2018年2月24日 (土)

ECDの「地層」

Title:21世紀のECD
Musician:ECD

先月の終わり、音楽シーンにショッキングなニュースが飛び込んできました。ECD逝去。以前から進行性のがんであることを告白し、療養生活を送ってきた彼でしたが、今年1月24日、わずか57歳という若さでこの世を去りました。

ECDといえば日本のラップ黎明期からシーンで活躍を続けてきたラッパー。特に1996年に日比谷野外音楽堂で行われた伝説的なラップイベント、さんぴんCAMPの主催者としても知られています。もちろんミュージシャンとしてもコンスタントに活動を続け、特にここ最近では反原発や反レイシストなどの社会派的な活動も目立っていました。

本作はそんな彼の2000年以降にリリースされた作品をまとめたベスト盤。本人監修による選曲になっており、リリースは昨年の7月なので決して「追悼盤」ではありません。彼の活動を総括的に振り返るオールタイムベストでもありませんし、彼にとっても活動のひとつの区切りとしてリリースした、という以上でも以下でもなかったベスト盤だったかもしれません。

また2枚組となった本作は1枚目は2000年代、2枚目は2010年代にリリースされた曲という構成になっています。今回のベスト盤リリースにあたり、ECD本人が印象的なメッセージを残しています。それは「『今聴いても古さを感じさせない』それは最高の褒め言葉だ。 しかし僕は前作を古いものにするために新作を作り続けてきた。」というメッセージ。そのため今回のベスト盤はECDにとっての「地層」と位置づけ、1つ1つの曲は「化石」とすら述べています。

今回のベスト盤でも2000年代の作品を聴いていると、サウンド的には非常に時代性を感じる楽曲が目立ちます。一方で2010年代の作品を聴いていると「憧れのニューエラ」で「今のトレンドは似合わない」と歌い、確かにいかにも流行を追っただけのようなサウンドはないものの、低音部のビートを強調したサウンドの構成など、しっかりと今の時代の音もアップデートしており、時代にあった新しい曲づくりも志向していたこともわかります。

また2000年代の作品はブレイクビーツからエレクトロ、ロックやらトライバルな作風やらバリエーションが多く、音楽的により積極性を感じられました。一方で2010年代の作品は、音楽的な方向性は似たタイプの曲が増え、いい意味での安定性を感じます。またポップな作品も目立つようになり、ベテランとして、またラップが日本のミュージックシーンに定着したからこそ生じた余裕みたいなものも感じられました。

一方リリックですが、社会派な活動の目立つここ最近の彼ですが、本作に収録されている曲に関してはさほど社会派な歌詞は多くありません。ただそんな中で非常に印象に残るのが「東京を戦場に」。「もっと戦争を身近なものに」と綴って、逆に反戦を訴えるというロジックがとてもユニークな内容。この曲自体はイラク戦争に対して歌われたそうですが、今でも通じるメッセージとなっています。

またラストに収録されている「ECDECADE」はECDの心境を綴ったリリック。といっても2010年にリリースされたアルバム「Ten Years After」に収録されているナンバーなのですが、これから先を見つめるようなメッセージが込められた楽曲をあえてこのベスト盤のラストに収録するあたり、彼にしてみればこれが決して最後のベスト盤ではなく、これからも活動を続けたい・・・という意思だったのかもしれません。

あらためてベスト盤を聴くと、偉大な才能のあまりにも早い終焉をあらためて残念に思いました。過去の作品を「化石」と呼ぶ彼だからこそ、まだまだ新たな傑作を産み続けられたと思うだけに・・・。改めてご冥福をお祈り申し上げます。

評価:★★★★★

ECD 過去の作品
Three wise monkeys


ほかに聴いたアルバム

陽だまり/ズクナシmeets三宅伸治

ボーカル衣美の産休のため活動休止だったズクナシが活動を再開。その再開直後にリリースされたのがブルースギタリスト三宅伸治プロデュースによる9曲入りのミニアルバム。ゲストになんと山崎まさよしも参加しているという豪華な内容になっています。

楽曲的には1曲目の「めぐる」からいきなりレゲエ調のリズムになっていたり、「ミラーボール・ベイベー」はディスコチューンとなっていたり、活動休止明け一発目からいきなり挑戦的というか、バラエティー富んだ作品になっています。ある意味ご挨拶がわりにズクナシの広い音楽性を発揮したアルバムといった印象。すでにライブを中心に積極的な活動を行っており、今度の彼女たちの活躍からも目が離せなさそうです。

評価:★★★★

ズクナシ 過去の作品
ただいま
粗品
サンキュー

super boy! super girl!!/the peggies

最近、数多くのガールズバンドが活躍し人気を集めていますが、彼女たちもそんな現在注目を集めているガールズバンドの一組。そして本作はメジャーデビュー作となる6曲入りのミニアルバム。メロディーはポップでそれなりにインパクトも。基本路線は典型的なオルタナ系ギターロックバンドといった印象。ただ良くも悪くも典型的なJ-POP路線といった感じで、おもしろいなと感じる要素は少なかったかも。最後に収録された「I 御中~文房具屋さんにあった試し書きだけで歌をつくってみました。~」はおもしろいと思いましたが。良くも悪くもこれからのグループといった印象を受けました。

評価:★★★★

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2018年2月23日 (金)

ブルースのレジェンド 最盛期のライブ盤

Title:At Onkel Po's Carnegie Hall-Hamburg 1976
Musician:JOHNNY 'GUITAR' WATSON

まだまだ続いています。2017年ベストアルバムのうち、まだ聴いていなかったアルバムを聴くシリーズ。今回は「BLUES&SOUL MAGAZINE」誌のリイシュー/発掘音源部門で1位を獲得したアルバムです。

本作はタイトル通り、1976年、ドイツ・ハンブルグの「Onkel Po's Carnegie Hall」で行われたライブ音源を収録した発掘音源。このクラブでのライブ音源はいろいろなミュージシャンのバージョンがリリースされているようですが、本作はその一環となるようです。

