2017年11月21日 (火)

「ジャズの街」がジャズに染まる日

岡崎ジャズストリート2017

会場 岡崎信用金庫本店、東邦ガス 他 日時 2017年11月4日(土)

Okazaki_jazz1

久しぶりにライブサーキット系のイベントに足を運んできました。岡崎ジャズストリート。毎年、岡崎で開催されているジャズ系のライブサーキットです。このイベントが開催された11月4日、ちょうど1日時間が空き、いろいろと調べる中、このイベントにBloodest Saxophoneと土岐麻子というちょうと見てみたいミュージシャンが参加していることを知り、足を運んでみました。

このイベントは「ジャズの街」を標榜している岡崎で開催されているイベント。チケットが必要な全11会場の他、チケットが不要な会場も13か所設け、イベントの最中は町中にジャズが流れ出しているイベントになっています。ちなみにチケットが必要な11会場についても、音楽専門のホールは数か所だけで、他は会社の中のホールだったり、ホテルやお寺の一角だったりを利用しており、街ぐるみで参加しているようなイベント。運営のスタッフも普通のおじさん、おばさんだったり、おそらく地元の高校生と思われる子が運営しており、手作り感覚も感じるイベントになっていました。

Bloodest Saxophone@中部美容専門学校岡崎校

有料会場のステージはこの日は13時からスタート。まずはさっそくお目当てのBloodest Saxophoneを見に会場の中部美容専門学校岡崎校へ。会場は専門学校の中のホール。舞台もないようなステージで、カーテンも特にひかれず明るい状態の中での会場。ライブを見るにはちょっと不思議な感じなのですが、逆にバンドのメンバーは非常に身近に感じられる会場になっていました。

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さてBloodest Saxophoneはアルバムを聴いたことはあるのですが、ライブを見るのはこの日がはじめて。メンバー全員、スーツ姿でビシッと決めています。メインをはっているテナーサックスの甲田'ヤングコーン'伸太郎はスーツにシルクハットで決めて、バリトンサックスのユキマサはスキンヘッド、ホーンのCohは非常に大柄で存在感があり、メンバーのキャラ立ちも十分。見た目も非常に決まっていました。

楽曲はデューク・エリントンの「キャラバン」をカバー。これがサックスの音をブイブイと響かせてスモーキーな雰囲気の渋くカッコイイナンバー。どちらかというと陽の光の差し込むような会場よりも夜のライブハウスが似合いそうな感じなのですが・・・(^^;;さらに同じデューク・エリントンのナンバー「イン・ア・センチメンタル・ムード」。こちらはしんみりと聴かせるナンバーもしっかりと決めてくれます。

その後もギター、ベース、ドラムスだけのナンバーを入れてきたり、トロンボーンのCohがボーカルを取り、古いヒット曲として「スウィート・スー」を歌ったりと、バラエティー富んだ展開に。彼らの楽曲は、1930年代から40年代にかけて流行した「ジャンプ」と呼ばれるビックバンドに影響を受けたアップテンポなブルースがメイン。そのため、楽曲としては戦前や50年代あたりのブルースの香りも漂うようなルーツ志向の楽曲がほとんど。本人たちのパフォーマンスも決まっていて、めちゃくちゃカッコよいパフォーマンスを見せてくれました。正直、真昼間に椅子席で見るよりもライブハウスで思いっきり踊りながら見てみたかったです。予想以上に素晴らしいステージで、これはまたライブを見てみたいなぁ~。今度はビール片手に思いっきり踊りながら見てみたいです!

土岐麻子@岡崎信用金庫本店

続いてはこの専門学校の目の前にある岡崎信用金庫本店へ。この2階のホールで土岐麻子のライブを見に行きます。この信金、全国屈指の規模を誇る信金なだけに本店もかなり大きく重厚感が。ここでジャズのコンサートというのもちょっと不思議な感じ。ホールもそれなりに大きなステージとなっていました。

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土岐麻子はアルバムこそリリースされるたびに聴いているのですが、ライブを見るのは久しぶり。相変わらずきれいな方で見とれてしまいます(笑)。彼女はジャズというよりもポップスシンガーなのですが、彼女の父親はジャズサックス奏者の土岐英史。本人もジャズのアルバムをリリースしていたりします。それだけにこの日は普段とはちょっと違う、ジャジーなステージになるのか・・・と思っていたのですが、「Beautiful Day」からスタート。その後も「Fancy Time」「Blue Moon」と最新アルバム「PINK」からのナンバーが続き、通常モードのポップスのステージとなっていました。

その後はカバー曲へ。マイケル・ジャクソンの「Human Nature」、ニーナ・シモンで有名な「Feelin' Good」、さらにちょっと変わった選曲で「おてもやん」をポップ風アレンジにして披露してくれました。なんでも最近、日本の民謡に興味が出てきたそうで、この「おてもやん」もなかなかユニークなカバー。この日の選曲の中でも決して浮かずに自然に歌い上げていました。

さらに「僕は愛を語れない」、そしてCMソングにもなりおそらく彼女の曲の中では一番知られていると思われる「Gift~あなたはマドンナ~」で締めくくり。50分の予定がちょっと短めの40分でのステージとなったのですが、基本的にはジャズというよりもポップスの楽曲を聴かせるステージとなりました。

久しぶりに彼女のステージを見たのですが、かわいらしいボーカルも以前から変わりなく、とても楽しいステージを見せてくれました。ジャズを期待した層からするとちょっとポップス過ぎるかな?とも思うのですが、この日、土岐麻子がお目当ての一人だった私にとっては十分満足の行くステージ。彼女のステージ、また見てみたいです。

ユッコ・ミラーBAND@東邦ガス

さて、この日のイベントのお目当て、Bloodest Saxophoneと土岐麻子を見たので、次は何を見ようか迷ったのですが・・・事前にいろいろと調べた結果、ユッコ・ミラーというジャズサックスプレイヤーのライブを見に行くことにしました。非常に若いサックスプレイヤーで(年齢未公表ながらもおそらくは20代前半)、この日のパンフレットに「萌え系ファッションで話題のサックスプレイヤー」と書いてあったのですが、そのような奇抜なファッションといういで立ちながらも、キャンディー・ダルファーやグレンミラー・オーケストラとその実力が非常に高い評判を呼んでいるジャズミュージシャンだそうです。

