2019年8月19日 (月)

ブルースロック色がより強く

Title:NEW LOVE
Musician:B'z

先日、BUMP OF CHICKENのアルバム評の中で「BUMP OF CHICKENというバンドが何を求められているのか、メンバーがしっかりと理解しており、そしてそれにしっかりと答えることが出来た」ということを書きました。ミュージシャンとして長年活動を続け、さらに一定以上の人気を保持し続ける一番の秘訣は、この「ファンが自分たちに何を求めているかわかっており、かつそれにしっかりと答えられる」ということだと思うのですが、その点、おそらく良くも悪くもそういうことが出来る日本で一番のミュージシャンのひとつが間違いなくB'zではないでしょうか。昨年でデビュー30周年。いわば「大いなるマンネリ」な部分は否定できないのですが、長年、高い人気を保持し続ける大きな理由のひとつが、ファンがB'zに何を求めているのか、メンバーがよくわかっており、かつそれにしっかりと答えているというのが大きな要因であるのは間違いないでしょう。

今回、約1年半ぶりとなる新作なのですが、まず1曲目「マイニューラヴ」からギターリフを中心に構成されているハードロックテイストの強いナンバー。ある意味、リスナーがB'zに求めている「ロック」な部分を体現化したような楽曲からのスタートにリスナーはグッと惹きつけられます。

本作では比較的、このギターリフを主導としたハードなロックチューンが目立つ作品になっており、その後も「デウス」やへヴィーなサウンドが目立つ「Da La Da Da」など外連味なくロックなサウンドを聴かせる楽曲が目立ちます。ここらへん、下手なバンドだと中途半端に打ち込みを入れてきたり、下手に違うスタイルを目指そうとするのですが、B'zの場合は、ファンキーなリズムを入れたりホーンセッションを入れたりとそれなりに「色」をつけてくるのですが、コアの部分ではしっかりとB'zとして求められる要素を抑えており、聴いているリスナーを安心させます。ここらへん、彼らの非常に巧みな部分であるように感じます。

一方、もうひとつB'zらしさを感じさせるのはへヴィーなハードロック路線に反して意外と親しみやすく、かつ「歌謡曲」的であるメロディーライン。そこも今回のアルバムでもしっかりと抑えられています。例えば「兵、走る」もハードロック調のアレンジと反してメロディーはポップでわかりやすく、かつ前向きな歌詞が印象的ですし、「俺よカルマを生きろ」なども歌詞もメロディーも「歌謡曲」調な仕上がりとなっています。ここらへん、良くも悪くもJ-POP的であり、いわば「良心的なロックリスナー」からB'zが敬遠される要素のひとつではあるのですが、ただ一方では多くのリスナーに支持される大きな要因であるのも事実。そういうファンが彼らに求める要素を本作でもしっかりと抑えています。

ただ、そんな中でも今回のアルバムはタイトルの「NEW LOVE」が「自分たちが好きな音楽をやってますという気分をタイトルにした」と語っているように、比較的、彼らの作品の中では好き勝手に演った感の強いアルバムに仕上がっています。前作「DINOSAUR」もハードロック志向の強い作品になっていましたが、今回の作品はさらにハードロック寄り、もっといえばブルースロック寄りとなっておりサウンド的には泥臭さも感じます。あまり売れ筋を意識していないという意味とサウンドの方向性という意味では1994年の「The 7th Blues」に似たようなタイプの作品にも感じました。

しかし残念だったのは前作「DINOSAUR」でもメロディーのインパクトが薄いように感じたのですが、その傾向は今回の作品にも引き継いでしまいました。また、その結果でもあるのですが、全体的には終盤になるにつれて少々失速気味。最初は気持ちよく聴けていても、全55分というアルバムの長さとしてはちょうどよい長さではあるものの、終盤の方はちょっとダレてしまいました。そこらへん、やはりかつての勢いはなくなってしまったのかなぁ、ということも感じてしまった作品。ただ、最初から書いている通り、良くも悪くもB'zらしいアルバムではあるので、ファンなら安心して気持ちよく聴けるアルバムだったと思います。なんだかんだいってもこのスタイルを30年以上続けられるというのは彼らのすごさでしょう。まだまだその人気は続いていきそうです。

評価:★★★★

B'z 過去の作品
ACTION
B'z The Best "ULTRA Pleasure"
B'z The Best "ULTRA Treasure"
MAGIC
C'mon
B'z-EP
B'z The Best XXV 1988-1998
B'z The Best XXV 1999-2012

EPIC DAY
DINOSAUR

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2019年8月18日 (日)

強い「癖」を感じさせるピアノ曲

Title:BEST of PIANISM
Musician:三柴理

今回紹介するのは、ピアニスト三柴理のベストアルバム。三柴理・・・ロック好きならばその名前を何度も耳にする機会があるのでしょうか。もともとは筋肉少女帯で「三柴江戸蔵」としてメジャーデビュー。その後、筋少は脱退するものの、ソロとして数多くのミュージシャンとコラボを行い、また2000年からは筋少で一緒だった大槻ケンジと特撮を結成。最近ではくるりのアルバムにも多く参加しています。

個人的に彼は大好きなピアニストのひとり。身長180cmを超える巨漢でありながらも非常に繊細なピアノの音色を奏でつつ、そのメロディーは一種独特なもの。不協和音的に奏でられるメロディーをあえて入れてくるあたり、非常に大胆不敵であり、その繊細さと大胆さのミスマッチが彼のピアノの大きな魅力に感じます。

本作はそんな彼のキャリアを総括するようなソロ作のベストアルバム。自身が作曲したナンバーのみならず、筋少や特撮、クイーンやエマーソン・レイク&パーマーのカバーもおさめられています。もっともベスト盤といいつつ8曲までがこのベスト盤が初出だそうですので、オリジナルアルバム的にも楽しめる1枚となっています。