JOHNNY 'GUITAR' WATSONは1935年アメリカに生まれたブルースミュージシャン。テキサスブルースの流れを組みつつ、楽器的にはシンセを取り入れたり、あるいは音楽的にはファンクの要素を取り入れたりと、旧来のブルースのスタイルにこだわらないスタイルを貫いた点が大きな特徴となっています。

本作でも「I Don't Want To Be A Lone Ranger」ではエフェクトをきかせまくったギターをかき鳴らした後、ファンキーなホーンセッションを入れてくるなど陽気な演奏を聴かせたり、ブルースのスタンダードナンバー「Stromy Monday」でもエレピを取り入れて、よりジャジーにムーディーにその演奏を聴かせてくれます。

基本的にその後の「Superman Lover」「Ain't That A Bitch」などホーンセッションやエレピの音を入れつつ、ファンキーなサウンドを聴かせるスタイルの曲が多く、一般的なブルースというイメージよりも、ファンクのイメージが強いサウンドを聴かせてくれます。

特に1976年というとJOHNNY 'GUITAR' WATSONの作品の中で名盤の誉れ高い「Ain't That A Bitch'」がリリースされた年。彼も御年41歳という脂ののった頃となっており、それだけにライブに関しても迫力満点。ホーンセッションを従えてファンキーなサウンドで会場を盛り上げたかと思えば、「Cuttin In'」ではブルージーなギターと感情たっぷりに歌い上げるソウルフルなボーカルを聴かせてくれます。

ライブのクライマックスであり個人的にも非常にカッコよさを感じたのが「I Need It」。15分にも及ぶ長尺で聴かせるのですが、中盤のジャムセッションが非常にカッコよく、バックで同じキープで演奏するギターやドラムの音も実にグルーヴィー。バンドとしての底力を感じます。

ちなみにJOHNNY 'GUITAR'' WATSONといえば1996年、来日中の横浜でのライブの最中に突然倒れ、そのまま帰らぬ人となったという、日本人にとっても思いを感じるミュージシャン。実は私、彼の音源を聴くのはこれがはじめてなのですが、そのファンキーで時には楽しく、時には聴かせる演奏に一気に魅せられました。

脂ののった時期の彼のライブの魅力がはっきりと伝わってくるライブ盤。この時期のライブ、見たかったな、と感じてしまった作品でした。

評価:★★★★★


ほかに聴いたアルバム

Mind Gone/Lacee

本作は「BLUES&SOUL RECORDS」誌年間ベストアルバム4位となった女性ソウルシンガーの新作。黒人地区の小さなライブハウス中心に活動しているインディー系のミュージシャンだそうです。以前、ここでも何作か紹介していますが、基本的な路線はそれらの作品と変わらず。昔ながらのソウルミュージックで楽曲的には目新しさはないものの、非常に表現力と包容力のある彼女のボーカルに惹かれるアルバムになっていました。

評価:★★★★

Lacee 過去の作品
Soulful
Beautiful

4EVER/PRINCE

2016年、57歳という若さで急逝したアメリカを代表するシンガーソングライターPRINCEの、逝去後にリリースされた2枚組のベストアルバム。いかにも逝去後に企画されたようなベスト盤ですが、彼の代表曲が網羅され、あらためて彼の魅力を再認識できるベスト盤。時代によって音の雰囲気はかなり変化するものの、根本に流れるファンキーなリズム感と高いポピュラリティーは時代を通じて不変で、彼の才能を強く感じられるベスト盤でした。

評価:★★★★★

PRINCE 過去の作品
PLANET EARTH

ART OFFICIAL AGE
PLECTRUMELECTRUM

HITnRUN Phase One
HITnRUN Phase Two

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2018年2月22日 (木)

アルバムチャートもジャニーズ系

今週のアルバムチャート

http://www.oricon.co.jp/rank/ja/

今週はジャニーズ系が1位獲得。

今週1位はジャニーズ系アイドルグループSexy Zone「XYZ=repainting」が初登場で獲得です。オリジナルアルバムとしては約2年ぶりとなる新作。初動売上は13万4千枚。直近はベストアルバム「Sexy Zone 5th Anniversary Best」でこちらの初動15万1千枚(1位)よりはダウン。一方、オリジナルとして前作の「Welcome to Sexy Zone」の11万1千枚(1位)よりはアップしています。

2位初登場はmiracle2 from ミラクルちゅーんず!「MIRACLE☆BEST- Complete miracle2 Songs-」。テレビ東京系で放送されている少女向け特撮ドラマ「アイドル×戦士 ミラクルちゅーんず!」で使われた曲を収録したアルバムだそうです。初動売上2万4千枚でいきなりのべすと3いり。

3位にはガールズバンドSCANDAL「HONEY」が初登場。初動売上は2万2千枚。直近作はベスト盤の「SCANDAL」でそちらの初動3万1千枚(2位)よりダウン。また直近のオリジナルアルバム「YELLOW」の2万9千枚(2位)よりもダウンしています。

続いて4位以下の初登場盤です。まず5位に凛として時雨「#5」がランクイン。タイトル通り5作目・・・と言いたいところですが、フルアルバムとしては6作目。ただし、タイトル通りに5位ランクインです。初動売上は1万1千枚。前作「es or s」(5位)から横バイ。

7位には「グレイテスト・ショーマン(サウンドトラック)」がベスト50圏外から一気にランクアップし、ベスト10入りを果たしました。本作は19世紀のアメリカに実在した興行師P・T・バーナムの半生を描いたミュージカル映画のサントラ盤。ミュージカル映画といえば昨年「ラ・ラ・ランド」が話題となりサントラ盤もヒットを記録しましたが、それに続くヒットになりそうです。サントラ盤は1月17日にリリースされていましたが、2月16日より日本でも映画公開になり、それにあわせてサントラ盤が一気に売上を伸ばしました。

8位にはTUBEのボーカリスト前田亘輝によるソロアルバム「My Legends I」がランクイン。ソロとしては2007年リリースのベストアルバム「Single Collection +」から約10年半ぶりとなる作品。オリジナルとしては1997年の「HARD PRESSED」以来、実に20年3ヶ月ぶり(!)となるアルバムとなります。初動売上は8千枚。「Single Collection+」の3万3千枚(8位)より大幅ダウン。「HARD PRESSED」の6万1千枚(8位)からも大幅にダウン・・・といずれも同じ順位なのですが、CDの売上に関しては本当に隔世の感があります・・・。

