2025年5月19日 (月)

川谷絵音がまたもや新バンド!

Title:SOME BUDDY
Musician:礼讃

indigo la Endやゲスの極み乙女の川谷絵音のニューバンド、礼賛のニューアルバム。いままで配信で1作リリースしており、これがアルバムとして2作目となるようです。ただ、1作目は見逃しており、個人的にアルバムを聴いてみるのは本作が初めてとなります。川谷絵音は前述のindigo la Endやゲスの極み乙女の他にもジェニーハイやichikoroなどのバンドにも参加しており、このバンドは一体何組目だよ?とも思うのですが、ワーカホリックなその仕事ぶりが目立ちます。

今回のバンドはもともと、川谷絵音がはじめた自分の曲を様々な人に歌ってもらうプロジェクト、美的計画に、お笑いコンビ、ラランドのサーヤが参加したことがきっかけ。川谷絵音から声をかけて結成となったそうです。彼女がボーカルで参加しているほか、川谷絵音とおなじくゲスの極み乙女に所属している休日課長もベーシストとして参加。ほか、ギターの木下哲、ドラムスにDALLJUB STEP CLUB、あらかじめ決められた恋人たちへのGOTOが参加。総勢5名でのバンドとなっています。

ジェニーハイもそうでしたが、お笑いタレントと組んでいるあたり、川谷絵音は積極的に音楽業界の外部の人と組んで、音楽業界の中の人だけでは生み出せないような新たなケミストリーを生み出したいのでしょうか。ただ、例の不倫騒動も加味すると、単なる「芸能界好き」なような印象も受けてしまうのですが(笑)

ただジェニーハイもそうでしたが、企画的なものかと思いきや、かなり本気モード。これだけワーカホリックな感じだと、楽曲のクオリティーが下がりそうな感じですが、クオリティーが下がるどころか、むしろここ最近の川谷絵音関連の音源の中では、もっともクオリティーが高いのでは?と思うような傑作に仕上がっています。楽曲は、どちらかというとゲスの極み乙女につながるような、ラップテイストの楽曲がメインなのですが、メランコリックなメロディーラインと、ジャズやファンクなどの要素を加えて、エッジを利かせたサウンドとの組み合わせが見事。疾走感あるリズミカルな「SLUMP」からスタート。メランコリックなメロディーラインがindigoにも通じるような「鏡に恋して」、同じくおなじお笑いユニットの令和ロマンの高比良くるまがラッパーとして参加。ちょっと不穏な雰囲気がカッコいい「GOLDEN BUDDY」など、序盤からかなり飛ばしまくった曲が続きます。

その後もサウンドにジャズ的要素を加えた「ウラメシヤ」や、疾走感あるロックチューンに、ファンキーなギターがカッコいい「Bless u」、ホーンセッション入ってファンキーで爽やかな「曖昧なBEACH」、RIP SLYMEのRYO-Z、ILMARI、DJ FUMIYAも参加し、HIP HOPテイストも強い「TRUMAN」など、HIP HOP、ロック、ジャズ、ファンクなどを自由に楽曲に組み込みポップにまとめあげる、バラエティー富んだ作風が魅力的な作品に仕上がっています。

ちなみに礼賛に関して、作詞はCLRことラランドのサーヤ、作曲もCLRと礼賛の共同名義となっていますが、作詞はともかく、作曲の方は、かなり川谷絵音の手癖も強い楽曲となっており、明らかに川谷絵音が主導の曲作りになっていることを感じさせます。バンド名義なのでおそらく最初のメロの原案をCLRが作り、全員のセッションの中で楽曲を作りあげつつも、なんだかんだいってもやはり川谷絵音がまとめあげていく、という流れなのでしょうか。そういう意味では間違いなく川谷絵音のバンドのアルバムとなっています。

一方、もうひとつ特筆したいのが、ボーカルのCLR。ちょっと気だるい感じの声色が非常に印象的でインパクトがあり、マイナーコード主体な礼賛の楽曲にもピッタリマッチしています。最初、プロのシンガーかと思いきや、お笑いタレントということでビックリしたのですが、確かに美的計画で組んだことをきっかけに川谷絵音から声がかかった、という理由はわかるような気がします。彼女のボーカルもまた、バンドとしての大きな魅力となっており、また礼賛というバンドを特徴づける大きな要素となっていました。

スタートしたばかりのバンドということで勢いもあり、おそらく川谷絵音も新鮮な気持ちでバンドに加わっているのでしょう。また、バンドとしての雰囲気もいいのかもしれません。個人的に年間ベストクラスの傑作だと思います。それにしても川谷絵音は、あれだけ多くのバンドに加わり、なおかつ同時並行的にコンスタントに活動を行っているのが驚くべきところ。あらためて彼のアグレッシブな活動ぶりとその実力に感嘆する作品でした。

評価:★★★★★


ほかに聴いたアルバム

BLUE/Galileo Galilei

Bluegalileo

Galileo Galileiの過去の楽曲を再録した、配信限定のアルバム(ただし、一部ライブ会場ではCD販売された模様)。アルバム最後に収録されている「あおにもどる」以外は、過去作のリメイクとなっているため、ベスト盤的に楽しめるアルバムと言えるかも。楽曲は「青」をテーマにセレクトされているため、そういう意味ではコンセプトアルバムとも言えるかもしれません。楽曲は全体的に分厚いバンドサウンドにエレクトロサウンドの要素も取り入れて、メランコリックなメロで聴かせる特徴的。そんなにガラリと大きく変化したような感じはしないのですが、コンセプチャルな方向性が若干頭でっかちに感じる部分も含めて、彼ららしいといった感じでしょうか。

評価:★★★★

Galileo Galilei 過去の作品
パレード
PORTAL
Baby,It's Cold Outside
ALARMS
SEE MORE GLASS
Sea and The Darkness
車輪の軸
Bee and The Whales
MANSTER
MANTRAL

Vermillion's/sumika

メンバーの黒田隼之介の急逝というショッキングな出来事を経て、3人組となったsumika。その後もメンバーの体調不良などで活動の一時休止を余儀なくされた時期もあるなど、バンドとして困難な時期を経た彼らですが、シングルやライブはその間も比較的積極的に活動を続け、このたびようやくアルバムがリリースされました。ただ、そんな彼らですが、楽曲のスタイルは基本的には変わりなく。ピアノやストリングスなどを使った陽気なポップソングがメイン。アニメ「ダンジョン飯」のテーマ曲となった「運命」をはじめ、聴いていて素直に楽しくなるポップスが彼らの持ち味ゆえにタイアップ曲も多いのでしょう、14曲中8曲までがタイアップという構成となっています。同じように陽気で明るいポップスを奏でるMrs.GREEN APPLEがあれだけ爆発的に売れているのだから、彼らももうちょっと売れてもいいようにも思うのですが。

