2017年12月16日 (土)

赤裸々な本音を強烈なガレージサウンドで

Title:Secret File~THE BEST OF SEKIRI~
Musician:赤痢

先日、日本のベテランパンクバンドとしてthe原爆オナニーズを紹介しました。そのバンド名があまりにも強烈なインパクトを持っていて、おそらく一度聴いたら忘れられないと思うのですが、こちらのバンドも一度聴いたら忘れられないのではないでしょうか。1983年に京都で結成し、85年にデビューしたパンクバンド。それもメンバー全員女性で、結成時は中学生だったというから驚きです。先日紹介したthe原爆オナニーズは今なお活動を続ける現役のバンドですが、残念ながら彼女たちは95年に解散し、その後、再結成等は行われていないようです。

本作はそんなパンクバンド赤痢のベストアルバム。彼女たちについてはそのバンド名のインパクトもあり名前自体は知っていたのですが、音源をきちんと聴いたのは今回がはじめてでした。

このアルバムを聴いてまず飛び込んでくるのはノイジーなギターサウンドに分厚いバンドサウンドからなる強烈なガレージロック。演奏している当時は20代前半あるいは10代という若さなのですが、そのキャリアでこれだけのサウンドを奏でることが出来るというのが驚きです。逆に若さゆえの勢いを感じますし、なによりも若さ・・・というよりも「幼さ」的なものを感じるボーカルは、その声質ゆえにパンキッシュなサウンドにもピッタリとマッチした、ある種の生々しさを感じます。

今回のベスト盤は75分という長さなのですが、29曲入りというボリューム。1曲あたりの長さは1分から2分、せいぜい3分という短さ(曲によっては5分程度の曲もありますが)。そのため次から次への楽曲が展開していきます。

また彼女たちの楽曲で耳を惹くのがそのメロディーライン。意外とポップなメロディーラインなのですが、ボーカルの歌い方もあってどこか気だるさを感じさせるメロディーに。この気だるいメロディーもまた、パンキッシュなサウンドにピッタリとマッチしており彼女たちの大きな魅力となっています。

そしてなによりも彼女たちの楽曲でインパクトがあるのはその歌詞でしょう。もともと彼女たち、(本作では収録されていませんが)デビューEPに収録されていた「夢見るオマンコ」というタイトルからして強烈な楽曲が話題になったそうですが、身も蓋もないあまりにもストレートな歌詞が耳を惹きます。ある意味、女性のありのままの心境をそのまま歌ったような歌詞がかなり強烈。

このベスト盤に収録されている曲でも「ゾクゾクするのは暴力とエロ」「19才」)という歌詞が登場してきますし、麻雀について歌っている「ウラドラ人生」だの、タイトルそのままストレートな「タバコが吸いたい」など、女性のあまりにも赤裸々な部分をそのまま歌っており、それがまた大きな魅力となっています。

楽曲的には最初から最後までストレートなガレージロック。「素晴らしき中近東」のような、ちょっとエスニックな雰囲気を取り入れた曲はありましたがバリエーション的にはさほど多くはありません。ただ、上にも書いた通り、1、2分で次々と楽曲が展開される内容なだけに聴いていて全く飽きることはありません。彼女たちのガレージロックは雰囲気的には一昔前のアングラロックといった雰囲気なのですが、その迫力あるサウンドは今聴いても非常に魅力的。ちょっとやばさを感じさせるようなサウンドは今聴いてもゾクゾクさせられます。

今回はじめて彼女たちの楽曲を聴いたのですが、一発で気に入りました。ライブも迫力ありそうだし、リアルタイムで聴きたかったなぁ、と残念に感じます。ガールズパンクの先駆的存在ともいえる彼女たち。パンクバンド、ガールズロックが好きなら是非聴いてほしいベスト盤です。

評価:★★★★★


ほかに聴いたアルバム

TOGENKYO/フレデリック

初のフルアルバムとなった「フレデリズム」がいきなりのヒットを記録したロックバンド、フレデリックの新作は前7曲入りのミニアルバム。全編、エレクトロサウンドを取り入れたダンサナブルなポップチューン。似たタイプの曲が多いものの、軽快なダンスポップの連続に楽しくなってきます。基本的にはマイナーコード主体で歌謡曲テイストが強い曲が並んでいますが、ラストの「RAINY CHINA GIRL」のような明るく軽快なシンセポップのナンバーも楽しめます。

評価:★★★★

フレデリック 過去の作品
フレデリズム

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2017年12月15日 (金)

今年も恒例の

Title:2018-Classic Blues Artwork from the 1920s Calendar

Bluescalendar2018

また今年も恒例のブルースカレンダーの季節がやってきました。毎年、アメリカのブルース・イメージ社という会社がリリースしているカレンダー。ちょうどLP盤の大きなのカレンダーで、広げるとLP盤2枚分の大きさ。下半分はカレンダーになっていて、著名なブルースシンガーの生誕日や逝去日が記載されており、一方上半分は戦前ブルースの広告が掲載。この戦前ブルースの広告画像がなかなか味があり、毎年、楽しませてくれます。

このブルースカレンダー、目玉となるのはカレンダー以上に毎年ついてくる付録のCDの方。全24曲の内容のうち、半分の12曲はカレンダーについてくる広告の内容の楽曲。そして残り12曲はいわばボーナストラック。いずれも戦前ブルースの貴重な音源が収録されています。