9位初登場はガールズバンドBAND-MAID「WORLD DOMINATION」。初動売上7千枚。前作「Just Bring It」の4千枚(16位)よりアップし、2015年リリースの「New Beginning」以来3作ぶり2作目のベスト10ヒットとなります。

最後は10位に女性アイドルグループpredia「ファビュラス」がランクイン。初動売上は7千枚。前作「白夜のヴィオラにいだかれて」の5千枚(16位)よりアップ。シングルでは何度かベスト10入りを果たしているものの、アルバムではこれが初となるベスト10ヒットとなりました。

今週の初登場盤は以上。さて、一方で今週はロングヒットも。昨年11月からずっとヒットを続けている安室奈美恵「Finally」。さすがにベスト3には顔を出さなくなったものの、今週も1万4千枚を売り上げ、4位にランクイン。累計売上枚数も212万枚に達しており、昨年のSMAPのベスト盤以来の大ヒットとなっています。まだまだロングヒットは続きそうです。

今週のアルバムチャートは以上。チャート評はまた来週の水曜日に!

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2018年2月21日 (水)

今週はジャニーズ系

今週のHot 100

http://www.billboard-japan.com/chart_insight/

まず今週の1位はジャニーズ系。Hey!Say!JUMP「マエヲムケ」がランクイン。メンバーの山田涼介主演の日テレ系ドラマ「もみ消して冬」主題歌。CD販売・ダウンロード・ストリーミング数(以下「実売数」)は2位に留まり、ラジオオンエア数34位、Twitterつぶやき数9位だったもののPCによるCD売上数1位を獲得し、1位を獲得しました。ちなみにオリコンでも初動24万4千枚で1位を獲得。前作「White Love」の28万7千枚(1位)からダウンしています。

2位は米津玄師「Lemon」が初登場で獲得。TBS金曜ドラマ「アンナチュラル」主題歌。3月14日リリース予定のシングルの先行配信です。実売数で1位を獲得したほか、ラジオオンエア数で8位、Twitterつぶやき数で5位を獲得。これって、Hey!Say!JUMPの「マエヲムケ」に比べるといずれも高い順位なんですよね。配信オンリーなので当然、PCによるCD読取数は圏外なわけで、結果、こちらが2位なんですが、それじゃあ「PCによるCD読取数」のチャートで絶対ランクインできない配信リリースが必然的に不利になっちゃうよなぁ。以前から薄々感じてたんですが、こういう点、ビルボードチャートももうちょっと工夫してほしいのですが・・・。

3位はST☆RISH「ウルトラブラスト」が初登場でランクイン。女性向け恋愛アドベンチャーゲーム「うたの☆プリンスさまっ♪」に登場するアイドルグループで、本作は 「劇場版 うたの☆プリンスさまっ♪ マジLOVEキングダム」に使用される楽曲だそうです。実売数3位、PCによるCD読取数2位、Twitterつぶやき数では1位を獲得。オリコンでは初動売上11万4千枚で2位初登場。前作「マジLOVEレジェンドスター」の1万9千枚(7位)から大幅アップしています。

続いて4位以下の初登場曲です。まず5位に東海地方を中心に活動する男性ローカルアイドルグループMAG!C☆PRINCE「Best My Friend」が初登場でランクイン。実売数4位のほか、Twitterつぶやき数78位という結果に。ちなみにオリコンでは初動売上9万2千枚で3位初登場。前作「YUME no MELODY」の6万2千枚(2位)からアップしています。

6位にはロックバンドONE OK ROCK「Change」が初登場でランクイン。配信限定のシングル。実売数5位のほか、ラジオオンエア数99位、Twitterつぶやき数41位を記録。洋楽テイストの強いロックチューンとしてラジオオンエア数の順位が少々低めのような・・・。

7位初登場はテレビアニメ「マクロスΔ」から登場した音楽ユニットワルキューレ「ワルキューレは裏切らない」がランクイン。実売数7位、PCによるCD読取数4位、Twitterつぶやき数17位を記録。オリコンでは初動売上1万8千枚で7位初登場。前作「絶対零度θノヴァティック」の2万5千枚(6位)よりダウン。

最後10位には絢香&三浦大知「ハートアップ」がランクイン。実売数は14位ながらもラジオオンエア数5位、PCによるCD読取数では10位を獲得し、見事ベスト10入りです。ちなみに作詞作曲は絢香が担当していますが、プロデューサーは小林武史。なのでギターの使い方がなんとなくミスチルっぽい雰囲気がします。オリコンでは初動売上5千枚で23位にとどまっており、配信での売上が先行した模様。ちなみに絢香の前作「コトノハ」の3千枚(25位)からは若干のアップ。三浦大知の前作「U」の1万2千枚(8位)からは大幅にダウン。あまり三浦大知側にはメリットがなかったようです。

ちなみに先週9位に返り咲いたDAOKO×米津玄師「打上花火」は残念ながら一気に25位までダウン。You Tube再生回数も12位までダウンしており、さすがにロングヒットは終わりをつげた模様です。

今週のHot100は以上。明日はアルバムチャート!