Okazaki_jazz4

会場は東邦ガスの岡崎営業所内のホール。おそらく普段は研修か何かに使われていそうな比較的こじんまりとした会場ということもあってか、人の入りは超満員になっていました。

で、会場にあらわれた彼女は、カラフルに染めた髪に服はピンクのセーラー服というかなり奇抜なスタイル(笑)。背格好はかなり小柄で、とてもかわいらしい女の子といった感じでした。本人曰く、もともとは違った服装だったそうですがパンフレットに「萌え系ファッション」と書かれた期待に応えるためにドンキホーテで購入したピンクのセーラー服に着替えたそうです。

ちなみにMCでも「萌え系」を意識したようなハイトーンでのトークで、「ミラクル星から来た」というどこかで聴いたようなキャラ設定のいかにもなトークを展開して、会場に微妙な空気感を漂わせていました(笑)。

ただ・・・ライブがスタートするとそんな雰囲気は一転。サックスのプレイはあんな小柄な身体のどこにこんなパワーを秘めていたんだろうと思うようなアグレッシブな演奏。まずは「Yes Or No」というウェイン・ショーターのナンバーからスタートしたのですが、その力強いプレイに一気に惹きこまれました。

その後は彼女のオリジナルアルバムから「Pick Up The Pieces」。さらには彼女のキャラ設定「ミラクル星へ帰る途中の旅についての曲」らしい(^^;;「Miller Crew」を披露。ただ、この「痛い」設定とは異なり、楽曲自体は非常にカッコいいナンバーに。宇宙の旅をイメージしたようなスペーシーなエフェクトを入れたり、さらにダイナミックな演奏が入ったりと、ジャズでありながらもロック的なちょっとプログレっぽい要素も感じられる曲で、非常に惹きつけられました。

一方続く「Lagrimas」というナンバーは一転、ムーディーな雰囲気にしんみりと聴かせる曲に。彼女の風貌からするとかなりギャップのあるナンバーなのですが、非常に表現力豊かなプレイを聴かせてくれます。最後を締めくくるのは「Uptown Funk」というジャズファンクのナンバー。この曲もファンキーなリズムで思わず踊りだしたくなるような曲。最後はユッコ・ミラーが客席の中を歩きながらプレイして観客を沸かせました。

ジャズのイベントながらこの日3組目にしてはじめてスタンダードなジャズのライブを見たのですが、ユッコ・ミラー、その「萌え系」のいで立ちからするとかなりギャップのある非常にカッコいいプレイを聴かせてくれました。最初はかなり小柄に見えた彼女ですが、ステージ上の存在感は抜群で、最後の方はステージの上でかなり大きく見えるように感じれました。MCに関しては正直、かなり引いた部分もあるのですが、それは良くも悪くも彼女のキャラとして(笑)、非常に楽しめたステージ。また機会があれば彼女のステージも見てみたいです。

さてこの日はこの後、もう1ステージあったのですが、個人的な事情のためユッコ・ミラーのステージを最後に会場を離れました。3組のステージでしたがどれも非常に素晴らしいステージばかり。かなり満足感の高いパフォーマンスばかりでした。この日は無料ステージということで街角の至るところでも演奏が行われていたようですが、無料ステージのメインとなる場所は私が足を運んだ有料会場の場所からはちょっと離れており、そちらの雰囲気はあまり味わえなかったのはちょっと残念。ただとても楽しいイベントだったので、また機会があれば足を運んでみたいです。

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2017年11月20日 (月)

さらに勢いを増した新作

Title:MISSION
Musician:NONA REEVES

NONA REEVESのアルバムで前回紹介したアルバムはベスト盤「POP'N SOUL 20~The Very Best of NONA REEVE」。同作の紹介で私は「時代がNONAに追いついた?」という書き方をさせていただきました。彼ら自体は80年代ソウルの影響を強く受けたシティポップをデビュー当初から変わらず演奏していました。以前はシティポップのミュージシャンも決して多くはありませんでしたし、特にNONA REEVESが強い影響を受けているマイケル・ジャクソンをはじめとする80年代のポップミュージシャンは、彼らがデビューした1990年代後半は、今ほど評価が高くなかったように記憶しています。

しかし時代が変わり、現在はマイケル・ジャクソンを含め80年代ポップスが見直されてきました。また、特に最近ではソウル、R&B、ファンクの影響を強く受けたシティポップバンドが数多くデビューして人気を博しています。まさに時代がNONAに追いついた感のある今。事実、彼らのアルバムに関しても徐々に売上を伸ばしているようで、Wikipediaによるとアルバムもここ数作、右肩あがりに最高位を伸ばしており、本作はアルバムチャート42位と(それでもまだまだな感はあるのですが・・・)、自己最高位を記録しています。

実際、自分たちに吹く追い風を彼らも認識しているのか、オリジナルアルバムとしての前作「BLACKBERRY JAM」も非常に勢いのある作品になっていましたし、そして本作に関しても勢いを感じる充実作に仕上がっていました。まず冒頭の「ヴァンパイア・ブギーナイツ」は80年代直系の軽快でファンキーなダンスチューン。ある意味、彼らの王道とも言えるナンバーなのですが、演りたいことを演っているような爽快さを感じます。また、途中のボーカルの溜めは、完全にマイケル・ジャクソンからの影響を見て取れるのも西寺郷太の趣味を色濃く反映しています。

本作はゲスト勢も豪華、かつとても有効に使われています。「Danger Love」ではCharisma.comのいつかが参加していますが、軽快でダンサナブルなチューンにいつかのラップが上手くマッチしています。「未知なるファンク」もゲストの曽我部恵一のハイトーンなボーカルがファンクなディスコチューンに映えています。原田郁子が参加した「記憶の破片」はこのアルバムでは珍しくフォーキーな雰囲気のポップチューンとなっていますが、この曲も2人の息の合ったデゥオが楽しめます。

また今回のアルバム、ファンキーなダンスチューンも冴えまくっている本作ですが、中盤の「NEW FUNK」「NOVEMBER」についてもミディアムテンポでメロウに聴かせるボーカルが魅力的な作品になっており、西寺郷太のメロディーセンスが光る作品になっていました。

