2024年4月18日 (木)

やはり宇多田ヒカル、強し!

今週のHot Albums

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初の公式ベストアルバムが見事1位獲得です。

今週1位を獲得したのは宇多田ヒカル「SCIENCE FICTION」。以前、シングルコレクションをリリースしたり、非公式でUtada名義でのベストアルバムはあったものの、公式名義でのベストアルバムはこれが初という扱い。デビュー25周年の記念盤となります。CD販売数及びダウンロード数1位で、デビューから25年を経ても、いまなお強い人気を感じさせます。オリコン週間アルバムランキングでは初動売上17万1千枚で1位初登場。直近のオリジナルアルバム「BADモード」の初動9万1千枚(1位)からアップしています。

2位は女性アイドルグループFRUITS ZIPPER「NEW KAWAII」がランクイン。CD販売数2位、ダウンロード数8位。オリコンでは初動売上2万7千枚で2位初登場。本作がデビュー作となります。

3位は韓国の男性アイドルグループSF9「ReStart」が初登場。CD販売数3位。オリコンでは初動売上1万9千枚で3位初登場。前作「THE BEST ~Dear Fantasy~」の初動5千枚(11位)からアップしています。

4位以下の初登場盤は4位に、男性アイドルグループM!LKの元メンバーで、現在は俳優としても活躍している宮世琉弥がRyubi Miyase名義でシンガーソングライターとしてデビューした「PLAYLIST」が初登場。5位には乃木坂46の元メンバー、生田絵梨花のソロデビューEP「capriccioso」がランクイン。6位初登場は「FINAL FANTASY VII REBIRTH Original Soundtrack」。2月にリリースされた「FF VII」のリメイク版第2弾のサントラ。7位には韓国の男性アイドルグループTEMPEST「BANG!」が初登場。8位初登場はNARITA THOMAS SIMPSON「冒険者たちのうた」。元男闘呼組の成田昭次が寺岡呼人、青山英樹と組んだ新バンド。9位にはZIPANG PANDA「Rock Out」がランクイン。LDH所属の男性4人組アイドルグループ。その他、女性アイドルグループ≠ME「Springtime In You」がベスト10圏外から今週10位に返り咲いています。


今週のHeatseekers Songs

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今週1位を獲得したのは乃紫「全方向美少女」。「のあ」と読む、女性シンガーソングライター。2022年のデビュー以来、配信限定シングルのみのリリースを続けています。本作はTikTokチャートで1位を獲得し話題に。その後、Heatseekrs Songsでもチャートインから11週目にして1位獲得となりました。タイプ的には初期椎名林檎を彷彿とさせるような、哀愁感あるちょっとレトロな雰囲気のポップソング。TikTok Weeklyでは今週9位に留まっているのですが、今後のブレイクもありうるのでしょうか。


今週のTikTok Weekly

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今週もCreepy Nuts「Bling-Bang-Bang-Born」が2週連続の1位を獲得。Hot100同様、圧倒的な人気を見せています。


今週のニコニコVOCALOID SONGS

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こちらもンバヂ(nbaji)「好きな惣菜発表ドラゴン」がこれで3週連続の1位を獲得。なにげに高い人気を誇っています。

今週は以上。チャート評はまた来週に!

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2024年4月17日 (水)

王者Creepy Nutsに米津玄師が1位を伺う

今週のHot100

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相変わらずCreepy Nutsの快進撃が続いています。

1位は今週も、Creepy Nuts「Bling-Bang-Bang-Born」が獲得。これで12週連続の1位&13週連続のベスト10ヒットとロングヒット記録を更新しています。ただ今週、ストリーミング数、YouTube再生回数、カラオケ歌唱回数がいずれも1位をキープした一方で、ダウンロード数は一気に5位までダウン。これがヒットの陰りとなるのか、まだまだ巻き返すのか、気になるところです。ちなみに先週ベスト10入りしてきた「二度寝」は今週12位にダウン。残念ながら2週連続の2曲同時ベスト10入りはなりませんでした。

そして2位にランクインしてきたのが米津玄師の新曲「さよーならまたいつか!」。NHK連続テレビ小説「虎に翼」主題歌。なんとなく、今年の年末に紅白へ出演させるための布石のような感じもしますが・・・。今週、ダウンロード数でCreepy Nutsから1位を奪ったのはこの曲。そのほか、ダウンロード数8位、ラジオオンエア数3位、YouTube再生回数5位で総合ランキング2位に入ってきました。ダウンロードが毎回強い米津玄師。一方、ストリーミング数が意外と伸び悩むのですが、この曲はどうなるのか。今後の動向が気になります。

3位には秋元康系女性アイドルグループ乃木坂46「チャンスは平等」がランクイン。CD販売数1位、ダウンロード数15位、ラジオオンエア数14位。オリコン週間シングルランキングでは初動売上51万7千枚で1位獲得。前作「Monopoly」の初動53万8千枚(1位)からダウンしています。

続いて4位以下ですが、今週の初登場曲はもう1曲。5位に初登場したTOBE所属の男性アイドルグループNumber_i「Blow Your Cover」。配信限定シングルでダウンロード数2位、ラジオオンエア数1位、YouTube再生回数7位で、総合順位は5位にランクインしています。

以下、ロングヒット曲はまずOmoinotake「幾億光年」は先週の2位から4位にダウン。ダウンロード数は7位から8位、YouTube再生回数も5位から6位にダウンしていますが、ストリーミング数は6週連続の2位をキープ。ベスト10ヒットを9週連続に伸ばしています。

tuki.「晩餐歌」も4位から7位にダウン。YouTube再生回数及びカラオケ歌唱回数は3位をキープしていますが、ストリーミング数は4位から5位にダウン。ベスト10ヒットは今週で20週連続となりましたが、ここからの巻き返しを見せるのでしょうか。

YOASOBI「アイドル」は8位から10位にダウンと、ついに後がなくなりました。ストリーミング数7位は先週から変わらず。YouTube差異世界数は7位から10位にダウン。これでベスト10ヒットは連続53週となりましたが、来週あたりはついにベスト10陥落となるのでしょうか。

また、Mrs.GREEN APPLE「ケセラセラ」が今週10位から13位にダウン。ベスト10ヒットは通算26週で再びストップとなっています。

今週のHot100は以上。明日はHot Albums&各種チャート!