そして毎回、この付録CDには最近発見されたばかりのレア音源が収録されて話題となります。今回は現存盤が最近発見されたJab Jones and The Memphis Jug Bandによる「My Love Is Cold」「Poor Jab Blues」の2曲。The Memphis Jug Bandはご存じジャグ・バンド。ジャグバンドとはジャグ=瓶や洗濯板、ミュージックソーなど身近な日常品を楽器に仕立てて演奏するバンドのこと。本来は楽器ではない日常品から生まれる音なのですが、非常に軽快で楽しい音を聴かせてくれます。このCDに収録している2曲もワクワクするような楽しい音が耳を惹く一方、メロディーラインはどこか物悲しさを感じさせ、そのギャップがおもしろい曲に仕上がっています。

このThe Memphis Jug Bandは戦前ジャグバンドの代表格的バンド。今回のCDには、この2曲の他にCharley Nickerson and The Memphis Jug Band名義による「Going Back To Memphis」も収録。そのため特にボーナストラックではジャグバンドによる演奏が目立つ構成になっていました。

他にもワンコードで進みながらもそのギターの音色が印象に残るCharley Patton「Mississippi Boweavil Blues」、力強いボーカルが耳を惹く戦前ブルースの代表的なシンガー、Blind Lemon Jeffersonによる「Weary Dogs Blues」、男女の掛け合いがユニークなKansas Joe and Memphis Minnie「Goin' Back To Texas」など聴かせる楽曲の連続。有名どころから知る人ぞ知る的なシンガーまでそろっており、今回もまたブルースファン、特に戦前ブルースが好きならたまらない選曲となっています。

ただ、これは戦前ブルースの宿命でもあるのですが、やはり音はノイズがひどい曲も多く、またやはり戦前ブルースはちょっとマニアックなジャンルであるため万人にお勧めという訳にはいかないのもいつも通り。ただ、シンプルでブルースのコアな部分だけ抽出したような楽曲はやはりとても魅力的。カレンダーにつかわれている広告素材はなかなかおしゃれですし、興味ある方は是非。

評価:★★★★

2013-Classic Blues Artwork from the 1920s Calendar
2014-Classic Blues Artwork from the 1920s Calendar
2015-Classic Blues Artwork from the 1920s Calendar
2016-Classic Blues Artwork from the 1920s Calendar
2017-Classic Blues Artwork from the 1920s Calendar


ほかに聴いたアルバム

Dedicated to Bobby Jameson/Ariel Pink

アメリカLAのインディーシンガーAriel Pinkの新作は60年代に活躍していたミュージシャン、ボビー・ジェームソンに捧げるアルバム。ローリングストーンズやフランク・ザッパともコラボをしていたそうですが、絶頂期にドラッグにおぼれて転落。35年に及ぶ隠遁生活を経て、自らの悲劇的な人生の物語を語った2007年の自叙伝に心揺さぶられた彼が、このトリビュートアルバムを作り上げたそうです。

アルバムの前半はかなりローファイな内容。はっきりいって力が抜けすぎていてちょっとグダグダ感もあり、あまりおもしろくありませんでした。後半もローファイな内容になっていましたが、彼持ち味のポピュラーセンスが生かされた内容に。楽曲もAORからバブルガムポップ、80年代風から60年代風などバラエティー富んだ作品が並んでいて楽しめる構成になっていました。

評価:★★★★

Ariel Pink 過去の作品
Mature Themes(Ariel Pink's Haunted Graffiti)
Pom Pom

Look What The Blues Has Done For Me/Arthur Adams

60年代から70年代にかけてクルセイダーズやジェイムス・ブラウン、ジャクソン5などなど数多くのミュージシャンのセッション・ギタリストとして活躍してきたアーサー・アダムスによるオリジナルアルバム。2枚組となっていて、1枚目は新曲、2枚目は70年代から80年代の彼のアルバムからセレクトしたベストアルバム。新曲の方は、よくありがちなギターブルースといった感じで面白みはないのですが、良かったのが2枚目。ソウルからファンク、バラードにポップスとセッションギタリストらしいフットワークの軽いバリエーションに富んだ内容が魅力的。基本的にこちらも目新しいものはないのですが、軽快でファンキーな楽曲の数々が魅力的なアルバムになっていました。

評価:★★★★

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2017年12月14日 (木)

20周年のベスト盤が1位獲得

今週のアルバムチャート

http://www.oricon.co.jp/rank/ja/

今週の1位はジャニーズ系が獲得。

今週1位を獲得したのはKinki Kids「The BEST」。タイトル通りのベストアルバム。デビュー20周年を記念してリリースされたベスト盤となります。初動売上は17万3千枚。直近作はバラードベストの「Ballad Selection」で、こちらの初動12万2千枚(1位)よりアップ。彼らのベスト盤はデビュー10周年を記念してリリースされた2007年の「39」以来。その「39」の初動売上30万1千枚(1位)よりは大きくダウンしています。しかし、「硝子の少年」のデビューからもう20年も経つのですか・・・早いような、そんなもんなような・・・。

2位は安室奈美恵「Finally」が先週から変わらず2位をキープ。売上枚数も9万3千枚から9万枚と若干のダウンに留まっており、相変わらずの強さを見せつけています。

3位は椎名林檎「逆輸入~航空局~」が入ってきました。2014年にリリースされた「逆輸入~港湾局~」に続くセルフカバーアルバムで、SMAPに提供した「華麗なる逆襲」やDoughnuts Holeが歌ったドラマ「カルテット」主題歌「おとなの掟」のセルフカバーなどが収録されています。初動売上は4万8千枚。直近のオリジナルアルバム「日出処」の4万2千枚(3位)よりアップ。セルフカバーアルバムの前作「逆輸入~港湾局~」の3万1千枚(3位)よりもアップしており、ここ最近、初動売上が右肩下がりだった彼女ですが、本作でようやく持ち直してきました。