さて、三柴理の魅力はまず1曲目の「黎明第二稿」から存分に味わうことができます。本人作曲によるこのピアノ曲は大胆なピアノの演奏を聴かせてくれる一方、ダイナミックな演奏の中に流れるメロディーラインは繊細さも感じさせます。さらにこのピアノのフレーズも、単純に「美しい旋律」と言えない強い癖を感じられ、まさに三柴理の魅力を存分に感じられる作品になっています。

またアルバムの中で大きく印象に残るのが、本作が初出となるクイーンの「ボヘミアン・ラプソディー」のカバー。ダイナミックなサウンドと力強いフレディー・マーキュリーの歌が印象に残るナンバーなのですが、これをピアノ1本でカバー。ただ、楽曲の持つダイナミックな雰囲気はそのままに、一方ではまるで歌うような感情的なピアノの音色も強い印象に残るカバーに仕上げており、まさに三柴理の魅力がつまったカバーとなっています。

基本的には叙情感たっぷりに聴かせつつも一方では非常に癖の強いフレーズが頻発する、個性あふれる演奏が大きな魅力。ただ一方では音楽的なバリエーションも非常に広く、筋少のカバーである「サンフランシスコ」ではメタリックなサウンドに仕上げていますし、シルヴァノ・ブソッティの「友のための音楽」は現代音楽にも挑戦している楽曲。一方ではもともと国立音大に在籍したこともあるようにクラッシックの素養も兼ね備えたミュージシャンなだけにショパンの「雨だれ(Prelude Op.28 No.15)」も難なくこなしています。ただどの曲も三柴理らしい一癖を加えており、しっかりと彼の曲として仕上げてきている点も大きな魅力といえるでしょう。

美しいピアノ曲のアルバムながらも、そんな中に強烈な三柴理の個性を感じさせるアルバム。この世界感、かなり癖になりそう。それだけに多くのミュージシャンが彼のピアノの音色を取り入れるのでしょう。今後も、彼の名前はいろんな場所で見かけることになりそう。また次の彼のソロアルバムも楽しみです。

評価:★★★★★


ほかに聴いたアルバム

Epitaph/Koji Nakamura

いままでNYANTORAやiLL名義で活動を続けていた元スーパーカーのボーカリスト、ナカコーこと中村弘二の本名名義での2枚目となるアルバム。もともとはストリーミングサービスで制作過程を公表する「Epitaph」プロジェクトで作成された楽曲をまとめた作品。エレクトロサウンドの中にHIP HOPやインダストリアル的な要素など様々な音楽性を感じさせ、その実験性を感じさせます。ただ、その当時の彼の気分がそのまま収められたアルバムではあるのですが、意外と全体としてはまとまりのある「ちゃんとしたアルバム」に仕上がっているあたりが興味深いところ。全体的にはドリーミーな雰囲気の作風に仕上がっており、ナカコーの「今」を楽しめる作品に仕上がっていました。

評価:★★★★

Koji Nakamura 過去の作品
Masterpeace

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2019年8月17日 (土)

真っ暗闇の中で流れる音楽

あいちトリエンナーレ2019 サカナクション 暗闇-KURAYAMI-

日時 2019年8月8日(木) 会場 愛知県芸術劇場大ホール

いままでサマソニやフジロックでは見たことがあったのですが、ワンマンとしてははじめて足を運ぶサカナクションのワンマンライブ・・・なのですが、この日参加したライブはちょっと普通のライブとは色合いの異なるステージでした。今回のライブは愛知県で行われる現代芸術のイベント「あいちトリエンナーレ」の一環として行われたイベントで、「暗闇-KURAYAMI-」と題された今回のライブは会場全体を一切の光も通さない真っ暗闇として、その中で「音」を流す試み。サカナクションの楽曲は基本的に行わず、暗闇の中で音がどのように響いてくるのかを実験・体験するという、このイベント自体が「芸術作品」という試みだそうで、その内容に興味が沸き、ライブに足を運ぶことにしました。

Kurayami1

Kurayami2

会場はあいちトリエンナーレのメイン会場のひとつである愛知芸術文化センターの中にある愛知芸術劇場のメインホール。事前にこの日のためのパンフレットも配られます。

Kurayami3 Kurayami4Kurayami5

ステージ上では上に遠目ではよくわからなかったのですがおそらくラップトップが載せられたメンバーの数の分だけの黒い台が並べられただけのステージ。さらにそれを途中、黒子のような黒い服に顔にも黒い幕をつけたスタッフにより、台の上のラップトップを囲むような覆いがセットされます。また、会場にも黒子のような格好のスタッフが、通路毎に待機していました。

やがて開演予定時間を5分程度過ぎるとメンバーが登場してくるのですが、普通のライブで発生するような観客からの拍手が起こりません。観客はただひたすらこれからはじまることをかたずをのんで見守るという不思議な雰囲気でのスタートとなりました。

そして最初にスタートしたのは「プラクティス チューニング リズムのずれ」と題されたセッション。ここで会場は真っ暗闇に。5分程度、暗闇の中でチューニングの音やメトロノームが鳴り響く空間を体験します。ただここのセッションはメンバーというよりも観客にとっての肩慣らし。この「暗闇」という雰囲気で不安を感じた場合にはライブの参加を取りやめてもらうためのセッションで、実際、何人か会場を立ち去る方も見受けられました。

この「プラクティス」が終わると本編がスタート。「第一幕 Ame(C)」のスタートです。会場には雨の音や雷の音が流れますが、全くの真っ暗闇ではなく、時折、雨や雷の映像がステージ上に流れては暗闇となる展開に。そんな自然の音がただ流れるだけの展開から後半はリズミカルな4つ打ちの打ち込みのサウンドが暗闇の中で鳴り響くという不思議な展開へと続いていきます。