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2024年4月16日 (火)

ヘヴィーなサウンドとキュートなメロのバランスがユニーク

Title:I Got Heaven
Musician:Mannequin Pussy

アメリカの男女混成4人組パンクロックバンド、Mannequin Pussy。前作「Patience」ではじめて彼女たちの楽曲を聴いたのですが、勢いあるパンキッシュなバンドサウンドを奏でながら、メロディーラインはキュートでポップというアンバランスさがとても心地よく、2019年の私的年間ベストアルバムで9位に選ぶなど、かなりお気に入りの1枚となりました。

ただ、前作「Patience」リリース後、ギターのAthanasios Paulが脱退し、一時期、スリーピースバンドとして活動をしていたものの、昨年、ツアーメンバーだったMaxine Steenが正式なバンドメンバーとして参加。再び4人組として活動を行っています。

そんなバンドの遍歴を重ねつつも、バンドとしての方向性は基本的に前作から大きくは変っていません。前作に引き続き、アメリカのパンクの名門レーベル、エピタフ・レコードからリリースされた本作は、パンキッシュで勢いのあるバンドサウンドとキュートという表現すらピッタリとくるポップなメロディーラインのアンバランスさが心地よい作品になっています。

アルバムはいきなりタイトルチューンの「I Got Heaven」からスタートするのですが、タイトルチューンらしく、ある意味、彼女たちらしさを象徴するような1曲に。楽曲はいきなり力強いギターリフと、ボーカルMarisa "Missy" Dabiceの力強いシャフトからスタートしますが、このギターリフはヘヴィーなサウンドながらも、そこで奏でられるメロはポップで耳なじみやすいもの。90年代のインディーロックの色合いも強いギターリフが特徴的なのですが、さらにボーカルのシャウトに続くサビの部分ではボーカルが一転。キュートな歌声でポップなメロディーを聴かせてくれており、全体的にヘヴィーでパンキッシュな楽曲ながらも非常にポップであるという印象を受けます。

その後もハードコア色の強い「OK?OK!OK?OK!」「Of Her」「Aching」のような曲で激しいサウンドを聴かせてくれたかと思えば、「I Don't Know」はギターノイズで楽曲を埋め尽くす、シューゲイザー系からの影響がストレートな楽曲。また「Sometimes」も疾走感あるオルタナ系のギターロックの楽曲となっており、こちらも90年代インディーロックからの影響を強く感じさせます。

そして最後を締めくくる「Split Me Open」はノイジーなギターサウンドを中心に据えつつも、ポップなメロを聴かせるメロディアスなナンバー。途中、幻想的な清涼感ある歌声で歌い上げながらも一方ではパンキッシュなバンドサウンドを聴かせる部分もあったりして、このポップな部分もヘヴィーな部分のバランスがとてもユニーク。彼女たちらしいクロージングとなっています。

ダイナソージュニアやPixiesあたりの90年代オルタナ系ロックバンドの影響を強く受けている彼女たちですが、特にヘヴィーなバンドサウンドを奏でつつメロはキュートでポップというバランス感覚は個人的にPixiesに通じる部分もあり非常に壺。前作に引き続き、年間ベスト候補の傑作アルバムだったと思います。来日してライブを行うのならば是非一度行ってみたいなぁ。オルタナ系ロックが好きならば間違いなく気に入りそうな1枚です。

評価:★★★★★

Mannequin Pussy 過去の作品
Patience

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2024年4月15日 (月)

夢のタッグ

Title:Liam Gallagher & John Squire
Musician:Liam Gallagher & John Squire

最近ではソロミュージシャンとしても人気を獲得し、2022年にはoasis以来となるネプワースでのライブも成功させたリアム・ギャラガー。そんな彼の新作は、なんと、元ザ・ストーン・ローゼズのジョン・スクワイアとタッグ。マッドチェスターの中心的な存在で、もちろん、oasisにも大きな影響を与えたバンド、ザ・ストーン・ローゼズとタッグは、まさに文字通り「夢のコラボ」といって良いでしょう。ネプワースでのライブにジョン・スクワイアが飛び入りで参加するなど、両者は交流を深め、今回のタッグに至ったそうです。

そんな大物同士のタッグとなった本作。ともすればこういう大物同士のタッグはお互いの個性がぶつかりあった結果、チグハグな結果を出すことが多いのですが、これがジョン・スクワイアの書く曲にリアム・ギャラガーがピッタリとマッチ。もともとリアム自体、ローゼズに影響を受けていたこともあったのでしょうが、両者の相性の良さを感じさせる名曲が並んでいました。

