2024年7月17日 (水)

ついに1位獲得!

今週のHot100

http://www.billboard-japan.com/chart_insight/

ベスト10初登場から13週目にして、ついに1位獲得です。

Lilac

今週、Mrs.GREEN APPLE「ライラック」がついに1位を獲得です。ランクインから14週目、ベスト10入りからは13週目にしての初の1位獲得。特にストリーミング数が今週で4週連続で1位を獲得。今週、動画再生回数も4位から3位、ダウンロード数は11位から6位と大きくアップし、初の1位獲得となりました。テレビ東京系アニメ「忘却バッテリー」オープニングテーマ。アニメの方は7月3日で最終回を迎えているので、純粋に楽曲の力での1位獲得といったところでしょうか。ベスト3ヒットは通算7週目。さらにMrs.GREEN APPLEは今週、「青と夏」が14位から10位にアップし、昨年9月6日付チャート以来のベスト10返り咲き。通算8週目のベスト10入りを決めています。さらにベスト20のうち、13位に「ケセラセラ」、14位に「コロンブス」、19位に「アポロドロス」と、同時に5曲ランクイン。「コロンブス」騒動でネガティブイメージを持たれてしまった感もあった彼らでしたが、それを物ともしない勢いを感じさせます。

2位には旧ジャニーズ系アイドルグループSixTONES「GONG」がランクイン。CD販売数1位。日テレ系ドラマ「ACMA:GAME アクマゲーム」挿入歌。オリコン週間シングルランキングでは初動売上42万6千枚で1位初登場。前作「音色」の初動52万3千枚(1位)よりダウンしています。

Creepy Nuts「Bling-Bang-Bang-Born」は今週も3位をキープ。ストリーミング数は4週連続の2位、動画再生回数も2週連続の2位、ダウンロード数は9位から11位にダウン。これで26週連続のベスト10ヒット、通算24週目のベスト3ヒットとなります。

続いて4位以下の初登場曲ですが、まず4位に韓国の男性アイドルグループBOYNEXTDOOR「One and Only」がランクイン。CD販売数2位。オリコンでは同曲が収録された「AND,」が初動売上18万6千枚で2位初登場。本作が初のシングル作品となります。

8位にはGEMN「ファタール」が初登場。テレビアニメ「【推しの子】」オープニングテーマ。旧ジャニーズ系アイドルグループSexyZoneの元メンバー中島健人と「青のすみか」が大ヒットを記録したシンガーソングライターキタニタツヤによるユニット。ダウンロード数3位、ストリーミング数11位、動画再生回数4位。「【推しの子】」のオープニングといえば、YOASOBIの「アイドル」が大ヒットを記録しましたが、それに続く大ヒットとなるでしょうか。

また、今週は「青と夏」と、あと1曲ベスト10返り咲き曲が。tuki.「晩餐歌」が今週11位から9位にアップ。2週ぶりにベスト10に返り咲いています。これで通算31週目のベスト10ヒットとなります。

ロングヒット曲ではOmoinotake「幾億光年」が今週7位から5位にアップ。ストリーミング数は9週連続の3位。動画再生回数が12位から9位にアップ。これで22週連続のベスト10ヒットとなりました。

今週のHot100は以上。明日はHot Albums&各種チャート!

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2024年7月16日 (火)

ブレイク後の狂乱ぶりとその後のマイペースな活動を描く

今回は最近読んだ音楽関連の書籍の紹介です。

「『たま』という船に乗っていた らんちう編」。1990年に「さよなら人類」が大ヒットを記録し、一世を風靡したバンド、たま。そのドラマーであり、「たまのランニング」という愛称でも知られる石川浩司がたまの活動を綴った自叙伝「『たま』という船に乗っていた」という本を以前、刊行していたのですが、本作は、同書をコミカライズしたもの。以前、同書の分冊版を紹介したことがあり、その後、前編は「さよなら人類編」として書籍化もされたのですが、本作はその後編となります。

本書を手掛けるのは漫画家の原田高夕己。もともとたまの熱烈なファンで、今回のコミカライズも彼自らの売り込みによるものだそうです。前回も書いたのですが、画風は完全に藤子不二雄Aのパロディー。時折、そのほか昭和の漫画家の画風が混じりつつ、全体的には徐々に自らの画風を確立させようとしている最中といった感じでしょうか。前にも書いたのですが、藤子不二雄ファンの私としてはA先生のフォロワーというのは素直にうれしくも感じます。

前作では彼らの結成にまつわるエピソードから、アンダーグラウンドで徐々に活動を活発にさせつつ、90年代に一世を風靡したバンドオーディション番組「いかすバンド天国」へ出演するまでのエピソードが描かれていました。今回のエピソードは、彼らが「イカ天キング」となりメジャーデビュー。さらには当時「たま現象」とまで呼ばれた大ブレイクの時期を経て、レコ大や紅白の出演。その後、徐々に人気が落ち着き、インディーズに舞台を移して、マイペースに活動。メンバー柳原幼一郎の脱退を経て、3人組となっての活動。そしてたまの解散に至るまでの物語を描いています。