続く第二幕は「変容」と名付けられます。この日、唯一、サカナクションの曲が流れたのがこのセッションで「茶柱」と「ナイロンの糸」が演奏されます。会場も暗闇だけではなく曲にあわせた映像も流れますが、ただ、映像の合間には真っ暗となり、暗闇の中でおなじみのサカナクションの曲を聴くという体験となります。さらに「茶柱」の最中では会場にお茶がたてられ、お茶っ葉のいい匂いが会場に流れます。耳と鼻からのみ音楽を体験するという実験的な試みとなっていました。

第三幕は「響」と名付けられ、ここでずっと覆いに囲まれた黒い台の後ろで演奏していたメンバーがステージの前に出てきます。メンバーはそれぞれ鈴や太鼓などを持ち、それらの楽器をそれぞれが鳴らすというスタイルに。鈴が鳴らされた時は観客席に配置された「黒子」も持っていた鈴を鳴らし、会場全体が鈴の音色に包まれるという、少々神秘的な雰囲気が作り出されます。

そして最後の第四幕は「闇よ 行くよ」と題され、ここでは完全に暗転。真っ暗闇の中でギターやシンセ、ドラムスの音などの様々な音が鳴り響くという空間となりました。サカナクションの既存曲が流された第二幕を除き、基本的には「音」が奏でられたいままでと異なり、第四幕では完全な暗闇の中で非常に実験的な内容とはいえ「音楽」が流されており、おそらく彼らが一番やりたかったのはこの第四幕なのでしょう。

その全四幕からなるステージはほぼ1時間で終了。最後はステージの後ろの幕も明けられます。芸術劇場の舞台は奥行も非常に広く、メンバーはまず観客にお辞儀をした後、その広いステージの後ろの方に静かに去っていくというラストで会場の幕を下ろしました。

さすがに基本的に暗闇でのライブなので1時間程度が見る側としても限度なのでしょう。ライブとしては比較的短いステージだったと思います。ただ、「暗闇で音を奏でる」ということ自体が一種の「芸術作品」だった今回のライブ、会場には全く光が入らない真っ暗闇。そのため、暗い中で目が慣れても何も見えないという状況に。ただそんな中で奏でられる音が嫌でも全身全霊で受け止めざるを得ず、非常に普段のライブでは味わえない独特な体験をすることが出来ました。

全くの暗闇の中で音だけが流れてきただけに、ひとつひとつの音がとてもクリアに、かつそれぞれの音が意味を持つかのように耳に飛び込んできます。いわば神経を研ぎ澄まして音に聴き入るという状況を意図的に作り出し、それを観客が共有する状況。ある意味、すごい試みなのですが、そんな客席の雰囲気を含めてひとつの作品としてとても興味深く体験できたイベントだったと思います。

ちなみに同公演はこの日だけではなく全4日間、昼・夜2回公演の計7回(1日、昼公演がない日があるので)となっており、「同じ会場で4日間連続で実施することで初めて可能になる緻密な演出」とあるので、おそらく他の日はまた違った形での公演となったのでしょう。普段のライブでは経験できないとても不思議でおもしろいイベント。貴重な経験が出来たと感じると共に、今回のイベントが今後のサカナクションの活動にどのようにつながっていくのか、とても楽しみです。

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2019年8月16日 (金)

ピアノオンリーながらもバリエーション豊かに

数多くのCMソングや映画音楽を手掛けるミュージシャン、高木正勝。最近では細田守監督の作品をよく手掛け、昨年公開された「未来のミライ」の映画音楽でも話題となりました。そんな彼が昨年から今年にかけて2枚のピアノアルバムをリリースしました。

Title:Marginalia
Musician:高木正勝

紹介するのがちょっと遅くなってしまいましたが、昨年11月にリリースされたピアノアルバムの第1弾。そして・・・

Title:MarginaliaⅡ
Musician:高木正勝

そして、こちらが前作に続けて今年リリースされた第2弾となります。楽曲はすべてピアノオンリーのサウンドであり、曲によっては女性の美しいコーラスが入ってきたりもします。彼の前作「かがやき」では京都の山村にて自然の音を取り入れたサウンドが特徴的だったのですが、今回のアルバムに関してもフィールドレコーディングを実施。ピアノの音色に自然の音が混ざった音の世界が繰り広げられています。

タイトルはいずれも「Marginalia」とつけられた上で「#+番号」で区別されています。基本的に小さい数字から順番に並べられているものの番号的には飛び飛びになっており、かつ「Marginalia」で飛ばされた番号が「MarginaliaⅡ」に収録されていたりします。おそらく、「#1」から順番に作っていき、イメージに合うものを曲の雰囲気に合わせて「Marrginalia」と「MargginaliaⅡ」に振り分けたということろではないでしょうか。

楽曲的にはいずれもシンプルなメロディーを聴かせてくれる曲ばかりで、いわば「現代音楽」のような聴き手を選ぶような曲はありません。いずれもピアノのみの曲ではあるものの、バリエーションは様々であり聴き手を飽きさせません。例えば「#1」はミニマル的な曲の構成が耳を惹きますし、「#3」はピアノの2つの音が寄り添ったり離れたりして展開していくユニークかつ可愛らしさを感じる曲。「#23」では女性の歌が入るのですが、この歌が何語なのか不明な言語。優しい雰囲気の曲なのですが、このボーカルのため不思議な感触のする曲となっています。

「Ⅱ」の収録曲の方でもピアノの早弾きで清涼感を覚える「#17」や女性のハイトーンボイスが加わり、どこか幻想的な雰囲気となっている「#35」、ループするようなサウンドが特徴的な「#13」や哀愁漂うメロディーが心に残る「#39」など、演奏はピアノのみにも関わらず、実に様々なタイプの楽曲が並んでおり、2作とも70分を超えるボリュームながらもリスナーを飽きさせません。

