトリビュートアルバムをリリースする試み、ここ最近では珍しくない・・・どころかむしろ「ありがち」な企画。ただそんな中で本作がユニークなのはタイトルにもある通り、すべて女性ミュージシャンによるカバーになっている点。ウルフルズの歌を女性シンガーがどのようにカバーするのか、ある意味とても興味深い企画でもありました。

その結果として非常にユニークなカバーが多く収録された聴きどころの多いアルバムになっていました。特にウルフルズの曲をそのままカバーすると女性ボーカルだと違和感があるからでしょうか、原曲を大きくいじった自由度の高いカバーが多かったのが特徴的。1曲目Superfly「ヤング ソウル ダイナマイト」こそ、Superflyもウルフルズと同様、ファンク色強い曲も演るだけに原曲に比較的近い雰囲気でのカバーになっていましたが、続くチャットモンチー「かわいいひと」は軽快なチンドン風の鐘が鳴り響くかわいらしいアレンジのポップチューンになっていますし、UAの「歌」も静かで空間を生かしたアレンジに彼女の歌を前に押し出した楽曲になっており、完全にUAの曲に仕上がっています。

ハンバートハンバートの「SUN SUN SUN '95」もレトロポップ調の軽快で楽しいポップナンバーになっていますし、原曲だとパワフルなボーカルが前に出ていたふくろうずによる「バンザイ~好きでよかった~」もシンプルなポップにまとまっています。

久しぶりにその名前を聞いた松崎ナオ「暴れだす」も特徴的なそのボーカルが耳を惹きます。リズムが微妙にラテン風なのもユニークなところ。BONNIE PINKの「僕の人生の今は何章目だろう」もレゲエ風なアレンジがちょっと意表をつかれますが、完全にBONNIE PINKの曲になっているのも面白い感じ。そしてラストを飾るのはおなじみ「ガッツだぜ!!」を木村カエラがエレクトロパンク調にカバーしています。

全12曲を12組のミュージシャンが12通りの解釈でカバーしており、そのいずれも自らの曲としてしっかりと取り込んでいます。基本的にこの手のトリビュートは名カバーがあっても一方ではずれも少なくないのですが、このアルバムに関しては基本はずれはありませんでした。

また一方で楽曲がこれだけ自由度の高いカバーに耐えられるのもやはりひとえにウルフルズの原曲がしっかりとしたメロディーラインを持った曲ばかりだからなのでしょう。またよくよく考えるとウルフルズの楽曲は、トータス松本の力強いボーカルとファンキーでソウルなサウンドから男っぽいというイメージはありつつ、歌詞についてはマッチョっぽさは薄く、そういう意味でも女性シンガーのカバーでもしっくりくる内容だったのかもしれません。

ウルフルズの楽曲を違う側面からスポットを当て、あらなた魅力を引っ張り出してきたアルバム。ウルフルズが好きならもちろん、個々のミュージシャンのファンでも満足できるトリビュートアルバムに仕上がっていました。

評価:★★★★★


ほかに聴いたアルバム

Babe./阿部真央

前作「おっぱじめ」からちょうど2年ぶりとなる新作。この2年の間に出産、離婚を経た彼女。今回の新作では特に母であることを意識した曲を収録しています。それが「母である為に」「この時を幸せと呼ぼう」で、どちらも子供への惜しみない愛情を歌った歌になっています。この2曲も大きなインパクトがあるのですが、アルバム全体としてはロック色の強いアルバムに。以前の彼女の曲といえば、いろいろなジャンルに手を出しすぎてバラバラになっていた印象が強いのですが、前作あたりから楽曲にまとまりが出てきたような感じがします。いい意味でアルバムに安定感が出てきた作品。「母」となった彼女が今後どのような曲を聴かせてくれるのか、非常に楽しみです。

評価:★★★★

阿部真央 過去の作品
ポっぷ
シングルコレクション19-24
おっぱじめ

Superfly 10th Anniversary Greatest Hits “LOVE, PEACE & FIRE”/Superfly

タイトル通り、デビュー10周年を記念してリリースされたSuperflyのベスト盤。もっともベスト盤は4年前にリリースされたばかりで、かつその後リリースされたオリジナルアルバムが1枚のみという状況なので、感想としては前のベスト盤とほぼ一緒(^^;;洋楽的な部分と歌謡曲的な部分のバランスが絶妙で垢抜けた部分といい意味でベタな部分が同居しているポップスがとても心地よいアルバムです。内容的には5つですが、あまりにもベスト盤のスパンが短いということで。

