2021年4月12日 (月)

切ない歌詞が目立つ1枚

Title:どうしたって伝えられないから
Musician:aiko

途中、ベスト盤のリリースを挟み、オリジナルアルバムとしては約2年9ヶ月ぶりとなるaikoのニューアルバム。ここ最近のaikoのアルバムは、正直なところ決して目新しさはないのですが、非常に高いクオリティーを持ったポップソングを安定的にリリースしているといった印象があります。そして今回のアルバムも、いつも通りのaikoのアルバム、なのですが、やはり非常に高いクオリティーを保った良質なポップアルバムとなっていました。

ただ、今回のアルバムはそんな中でも特に歌詞の部分が印象に残る作品になっていました。今回のアルバムでは、失恋や別れた恋人を思って歌った、比較的悲しい歌詞の曲が目立っていました。そんな中でもふとした日常の中で心象を反映させたような歌詞は見事。例えば「ハニーメモリー」

「いつも悪いなって思ってたよ
夜明け前に帰ると洗面所だけ電気が付いてた
ごめんねでも 素直になれなかった」
(「ハニーメモリー」より 作詞 AIKO)

という歌詞ひとつで、その風景や、風景に反映された2人の心象が伝わってくるその描写が実に見事。「一人暮らし」も、洗濯という日常の行為に、別れた恋人との心象を重ね合わせる描写が強く印象に残ります。今回も、この恋をする人の心象を見事に描いた歌詞が全編に展開されるアルバムに仕上がっています。

一方で今回、メロディーラインという側面においては、ちょっとインパクトが薄く、いつものaiko節といった感じの独特な節回しが魅力的な曲はちょっと少な目だったように感じます。ただ、それでも彼女らしい独特の節回しの複雑なメロディーラインの曲ももちろん本作でも聴くことが出来、そのうちの1曲が「シャワーとコンセント」。固有名詞をタイトルにもってきているのがaikoらしい感じの曲なのですが、メロディーラインも非常に複雑。にもかかわらず、易々と歌い上げ、なおかつポップにまとめ上げている点、彼女の実力を感じます。さらにラストを締めくくる「いつもいる」は、まさにaikoらしい、ブルージーな節回しを感じさせる曲調になっており、最後の最後に、「そう、このメロディー展開がaikoだよ!」と感じさせる曲になっていました。

個人的には、メロディーラインがちょっと地味で、いかにもaiko節といった感じの曲が少な目だった点、前作や前々作の方がよかったかな、とは思います。ただ、今回のアルバムも傑作であることは間違いありません。しっかしとaikoの魅力を感じられる良質なポップスアルバム。彼女の実力を存分に感じた1枚でした。

評価:★★★★★

aiko 過去の作品
秘密
BABY
まとめI
まとめII

時のシルエット
May Dream
湿った夏の始まり
aikoの詩。


ほかに聴いたアルバム

Remember/Spangle call Lilli line

昨年は20周年記念のオールタイムベストもリリースしたSpangle call Lilli lineの最新作。相変わらずエレクトロサウンドでドリーミーなポップが魅力的な彼女たちですが、最新作ではシティポップの要素を取り入れたポップチューンも目立つ作品に仕上がっています。ただ、良質で、かつ挑戦的な要素もあるポップスという路線は相変わらずなのですが、インパクトの薄さが否めず。いまひとつ後に残る印象が薄いアルバムというのはいままで通り。悪いバンドではないと思うのですが、もう一工夫が欲しいんだよなぁ。

評価:★★★★

Spangle Call Lilli Line 過去の作品
VIEW
forest at the head of a river

New Season
Piano Lesson
SINCE2
ghost is dead
Dreams Never End
SCLL

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2021年4月11日 (日)

名作ゲームサントラをセルフカバー

Title:MOTHER MUSIC REVISITED
Musician:鈴木慶一

1987年にリリースされたファミコン用ゲームソフト「MOTHER」。ゲーム自体も非常に評価が高い作品なのですが、鈴木慶一が手掛けた音楽自体の評価も高く、特に「EIGHT MELODIES」は音楽の教科書に採用されるなど、ゲーム音楽という枠組みを超えて高い評価を得ている1曲となっています。本作は、その鈴木慶一の音楽活動50周年を記念してリリースされた「MOTHER」サントラ盤のセルフカバーアルバム。以前リリースされたサントラ盤では歌モノについては海外の歌手を起用していたのですが、本作では鈴木慶一本人がボーカルとしてカバーしており、事実上、鈴木慶一のソロアルバムとなっています。

そういうこともあって、純粋に「MOTHER」のサントラを求めた場合には、ちょっと肩透かしを食らうかもしれません。ただ、純粋にポップスアルバムとして聴いた場合、鈴木慶一のセンスにあふれた非常に素晴らしいアルバムに仕上がっていました。「POLLYANNA(I BELIEVE IN YOU)」も、決してわかりやすいサビがあるわけではないのに、キュートでどこか印象に残るメロディーラインが、いかにも鈴木慶一といった感じですし、「THE PARADISE LINE」もホーンやストリングスなどを取り入れたユーモラスなサウンドでポップに聴かせるスタイルも、いかにも彼らしさを感じられる、聴いていてワクワク楽しくなってくる1曲となっています。

軽快なラテンの要素も入った「FLYING MAN」や、U-zhaanが参加し、タブラの演奏を聴かせてくれる「SNOW MAN」など、ワールドミュージックの要素も強く、この多彩な音楽性も大きな魅力。「ALL THAT I NEED(WAS YOU)」でエレクトロサウンドを入ったリズムで聴かせるポップなメロはどこかエキゾチックですし、鈴木慶一の魅力がまさにフルに発揮された傑作アルバムに仕上がっています。

最後を締めくくる「EIGHT MELODIES」も、ノイジーなギターからスタートするものの、その後、ピアノやアコギの音も入ってきて、どこかファンタジックでドリーミーな雰囲気が魅力的。どこかほんわかとした不思議な空気の中、アルバムは締めくくられます。