そんな訳で幅広い方にアピールできる傑作アルバムであることは間違いないのですが・・・このアルバムのもうひとつの狙いである「フィールドレコーディング」という側面からすると、ちょっと物足りなさも感じてしまう部分はありました。まず1作目の「Marginalia」に関しては、正直、ほとんど自然の音が入った曲はありません。鳥の声が効果的に入った「#8」や虫の声が入った「#23」あたりくらいでしょうか。一方、「MarginaliaⅡ」に関しては自然の音が積極的に取り入れられています。ただ、「#44」「#43」のように自然の音が効果的に用いられている曲もあるのですが、正直、それ以外の曲に関してはピアノが鳴っている後ろで、そういえば外の音が聞こえるような・・・という程度。あまり自然の音をうまく取り込んだ、という印象は受けませんでした。

ここらへんは若干、なんでだろう?と思う部分もあるのですが、ただそこの狙いは別として純粋にピアノ曲のアルバムとしては非常に良くできた傑作アルバムであることは間違いありません。その美しいピアノの響きとメロディーに最初から最後まで聴き惚れる内容で、高木正勝の実力を存分に感じる傑作になっています。基本的に小難しい部分はないため、広い層にお勧めできる作品。特に細田守監督の映画を見て「音楽がいいな」と思った方には無条件でお勧めできるアルバムです。その美しいピアノの世界に酔いしれてほしい作品です。

評価:どちらも★★★★★

高木正勝 過去の作品
Tai Rei Tei Rio
TO NA RI(原田郁子+高木正勝)
おむすひ
かがやき

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2019年8月15日 (木)

新人アイドルグループがいきなりの1位獲得

今週のHot Albums

http://www.billboard-japan.com/chart_insight/

今週のHot Albumsは新人アイドルグループがいきなり1位を獲得しました。

今週1位初登場は女性アイドルグループ26時のマスカレイド「ちゅるサマ!」が獲得。CD販売数1位、ダウンロード数4位で総合順位も1位獲得となりました。26時のマスカレイドは本作がアルバムデビューとなる5人組の女性アイドルグループ。読モBOYS&GIRLSとファッション誌Zipperの合同オーディション企画から誕生したグループだそうで、メンバーのうち半数は読者モデルとして活躍していたそうです。ちなみにここで出てくる「読モBOYS&GIRLS」、いろいろと話題になっているようですが、ネットで調べてもいまひとつ的を射ない説明ばかりで、どんな「集団」なのかいまひとつ不明・・・どうもいろいろとみていくと、読者モデルの集団で、ネットメディアなどを中心に情報を発信していくプロジェクトのようですが・・・。ここらへん、アイドル的な人気に加えて、読者モデルとしての中高生あたりからの人気が今回のいきなりの1位獲得の要因でしょうか。ちなみにオリコン週間アルバムランキングでも初動売上3万6千枚で1位獲得となっています。

2位はジャニーズ系。A.B.C.-Z「Going with Zephyr」がランクインです。CD販売数3位、PCによるCD読取数では9位に留まりましたが、総合順位はこの位置に。オリコンでは初動売上3万3千枚で2位初登場。前作「VS 5」(4位)から横バイ。

3位はRADWIMPS「天気の子」が先週からワンランクダウンながらもベスト3をキープ。CD販売数は8位にダウンしましたが、ダウンロード数及びPCによるCD読取数では見事1位を獲得しています。

続いて4位以下の初登場盤です。まず4位には韓国の男性アイドルグループWINNER「WE」がランクイン。CD販売数では2位を獲得しましたが、ダウンロード数及びPCによるCD読取数が圏外となり、総合順位では4位に留まりました。オリコンでは初動売上2万4千枚で4位初登場。前作「EVERYD4Y」の1万5千枚(5位)からアップ。

続く5位には森口博子「GUNDAM SONG COVERS」が初登場。CD販売数4位、PCによるCD読取数13位。森口博子といえば、ここ最近ではあまりその名前を聞かなくなってしまいましたが、90年代には「バラエティーアイドル」として一世を風靡したタレント。ただ一方で1985年にリリースしたデビューシングル「水の星へ愛をこめて」がアニメ「機動戦士Zガンダム」のオープニングテーマとなったり、1991年にリリースしたシングル「ETERNAL WIND〜ほほえみは光る風の中〜」が映画「機動戦士ガンダムF91」のテーマ曲として起用され大ヒットを記録したりと、ガンダムシリーズとはシンガーとして縁の深い間柄にあり、なおかつその歌唱力には高い定評があり、歌手としても高い評価を得ています。そんな彼女がガンダム関連の楽曲をカバーしたのが本作。自身の楽曲はもちろん、「RE:I AM」といった比較的最近の曲もカバー。ガンダムファンの間では彼女の歌手としての評価が高いこともあり、見事ベスト10ヒットを記録しました。オリコンでも初動売上2万5千枚で3位初登場。ちなみに彼女のアルバムは、直近作は2013年のベスト盤「森口博子 パーフェクト・ベスト」以来。同作は最高位222位だったようですので、今回のアルバムはまさに彼女としては異例の大ヒット。彼女のアルバムでのベスト10入りは1991年のベストアルバム「ETERNAL SONGS」以来、28年ぶりという快挙となりました。

6位初登場は四ノ宮那月(谷山紀章) 「うたの☆プリンスさまっ♪ソロベストアルバム 四ノ宮那月『SUKI×SUKIはなまる! 』」。女性向け恋愛ゲーム「うたの☆プリンスさまっ♪」登場キャラクターによるソロベストアルバム。CD販売数5位、PCによるCD読取数21位。オリコンでは初動売上2万1千枚で5位初登場。同シリーズの前作、聖川真斗(鈴村健一)「うたの☆プリンスさまっ♪ソロベストアルバム聖川真斗『HOLY KNIGHT』」の2万2千枚(6位)から微減。

8位には奇抜なお面をかぶったスタイルがインパクト大のアメリカのヘヴィーメタルバンド、slipknot「We Are Not Your Kind」がランクイン。CD販売数9位、ダウンロード数3位、PCによるCD読取数41位。オリコンでは初動売上9千枚で9位初登場。前作「5:The Gray Chapter」の1万7千枚(1位)よりダウン。

初登場組は以上。一方、ロングヒット組ではのベストアルバム「5×20 All the BEST!! 1999-2019」。今週で7週目のベスト10ヒットに。ただし順位は今週は4位から7位にダウンしています。

今週のHot Albumsは以上。チャート評はまた来週の水曜日に!