続いて4位以下の初登場盤です。4位にモーニング娘。'17「⑮Thank you, too」がランクイン。タイトル通り15枚目となるオリジナルアルバム。ちなみに彼女たちも今年、デビュー20周年を迎えるそうです。ただ、同じメンバーのKinki Kidsと、デビュー当初のメンバーが跡形もないモーニング娘。では単純比較は出来なさそうな。初動売上2万9千枚は前作「14章~The message~」の2万2千枚(7位)からアップ。

6位にはEXILE TAKAHIRO「All-The-Time Memories」が初登場。タイトル的にはベストアルバムっぽいのですが、7曲入りのミニアルバムです。初動売上1万6千枚は前作「the VISIONALUX」の3万8千枚(1位)からダウン。

7位は韓国の男性アイドルグループBlock B「MONTAGE~JAPAN EDITION~」が入ってきました。初動売上1万3千枚は前作「My Zone」の1万7千枚(7位)からダウン。

最後10位には高坂海美(CV.上田麗奈)、野々原茜(CV.小笠原早紀)、ロコ(CV.中村温姫)、望月杏奈(CV.夏川椎菜)、矢吹可奈(CV.木戸衣吹)「THE IDOLM@STER MILLION LIVE! M@STER SPARKLE 04」がランクイン。ゲーム「THE IDOLM@STER MILLION LIVE!」のキャラクターによるソロ曲を集めたアルバム。初動売上1万枚は同シリーズの前作「THE IDOLM@STER MILLION LIVE! M@STER SPARKLE 03」の1万1千枚(8位)から若干のダウンとなっています。

今週のアルバムチャートは以上。チャート評はまた来週の水曜日に!

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2017年12月13日 (水)

韓流 vs AKB系

今週のHot 100

http://www.billboard-japan.com/chart_insight/

今週のHot100はAKB系の新曲を下して韓流アイドルが1位獲得。

1位は韓国のアイドルグループBTS(防弾少年団)「MIC Drop」。先週の32位からCDリリースにあわせてランクアップしての獲得となりました。CD売上・ダウンロード・ストリーミング数(以下「実売数」)で1位を獲得した他、PCによるCD読取数で2位、Twitterつぶやき数で4位、You Tube再生回数で24位を獲得しています。ちなみにCDでは両A面曲となっている「DNA」も58位から10位にランクアップ。こちらは10月23日付チャート以来、8週ぶりのベスト10返り咲きとなっています。

なおオリコンチャートでも初動売上36万5千枚で1位獲得。前作「血、汗、涙」の23万8千枚(1位)からアップ。今回もCDリリースにあわせてのイベントや握手会を実施しており、それが売上に大きく影響している模様です。

2位初登場は新潟を中心に活動するAKB系グループNGT48「世界はどこまで青空なのか?」。実売数2位、ラジオオンエア数19位、PCによるCD読取数6位、Twitterつぶやき数9位。オリコンでは初動売上14万8千枚で2位初登場。前作「青春時計」の16万枚(1位)からダウンしています。

3位には宇多田ヒカルの配信限定シングル「あなた」が初登場でランクイン。ピアノとベースラインが奏でるジャジーな雰囲気が魅力的なナンバー。実売数3位、ラジオオンエア数15位、Twitterつぶやき数19位、You Tube再生回数59位でこの位置に。

続いて4位以下の初登場曲です。まず4位に=LOVE「僕らの制服クリスマス」がランクイン。実売数4位、ラジオオンエア数30位、PCによるCD読取数40位、Twitterつぶやき数14位。HKT48の指原莉乃がプロデュースする女性声優によるアイドルグループ。作詞は指原莉乃名義ですが、このあざといタイトルからして、まず間違いなく秋元康が実質上は手掛けていると思われます。オリコンでは初動売上4万枚で3位初登場。前作「=LOVE」の1万9千枚(8位)よりアップしています。

5位はEXILEの事務所に所属しているアイドルグループの合同ユニットE-girls「北風と太陽」が初登場でランクイン。実売数5位、PCによるCD読取数4位を記録した一方、ラジオオンエア数28位、Twitterつぶやき数は42位に留まりました。オリコンでは初動売上3万5千枚で5位初登場。前作「Love☆Queen」の6万9千枚(4位)から大きくダウンしています。

8位には女性コーラスグループLittle Glee Monsterの配信限定シングル「Jupiter」が先週の27位から8位にランクアップしベスト10入り。TBS系ドラマ「陸王」の挿入歌で、平原綾香が2003年にリリースし大ヒットした「Jupiter」(原曲もホルストの組曲「惑星」に日本語詞をつけたカバーですが)のカバー。実売数7位、ラジオオンエア数72位でベスト10入りしてきました。

今週の初登場組は以上ですが、今週は前述の「DNA」以外にもう2曲返り咲き組が。まず7位にクリス・ハート「I LOVE YOU」が先週の98位からランクアップ。来春に音楽活動休止を発表した彼ですが、その影響でランクを大きくアップ。2014年3月10日付チャートでの6位以来、実に197週ぶりのベスト10返り咲きを記録しています。また欅坂46「風に吹かれても」も先週の11位から9位にランクアップ。こちらは2週ぶりのベスト10返り咲きとなります。

またロングヒット組はDAOKO×米津玄師「打上花火」が8位から6位に再度ランクアップ。実売数8位、You Tube再生回数4位はいずれも先週から同順位をキープしており、まだまだ根強い人気を見せています。

今週のHot100は以上。明日はアルバムチャート。

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2017年12月12日 (火)

コンプレックスはアートなり!