個人的にはこの「MOTHER」というゲームはプレイしたことはなく、サントラには思い入れもないのですが、今回、全面的に鈴木慶一のボーカルが入ったことにより、オリジナルのイメージが強い方には違和感もある部分もあるようです。ただ、一方では彼がボーカルを取ることによりアルバム全体としての統一感は出ていたように感じます。鈴木慶一のソロとしては文句なしの傑作アルバムに仕上がっており、まだゲーム音楽というジャンルが全く確立されておらず、ゲームというジャンル自体、今とは比較にならないほど低く見られていた1987年頃に、これだけ本気でゲーム音楽に取り組んでいたというのは驚く限りです。

さらに注目なのがDELUXE盤に収録されるDisc2。こちらは「MOTHER」のゲーム音源をそのまま収録したサンプルになっているのですが、こちらもまた、名曲が揃っている内容になっています。そして当時のファミコンのチープな音源でそんな名曲が奏でられるのですが、あれだけ音数が限られている環境の中、これほど表現力豊かに音楽を再現していることに驚かされる内容。鈴木慶一もさることながら、当時のゲーム技術者の力量も感じさせるサントラになっています。また、リアルタイムでプレイされた方にも、こちらの音源はあのころも想い出がよみがえってくるのではないでしょうか。

ゲームのサントラという枠組みを超えた、間違いなく傑作アルバムと言える本作。鈴木慶一のソロ作という色合いも濃いので、リアルタイムでゲームをプレイした方には最初、違和感を覚えるかもしれませんが、これはこれで文句なしの出来と言えるのではないでしょうか。30年以上前のゲームですが、間違いなく時代を超えた魅力を持った楽曲の数々。ゲームをプレイしたことない私はゲームもプレイしたくなってきてしまいました。

評価:★★★★★

鈴木慶一 過去の作品
シーシック・セイラーズ登場!
ヘイト船長回顧録
謀らずも朝夕45年
Records and Memories


ほかに聴いたアルバム

FIZZY POP SYNDROME/秋山黄色

新進気鋭のシンガーソングライター、秋山黄色の最新作。バンドサウンドで分厚い音を聴かせる疾走感あるサウンドが特徴的な、ロック志向のミュージシャンで、やさぐれた言語感覚も独特、と言われています。勢いのあるバンドサウンドは耳を惹きますが、一方、歌詞の世界観という側面では、今回のアルバム、前作ほど聴いていて「お?」と思えるようなフレーズには出会えなかったのが残念なところ。メロにしろサウンドにしろ歌詞にしろ、もう一歩、インパクトが欲しいと思ってしまうのですが、前作同様、あと一歩で傑作なりえた感のあるアルバムといった感じ。次回作以降に期待。

評価:★★★★

秋山黄色 過去の作品
From DROPOUT

AMUSIC/sumika

すっかり「人気バンド」としての地位を確固たるものとしてきているsumikaの3枚目となるアルバム。1曲目の「Lamp」や2曲目の「祝祭」、ラストの「センス・オブ・ワンダー」など、ホーンセッションを入れたり、トラッドミュージックの要素が入ったりと、祝祭色豊かな楽曲は非常に魅力的で勢いもあり、人気バンドとして脂がのってきている感もする一方、中盤の曲は無理にスケール感を入れようとする「なんちゃってミスチル」的な曲も目立ち、はっきりいってしまって無理にスケール感を持たせようとするJ-POPの悪い部分を取り入れてしまった感のある、ちょっと残念な曲も目立ちます。個人的には、もっとホーンやアコーディオンなどを取り入れた、トラッド系の曲にシフトした方がバンドとしての個性が出ると思うのですが。

評価:★★★★

sumika 過去の作品
Familia
Chime
Harmonize e.p

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2021年4月10日 (土)

スカの万能さをアピール

Title:SKA=ALMIGHTY
Musician:東京スカパラダイスオーケストラ

スカパラ約1年4か月ぶりとなるスカパラのニューアルバム。ゲストボーカルが参加し、様々なタイプの楽曲に挑戦するスタイルがすっかり板についた感のある彼ら。今回のアルバムも様々なゲストが参加した歌モノの楽曲がズラリと並ぶ作品になっています。また、今回は、ほぼインスト曲と歌モノ曲が交互に並ぶ作品になっており、インストと歌モノがバランスよく配された構成になっています。

そして、今回の大きな特徴としては、「SKA=ALMIGHTY」というタイトル通り、スカという音楽が、どんなタイプのジャンルにもマッチするということを主張するかのような、いままで以上にバラエティー富んだ作品が並んでいます。ムーディーでダークな、ある意味、「昔からのスカパラ」と言えるインストチューン「Salavation Ska」からスタートし、パンキッシュな「9」、[Alexandros]の川上洋平がゲストボーカルで参加する「ALMIGHTY~仮面の約束」「多重露光」はいずれも「仮面ライダーセイバー」関連の曲ということもあり、哀愁感たっぷりの歌謡曲テイストの強いナンバーになっています。

インストチューンの「Together Again」はメロウなAOR調のナンバーですし、「This Is My Life」は軽快なラテン調のナンバーかと思えば、中盤に一転、ハードコアなサウンドが入ってくる点がユニーク。ラストの「Ribbon」ではチリのバンド、Moral Distraídaが参加した本場のラテン風の楽曲に仕上がっています。

インパクトという面で言えば、中盤のタイトルそのまま「仮面ライダーセイバー」。タイトル通りテレビ朝日系「仮面ライダーセイバー」エンディングテーマで、コテコテの特撮主題歌といった感じのナンバー。良くも悪くもスカのオールマイティーさを見せつける楽曲になっています。もう1曲、注目曲なのが新進気鋭のミュージシャン、長谷川白紙をフューチャーした「会いたいね。゚(゚´ω`゚)゚。」でしょう。エレクトロサウンドを挑戦的に聴かせる長谷川白紙の世界をスカの世界と融合させた曲で、こちらもスカのオールマイティーさを見せつける曲になっています。