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2019年8月14日 (水)

アイドル勢を下し、三代目が1位獲得

今週のHot100

http://www.billboard-japan.com/chart_insight/

まあ、三代目J Soul Brothersもアイドルの括りと言われればそうかもしれませんが・・・

まず今週1位を獲得したのは三代目J Soul Brothers from EXILE TRIBE「SCARLET feat.Afrojack」。先週の22位からCDリリースにあわせてランクアップし、1位獲得となりました。David Guettaをプロデュースしたことでも知られるオランダのプロデューサー、Giorgio Tuinfortと、同じくオランダのプロデューサーAfrojackの共同プロデュースによるEDMナンバー。正直、若干「今更」感のある音ではあるのですが・・・。CD販売数は2位でしたが、ダウンロード数14位、ストリーミング数10位、PCによるCD読取数2位、Twitterつぶやき数7位など上位にランクイン。その他、ラジオオンエア数は58位、You Tube再生回数は35位に留まりましたが、総合順位では見事1位を獲得しました。オリコン週間シングルランキングでは初動売上6万2千枚で2位初登場。前作「Yes we are」の6万6千枚(2位)からダウンしています。

2位にはBEYOOOOONDS「眼鏡の男の子」がランクイン。これがデビュー作となるハロプロ系の新人女性アイドルグループ。CD販売数はこちらが1位でしたが、ダウンロード数30位、PCによるCD読取数11位、Twitterつぶやき数18位で、その他の順位は圏外と奮わず。総合順位では2位に留まりました。オリコンでも初動売上9万9千枚でこちらが1位を獲得しており、Hot100とは1位が異なる結果となりました。

3位には先週2位だったOfficial髭男dism「Pretender」がワンランクダウンながらもベスト3をキープ。ストリーミング数は今週で12週連続の1位、ダウンロード数も6位から5位にアップ。残念ながらYou Tube再生回数は2位から3位にダウンしたものの、まだまだ圧倒的な強さを感じます。さらに今週は「宿命」も7位から4位に大きくランクアップ。ダウンロード数が10位から4位に、ストリーミング数も5位から2位にアップ。先週に続く2曲同時ランクインとなりました。

続いて4位以下の初登場曲です。まず6位に東京スカパラダイスオーケストラ「リボン feat.桜井和寿(Mr.Children)」が先週の82位からCDリリースに合わせてランクアップ。CD販売数、ダウンロード数及びPCによるCD読取数がいずれも7位、ラジオオンエア数は1位を獲得。桜井和寿のボーカルがやはり耳に行くポップチューンなのですが、軽快なスカのリズムにスカパラらしさを感じる曲。桜井のボーカルは強い個性を持っているにも関わらず、ミスチルっぽい感じにはならず、しっかりとスカパラの色を出しているのはさすがです。オリコンでは初動売上1万9千枚で5位初登場。前作「明日以外すべて燃やせ feat.宮本浩次」の9千枚(12位)から大きくアップ。ここらへんはさすがミスチル桜井の人気の高さを感じる結果となりました。

7位にはDA PUMP「P.A.R.T.Y. 〜ユニバース・フェスティバル〜」が先週の38位からCDリリースに合わせてランクアップ。ベスト10入りを果たしています。ただしCD販売数は4位、PCによるCD読取数は5位を獲得しましたが、ダウンロード数及びTwitterつぶやき数11位、ラジオオンエア数21位、You Tube再生回数22位と奮わず、総合順位ではこの位置に。あきらかに「U.S.A.」の2匹目のドジョウを狙ったトランス調のダンスナンバーなので、MVも「U.S.A.」と同様に「ダサカッコいい」を狙った感が強いのですが、「U.S.A.」に比べるとインパクトはかなり薄い感じ。特に「U.S.A.」で一番強かったYou Tube再生回数が22位と奮っていない点、全くリスナーにウケていないという事実が如実に感じられる結果となってしまっています。オリコンでは初動売上2万9千枚で3位初登場。前作「桜」の2万7千枚(5位)よりアップ。前作がミディアムテンポのナンバーでしたので、それよりはこういうダンスチューンを求めるファンが多いといった感じでしょうか。ただ2作連続CD売上はそれなりの水準を達成しており、「U.S.A.」で再度、固定ファンを獲得できたということは間違いなさそうです。

最後10位にはKing Gnu「飛行艇」が初登場でランクイン。ANAのテレビCMソング。ダウンロード数3位、ストリーミング数21位、ラジオオンエア数8位、Twitterつぶやき数39位を獲得。配信オンリーのリリースですが、見事ベスト10入りを果たしています。ミディアムテンポのダイナミックなナンバーに仕上がっています。

続いてロングヒット曲ですが、あいみょん「マリーゴールド」は見事今週も8位をキープ。ストリーミング数は先週から変わらず3位、You Tube再生回数も3位からダウンしたとはいえ5位をキープしており、まだまだ強さを感じさせる結果となっています。一方、菅田将暉「まちがいさがし」は今週9位から11位にダウン。連続ベスト10記録は残念ながら12週で途切れました。ただストリーミング数は4位とまだまだ強さを感じさせるため、来週以降の動向も気にかかります。

今週のHot100は以上。明日はHot Albums!