評価:★★★★

sumika 過去の作品
Familia
Chime
Harmonize e.p
AMUSIC
For.
Sugar Salt Pepper Green(sumika[camp session])

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2025年5月18日 (日)

いつまでも聴き続けたいドリーミーでキュートなポップアルバム

Title:Sinister Grift
Musician:Panda Bear

途中、ソニック・ブームとのコラボアルバムのリリースはあったものの、純粋なオリジナルアルバムとしては約5年ぶりとなるPanda Bearの新作。オルタナティブ・ロックバンド、Animal Collectiveのメンバーによるソロアルバムです。アニマル・コレクティブのメンバーだからパンダ・ベアなのか、それともパンダ・ベアがメンバーだからアニマル・コレクティブなのか・・・。

・・・というどうでもよい話は置いておいて、Panda Bearの久々となる新作。各所で絶賛を受けているようですが、私もこれを聴いて一発で気に入った、これでもかというほど心地よいポップスアルバムに仕上がっていました。まず、アルバムの1曲目を飾る「Praise」はビーチ・ボーイズ直系の60年代っぽい雰囲気を醸し出す、爽やかでキュートなポップチューン。これが2曲目のミディアムチューン「Anywhere but Here」にも続き、 特にコーラスラインの美しさに耳を惹かれる珠玉のポップチューンに仕上がっています。

ただ、おもしろいのはこれからで、この美メロはそのままに、単純な懐古趣味的なポップスとも異なるバラエティー富んだ展開が待ち受けています。中盤の「Ends Meet」も非常に美しいメロディーラインとコーラスワークが耳を惹くドリーミーなポップ。序盤のフォークロックの色合いも強かった曲と比べると、こちらはエフェクトやシンセサウンドなど、微妙にサイケの要素の強いナンバーに仕上がっていますし、「Just as Well」は裏打ちのほっこりした雰囲気のギターに載せてポップな歌を聴かせるミディアムチューンの楽曲。さらに「Just as Well」もそうですが、続く「Ferry Lady」もレゲエの要素が加わったナンバー。美しいメロディーと横ノリのリズムが心地よいナンバー。個人的にはちょっと日本のキセルを彷彿としました。

さらにユニークなのは終盤で、よりドリーミーさが加わります。ファルセットボーカルとドリーミーなサウンドで、神秘的にすら感じるドリームポップ「Left in the Cold」に、メランコリックなギターと神秘的なサウンドで、荘厳さすら感じられる「Elegy for Noah Lou」と終盤は、神秘的かつメランコリックな曲が続きます。そして最後のナンバーはCindy Leeも参加した「Defense」は、バンドサウンドが加わり、力強いサウンドを感じさせる楽曲。もちろん、キュートでポップなメロはこちらも健在なのですが、最後は力強いギターポップで締めくくりという展開となります。

これでもかというほど心地よい、キュートでポップなメロが耳を惹くアルバム。当初は60年代のギタポやフォークロックの流れを感じさせるような楽曲が続くのですが、そんなギタポやフォークロックの路線は残しつつも、中盤からサイケロックやレゲエ、今どきのドリームポップの要素を入れており、懐かしいギタポの魅力は残しつつ、しっかりと今風にアップデートしている作品に仕上がっていました。ドリーミーなサウンドをバックに流れるキュートなメロがとにかく気持ちよく、このままずっと聴き続けていたい、と感じた作品。文句なしの2025年ベスト盤候補の傑作です。

評価:★★★★★

Panda Bear 過去の作品
2014-05-18:Warsaw,Brooklyn,New York
Buoys

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2025年5月17日 (土)

美メロは健在!

Title:Constellations For The Lonely
Musician:Doves

イギリスはマンチェスター出身のロックバンド、Doves。もともと2020年のデビュー作「Lost Souls」が話題となり、2002年の「The Last Broadcast」は日本でも大きな話題になりました。とろけるようなドリーミーでポップなメロディーラインが大きな魅力で、私もかなりはまりました。その後、2010年にはバンドは活動休止。ただ、2018年には活動を再開し、活動再開後初となるアルバム「The Universal Wants」は全英チャートで1位を取るなど、まさに本国では待ちに待たれた復活になっています。

本作は、そんな活動再開後、2作目となるバンド6枚目のアルバム。全英チャートでは見事5位を獲得し、その変わらぬ人気を感じます。ただ、リードボーカルのひとり、ジミ・グッドウィンの精神状況が良くないようで、このアルバムに伴うツアーも参加していないようです。彼の健康状況は非常に気に係るところですが、本作のレコーディングには参加しており、全10曲中7曲でリードボーカルをつとめています。

そんな本作もDovesらしいドリーミーでポップなメロディーラインは健在。冒頭を飾る「Renegade」などはまさしく、バンドサウンドにピアノの音色やシンセも加えた分厚いサウンドに、ポップなメロディーラインが魅力的なドリーミーな作品に。「In The Butterfly House」でも同じく、シンセやピアノの音色でドリーミーな、暖かみを感じるポップスに。これらの曲はジミがボーカルを取っているのですが、逆にジャズ・ウィリアムズがボーカルをつとめる「Strange Weather」では、同じドリーミーな作品でも、どこか凍てつくような感じのサウンドとなっています。

今回の作品、特に終盤が素晴らしく、イントロの美しさにまず耳を惹かれる「Stupid Schemes」はフォーキーなメロディーラインに懐かしさを感じさせつつ、ミディアムチューンの「Saint Teresa」も同じくフォーキーで優しいポップス。ピアノとエレピの音色をからませつつ、メランコリックに聴かせる「Orlando」に続き、ラストの「Southern Bell」は哀愁たっぷりのメロと力強いバンドサウンドで締めくくる、バンドとしてのDovesを感じさせる楽曲に。終盤のナンバーは、いずれもメランコリックなメロディーラインがインパクトを持つ、Dovesらしい優しくポップなメロが強い印象を持つ楽曲で締めくくり、Dovesの魅力を存分に感じることが出来ます。

今回のアルバムもDovesらしい傑作アルバムに仕上がっていたのですが、なぜか日本では全くといっていいほど紹介されていません。前作「The Universal Wants」では、国内盤までリリースされていたのに、本作は国内盤のリリースがないどころか、輸入盤についても音楽雑誌の紹介が全くなし。Webメディアでもほとんど取り上げられてません。今回のアルバムリリースに私が気が付いたのは、イギリスの公式チャートを見ていて、チャートインしているのを偶然見つけたから。確かにアメリカやイギリスで売れていても、日本人受けしなさそうなミュージシャンは日本ではほとんど紹介されないのですが、彼らの場合、十分日本人受けしそうですし、実際、前作は国内盤までリリースされていたのになぜ?