Title:PINK
Musician:CHAI

ここ最近、急激に注目を集めている女性4人組バンド。このデビューアルバムもいろいろなメディアで大きく取り上げられているのでそのバンド名を目にした方も多いのではないでしょうか。話題のバンドということで今回、このアルバムではじめて音源を聴いてみたのですが・・・

完全にはまってしまいました(笑)。

このバンド、「NEOかわいい」「コンプレックスはアートなり」をバンドコンセプトとして活動を行っています。正直言って、お世辞にもアイドル的人気で勝負できるバンド、という感じではありません。ただ、そういうルックス的な側面を逆にバンドのコンセプトとして勝負をかけているのがユニーク。例えば「N.E.O」では

「目ちっちゃい 鼻ひくい くびれてない 足太い
ナイスバディ!オーライ!
NEOかわいい
change the world」

(作詞 ユウキ 「N.E.O」より)

なんていうコンプレックスになりそうな外見的要素をポジティブに歌い上げていますし、「sayonara complex」でも

「飾らない素顔の
そういう私を認めてよ」

(作詞 CHAI 「sayonara complex」より)

というルックスだけで勝負することを否定的に歌っています。

こういったルックス的なコンプレックスを高々と歌うバンド、男性バンドでは決して珍しくありませんでした。ただ一方女性バンドでは、確かにルックス的には、というバンドもいままでありましたが、コンプレックスをあえてバンドのテーマとするバンドはほとんどいなかったように思います。あえて言えばGO!GO!7188が「ブサイク」を前面に出していましたが、楽曲的にはそういった要素を取り入れた曲はありませんでした。

そんな中、彼女たちのようにコンプレックスをあえて表に出してくるバンドの登場は非常に興味深く感じます。特に昨今、アイドルブームで男性的な視点の女性像を押しつけられているアイドルが音楽シーンで大手を振る中、このような女性像にあえてアンチを唱えるようなバンドが出てきたというのはとても頼もしく感じられます。

また彼女たちの歌詞は、そんな押しつけられたような女性像に、ある種のフェミニスト的な言説を声高に唱えている訳ではなく、とてもユーモラスに歌いつつ、ちょっと皮肉的な歌詞でチクリと風刺しています。だからこそ、彼女たちの歌詞は男性でも嫌味なく楽しめることが出来ます。

ただ、彼女たちの最大の魅力はこの歌詞の世界観ではありません。もちろん歌詞のコンセプトも大きな魅力であるものの、最大の魅力はこの歌詞の世界観をしっかり支える彼女たちの音楽性のユニークさだと思います。

彼女たちのサウンドは非常にシンプルでタイト。ただ、足腰のしっかりとした分厚いリズム隊のサウンドでしっかりと支えており、ロックバンドとしての実力を感じさせます。そしてそんなバンドサウンドを軸としつつ、「N.E.O.」や「ボーイズ・セコ・メン」ではラップを取り入れたり、「ほれちゃった」ではシティポップ的な要素を取り入れたり、「ウォーキング・スター」ではファンク的なサウンドを聴かせたり、基本的に今時のブラックミュージックからの影響を感じさせつつ、それをパンキッシュなバンドサウンドと上手く融合させています。

ただ、全体的にはアバンギャルドでパンキッシュな要素を強く感じさせます。ラップやアシッドジャズ的な要素を感じることから、CIBO MATTOとの類似性をよく取り上げられますが、一方、アバンギャルドでパンキッシュという点から、個人的には例えばメスカリン・ドライブや少年ナイフあたりのガールズパンクバンドからの流れも強く感じます。

さらに彼女たちに関してユニークなのは、そんなブラックミュージックやらパンクやらの要素を感じつつも、同時にポップにコーティングされているという点でしょう。ボーカルをつとめるマナ、カナの双子の姉妹はハイトーンボイスでかわいらしい歌声で歌い上げており、そのためアバンギャルドな音楽性がかなりポップに中和されています。「かわいいひと」のようなエレピ1本で聴かせるポップソングや「フラットガール」のようなポップなメロを前に出した曲など、メロディーを前面に出した楽曲に関しては、そのポップなメロディーラインに彼女たちのメロディーセンスの才能も感じます。アバンギャルドでありつつも同時にポップスさを兼ね合わせている彼女。歌詞の内容についても尖った主張がありつつもユーモラスにまとめあげており、いい意味で非常に聴きやすいポップな楽曲を聴かせてくれる点がとても魅力を感じます。

様々な音楽性を同包しつつ、タイトな力強いリズム隊の演奏でしっかりと聴かせる楽曲は非常に中毒性も高く、わずか30分強というアルバムの長さもあり、ここ最近、アルバムを繰り返し聴くなどすっかりはまってしまっています。このアルバムも間違いなく今年のベスト盤候補になる傑作。そのバンドコンセプトや音楽性など、間違いなく2017年を代表する重要バンドだと思います。全音楽ファン一度は聴いてみてほしい1枚です。

評価:★★★★★

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2017年12月11日 (月)

10年ぶりのオリジナルアルバム

Title:2017
Musician:ZIGGY

メジャーデビュー30周年を迎えたロックバンドZIGGY。2008年にバンドとしての活動休止。その後、再結成しライブツアーを行うことはあったのですが新曲のリリースはありませんでした。しかし、デビュー30周年を迎える今年、10年ぶりとなるニューシングルがリリース。さらに先日ここでも紹介したシングルコレクションがリリースされ、そして待望の10年ぶりとなるニューアルバムがリリースされました。