このように、スカというジャンルの万能さを主張するような今回のアルバム。まさに「SKA=ALMIGHTY」というタイトルそのままのバラエティー富んだ作品に仕上がっています。ただ、全体的には仮面ライダーセイバー系の楽曲が目立った影響でしょうか、「会いたいね。゚(゚´ω`゚)゚。」みたいなおもしろい曲もありつつ、売れ線の、悪い意味でのベタなJ-POP路線が目立ってしまったような感もあります。長谷川白紙とのコラボのような、もうちょっと挑戦的な作風の方がおもしろいとは思うのですが。良くも悪くも「売れ線」狙いなのがここ最近のスカパラの特徴なので、ちょっと微妙な気持ちにもあるアルバムでした。

評価:★★★★

東京スカパラダイスオーケストラ 過去の作品
Perfect Future
PARADISE BLUE
WILD SKA SYMPHONY
Goldfingers
HEROES
Sunny Side of the Street
on the remix
Walkin'
欲望
Diamond In Your Heart
SKA ME FOREVER
The Last
TOKYO SKA Plays Disney
The Last~Live~
TOKYO SKA PARADISE ORCHESTRA~Selecao Brasileira~
Paradise Has NO BORDER
GLORIOUS
2018 Tour「SKANKING JAPAN」"スカフェス in 城ホール" 2018.12.24
TOKYO SKA TREASURES ~ベスト・オブ・東京スカパラダイスオーケストラ~


ほかに聴いたアルバム

REAMP/ヒトリエ

2019年4月、バンドのボーカリストで、ほぼ全曲の作詞作曲を手掛けていたwowakaがわずか31歳という若さで急逝。多くの音楽ファンにショックを与えました。そんな中、バンドとしての動向も注目されたのですが、ギターのシノダがギターボーカルに変更。バンドとして続行ということになりました。また作詞作曲も主にシノダが担当し、2期ヒトリエがスタート。そしてリリースされた約2年ぶりのアルバムが本作となります。

楽曲は、基本的にはwowakaの路線を引き継ぐようなスタイル。ハイテンポなリズムとマイナーコード主体のメランコリックなメロディーラインはいままでと大きな変化はありません。正直、個性が薄くなり楽曲のインパクトは薄くなってしまった感はあります。ただ一方、特に後半は、いままでの彼らではあまり出会えなかったようなタイプの曲も聴くことが出来、楽曲のバリエーションは今までより増えたように感じます。特にヒトリエは少々楽曲のバリエーションに乏しかったことが課題だっただけに、この点はむしろよい方向にシフトしたとすら言えるかもしれません。バンドのメインライターが若くして亡くなり、その後、残されたメンバーでバンドを続けるという点はフジファブリックに似たスタイルですが、フジファブリックも志村正彦亡き後にメインのライターとなった山内総一郎は、その後、ライターとして成長していきました。ヒトリエも同じようにメインライターのシノダの成長が期待されるところ。楽曲のバリエーションの広がりから、これで個性とインパクトが出てきたら、むしろ以前よりおもしろいバンドにまで成長できるのでは?という予感もした1枚でした。

評価:★★★★

ヒトリエ 過去の作品
イマジナリー・モノフィクション
モノクロノ・エントランス
DEEPER
IKI
ai/SOlate
4

NEW WORLD/大橋トリオ

大橋トリオ15枚目となるオリジナルアルバム。上白石萌音とのデゥオ「ミルクとシュガー」やみやぞんとのデゥエットで話題の江崎グリコキャンペーンCMソング「何処かの街の君へ」(音源ではみやぞんは起用されていないようですが・・・)も収録。相変わらず、ジャズをベースとした非常に良質なポップソングが魅力的なのですが、良くも悪くもいつも通りといえばいつも通り。もうちょっと目新しさも・・・とは思ってはしまうのですが、ただ、このスタイル、変に変えない方がいいんでしょうね・・・。

評価:★★★★

大橋トリオ 過去の作品
A BIRD
I Got Rhythm?
NEWOLD
FACEBOOKII
L
R

FAKE BOOK III
White
plugged
MAGIC
大橋トリオ
PARODY
10(TEN)
Blue
STEREO
植物男子ベランダー ENDING SONGS
植物男子ベランダーSEASON2 ENDING SONGS
THUNDERBIRD
This is music too

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2021年4月 9日 (金)

「今の時代性」を取り込んだ作品

Title:AAI
Musician:Mouse On Mars

ドイツのエレクトロミュージックデゥオ、Mouse On Marsの最新作。前作「Dimensional People」が高い評価を集めた彼らですが、その最新作がまた、ユニークな実験性を帯びた作品ということで話題となっています。今回のアルバムタイトル「AAI」は、Anarchic Artificial Intelligenceの略称。直訳すると「無秩序なAI(=人口知能)」となる本作は、そのタイトル通り、昨今話題のAIを作曲技法の中に取り入れて使用した作品となっているそうです。

そしてもう1つの特徴が、ボストン大学の英文学教授でアフリカン・アメリカン研究の第一人者であるルイス・シュデ=ソケイの言葉を取り入れて、至るところでサンプリングとして使用しているという点。昨今のブラック・ライブス・マター運動に対してMouse On Marsから呼応しているといったところでしょうか。

そういうこともあって、全体的にアフリカンなリズムが多様されているのも本作の特徴で、イントロ的な1曲目を挟んだ事実上の1曲目「The Latent Space」から、トライバルなリズムが展開されていきますし、静かな音色にスペーシーな雰囲気も漂う「Thousand To One」もトライバルなリズムが背後に鳴っています。メタリックなサウンドがどこかユニークな「Machine Rights」でもトライバルなリズムが顔をのぞかせますし、「Cut That Fishernet」も強いトライバルなリズムが特徴的な作品になっています。