評価:★★★★

Superfly 過去の作品
Superfly
Box Emotions
Wildflower&Cover Songs:Complete Best 'TRACK3'
Mind Travel
Force
Superfly BEST
WHITE
黒い雫 & Coupling Songs:`Side B`

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2017年5月20日 (土)

デビュー5年目で早くもベスト

Title:5th Anniversary Best
Musician:家入レオ

タイトル通りデビュー5周年を記念してリリースされる女性シンガーソングライター初のベストアルバム。デビューからわずか5年、アルバムも4枚のみでベスト盤リリースというのは昔ならばかなり早いペースという印象を受けるのですが・・・ただここ最近、ともすれば「10周年」でベスト盤を出した後、「15周年」「20周年」でのベスト盤をリリースしてくるようなミュージシャンが少なくない中、5年目のベスト盤というのは妥当なのかもしれません。

直近のオリジナルアルバム「WE」でよりその傾向が強くなったのですが、家入レオの楽曲のイメージといえばもろ90年代のガールズポップ路線。「ガールズポップ」というと最近ではアイドルの楽曲を指して使われることも多いようですが、ここで言うガールズポップというのは90年代のアイドル冬の時代と呼ばれた頃、女性シンガーを実力派として売り出しつつもアイドル的な要素を織り込んで売り出したようなミュージシャンたちのこと。個人的にも高校生の頃、結構好んで聴いていたジャンルなのですが、彼女はその中でも特にポップスロック寄りのシンガーに似たようなものを感じます。具体的に言えば久宝留理子、久松史奈、田村直美、永井真理子、近藤名奈・・・彼女からイメージされるシンガーは次々と出てきます。

彼女はメロディーのインパクト、特にサビのインパクトが非常に強く、その点は良くも悪くも「売れ線」といった印象も強く受けます。「Bless You」など「愛なんていつも残酷で もう祈る価値ないよ」というこれでもかというほどのインパクトを持った歌詞からスタート。デビューシングルとなった「サブリナ」もサビ先でインパクトあるフレーズからスタートしますが、彼女の楽曲は売れるポップスのお手本と言ってしまっても過言でないインパクトを持っています。

90年代のガールズポップ路線といえばその傾向をもっとも強く感じたのは「Shine」。特にサビに入る直前からサビへの入りに関しては高校時代によく聴いていたポップスを思い出す、どこかノスタルジックな雰囲気すら感じてしまいます。90年代風といえば「Hello To The World」にもそんな懐かしい空気を感じます。多保孝一が楽曲を提供しているこの曲はちょっと70年代ロックの匂いも感じてSuperflyっぽい雰囲気もあったりするのですが。

90年代ポップ色の強いインパクト重視の楽曲は目新しさはないのですがアラフォー世代にとってはある種の懐かしさを感じるポップスの連続だと思います。ただ彼女の楽曲でちょっと気になるのは、彼女は「シンガーソングライター」という肩書がついているのですが、ほとんどの曲は単独作曲ではなく西尾芳彦や多保孝一との共作であるという点。なんとなくのイメージ論なのですが、彼女が中心となっているというよりも、彼女が口ずさんだ1フレーズ程度のメロディーラインを他の作家陣がむりやり引き延ばして楽曲にしているように思います。今後も作家陣に恵まれればいいのですが、この手のシンガーは一度売れなくなると作家陣に恵まれなくなり、一気に落ちていくというケースが多いだけに気になるところ・・・。まだ22歳の彼女、まだまだ成長していく余地のあるシンガーだと思うので、今後の活躍も気になるのですが。

評価:★★★★

家入レオ 過去の作品
LEO
a boy
20
WE

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2017年5月19日 (金)

弦楽四重奏によるセルフカバー

Title:la RINASCENTE
Musician:KAN

KANちゃんの新作はセルフカバーアルバム。今回のセルフカバーは彼の過去の名曲を弦楽四重奏によるアレンジがほどこされた内容になっており、優雅なストリングスの調べを楽しめるアルバムになっています。タイトルの「la RINASCENTE」とはフランス語で「生まれ変わる」という意味だとか。一時期「フランス人になりたい」とフランスに移住していた彼らしいタイトルになっています。

ちなみにジャケット写真もDonald Fagenの「The Nightfly」のパロディー。まあ、「The Nightfly」のジャケットはよくパロディーに用いられるジャケットなのでパロとして用いるにはちょっとベタなセレクトなのですが、歌詞カードを1ページめくってあらわれる写真はKANらしいお遊びがあらわれます。

さてJ-POPのミュージシャンのセルフカバーでストリングスアレンジを用いてくるというのも正直言ってしまえばよくあるケース。特にオーケストラアレンジをほどこして「ロックとクラシックの融合」と謳い文句のアルバムをつくってくるミュージシャンは昔からゾクゾクと登場してきます。