本作がNONA REEVESとして決して新しいことを演っているわけではありません。むしろいつも以上に彼らの演りたいことを自由にやっているという印象も受けるアルバムでした。これは全く個人的な主観に基づく感想なのですが、ひょっとしたら以前に比べて彼らのようなタイプの楽曲が世間的にヒットするようになったため、レコード会社側が以前よりも彼らに自由に演らせているのではないでしょうか?いつもに増して彼らの勢いを感じさせる傑作でした。

評価:★★★★★

NONA REEVES 過去の作品
GO
Choice
ChoiceII
BLACKBERRY JAM
POP'N SOUL 20~The Very Best of NONA REEVES


ほかに聴いたアルバム

『櫂』/te'

インストロックバンドte'の新作は前作に引き続き5曲入りのミニアルバム。そのうち「玲瓏たる純潔は『紅炎』の傀儡を疾らせ、暁天に燦めく証を刻む。(改)」はアニメ「ブブキ・ブランキ 星の巨人」主題歌というまさかのアニソンタイアップ!あの複雑な曲がアニメ主題歌として流れるのかよ!と思ったら、アニメバージョンは声優潘めぐみによる歌入り。そちらのバージョンも聴いてみたのですが、ちゃんとアニソンらしい感じになっており、逆にte'のダイナミックなサウンドがアニソンらしさを醸し出していました(ちなみに本作に収録されているのはインスト版です)。

前作「『閾』」ではエレクトロサウンドを入れてきてリスナーを驚かせたのですが、今回は基本的にはte'らしいダイナミックなバンドサウンドがメインとなっている構成。さほど奇をてらったような感じの楽曲もなく、基本的に収録曲5曲が同じ方向性に並んでいる統一感あるアルバムになっていました。もちろん、迫力あり複雑に構成されたサウンドは聴けば聴くほど引き込まれるものがありte'の魅力は本作も健在でした。

評価:★★★★★

te' 過去の作品
まして、心と五感が一致するなら全て最上の「音楽」に変ずる。
敢えて、理解を望み縺れ尽く音声や文字の枠外での『約束』を。
ゆえに、密度の幻想は綻び、蹌踉めく世界は明日を『忘却』す。
其れは、繙かれた『結晶』の断片。或いは赫奕たる日輪の残照。
『閾』

SONGentoJIYU/eastern youth

二宮友和が脱退し、その後が気にかかっていたeastern youthですが新メンバーとしてベースに村岡ゆかが加入。新体制でのスタートとなった彼らが、現メンバーではじめてリリースしたアルバム。ただ、バンドとしての方向性は以前から大きな変化はなく、エモーショナルな激しくも分厚いサウンドに、傷つきながら生きる人たちへの応援歌のような歌詞が大きな魅力に。ある意味、目新しさはなく、そういう意味では「バンドとしてやりつくした」という二宮友和脱退の理由はわからなくもないのですが、ただ、この方向性でもまだまだ魅力的な曲をバンドは奏でることができるということを実感した作品。まだまだ彼らは名作を世に送り出してくれそうです。

評価:★★★★★

eastern youth 過去の作品
地球の裏から風が吹く
1996-2001
2001-2006

歩幅と太陽
心ノ底ニ灯火トモセ
叙景ゼロ番地
ボトムオブザワールド

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2017年11月19日 (日)

政権の腐敗!

Title:MASSEDUCTION
Musician:St.Vincent

お尻(笑)なジャケットがまず強いインパクトのある本作は、ニューヨーク・ブルックリンを拠点として活動を続ける女性シンガーソングライター、St.Vincentのニューアルバム。セルフタイトルとなった前作は各種メディアで絶賛され、年間ベストでも軒並み上位にランクインし大きな話題となりました。それに続く本作は前作の評判を反映してか、全米ビルボードチャートでベスト10入りを記録。イギリスのナショナルチャートでも6位を記録するなどヒットを記録しています。

まず今回のアルバムで日本人にとっては一番インパクトがあったのは表題曲の「MASSEDUCTION」の冒頭。いきなり「政権の腐敗!」という日本語の叫び声の繰り返しがそのまま入っており、日本人にとってはちょっとドキッとさせられます。ちなみに日本語版にはラストにこのフレーズを中心に再構成した「政権腐敗 (Power Corrupts)」という日本語曲(!)も収録されています。

さて、日本人にとってはそんなインパクトある曲が収録されつつ、今回のアルバム、ギターサウンドが印象に残った前作に比べるとエレクトロなサウンドが前に押し出されたポップソングが並ぶ作品となっています。伸びやかなボーカルで聴かせるメロが印象的な1曲目「Hang On Me」も静かな打ち込みのリズムが主導した作品ですし、「Pills」もシンセのサウンドが軽快でリズミカルなポップソングに仕上がっています。

特に「Sugarboy」は軽快なテクノポップチューンになっており、ちょっとエキゾチックな雰囲気は東洋的な雰囲気も感じさせるナンバー。後半にも「Young Forever」のようなテクノポップ的な色合いが強い曲が並んでおり、エレクトロテイストの強い作風になっています。

もっとも途中、「Fear The Future」のようなインダストリアルな曲も入っていたりしますし、楽曲の途中でノイジーなギターが挿入される曲も少なくなく、今回の作品でもしっかりとダイナミックなギターサウンドが主張している曲も少なくありません。全体的には「宅録」的なイメージがあるのは前作と同様。前作も打ち込みのサウンドを取り入れていましたし、そういう意味ではエレクトロな部分を前に押し出したか、ギターサウンドにインパクトをもたせたかの違いはあるのですが、基本的な方向性は前作と変わらない、ということが言えるかもしれません。

また「New York」「Smoking Section」のようにシンプルなサウンドでメロディーラインをしっかり聴かせる曲もあり、メロディーメイカーとしての彼女の実力も感じることが出来ます。前述のエレクトロなポップソングもインダストリアルな曲もメロディーに関してはインパクトあるポップなメロディーラインが流れており、このメロディーの良さもなにげに彼女の大きな魅力だったりします。

個人的にはむしろ話題になった前作よりもこちらの方が好きかも、と思うほど、魅力的な傑作アルバムでした。アバンギャルドな面もありつつ、基本的には彼女のポップスシンガーとしての魅力を全面的に感じられる傑作です。

評価:★★★★★

St.Vincent 過去の作品
St.Vincent

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2017年11月18日 (土)