そんなアフリカンなリズムがアルバムの中でひとつの軸となっているため、AIを作曲に用いているエレクトロサウンドでありながらも、一方ではどこか肉感の強く作品になっているというアンバランスさがユニークなアルバムと言えるでしょう。とかく無機質になりがちなサウンドの中で、肉感的なリズムを取り入れるというアンバランスさが、アルバムの中で大きなインパクトとなっているように感じました。

また、そんなトライバルな作品を含み、全体的には様々なアイディアが散らばっているバリエーションの多い作風も魅力的で、これはひょっとして作曲技法としてAIを使用した結果、むしろ自由度の高い作品に仕上がったのでしょうか?どこかトラッド的な要素も感じる「Walking And Talking」や、エレクトロノイズで疾走感のある「Go Tick」、警告のようなメッセージがインパクトある「New Life Always Announces Itself Through Sound」など、様々なアイディアを詰め込んだバラエティーに富んだ作品になっています。特に、今回、全21曲という曲数ながらも、1分に満たない曲や1分、2分程度の曲も多く、それだけ様々なアイディアを詰め込んだ作品になったといえるでしょう。結果として、全体的にスピーディーに展開し、飽きのこない作品に仕上がっていたと思います。

評価の高かった前作に引き続き、今回も傑作アルバムに仕上がっていた本作。AIの導入といい、ブラック・ライブス・マターに呼応した作風といい、まさに今の時代を反映させアルバムに取り込んだ作品と言えるでしょうし、そういう時代性こそポップミュージックのだいご味と言えるでしょう。2021年という今の時代だからこそ生まれた傑作でした。

評価:★★★★★

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2021年4月 8日 (木)

Hot Albumsも1位はK-POP

今週のHot Albums

http://www.billboard-japan.com/chart_insight/

Hot100に続き、Hot AlbumsもK-POP勢が1位を獲得しています。

1位には韓国の男性アイドルグループTREASURE「THE FIRST STEP:TREASUER EFFECT」が獲得。日本でのデビュー作。以前、先行してリリースされていた韓国盤のランクインのため、2月3日付チャートで7位にランクインしていましたが、このたび国内盤もリリース。そのCD販売数が加味された影響で、9週ぶりにベスト10に返り咲き、見事1位獲得となりました。CD販売数1位、ダウンロード数8位、PCによるCD読取数38位。オリコン週間アルバムランキングでも初動売上5万6千枚を獲得し、1位にランクインしています。

2位にはモーニング娘。'21「16th~That's J-POP~」が初登場でランクイン。CD販売数2位、ダウンロード数1位、PCによるCD読取数6位。K-POP勢の躍進の前でこのアルバムタイトルは少々むなしさも感じてしまうのですが、15曲中13曲はつんく♂の曲だそうで、売れるとすぐに飽きてしまうどこかのTKさんと異なり、いまだに責任もってモーニング娘。に関わる彼の誠実さが感じられます。オリコンでは初動売上3万7千枚で2位初登場。直近作はベスト盤「ベスト!モーニング娘。20th Anniversary」で、同作の3万4千枚(1位)からアップ。オリジナルアルバムとしての前作「⑮Thank you,too」の2万9千枚(4位)からもアップしています。

3位初登場はケツメイシ「ケツノパラダイス」。CD販売数3位、ダウンロード数5位、PCによるCD読取数23位。デビュー20周年を記念してリリースされたベストアルバムで、今回は、彼らのツアースタッフや関係者がセレクトした曲が収録されているそうです。ちなみにジャケット写真↓

は、このコロナ禍のため、首里城内にメンバーの等身大パネルを持ち込み撮影されたそうです。あきらかに違和感のある写真なのですが、合成技術などを用いず、あえてアナログな方法を採用するあたりに、ユーモアセンスを感じます。オリコンでは初動売上2万2千枚で3位初登場。直近のオリジナルアルバム「ケツノポリス11」の4万枚(1位)よりダウン。10年前にリリースされた4枚同時リリースのベスト盤のうち、最高位だった「ケツの嵐~春BEST~」の5万3千枚(2位)からもダウンしています。

続いて4位以下の初登場盤です。まず4位にはいきものがかり「WHO?」がランクイン。CD販売数4位、ダウンロード数6位、PCによるCD読取数12位。オリコンでは初動売上1万9千枚で前作「WE DO」の3万7千枚(2位)から大幅ダウン。活動休止前にリリースしていた前々作「FUN!FUN!FANFARE!」が初動10万1千枚でしたので、わずか2作で初動売上が10分の一近くに減ってしまうという、ストリーミングの普及という要素を加味しても、かなり厳しい状況となっています。

8位には林原めぐみ「30th Anniversary Best Album『VINTAGE DENIM』」がランクイン。CD販売数6位、ダウンロード数14位、PCによるCD読取数37位。昨今では人気声優が歌手として活動するケースも少なくありませんが、彼女はその走りともいえる声優で、本作は彼女が林原めぐみ名義での初シングルとなった「虹色のスニーカー」からちょうど30年ということを記念してリリースされたベストアルバム。声優としては活躍を続けているものの、歌手としてはさすがに昔と比べて人気がひと段落した感もあるのですが、それでも本作は見事ベスト10入りを果たしました。オリコンでは初動売上1万枚で6位初登場。直近のオリジナルアルバム「Fifty~Fifty」の5千枚(18位)からアップしています。

9位にはロックバンドSPYAIR「UNITE」がランクイン。CD販売数7位、ダウンロード数12位、PCによるCD読取数33位。オリコンでは初動売上7千枚で7位初登場。前作「KINGDOM」の2万枚(5位)から大幅ダウンとなっています。

初登場最後、10位にはBAE×The Cat's Whiskers×cozmez×悪漢奴等「Paradox Live 1st album "TRAP"」がランクイン。アニメキャラによるHIP HOPメディアミックスプロジェクト「Paradox Live」からのアルバム・・・って、要するにヒプノシスマイクの二番煎じってことですか(苦笑)。さすがにちょっと狙いが露骨すぎる感じもするのですが。CD販売数9位、ダウンロード数35位、PCによるCD読取数57位。オリコンでは初動売上6千枚で9位初登場。

今週の初登場盤は以上ですが、一方、ロングヒット盤は、YOASOBI「THE BOOK」が先週の2位から今週は5位にダウン。アンコールプレスもほぼ完売したのでしょうか、CD販売数は先週の2位から17位に大幅ダウン。ただPCによるCD読取数は先週から変わらず1位をキープ。ダウンロード数も3位から2位にアップしており、総合順位は5位となっています。これで13週連続のベスト10入りとなりました。

今週のHot Albumsは以上。チャート評はまた来週の水曜日に!