これまでのDovesのアルバムを気に入っている方ならば、本作も間違いなく気に入る傑作アルバムだと思います。ジミの健康状況は気になるようですが、無理はしないように・・・でも、これからの活躍にも期待。日本でも以前みたいに人気が伸びてこればよいのですが・・・。

評価:★★★★★

Doves 過去の作品
Kingdom of Rust
The Universal Want


ほかに聴いたアルバム

Tears of Injustice/Mdou Moctar

おそらく、今、最も注目されているアフリカのミュージシャンの一組であるニジェール共和国出身の4人組バンドMdou Moctar(エムドゥ・モクター)。前作「Funeral for Justice」も前々作「Afrique Victime」も大きな話題となりましたが、そんな彼らの最新作は、前作「Funeral for Justice」のアコースティックバージョン。バンドサウンドでダイナミックに聴かせてくれた前作から一転、同じ作品をアコースティックな楽器や彼らの民族楽器を用いて演奏するのですが、これがまたガラリと雰囲気が変わります。どちらかというと、よりトライバルな色合いが強まった作品になっているのですが、それだけに彼らのコアな部分に触れたような感じもする作品に。バンドの音楽性の幅広さを感じさせる傑作でした。

評価:★★★★★

Mdou Moctar 過去の作品
Afrique Victime
Funeral for Justice

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2025年5月16日 (金)

今時の曲から懐かしさを感じる曲まで、1つのアルバムにパッケージ

Title:MAYHEM
Musician:Lady Gaga

途中、トニー・ベネットとのコラボアルバムや映画のサントラ盤のリリースはあったものの、純粋なオリジナルアルバムとしては2020年の「Chromatica」以来、約5年ぶりとなるLady Gagaのニューアルバム。現在、アメリカのビルボードチャートで、Bruno Marsと組んだ「Die with a Smile」が大ヒットを記録していますが、もちろん同作も収録。アメリカのビルボードやイギリスのナショナルチャートを含め、世界中でチャート1位を獲得し、相変わらずの人気ぶりを発揮した作品となっています。

相変わらずトップミュージシャンとして絶大なる人気を誇る彼女ですが、そんな彼女の久々のアルバムは、やはりその人気を裏付けるだけのポップスアルバムとして非常に良くできた作品に仕上がっているように感じました。まず冒頭の「Disease」「Abracadabra」はエレクトロビートのダンスチューンからスタート。ここらへんの路線は彼女の大ヒット曲「Born This Way」の路線を彷彿としつつも、2025年にアップデートしたような作品となっています。

そこから展開される「Perfect Celebrity」はよりヘヴィーなサウンドを入れたダイナミックなサウンドに。ロックテイストも強い楽曲となっている一方、インダストリアル路線は「Abracadabra」とつながっており、ここらへんは楽曲の流れとして上手く展開していきます。

さらに中盤以降は、序盤と同じくダンスチューンながらも、80年代ディスコサウンドを彷彿とさせるような楽曲が並びます。「Zombieboy」にタイトルからしてディスコチューンっぽい「LoveDrug」「Shadow Of A Man」とディスコテイストのナンバーが後半に並びます。現代風だった序盤から、リスナーのスイッチがちょっと懐かしい路線にシフトし、さらにバラードナンバーでしんみり聴かせる「Blade Of Grass」から、そしてラストはメランコリックで、郷愁感も覚えるミディアムチューン「Die With A Smile」へ。ビルボードチャートで5週連続の1位を獲得し、今でもチャート上位にランクインし続ける大ヒットナンバーへ、うまく楽曲はつなぎ、そしてアルバムは幕を下ろします。

序盤のエレクトロダンスチューンにインダストリアルテイストのナンバー、さらにディスコチューンからバラード、そしてメランコリックで懐かしさを感じるラストナンバーまで、現代から過去へ自由に行き来する音楽性を見事1つのアルバムにパッケージしています。正直、楽曲自体はよく出来ていると感じる一方で、目新しさには薄い点はいままでの彼女の作品と同様。ただ一方、インパクトあるポップなメロディーラインの楽曲が並ぶ点、アルバム全体にバラエティー富ませながら、しっかり一体感を出した構成となっている点はさすがのひとこと。彼女の人気の理由もしっかりとわかるアルバムになっていたと思います。

評価:★★★★★

LADY GAGA 過去の作品
The Fame
BORN THIS WAY
ARTPOP
Cheek to Cheek(Tony Bennett & Lady Gaga)
Joanna
A Star Is Born Soundtrack(アリー/ スター誕生 サウンドトラック)(Lady Gaga & Bradley Cooper)
Chromatica
BORN THIS WAY THE TENTH ANNIVERSARY
Dawn Of Chromatica
Love For Sale(Tony Bennett & Lady Gaga)
Harlequin


ほかに聴いたアルバム

The Moment Of Truth: Ella At The Coliseum/Ella Fitzgerald

ご存じジャズボーカリストのレジェンド、エラ・フィッツジェラルドの発掘ライブ音源。1967年6月30日にオークランド・コロシアムで録音された音源で、ヴァーヴ・レコーズの創設者ノーマン・グランツのプライベート・テープ・コレクションから発掘されたようです。1967年といえば、エラの全盛期ともいえる頃。演奏は、これまた絶頂期のデューク・エリントン・オーケストラがつとめており、それだけに非常に聴きごたえある貴重な音源。軽快なスウィングのリズムをバックにきかせるエラの歌声は、やさしさと力強さを同居させた絶妙な表現力に、聴いていてゾクゾクさせられます。文句なしに要チェックのライブ発掘音源です。