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2018年2月20日 (火)

ミュージシャンとしての勢いを感じる

Title:BOOTLEG
Musician:米津玄師

米津玄師はおそらく、今、最も勢いがあるミュージシャンの一組といっていいでしょう。daokoと組んだ「打上花火」はロングヒットを記録し(本作でもセルフカバーが収録されています)、また本作に収録されている「灰色と青」では人気俳優菅田将暉とタッグを組むなど大きな話題となっています。

そんな中でリリースされた本作は前作「Bremen」に引き続き初登場でチャート1位を記録。その人気のほどを見せつける結果となりました。そんな彼の最新作ですが、まず中身的には前作「Bremen」同様、良い意味でかなり整理されたアルバムになっているように感じます。要するにデビュー当初の彼の良くも悪くも特徴だった詰め込まれたサウンドや早口ゆえに少々わかりにくかった歌詞が整理され、聴いていて素直に耳に入ってくる歌に仕上げていました。良い意味で「マス」に向き合ったアルバムともいえる作品で、それゆえに大きなヒットを飛ばしているのも納得です。

楽曲的には基本的にギターロック志向の強いポップスといった感じなのですが、雑食性志向が強いのが相変わらず特徴的。「飛燕」のようにエスニックな雰囲気の哀愁感ただよう楽曲になっていますし、「ピースサイン」はまさに王道ともいえるようなオルタナ系のギターロック。初音ミクを使い、彼のボカロP時代の名称「ハチ」名義でリリースしたことでも話題となった「砂の惑星」はピアノと強いビートでちょっとアバンギャルドテイストのサウンドが耳に残りますし、「Moonlight」はちょっと歌謡曲的なテイストに、最近のSuchmosあたりの雰囲気を感じるジャジーなテイストも加えています。

そのほかにもエレクトロサウンドを取り入れた「ナンバーナイン」やちょっと幻想的でファンタジックな歌詞と分厚いサウンドが、初音ミクに歌わせてもピッタリと来るんじゃないか?とも感じてしまう「爱丽丝」など、とにかく雑多な音楽性も大きな特徴。この雑食性が若干彼の音楽的な方向性をぼやかしてしまっている部分も否定できないものの、一方では良い意味でのこだわりのなさが彼の音楽性を大きく広げており、アルバムも次にどんな展開が来るのか、ワクワクしながら聴き進めることが出来るなど、米津玄師にとっての大きな魅力になっている点も間違いありません。

歌詞の世界観についてもある意味バリエーションがあり、今回は「orion」「春雷」のような、ある種の情熱性を感じるようなラブソングも目立ったような印象も受けます。また今回のアルバムでも印象に残ったのは、社会の中で疎外されたような人たちの声を綴ったような歌詞。「アイムアルーザー」と歌う「LOSER」などは完全に典型的ですし、自らを怪獣と設定して歌う「かいじゅうのマーチ」など、その悲しい歌詞に涙腺が緩みます。

またアニメの主題歌にもなっている「ピースサイン」はいい意味でわかりやすく、盛り上がりのある歌詞が強く印象に残りますし、ある意味ベタな盛り上がりを見せるメロディーとともなってアニメソングとしても非常に映えるだろうなぁ、という印象を受けます。このサビなどの盛り上がるポイントにしっかりとフックの効いた歌詞を載せてくるテクニックは、作品を追うごとにどんどん進化しているように感じます。

まさに人気の上昇と比例するように楽曲的な勢いも増しており、さらにミュージシャンとしてのまだまだ成長を続けていることを強く感じる傑作アルバムになっていました。彼が今、もっとも注目を集めているということも納得が出来るアルバム。まだまだその勢いは止まらなさそうです。

評価:★★★★★

米津玄師 過去の作品
diorama
YANKEE
Bremen


ほかに聴いたアルバム

juice/Little Glee Monster

昨年末は紅白歌合戦にも出演し知名度をあげた「歌の上手さ」を売りにしたガールズグループの3枚目のアルバム。本作も基本的には前作と同様、安定した歌唱力で歌われる伸びやかな歌声が心地よいアルバム。ただやはり前作同様、表現力という点では厳しい部分も多く、そういう意味では今後のボーカリストとしての経験が待たれるところ。良い意味ではまだまだ今後の成長が期待できるグループ、ということも言えるかと。

評価:★★★★

Little Glee Monster 過去の作品
Joyful Monster

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2018年2月19日 (月)

新レーベルからの新たな一歩

Title:ハレルヤ
Musician:川村結花

川村結花といえば、おそらく一般的にはあのSMAPの名曲「夜空ノムコウ」の作曲を手掛けた人、ということで知っている方も多いのではないでしょうか。ほかにもFUNKY MONKEY BABYSの「あとひとつ」を手掛けたりしており、主に職業作家としての活躍がメインとなっています。

ただ彼女自身もシンガーソングライターとしても活動しており、数多くのアルバムもリリース。そんな彼女がリリースした新作はDr.kyOnと佐橋佳幸によるユニットDarjeelingが設立したレーベル、GEAEG RECORDSの第1弾アルバム。そのDarjeelingがプロデュースも手掛けており、彼女にとってもレコード会社移籍後初となる新たな一歩のアルバムとなっています。

全8曲入りとなった今回のアルバムで、まず個人的に心に響いてきたのが1曲目の「カワムラ鉄工所」。彼女の祖父が実際に経営していた鉄工所だそうで、祖父との思い出を歌ったナンバー。個人的なことになりますが、私も同じく自営をしていた祖母を昨年、亡くしており、そういう意味では自分にとっても非常に胸うつものがあった楽曲で、アルバムの中でも特に印象に残りました。

この「カワムラ鉄工所」もそうですが、楽曲は基本的に彼女のピアノを中心に据えたアコースティックなシンプルな演奏がメインで、彼女の歌をしっかりと聴かせるような構成になっています。

楽曲的にはジャジーな雰囲気の「夜の調べ」「猫の耳たぶ」、ムーディーなジャズの「ロウソクの灯が消えるまで」にビックバンド風の「その先は?」、ソウル風の「かたづけちゃんとしよう」など、ブラックミュージックベースの楽曲がメイン。ただ一方ではフォーキーな「乾杯のうた」や郷愁感あふれる和のテイストを感じる「愛だけしかない景色」なども並び、わずか8曲、ピアノが入ったアコースティックな編成という制約がありながらもバラエティーに富んだポップスを聴かせてくれます。

また歌詞で取り上げているテーマも、タイトル通り、汚れた部屋についてなげいている「かたづけちゃんとしよう」や、猫の耳について歌った「猫の耳たぶ」など身の回りについて歌った歌詞がメイン。一方では「その先は?」のような前向き応援歌的なメッセージソングもあったりして、いい意味で職業作家として活躍している彼女らしい安定感ある歌詞のテーマ性も魅力的でした。