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2021年4月 7日 (水)

1位2位は韓国系

今週のHot100

http://www.billboard-japan.com/chart_insight/

今週は1位2位に初登場曲が並びましたが、いずれも韓国系のアイドルグループとなりました。

まず1位はソニーミュージックと韓国のJYPエンターテイメントの合同オーディションから誕生した「韓国製J-POPグループ」とも言える女性アイドルグループNiziU「Take a picture」がランクイン。ストリーミング数及びYou Tube再生回数で1位を獲得。ダウンロード数で2位、ラジオオンエア数12位、Twitterつぶやき数8位で総合順位1位を獲得。CDは4月7日予定ですが、先行配信分での1位獲得となりました。

2位は韓国の男性アイドルグループBTS「Film out」がランクイン。こちらは映画「劇場版シグナル 長期未解決事件捜査班」主題歌で、black numberの清水依与吏が作曲に参加している1曲。こちらはダウンロード数及びTwitterつぶやき数で1位を獲得。ストリーミング数7位、You Tube再生回数4位、ラジオオンエア数34位で総合順位2位を獲得しています。ちなみにBTSは「Dynamite」も先週からワンランクダウンの7位にランクイン。33週連続のベスト10ヒットとなっています。

3位は優里「ドライフラワー」が4位からランクアップし、2週ぶりのベスト3返り咲き。ストリーミング数はNiziUに押されて2位にダウンし、連続1位は10週でストップしましたが、ダウンロード数は6位から5位にアップ。You Tube再生回数は先週から変わらず7位をキープしており、根強い人気を感じさせます。これでベスト10ヒットは連続20週目となりました。

続いて4位以下ですが、今週も4位以下の初登場曲はゼロ。ロングヒット曲がズラリと並ぶ結果となっています。まず4位には、CDリリースに伴い先週2位までアップしたYOASOBI「怪物」が残念ながら今週は4位にダウン。CD販売数も2位から11位にダウンしているほか、ダウンロード数は3位から4位、ストリーミング数が5位から6位と全体的に下落傾向(You Tube再生回数が3位から圏外にダウンしているのですが、これは集計エラーでは?)となっています。ただ、これで通算11週目のベスト10ヒットに。一方、「夜に駆ける」は今週7位から6位に再びアップ。ただ、ダウンロード数は7位から6位にアップしているのですが、ストリーミング数は4位から5位、You Tube再生回数も5位から6位にダウンしています。なお、これでベスト10ヒットは連続50週目となりました。

5位はAdo「うっせぇわ」が先週の3位から2ランクダウン。ダウンロードが4位から8位、ストリーミング数が6位から8位、You Tube再生回数も1位から3位と全体的に下落傾向。これで12週連続のベスト10ヒットなのですが、これで落ちてしまうのか、もうひと踏ん張りがあるのか気にかかるところ。インパクトが強い曲なだけに、逆に早い段階で飽きられやすいのでしょうか?

そして今週9位のAwesome City Club「勿忘」が、今週見事に8週目のベスト10ヒットとなりました。映画「花束みたいな恋をした」のインスパイアソングとして話題となり、ヒットとなったこの曲。ただ、3月10日付チャートの5位を最高位に、ロングヒットは続けているものの、もう一歩、YOASOBIやBTS、「うっせぇわ」、「ドライフラワー」の壁を越えられず、ここに来て6位→8位→9位とじり貧気味となっています。ストリーミング数4位ながらもYou Tube再生回数は13位と、もうちょっと上位に食い込んでほしいところ。ただダウンロード数が今週16位から10位にアップしています。来週以降は上位を狙えるか、それともこのまま落ちて行ってしまうのか・・・今後の動向に注目です。

さらにこちらもなかなか上位に食い込めないEve「廻廻奇譚」が先週の9位からワンランクダウンで10位にランクイン。こちらもダウンロード数は5位から7位、ストリーミング数は9位から10位、You Tube再生回数は4位から5位と、下落傾向。ただ、これで通算10週目のベスト10ヒットとなりました。来週こそ、さらに上位を狙えるのでしょうか。

そして今週、ついにLiSA「炎」が10位から12位にダウン。ベスト10ヒットは連続23週でストップとなりました。とりあえず鬼滅の刃がらみのヒットもひと段落といった感じでしょうか。

今週のHot100は以上。明日はHot Albums!

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2021年4月 6日 (火)

「勿忘」は撒き餌??

Title:Grower
Musician:Awesome City Club

映画「花束みたいな恋をした」のインスパイアソング「勿忘」(わすれな)がヒットを記録。一躍注目を集めているバンド、Awesome City Club。本作は、その「勿忘」が1曲目に収録されている彼らにとって3枚目となるオリジナルアルバムとなります。以前から注目を集めてきたバンドで、本サイトでも基本的にアルバム毎に紹介してきました。そんな以前から注目してきたバンドがこういう形で売れるというのはうれしい限り。もっともっと知名度が上がればいいのですが。

ただ、「勿忘」のヒットはうれしいのですが、正直、この曲がAwesome City Clubというバンドを象徴するような曲かと言われると微妙な感じ。男女ツインボーカルを上手くいかした構成は彼ららしく、AORの要素もふんだんに入ってはいるのですが、バンドサウンドで分厚く、スケール感を持たせつつ、わかりやすいポップなメロが流れる構成は、良くも悪くも「売れ筋のJ-POP」というイメージは否めず、ヒットしている曲なだけに、もちろん駄作ではないのですが、Awesome City Clubとしてはもっと良い曲も作っているのでは??という疑問も抱いてしまいます。