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2019年8月13日 (火)

アフリカと西洋の融合

Title:EGOLI
Musician:Africa Express

blurのデーモン・アルバーンが中心となりアフリカ音楽にスポットをあてるべく活動しているユニット、Africa Express。今年、EPの「Molo」がリリースされましたが、それに続き待望となるニューアルバムがリリースされました。本作でもデーモン・アルバーンはもちろんのこと、Supper Furry Animalsのグリフ・リース、Yeah Yeah Yeahsのニック・ジナーといったイギリス勢のミュージシャンが参加。一方、いままではマリのミュージシャンと組んでのリリースが多かったのですが、本作ではBCUC、ファカ、インフェイマス・ボイズといった南アフリカのミュージシャンたちと組んでのアルバムとなりました。

まずはアフリカらしい勇壮さも感じさせるトライバルなリズムが大きな魅力となっている本作。例えば「The River」ではトライバルなリズムにしゃがれ声で力強い男性ボーカルと伸びやかな女性ボーカルとのデゥオが印象的で、サウンドにはスケールの大きさを感じますし、ある意味、そのままなタイトルの「Africa To The World」ではリズミカルなリズムと郷愁感あるホーンの調べの対比が印象的な作品で、この対比が楽曲全体としてトライバルな雰囲気を生み出しています。さらに「Mama」のようなチープさも感じさせる打ち込みのリズムで奏でられるトライバルなサウンドもいかにも「アフリカ的」でありたまりません。

ただし、アルバム全体としてはそんなトライバルなリズムを要所要所に聴かせつつ、西洋音楽からの影響が強い、いわば「垢抜けた」印象を感じさせる曲が目立つ内容となっています。例えば「City In Lights」も軽快なリズムが心地よくも80年代風の打ち込みはむしろニューウェーブからの強い影響を感じますし、「Bittersweet Escape」もトライバルなリズムを奏でつつも重厚なサウンドと澄んだ歌声で力強く聴かせる女性ボーカルは非常に垢抜けたものを感じさせます。

またジャンル的にもバリエーションの多い音楽性が大きな魅力となっており、「Where Will This Lead Us To?」はシンプルなリズムは少々トラップの要素すら感じさせるHIP HOPのナンバーになっていますし、「Morals」もオーガニックな雰囲気が漂う作風はアフリカというよりもソウルミュージックに近いものを感じさせます。また「I Can't Move」に至っては完全に80年代のAOR。軽快なシティポップに都会な雰囲気すら感じさせます。

ただ個人的には単なるアフリカ音楽を模倣するのではなく、欧米のポップスと上手く融合させている部分がAfrica Expressの大きな魅力に感じます。単なる現地の音楽を奏でるのならば、現地でいくらでも優れた作品がリリースされている訳で、今の時代、賛否わかれる部分はあるのかもしれませんが、アフリカ音楽の要素を自国の音楽に上手く取り入れて融合させているからこそ、このアルバムが非常に独特で耳を惹く内容となっているのではないでしょうか。

もちろんそこには現地ミュージシャンへのリスペクトがきちんと感じられるという部分は間違いありません。単純なアフリカ音楽ではなくAfrica Expressでしかできない音楽をしっかりと奏でている傑作アルバムになっていました。新しい文化というのはこういう文化と文化の融合から生まれてくるのが常。ここから、新しい音楽がスタートする予感もする1枚でした。

評価:★★★★★

Africa Express 過去の作品
Molo

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2019年8月12日 (月)

Blood Orangeの自己紹介的なミックステープ

Title:Angel's Pulse
Musician:Blood Orange

イギリスはロンドンで活動するシンガーソングライター、デヴ・ハインズのソロプロジェクト、Blood Orangeの新作は純粋なアルバムではなく「ミックステープ」という形で配信オンリーのリリースとなる作品になりました。もともと友人やストリートなどで会った人に渡すために「ミックステープ」という形での作品を準備しており、今回はそんな作品をリリースすることにしたということ。演奏、制作、ミックスすべてをデヴ・ハインズ本人が手掛けており、そういう意味ではプライベイト的な要素の強い、よりデヴ・ハインズの「コア」な部分が明確となった作品と言えるのかもしれません。

今回のアルバムの大きな特徴として1曲あたりの短さが大きなポイントとなっています。全14曲入り32分という短さ。直近のアルバム「Negro Swan」も1曲あたり平均3分強という短さでしたが、今回はさらに短く、1曲平均2分強という長さになっています。「ミックステープ」の役割として「友人やストリートで会った人に渡す」ということでしたので、はじめての人でも聴きやすくするためBlood Orangeのエッセンス的な部分を抽出し短くまとめた、ということでしょうか。

基本的に作品は最初から最後まで美しくメロウなフレーズが耳に残る歌モノがメイン。1曲あたり2分程度の長さのため、そのメロディーに心奪われてしんみりと聴き入るうちに曲が終わり、次の新しいフレーズが飛び込んでくる、という構成に。そのため、最初から最後までひと時たりとも耳の離せない構成になっており、ただでさえ32分という短い長さの作品ですが、文字通り、あっという間に終わってしまう作品となっています。

そんな中でも特に美しく印象に残るのが、まずはMVも作成された「Benzo」という、日本語のようなタイトルの作品。Blood Orangeのハイトーンボイスと時折バックに流れる女性コーラスが美しく、胸をかきむしられるような作品。アメリカの女性シンガー、Justine Skyeが参加している「Good For You」も微妙にボーカルやサウンドにノイジーなエフェクトがかけられており、幻想的な雰囲気がまた美しさを醸し出しているナンバーとなっています。

中盤から後半にかけても「Gold Teeth」「Tuesday Feeling」ではこちらもアメリカの女性シンガーTinasheの歌声が印象に残るメロウなナンバーを聴かせてくれますし、ミディアムテンポのサウンドにファルセットのボーカルが美しく絡みつくようにその歌声を聴かせる「Berlin」の幻想的な美しさにも強く耳を惹かれます。そんな夢見心地な中盤から後半にかけての展開で、いきなりそんな空間を切り裂くように展開されるのがリズミカルでダークなラップがいきなり飛び込んでくる「Seven Hours Pt.1」。ちょっと予想外の展開に驚かされます。