ZIGGYに関してはここで以前紹介したシングルコレクションの時に書いた通り、個人的には「GLORIA」がヒットしたバンドというイメージしかなく、「よくありがちなJ-POPのミュージシャン」的な印象を持っていました。しかしシングルコレクションを聴く、思った以上にロックな楽曲がカッコよく、ZIGGYというバンドに持っていた印象は大きく変わりました。

今回の再結成にあたって、残念ながら事実上、森重樹一のソロプロジェクトとなってしまったZIGGY。ただ本作に関してはシングルコレクションを聴いてZIGGYに感じた魅力がそのまま反映されているアルバムになっていたと思います。

今回のアルバムに関して感じた大きな魅力、それはストレートに言ってしまうと非常にベタな点でした。ZIGGYの楽曲は良くも悪くも80年代あたりのハードロック、ブルースロックがダイレクトに反映された音楽性。そんなサウンドにのるメロディーラインはインパクト十分、ある意味キャッチーともいえるわかりやすいもの。ギターがなっているダイナミックなサウンドは非常にわかりやすい、ロックらしいロックともいえる曲になっています。

1曲目「白んだ空に蝶達は舞ってる」はハードなギターに沿ったシャウト気味なボーカルでダイナミックに展開するロックらしい曲からスタート。続く「うたた寝の途中」は軽快なロックンロール的なサウンドに対して、メロディーラインはメロディアスでわかりやすいポップな曲調となっており、J-POP的なインパクトを持った作品になっています。

メロディーラインに関して「キャッチー」という言い方がふさわしいのが「まだ見ぬ景色が見たくて」で、疾走感あるメロディーラインは90年代のJ-POP風。個人的にはどこか懐かしさを感じさせます。ほかの楽曲に関しても古き良きハードロックにポップなメロディーをのせたスタイルは90年代J-POPによくありがちなスタイル。そういう意味ではアラフォー世代にとってはどこか懐かしさを感じさせてくれる部分はありました。

ただ、単純に90年代J-POP的というと今でもよくありがちなスタイル。ともすればそういうバンドはあまり面白味を感じることはありません。ZIGGYがそういったバンドと大きく一線を画するのが、彼の音楽にははっきりとルーツが見えるという点でしょう。ルーツ志向という点で典型的だったのが「I CANNOT GET ENOUGH」で軽快なピアノとギターサウンドは明確にブルースロックからの影響を感じます。ともすればルーツレスなバンドが多いJ-POPシーンの中、このルーツをしっかりと楽曲から感じさせる点が他のバンドとは明確に一線を画するZIGGYの大きな魅力でしょう。

ちなみに今回のアルバムではDisc2としてライブ音源も収録。こちらには「GLORIA」「STEP BY STEP」のような彼らの代表曲も収録されており、ベスト盤的に楽しめる内容になっています。ZIGGYとしては久々となるライブツアーの初日でかつ森重樹一以外はサポートメンバーということもあってライブの出来としてはそんなに絶賛するほどの出来には感じませんでしたら、ライブの雰囲気は伝わってくる1枚だったと思います。

そんな訳で、シングルコレクションではじめてZIGGYの魅力を知って、今回はじめてオリジナルアルバムを聴いたのですが、期待にしっかりと応えてくれた傑作アルバムに仕上がっていました。アラフォー世代なら懐かしさもあってかなり楽しめそうなアルバム。それ以外の世代にももちろん、ロックの魅力をしっかりと伝えてくれるようなそんなアルバムです。

評価:★★★★★

ZIGGY 過去の作品
SINGLE COLLECTION


ほかに聴いたアルバム

野宮真貴、ホリディ渋谷系を歌う。/野宮真貴

野宮真貴が2013年から続けている渋谷系のルーツをカバーする企画、「野宮真貴、渋谷系を歌う。」の第5弾となるアルバム。今回は大瀧詠一アレンジによる童謡「雪やコンコ」や槇原敬之の「冬がはじまるよ」などちょっと意外なカバーも。先日、足を運んだライブでも感じたのですが、年齢を感じさせない歌声での魅力的なカバーは相変わらずなのですが、全12トラック中6トラックがボーナストラックであり、全体的に「渋谷系のルーツ」という観点はちょっと薄めというか、若干焦点がぼやけている感じも。企画的には若干ネタ切れ気味な感じもするし、カバーアルバムとしては魅力的なので、そろそろ「渋谷系を歌う。」という枠組みをはずした純粋なカバーアルバムをリリースした方がよいのでは?

評価:★★★★

野宮真貴 過去の作品
実況録音盤!「野宮真貴、渋谷系を歌う。~Miss Maki Nomiya Sings Shibuya-kei Standards~」
世界は愛を求めてる。-野宮真貴、渋谷系を歌う。-
男と女~野宮真貴、フレンチ渋谷系を歌う。
野宮真貴、ヴァカンス渋谷系を歌う。~Wonderful Summer~

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2017年12月10日 (日)

渋谷系を歌う。

野宮真貴、ホリディ渋谷系を歌う。

会場 NAGOYA Blue Note 日時 2017年11月24日(金) 18:30~

ご存じ90年代にピチカート・ファイヴのボーカリストとして活躍した野宮真貴。ここ最近は、「野宮真貴、渋谷系を歌う。」と題して、ピチカート・ファイヴに代表される90年代の音楽ムーブメント、渋谷系のルーツになったような曲を取り上げてカバーする企画ライブを行い、CDもリリースしています。この企画ライブ、以前から気になっていたのですが、今回ちょうどよいタイミングで名古屋ブルーノートでライブを開催。はじめて野宮真貴のライブに足を運んできました。

ブルーノートでのライブはこれで3回目。ただうち1回はSAKAE SP-RINGでのステージだったので、純粋な意味でブルーノートのライブを見るのはこれが2度目。入口で受け付けをすますと席までエスコートされるという、普段とはちょっと違った雰囲気の中、ライブのスタートを待ちます。