実際、その疑問は2曲目以降で解消していきました。2曲目「tamayura」はメロウなAORチューン。爽快なエレピやシンセの音色も心地よいポップナンバーに仕上がっていますし、「Nothing on my mind」もメロウなソウルチューンになっていますし、ラストの「夜汽車は走る」もアコギを入れてメロウな歌声が魅力的なナンバー。良くも悪くも「売れ筋のJ-POP」寄りの「勿忘」に比べると、いままでの彼らと同様、グッとAOR色を取り入れた作風になっていました。

ただ、今回のアルバムでは、いままでの彼らとは異なる傾向も見れました。それは、いままで、Awesome City Clubというと、シンセを入れたリズミカルなポップチューンがメインになっていたのですが、本作では、上記のように、むしろメロウに聴かせる楽曲が目立ちます。「Sing out loud,Bring it down」や、PESが参加してラップを聴かせる「湾岸で会いましょう」のようなリズミカルな楽曲もあるのですが、全体的には少なめ。むしろメロウに聴かせるソウルなナンバーが目立ち、彼らの新たな側面を感じさせるアルバムになっていました。

ある意味、J-POP的で分かりやすい「勿忘」をあえて1曲目に配し、2曲目以降は彼らの本領を発揮したようなAORナンバーが続いていく構成は、「勿忘」で彼らのことを知ったリスナーを、1曲目で釣り上げ、2曲目以降を無理やり聴かせる、要するに「勿忘」が一種の撒き餌のようになっているアルバムにも感じました。以前の彼らの曲に感じていたバリエーションの不足は本作で一気に解消された点、大きな一歩だった半面、「勿忘」に比べると、2曲目以降はもうちょっとインパクトも欲しかったかな、とも思える曲調だったのは少々残念。とはいえ、「勿忘」のヒットで知名度もあがり、またバラエティーの増した楽曲に彼らの成長も感じさせるアルバムだったと思います。これからさらにヒットが続き、彼らの知名度もあがっていくのでしょうか?それにつれてこのアルバムも順位を上げていくのか??どれだけヒットしていくのか、とても楽しみです。

評価:★★★★

Awesome City Club 過去の作品
Awesome City Club BEST
Torso
Catch The One
Grow apart


ほかに聴いたアルバム

NATURAL/YUI

2012年にYUIとしての活動を終了し、その後はロックバンドFLOWER FLOWERのメンバーとして活動を続けてきた彼女。しかし昨年、YUIとしての活動を再始動し、メジャーデビュー15周年を迎えた今年、セルフカバーミニアルバムである本作をリリースしました。過去の彼女のヒット曲をカバーした本作。FLOWER FLOWERのメンバーと共にリアレンジした作品になっているそうですが、印象的にはオリジナルから大きな変化はありません。ただ、大人になった彼女のボーカルからは、一種の余裕のようなものが感じられ、いい意味での安定感が生まれているように感じます。新生YUIの第1歩と感じられる作品でした。

評価:★★★★

YUI 過去の作品
I LOVED YESTERDAY
HOLIDAYS IN THE SUN
HOW CRAZY YOUR LOVE
GREEN GARDEN POP
ORANGE GARDEN POP

IT'S ALL ME - Vol.2/AI

昨年7月にリリースした「IT'S ALL ME」の第2弾となるミニアルバム。バラエティー豊かな音楽性でAIというミュージシャンを多角的に表現した前作同様、本作もトラップのリズムを取り入れた「Expectations」やピアノバラードの「HOPE」など、前作ほど多面的なジャンルを取り入れた、といった感じではないものの、十分すぎるほどバラエティー豊かな作品に仕上がっていました。ミニアルバムながらも、AIというミュージシャンを多面的にとらえた作品。このミニアルバムが次回作以降、どのように生かされるのか、楽しみです。

評価:★★★★

AI 過去の作品
DON'T STOP A.I.
VIVA A.I.
BEST A.I.
The Last A.I.
INDEPENDENT
MORIAGARO
THE BEST
THE FEAT.BEST
和と洋
感謝!!!!! Thank you for 20 years NEW&BEST
IT'S ALL ME - Vol.1

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2021年4月 5日 (月)

なんと、全英1位を獲得!

Title:As The Love Continues
Musician:MOGWAI

前作「Every Country's Sun」では全英チャートで6位を記録。バンド結成から26年というベテランバンドでありながら、過去最高位の順位を記録した彼ら。それから約3年半ぶりにリリースされたのが本作ですが、なんと彼ら初となる全英チャート1位を記録。いまとなった人気の面ではバンドとして最盛期を迎えている彼ら。正直、決してわかりやすいポップな楽曲を奏でるバンドではないだけに、この人気には驚きです。

特に日本では2001年の「Rock Action」あたりで最も注目を集めていただけに、ここに来てのブレイクというのは意外にすら感じられます。ただ本作を聴くと、確かに今、彼らは波にのっており、特に楽曲は、リスナーがMOGWAIに対して望んでいるサウンドに対してしっかりと応えられており、なおかつクオリティーの高い作品をしっかりと作ってきているといった印象を受けます。本作は、まさに「これぞMOGWAI!」と言いたくなるような、いい意味で実に彼ららしい作品に仕上がっていました。

まず1曲目「To the Bin My Friend, Tonight We Vacate Earth」。出だしはピアノで美しく聴かせ、途中からギターのノイズが入って徐々にダイナミズムさが増していく・・・もう、まさにMOGWAIらしく、リスナーの壺をつきまくるような構成が最高!続く「Here We, Here We, Here We Go Forever」もメランコリックなメロディーラインが心地よいですし、「Dry Fantasy」もドリーミーな雰囲気で美しく聴かせるサウンドが非常に気持ちの良い作品に仕上がっています。