メロディーラインについては自らが歌う曲でかつアルバム曲ということもあるのでしょうか、あまり派手でキャッチーなサビを持ったような曲はありません。ただ、シンプルなメロディーラインながらもしっかりと心に残るようなフレーズは要所要所に聴くことが出来、こちらも彼女の実力が光ります。

全体的には決して派手さはないものの、彼女の実力がしっかりと発揮された良質なポップアルバムだったと思います。職業作家としては十分ヒットを飛ばしている彼女ですが、次はやはりシンガーソングライターとしてももっと売れてほしいなぁ。それだけの実力は持っているシンガーということがはっきりと感じることが出来るアルバムです。

評価:★★★★★


ほかに聴いたアルバム

PAUSE~STRAIGHTENER Tribute Album~

結成20周年、メジャーデビュー15周年を迎えるストレイテナー。本作はそんな彼らの代表曲を彼らの同世代のバンドや彼らに影響を受けたバンドがカバーしたトリビュートアルバム。参加メンバーはなかなか豪華でMONOEYESやback number、ACIDMANに9mm Parabellum Bullet、アジカンにthe pillowsと、今の日本のオルタナ系ギターロックバンドの代表格がズラリ。さらにどのバンドもバンドとしての個性を発揮している点が素晴らしいところ。最後はストレイテナー自ら新曲「SAD AND BEAUTIFUL WORLD」を披露していますが、ピアノから静かに入りつつ途中からバンドサウンドへとダイナミックに展開する構成に耳を惹かれるロックチューンになっており、彼らの魅力がきちんと伝わるナンバーになっています。ストレイテナーファンはもちろん、参加ミュージシャンのファンならチェックして損はない1枚です。

評価:★★★★★

Heart of Gold/SING LIKE TALKING

途中ベスト盤のリリースはあったものの、なんと4年7ヶ月ぶりという久々となったSING LIKE TALKINGのニューアルバム。今回はその間にリリースされたシングル曲などを中心とした構成になっており、ストリングスやピアノ、ホーンセッションなどを入れつつ、SLTらしい爽やかなメロディーラインを美しい佐藤竹善の歌声にのせて聴かせるいつものスタイルなのですが、いつも以上に聴きやすい、またSLTらしい曲が並んだ展開になっています。目新しさはないのですが、SLTが好きなら安心して聴けるアルバム。久々のオリジナルとしてはファンとしては納得感ある出来だったのではないでしょうか。

評価:★★★★

SING LIKE TALKING 過去の作品
Empowerment
Befriend
Anthology

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2018年2月18日 (日)

バンドとしてグッと進化

Title:・・・
Musician:SAKANAMON

今年はインディーズデビュー10周年を迎えるSAKANAMON。昨年5月より活動の舞台を再びインディーズに移した彼らですが、本作はインディー移籍後初となるフルアルバム。奇妙なタイトルは「テンテンテン」と読むそうです。

そんな彼らの最新作ですが、まず感じたのはバンドとしての基礎体力がグッと高まったという点でした。まずアルバムはいきなり「ロックバンド」という彼らの方向性を定めるような曲からスタート。この曲は比較的シンプルなオルタナ系ギターロックなのですが、続く「STOPPER STEPPER」は軽快でシティポップ色も強いダンスチューン。さらに続く「乙女のKANJOU」はエッジの効いたバンドサウンドがカッコいいロックチューン。どこかNUMBER GIRLすら彷彿とさせる勢いあるサウンドが耳を惹きます。

その後も「凡庸リアライズ」のようなオルタナ系ギターロック路線から「DAVID」のようなシティポップ、さらにラストの「DAPPI」のようなシンセを入れたダンスチューンなど楽曲のバリエーションはいままでに比べて増えた印象。バンドサウンドにしてもいままで以上に迫力ある聴かせるナンバーが増えた印象がありますし、メロディーにもインパクトが増してきました。いままでのアルバムでも様々なバリエーションの曲に挑戦してきましたが、どこかチグハグだった感が否めなかったのは事実。ただ今回のアルバムではそんなチグハグ感がなくなり、しっかりと彼らの血となり肉となってきたように感じます。

ただ一方、今回のアルバムでちょっと物足りなさを感じたのが歌詞。彼らのいままでの作品の大きな売りが歌詞でした。今回のアルバムでも確かに印象的な歌詞を聴かせてくれる曲も少なくありません。タイトル通り、ケーキ屋の女の子に密かな思いをよせる「ケーキ売りの女の子」の

「僕等はね 売れ残りのケーキさ
訳有りの品」

(「ケーキ売りの女の子」より 作詞 藤森元生)

なんて歌詞はいかにもSAKANAMONらしいといった感じでしょうか。

ただこういう社会の中で孤独に生きる人たちを歌ったような曲が残念ながら非常に少なくなりました。同じく歌詞が心に残る「テヲフル」にしてもストレートなラブソングですし、女性の感情をチンチロリンの目に例えば「乙女のKANJOU」も歌詞がユニークだけれども、別に孤独な男性は登場しません。さらには「SYULOVER」に至っては一人の男性を2人の女性が取り合うという「修羅場」な歌詞。2人の女性ボーカルを入れてユニークな内容だけども、いままでのSAKANAMONのイメージからはかけ離れたようなタイプの曲となっています。

歌詞に関しては正直言って残念だったなぁ、というのが感想となってしまいます。フルアルバムとしての前作「HOT ATE」も同じようにサウンドやメロが良くなったのに歌詞が後退してしまった、といった印象を受けたのですが、今回の作品は、さらにサウンドやメロがグッと成長し進化したのに対して、歌詞は同じくさらに後退してしまったと感じたアルバムでした。

ただトータルとしてみるとメロディーやサウンドの成長が歌詞を十分上回り、バンドとしてのこれからに期待が持てる作品になっていたと思います。期待値込みの評価にはなるのですが、バンドとしての基礎体力が増した傑作アルバムということで。