ライブは18時半ちょうどからスタート。野宮真貴は全身白のふわふわなドレスで着飾って優雅に登場。1曲目はピチカート・ファイヴの「きよしこの夜」からスタート。この曲、なんとライブで披露するのは25年ぶりだとか。知る人ぞ知る的な楽曲から、ちょっとスペシャルなこの日のライブはスタートしました。

続くMCのコーナーでは曲の紹介やこの日のステージ衣装について。「せっかくなので記念撮影をしましょう」となんと携帯での撮影が解禁(!)。私もiphoneのカメラを向けたのですが・・・真っ白な衣装がハレーションを起こして上手く取れませんでした(T T)。残念・・・。

その後はライブツアーと同タイトルのアルバムにも収録されていたいしだあゆみの「ウィンターコンサート」、その後はタイアップコーナーと題して、「ヴァカンス渋谷系を歌う。」に収録されていた「世界!西原商会の世界!」や、Francfrancとのコラボ曲「Fun Fun Christmas」など、アルバムの中からの曲を聴かせてくれました。

中盤は彼女のデビューアルバム(1981年!)「ピンクの心」の中に収録されている「絵本の中のクリスマス」なんていうレアな選曲も。さらに「おもて寒いよね」の前には、横山剣から届いたというクリスマスカードを披露。横山剣は残念ながらこの日、ライブには来なかったのですが、「ソウル電波を届けます」というメッセージが。野宮真貴による「イイネ!」も飛び出して、楽曲へ突入。横山剣のパートはテープを流す形だったのがちょっと残念ですが、息の合った(?)デゥオを聴かせてくれました。

その後は全身金色のラメの服にクリスマスツリーの飾りをつけたド派手なスタッフ(ヘアメイク担当の方らしい・・・)が登場し、野宮真貴とコント的なやり取りが飛び出したりして、ここでこの日のライブグッズの紹介。野宮真貴のエレガントな雰囲気とはちょっと違う、コミカルなMCを聴かせてくれました。

そのまま野宮真貴本人はお色直しということで一度ステージから去ります。バンドの演奏で間を繋いで、今度は黒色のシックな衣装で登場。「野宮真貴が歌っていない小西康陽の曲シリーズ」(?)ということでPIZZICATO ONEの「東京の街に雪が降る日、ふたりの恋は終わった。」をカバーしました。

前半から中盤にかけてはどちらかというと大人な雰囲気で聴かせる展開が続いていたのですが、ここからはアップテンポな曲が続きます。「Winter's Tale~冬物語~」に、「雪やこんこ」を大瀧詠一アレンジによるフィルスペクターサウンドをバックに披露。さらに個人的に聴きたかった槇原敬之の「冬がはじまるよ」のカバーで会場を盛り上げます。

最後はユーミンの「A Happy New Year」のカバーでちょっとしんみりとした雰囲気にして本編終了。メンバーは一度会場を去りました。

もちろんその後はアンコールが。アンコールはライブでの恒例らしいピチカート・ファイヴメドレー。「メッセージソング」や「東京は夜の7時」など、個人的にも非常に懐かしいナンバーをナマで聴くことができたとてもうれしい瞬間。最後は「12月24日」で締めくくり。ライブは大盛況のうちに幕を下ろしました。

ライブは本編が1時間強、アンコール込で1時間20分程度のステージ。通常のライブだとちょっと短いライブなのですが、ブルーノートは2ステージ制ということもあり、予定通りの長さのライブ。それだけにあっという間のステージでした。

はじめて野宮真貴のライブを見たのですが、とにかく声が若々しく、昔から全く変わっていないことが驚かされます。今、彼女は57歳だそうで、外見もとても美しいのですが、大変失礼ながら年齢相当な部分も否定できません。ただ声に関しては全く年齢を感じさせないつやや色気を感じ、驚かされました。本人はこの日のライブでも「還暦まで歌い続けたい。あと3年」と言っておられましたが、これだけの歌唱力を維持しながらあとたった3年はもったいなさすぎる・・・是非、まだまだ歌い続けてほしいです。

ブルーノートで大人な雰囲気でのステージでしたが、魅力的な野宮真貴のボーカルを堪能できたライブでした。選曲も名曲が多かったし、この念願の「渋谷系を歌う。」の企画ライブを思う存分楽しめました。やはり彼女のボーカルは素晴らしい。また機会があれば足を運びたいです。

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2017年12月 9日 (土)

超ベテランパンクバンドのベスト盤

Title:ATOMIC GARDEN
Musician:the原爆オナニーズ

おそらくそのミュージシャン名だけでかなりのインパクトがあるだけに、名前だけは知っているという方も少なくないかもしれません。80年代から活動を続けるパンクバンドthe原爆オナニーズ。名古屋を中心に活動を続けるこのバンドは数多くのミュージシャンからリスペクトを集め、元Blankey Jet Cityの中村達也やHi-STANDARDの横山健も一時期、メンバーとして名を連ねていました。

本作はそんな彼らが、インディーズレーベル、アルケミーレコードに所属していたころの作品を集めたベストアルバム。具体的には1989年にリリースされた「GENBAKU HEAD QUARTERS」から1997年にリリースされた「STEP FORWARD」の頃の作品を集めたベスト盤です。

1時間14分というフルボリュームながらも26曲入りという今回の作品。20年以上前の楽曲を集めたアルバムなのですが、いま聴いても全く古臭さを感じることはありません。疾走感あり、ノイズを思いっきり響かせるギターを中心とした分厚いバンドサウンド。ボーカルTAYLOWのがなり声でのシャウト気味でのボーカル。ある意味、実にパンクロックらしい焦燥感と迫力を感じさせる演奏が続きます。