そして前半の核となるのが先行配信曲になっていた「Ritchie Sacramento」。これ、坂本龍一を彼らの友人が言い間違えたことに由来した曲だそうで、疾走感あるギターロックの歌モノなのですが、ノイジーなギターにポップなメロとシューゲイザーの王道を行くようなナンバーとなっており、シューゲイザー好きにはたまらない作品になっています。

中盤以降はダイナミックなバンドサウンドを聴かせる作品が目立ち、「Drive The Nail」は静かにスタートしつつ、後半は力強いバンドサウンドを展開するという、これまた彼らの王道を行くようなナンバー。ノイジーなバンドサウンドにポップなメロディーラインがのり、これまたシューゲイザー好きにはたまらない「Ceiling Granny」、これまたMVが作られている「Pat Stains」もギターリフを主導にメロディアスなナンバーながらも中盤、ダイナミックなバンドサウンドが顔をのぞかせます。

終盤も「Supposedly, We Were Nightmares」もテンポよい明るいメロが楽しめるギターロックナンバーになっており、ラストは「It's What I Want to Do, Mum」もゆっくりメランコリックに聴かせるチルアウト的なナンバーで締めくくり。最後の最後までMOGWAIらしい楽曲が並ぶ、彼らの魅力を存分に味わえるアルバムになっています。

サウンド的には新しい挑戦といった感じではありませんし、いままでのアルバムも、基本的にMOGWAIは彼ららしい作品を多く作ってきました。ただ本作は、そんな中でも特にMOGWAIらしさにきちんと答えつつ、脂がのったともいえるインパクトのある作品をつくってきています。出来栄えはここ数作の中でも一番だと思いますし、それゆえに全英1位という快挙を成し遂げたのでしょう。ベテランの域に達しても、その勢いに衰えのない彼ら。まだまだ彼らの活躍は続きそうです。

評価:★★★★★

MOGWAI 過去の作品
The Hawk Is Howling
HARDCORE WILL NEVER DIE,BUT YOU WILL
Live at All Tomorrow's Parties,9th April 2000
Earth Division EP
Rave Tapes
Les Revenants
CENTRAL BELTERS
ATOMIC
Every Country's Sun
KIN


ほかに聴いたアルバム

Who Am I?/Pale Waves

前作「My Mind Makes Noises」が日本のメディアでも大きくプッシュされ、一躍注目を集めたイギリスのロックバンドの約2年5ヶ月ぶりとなるニューアルバム。前作で感じられた80年代、90年代的な要素を感じさせる、懐古感あるエレクトロサウンドは薄れ、ちょっとニューウェーヴ的ながらも、これといって特色のないシンセロックになってしまった感が。それなりにポップで楽しく聴かせる楽曲や、軽快なロックチューンなどが楽しめるアルバムではあるものの、Pale Wavesらしさはあまり感じませんでした。

評価:★★★

Pale Waves 過去の作品
My Mind Makes Noises

An Overview on Phenomenal Nature/Cassandra Jenkins

ニューヨーク州ブルックリンを拠点に活躍する女性シンガーソングライターによる2枚目のアルバム。ウィスパー気味のボーカルでしんみりメロディアスに聴かせるポップスがメイン。フォークやブルーズ、ジャズなどの要素を加え、暖かくアコースティックなサウンドと、それにマッチした彼女のボーカルが魅力的な1枚。非常に心地よく聴ける良質なポップスアルバムでした。

評価:★★★★★

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2021年4月 4日 (日)

ボーカリストあべまの実力がわかるカバーアルバム

Title:MY INNER CHILD MUSEUM
Musician:阿部真央

シンガーソングライター阿部真央の初となるカバーアルバム。タイトルからも想像つく通り、彼女が幼少期から親しんできた楽曲をカバーした作品・・・・・・はいいんですが、楽曲のタイプはかなりバラバラ。SIAの「Alive」や宇多田ヒカルの「SAKURAドロップス」はわかりやすいのですが、「ロマンスの神様」「津軽海峡・冬景色」「もののけ姫」まで収録されていますし、さらには「千本桜」とか、本当に「幼少期から親しんできた」の??なんか、「千本桜」の選曲って、ネットユーザー層にいかにも媚びた感じの選曲に感じてしまうのですが・・・。

なんて感じで聴き始めた今回のカバーアルバム。それだけにネガティブな印象の中で聴きはじめたのですが、これが予想以上に良いカバーアルバムに仕上がっていました。その最大の理由は、ボーカリストとしての阿部真央の実力。それこそJ-POPからボカロ系、洋楽から演歌まで様々なジャンルを網羅した今回のカバーアルバムですが、そのバラエティー富んだ曲を易々と歌い上げています。

SIAの「Alive」では英語を上手く感情を込めて歌いこなし、かと思えば和風なメロとサウンドの「千本桜」は、和風なドスを効かせたようなボーカルで歌い上げます。「SAKURAドロップス」も伸びやかな歌声は宇多田ヒカルに負けていませんし、「奏」も暖かさを感じるボーカルに涙腺が熱くなるカバーに仕上げています。

「もののけ姫」も、米良美一がカウンターテナーの歌声で力強く聴かせる難曲なのですが、こちらもハイトーンボイスで見事に歌いこなしています。「津軽海峡・冬景色」も石川さゆりのこぶしを効かせた力強いボーカルと比較されてしまう難しいカバーだと思うのですが、こちらも正直、石川さゆりを向こうにまわしても決して負けていない、こぶしを効かせたボーカルを聴かせてくれています。「ロマンスの神様」も広瀬香美のハイトーンボイスを易々を乗り越え、伸びのあるボーカルをしっかりと聴かせてくれていました。

基本的には彼女が慣れ親しんできた曲のカバーだけに、原曲を大きく逸脱するようなカバーはありませんでしたが、一方でしっかりと阿部真央のボーカリストとしての魅力を伝えているカバーになっていました。なにより、彼女のオリジナルではそこまで感じなかった彼女の歌の上手さと表現力の幅広さに驚かされました。さらに洋楽からJ-POP、演歌やクラシック、男性ボーカル曲まで自在に歌いこなす器用さも見事。阿部真央というと、初期の作品は、曲調があまりに統一感がなく、個人的にはそれが大きなマイナスポイントとなっていたのですが、確かにこれだけ器用に、様々な曲を歌いこなすボーカリストとしての実力があれば、様々なタイプの曲に挑戦したくなるのはわかるような気がします。いまさらながら、初期の彼女が、なぜあれだけ曲調がバラバラだったのか、理解できるような気がしました(それが良いとはいいませんが)。