評価:★★★★★

SAKANAMON 過去の作品
ARIKANASHIKA
あくたもくた
HOT ATE
OTSUMAMIX


ほかに聴いたアルバム

明日色ワールドエンド/まふまふ

「ニコニコ動画」での活動で人気を集めた男性シンガーソングライターのメジャーデビュー作。オリコンチャートでいきなり初登場2位を獲得し、その人気のほどを見せつけました。楽曲はハイトーンボイスによるハイテンポなナンバーがメイン。バンドサウンドにシンセも用いて音を詰め込んだタイプの楽曲。メロも歌詞もサウンドも情報過多といった感じなのは、いかにも今時のシンガーらしい印象。J-POP的なフックの効いたメロディーやダイナミックな楽曲構成などインパクトはこれでもかといったほど十分な感じ。ポップな内容がそれなりに楽しめるものの、正直、聴いているうちに疲れてきてしまいました・・・。

評価:★★★

Soft Landing/矢野顕子

矢野顕子の新作は約7年ぶりとなる全編ピアノ弾き語りによるアルバム。ピアノのみのアルバムといってもタイトル通りの野球への愛情をうたったコミカルで明るい「野球が好きだ」に郷愁感ある「汽車に乗って」、ジャジーな「Wives and Lovers」に歌謡曲テイストの「六本木で会いましょう」などバラエティー豊富に聴かせるスタイルはさすが。シンガーソングライターとしてもボーカリストとしても底力を感じるアルバムになっています。ただ、1曲目を飾るPUFFYのカバー(作詞作曲はフジファブリックの志村正彦)「Bye Bye」は、ピアノ一本で感情込めて歌っているのですが、これはPUFFYのような平坦な歌い方のほうがよかったな。このカバーはちょっと残念でした。

評価:★★★★★

矢野顕子 過去の作品
akiko
音楽堂
荒野の呼び声-東京録音-
Get Together~LIVE IN TOKYO~(矢野顕子×上原ひろみ)
矢野顕子、忌野清志郎を歌う
飛ばしていくよ
JAPANESE GIRL - Piano Solo Live 2008 -
さとがえるコンサート(矢野顕子+ TIN PAN)
Welcome to Jupiter
矢野顕子+TIN PAN PARTⅡ さとがえるコンサート
(矢野顕子+ TIN PAN)
矢野山脈

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2018年2月17日 (土)

人気上昇中の「ヤバイ」彼ら

Title:Galaxy of the Tank-top
Musician:ヤバイTシャツ屋さん

ご存知、現在人気上昇中で最も注目を集めているロックバンド、ヤバイTシャツ屋さん。適度にハードコアだったりメロコアだったりのヘヴィーなバンドサウンドと、ポップなメロディーライン、そしてどこか人を食ったようなユニークな歌詞が大きな注目を集めています。

本作も前作「We love Tank-top」から初動売上を倍増させてオリコン初登場4位に飛び込んでくるなど大ヒットを記録。「Tシャツ屋さん」と名乗りながらアルバムタイトルがなぜかタンクトップというところも彼ららしい人を食ったような部分といえるでしょうか。

楽曲のスタイルも基本的に前作と同様。メロコアを軸にしつつデス声を入れてハードコアなテイストを加えたようなバンドサウンド。今回のアルバムでも1曲目「Tank-top in your heart」でいきなりデス声が登場しハードコア路線からスタートしています。ほかに「眠いオブザイヤー受賞」ではラップを取り入れたり、ちょっとシティポップ路線のギターを聴かせたり、ラストの「肩 have a good day」はピアノとストリングスを入れた、J-POPによくありがちなベタなバラードになったり。楽曲的なバリエーションはありますが、彼らの場合、そのバリエーションも一種の「ネタ」にしているような印象もあります。

前作に比べると、よりメロディアスパンク、あるいはメロコアの路線の曲が目立ったような印象を受ける今回のアルバム。ただ、肝心のメロコア路線にしても「メロコアバンドのアルバムの3曲目ぐらいによく収録されている感じの曲」なんて曲で、いかにもメロコア調の曲にメロコアバンドの「あるある」を織り交ぜたような歌詞をうたっており、ある意味、徹底して茶化した感じの曲が多く感じます。

ユニークな歌詞といえば「ヤバみ」みたいに最初、英語詞で洋楽テイストの強い楽曲からスタートしたかと思えば「いっぱい英語で歌ってみたけどあんまり意味ないよ」なんて風に締めくくってみたり、パソコンのUSBについて単なるうたっただけの「Universal Serial Bus」なんて曲があったり、この歌詞のユニークさを耳で追っているだけでも楽しめるアルバムになっています。

また良くも悪くも今どきの若者かつある種の大学サークルノリ的な部分があるのも彼ららしいところで、そんなサークルノリ的な代表格が「ハッピーウェディング前ソング」。「キッスキッスキッスキッス」と盛り上げたり「ノリで入籍してみたらええやん」とかなり無責任なことを言ってみたりするのもいかにも学生ノリ。ただ、このある種の若々しさも勢いとなって彼らの大きな魅力になっているようにも感じます。

ここらへんの人を食ったような歌詞、メタ視点的な歌詞は好き嫌いがありそうで、個人的にも本来、あまり好みの方向性ではないのですが、彼らの場合はそこをユーモラスとノリでカバーしており、嫌みにならないほどほどのバランスでキープしているように感じました。前作ではもっと内輪ノリ、学生ノリ的な曲が多かったのですが、いかにも内輪的な曲がぐっと減ったのも彼らなりの成長でしょうか。まだまだ若手バンドの彼ら、これからいろいろな方向性も見せてくれるかもしれません。

前作でも感じたのですが、この手のメロコア、パンク系バンドの中では間違いなく頭ひとつふたつ抜けている彼ら。まだまだ人気は伸びてきそうな予感も。個人的には前作より本作のほうがより楽しめる傑作アルバムだったと思います。これからの活躍も楽しみです。

評価:★★★★★

ヤバイTシャツ屋さん 過去の作品
We love Tank-top


ほかに聴いたアルバム

Human Bloom Tour 2017/RADWIPS

RADWIMPS初となるライブアルバム。昨年4月30日に行われた「さいたまスーパーアリーナ」の模様を中心に収録したライブアルバム。MCも収録されており(ただ、若干「う~ん」という発言もあるけど)、ライブ会場の雰囲気がそのまま伝わる内容に。ライブ演奏に関しては可もなく不可もなくといった感じか。「前前前世」を含む「君の名は。」で使われた曲も収録されていますし、ベスト盤感覚でも楽しめるアルバムです。