冒頭を飾る「Raise Your Hands」は、まず王道とも言えるギターロックの作品。軽快で疾走感あるバンドサウンドとポップなメロディーが心地よく、ある意味、非常に素直さを感じます。続く「Mars To Liverpool」は美メロと称してもよいようなメロディアスでポップなメロディーラインが心地よいナンバーに。さらに「I'm A Wheel」は非常に力強いブルースギターを聴かせるブルースロックのナンバー。oasisでもソロでもここまでブルースに寄った作品は珍しいのですが、それでもリアムのボーカルはしっかりとマッチしています。

そして中盤に位置するのが先行シングルともなっている「Just Another Rainbow」。ミディアムテンポのグルーヴィーでサイケな作風は、まさにザ・ストーン・ローゼズを彷彿とさせるようなナンバーで、こちらもリアム・ギャラガーのちょっと気だるいボーカルにもマッチしています。いかにもoasis+THE STONE ROSESといった感じの曲で、この曲を先行シングルとして理由がよくわかります。

続く「Love You Forever」は力強いギターリフが、70年代を彷彿とさせるようなハードロックナンバー。かと思えば次の「Make It Up As You Go Along」はメランコリックで爽やかな、ポップなメロを聴かせる楽曲に。ここらへんのバラエティー富んだ展開も楽しいところ。そしてラストを飾る「Mother Nature's Song」も、ちょっとビートルズを彷彿とさせる懐かしくもメランコリックなメロを聴かせるギターロックのナンバー。ある意味、こちらはoasis以降のリアムの嗜好を感じさせる楽曲で締めくくられています。

個人的に、oasis解散後のリアムソロ作の中で、本作が一番ピンと来た作品になっていました。確かに、ここ最近のリアムソロ作は高い評価を受けて、それに従って人気の面も復活してきています。ただ、個人的にはoasis時代についたリアムのイメージに沿ったような「いかにも」な楽曲が多く、またそれゆえにやはりノエル曲と比べてしまうと・・・と感じてしまっていました。しかし今回の作品は、ジョン・スクワイアという、見方によってはノエル以上の伝説を持つソングライターを抱えています。その結果として、変にoasis時代のリアムに寄せようとすることなく、自然体でリアムのボーカルにもマッチした曲が聴けたように思います。またリアムについても、変に気負うことなく、ジョン・スクワイアの書いた曲に身をゆだねるように、自然体なボーカルスタイルで聴くことが出来ました。

個人的には年間ベストクラスの傑作にも思う本作。リアムのボーカルをしっかり堪能しつつ、ポップでグルーヴィーな楽曲を楽しむことが出来た傑作になっていました。oasisやローゼズのファンなら間違いなく要チェックの作品です。

評価:★★★★★

Liam Gallagher 過去の作品
AS YOU WERE
Why Me?Why not.
Acoustic Sessions
MTV Unplugged(Live At Hull City Hall)
Down by the River Thames
C'MON YOU KNOW
Knebworth 22

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2024年4月14日 (日)

今でも人気を誇る伝説のバンド

Title:A Generation of 1993-1996 ~ふたたび新しい旅に出る~
Musician:Spiral Life

Spiral

当時、女子中高生を中心にアイドル的な人気を獲得していたロックバンドBAKUのメンバーだった車谷浩司が、デビューを目指していた石田小吉と組んで結成したユニットSpiral Life。その洋楽テイストの強い音楽性が注目を集め、徐々に人気を集めてきたものの、音楽性の相違からわずか3年で解散。ラストライブは横浜アリーナで行うなど、ブレイク寸前と言われつつも、残念ながらブレイクとまでは至らず、その活動に幕を下ろしています。

そんなSpiral Lifeのデビュー30周年を記念したボックスセットがタワーレコードの通販限定という形でですが、リリースされました。CD5枚組からなる本作は、Disc1から3で、彼らがリリースした3枚のオリジナルアルバムをアナログマスターからリマスター。Disc4では「OTHER SONGS & DEMO TRACKS」と名付けて、シングルのカップリングやデモ音源を収録。さらにDisc5では1993年のライブハウスとホールで行われたライブの模様を収録した未発表のライブ音源集となっています。

個人的に、Spiral Lifeは活動していた最中から名前は知っていたのですが、その当時はさほどチェックしておらず、後追いで知ったバンド。ただ、今となってはリアルタイムで聴いておかなかったことを後悔するような、個人的に私の音楽性の好みからして理想とも言えるバンドだったりします。

彼らの大きな特徴は、まずは90年代のイギリスのインディーロックや同じくアメリカのオルタナ系ギターロックバンドからの影響が顕著なバンドサウンド。シューゲイザー系や、特に後期に関してはスマパンからの影響も顕著で、その影響を全く隠していない無邪気さは、一部ではパクリ扱いされていたりもするのですが、個人的にはかなり壺なサウンド。さらにこのバンドサウンドをバックに奏でられるメロディーラインは非常にキュートでポップ。爽やかながらもメランコリックさが同時にあって胸がキュンとさせられる魅力があります。個人的にも大好きなのが「(DON'T TELL ME NOW!) PLEASE PLEASE MR.SKY -空に鳥がいなくなった日-」で、爽やかな切ないメロディーラインが実に魅力的な名曲です。

さらに彼らの曲を魅力的にしているのが、車谷浩司と石田小吉の音楽性の微妙な違い。車谷浩司は、Spiral Life解散後のAIRとしての活動を見せばわかる通り、特に後期になればなるほどヘヴィーロックへ傾倒していく一方、石田小吉はその後のSCUDELIA ELECTROの活動でわかる通り、シューゲイザー系への傾倒を続けつつ、エレクトロサウンドへの興味を増していきます。この異なる音楽性のせめぎ合いがSpiral Lifeの楽曲に幅を持たせ、大きな魅力となっています。