やはり一番おもしろかったのは、大ブレイクしていた時期のたまをめぐる世間の狂乱ぶり。レコ大や紅白出演時のエピソードやかなり多忙だった時期のエピソード、強烈なファンのストーカーぶりやコンサートでのエピソードなど、人気に浮かれていたというよりも、メンバーの困惑ぶりが伝わるような内容になっています。ただ、今だからこそ思うのですが、彼らみたいなある意味「アングラ」むき出しのバンドが、その音楽性のまま、あれだけの人気ぶりを見せたのは、やはり異常だったと思うし、だからこそ「たま現象」など言葉も生み出されたのでしょう。

それは本人たちが一番よくわかっていたようで(漫画内のセリフで知久が「10人が10人自分たちの音楽が好きだったらおかしい」という発言をしていますし)、それだけにその後、人気が落ち着いてきた後も、そのこと自体に全く悲壮感などはありません。これは原書の方に書いてあったのですが、人気が落ち着いた後は、ライブ動員もCDの売上もほとんど変わらなかったそうで、また最後まで音楽だけで食べていける人気を保ち続けていたそうです。実際、漫画でも、最後の解散ライブまで一定以上の人気は確保していたことがうかがえ、それだけに人気面で気にしなくてもよいマイペースな活動ぶりは漫画からも伝わってきます。

さて今回のコミカライズに関しては、基本的に原書を元にしながらも、新たなエピソードなどを加えた他、原書のエピソードも上手く組み合わせてよりドラマ性を強調した構成になっていました。例えば、たまを大絶賛し、「『たま』の本」を遺作として記した評論家の竹中労とのエピソードも、原書ではただワンパラグラフだけで登場する話なのですが、漫画版では同じエピソードを上手く分解して、物語の中に上手く配することによって、竹中労とたまの出会いから最後に会ったエピソードまで、よりドラマチックに表現しています。たまの解散に関して、知久寿焼がたまを辞めると言い出したエピソードにしても、原書では比較的あっさり書いているのに対して、漫画版では大コマや絵を効果的に用いることによって、非常に心に来る表現となっており、読んでいて思わずジーンと感じるものがありました。全体的に物語の組み立てや、絵の効果的な表現の上手さを強く感じますし、まただからこそ画風はA先生のパロディーでも、違和感なく楽しむことが出来たのでしょう。

また、もうひとつ印象的だったのは、原書に比べて、原田高夕己の漫画となったことによって、これがあくまでも石川浩司によるたまのエピソードだ、というイメージが読んでいて強くなったように感じます。原書の方は、あくまでも石川浩司の一人称で物語が進んでいくだけに、これがあくまでも石川浩司によるたまのエピソードである、ということを逆に意識せずに読み進められたように思います。しかし、漫画版では原田高夕己によるコミカライズによって、客観性も加わることによって、逆にこれがあくまでも石川浩司視点での物語である、ということが強調されたように感じます。それだけに、他のメンバーは同じエピソードをどのように見ていたのか、興味を抱いてしまいました。

そして何より、この漫画が優れていたのは、読んでいてあらためてたまの音楽を聴いてみたいと感じさせてくれる力量があったという点でしょう。物語の中でも要所要所にたまの曲の歌詞が登場してきますし、ライブ風景も描かれていますが、あらためて、彼らの音楽を聴いてみたい、そう強く感じさせる物語でした。国民的ブレイクの後に、人気が落ち着いてしまうと、短期間で解散に至ってしまうバンドが大多数の中、たまというバンドは、アンダーグラウンドシーンに登場し、国民的ブレイクを経て、最後はマイペースな活動を長く続けてその活動を終えるという、ある意味、非常に稀有なバンドです。それだけに、彼らをめぐるエピソードは興味深く楽しむことが出来ました。たまというバンドが初耳の方や「さよなら人類」のブレイクしか知らない方にも、ひとつのバンドの物語としてお勧めしたい1冊です。あらためてたまというバンドのすばらしさを感じることが出来、かつ、純粋にバンドの物語を楽しむことが出来た1冊でした。

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2024年7月15日 (月)