評価:★★★★★

Ella Fitzgerald 過去の作品
Ella At The Hollywood Bowl: The Irving Berlin Songbook

Richard Russell Is Temporary/Everything Is Recorded

RADIOHEADやFontaines D.C.などが所属するレコードレーベル、XL Recordingsの総帥であり、デーモン・アルバーンやボビー・ウーマックのプロデュースも手掛けるリチャード・ラッセルのソロプロジェクト、Everything Is Recordedの3枚目となるスタジオアルバム。サンファやカマシ・ワシントンなど多くのミュージシャンが参加した本作は、「もしフォークミュージックが80年代にレゲエと同じように『デジタル化』していたら?」という思考実験をテーマとしているそうで、フォークやソウル、カントリーなどのオーガニックな雰囲気の楽曲でありながらも、サウンド的にはシンセや打ち込みを取り入れているというユニークな作風。楽曲のタイプとしてはバラエティー豊富ですが、どの曲もメロウなメロディーラインが流れているという点に共通項も。前述の通りの思考実験をテーマとするなど、実験的な作品でありつつも、作品全体としてはオーガニックな雰囲気は残しており、懐かしくもポップにまとめあげた、いい意味での聴きやすさのあるアルバムとなっていました。

評価:★★★★★

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2025年5月15日 (木)

「ニュース」なアルバムが急上昇

今週のHot Albums

http://www.billboard-japan.com/chart_insight/

今週は、話題となったアイドルのアルバムがベスト10に急上昇してきました。

ただし、1位は別のアイドルグループ。スターダストプロモーション所属の男性アイドルグループ超特急の2枚目となるEP「Why don’t you 超特急?」が獲得です。CD販売数1位、ダウンロード数2位。オリコン週間アルバムランキングでは初動売上15万3千枚で1位初登場。前作「Just Like 超特急」の初動5万枚(2位)からアップしています。

2位は先週まで4週連続1位だったSnow Man「THE BEST 2020-2025」がワンランクダウン。ただ、ストリーミング数は先週と変わらず1位をキープ。3位はMrs.GREEN APPLE「ANTENNA」が先週と同順位をキープ。また、「Attitude」も先週と変わらず4位にランクイン。これで「ANTENNA」は通算34週目のベスト10ヒット&通算24週目のベスト3ヒット、「Attitude」は通算22週目のベスト10ヒットとなっています。

さて、4位以下ですが、今週は表題の通り、ニュースとなったアイドルグループのアルバムがランクインしています。まず9位に嵐「5×20 All the BEST!! 1999-2019」がランクインしています。現在、グループとして実質的に活動を休止している彼らですが、5月6日に正式にその活動を休止することを発表しました。活動休止の表現を取っていますが、事実上の「解散」と言えるでしょう。その影響でベストアルバムがダウンロード数4位、ストリーミング数9位と大幅に上昇。2019年10月23日付チャート以来のベスト10入りとなりました。なお、ベスト10ヒットは通算16週目となります。

また、サブスク解禁を発表したKinki Kidsのベストアルバム「THE BEST」も、ダウンロード数1位、ストリーミング数13位にランクインし、10位にランクイン。こちらは2017年12月20日付チャート以来のベスト10返り咲きとなっています。

一方、ロングヒット盤は、Vaundy「strobo」が5位、「replica」が6位といずれも先週と変わらず。それぞれ通算22週、通算25週目のベスト10ヒットに。Number_i「No.I」は8位から7位にアップ。こちらは通算24週目のベスト10ヒット。timelesz「Hello! We're timelesz」は7位から8位にダウン。こちらは11週連続のベスト10ヒットとなります。


今週のHeatseekers Songs

https://www.billboard-japan.com/charts/detail?a=heat_seekers

今週のHeatseekers Songsチャート1位はAiScReam「愛♡スクリ~ム!」がランクイン。架空のアイドルプロジェクト「ラブライブ!」シリーズの「オールナイトニッポンGOLD」発祥の架空のアイドルグループです。


今週のニコニコVOCALOID SONGS

https://www.billboard-japan.com/charts/detail?a=niconico

なんと今週1位はサツキ「メズマライザー」が昨年10月2日付チャート以来の1位返り咲き。投稿から1周年を迎えた影響の模様。根強い人気を感じさせます。2位は雨良 Amala「ダイダイダイダイダイキライ」が先週と同順位をキープ。先週1位だったマサラダ「イレギュラーマン」は3位にダウンしています。

今週のHot Albums&Heatseekers Songs&ボカロチャートは以上。チャート評はまた来週の水曜日に!

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2025年5月14日 (水)

ベスト3はMrs.GREEN APPLEが独占

今週のHot100

http://www.billboard-japan.com/chart_insight/

なんと今週、ベスト3はMrs.GREEN APPLEが独占するという結果になりました。

まず1位には先週11位に初登場した「天国」が2週目にして一躍1位を獲得。ダウンロード数3位、ストリーミング数1位、ラジオオンエア数2位、動画再生回数4位。映画「#真相をお話します」主題歌。Mrs.GREEN APPLEの大森元貴が主演を務めるそうです。また、「ライラック」が先週の3位からランクアップして2位に、「クスシキ」が入れ替わりで3位にダウン。ただ、これでベスト3をMrs.GREEN APPLEが独占するという結果になりました。「ライラック」はカラオケ歌唱回数は18週連続の1位。ただ、ストリーミング数は2位から3位、動画再生回数も1位から2位にダウン。「クスシキ」もストリーミング数が1位から2位に、動画再生回数も3位から5位にダウン。一方、ダウンロード数は7位から5位にアップ。これで「ライラック」は56週連続のベスト10ヒット&通算40週目のベスト3ヒットとなっています。

Mrs.GREEN APPLEは「ダーリン」も先週から変わらず10位をキープし、16週連続のベスト10ヒットを記録しており、これで4曲同時ランクインしています。

4位以下初登場曲は、4位に旧ジャニーズ系アイドルグループ、元ジャニーズWESTことWEST.「ウェッサイソウル!」がランクイン。タイトルそのままなのですが、ウルフルズのトータス松本が作詞作曲で参加しています。CD販売数1位、その他はチャート圏外。オリコン週間シングルランキングでは初動売上22万3千枚で1位初登場。前作「まぁいっか!」の初動24万2千枚(2位)からダウンしています。

5位には男性アイドルグループDXTEEN「Tick-Tack」がランクイン。吉本工業と韓国のCJ ENMとの合弁会社LAPONEエンタテイメント所属のグループ。CD販売数2位、ラジオオンエア数8位。オリコンでは初動売上5万5千枚で2位初登場。前作「Level Up」の初動4万4千枚(2位)からアップ。

初登場曲は以上。今週、ロングヒット曲はあと1曲のみ。サカナクション「怪獣」が先週と変わらず8位をキープ。ストリーミング数及び動画再生回数6位は先週と変わらず。ダウンロード数が14位から10位にアップ。ここに来てカラオケ歌唱回数が11位から10位と徐々にランクアップしてきています。これでベスト10ヒットは連続12週となりました。

今週のHot100は以上。明日はHot Albums&Heatseekers&ボカロチャート!

