2025年を代表するHIP HOPアルバム2枚
数か月前、HIP HOPの年刊誌「ele-king presents HIP HOP 2025-26」を紹介しました。今回は、ちょっと遅くなってしまいましたが、同誌で紹介されていた1位2位にランキングされていたアルバムの紹介です。
Title:BLACK'!ANTIQUE
Musician:Pink Siifu
まず年間1位にランクインされていたアルバム。アラバマ州バーミングハム出身のラッパー、Pink Siifuのアルバム。様々なジャンルを取り入れた実験的なHIP HOPが特徴的で、現代のHIP HOPの重要人物として高い評価を受けるラッパーだそうです。
「ele-king presents HIP HOP 2025-26」では、アンダーグラウンドHIP HOPを特集しており、その中でも彼は取り上げられていたのですが、確かに本作はPink Siifuの様々なアイディアを内包した、実験性の高い作品に仕上がっています。特に序盤はインダストリアル色の強いサウンドが特徴的。ヘヴィーでノイジーなタイトルチューンの「BLACK'!ANTIQUE」から、狂暴なノイズの炸裂する「ALIVE&DIRECT'!」など、前半のサウンドについては、むしろロックリスナーの方が親和性が高いのではないか、と思うようなヘヴィーなサウンドの曲が並びます。
一方後半は、「U.ALREADY'!」「OUTSIDE'!」など、メロウなトラップビートの曲が並び、こちらは今風のHIP HOPといった感じ。かと思えば「TRANSLATION'!」ではラテンのサウンドを取り入れたり、「FACECARD'!」のようなシンプルなエレクトロトラックで実験性の強い楽曲もあったり、「8)」のようなドリーミーな作品があったりと、楽曲ごとにPink Siifuの様々なアイディアがつまった展開となっており、最後まで耳を離せないアルバムとなっています。
全19曲1時間17分。アルバムとしてはちょっと長い作品になっており、様々なアイディアの詰まった作品の連続は、ちょっと散漫さも感じる点は否定できないのですが、一方では次々と繰り広げられる楽曲の数々に最後まで耳の離せない作品、とも言えるかと思います。年間1位という高い評価も納得のアルバムでした。
評価:★★★★★
Title:Life Is Beautiful
Musician:Larry June,2 Chainz&The Alchemist
こちらは同誌で年間2位にランクインしていたアルバム。サンフランシスコ出身のラッパー、Larry Juneとサウスのトラップ・ラッパーとして知られる2 Chainz、さらにプロデューサーのThe Alchemistが組んだアルバムです。
基本的に特にThe Alchemistのサウンドメイキングが聴いていてとても心地よい作品となっていました。非常に滑らかで、メロウなトラックが魅力的。Larry Juneのラップは、どこか力の抜けたようなフロウが印象的で、力強さのある2 Chainzのラップとは対照的。いわば異なるスタイルの2人のラッパーの対比が特徴的なのですが、ただ全体的にはメロウなトラックも合わさり、脱力感のある楽曲が特徴的。ある意味「大人なHIP HOPのアルバム」と言ってもいいような作品に仕上がっています。
The Alchemistのトラックや、Larry Juneのラップによって、トータルとして聴くと正直、あまり派手さはなく、淡々と展開していく作品となっていますが、心地よいトラックやフロウが合わさり、ずっと聴いていたくなるような、そんな心地よさを感じるアルバムになっていました。年間2位ということですが、そういう「今年を代表するアルバム!」と高らかに謳うような作品とはちょっと違うような感じはするのですが、ついつい聴きたくなるような、いわば「ベストアルバムの次の1枚」として選びそうな、そんな作品だったと思います。
評価:★★★★★
The Alchemist 過去の作品
The Elephant Man's Bones(Roc Marciano&The Alchemist)
さて、そんな2025年度の1位2位に選ばれたHIP HOPのアルバムを紹介しましたが、この2枚を聴いて感じるのは、確かにHIP HOPシーンが現在、停滞気味である理由がなんとなくわかるような気がしました。いや、この2枚が駄作、という訳ではありません。どちらも文句なしの傑作アルバムだと思います。ただ、いままで次から次へと新しいスタイルが登場し、シーンを切り開いていったHIP HOPというジャンルにおいて、この2枚はいずれも「2025年ならでは」という印象はありません。一時期、シーンを席巻したトラップも完全に飽きられた感もありますし、それに続くあたらしいHIP HOPのスタイルも正直、出てきているように感じません。このままHIP HOPは、過去に隆盛を誇った他のジャンルの末路と同様、「過去のジャンル」となってしまうのか、それとも巻き返しにはかるのか・・・。ジャンルとして岐路に立っているようにも感じます。今後のシーンの動向に注目していきたいところです。








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