ただ個人的にこの手のストリングスアレンジアルバムであまり「これ」といった傑作に出会えたことはほとんどありません。一番の理由はその企画の安直さ。原曲をそのままクラシック風にアレンジしただけの結果、ただ単にスケール感を増そうとしたストリングスアレンジが非常に平凡に仕上がったケースがほとんど。ストリングスアレンジとしてもセルフカバーとしても中途半端という出来になってしまっているケースが大半です。

それだけに今回のアルバムに関してもあまり高い期待はしていなかったのですが・・・ただそこはさすがにKANちゃん!私が知っている限りではこの手のセルフカバーアルバムでは一番の出来だったように思います。

ストリングスアレンジによって原曲のイメージが大きく変わった作品はありません。KANの曲の大きな特徴であるピアノの音も変わらず入っています。ただ、弦楽四重奏という最小限のストリングスにおさえられたアレンジは比較的シンプルでムダを感じません。公式サイトの紹介にも「KAN自身による丁寧な編曲」という書き方をしていますが、よくよく練り込まれたアレンジの妙技を感じます。

ご存じ「愛は勝つ」は原曲を持っていたダイナミズムを今回のセルフカバーでも感じられますし、「まゆみ」などは原曲でもストリングスを用いたアレンジでしたが今回のセルフカバーではより優雅さを感じるカバーになっています。また全体的にも楽曲に「優雅さ」を増したように感じた今回のセルフカバー。大衆音楽であるポップソングを貴族的にクラシカルに優雅にまとめているというのもKANらしいある種のユーモアさを感じました。

ちなみに今回のセルフカバーアルバムに書き下ろしの曲が1曲ありますが、イントロ的なインスト作なので過大な期待は不要かと。ただアルバム全体としては彼の名曲をあらたな側面で切りとった非常にユニークなセルフカバーの作品になっていたと思います。KANのアレンジャーとしての才能が光るアルバムでした。

評価:★★★★★

KAN 過去の作品
IDEAS~the very best of KAN~
LIVE弾き語りばったり#7~ウルトラタブン~
カンチガイもハナハダしい私の人生
Songs Out of Bounds
何の変哲もないLove Songs(木村和)
Think Your Cool Kick Yell Demo!
6×9=53
弾き語りばったり #19 今ここでエンジンさえ掛かれば


ほかに聴いたアルバム

Change your pops/雨のパレード

最近注目を集めている新人バンドのメジャー2作目となるアルバム。自らを総合芸術の「創造集団」を名乗っているようで、バンドメンバー4名のほか、デザイナー集団もメンバーを擁するグループだそうです。なんだか「意識高い系」みたいな感じが気になるのですが、ピアノとシンセを主軸としたドリーミーな美しいサウンドに、歌謡曲テイストも感じる哀愁感あふれるメロディーラインにはとても耳を惹くものがあります。ちょっとどこかで聴いたような・・・感が否めず、サウンドにしろメロにしろもうちょっとインパクトが欲しいな、と思う部分は強いのですが、確かにおもしろそうな新人バンドであることは間違いなさそう。今後の成長に期待です。

評価:★★★★

Mr.KingKong/The Mirraz

何の事前告知もなく4月1日にいきなり配信限定でリリースされたThe Mirrazの新作。配信のみでいきなりリリースという形態は海外ではよくあるのですが日本ではまだまだ珍しい感じ。最近はEDM方向にシフトしてしまった彼らですが、この新作はまたパンキッシュなギターロック路線に戻ってきています。

ハイテンポなリズムに早口気味の歌というスタイルも以前のThe Mirrazそのままのスタイル。「ミュージシャンライフ!」「ボクハ芸能人」のように自虐的に自らの生活を描写するスタイルもThe Mirrazらしさを感じます。ある意味原点回帰的で、世の中を斜めから見たような彼ららしい痛快さも感じるのですが、一方では「飯マズ嫁と僕の物語」のようにネタ的にはユニークなのですが歌詞の内容は薄っぺらい楽曲もチラホラ。早口の歌で歌詞を詰め込んでいるんだから、もうちょっとネタを深掘りしてほしいのですが・・・ここらへんがThe Mirrazがいまひとつブレイクできない原因なのかも・・・。

評価:★★★★

The Mirraz 過去の作品
We are the fuck'n World
言いたいことはなくなった
選ばれてここに来たんじゃなく、選んでここに来たんだ
夏を好きになるための6の法則
OPPOTUNITY
しるぶぷれっ!!!
BEST!BEST!BEST!
そして、愛してるE.P.

ぼなぺてぃっ!!!

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