グラミー賞受賞で知名度が一気にアップ

Title:Night Reign
Musician:Arooj Aftab

前作「Vulture Prince」が大きな話題を呼んだアメリカはニューヨーク・ブルックリンを拠点に活躍するパキスタン出身の女性シンガーソングライター。前作の時点で、日本では完全に無名のミュージシャンで、前作を聴いた当時はGoogle検索をかけても日本語のサイトは皆無という状況でした。しかし、前作が大きな評価を受け、グラミー賞ではなんと最優秀新人賞にノミネート。こちらは残念ながら受賞は逃したものの、最優秀グローバルミュージックパフォーマンス賞を受賞。それに伴い日本での知名度も一気に上がり、現時点でGoogle検索をかけるとレコード会社やCDショップ、音楽系メディアの彼女の日本語の紹介記事がズラリと並ぶ結果となっています。

前作では、彼女の美しい伸びやかな歌声とエキゾチックな雰囲気あふれるアコースティックなサウンドが見事に融合し、独特の幽玄的なサウンドを作り上げている傑作アルバムとなっていました。今回のアルバムに関しても基本的にその方向性は変わりありません。まさにアルバムの冒頭を飾る「Aey Nehin」は、まさに低音部を利かせ、ちょっと気だるさを感じさせつつも美しいボーカルと、エキゾチックなアコギの音色がピッタリとマッチ。

続く「Na Gul」はジャジーなピアノをバックに、美しくも伸びやかなボーカルを聴かせる楽曲。もともと本作は、マ・ラカ・バイというインドの詩人によるウルドゥー語の詩を中心に構成されたアルバムだそうで、この曲は、その詩人によるウルドゥー語の詩に曲をつけた1曲。ウルドゥー語の独特の1曲。さらに次の「Autumn Leaves」はスタンダードナンバーの1曲なのですが、トライバルなパーカッションも入り、独特のエキゾチックな雰囲気がムンムンあふれる1曲となっています。

この「Autumn Leaves」に続く「Bolo Na」も非常にダークな低音で聴かせる不気味さを感じる曲で、美しく清涼感あふれる前半からガラッと変わった中盤へ。さらにその後は再び清涼感のある明るいナンバーへとシフト。特に後半では「Reat Ki Rani」の哀愁あふれる歌が心に響きますし、「Whiskey」でも美しいアコースティックギターの音色をバックに歌い上げる彼女のボーカルの美しさに心を捉えられます。

最初にも書いたとおり、前作と同様、エキゾチックさを感じさせるアコースティックでジャズの要素も入ったサウンドに、ほどよくトライバルな要素も加わり、低音部を聴かせつつ、伸びやかで美しく聴かせる彼女のボーカルのバランスが実に素晴らしい傑作アルバム。前作も2021年の私的年間ベストアルバムの7位に本作を選びましたが、今回も間違いなく年間ベスト候補と言える傑作アルバムに仕上がっていました。前作以降、日本での知名度のグッと上がった彼女。これだけの傑作をリリースするだけに、まだまだその人気は高まりそうです。

評価:★★★★★

Arooj Aftab 過去の作品
Vulture Prince


ほかに聴いたアルバム

POST HUMAN: NeX GEn/BRING ME THE HORIZON

2020年にEPをリリースしつつも、オリジナルフルアルバムとしては約5年8ヶ月ぶりとなるイギリスのヘヴィーロックバンドの新作。メタルやハードコアの影響を受けつつ、メランコリックなメロディーラインと、打ち込みを入れつつ、これでもかというほど分厚くしたバンドサウンドが特徴的。日本で言えば、完全にONE OK ROCKやMY FIRST STORY、coldrainあたりがこのバンドの流れを組むようなサウンドを奏でていますが、新作はまさにBMTHらしさ全開のアルバムに。前述の日本のバンドが好きなら、まずは聴くべき1枚。

評価:★★★★

Silence Is Loud/Nina Archives

イギリスのブラッドフォード出身のシンガーソングライターによるフルアルバムとしてはデビュー作。UKのクラブ/ジャングルシーンの中心人物として注目を集めているそうですが、終始、軽快なジャングルのビートが鳴り響く中、キュートさも感じる彼女のボーカルでポップに歌い上げている作品。クラブシーンで注目を集めつつ、作品はいい意味でポップにまとまっていて、いい意味で広いリスナー層が楽しめそうなポップな内容に仕上がっていました。

評価:★★★★★

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2024年7月14日 (日)

60年代ポップのいいとこ取り

Title:A Drema Is All We Know
Muscian:The Lemon Twigs

ブライアン・ダダリオとマイケル・ダダリオの兄弟による、アメリカのロックデゥオ、The Lemon Twigsの、ちょうど1年ぶりとなるニューアルバム。ここ最近、立て続けに優れたポップなアルバムをリリースし、注目度や評価があがっている彼ら。評価の高かった前作からわずか1年でリリースされた本作もまた、注目高まる彼らへの期待にしっかりと応えたアルバムに仕上がっていました。