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2025年5月13日 (火)

KANに対する愛情が伝わる

今回は最近読んだ音楽関連の書籍の感想です。

この本については、偶然、本屋で見つけて正直なところかなりビックリしました。音楽プロデューサーであり、ライターとしても活躍している鈴木ダイスケの著書「私的KAN論」。おととし、61歳という若さでこの世を去ったシンガーソングライターのKANについて、彼なりの視点で評した1冊。KANというとお茶の間レベルではともすれば「愛は勝つの一発屋」的に扱われているケースが少なくない中、一方ではミュージシャンをはじめ、多くの熱烈なファンを抱えています。とはいえ、こういう形でKANについて語った本が1冊にまとめまってしまうあたり、ちょっとビックリしました。

もっとも、KANというミュージシャンが、ファンにとって語りたくなるミュージシャンというのは、なんとなくわかるような気もします。まずなんといっても、前述の通り、ともすれば「一発屋」扱いされていることもある彼について、「そうじゃないんだ、『愛は勝つ』よりもよっぽどいい曲がたくさんあるんだ」と叫びたくなる気持ちは、ファンなら誰でも持っているでしょうし、また、ビリー・ジョエルやポール・マッカートニーはじめ、洋楽ミュージシャンの要素をさりげなく(時にはかなり大胆に)楽曲に取り入れて、しっかりと日本人の耳になじむようなポップスにまとめあげている彼の音楽的手法は、特に音楽に詳しければ、いろいろと分析して語りたくもあるかと思います。さらに、本書でも語られいるKANの歌詞。都会にどこにでもいるような人物にスポットをあてた歌詞の世界は、誰でも共感できるような内容になっており、それゆえに自らの人生と語り合わせて語りたくなる、というのはよくわかります。

この「私的KAN論」についても、デビュー当初からファンだったという鈴木ダイスケが、思う存分、KANに対する思いを語っており、なによりも純粋に彼がKANのことを好きだったんだなぁ、と読んでいてほほえましくすら感じられる内容でしたし、KANに対する愛情という意味では、同じファンとして非常に共感できる内容になっていました。

本書においては、彼のKANに対する思いを、彼の人生に照らし合わせて語られるほか、同時代に活躍した他のJ-POPミュージシャンへの比較が語られたり、当時のKANのインタビュー記事などもピックアップされ、KANの音楽活動についても同時に語られています。また、音楽プロデューサーらしく、KANの洋楽ミュージシャンからの影響についても分析がなされており、この点についてもあらためて勉強になる部分でした。

また、個人的に興味深かったのは、デビュー直後のKANについて書かれた部分で、その当時のKANがどのような立ち位置にいたか、どのように捉えられていたかということを、著者からの視点ではあるものの、やはり非常に興味深く読むことが出来ました。ここで取り上げられていたのですが、80年代から90年代に人気を博した漫画「ツルモク独身寮」に、KANの「東京ライフ」が登場するんですね。このエピソード、正直今回はじめて知りました・・・。

一方、著者は私より年上の世代となるのですが、そのため、KANや当時のJ-POPに対する見方が、私とは微妙に異なっており、この世代によるギャップにも興味深く感じることが出来ました。年齢が違う・・・といっても、アラフィフくらいになれば、「ほぼ同年代」で括れそうな違いしかないのですが、ただ90年代を、主に大学生から社会人として過ごした著者と、主に中学生から高校生として過ごした私とでは、やはり感じ方、見え方に大きな差があるように感じます。

例えば、後のJ-POPに対する影響という点で、チェッカーズをBOOWYやブルーハーツより大きく取り上げていますが、小中学生時代の学校でのブルーハーツの盛り上がり方やその後の影響を感じると、その記載はちょっと疑問に感じる部分もあります。また、特にギャップを感じるのが堺正章とKANの類似性を書いた記載で、これはもともとミスチルの桜井和寿が言い出したことを著者が同意しているのですが、私くらいの世代だと、堺正章というと、飄々とした雰囲気ながらも芸能界の「ドン」であり、逆らったら怖い人、みたいなイメージがあるのですが、著者くらいの世代だと、まだそこまでの大御所ではなかった時代を見ているので、イメージが異なるのかもしれませんね。さらにKANと似たタイプの男性シンガーソングライターとして大江千里をよく取り上げられており、一方で槇原敬之についてはあまり言及がないもの、やはり世代による違いように感じました。

また、ちょっと残念に感じた部分として中盤、同時期に活躍した男性ミュージシャンについての話が何章かにわたって続くのですが、ここらへんについては読んでいて微妙に感じました。正直なところ、KANと直接的なつながりがない記載も多く(特に小田和正)、わざわざ取り上げている点に違和感も覚えます。どうも著者は仕事などの都合上もあって、90年代中盤についてはちょっとKANからは遠ざかっていた時期があったようで、この頃の記載に関してはかなり薄くなってしまっているのが残念なのですが、後追いでもアルバムは聴いているようなので、この時期のアルバムについても、あらためて音楽的にチェックしたり、後追いでもよいので、当時の雑誌記事などからKANの動向について分析を加えてほしかったな、ということを残念に感じました。

「私的KAN論」という記載の通り、おそらく著者的にもあえてだとは思うのですが、著者の色合い、主張も濃い内容なだけに、著者のKANへの愛情を素直に感じられる反面、それぞれ心の中にKAN像を思い描いているファンにとっては、ちょっと違和感のある部分も出てくるかもしれません。ただ、それを差し引いても、特にデビュー当初からKANを追いかけてきた彼の記載は、やはり興味深い記載も多いですし、なによりも同じKANのファンとして共感できる部分も多く、非常に楽しんで読み進めることが出来ました。こうやって、KANに関するエッセイだけで1冊の本になっちゃうあたり、あらためてKANというミュージシャンの魅力、そして多くのファンを楽しませてきた、という事実を強く感じます。KANが好きならば、まずは手にとって損のない1冊です。

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2025年5月12日 (月)