そんな訳で、ボーカリストあべまの実力がよく出ているカバーアルバム。なにげにカバーシンガーとしても魅力的なだけに、第2弾、第3弾も聴きたいかも。阿部真央のあらたな魅力に触れることの出来る1枚でした。

評価:★★★★★

阿部真央 過去の作品
ポっぷ
シングルコレクション19-24
おっぱじめ
Babe.
YOU
阿部真央ベスト
まだいけます

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2021年4月 3日 (土)

コロナ禍の中で生まれた曲たち

Title:クチナシ
Musician:Cocco

新型コロナウイルス蔓延で非常事態宣言が発令され、外出自粛要請という事態となった昨年の春。ライブも中止となり、好む好まないに関わらず、家に待機する必要が生じてしまったミュージシャンたち。そんな中で、やはり彼ら/彼女たちが行ったのは曲をつくること、でした。日本に関わらず海外でも、ロックダウンとなってライブも中止となったミュージシャンたちが、当初は意図しない形で曲づくりを行いリリースされたアルバムが、昨年から誕生しています。

今回、約1年4ヶ月ぶりとなるCoccoのニューアルバムも、まさにそんな外出自粛要請が出されている中で生み出された1枚と言えるでしょう。もともと、外出自粛要請期間にTwitterやYou Tubeなどに投稿された「おうちdemoトラック」の曲を完成させ、多く収録された今回のアルバムは、ひょっとしたら「コロナ禍の副産物」とも言えるアルバムかもしれません。

そうやって生み出された今回のアルバムですが、大きな特徴として、とにかく曲調のバリエーションが非常に多いという点があげられるでしょう。イントロを挟んで事実上の1曲目となる「女一代宵の内」は、爽やかさも感じられる伸びやかなナンバーですが、ストリングスやホーンセッションなどを入れて、非常にダイナミックなサウンドでスケール感を覚える曲からスタート。続く「Supernova」はヘヴィーなギターのメタリックなインストからスタートするものの、曲がはじまるとピアノをバックに美しい歌声を聴かせるという、ある意味、Coccoらしさを感じる楽曲となっています。

そして、バラエティー富んだ曲調となるのはここから。続く「悲しい微熱」はムーディーなラテン歌謡。「花咲か仁慈」は沖縄の三線の音色を入れつつ、壮大なサウンドが特徴的な楽曲に。「ダンシャリアン」もヘヴィーなギターで醸し出す怪しげなサウンドが特徴的。「青葉」に至っては、ピアノ1本の演奏に合唱団の歌をバックに歌い上げる合唱曲になっていますし、「想い事」はシンプルな演奏の沖縄民謡に仕上げています。Coccoのイメージとはちょっと異なるような雰囲気の曲まで入っており、見方によっては暴走気味ともとらえられるかもしれません。

ただ、それだけバラエティー富んだ作風ながらも、一方ではアルバム全体としては、ある意味「Coccoらしい」とも言えるようなヘヴィーなバンドサウンドをバックに力強く歌い上げるような楽曲や、ストリングスなどの音を入れて爽快に歌い上げるタイプの曲が目立ちます。冒頭の「Supernova」を筆頭に、「アイドル」もシンプルでヘヴィーなギターサウンドをバックに力強く歌い上げるスタイル。「潮満ちぬ」も、分厚い爽快なサウンドで歌い上げるタイプの楽曲。「Rockstar」はタイトル通り、ヘヴィーなギターリフでゴリゴリに押してくるハードロックのナンバーになっていますし、ラストを締めくくる「真白の帆」もダイナミックなサウンドで壮大さを感じる楽曲に仕上がっています。

Coccoらしい楽曲をしっかりと踏まえて楽曲を作った上で、そのほかのバラエティー富んだ作品を組み込んできたようなアルバムになっています。そのため、アルバム全体としては、バラエティー富んだ作風にも関わらず、聴いた後、Coccoらしい作品だったな、と思うような内容となっており、既に「ベテラン」とも言える領域に入った彼女ですが、いい意味での安定感も覚える作品になっていました。

思えば初期のCoccoといえば、エッジの効いたサウンドで感情的に歌い上げるだけに、楽曲はかなり危うげで、でもその緊張感があるからこそ、とんでもない傑作が生まれてきました。デビューから20年以上が経過した今、さすがにその「危うげ」な雰囲気はありません。自分の思うがままに暴走している感すらあった初期に比べると、今回のアルバムも、ある種Coccoらしさを自ら客観視できている、安定感があります。今回のアルバムは、いままでのCoccoとは違うタイプの曲を、Coccoらしい曲に上手く組み合わせた構成になっているがゆえに、Coccoが自らのことをしっかりと客観視できるようになった、ある意味ベテランシンガーらしい安定感のあるアルバムだったように思います。

それだけに、昔のような、暴走気味の危うさを兼ね備えたとんでもない傑作、といった感じではないのですが、一方でファンなら聴いていて安心できるような良作に仕上がっていたのは間違いありません。今のCoccoだからこそ生み出せたアルバムと言ってもいいかもしれません。いい意味で安心してCoccoらしさを味わうと同時に、ほどよく彼女の挑戦も楽しむことが出来る、そんな作品でした。

評価:★★★★★

Cocco 過去の作品
エメラルド
ザ・ベスト盤
パ・ド・プレ
プランC
アダンバレエ
20周年リクエストベスト+レアトラックス
Cocco 20周年記念Special Live at 日本武道館 2days~一の巻x二の巻~
スターシャンク

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«大滝詠一からの影響が顕著だが