まずアルバムの感想を一言で言ってしまえば、これでもかというほど心地よいキュートなギターポップの並ぶ作品となっています。今回のアルバムに関して、彼ら自身「マービー・ビーチ」なる造語で表現しています。こちら音楽的にリバプールとローレル・キャニオン(=カリフォルニアにある60年代から70年代にかけて、数多くのミュージシャンたちが住んでいた地域)と表現しており、要するに、60年代のマージー・ビートと、ビーチ・ボーイズやママス&パパスのような60年代のアメリカ西海岸のポップソングを融合させたような音楽ということを表現したのでしょう。

そんなリバプールのサウンドもローレル・キャニオンのサウンドも、非常にキュートなメロディーラインを聴かせてくれるポップスという共通項がありますが、今回のアルバムはそんな両者の楽曲の良いとこ取りをしたポップスが並ぶ作品になっています。まず1曲目「My Golden Years」の最初のギターのストロークから、思わずガッツポーズをしてしまうようなポップスリスナーも多いのではないでしょうか。ポップでちょっぴり切ないキュートなギタポの本作。まさに「マービー・ビーチ」ということを実感させられる本作。個人的にはどこかラーズや、80年代のギタポの要素も感じます。

「They Don't Know How To Fall In Place」もギターのエフェクトがいかにも60年代的ですし、途中に入るハーモニーも、60年代フォークの影響を色濃く感じるキュートでポップな作品。タイトルチューンの「A Dream Is All I Know」も、ちょっぴり切ないメロディーが心地よいポップソング。イントロにテルミンを入れていたり、隠し味的に入っているサイケな楽曲に深みを与えています。

ミディアムチューンでドゥーワップの要素を入れた「In The Eyes Of The Girl」は、マージービートというよりもアメリカの色合いの強いポップス。軽快なバンドサウンドで楽しさと切なさを同居させたような「How Can I Love Her More?」も、いかにも60年代的なポップスで、耳を惹きます。

絶妙なハーモニーが実に美しく、暖かいメロディーを聴かせてくれる「Ember Days」も魅力的ですし、マイナーコードでちょっと怪しい雰囲気を醸し出す「Peppermint Roses」も、こちらはマージービートの色合いの強いナンバーで耳を惹きます。そしてラストを飾るのは「Rock On(Over and over)」で、タイトル通り、ノイジーなギターサウンドも耳を惹くロックンロールのナンバー。こちら懐かしい60年代的な雰囲気満載で、アルバムは幕を下ろします。

まさに前述した通り、英米の60年代ポップスのいいとこどりしたような、これでもかというほどキュートでポップなアルバム。もっと言えば、うっすら80年代ギタポの影響も感じられ、そういう意味では今から昔に至るまでのポップソングをいいとこどりした感じもあり、そりゃあ、これだけの傑作が生みだされるような、といった印象も受けます。もちろん、それはネガティブな意味ではなく、昔の曲のいいとこどりしつつも、これだけの優れたポップソングにまとめあげているのは彼らの実力。申し分ない傑作アルバム、それも今年を代表する1枚と言ってもいい作品に仕上がっていました。

ただ、残念ながらチャートアクションはあまり芳しくなく、スコットランドチャートでベスト10入りしているものの、アメリカビルボードでは圏外。イギリスでもダウンロードチャートで24位にランクインしている程度に留まっており、ブレイクにはまだほど遠い状況となっています。ただ日本では、ビルボードチャートで82位にランクイン。こちらもチャート下位とはいえ、洋楽が苦戦している日本の状況を考えると、英米でブレイクしていない彼らがチャートインしてくることがある意味快挙で、それだけ日本での注目度の高さを伺えます。いわば「ビッグ・イン・ジャパン」的な立ち位置になるのでしょうか?でも、これだけ優れたポップソングを書くバンドなだけに、いずれ英米でも人気は高まるはず。日本での人気の高さに日本人の先見性の高さを誇りたいところ。これからの活躍に期待です。

評価:★★★★★

The Lemon Twigs 過去の作品
Songs For The General Public
EVERYTHING HARMONY


ほかに聴いたアルバム

Blue Electric Light/Lenny Kravitz

ちょっと久しぶり、約6年ぶりとなるレニー・クラビッツのニューアルバム。今回のアルバムも実に彼らしさを感じるアルバムで、ほどよくヘヴィーでノイジーなテンポのよいギターサウンドが心地よく、いかにも「ロック然」とした楽曲が並んでいます。ギターサウンドの中にほどよくエレクトロサウンドを取り入れている点も、楽曲にダイナミズムを増してほどよいインパクトに。目新しさはありませんが、レニー・クラビッツを聴いた、ロックを聴いたという満足感を覚えるアルバムになっていました。