様々な音を鳴らしつつ

Title:音のする部屋
Musician:君島大空

おそらく、今、もっとも勢いのあるシンガーソングライターの一人といっていいでしょう。君島大空の4枚目となる6曲入りのEP盤。特に2023年には「映帶する煙」「no public sounds」という2枚の傑作アルバムを1年のうちにリリースしてきました。昨年は残念ながら配信限定シングル1曲のリリースのみだったたのですが、ちょっと久々となる新作は、期待に違わぬ傑作アルバムに仕上がっていました。

この「音のする部屋」というアルバムタイトルもなかなか秀逸。もともと、彼の作品は様々な要素を取り込んだ独特の音楽性が大きな魅力だったのですが、今回のアルバムではそのタイトル通り、様々な「音」がリスナーの耳を襲ってくるかの如く作品となっています。1曲目の「除」は、まさにそんなアルバムの冒頭を飾るにふさわしい、様々なエレクトロサウンドが自在に交差するようなアバンギャルドな作品。2曲目「WEYK」は一転、疾走感あるハードロック風のナンバー。メロもポップとなっているのですが、微妙に複雑にからみあっているギターの音も大きなインパクトとなっています。

「Death Metal Cheese Cake」は全くことなる印象を受ける言葉の組み合わせがユニークなタイトルですが、冒頭のインストこそ「デスメタル」っぽさを感じるのですが、その後は祝祭色を感じさせる明るいポップチューンに。ただ、バックに流れるギターや強いビートは若干メタルの影響を感じさせつつ、不気味さも醸し出しており、この微妙なバランスが非常にユニークなナンバーに。

その後も、アバンギャルドなサウンドと、ファルセット気味なボーカルでメロウに聴かせる組み合わせがユニークな「釘」と続き、そんなアバンギャルドさが一転し、静かなギターでメロウに聴かせるムーディーは「迎」と、様々な音を取り入れつつ、バラエティー富んだ展開が実にユニーク。

そしてラストを締めくくる先行シングルともなった「Lover」は、しんみりメロウに聴かせつつも、サビではノイジーなギターと力強いバンドサウンドが加わりスケール感もあるバラードナンバー。ただ、しんみりと聴かせるメロディーラインと切ないラブソングの歌詞はヒットポテンシャル十分のポップチューンに仕上がっており、サイケさも感じるバンドサウンドにアバンギャルドな雰囲気を感じつつも、基本的には比較的広い層が気に入りそうな、訴求力のあるポップスに仕上がっていました。

わずか6曲入りのEP盤とはいえ、「音のする部屋」というタイトル通り、様々な音を聴かせつつ、一方ではラストの「Lover」のようなポップな歌もしっかり聴かせる、複雑なサウンドを聴かせつつもマニアックにも行き過ぎない、このバランス感覚のよさが彼の大きな魅力であり、そんな彼らしさがつまったEP盤となっていました。本作も間違いなく年間ベスト候補。君島大空の魅力を存分に感じられるEPでした。

評価:★★★★★

君島大空 過去の作品
縫層
袖の汀
映帶する煙
no public sounds


ほかに聴いたアルバム

HAPPY/高橋優

約2年3か月ぶりとなる高橋優のニューアルバム。もともと、暑苦しさすら感じられる彼のだみ声気味のボーカルが特徴的なミュージシャンですが、このアルバムも1曲目から「明日から戦争が始まるみたいだ」というタイトルからして暑苦しさを感じられる曲からスタート。全体的に良くも悪くも彼らしい暑苦しさを感じさせる曲が並びますが、特に「WINDING MIND」は、彼の故郷の東北の方言をそのまま使った曲で、これまたインパクト十分・・・。この「暑苦しさ」は良くも悪くも彼の魅力なのでしょうから、ある意味、そんな彼らしさをフルに発揮した作品と言えるかもしれません。

評価:★★★★

高橋優 過去の作品
リアルタイム・シンガーソングライター
この声
僕らの平成ロックンロール(2)
BREAK MY SILENCE
今、そこにある明滅と群生
高橋優 BEST 2009-2015 『笑う約束』
来し方行く末
STARTING OVER
PERSONALITY
ReLOVE&RePEACE

悪/女王蜂

大ヒットアニメ「【推しの子】」のエンディングにも起用された「メフィスト」も収録されている女王蜂約2年ぶりのニューアルバム。女王蜂らしい、切なくも情熱的なラブソング「狂詩曲」やタイトル自体にインパクトもあり、不気味で物悲しい歌詞とメロが印象的な「首のない天使」など、女王蜂らしい、妖艶なサウンドとメランコリックなメロディーラインに、情熱的な歌詞がのるスタイルが大きな魅力。また、アルバムタイトルと相反するような爽やかなジャケット写真も、妙に魅力的で、女王蜂らしさを感じます。そんな女王蜂の魅力をしっかりと抑えた、いい意味で安定感のあるアルバムに仕上がっていました。

評価:★★★★

女王蜂 過去の作品
孔雀
蛇姫様
奇麗
失神
Q

BL
十二次元

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2025年5月11日 (日)

2度目のサザンライブ!

サザンオールスターズ LIVE TOUR 2025「THANK YOU SO MUCH!!」

会場 パンテリンドームナゴヤ 日時 2025年4月24日(木) 18:30~

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先日、約10年ぶりのオリジナルアルバムをリリースしたサザンオールスターズ。そのアルバムリリースに伴うライブツアーに足を運んできました!サザンのライブは、前作「葡萄」リリース後のツアーにも足を運んだので、約10年ぶり2度目。会場は前作と同じナゴヤドーム。今回も多くのファンがナゴヤドームまで足を運んでいました。

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Earth,Wind&Fireのライブと2日連続でのライブとなったのですが、客層は前日と同じくらいの私よりちょっと上、50代あたりがメイン。ただ、EW&Fより、もっと若い世代も少なくなく、20代もチラホラ。「国民的バンド」としての高い人気を感じさせます。

私がなんとか確保したチケットは「注釈付指定席」ということで、「ステージがよく見えない場合があります」という注釈付き。確かに、照明用に建てられた鉄塔の真後ろになる席でした。ただ、この鉄塔とステージが上手いこと外れており、ステージは問題なく見渡せる位置。周りでも「思ったより見えるね」という声もチラホラ。わざわざ「注釈付」として販売したのは、SNSで誰もが意見を言える現在、見にくい位置のチケットを販売すると、ネット上で文句が出る、というリスク回避のためでしょうか。チケット代高騰化の折に、少しでも安価に、という意図もあるのかもしれませんが。