ただもっともラストは、またメロウで夢見心地なナンバー「Take It Back」へ。さらにポップでメロディアスなメロがインパクトのある「Happiness」へと続き、最後はアウトロ的な「Today」で締めくくり。最後の最後までドリーミーな雰囲気でメロウに聴かせるポップな楽曲で締めくくられていました。

そんな訳で、Blood Orangeの魅力がしっかりと凝縮されていた作品になっていた本作。さらに1曲あたり2分程度という長さもあって、あっという間の内容で何度も聴けてしまう、そのサウンドと歌声が癖になってしまうような傑作アルバム。とても心地よい作品でした。

評価:★★★★★

Blood Orange 過去の作品
Freetown Sound
Negro Swan


ほかに聴いたアルバム

Kingfish/Christone "Kingfish" Ingram

ジャケット写真もミュージシャンの見た目もとにかくインパクトありまくりの彼は、若干20歳の若きブルースギタリスト。これからのブルース界を引っ張っていく存在ということで高い注目を集めており、本作でもレジェンドであるBuddy GuyやKeb Mo'といった大物ミュージシャンが参加するなど大きな話題となっています。そんな本作の前半は、王道ともいえるギターをゴリゴリと聴かせるブルースナンバーが並んでいます。目新しさはないものの、感情たっぷりで聴かせるブルースナンバーは、確かに次世代のブルースシンガーとしての期待の高さもわかる感じも。一方後半はブルースというよりもAORの色合いが強いナンバーが並んでおり、いい意味で既存のブルースに囚われない、あらたな方向性を感じさせる曲が並んでいます。正直、後継者難が続くブルースシーンの中での数少ない後継者として後生大事に持ち上げられている感もなきにしもあらずですが、ただ今後が楽しみなブルースシンガーであることは間違いありません。次回作以降も楽しみです。

評価:★★★★

Purple Mountains/Purple Mountains

本作がデビュー作となるアメリカのインディーロックバンド。各種メディアで軒並み高い評価を受けており、一躍注目のバンドとなっているようです。ただ作品的にはレイドバックした昔ながらのブルースロックといった感じ。非常に泥臭さを感じさせるサウンドで、日本では正直、あまりうけないタイプかも。一回りまわって新しい感じか?郷愁感ただようサウンドとメロが魅力的な部分はありましたが、個人的にはメディアの高い評価ほどはピンとは来ませんでした。

評価:★★★★

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2019年8月11日 (日)

自由度高い作風がポップミュージシャンの彼ならでは

Title:No.6 Collaborations Project
Musician:Ed Sheeran

おそらく、今、もっとも世界的に売れているポップシンガー、エド・シーラン。2017年にリリースされた直近のオリジナルアルバム「÷」は本国イギリスはもちろん、世界各地でヒットチャート1位を記録する大ヒットを記録しました。そんなアルバムに続く最新作は、数多くのミュージシャンたちとのコラボレーションを収録した企画盤的なアルバム。2011年、彼がブレイクする直前に、同じようなコラボレーションアルバム「No.5 Collaborations Project」をリリースしており、それに続く続編という形になります。

まさにヒットシーンの中心を行く彼のコラボアルバムなだけに参加ミュージシャンが実に豪華。Justin Bieberとコラボした先行シングル「I Don't Care」も大きな注目を集めましたが、Chance The RappaerやTravis Scottなど、今をきらめくミュージシャンやEMINEMといった大御所、さらに彼と同じく今、最も高い人気を誇るミュージシャンのひとり、Bruno Marsやちょっと毛色の違うところではカントリーミュージシャンのChris Stapletonなど、メインとなるのはHIP HOP系ミュージシャンとのコラボが多いのですが、実に多彩かつ豪華なメンバーとのコラボが収録されています。

そして、そんなコラボ作の特徴としてエド・シーランがコラボ相手にあわせる形で様々な音楽のスタイルを披露している点でしょう。R&BシンガーのKhalidとコラボした「Beautiful People」では力強くスケール感を持って歌い上げるナンバーを披露していますし、Camila CabelloとCardi Bという話題の女性ミュージシャンたちと組んだ「South of the Border」ではトライバル風なリズムをバックに彼女たちの歌声と一緒に軽やかに歌い上げています。

Chance The Rapperとのコラボ「Cross Me」ではトラップ風に仕上げていますし、逆にYEBBAとのコラボ「Best Part of Me」ではアコギでしんみりフォーキーに歌い上げる曲を聴かせてくています。インパクトが強いといえばEMINEMと50Centとのコラボ「Remember The Name」で、曲を聴けば一発でEMINEMの曲とわかるような強い個性はさすが。コミカルで軽快なラップなのですが、どこか不穏な雰囲気が漂ってくるのもEMINEMらしさを感じます。さらにラストのBruno MarsとChris Stapletonとのコラボ「BLOW」はヘヴィーなギターリフからスタート。シャウト気味のボーカルも聴かせるハードロックな楽曲に仕上がっており、ロックなエドを聴かせるしめくくりとなっています。

非常に面白いのは、エド・シーランがこのように様々なタイプのミュージシャンと見事にコラボを果たしているという点。自由度の高い作風が大きな魅力となっているのですが、ポップミュージシャンとして、あくまでもリスナーを楽しめることを重視する良い意味でのこだわりのなさが今回のコラボでは大きなプラス要素として働いているように感じました。

ポップミュージシャンとしての彼の利点が見事に生かされたコラボアルバムだと思います。また、これだけ豪華なメンバーをコラボ相手として集められたものエドの絶大な人気があってこそ。そういう意味では彼にしか作りえない、エド・シーランらしいアルバムだったと思います。難しい理屈抜きにして、とにかくポップな作品を楽しめる傑作でした。