正直言って全26曲、楽曲のバリエーションはほとんどありません。基本的にパンクロック一本。あえて言えば「ピ・ポ・パ」のような、ちょっと複雑なドラミングを聴かせる曲があったり、「G・H・Q」のようなちょっと抑え気味の曲があったり、また「Step Forward」のような前向きな曲があったりといったところが耳を惹きました。

また楽曲的には「日本のパンク」といってよくありがちな、いわゆる行進曲のリズムを持ったパンクロックではありませんし、わかりやすいメロディーラインを持ったメロディアスパンクでもありません。もちろん、上で「前向きな曲」と書いたのですが、2000年代に流行ったような青春パンクともほど遠いものです。

そういう意味では楽曲的には決して聴きやすいものではありません。楽曲的にも力強いバンドサウンドとボーカルのシャウトを主軸として展開していくような構成で、ポップスさはあまりありません。ただ間違いなくパンクロックというジャンルの重要なポイントである、ミュージシャンの叫びは伝わってくる楽曲が並んでいます。

だからこそ、1時間以上の内容で楽曲のバリエーションがあまりないにも関わらず、最後までほとんど飽きることなく楽しむことの出来るアルバムになっていました。今の日本のミュージックシーンでは逆に珍しくなってしまった、いい意味でパンクロックらしいパンクロックなアルバム。パンクロックが好きならとりあえずはチェックしておきたい1枚です。

評価:★★★★★


ほかに聴いたアルバム

YOUTH/日暮愛葉

Seagull Screaming Kiss Her Kiss Herとしても活動する日暮愛葉の8年ぶりとなるソロアルバム。全10曲中9曲が打ち込みというエレクトロ色を出したアルバムになっています。ただ、全編エレクトロで彼女のイメージが一新・・・といった感じではなく、ローファイで音数を絞ったサウンド構成は相変わらず。ノイジーなガレージサウンドもきちんと鳴っており、いままでの彼女のイメージの延長線上にエレクトロサウンドを入れてきたといったイメージのアルバムになっています。良くも悪くも地味な印象は否めず、インパクトが薄めなのはちょっと残念でしたが。

評価:★★★★

BINARY/WONK×THE LOVE EXPERIMENT

ここ最近、特にジャズシーンから注目を集めている新進気鋭のエクスペリメンタル・ソウルバンと、ニューヨークを拠点に活動するこちらも注目株のソウルバンドTHE LOVE EXPERIMENTのコラボアルバム。エレクトロなトラックをメインに、ソウルやジャズ、HIP HOPを変幻自在に行きかうサウンドは魅力的だし、この自由度の高さが今時かも。ただ、個人的にはもうちょっとパンチの利いた、コアになるようなサウンドが欲しかったような。全体的にはメロウなボーカルの歌モノが目立つアルバムに仕上がっており、いい意味でポップス感覚も強く、聴きやすいアルバムになっていました。

評価:★★★★

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2017年12月 8日 (金)

「この世界の片隅に」への楽曲参加が話題に

Title:雨の箱庭
Musician:コトリンゴ

映画「この世界の片隅に」への楽曲提供が大きな話題となった女性シンガーソングライターのニューアルバム。コトリンゴ、という名前は以前から知っていたのですが、なんとなくオリジナルアルバムはいままでチェックしておらず、彼女の音源をきちんと聴いたのが「この世界の片隅に」のサントラ盤がはじめてでした。そのサントラで聴いた彼女の歌が非常に素晴らしかったため、今回、はじめて彼女のオリジナルアルバムもチェック。そして、期待通り、いや期待以上の素晴らしいアルバムに仕上がっていました。

「この世界の片隅に」で聴かせてくれた彼女の歌は、アコースティックなアレンジに力の抜けたボーカルスタイルが特徴的。この暖かく、ほどよく脱力感ある楽曲が映画の主人公の性格にもピッタリあっていました。

今回のアルバムに関してももちろんコトリンゴの作風は「この世界の片隅に」で聴かせてくれた楽曲と変わりありません。まずは雨上がりの美しくもどこか幻想的な風景を描いたピアノインストナンバーである「雨上がる」からスタート。続く「迷子になった女の子」もストリングやウッドベースなどで描かれるアコースティックなサウンドはどこかファンタジック。そこにウィスパー気味のコトリンゴの力の抜けたボーカルが暖かさもあり、曲の雰囲気にもマッチ。不思議な暖かさのある楽曲に仕上がっています。

前半はそんなアコースティックなサウンドをバックに暖かい雰囲気のあるポップソングが並びます。そしてインストナンバーの「Light Up Nipponメインテーマ」を挟んで後半の「To do」は前半と同様、暖かみあるアコースティックなナンバーながらも、ちょっとジャジーな雰囲気のナンバーに。続く「林檎」はちょっとジャジーながらもアバンギャルド風のサウンドが耳に残りますし、さらに「wataridori」はトラッド風なサウンドも印象的なナンバー。基本路線は前半と同様、暖かみのあるアコースティックなサウンドに脱力感あるコトリンゴのボーカルを聴かせるというスタイルは変わらないのですが、作風にバリエーションを感じる展開になっています。

最後を締めくくる「hanabi」はまたこのアルバムを締めくくるにふさわしい、ピアノのアルペジオをバックにしんみりと聴かせるバラードナンバー。ピアノの音色もコトリンゴのボーカルもとても優しく、ほんわかしてくるような楽曲に仕上がっています。