2人の音楽性が最も異なる方向性を示してしまっているのがラストアルバム「FLOURISH」で、1曲目「GARDEN」は、まさにその後のAIRを彷彿とさせるようなヘヴィーロック路線の曲からスタートしたかと思えば、「MAYBE TRUE」では非常にキュートなメロディーのギターロックが顔を覗かせます。マンチェサウンドを彷彿とさせる「DANCE TO GOD」やホーンセッション入って祝祭色の強い「TRUST ME」などバリエーションも豊富。ラストの「NERO」はこれでもかというほど分厚いギターサウンドを聴かせつつ幕を下ろしています。車谷と石田の異なる音楽的嗜好の中で、お互いが主張し合いつつ、なんとか折り合いをつけたアルバムといった感じなのですが、結果としてはSpiral Lifeの中でもベストと言える傑作に仕上がっていたと思います。

もっとも、この音楽性の違いがゆえに、わずか3年という活動期間で幕を下ろした訳で、そういう意味では諸刃の剣だったということなのでしょうが。ただ、Spiral Lifeの到達点であり、かつ、同作は日本のポップス史上に燦然とその名を残した傑作だったと思います。

このヘヴィーでノイジーなギターサウンドと、ポップでキュートなメロディーラインというのが実に私の好みにピッタリとマッチしており、個人的にはまさに理想的なバンド。ただ、それだけ惹かれている方は少なくないみたいで、本作はタワレコ限定で、かつ1万5千円という高額のボックスセットにも関わらず、オリコンアルバムチャートではなんと34位にランクイン。いまだに高い支持を得ていることをうかがわせます。現在、車谷浩司も石田小吉も、新作をあまり発表しておらず、開店休業状態なのですが、最後には殴り合いの喧嘩をしたというあのCOMPLEXですら再結成ライブを実施しているだけに、Spiral Lifeも再結成して新作・・・とは言わないまでも、ライブくらい演ってくれないかなぁ・・・と思ってしまいます。あらためてSpiral Lifeが素晴らしいバンドであったことを実感させられるボックスセットでした。

評価:★★★★★

Spiral Life 過去の作品
FURTHER ALONG-20th anniversary mix-

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2024年4月13日 (土)

ネクライトーキーは、とにかく楽しい

Title:TORCH
Musician:ネクライトーキー

途中、セルフカバーアルバムやEPを挟みつつ、オリジナルフルアルバムとしては約2年9ヶ月ぶりとなるニューアルバム。本作に収録されている「bloom」はNetflixのアニメ「スコット・ピルグリム テイクス・オフ」のテーマ曲となり話題にもなりました。ちょっと久々となる今回のニューアルバムは、同曲も含む14曲を収録。いままでのアルバムよりも曲数はありつつ、全47分。良い意味でほどよいボリューム感のアルバムとなっています。

ネクライトーキーの楽曲と言うと、とにかく聴いていてワクワクする楽しいポップソングというイメージがあります。今回のアルバムに関しても、そんな明るく、素直に楽しいポップチューンの並ぶアルバムになっていました。分厚いビートとシンセのピコピコサウンドがインパクトのある「浪漫てっくもんすたぁ」は、ユーモラスな作風の典型的にネクライトーキーらしい楽曲でしょう。「どたまかち割るね」というユニークな歌詞もネクライトーキーらしい感じ。ネクライトーキーらしいというとシングル曲でもあった「ふざけてないで」もそんな感じでしょうか。軽快なギターロックナンバーなのですが、リズミカルで明るいポップチューン。ちょっとコミカルなギターリフやユーモラスに入ってくるシンセの音も大きな魅力でしょう。

タイトルもユニークながらもメロディーラインも印象的なのは「新島工場探検隊」で、こちらも軽快なギターロックナンバーなのですが、サビの部分で転調するメロディーがインパクト。この転調するサビが、個人的にどことなく、80年代あたりのエピックソニー系あたりの香りを感じさせるのは私だけ?もっともネクライトーキーもソニーミュージック所属で、ここらへんは脈々と流れるレコード会社の空気感が反映されているのでしょうか。

アルバムの中でほどよい空気感を醸し出しているのが「わっしょいまっしょい」で、日常をほんわかした視点で描く脱力系の楽曲になっているのがユニーク。「浴びるように酒を呑んだなら/明日も仕事を頑張りましょい」という歌詞もいい感じ。この歌詞をもっさの舌ったらずなボーカルで歌われると、ちょっと幼さを感じさせるボーカルなのに、「浴びるように酒を呑んだなら」というギャップのある歌詞もまたユニーク。もっとも彼女は既に29歳らしいので、別に浴びるように酒を呑んでいても全く問題はない訳ですが・・・。

そんな脱力感のある楽曲から、ヘヴィーでダイナミックなサウンドが特徴的な「ねぇ、今どんな気分?」という落差のある展開もユニーク。歌詞も、ほんわかに頑張ろうと歌う全曲からいきなり「最低な一日になっちゃった」という、こちらも落差ある展開がユニーク。そんな展開はありつつ、終盤の「だから、」では力強く歌い上げるミディアムテンポのロックナンバーなのですが、

「昨日まで家だったもんが
瓦礫の山になった」
「昨日まで夢だったもんが
砕けた泡になった」
(「だから、」より 作詞 もっさ)

と、かなり虚無的な世界観がドキリとさせられる楽曲で、ただ明るくコミカルなだけではないネクライトーキーの別の側面も感じられます。

そんな感じで、全体的には前作以上にバラエティーのある展開になっている本作。一方、アルバム冒頭の「ちょうぐにゃぐにゃ」やラストの「石ころの気持ち」などはストレートな疾走感あるポップなギターロックとなっており、ギターロックバンドとしての王道路線もしっかり聴かせてくれます。今回も聴いていてとても楽しい傑作になったのは間違いありません・・・が、全体としての出来としては正直、前作の方が上だったかな、とも感じてしまいました。