評価:★★★★

Lenny Kravitz 過去の作品
Black and White America
Strut
Raise Vibration

66/Paul Weller

66歳の誕生日の前日にリリースされた、ポール・ウェラー兄貴のニューアルバム。四捨五入して70歳という年に達しても、まだまだ現役感あふれる活動で元気いっぱいの兄貴。ただ、楽曲の円熟味は以前に増しているような感もあります。今回もムーディーな雰囲気の、いかにも「大人のロック」といった雰囲気の曲が並ぶアルバムに。卒はない、といった印象もありますが、完成度も高く、大ベテランの彼らしいアルバムに仕上がっていました。最近は70歳を過ぎても元気いっぱいなロックシンガーも少なくありませんが、彼もまだまだ元気にその活動を続けてくれそうです。

評価:★★★★

Paul Weller 過去の作品
22 DREAMS
Wake Up The Nation
Sonik Kicks
A Kind Revolution
True Meanings
In Anohter Room
Fat Pop
An Orchestrated Songbook

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2024年7月13日 (土)

スキマスイッチのポップミュージシャンとしての実力を改めて認識

Title:SUKIMASWITCH 20th Anniversary Tribute Album「みんなのスキマスイッチ」

2023年にデビュー20周年を迎えたスキマスイッチ。昨年には20周年記念のベスト盤をリリースしましたが、その20周年イヤーの最後に、初となるトリビュートアルバムがリリースされました。彼女自身、スキマスイッチからの影響を公言しているUruや、Aimerといった若手のミュージシャンから、いきものがかり、HYといったベテラン、さらには徳永英明のような大御所(?)まで、主にポップ系のミュージシャンを中心に様々なミュージシャンが参加。まさにタイトル通り、みんなに愛される「みんなのスキマスイッチ」を体現化するかのような構成となっています。

その中で、まずは耳を惹くのがアルバムの冒頭を飾るUruの「奏」。この曲を選曲した段階で勝ちは決まっているようなものなのですが、ちょっとかすれた感のあるボーカルが切なさを醸し出しており、曲との相性もバッチリ。もともとカバーには定評のある彼女ですが、聴きごたえのあるカバーに仕上がっています。

続くHY「ふれて未来を」も良カバー。沖縄民謡風のリズムを取り入れたカバーで、完全に彼らのフィールドに引き寄せています。SHISHAMOの「全力少年」も完全にSHISHAMOらしいギターロックの作品にまとめており、サビに向かって盛り上がる曲調がギターロックのアレンジともマッチしています。

ピアノとホーンセッションを入れて陽気にまとめているsumikaの「ガラナ」も完全に彼らの色に染め上げたカバーに。こういうアレンジが「ガラナ」に似合うというのもちょっと意外な感もあります。予想外の出来だったのが星街すいせいの「ゴールデンタイムラバー」で、VTuberによるカバー。正直、全く期待していなかったのですが、ちょっとドスを利かせたような力強いボーカルが、曲にマッチしている良カバーに仕上がっています。そして最後のtonun「デザイナーズマンション」も今風のメロウなシティポップ風のカバー。心地よいちょっとムーディーな雰囲気でアルバムは幕を下ろします。

今回のトリビュートアルバムであらためて感じたのは、スキマスイッチというミュージシャンは非常に優れたポップミュージシャンなんだな、という事実でした。楽曲はいい意味で非常に王道なポップソング。そのため、どんなタイプのミュージシャンでも卒なくカバーがこなすことができますし、メロディーラインの強度が非常に強いがために、どのようなタイプの楽曲にも染まりやすい感じがします。

そのため、基本的にどの楽曲についても、それぞれのミュージシャンの色が出ていてよく出来たカバーに仕上がっていたように思います。ネガティブな言い方をしてしまうと「卒がない」という印象を受けるのですが、卒なくカバーできてしまうあたりはやはりスキマスイッチの楽曲がよく出来たポップスである所以でしょう。個人的には参加しているミュージシャンたちは予想できてしまうポップフィールドのミュージシャンたちばかりだったので、もうちょっと意外なミュージシャンが参加していたり、ポップスがゆえにカバーの出来も予想できてしまうため、もっと楽曲をガラッと解体してしまうような奇抜なカバーを期待したいところだったのですが、その点はちょっと残念。ただ、そこらへんはあくまでも私の願望なので、それを差し引いても、スキマスイッチのファンも、参加ミュージシャンのファンも文句なしに楽しめるトリビュートアルバムに仕上がっていました。

評価:★★★★★


ほかに聴いたアルバム

ARCHAIC SMILE/中田裕二

中田裕二約1年ぶりのニューアルバム。タイトルの「ARCHAIC SMILE」とは、もともと古代ギリシアのアルカイク美術の彫像に見られる表情で、日本の仏像でもよく見られる、慈悲深い優しいほほえみを指します。基本的にはいままでの彼の作品と同様、歌謡曲にも通じるような哀愁感たっぷりのメロディーラインで優しく歌い上げるスタイル。まさに「ARCHAIC SMILE」というタイトルにもピッタリくるような優しさを感じさせるアルバムになっていました。