評価:★★★★

RADWIMPS 過去の作品
アルトコロニーの定理
絶対絶命
×と○と罰と
ME SO SHE LOOSE(味噌汁's)
君の名は。
人間開花

Popcorn Ballads(完全版)/サニーデイ・サービス

昨年6月、突如、ストリーミングサイトでのみリリースされたアルバム「Popcorn Ballads」。この画期的なリリース方法も話題になりましたが、今回はそのストリーミングによる作品にさらなる手を加え、さらに新曲を加えてCD/LPで「完全版」としてリリースしてきました。基本的に様々なタイプの曲が並んでいたストリーミング版に比べると、曲順が整理されアルバムとして流れを感じさせる構成に。また今回新曲も加わったのですが、これもアルバムの中でピッタリマッチする、メロディアスなポップチューンをしっかりと聴かせてくれます。ストリーミングでまずリリースし、さらにそれをブラッシュアップし再度リリースというスタイルはおもしろいですね。今後、同じような手法を使うミュージシャンが増える・・・かな?

評価:★★★★★

サニーデイ・サービス 過去の作品
本日は晴天なり
サニーディ・サービス BEST 1995-2000
Sunny
DANCE TO YOU
桜 super love

Popcorn Ballads

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2018年2月16日 (金)

バンド初期から変わらぬスタイル

Title:delaidback
Musician:Syrup16g

2014年に再結成した後、積極的な活動が続くSyrup16g。本作はそんな彼らのちょうど1年ぶりとなるニューアルバムです。ただ今回のアルバム、純然たるニューアルバムではありません。本作は過去の未発表音源を集めた作品。過去のライブで披露されてそのままだった曲やボーカルの五十嵐隆がSyrup16g解散中に結成し、結局音源をリリースすることなく解散してしまったバンド「犬が吠える」時代に発表された曲も収録されています。

例えば1曲目「光のような」は分厚くノイジーなバンドサウンドをバックに五十嵐隆が歌い上げる、いかにもSyrup16gらしい曲なのですが、本作は「犬が吠える」で披露された曲。同じく「赤いカラス」も「犬が吠える」で発表されたナンバー。非常に切ないメロディーラインが印象的な楽曲で、諦念的な歌詞もSyrup16gらしく心の響きます。そんな中、「夢、夢、夢~!」というシャウトが、なんとか希望をつかみとろうとする姿を感じ、これもまた彼ららしいといった感じでしょうか。

また一方「夢みたい」「開けられずじまいの心の窓から」は1997年頃から披露されているナンバーだそうで、1997年というとSyrup16gがインディーズデビューする前という最初期の頃。確かにメロディーラインなどに垢抜けなさは感じるのですが、歌詞含めて既にSyrup16gらしさは確立されています。

ほかにもガレージロック的なノイジーなギターサウンドが耳に残る「冴えないコード」や軽快なリズムやちょっと明るめなメロディーラインながら「一生こんなのは不安です」というくら~いフレーズが印象に残る「ヒーローショー」、同じくアップテンポで明るめのメロながらも4月=春というイメージとは裏腹な鬱な歌詞が印象に残る「4月のシャイボーイ」などSyrup16gの魅力がふあれるナンバーが並びます。

さて今回未発表曲集なのですが、そんな作品にも関わらずアルバム全体に統一感がある点も非常に興味深く感じます。例えばアルバムの構成についても1曲目は「光のような」からスタート。一方ラストは「光なき窓」で締めくくり。1曲目と最後が呼応するような構成になっています。

ちなみに「光のような」は

「光のような 儚いような
命がいま はじまるよ」

(「光のような」より 作詞 五十嵐隆)

と希望を感じるような歌詞で締めくくられているのに対して、「光なき窓」は

「もう満ち足りた日々は遠くて
真っ直ぐに鏡も見れなくて
光なき窓」

(「光なき窓」より 作詞 五十嵐隆)

非常に暗い締めくくりとなっておりこれも対照的。あえて暗い幕切れを最後に持ってくるのも彼ららしいのですが、「光なき窓」でも「そばにいてくれ そばにいてくれ」とその向こうになにかをつかみとろうとするもがきのようなものを感じ、心に響く歌詞になっています。

今回のアルバム、未発表曲集、さらに曲によってはインディーズデビュー前の曲があるにも関わらず統一感があるというのはそれだけ初期から彼らがバンドとしてのスタイルを確立していたということにほかなりません。確かに彼らの曲はデビュー当初から今に至るまでサウンド的にも歌詞的にも大きな変化はありまえんし、彼らのスタイルは最初期に完成されていたということをあらためて実感させられるアルバムと言えるのかもしれません。

「犬が吠える」時代の楽曲を含めて全体的に非常にSyrup16gらしさを感じることが出来たアルバム。デビュー以前から彼らが実に才能あふれるバンドであった事実が再確認できた1枚でした。

評価:★★★★★

Syrup16g 過去の作品
Syrup16g
Hurt
Kranke
darc


ほかに聴いたアルバム

ACID TEKNO DISKO BEATz/石野卓球

ソロとして約1年半ぶりとなる新作。ソロとしては比較的短いインターバルとなるアルバムなのですが、前作の時に「100作くらいつくってその中でピックアップした」と語っていましたので、曲のストックはたまっているのでしょう。前作「LUNATIQUE」と比べるとあまりにもそのままなタイトルなのですが、楽曲的にもかなり肩の力が抜けていて、リリース前提というよりも、好き勝手につくったら出来ちゃいました、といった雰囲気の彼らしいリズミカルなテクノが並んでいます。楽曲はいずれもポップなテイストが強く、どこかユーモラスさも感じられるのも石野卓球らしいところ。ある意味、肩の力を抜きつつもこのレベルの作品がつくれちゃうあたり、さすが・・・といった感じでしょうか。