ちょっと「地味」なコラボかもしれませんが。

Title:Lotta Sea Lice
Musician:Courtney Barnett&Kurt Vile

非常に興味深いコラボ作がリリースされました。Courtney Barnettはグラミー賞最優秀新人賞にノミネートされたオーストラリアの女性ロッカー。一方、Kurt Vileは元The War On Drugsでギタリストとして活動し、現在はソロで活動するミュージシャン。フェスなどで何度か出会ううちに徐々に仲良くなり、今回のコラボにつながったそうです。

Courtney Barnettの曲はPIXIESやSonic Youthあたりを彷彿とさせるような80年代インディーロック直系の音。一方Kurt Vileは最新作「B'lieve I'm Goin Down…」を聴いたのですが、アコースティックでフォーキーな楽曲がメイン。その方向性は若干異なるようにも感じます。ただ、どちらもローファイ気味な楽曲という方向性は共通。コートニー自体、雑誌のインタビューで「音楽的な波長があった」といっていますが、楽曲の根底に流れているものは似ていたということなのでしょう。

実際に今回のアルバムで2人のコラボを聴くと、その相性は非常に良いものに感じます。楽曲はアコースティックなサウンドでローファイ気味なポップス。ブルージーな「Continental Breakfast」、カントリー風な「Blue Cheese」、そしてラストを飾る「Untogether」はフォークとバリエーションを持たせつつ、いずれもアコースティックな作風でルーツ志向を感じる作品に。楽曲のタイプ的には最新アルバムではKurt Vileのイメージにより近いように感じます。

またローファイ気味ということで力の抜けたよい意味でのけだるさを感じるのも魅力的。1曲目「Over Everything」はけだるい中でも爽やかさを感じる作品で、遅くまで寝ていた日曜日の朝といった感じのイメージでしょうか。続く「Let It Go」もゆっくりと鳴らされるギターでけだるさを感じる作品になっています。こういう力の抜けた楽曲を自然体で演れるというあたり、2人の相性の良さを感じます。

楽曲は当初は2人がデゥオのようなスタイルの曲が並びますが、中盤以降はそれぞれがメインを取って歌う形に。今回のアルバムの中では「Outta The Woodwork」はコートニーの作品をカートが、逆に「Peepin' Tom」はカートの作品をコートニーが、それぞれカバーするスタイル。原曲からは大きく逸脱していないものの、それぞれがそれぞれの持ち味を出したカバーになっており、それが楽曲にしっかりとマッチしているあたり、両者の音楽性の近さを感じます。

アルバム全体としては静かにギターをつま弾くような演奏スタイルがメインなだけに派手さはありません。アルバム全体としては正直、地味という印象を強く受けるかもしれません。そんなアルバムなだけに、逆に2人のメロディーメイカーとしての才能が発揮されたアルバムになっており、派手さはないもののしっかりと心に残るメロディーが非常に魅力的なアルバムになっていました。このコラボ、なかなかいいですね。これからもコンスタントに実施していくのかどうなのか・・・是非、またこのコンビでアルバムを聴いてみたいです!

評価:★★★★★

Courtney Barnett 過去の作品
Sometimes I Sit & Think & Sometimes I Just Sit

Kurt Vile 過去の作品
B'lieve I'm Goin Down…


ほかに聴いたアルバム

The Best/Ariana Grande

アメリカのシンガーソングライターで日本でも高い人気を誇るアリアナ・グランデの、日本限定リリースのベスト盤。エレクトロ、ソウル、レゲエ、ロック、HIP HOPなど幅広いジャンルの音楽を取り入れた楽しいポップソングが並んでいます。ある意味、非常に聴きやすくいい意味で万人受けしそうなポップソングの連続。世界的な人気も納得なベスト盤でした。

評価:★★★★★

Ariana Grande 過去の作品
My Everything

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2017年11月17日 (金)

圧倒的な強さで・・・

今週のアルバムチャート

http://www.oricon.co.jp/rank/ja/

今週1位は・・・圧倒的な強さであのベスト盤が1位獲得です。

今週1位は来年9月での引退を表明している安室奈美恵のベスト盤「Finally」。デビュー曲「ミスターU.S.A.」から最新シングル「Just You and I」までの全シングルを収録。今の彼女の立ち位置からすると若干「黒歴史」的な部分もある小室プロデュース期以前の曲もきちんと収録されている点も驚きです。さらに初動売上はなんと111万3千枚(!)。CDではなくイベント目当てのアイドル系のCD以外で今時初動ミリオンに到達するというのが驚き。それだけ彼女の高い人気を目の当たりにした結果でした。もちろん直近のオリジナルアルバム「_genic」の16万枚(1位)からも大きくアップ。

2位は先週1位の米津玄師「BOOTLEG」がワンランクダウン。そして3位にはアメリカのカントリー系ポップミュージシャン、Taylor Swift「Reputation」が初登場でランクイン。初動売上2万8千枚は前作「1989」の5万2千枚(3位)からダウン。ただし水曜日リリースだった前作に対して、本作は全世界でのリリースにあわせて金曜日リリースとなっています。

続いて4位以下の初登場盤です。まず4位に刀剣男士 formation of 三百年「ミュージカル『刀剣乱舞』 ~三百年の子守唄~」がランクイン。育成シミュレーションゲーム「刀剣乱舞」をもととしたミュージカルのサントラ盤。初動売上は1万8千枚。同ミュージカルのサントラ盤では前作刀剣男士 team新撰組 with蜂須賀虎徹名義の「ミュージカル『刀剣乱舞』~幕末天狼傳~」の1万9千枚(7位)から若干ダウンしています。

5位には韓国の男性アイドルグループSeventeenの韓国リリースのアルバムの輸入盤「Teen,Age:Seventeen Vol.2」が初登場でランクイン。初動売上1万8千枚は前作「AI 1:4th Mini Album」の1万6千枚(9位)から若干のアップ。

6位初登場は女性ボーカル+男性3人というスタイルの4人組ロックバンド、ポルカドットスティングレイ「全知全能」がランクイン。ミニアルバムだった前作「大正義」に続く2作連続のベスト10入り。初動売上1万6千枚は前作の初動8千枚(7位)から大幅アップしており、人気上昇中であることをうかがわせます。

最後8位9位には中森明菜の2枚のアルバム「Cage」「明菜」がそれぞれランクインしています。「Cage」は80年代のディスコチューンをカバーしたカバーアルバム。「明菜」はオリジナルアルバムとなります。初動売上はそれぞれ7千枚と6千枚。ただ、わずかとはいえオリジナルよりもカバーアルバムが上位に来るのはちょっと寂しい印象を受けてしまいます・・・。直近作はカバーアルバムの「Belie」で、こちらの初動9千枚(8位)より若干ダウン。またオリジナルアルバムとしては前作の「FIXER」の初動8千枚(7位)よりも若干ダウンしています。

今週のアルバムチャートは以上。チャート評はまた来週の水曜日に!