正直、前作の「はよファズ踏めや」や「誰が為にCHAKAPOCOは鳴る」のような一度聴いたら忘れられないようなインパクトはちょっと薄め。まあ、自分にとって前作ははじめて聴くネクライトーキーで、その分インパクトも大きかった、という点もあるのかもしれませんが、そうだとすれば、今回のアルバム、前作を踏まえての新たな姿が見ることが出来なかった、という点でもちょっと残念だったかもしれません。

もちろん、前作ほどではなかったとはいえ、間違いなく今回のアルバムも傑作に仕上がっていたと思います。最近、比較的メランコリックなメロディーを聴かせるミュージシャンが多い中、ネクライトーキーのような底抜けに明るいロックバンドは貴重。ポップソングのワクワクさを素直に体現化された作品でした。

評価:★★★★★

ネクライトーキー 過去の作品
FREAK
MEMORIES2


ほかに聴いたアルバム

Trio&Charm/大橋トリオ&THE CHARM PARK

ご存じ大橋トリオと、韓国系アメリカ人で、現在は日本を拠点に活動を続けるマルチプレイヤーでシンガーソングライターのCharmのソロプロジェクト、THE CHARM PARKとのコラボアルバム。THE CHARM PARKは以前、アジカンに楽曲提供を手掛けた曲を聴いた程度なので詳しくはわからないのですが、基本的には両者とも、楽曲の方向性は同じようで、アコースティックなサウンドでちょっとメランコリックにしんみり聴かせる「大人のポップス」といった印象の楽曲がメイン。一言で言うと「良質なポップス」といった感じでしょうか。ただ、良くも悪くもいつもの大橋トリオの路線の延長線といった感じで、あまり目新しさを感じなかったのは残念でした。

評価:★★★★

大橋トリオ 過去の作品
A BIRD
I Got Rhythm?
NEWOLD
FACEBOOKII
L
R

FAKE BOOK III
White
plugged
MAGIC
大橋トリオ
PARODY
10(TEN)
Blue
STEREO
植物男子ベランダー ENDING SONGS
植物男子ベランダーSEASON2 ENDING SONGS
THUNDERBIRD
This is music too
NEW WORLD
ohashiTrio best Too
ohashiTrio collaboration best -off White-
カラタチの夢

PORTRAIT/フジファブリック

フジファブリックの新作は、かなりバラエティーに富んだ作風が印象的なアルバム。フレデリックと組んだ「瞳のランデヴー」のようなディスコチューンがあったり、アコギでしんみり聴かせる「月見草」みたいな曲があったり、「ショウ・タイム」のようなギターロックのナンバーがあったりと、バラエティー豊か。その分、若干方向性があいまいな部分もあったりするのですが、それも含めてこの音楽性の自由さがフジファブリックらしさなのかもしれません。

評価:★★★★

フジファブリック 過去の作品
TEENAGER
CHRONICLE
MUSIC
SINGLES 2004-2009

STAR
VOYAGER
LIFE
BOYS
GIRLS
STAND!!
FAB LIVE
F
FAB LIST 1
FAB LIST 2
I Love You

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2024年4月12日 (金)

伝説のライブ

今回紹介するのは、かなりアンダーグラウンドなテイストの強いライブアルバム。「キングオブノイズ」という異名を持つノイズバンド、非常階段と、一部のライブハウスでは出禁になるほどの過激なパフォーマンスが話題を呼んだパンクロックバンド、ザ・スターリンの共演が大きな話題を呼んだ1981年4月に京都・磔磔で行われた伝説的ライブイベント「Answer」の模様を収録したライブアルバム。特に、ザ・スターリンのライブパフォーマンスはいままでブート盤でしか公表されたことはないそうで、今回、初の正式音源化ということでも大きな話題となっているようです。

Title:Answer 81 1981.4.19. Vol.1
Musician:非常階段+アウシュビッツ+ほぶらきん

こちらはその「キングオブノイズ」非常階段に、共演となるアウシュビッツ、ほぶらきんの3バンドが合わさったライブ盤。まず最初は非常階段の演奏が42分強、延々と続きます。即興のノイズパフォーマンスが続いていき、ただただ分厚いノイズが続くアバンギャルドな演奏。かなり好き嫌いは別れると思いますが、慣れてくると、不思議とこの不協和音的なノイズが心地よく聴こえてくるから不思議です(笑)。この音の洪水を延々に聴かされると、トリップして気持ちよくなるか、気が狂いそうになって気持ち悪くなるか、どちらかのような・・・。

その後のアウシュビッツ、ほぶらきんというバンドは今回が完全な初耳。アウシュビッツはノイズミュージックのためのインディーレーベルとして知られるアルケミーレコードをJOJO広重と共に立ち上げた、ロックバンドINUの元メンバーだった林直人のバンド。ダイナミックでヘヴィーなバンドサウンドを聴かせるロックバンドで、そのサウンドからはプログレからの影響も感じさせます。こちらも分厚いバンドサウンドとギターノイズで埋め尽くされた音が特徴的なのですが、力強い迫力ある演奏が印象に残ります。