評価:★★★★★

石野卓球 過去の作品
CRUISE
WIRE TRAX 1999-2012
LUNATIQUE
EUQITANUL

斉藤和義 弾き語りツアー2017 雨に歌えば Live at 中野サンプラザ 2017.06.21/斉藤和義

今回のせっちゃんのライブ盤は昨年行った「斉藤和義 弾き語りツアー 2017“雨に歌えば"」から6月21日の中野サンプラザ公演の模様を収録したアルバム。「弾き語り」らしいシンプルなサウンドで斉藤和義の楽曲が本来持つメロディーと歌詞の良さが味わえるライブ盤。初回版の特典CDでは7月3日のツアーファイナル、金沢・本多の森ホールの模様が収録されているのですが、こちらの方が本体より断然良い!あきらかに楽曲がライブの中で進化しており、例えば「やさしくなりたい」など印象的なイントロが中野サンプラザ公演ではいまひとつチグハグで会場も盛り上がらないのですが、金沢公演ではしっかりと決まっており、会場も大盛り上がり。むしろこちらの公演をフルでCD化すべきだったのでは?とすら思ってしまいました。

評価:★★★★

斉藤和義 過去の作品
I (LOVE) ME
歌うたい15 SINGLES BEST 1993~2007
Collection "B" 1993~2007
月が昇れば
斉藤“弾き語り”和義 ライブツアー2009≫2010 十二月 in 大阪城ホール ~月が昇れば 弾き語る~
ARE YOU READY?
45 STONES
ONE NIGHT ACOUSTIC RECORDING SESSION at NHK CR-509 Studio
斉藤
和義

Kazuyoshi Saito 20th Anniversary Live 1993-2013 “20<21" ~これからもヨロチクビ~ at 神戸ワールド記念ホール2013.8.25
KAZUYOSHI SAITO LIVE TOUR 2014"RUMBLE HORSES"Live at ZEPP TOKYO 2014.12.12
風の果てまで
KAZUYOSHI SAITO LIVE TOUR 2015-2016“風の果てまで” Live at 日本武道館 2016.5.22

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2018年2月15日 (木)

20周年のアイドルが1位獲得

今週のアルバムチャート

http://www.oricon.co.jp/rank/ja/

まず今週の1位は20周年を迎えるアイドルグループのアルバムが1位獲得です。

今週1位はモーニング娘。20th「二十歳のモーニング娘。」が獲得しました。今年、デビュー20周年を迎えるモーニング娘。の現在のメンバーと過去のメンバーがコラボレーションしてリリースしたミニアルバムとなります。初動売上は4万7千枚。モーニング娘。のアルバムとしては直近作の「⑮Thank you, too」の初動2万9千枚からアップしています。

アイドルグループが20周年というのは一昔前では考えられないことでしたが、モーニング娘。がメンバーの新加入&脱退というシステムを採用したことにより、ここ最近、アイドルグループの「寿命」が格段に長くなりました。ただ結果として、いつまでも昔の名前で活躍するグループが増え、シーン全体の新陳代謝が落ちたようにも感じます。個人的にはこの方法、あまり望ましいやり方とは思っていません。ただ、今後もおなじようなやり方をするグループは増えるんだろうなぁ。

2位は韓国の男性アイドルグループSEVENTEENの韓国でリリースされたアルバムの輸入盤「DIRECTOR'S CUT」が獲得。昨年11月にリリースしたアルバム「TEEN, AGE」に4曲を追加したアルバムだそうです。初動売上は2万1千枚。その前作「TEEN,AGE」の1万8千枚(5位)からアップしています。

3位はハードコアのサウンドに民族音楽の要素を取り入れた独特のサウンドで高い評価を得ているロックバンドBRAHMANの5年ぶりとなるニューアルバム「梵唄 -bonbai-」が獲得。初動売上は1万7千枚。直近はベスト盤「尽未来際」で、こちらの初動1万5千枚(2位)よりはアップ。ただし、オリジナルアルバムとしての前作「超克」の初動2万2千枚(4位)からはダウンしてしまいました。

続いて4位以下の初登場盤です。まず4位に「うたの☆プリンスさまっ♪Shining Masterpiece Show『トロワ-剣と絆の物語-』」がランクイン。女性向け恋愛アドベンチャーゲーム「うたの☆プリンスさまっ♪」から派生したドラマCD。初動売上1万6千枚。直近作は同じくドラマCD四ノ宮那月(谷山紀章) 、寿嶺二(森久保祥太郎)、聖川真斗(鈴村健一)、黒崎蘭丸 (鈴木達央) 「うたの☆プリンスさまっ♪Shining Masterpiece Show「『Lost Alice』」で、こちらの1万9千枚(5位)からはダウン。

5位も韓国のアイドルグループWINNER「OUR TWENTY FOR」がランクイン。初動売上は1万2千枚。直近作は「EXIT:E」の1千枚(63位)で、こちらからは大きくアップ。

7位には「THE IDOLM@STER MILLION LIVE! M@STER SPARKLE 06」がランクイン。こちらはゲーム「アイドルマスターミリオンライブ」に登場するキャラクターによるソロ曲を集めたアルバム。初動売上9千枚は同シリーズの前作大神環(稲川英里),宮尾美也(桐谷蝶々),百瀬莉緒(山口立花子),エミリー・スチュアート(郁原ゆう),真壁瑞希(阿部里果)「THE IDOLM@STER MILLION LIVE! M@STER SPARKLE 05」の1万枚(6位)から微減。

そして初登場組ラスト9位にはPANDORA「Blueprint」がランクインです。ご存じ、先日のシングルチャートでも紹介した小室哲哉と浅倉大介によるユニットのデビューミニアルバム。初動売上6千枚でベスト10入りです。ただ、直近にシングル「Be The One」が初動3万6千枚だったのでそれに比べると苦戦した印象が・・・。ミニアルバムとはいえたったシングル曲込みでたった4曲入りというのが微妙だったのか・・・。ご存じの通り、小室哲哉は芸能界からの引退を公表していますが、これがラストアルバム、なんてことは願いません。次は是非、フルアルバムを!

今週のアルバムチャートは以上。チャート評はまた来週の水曜日に!

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