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2017年11月16日 (木)

すいません、1日遅れての更新です。

今週のHot 100

http://www.billboard-japan.com/chart_insight/

諸般の事情により1日遅れての更新となりました。アルバムチャートは明日更新予定です。

さて今週1位を獲得したのは「Doors~勇気の軌跡~」が獲得。日テレ系ドラマ「先に生まれただけの僕」主題歌。CD販売・ダウンロード・ストリーミング数(以下「実売数」)及びPCによるCD読取数では1位、Twitterつぶやき数では3位を記録していますが、一方ラジオオンエア数は98位に留まっています。オリコンではもちろん初登場1位。初動売上57万1千枚は前作「つなぐ」の38万9千枚(1位)からアップしています。

2位は女性アイドルグループ私立恵比寿中学「シンガロン・シンガロン」が初登場。Mrs. GREEN APPLEの大森元貴が楽曲提供した爽快で賑やかなシンセポップチューン。実売数2位でしたが、一方ラジオオンエア数31位、PCによるCD読取数11位、Twitterつぶやき数8位という結果に。初動売上7万1千枚は前作「まっすぐ」の1万4千枚(7位)から大幅アップ。これは前作では握手会をやめたそうですが、今回では再び握手会を行ったことによる要因が大きい模様。ちなみに前々作「スーパーヒーロー」は初動6万8千枚で本作とほぼ同水準でしたので、まさに差額は握手会目当ての購入分ということでしょうね。あまりにわかりやすい・・・。

3位は先週2位にランクインしたTWICE「LIKEY」がワンランクダウンながらもベスト3をキープ。実売数は11位に留まっているもののTwitterつぶやき数及びYou Tube再生回数ともに1位を獲得し、この順位となっています。ちなみに彼女たちは10位に「One More Time」もランクインしており、2曲同時ランクインとなっています。

続いて4位以下の初登場曲ですが、まず8位に女性コーラスグループLittle Glee Monster「OVER」がランクイン。実売数6位ながらもラジオオンエア数16位、PCによるCD読取数33位、Twitterつぶやき数30位にとどまり、結果、この順位となっています。オリコンでは初動1万8千枚で6位初登場。前作「明日へ」の1万9千枚(2位)から微減となっています。

初登場最後は9位にランクインしたロックバンドUNISON SQUARE GARDEN「Invisible Sensation」が先週の85位からCD発売にあわせてランクアップしてベスト10入り。アニメ「ボールルームへようこそ」オープニングテーマ。実売数は12位に留まりましたが、ラジオオンエア数9位、PCによるCD読取数4位を獲得しベスト10入りです。オリコンでは初動1万9千枚で5位初登場。前作「10% roll,10% romance」の2万7千枚(3位)よりダウンしています。

今週は他にベスト10返り咲きが1曲。HKT48「キスは待つしかないのでしょうか?」が先週のベスト100圏外から7位に再浮上。8月14日付チャートで1位を獲得して以来、14週ぶりのベスト10返り咲きとなっています。これは握手会用に通販で販売されている劇場版CDが配送された影響のようで、オリコンでも今週3位にランクアップしています。Hot100では実売数で3位にランクインした他はすべて圏外になっています。

またロングヒット組ではDAOKO×米津玄師「打上花火」が4位から2ランクダウンして6位に。米津玄師「灰色と青(+菅田将暉)」も今週5位にランクインしており、2曲同時ランクインとなりました。ちなみに先週までロングヒットを続けていた乃木坂46「いつかできるから今日できる」は今週18位までランクダウン。ベスト10入りは7週で終わりました。

今週のHot100は以上。アルバムチャートはまた明日に!

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2017年11月15日 (水)

アジテーショナルな主張がインパクト

Title:Prophets Of The Rage
Musician:Prophets Of The Rage

昨年のアメリカ大統領選挙直前に結成し話題となったスーパーバンド、Prophets Of Rage。Rage Against The Machineのザック・デ・ラ・ロッチャ以外のメンバーにPublic EnemyのDJロード、チャックDの2人、さらにCypress HillからB-リアルを迎えてのバンド。大統領選後にリリースされたEP盤「THE PARTY'S OVER」も大きな話題となりました。

今回リリースされたのはそれから約1年後にリリースされた待望のデビューアルバム。聴いていてとにかく印象に残るのはトム・モレロのギターリフ。非常に力強い特徴的なギターリフは一発で彼の演奏だとわかります。この特徴的なギターリフが主導している楽曲だなけに基本的にはザック抜きのRage Against The Machineという印象を受けてしまいます。

このトム・モレロ主体のバンドサウンドにのるのが3人のMCによるラップ。いつも以上にアジテーショナルなラップが印象的で、このラップがへヴィーなバンドサウンドやトム・モレロのギターにもピッタリとマッチ。これが2作目のアイテムながらもメンバー全員の相性の良さを感じます。

そしてやはり印象的なのがその歌詞。ジャケット写真自体が、共産主義の象徴である赤い星に突き上げるこぶしというその主張をはっきりと表に出したものになっています。昔ながらの左翼的な主張もRage Against The Machineのスタイルを踏襲したものとなっています。

そんな歌詞はとにかくみんなが叫びすいようにわかりやすく主張を伝えるような歌詞が目立ちます。例えば「Unfuck The World」では

「No Hatred
Fuck Racists
Blank Faces
Time's Changin
One Nation
Unification
The Vibration
Unfuck the World!」

(訳 憎しみをなくせ
クソ差別主義者どもめ
うつろな顔
時代はかわる
一つの国家
統一
感情
世界を取り戻せ!)