ライブはちょっと意外だったのですが、18時半ちょうどにスタート。「逢いたさ見たさ病めるMy Mind」とちょっと意外なところからスタート。前回のライブでもそうだったのですが、ステージ横の大モニターには、最初に曲のタイトルが映し出され、その後、歌詞が映し出される初心者にもやさしい仕様に。その後は最新アルバムから「ジャンヌ・ダルクによろしく」へ。ライブ映えするようなナンバーに、会場も盛り上がります。

その後は最初のMCへ。「地元の名古屋に帰ってきました!」というMCから、「いろいろと回ってきましたが、いつでも名古屋のことを考えていました」、という、桑田佳祐らしいユニークたっぷりのMCに。どこの会場でも言っているんだろうなぁ、というような歯の浮くようなセリフですが、でも、そう言われるとまんざらではないと思ってしまいます(笑)。

MCの後には「せつない胸に風が吹いてた」や「愛する女性とのすれ違い」など、どちらかというとファン向けのような懐かしいアルバム曲が続きます。さらには懐かしいヒット曲の「愛の言霊 ~Spiritual Message~」へ。なにげにもう30年近く前のヒット曲なのですが、私もリアルタイムで聴いていた曲なだけに、テンションも一気にあがります。

再び名古屋に帰ってきました、的なMCを挟んで、「最新アルバムの曲から演ります」ということで、最新アルバム「THANK YOU SO MUCH」から、「桜、ひらり」へ。さらに「神様からの贈り物」では、歌詞の内容に合わせるように、往年の歌謡界のスターたちの写真をバックに流しながらのステージとなり、サザンの先人に対するリスペクトを感じさせます。その後も最新アルバムを数曲披露。「風のタイムマシンにのって」では、原由子の爽やかなボーカルで、歌詞の内容に沿った湘南の風景が、アニメ風のエフェクトをかけられて流され、会場に爽やかな空気が流れ込みます。

最新アルバムからのナンバーが続いた後は、ガラリと一転し、デビューアルバムから「別れ話は最後に」をアコギ1本で聴かせて、会場をしんみりさせます。さらにしんみりと聴かせ終わった後には、いきなり「ついさっき、そこですごいメロディーが浮かんじゃったので、初披露します」「昨日は歌っていません」「名古屋のことを歌詞にしました」ということで、どんな曲が始まるのかと思いきや、流れてきたメロディーはジョン・レノンの「Imagine」(笑)。その曲にのせて替え歌で名古屋のネタを歌う、「名古屋のPeople」なる歌が披露されました。もちろん、どこの会場でもご当地に合わせて同じネタをやっているようですが。

ユニークな歌の後は一転「ニッポンのヒール」で盛り上がり、その後はメンバー紹介へ。さらには「悲しみはブギの彼方に」「ミツコとカンジ」と最新アルバムからの曲が続き、「夢の宇宙旅行」では、この日、観客全員に配られたリストバンド形式のLEDライトが光ります。ドーム全体にLEDライトがまるで星のように光り、タイトル通り、会場はまるで宇宙空間にいるかのような雰囲気となります。その後も「恋のブギウギナイト」では会場でミラーボールが回り、LEDライトも再び点灯。ナゴヤドームがディスコフロアに変身しました。

そして、「これからはみなさんに愛されたナンバーを演ってもいいですか!」という短いMCから、ライブは終盤へ。「LOVE AFFAIR~秘密のデート」「マチルダBABY」とおなじみのナンバーが続き、「ミス・ブランニュー・デイ (MISS BRAND-NEW DAY)」へ。会場のテンションはさらに上がっていき、本編ラストは「マンピーのG★SPOT」へ。桑田佳祐は、あきらかに男性器を模したような、大砲(?)のついた帽子をかぶり、さらにはビキニ姿の女性がエロチックな動作で踊りまくります。もちろん、会場は大盛り上がり。テンションは最高潮のまま、本編は幕を下ろします。

もちろんアンコールとなるのですが、メンバーが去ると、ステージバックのスクリーンには「終わっちゃったねぇ・・・」「まだまだやりたいねぇ」とアンコールを自ら促すメッセージが(笑)。会場からは盛大なアンコールが起こります。

やがてメンバーが登場すると、まずは最新アルバムのラストナンバー「Relay~杜の詩」をしんみりと聴かせます。そして、「希望の轍」へ。ここでリストバンドが再び光り、会場には星のようなあかりでドリーミーな雰囲気につつまれます。さらにラストは一転、「勝手にシンドバッド」へ!途中出てきたダンサーのメンバーも全員登場で、ステージ全体も大盛り上がり。そして、そこになんと、スペシャルゲストのドアラが登場!相変わらず不思議な動き(?)で微妙な存在感を醸し出していました。

会場全体が大盛り上がりの中、ライブは終了。サポートメンバーが去り、バンドメンバーのみがステージ上に残り挨拶。最後は会場全体で「1、2、3、ダー!」という掛け声を合わせて、ライブは終了となりました。

そんな訳で、約10年ぶり2度目のサザンライブ。相変わらずエンターテイメント要素たっぷりの楽しいステージでした。特に後半以降はおなじみのヒット曲、ある意味もう、日本の音楽シーンにおけるスタンダードナンバーの連続で、テンションがあがりまくったライブ。アップテンポな曲やコミカルな曲があったかと思いきや、しんみりとしっかり聴かせる曲もあったりと、サザンオールスターズのすごさを実感できるステージでした。

全2時間半という比較的長丁場のステージ。ただ、10年前のライブレポを見ると、その時は3時間半、演っていたんですよね・・・。メンバーも全員、68歳から70歳という年齢。ライブ自体に、そんな年齢を感じさせない若々しさを覚えたのですが、さすがに3時間半のステージは厳しくなってきた、というところもあるのでしょうか?とはいえ、あれだけ全力ライブを2時間半も演るというのも十分すごいのですが。次回はいつになるかわかりませんが、また次のサザンライブにも足を運びたいです!

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2025年5月10日 (土)

大きな会場がダンスフロアに!