そしてユニークだったのがほぶらきんというバンド。関西でわずか4年だけ活動し、4枚のEPと2枚のソノシートだけ残したバンドなのですが、かなりアバンギャルドでユーモラスあふれる音楽性が特徴のバンドで、一部でカルト的な人気を集めたとか。曲はどれも長くて2分程度という曲が続くのですが、フリーキーなサウンドをバックにとにかく叫びまくる音楽性がかなり自由でユニーク。かの石野卓球も音楽的に影響を受けたそうで、確かに、このユーモラスで自由な音楽性は、特に初期に電気グルーヴに通じるものも感じられました。

評価:★★★★★

Title:Answer 81 1981.4.19. Vol.2
Musician:ザ・スターリン

で、Vol.2がスターリンのライブ音源。彼らの音楽性はかなりストレートなパンクロック。疾走感あふれるバンドサウンドに、ボーカル遠藤ミチロウの激しくシャウトするボーカルが特徴的。このライブアルバムは全15曲という内容ながら、30分弱という長さで、1曲あたり2分弱。勢いがあり一気に楽曲を畳みかけるようなライブパフォーマンスとなっています。

音源的には決してクリアではなく、ザラザラとした音感があります。ただ、この決してクリアではない音が逆にまるでライブ会場にいるかのようなリアリティーを与えて、楽曲の迫力をより強く感じさせます。バンドサウンドはかなり荒々しく、とにかくパンクロックの初期衝動をそのまま体現化したようなサウンド。ある意味、売れてしまって毒気が抜かれた「パンクロックバンド」が多くなってしまっている現在ですが、まさにパンクロックが本来持っていた迫力と毒気が、そのまま伝わってくるようなライブアルバムとなっています。

これがパンクロックだ!ということを、ちょっと陳腐な表現ながらも強く感じさせるライブアルバム。これ、生で見たらすごかっただろうな・・・ということを感じてしまいます。確かに、Vol.1の3バンドあわせて、これが同じライブステージで見れたとしたら、かなり圧倒されたろうな、と感じますし、この4つのバンドが同じ場所にいたこと自体が驚きを感じます。確かに、これは「伝説」になるようなライブだ、ということを強く感じた作品。アンダーグラウンド的なバンドが並ぶアルバムですが、ぜひともチェックしてほしいライブアルバムです。

評価:★★★★★

非常階段 過去の作品
初音階段(非常階段 starring 初音ミク)

ザ・スターリン 過去の作品
I was THE STALIN~絶賛解散中~完全版


ほかに聴いたアルバム

Indian Burn/Ken Yokoyama

約2年半ぶりとなる横山健のニューアルバム。ある意味、非常にいい意味で愚直なメロディアスパンクといった印象で、シンプルでストレート、メロディアスなパンクロックのナンバーが並ぶアルバム。前作「4Wheels 9Lives」はバラエティー富んだ展開となっていましたが、本作は「Deep Red Morning Light」のように裏打ちのリズムで軽快に聴かせるようなナンバーもあったり、ヘヴィーなナンバーから、ポップなメロを押し出したナンバーまでそれなりにバリエーションも聴かせつつも、基本的にはシンプルなパンク志向の楽曲となっていたように感じました。

評価:★★★★

Ken Yokoyama 過去の作品
Four
Best Wishes
SENTIMENTAL TRASH
Ken Yokoyama VS NUMBA69(Ken Yokoyama/NAMBA69)
Songs Of The Living Dead
4Wheels 9Lives

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2024年4月11日 (木)

Creepy NutsはTikTokチャートでも快進撃

今週のHot Albums

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今週、1位は韓国の男性アイドルグループが獲得。

今週1位は韓国の男性アイドルグループTOMORROW×TOGETHERの韓国盤のミニアルバム「minisode 3:TOMORROW」が獲得しました。CD販売数1位、ダウンロード数2位。オリコン週間アルバムランキングでも初動売上17万4千枚で1位初登場。直近作の韓国盤のフルアルバム「The Name Chapter:FREEFALL」の初動22万5千枚(1位)からはダウンしています。

2位はPSYCHIC FEVER from EXILE TRIBE「PSYCHIC FILE Ⅱ」が獲得。名前の通り、LDH所属の男性ダンスグループによる2枚目のEP盤。CD販売数2位、ダウンロード数17位。オリコンでは初動売上2万枚で2位初登場。前作「PSYCHIC FILE Ⅰ」の初動3万枚(3位)からはダウンしています。

そして3位初登場がSwitch「あんさんぶるスターズ!!アルバムシリーズ『TRIP』」。CD販売数3位、ダウンロード数16位。男性アイドル育成ゲーム「あんさんぶるスターズ!!」のキャラクターソングCD。オリコンでは初動売上1万枚で3位初登場。同シリーズの前作流星隊名義による「あんさんぶるスターズ!!アルバムシリーズ 『TRIP』」の初動1万1千枚(4位)からは若干のダウンとなりました。

以下、4位以降の初登場盤です。4位にはNovelbright「CIRCUS」。爽やかでポップなメロがインパクトのある人気上昇中のロックバンドによる4枚目のフルアルバム。6位にはCHIMIRO「CHIMIRO VOL.2」が初登場。韓国の人気俳優チャン・グンソク率いるバンドによるアルバム。9位にはxikers「HOUSE OF TRICKY:Trial And Error」が初登場でランクイン。こちらも韓国の男性アイドルグループによる3枚目のミニアルバムとなります。


今週のHeatseekers Songs

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今週の1位はGyubin「Really Like You」。韓国の若干17歳のシンガーソングライター。ギターサウンド中心の作品で、さしずめ「ギター女子」といった感じでしょうか。日本で言えば、miwaあたりを彷彿とさせるような作風。もしくはアヴィリル・ラヴィーンあたりもイメージできるかもしれません。今後、K-POPの波にのって、日本でもブレイクなるでしょうか?