と直観的で非常にわかりやすい歌詞になっており、ライブなんかで大勢で一緒にこぶしをつきあげて歌ったら、気持ちいいだろうなぁ(そして直ぐに影響されそうだなぁ)と感じる歌詞になっています。

ただ、これは前作「THE PARTY'S OVER」でも感じたのですが、良くも悪くも旧来通りの左翼思想が貫かれているのが気になります。例えば「Strength In Numbers」は数の力のために団結せよと歌うナンバー。これを力強いラップとバンドサウンドで歌われると思わず同調しそうになるのですが、正直言って時代遅れな感じは否めません。

結果として前作と同じような感想なってしまうのですが、こういうスタイルが支持されなくなってきている今だからこその新しい道を目指してほしいとも思ってしまうのですが・・・良くも悪くも昔ながらのスタイルが貫かれたアルバムになっています。楽曲的にも文句なしにかっこいいし、その演奏にはグイグイ引き込まれるのですが、やはり目新しさはありませんでした。楽曲的には文句なしにカッコいいんですけどね。とりあえずRage好きにはまずチェックしたいアルバムです。

評価:★★★★

Prophets Of Rage 過去の作品
THE PARTY'S OVER


ほかに聴いたアルバム

COLORS/BECK

前作「Morning Phase」から約3年半ぶりとなるニューアルバム。基本的に難しいことで楽しめるような軽快なポップチューンが並んでいます。基本的に打ち込みのサウンドをメインとしたリズミカルなポップソングがメイン。いい意味で聴きやすく、難しいこと抜きで楽しめるような楽曲が並んでいました。ただ全体的にバリエーションはちょっと少な目で、薄味といった印象を受けたアルバム。文句なしに楽しめるポップアルバムではあると思うのですが。

評価:★★★★

BECK 過去の作品
The Information
Mordern Guilt
Morning Phase

BEAUTIFUL TRAUMA/P!NK

アメリカの女性シンガーソングライターP!NKの5年ぶりとなるニューアルバム。ある意味王道的なメロディアスなポップチューンがメイン。R&B的な要素をベースとしつつ、ラップを入れてきたりロックな要素を強くしたり、ラテンの要素を入れてきたりと幅広いジャンルを取り入れつつ、しっかりP!NKらしいポップチューンにまとめています。

評価:★★★★

P!NK 過去の作品
FUNHOUSE

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2017年11月14日 (火)

デビュー作でいきなりブレイク!

Title:girls like girls
Musician:yonige

最近 ガールズバンドが人気を博しています。言うまでもなくチャットモンチーがその嚆矢なのでしょうが、その後もねごと、赤い公園、tricotなど次々とバンドがデビューしてきました。特にそんな中でもSHISHAMOは武道館ワンマンも成功させるなど、チャットモンチーに続く人気バンドの地位を確実なものとしています。

おそらくそんな人気バンドの仲間入りを果たしそうなガールズバンドが彼女たちyonigeでしょう。メジャーデビューアルバムである本作ではいきなりベスト10ヒットを記録し、一躍ブレイクを果たしました。メンバーは牛丸ありさとごっきんの2人組。特に作詞作曲を担当する牛丸ありさはオーストラリアと日本のハーフでAC/DCのベーシストだったラリー・ヴァン・クリートの姪ということでも話題になっています。

ガールズバンドというとポップなメロディーラインを書くバンドがメインなのですが、その中で彼女たちはロック寄りのサウンドを奏でていることも大きな特徴となっています。特にサウンドはフィードバックノイズを前面に押し出したギターサウンドを中心とした構成となっており、イメージとしては80年代のインディーロックバンドに近いもをがあります。また、同じガールズバンドとしては大先輩であるnoodlesに近いかもしれません。

またそんなへヴィーなバンドサウンドである一方、メロディーラインは至ってポップであり他のガールズバンドと同様にポップリスナーにも訴求力があるのも特徴的。キュートでポップでキャッチー・・・といった感じではありませんが、ヒットチャートでも十分戦えそうなメロディーラインを書いているバンドであることは間違いありません。

ガールズバンドといえば歌詞は女の子の心境を繊細な描写で描いており、多くの女性陣ばかりではなく、男性陣にも共感を得るような歌詞を描くようなバンドが多いのですが、yonigeに関しても女の子の微妙な心象風景を描いている歌詞が大きな魅力となっています。特に具体的なアイテムを上手く用いた歌詞がひとつの特徴になっているように感じます。

例えば「ワンルーム」では

「あけっぱなしの便器がやけにリアルで恥ずかしくなった
君を泊まらせた後の誰もいないワンルーム」

(「ワンルーム」より 作詞 牛丸ありさ)

と、「あけっぱなしの便器」という歌詞ではあまり用いられないアイテムを上手く織り込み、恋人が帰った後の複雑な心境を上手く描写しています。

また「各駅停車」

「各停しか止まらない駅の
プラットホームで待っている」

(「各駅停車」より 作詞 牛丸ありさ)

は、各停しか止まらないようなさびしい駅の風景と自分の心境を上手く重ね合わせた歌詞に。まあ駅のプラットホームは歌詞のアイテムとしてはよく用いられるものではありますが・・・。

そんな訳で、チャットモンチーやSHISHAMOよりもロック寄りでありつつも、他のガールズバンドの魅力をきちんと備えた彼女たち。これからも活躍もかなり期待できそう。ちょっと残念だったのはドラムスがいないバンドなだけにドラムスが目立つ曲があまりなく(「トーキョーサンセットクーズ」では力強いドラムが印象に残りましたが)、ちょっと低音部分に物足りなさを感じた点でしょうか。そういう意味でもこれからまだまだな部分も感じたのですが、それを差し引いてもこれからの活躍が楽しみになってくるバンド。昨日の台風クラブに引き続き、期待値を込めての評価ですが、次のアルバムも楽しみです!

評価:★★★★★

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2017年11月13日 (月)

京都発、今のバンド・・・?