評価:★★★★★

Ed Sheeran 過去の作品
+
÷


ほかに聴いたアルバム

Tears of Joy/MIKE

日本ではほとんど無名なのですが・・・ロンドンとニューヨークはブロンクスで育ったラッパーによる最新作。ムーディーな雰囲気にジャジーな要素も感じされるトラックにローファイ気味なラップが淡々と展開されるラップが大きな魅力に。ムーディーながらも一方ではサイケ気味なサウンドが入ってきたりもして、一筋縄でいかないようなラップも大きな魅力となっています。全20曲ながらも41分という短さで、1曲あたり2分程度の曲が並ぶため、次々と展開するアルバム構成もスリリング。最初から最後まで一気に楽しめる傑作アルバムでした。

評価:★★★★★

Origin/Jordan Rakei

ロンドンを拠点に活動を続ける話題のシンガーソングライター、ジョーダン・ラカイのニューアルバム。メロウなボーカルにAORのサウンドが特徴的。ジャジーな雰囲気も取り入れてしんみりと聴かせる「大人のポップス」という雰囲気の強い作品を聴かせてくれます。全体的にはポップなメロで良くも悪くもサラリと聴けてしまうような印象もあり、良質なポップスであることは間違いないのですが、個人的にはちょっと薄味に感じました。

評価:★★★★

 

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2019年8月10日 (土)

「究極の100枚」というのはちょっと言い過ぎな気が・・・

今日も最近読んだ音楽関係の書籍の紹介です。

光文社新書から出版された「教養としてのロック名盤ベスト100」。以前から様々な形で出版されているロックの名盤集。著者は、以前、当サイトでも紹介した「日本のロック名盤ベスト100」の著者でもある音楽評論家の川崎大助氏。そういう意味で本著はその「日本のロック名盤ベスト100」の続編的な立ち位置と言えるかもしれません。

まず正直言ってしまうとこの「ベスト100」。日本における一般的な評価から考えるとかなり癖のあるリストになっています。その理由としては、同書でベスト100として選んでいるのは川崎氏の「主観」によるものではなく、アメリカの音楽誌「ローリング・ストーン」誌が2012年に発表した「500 Greatest Albums of All Time」とイギリスのNMEが2013年に発表した「The 500 Greatest Albums of All Time」を比較して、どちらのリストにもピックアップされているアルバムを抜き出した上、単純に順位に従ってポイントをつけて合算したもの、であるため。本人は「このような計算にもとづいたリストが公表されることは、僕が知るかぎり、国際的にみて前例はないはずだ」と自画自賛しているのですが、誰もが最初に思いつきそうなやり方だと思うのですが・・・・・・。まあ、膨大なリストを集計して得点化するというのはかなり大変な作業であることは間違いなく、それをやってしまった、という点には敬意を評したいところですが・・・。

ただ、その結果として、本人も後書き等で散々述べているのですが、日本で一般的に考えられている「名盤」がかなりランク圏外になっており、非常に癖のつよいランキングとなっています。同書でも具体的に述べられているのですが、レッチリやU2、ポリスもエルトン・ジョンもoasisもビョークもクイーンも載っていません。逆にPavementの「Slanted and Enchanted」とかBlondieの「Parallel Lines」などもランクインしているのですが、ここらへんは日本での名盤集では少なくともベスト100にはまず入ってくることはない気がします。同書では冒頭にこの100枚を「究極の100枚」と記載し、「あなたがロック通を自認していて、なおかつこの『100枚』のうち1枚でも聞き漏らしがあったらなー正直言ってちょっと『まずい』かもしれない」と書いているのですが、さすがに「それは言い過ぎでは?」と思ってしまいます。

もっとも、私たちが日本で「名盤だ」と思っているようなアルバムも、実は欧米ではそれほど高い評価を得てない、ある種の「ビック・イン・ジャパン」だったということだけなのかもしれませんし、そういう意味では「欧米」の基準を知ることが出来るという意味では興味深いリストと言えるかもしれません。逆にArctic MonkeysとかThe Strokesとか意外と欧米でも高い評価を得ているんだな、と気が付かされますし、個人的にはPixesの評価が高い点もうれしく感じました。

ネタバレになるので上位陣については書きませんが、ベスト10についてはオーソドックスなランキングで、1位についてもまあ納得感のある印象。「え?そんなに評価が高いの?」というアルバムも少なくありませんが、これを基準にして片っ端からアルバムを聴いていっても間違いなさそうなリストなのは事実。強い癖はあるものの、それなりにまとまっていた「名盤集」になっていました。

さて、そんな「名盤」を川崎大助氏が解説していくわけですが、正直言えばこちらにも癖があります(笑)。以前の「日本のロック名盤ベスト100」の感想でも書いたのですが、彼は今時珍しくなった「ロック至上主義」的な見方があり、それはそれで悪くはないのですが、ただちょっと思い入れが強すぎるような部分がありますし、それ以前に「ロック」系以外のCD評についてはちょっと雑に感じてしまう部分も。特にAretha Franklinの「Lady Soul」のCD評など、収録曲が売れてかついろいろとカバーされているという事実だけが記されており、正直思い入れがないんだろうなぁ、ということを如実に感じてしまいます。

また、偏りが多くて癖のあるリストと本人も言っているのだから、個人的には「+α」として10枚程度、ランク外になったものの聴くべき「名盤」をリストアップしてCD評を載せて欲しかったな、という感じもします。そこらへんは本のボリュームとして載せられなかったのは、それとも主観的な部分を徹底的に排除したかったのかは不明なのですが・・・それとも、それは巷にありふれている他の「名盤ガイド」を読んでくれ、ということなのでしょうか。

このように様々な側面から非常に癖の強い1冊であることは間違いありませんが、ただロックの名盤をいろいろと聴こうとする最初の一歩としては間違いはない感じ。また、ロック好きにとっても聴き漏らしがないかのチェックにもちょうどよいリストかもしれません。まあ、この手の「ベスト100」って日本だとロケノンがやってもミューマガがやっても強い「癖」のついたリストが出来上がるので、それに比べても幾分はマシかもしれませんし・・・。

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