今週のTikTok Weekly

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Hot100でも圧倒的な強さで1位をキープしているCreepy Nuts「Bling-Bang-Bang-Born」がTikTok Weeklyでも1位を獲得。こちらは2週ぶりの1位返り咲きとなります。まだまだこの曲のヒットは続きそうです。


今週のニコニコVOCALOID SONGS

https://www.billboard-japan.com/charts/detail?a=niconico

1位はンバヂ(nbaji)「好きな惣菜発表ドラゴン」が先週から引き続き1位を獲得。ある意味、出オチ的な部分も多いネタ動画なので、ヒットは短期的かな、と思いきや、まだまだ話題は続いているようです。

今週は以上。チャート評はまた来週に!

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2024年4月10日 (水)

Creeoy Nutsの快進撃が続く

今週のHot100

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今週は、なんとCreepy Nutsの曲がもうあと1曲ランクインしています。

まず1位は今週も、Creepy Nuts「Bling-Bang-Bang-Born」。先週に引き続き、ダウンロード数、ストリーミング数、YouTube再生回数、カラオケ歌唱回数で1位を獲得。これで11週連続の1位&12週連続のベスト10ヒットを記録しています。

さらに今週、9位に同じくCreepy Nutsの「二度寝」がランクイン。CD販売数18位、ダウンロード数2位、ストリーミング数8位。こちらは話題となったTBS系ドラマ「不適切にもほどがある!」主題歌で、「Bling-Bang-Bang-Born」と両A面シングルとしてもリリースされています。こちらもかなり強力なタイアップがついている曲なだけに、今後もロングヒットとなっていくのでしょうか。

2位は先週と変わらずOmoinotake「幾億光年」がランクイン。ストリーミング数が5週連続の2位、YouTube再生回数も7位から5位にアップ。ただダウンロード数は3位から7位にダウンしています。これで今週、ついにベスト10ヒットは連続8週に。今後もロングヒットが続くのでしょうか。

一方、先週、3位にランクアップしたtuki.「晩餐歌」は今週4位にダウン。ストリーミング数も3位から4位にランクダウン。ただ一方、ダウンロード数が19位から11位に大幅アップしたほか、YouTube再生回数も4位から3位にアップ。まだまだ根強い人気を感じます。ベスト10ヒットもこれで19週連続となりました。

そして代わりに3位にランクインしてきたのが先週8位にランクインしてきた韓国の女性アイドルグループILLIT「Magnetic」。今週、ストリーミング数が7位から3位にアップし、ランクイン2週目にしてベスト3入りを果たしています。

続いて4位以下の初登場曲ですが、5位にリアルアイドルプロジェクト「トキメキUNITED」がランクイン。男性アイドルグループ38組の参加したプロジェクトによる楽曲。CD販売数1位、その他はランク圏外となっています。オリコン週間アルバムランキングでも今週、初動8万1千枚を売り上げて1位となっています。

ロングヒット曲はまず8位にYOASOBI「アイドル」が先週からワンランクダウンでランクイン。ストリーミング数は6位から7位とダウン。一方、YouTube再生回数は8位から7位と若干のアップ。これでベスト10ヒットは連続52週となりました。

またMrs.GREEN APPLE「ケセラセラ」は9位から10位にダウンするも今週もベスト10をキープ。根強い人気を見せています。これで通算26週目のベスト10ヒットとなっています。

一方でVaundy「怪獣の花唄」は今週10位から11位にダウンして再びベスト10落ち。ベスト10ヒットは通算58週でまたストップとなりました。

今週のHot100は以上。来週はHot Albumほか各種チャートの紹介となります。

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2024年4月 9日 (火)

女王、降臨 再び

Title:ユーミン乾杯!!~松任谷由実50周年記念コラボベストアルバム〜
Musician:松任谷由実

2022年にデビュー50周年を迎え、ベストアルバム「ユーミン万歳!」をリリースした松任谷由実。そのデビュー50周年企画のラストを飾るのが本作。今回はコラボベストと題したアルバムなのですが、過去のコラボ曲を収録・・・という形ではなく、彼女の代表曲を様々なミュージシャンがリアレンジしてコラボするという企画盤。ユーミン自らミュージシャンの選定や企画、選曲にも関わったそうで、今回、10組のミュージシャンとのコラボが実現しています。

そんな中でも大きな話題となったのは、桑田佳祐とのコラボ「Kissin’ Christmas (クリスマスだからじゃない) 2023」。もともとは桑田佳祐&His Friends名義の「Kissin’ Christmas (クリスマスだからじゃない) 」というタイトルで1986年、87年に放送された日テレ系音楽番組「Merry X'mas Show」のテーマ曲として使用されたものの、長らく音源はリリースされず、2012年に桑田佳祐のベストアルバム「I LOVE YOU -now & forever-」に収録されて話題となりました。

今回、その曲をあらためて松任谷由実とのデゥオという形で収録。途中、お互いの代表曲をそれぞれがカバーするという遊びの要素も入るような、ユニークで楽しいカバーに仕上がっています。また、松任谷由実、小田和正、財津和夫名義で1985年にリリースされ、こちらも長いことCD化されてこなかった「今だから」もCD初収録。こちらも大きな話題となっています。