Title:初期の台風クラブ
Musician:台風クラブ

今回は今、注目の新人バンドのアルバムの紹介です。京都出身の3ピースロックバンド、台風クラブ。クリープハイプの尾崎世界観やスカートの澤部渡も絶賛しているバンドだそうで、本作がデビューアルバム。

アルバムジャケットからしていかにも60年代のフォークソングのミュージシャンを彷彿とさせますし、実際、ジャケットはLP風の仕様に仕上がっています。「初期の+バンド名」というアルバムタイトルもいかにも昔風(まあ具体的には「初期のRCサクセション」を思い出しますが)。ジャケット写真にうつった風貌からしても、カレッジフォークを思い起こさせるような時代をタイムスリップしたようなジャケットがまず強く印象に残ります。

ただ、そんな印象からアルバムを聴いてみるとちょっと予想とは異なるようなサウンドが耳に飛び込んでくるのでちょっと驚かされるのではないでしょうか。1曲目「台風銀座」のイントロは80年代あたりのインディーギターロックのそれ。思いっきりPIXIESあたりを思い出させるのですが、楽曲がスタートすると今度はエフェクトをかけたダブのサウンドに脱力感あるボーカルはボ・ガンボスのどんとを彷彿とさせるもの。ダビーな楽曲と共にボ・ガンボス直系の音作りを感じさせます。そういえばボ・ガンボスの全身バンド、ローザ・ルクセンブルグは彼らと同じ京都から出てきたバンドでしたね。

バンドサウンドとしてはガレージロックを主体としたへヴィーなバンドサウンドを奏でています。ただ、その一方ではブラックミュージックからの影響を強く受けたサウンドが特徴的で、続く「ついのすみか」「ダンスフロアのならず者」などメロウなシティポップのサウンドが流れるさわやかなナンバーになっています。

ただボーカルの石塚淳は独特なしゃがれ声が特徴的。これに荒々しいガレージサウンドが加わるため、楽曲全体としてはかなり荒削りな印象すら受けます。このミスマッチともいえる石塚淳のボーカルに意外なほどメロウなサウンドのバランスがバンドの大きな特徴ともいえるでしょう。もっとも石塚淳のボーカルは良くも悪くも癖があるため好き嫌いはわかれるかもしれません。パッと聴いて受け付けないという方も少なくないかもしれません。

このガレージロックをベースとしつつさりげなく様々なジャンルを取り込んでいるというスタンスは非常におもしろく、「ずる休み」は60年代風、「昔は昔」ではモータウンビートを聴かせてくれますし、「42号線」はブルースロック路線。「飛・び・た・い」ではファンクのリズムを聴かせてくれます。

アルバムタイトルやジャケットから印象を受けるカレッジフォークの印象は正直なところほとんどないのですが、ただ楽曲自体はルーツ志向な部分も強いため60年代的ななつかしさを感じさせます。ボーカルのしゃがれ声が楽曲をちょっと邪魔してしまっているような部分もあり、そういう意味でもまだまだバンドとして荒削り、成長の余地は感じられるのですが、既に独特の個性を持っており、今後が非常に楽しみになってくるバンドです。評価はそこらへんの期待値込みで。次回作も楽しみです。

評価:★★★★★


ほかに聴いたアルバム

北極星/藤巻亮太

現在、活動休止中のレミオロメンのボーカル、藤巻亮太によるソロ3枚目となるフルアルバム。基本的にはレミオロメンからのソロというよりはレミオロメンの延長線上のような作品が多く、レミオロメンの楽曲でも感じた藤巻亮太のポップスセンスがキラリと光る作品になっています。

ただ以前より必要以上に分厚いサウンドが気になっていたのですが本作もその傾向が続いています。特に本作、レミオロメンの名曲「3月9日」のセルフカバーが収録されているのですが、アコギのみでいい感じのスタートとなっているにも関わらず、途中からいきなりホーンが入ってくるのですが、正直、ホーンの必要性がかなり疑問なカバーになっていました。

全作同様、良質なポップスアルバムなのは間違いないのですが、レミオロメン復活はまだまだ遠いなぁと感じてしまうアルバム。またもっとシンプルなポップアルバムの方が彼のメロディーや歌詞には合うと思うんですが・・・そういう点はちょっと気になりました。

評価:★★★★

藤巻亮太 過去の作品
オオカミ青年
旅立ちの日
日日是好日

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2017年11月12日 (日)

1日1曲 最終回

今年の年初から何度か紹介してきた日本のポピュラーミュージックの名曲を1日1曲というコンセプトで1年かけて紹介しようという企画「大人のJ-POPカレンダー 365 Radio Songs」。いままで1回毎に3枚ずつ、計第3弾まで紹介してきましたが、今回はついに最終回です。

Title:大人のJ-POPカレンダー~365 Radio Songs~「10月 空と星」

まず10月はDisc1が「失恋ソング」、Disc2は「空と星の歌」となっています。10月のテーマがなぜこれになるのかいまひとつ不明なのですが、10月は音楽的にピッタリと来るような記念日がないから漠然と「秋」のイメージでテーマを設定したのでしょうか。

「失恋ソング」の方はある意味、ポピュラーミュージックの定番中の定番なのですが、なぜか「歌謡曲」が多く、フォーク、ニューミュージック、あるいは「J-POP」と呼ばれて以降の曲があまり選曲されていないのは残念。失恋ソングの定番中の定番、槇原敬之の曲とか選んでほしかったのですが・・・。「空と星の歌」はさすがにこのテーマだとしんみりと聴かせるような楽曲がほとんど。切なさを感じさせる曲も多く、日本人が「空と星」からイメージするのはみんな似たような感じになるのでしょうか?

評価:★★★★

Title:大人のJ-POPカレンダー~365 Radio Songs~「11月 家族」

正直この企画、1月からスタートし、月が進むにつれ、若干だれ気味に感じていた部分もあったのですが・・・この11月については、同オムニバス全12枚のうち文句なしの最高傑作。名曲が並ぶコンピレーションになっていました。

特に「労働の歌」がテーマとなっているDisc1が素晴らしい。もともと「労働歌」はポピュラーミュージックのある種の定番であるものの、歌謡曲やJ-POPではどうしても内容が暗くなりすぎるのか、あまりテーマとして取り上げられずらい分野ではありました。それだけにあえて働く人にスポットをあてた曲というのは作り手の思い入れがあるのか、傑作が多かったように思います。

斉藤和義の「おつかれさまの国」というサラリーマンの応援歌的な曲からスタートし、植木等の「ドント節」は「昭和」を感じる歌。「サラリーマンは気楽な稼業ときたもんだ」は今でも有名なフレーズですが、高度経済成長期を感じさせる歌詞の内容は今とは隔世の感もある、時代性を感じさせる1曲です。