評価:★★★★

中田裕二 過去の作品
ecole de romantisme
SONG COMPOSITE
BACK TO MELLOW
LIBERTY
thickness
NOBODY KNOWS
Sanctuary
DOUBLE STANDARD
PORTAS
TWILIGHT WANDERERS -BEST OF YUJI NAKADA 2011-2020 -
LITTLE CHANGES
MOONAGE

((ika))/Tempalay

フジロック出演などでも話題となった、最近人気上昇中のスリーピースロックバンド。シティポップ風のメランコリックなメロディーラインに、サイケな要素も詰め込んだサウンドをのせるスタイルがユニーク。ゴスペルやらギターロックやら歌謡曲やらHIP HOPやら、果てはソーラン節まで、様々な音楽性を詰め込んだ作風が非常にユニークに感じる一方、全体的にはちょっと詰め込みすぎといった印象も同時に受けてしまいます。注目の実力派バンドであることは間違いないとは思うのですが。

評価:★★★★

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2024年7月12日 (金)

ただただそのボーカルのすごみに立ち尽くしてしまいました。

Title:浅川マキ ゴールデン☆ベスト
Musician:浅川マキ

「アンダーグラウンドの女王」と呼ばれ、目立ったヒット曲こそないものの、一部では熱烈な支持を集めているシンガー、浅川マキ。2010年に67歳という若さでこの世を去ってから早14年。日本のみならず海外でも評価が高いようで、2015年にはイギリスでベスト盤もリリースされたようです。

ただし、今回紹介するのはレコード会社各社共同の廉価版ベスト企画「ゴールデン☆ベスト」の一環としてリリースされたベストアルバム。正直、この手の企画に似つかわしいかどうかかなり微妙な感もあります。しかし、実際に聴いてみるとそんな懸念は一掃されます。まさに「情念」とでも言うべき彼女のそのスモーキーでムーディー、感情たっぷりの歌声に心揺さぶられるベストアルバムとなっていました。

彼女の楽曲は、基本的にフォークやブルースの影響を強く感じさせる楽曲。そこにジャズやロック、さらには歌謡曲的な要素も強く感じます。いわゆるムード歌謡曲的な「日本のブルース」とも少々異なるのですが、かといってアメリカのブルースをそのままカバーしているのとも異なる、「和製ブルース」という表現が一番ピッタリくるかもしれません。

ただ、なによりそんな楽曲の中で際立っているのが彼女のボーカル。上にも書いた通り、その独特のボーカルには聴いていてゾクゾクさせられます。このベスト盤の冒頭を飾るのが「夜が明けたら」というメジャーデビュー作。感情こもった低音のボーカルも魅力的なのですが、なによりも曲の中での息づかいや間の取り方が実に絶妙。力強くも色っぽく、聴いていて一気に耳を惹かれます。事実上のデビュー作からこの完成度というのは、本当に驚かされます。

「赤い橋」もかなり印象に残る1曲。アコギアルペジオでフォーキーな作風で、非常に不気味さを感じさせる曲が特徴的なのですが、それを軽くビバーブをかけたボーカルで歌われると、幻想的で不気味な雰囲気が増幅されて非常に心に響いてきます。また、「朝日楼(朝日のあたる家)」も特筆すべき作品。ボブ・ディランやアニマルズのカバーでも知られるアメリカのフォークソングなのですが、娼婦に身を落とした女性の怨念を、これでもかというほど表現したボーカルで、これほど浅川マキの歌手としての方向性とマッチした曲はないのではないでしょうか。基本的にアコギ1本のシンプルなカバーなのですが、彼女のボーカルのすごみを嫌というほど感じさせるカバーに仕上がっています。

「ブルー・スピリット・ブルース」もそのボーカルが耳を惹きます。こちらもアメリカの楽曲のカバーなのですが、彼女にかかると、非常に女性の怨念を感じるくすんだ雰囲気の楽曲へと変貌を遂げます。女性の心情を力強く感情たっぷりに歌い上げるそのスタイルは、間違いなく心に響いてきます。「それはスポットライトではない」は、郷愁感あふれるナンバー。楽曲的には70年代フォークの色合いが強いのですが、彼女の力強いボーカルによって、しっかりと浅川マキの世界観を作り上げています。

女性の怨念、情熱、感情をこれでもかというほど込めたボーカルは、聴いていて思わず立ち尽くしてしまうようなすごみがあります。正直、ボーカリストとしての表現力という観点だけで言えば、間違いなく歴史的にも日本屈指のボーカリストであることは間違いないと思います。今回のアルバムも、聴き始めると、いわゆる「ながら聴き」が出来なくなり、彼女のボーカルにただただ聴き入るだけ、という状況になってしまいました。以前、一度ベスト盤は聴いたことはあったものの、あらためて浅川マキというボーカリストのすごさを実感できたベストアルバム。このベスト盤に限らなくてもいいのですが、一度は是非、彼女のボーカルにふれてほしい、そう強く感じます。