そんな訳で今回はじめて彼女のアルバムを聴いたのですが、とても優しくて暖かさのあふれるアルバムに仕上がっていました。「この世界の片隅に」をみて、その音楽を気に入った方なら絶対気に入るはずの作品。期待していた以上の傑作アルバムになっていました。

コトリンゴといえばここ最近はKIRINJIのメンバーとなりKIRINJIとしても活動していたのですが、先日、KIRINJIからの脱退を発表しました。もともとKIRINJIに参加する以前からソロでも既にその地位を確立していただけにKIRINJI加入のニュースも驚いたのですが、逆にKIRINJIからの脱退というニュースは、彼女もソロで忙しそうですし、まあいつかは離れるんだろうなぁ、と予想していただけにさほど驚きはありません。これからはおそらくソロでもさらに精力的に活動を続けるであろう彼女。これからの活躍も楽しみです。

評価:★★★★★

コトリンゴ 過去の作品
劇場アニメ「この世界の片隅に」オリジナルサウンドトラック


ほかに聴いたアルバム

全知全能/ポルカドットスティングレイ

人気上昇中の女性ボーカル+男性3人リズム隊という4人組バンドによる新作。前作「大正義」では椎名林檎経由でNUMBER GIRLに影響を受けたようなサウンドと書いたのですが、今回のアルバムではバンドサウンドを聴かせるものの、もうちょっとポップ色が強くなった印象も。楽曲的にはインパクトはあるのですが、もうちょっとバリエーションも欲しい感じ。「大正義」同様、もう一歩で傑作なのに・・・という惜しい印象を残すアルバムです。

評価:★★★★

ポルカドットスティングレイ 過去の作品
大正義

SAMURAI SESSIONS vol.2/MIYAVI

「対戦型コラボレーションアルバム」として2012年にリリースされた「SAMURAI SESSIONS vol.1」。本作はその第2弾となるアルバム。今回は三浦大知やSKY-HI、EXILE SHOKICHIなどR&B系やHIP HOP系かつメジャー系なミュージシャンが多く、ギターセッションというよりはエレクトロサウンドの中にMIYAVIのギターが鳴り響く感じ。ファンキーなギターはそれなりにカッコいいけども、全体的に消毒されたような悪い意味でのメジャー仕様のポップな楽曲がメインで、物足りなさは否めませんでした。

評価:★★★

MIYAVI 過去の作品
WHAT'S MY NAME?(雅-MIYAVI-)
SAMURAI SESSIONS vol.1(雅-MIYAVI-)
MIYAVI
THE OTHERS
FIRE BIRD
ALL TIME BEST "DAY2"

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2017年12月 7日 (木)

28作目の1位獲得

今週のアルバムチャート

http://www.oricon.co.jp/rank/ja/

安室奈美恵は4週連続の1位はならず。

今週1位はB'zのニューアルバム「DINOSAUR」が獲得。これでアルバムでは28作目となる1位獲得となるそうです。初動売上20万1千枚は前作「EPIC DAY」の20万9千枚から若干のダウンとなりました。

2位には安室奈美恵「Finally」がワンランクダウン。ただ今週も9万3千枚を売り上げており、タイミングによってはまだ1位返り咲きの可能性も。累積売上も160万枚を突破。CDが売れない今、アイドル系以外では異例ともいえる売上となっており、彼女の人気に驚かされます。

3位には和楽器バンド「軌跡 BEST COLLECTION+」がランクイン。彼女たち初となるベストアルバム。ただ、まだアルバム3枚しかリリースしていないバンドで、ベスト盤はちょっと早すぎないかい?初動売上は4万2千枚。前作「四季彩-shikisai-」の4万1千枚(2位)より若干アップしています。

続いて4位以下の初登場盤です。4位にはNintendo Switchの人気ゲーム「スプラトーン2」のサントラ盤「Splatoon2 ORIGINAL SOUNDTRACK -Splatune2-」がランクイン。初動売上1万8千枚。同ゲームの前作「スプラトーン」のサントラ「Splatoon ORIGINAL SOUNDTRACK -Splatune-」の初動4万2千枚(2位)からダウンしています。

8位にはBOBBY「LOVE AND FALL」がランクイン。名前的にはいかにもアメリカ人的ですが、韓国の人気アイドルグループiKONのメンバーによるソロデビューアルバム。初動売上8千枚で見事ベスト10入りです。

初登場最後は9位U2「Songs Of Experience」。ご存じイギリスの人気ロックバンドによる新作。初動売上は7千枚。iTunesへの強制無料配信が賛否両論を巻き起こした前作「Songs Of Innocence」の初動1万枚(3位)より若干のダウンとなっています。

他には今週、ベスト10返り咲き組が2枚もありました。まずは6位、韓国の男性アイドルグループSeventeen「Teen,Age:Seventeen Vol.2」が先週の31位からランクアップし、ベスト10返り咲きとなりました。これは来年2月から3月に予定されているサイン会参加のためのエントリーカード付CDのリリースが開始された影響の模様です。

またBiSH「THE GUERRiLLA BiSH」もランク圏外からランクアップしベスト10返り咲き。これは以前、ランクインしたのが11月4日5日限定でタワーレコードにおいて299円で数量限定のゲリラ販売した影響。今回は正式版リリースで再度のランクインとなりました。ちなみに今週の売上1万6千枚とゲリラ販売分の売上をあわせると、累計2万7千枚に。これは前作前作「GiANT KiLLERS」の初動売上2万8千枚からダウンしており、ゲリラ販売の効果はさほどなかった模様です。

今週のアルバムチャートは以上。チャート評はまた来週の水曜日に!

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