中盤は岡林信康「チューリップのアップリケ」、高田渡「鉱夫の歌」など社会の底辺に生きる人たちにスポットをあてた曲が並んでおり、胸をうちます。最近では美輪明宏の歌で有名になった「ヨイトマケの唄」は、このコンピでは村上"ポンタ"秀一名義で泉谷しげるがボーカルを担当していますが、こちらもある意味荒々しくも力強いボーカルが曲にマッチしており、名カバーに仕上がっています。

この路線の曲では元ブルーハーツ、今はクロマニヨンズとして活躍している真島昌利の「煙突のある街」が秀逸。こちらも社会の底辺を生きる労働者の声を歌にした内容なのですが、「底辺」に限らず社会の歯車のひとつとして働きつづける私たちにとっても心に響く歌詞になっています。そんな労働者の叫びにレゲエのサウンドがピッタリとマッチ。真島昌利の心の底からはきだすよなボーカルも胸をうつ傑作となっています。

後半には浜田省吾「I am a father」、忌野清志郎「パパの歌」など、父親に捧げる曲が並びます。「労働=父親の役目」というのはちょっと古い価値観では?ここらへんはDisc2の「家族の歌」に収録すべきでは?とも思うのですが、数多く母親に対する歌に対して、あえて父親に捧げる歌を歌うあたり、ミュージシャンの力が入っていることがわかる名曲になっています。

一方Disc2は「家族の歌」。最初はよくありがちな「親に感謝」的な曲が並んでいるのでは?という危惧があったのですが、その手の曲は同コンピの5月に収録されていた「母の歌」に並んでいたようで、こちらは感謝というよりは親、息子、兄弟に対する素直な思いを綴る曲が並んでいました。

そんな思い入れが深い曲が並ぶ中、奥田民生の「息子」のような飄々とした曲が並んでいたのもバランスが良い感じ。で、楽曲自体はよく知っていたのですが、今回ちょっと意外な発見があったのが赤ちゃんソングの定番中の定番「こんにちは赤ちゃん」。純粋な赤ちゃんへの讃歌と思っていたのですが、2番にこんな歌詞が・・・

「こんにちは 赤ちゃん お願いがあるの
こんにちは 赤ちゃん 時々はパパと
ほら 二人だけの 静かな夜を
つくってほしいの」

(「こんにちは赤ちゃん」より 作詞 永六輔)

と、さらっとおそらく夜中の授乳や夜泣きで、夜がなかなか寝られない母親の育児の苦労がさらっと歌われていることに気が付かされます。こういうフレーズを自然に入れてくるあたりがさすが・・・といった感じ。意外な発見でした。

ただ一方で今回、もっとも違和感のあった曲があって、それが樋口了一の「手紙~親愛なる子供たちへ~」。一部で「泣き歌」として話題になったようですが、歌詞の内容を簡単に書くと、「昔、子供たちの世話をしたんだから、老人になったら介護してね」と親から子供にお願いしている歌。いや、これはないだろう。同じ内容を子供から親に歌うのならわかります。ただ、子供を持つ親としては子供に将来、自分の介護で苦労してほしい、なんてことは全く思いません。いや、子供に介護で苦労してほしいなんて願う親ってそんなにいるんでしょうか?もちろん、子供として親に対して思う気持ちは全く違いますよ。でも、私はこの曲、全く泣けず、むしろ引いてしまいました。

逆にDisc2で思わず泣けそうになったのが森本レオの「親父にさよなら」。え?森本レオが歌?と思ったのですが、基本的にインストをバックに彼が語るスタイル。いわゆる「ダメ親父」的な等身大の父親像をコミカルに描きつつも、亡くなった父親への想いを語る曲で、ユニークながらも涙腺がゆるんでしまう名曲でした。

そんな訳で違和感ある曲もありましたが、名曲揃いの本作。このシリーズ、全作通して聴かなくてもこの「11月」だけは聴いてみてほしいと思わるような内容でした。

評価:★★★★★

Title:大人のJ-POPカレンダー~365 Radio Songs~「12月 家族」

で、このシリーズラストを飾るのが本作。Disc1のテーマは「クリスマスソング」なのですが、さすがにテーマ性がテーマ性なだけに「歌謡曲」はゼロ。統一性が取れた内容になっているのですが、J-POPと歌謡曲を同じ俎上にのせて構成されているのが本作の魅力なだけにちょっと残念といえば残念。また、広瀬香美の「Dear...again」と山下達郎の「クリスマス・イヴ」はなぜかカバーで収録。ここらへんは大人の事情でしょうか?「Dear...again」をカバーしたMs.OOJAは、ちょっと癖のあった広瀬香美とは異なり、さらっと歌い上げていて、曲本来の良さを上手く出せていたと思いますが、一方「クリスマス・イヴ」をカバーした坂本冬美は、演歌独特のねちっこい歌い方が元曲にはちょっとあっておらず、違和感の残るカバーになっていたのが残念でした。

Disc2のテーマは「故郷の歌」。テーマ的に歌謡曲がメインかと思いきや、意外とJ-POP以降の作品が多く、時代を問わず歌われるテーマなんだなと感じます。特に注目したいのが畠山美由紀の「わが美しき故郷よ」。気仙沼出身の彼女が、東日本大震災後に発表したこの曲は被災した故郷を思って歌った曲。それだけに故郷の風景を美しく描写した歌詞が心に突き刺さる名曲になっています。

10月とは逆に、こちらは歌謡曲からの選曲が少なく、「クリスマスソング」はともかく「故郷の歌」はもうちょっと歌謡曲からの曲があってもよかったのでは?とは思うのですが、コンピレーションとしては逆に統一感は取れており、名曲も多かったように感じます。最後を飾るのが中島みゆきというのも納得感が。最後の最後を気持ちよく締めることのできたアルバムでした。

評価:★★★★★

そんな訳で今年1年間、全12作、365曲を紹介したコンピレーション。途中、正直似たようなミュージシャンの曲が多くなり、若干中だるみを感じたのですが、ラスト11月12月は直前の失速ぶりを完全に挽回する傑作となっていました。いろいろと知られざる名曲にも出会えた、聴きごたえのある企画で、最初から最後まで日本のポピュラーミュージックの魅力をしっかりと感じることが出来るコンピレーションでした。

大人のJ-POPカレンダー 365 Radio Songs 過去の作品
1月 新年
2月 告白
3月 卒業

4月 桜
5月 東京
6月 結婚

7月 サマーソング
8月 平和
9月 友情

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