評価:★★★★★

浅川マキ 過去の作品
Long Good-bye


ほかに聴いたアルバム

SEX MACHINEGUNES ゴールデン☆ベスト/SEX MACHINEGUNS

各レコード会社共通の廉価版ベストシリーズ、ゴールデン☆ベストの、こちらはSEX MACHINEGUNS版。2008年まで所属した東芝EMI時代の曲を収録した作品で、要するに、彼らが今よりも人気のあった時期の作品を収録したベスト盤。代表曲は過不足なく収録されており、1枚のアルバムで収められていることから、入門盤としても最適な1枚。何度も聴いた代表曲ばかりですが、本格的なヘヴィーメタルなサウンドとコミカルな歌詞のギャップがおもしろく、何度聴いても思わずクスっと笑ってしまう部分も。一時期に比べると、すっかり人気の面で落ち込んでしまった彼らですが、昨年、はじめて足を運んだライブを見る限り、バンドとしての実力は全く衰えていません。今からでも遅くないので、マシンガンズ未経験者は是非ともチェックしてほしい1枚です。

評価:★★★★★

SEX MACHINEGUNS 過去の作品
キャメロン
SMG
LOVE GAMES
METAL MONSTER
マシンガンズにしやがれ!!
IRON SOUL
地獄の暴走列車

eyes/おいしくるメロンパン

3ピースバンド、おいしくるメロンパンの約1年ぶりの新作は5曲入りのミニアルバム。ポップ志向が強く、ヒットポテンシャルもあるメランコリックで爽やかなメロディーラインと、意外と骨太で分厚いバンドサウンドの対比が今回もユニーク。かなりロックなバンドサウンドには耳を惹かれます。ただ、ミニアルバムばかりでこれで8枚目。そろそろフルアルバムを聴きたいのですが。

評価:★★★★

おいしくるメロンパン 過去の作品
indoor
hameln
flask
theory
cubism
answer

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2024年7月11日 (木)

こちらも韓国勢が2枚ランクイン

今週のHot Albums

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上位は男性アイドル勢が並んでいます。

まず1位初登場は韓国の男性アイドルグループRIIZE「RIIZING」が獲得。CD販売数1位。オリコン週間アルバムランキングでは初動売上6万枚で1位初登場。前作「Get A Guitar」の初動1万1千枚(12位)からアップしています。

2位初登場は黒崎蘭丸(鈴木達央) 「うたの☆プリンスさまっ♪ソロベストアルバム 黒崎蘭丸 MUSIC FOR LIFE」。女性向け恋愛ゲーム「うたの☆プリンスさまっ♪」に登場するキャラクターによるベストアルバム。CD販売数2位。オリコンでは初動売上1万8千枚で2位初登場。

3位はWayV「Give Me That」が先週の16位からランクアップし、2週目にしてベスト10入り。韓国の男性アイドルグループNCTより、中国系メンバーを集めたサブグループ。オリコンでは6月17日付チャートで2千枚を売り上げて22位に初登場し、今週、5週目にして8千枚をうりあげて5位にランクインしています。ちなみに前作「On My Youth」はこちらもランクイン3週目にして1万7千枚を売り上げて、同じく5位にランクインし、ベスト10に初登場しています。

続いて4位以下の初登場盤。4位に倉木麻衣「forever for YOU」が初登場。アニメ「名探偵コナン」主題歌を中心に収録した6曲入りのEP盤。5位は菅田将暉「SPIN」がランクイン。3枚目のアルバムとなります。6位はLDH所属の女性アイドルグループLucky2「こくご・さんすう・りか・恋愛」が初登場でランクイン。新曲3曲+同作のインスト版という、事実上のシングルを無理やりアルバム扱いしたもの。最後9位には、声優堀江由衣「文学少女の歌集III -文学少女と夜明けのバス停-」が初登場でランクインしています。


今週のHeatseekers Songs

https://www.billboard-japan.com/charts/detail?a=heat_seekers

今週のHeatseeekersは男性シンガーソングライター808「You」が2週ぶりの1位返り咲き。4週目の1位獲得となりました。


今週のTikTok Weekly

https://www.billboard-japan.com/charts/detail?a=tiktok

今週の1位もKOMOREBI「Giri Giri」が1位を獲得。これで5週連続の1位。ちなみに先週Heatseekersで1位を獲得したこっちのけんと「はいよろこんで」が2位にランクアップしており、こちらの動向も気になります。「はいよろこんで」は今週、動画再生回数で1位を獲得。総合チャートでも19位にランクインしています。


今週のニコニコVOCALOID SONGS

https://www.billboard-japan.com/charts/detail?a=niconico

VOCALOIS SONGSですが、今週もニコニコ動画がサーバー攻撃のため休止中の影響のため、ランキングは発表されていません。ちなみにサツキ「メズマライザー」は動画再生回数が8位から14位にダウンしています。

今週のHot Albums&各種チャートは以上。チャート評はまた来週の水曜日に!