そんな話題性も強いコラボアルバム。岡村靖幸らしいファンキーに仕上げた「影になって」や、PerfumeっぽいエレクトロアレンジのYOASOBIとのコラボ「中央フリーウェイ」、この手のコラボでは常連のRHYMESTERとのコラボ「SATURDAY NIGHT ZOMBIES」、パーカッションやホーンでエキゾチックなバンドサウンドに仕上げたSuchmosのYONCEとのコラボ「真珠のピアス」、原曲の持つ妖艶さをさらに強調したくるりとのコラボ「輪舞曲」、彼女たちらしいロックンロール風のアレンジに仕上げたGLIM SPANKY「真夏の夜の夢」など、ユーミンの曲を様々なスタイルでカバーしたバラエティーに富んだ構成がとてもユニークに感じます。

ただし、ここにユーミンが現れると風景が一変します。もう、どう考えてもユーミンの曲にしか聴こえない。それまで耳に惹かれていたコラボ相手の独特の個性は完全にぶっ飛んで、ユーミンの声しか耳に入ってきません。コラボ相手のミュージシャンたちは完全に「前座」扱い。バンドならばバックバンド扱いですし、ボーカルは完全にバックコーラス。もう圧倒的に松任谷由実の姿しか、そこには入ってきません。

特にすごかったのが乃木坂46と小室哲哉とのコラボによる「守ってあげたい」で、乃木坂46は終始、バックコーラスの「その他大勢」扱い。あれだけ個性の塊である小室哲哉ですら、彼らしいアレンジは控えめで、完全に松任谷由実の曲、としか感じられません。特に乃木坂に対してはボーカリストとしての格の違いを見せつけている、としか思えません。

もちろん、「Kissin' Christmas」に関しては完全に桑田佳祐と対等のコラボとなっていますし、「今だから」もさすがに他のユーミンだけの曲にはなかっていないのですが、本当の意味でコラボ曲と言えるのはこの2曲だけなのでは?あえて言えば、GLIM SPANKYの松尾レミのボーカルは、ユーミンにいい勝負を挑めるだけの個性はありましたし、YONCEやくるり、岡村靖幸のカバーも、それなりにユーミンの曲の中で個性を出したアレンジにはなっていましたが、女王の前でいい勝負が出来た、程度となっており、結果としては完全にユーミンカラーに染め上げられてしまっています。

そう考えるとコラボとしての意義については若干疑問にすら感じてしまいます。もともとユーミン自体、非常にあくの強いボーカリストであり、どんな曲でも彼女が登場すれば完全にユーミン色に染まってしまう訳で、そんな中、コラボ相手に遠慮なく、ボーカルを前に押し出したような楽曲構成については、もうちょっと考えてほしかったな、とは思うのですが。ただ、自己顕示欲の強いミュージシャンたちの中でも、特に自己顕示欲の強い松任谷由実だからこそ、こういうスタイルでのコラボになってしまった、そんな感じがしました。

様々なミュージシャンたちの演奏の中で、まさに松任谷由実が降臨し、他のミュージシャンたちは、ただただ彼女を崇めたてるしかなかった・・・そんな風景が思い浮かぶようなアルバム。逆に言えば、ユーミンのファンにとってみれば、原曲のイメージも崩れず、楽しめるアルバムにはなっていたと思いますし、変なアレンジや試みがない点、いい意味でも安心して聴けるアルバムにはなっていたかと思います。いろいろな意味で松任谷由実らしいアルバムでした。

評価:★★★★

松任谷由実 過去の作品
そしてもう一度夢見るだろう
Road Show
日本の恋と、ユーミンと。
POP CLASSICO
宇宙図書館
ユーミンからの、恋のうた。
深海の街
ユーミン万歳! ~松任谷由実50周年記念ベストアルバム~


ほかに聴いたアルバム

世紀のうた・心のうた -服部良一トリビュート-

戦前から戦後にかけて活躍し、数多くのヒット曲を世に送り出した作曲家、服部良一。今年はNHK朝の連続テレビ小説で、彼が作曲を手掛けて、数多くのヒット曲を歌った笠置シヅ子をモデルとしたドラマが放送されて話題になりました。おそらく、それに連動した企画なのでしょうが、服部良一のトリビュートアルバムがリリース。真心ブラザーズ、曽我部恵一、スチャダラパー、小西康陽など豪華なミュージシャンたちが名前を連ねています。

カバーは基本的に原曲に充実ながらも、それぞれの個性もしっかりと出ている点がユニーク。真心ブラザーズがカバーした「ヘイヘイブギー」はYO-KINGのボーカルもマッチさせた軽快なブギに仕上げていますし、「おしゃれ娘」をサンプリングしたスチャダラパーの「おしゃれミドル」も彼ららしい、ユーモラスで軽快な楽曲に。後半は、石丸幹二、望海風斗、井上芳雄といったミュージカル経験者の歌手がカバーしていますが、こちらも実力者らしい伸びやかで力強い歌をしっかりと聴かせてくれています。実力者がしっかりと集ったカバーアルバムに仕上がっていました。

評価:★★★★★

再生-Saisei-/DJ KRUSH

約4年2ヶ月ぶりとなるDJ KRUSHのニューアルバム。アルバム全体、不穏な空気の流れる作風が印象的。サウンド的には「奇迷-Kimei-」のように、比較的、今風のビートを奏でるような曲もあるものの、全体的には最新鋭のHIP HOPのビートといった感じではありません。ただ、非常にエッジを効かせたタイトなサウンドは非常にカッコ良いものがあり、アルバム全体を流れる空気感も統一されており、耳を惹きつけるものがあります。ビートメイカーとしての実力を感じさせてくれる作品でした。

評価:★★★★★

DJ KRUSH 過去の作品
Butterfly Effect

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«ミュージシャンの個性と楽曲の魅力をしっかりと感じさせるカバー