EARTH,WIND&FIRE JAPAN TOUR 2025 with Special Guest NILE RODGERS&CHIC

会場 ポートメッセなごや 第3展示館 日時 2025年4月23日(水) 18:30~

70年代に一世を風靡したディスコバンド、EARTH,WIND&FIRE。中心メンバーだったモーリス・ホワイトも亡くなり、全盛期のメンバーで残っているのもわずかになってしまっているものの、現在でも継続的に活動を行っているようで、名古屋でのライブも決定!ということで、せっかくのチャンスなので足を運びました。直前にベースのヴァーダイン・ホワイトが病気のため欠席という残念なニュースも入ってきましたが、今後、彼らのライブを見れるのかわかりませんし、なによりも同じくディスコシーンの代表的な人気バンド、CHICもゲストとして参加ということもあり、非常に楽しみに参加してきました。

ポートメッセなごやはライブで足を運ぶのはこれがはじめて。当日券は出ていましたが、会場はほぼ満員。私ももちろん、彼の全盛期はリアルタイムでは知らない世代なのですが、おそらく全盛期を知っていそうな60代あたりもチラホラいる一方、私より年下の40代前半あたりや30代の観客もチラホラ。私も含めてですが、後追い組もそれなりの割合がいて、思ったよりは幅広い年齢層に彼らの時代を超えた人気の高さを感じます。

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ライブは予想外に時間ピッタリにスタート。最初はNILE RODGERS&CHICが会場にあらわれます。CHICもオリジナルメンバーとして残っているのはナイル・ロジャースだけで、事実上、CHICというよりもナイル・ロジャースのソロなのですが、彼はもう御年72歳のようなのですが、元気いっぱい。この日のステージ上で元気いっぱいのギタープレイを聴かせてくれていました。

まずはCHICの代表曲である「Le Freak(おしゃれフリーク)」からスタート。いきなりの代表曲で会場は大盛り上がりとなりますが、この後も「Everybody Dance」などCHICの代表曲が披露されますが、その後はナイル・ロジャースがプロデュースなどを手掛けた曲のカバーの連続。まず「I'm Coming Out」などダイアナ・ロスの楽曲、さらには「He's the Greatest Dancer」などシスター・スレッジのカバー、そして「Like a Vergin」「Material Girl」など、マドンナのカバーへ!日本でもおなじみのナンバーに、会場は大盛り上がりとなります。

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さらにはダフトパンクの「Get Lucky」「Lose Yourself to Dance」へ。こちらは私にとってもリアルタイムで聴いていた曲なので、個人的にかなりテンションがあがります。さらにはデイヴィット・ボーイの「Let's Dance」で盛り上がり、ラストはCHICの代表曲「Good Times」で締めくくり。全1時間のステージ。ナイル・ロジャースのキャリアのすごさを物語るようなヒット曲連続のステージに大興奮、大満足の1時間でした。

そして、その後30分程度のセットチェンジの後、待望のEarth,Wind&Fireの登場となります。

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最初は「Shining Star」からスタート。序盤は「Let Your Feeling Show」「System Of Survival」とダンサナブルなディスコチューンで会場を盛り上げます。バックのスクリーンでは、このディスコな雰囲気を盛り上げるようなまばゆいばかりの映像が展開され、会場を盛り上げます。さらに「Serpentine Fire」の後ではパワフルなレイモンド・マッキンリーのベースソロ。今回、ヴァーダインのヘルプとして入ったのですが、しかしヴァーダインに負けない、パワフルなベースプレイで会場を沸かしてくれました。

その後も「Jupiter」で会場を盛り上げ、ビートルズのカバー「Got to Get You Into My Life」ではメロウなEW&F風なカバーを披露。Kalimba Storyではトライバルなリズムを軽快に聴かせます。

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中盤はメロウな曲でしんみりと聴かせる曲が並ぶ展開。「Devotion」では、観客のスマホのライトを光らせ、みんなで曲にあわせてかかげます。会場全体に星空のような風景が広がり、ドリーミーで美しい会場の雰囲気に、スマホを振りながら、しんみりと曲を聴き入ります。さらに「Resons」の後は、ボーカルのフィリップ・ベイリーがこれでもかというほどのファルセットボーカルを披露。現在、73歳の彼ですが、往年と変わらないボーカルの見せつけてくれ、変わらぬ声色に驚かされました。

後半「That's the Way of World」では最初、日本語での簡単なMCが入ったのですが、正直、聴き取れなかった・・・。多分、「愛が大事」みたいな話だったと思うのですが、バックのスクリーンには大きな「Love」の文字が。会場がピースフルな雰囲気につつまれます。

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そして終盤はヒット曲の連続で、会場のテンションは一気にあがていきます。「Fantasy」から「Boogie Wonderland」、さらには「Let's Groove」ときて、最後にはおなじみの「September」へ!いずれもリアルタイムな世代を知らない私でも何度も聴いたことあるナンバーばかり。もちろん、会場は大盛り上がりで、さらながら広い会場は広大なディスコフロアのような感じに(?)。なによりもダンサナブルでポップな曲の連続に、多幸感に会場はつつまれました。

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そしてラストは「In the Store」で締めくくり。他会場のセットリストを見るとアンコール後の曲だったようですが、この日は「September」の後にそのまま楽曲がスタートとなりました。「September」からの興奮冷めやらないまま、大興奮のままライブの締めくくり。最後は会場中央でメンバーが挨拶し、大歓声の中、ライブは幕を下ろしました。

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NILE RODGERS&CHICが1時間、途中のセットチェンジが30分、さらにEarth Wind&Fireが1時間半弱のステージで、全3時間弱のステージでした。最後、メンバーが去った後、あっという間に客電がついたので、アンコール曲をアンコールなしで演った構成と合わせると、おそらく、会場の時間ギリギリだったのでしょう(笑)。

レジェンド2組によるステージ。最初、NILE RODGERS&CHICがスペシャルゲストということで、この2組が絡むステージになるのか、と思ったら、残念ながらそれはなく。一方で、最初、CHICが前座か?とも思ったのですが、CHICもたっぷりのステージを見せてくれて、むしろ2組の対バンライブ、といった感じのステージでした。

CHICもEW&Fも、全盛期のメンバーはかなり欠けた状況なのですが、ただ残ったメンバーはまだまだ元気で、往年に比べてもおそらく遜色のないステージで大満足。どちらもヒット曲連続のステージになっており、最初から最後まで盛り上がりまくりのライブに。なによりも音楽の楽しさを感じさせるステージで、心の底から楽しい!と感じられるライブ。かなり満足度の高いステージでした。

2組とも、主となるメンバーは既に70歳を超える年になっており、年齢を感じさせない元気さを見せてくれたものの、また日本で見れる機会があるかどうか・・・でも、末永く元気に活動してほしいし、また是非とも日本に来て、パフォーマンスを見せてほしいです!非常に充実した気分で会場を後にした、楽しい3時間でした。

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