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2024年7月10日 (水)

日韓アイドルのコラボが1位獲得

今週のHot100

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今週1位を獲得したのは日韓の男性アイドルグループのコラボ作です。

Befirstattz

1位初登場は日本の男性アイドルグループBE:FIRSTと、韓国の男性アイドルグループATEEZとのコラボ作、BE:FIRST×ATEEZ名義による「Hush-Hush」が獲得です。配信限定シングルで、ダウンロード数、ラジオオンエア数及び動画再生回数で1位獲得。ストリーミング数で12位、総合順位で1位獲得となりました。

一方、2位も韓国の男性アイドルグループTOMORROW×TOGETHER「ひとつの誓い (We'll Never Change)」が獲得。CD販売数1位、ダウンロード数7位。オリコン週間シングルランキングでも同作を収録した「誓い(CHIKAI)」が初動売上35万8千枚で1位を獲得。前作「Good Boy Gone Bad」の初動36万7千枚(2位)から若干のダウンとなっています。

そして3位はCreepy Nuts「Bling-Bang-Bang-Born」が先週と同順位をキープ。ストリーミング数は3週連続の2位、動画再生回数は1位から2位に再びダウン。ダウンロード数は5位から9位までダウン。これで25週連続のベスト10ヒット、通算23週目のベスト3ヒットとなりましたが、全体的に勢いは下降気味です。

次に4位以下の初登場曲ですが、まず6位に韓国の女性アイドルグループaespa「Hot Mess」が初登場でランクイン。CD販売数3位、その他は圏外。オリコンでは初動売上6万1千枚で2位初登場。本作がCD形態では初のシングルとなります。

10位初登場はYOASOBI「UNDEAD」。ダウンロード数2位、ストリーミング数17位、ラジオオンエア数15位。西尾維新によるライトノベルシリーズを元としたアニメ「〈物語〉シリーズ オフ&モンスターシーズン」主題歌。ストリーミング数含む、初動順位は低めですが、今後、上位に食い込んでくるのでしょうか。

また今週、ベスト10への返り咲き曲としてMY FIRST STORY×HYDE「夢幻」が先週の11位から8位にランクアップ。4週ぶりの1位返り咲きとなっています。特にストリーミング数が14位から6位に大きく増加。7月3日にフジテレビ系「2024FNS歌謡祭 夏」への出演の影響でしょうか。テレビアニメ「鬼滅の刃」柱稽古編という好タイアップがついていながら、売上は今一つな感は否めないのですが、これを機に、上位に食い込んでくるのでしょうか。

Omoinotake「幾億光年」は6位から7位にダウン。ストリーミング数は8週連続の3位。ただ動画再生回数が10位から12位にダウン。ダウンロード数も20位までダウンしており、全体的な勢いには欠ける感も。これで21週連続のベスト10ヒットとなりました。

さらに今週、tuki.「晩餐歌」は9位から11位にダウン。ベスト10ヒットは通算30週でストップ。ロングヒット曲は全体的に勢いがなく、次のヒット作が待たれます。

今週のHot100は以上。明日はHot Albums&各種チャート!

一方、ロングヒット曲は、まずMrs.GREEN APPLE「ライラック」は5位から4位にアップ。ストリーミング数は3週連続の1位。また動画再生回数が9位から4位と一気にアップしています。これで12週連続のベスト10ヒットも。ちなみに先週まで2曲同時にランクインしていた「コロンブス」は今週12位にダウンしています。

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2024年7月 9日 (火)

世界的に「バズった」SSWのデビュー作

Title:凡才
Musician:imase

デビューアルバムである本作がHot Albumsでいきなり2位にランクイン。一気にブレイクを果たした男性シンガーソングライター。ただ、もちろん本作でいきなり出てきたシンガーではなく、もともと2022年にリリースされた「NIGHT DANCER」がTikTokを中心に話題となりヒットを記録。特に日本以上に海外で話題となり、韓国では最高位14位という日本以上のヒットを記録(日本では最高位38位)。むしろ東アジアや東南アジア方面で高い評判を得て話題となりました。

特に韓国ではK-POPのアイドルが、「NIGHT DANCER」を使用した「踊ってみた」動画が話題となり、ヒットの要因となったようです。それだけに、いかにも今時のTikTokで流行りそうなシンガーソングライター、といったイメージで構えて聴いてみたのですが・・・これが思ったよりもよく出来たポップスアルバムに仕上がっていたから驚きです。

この話題となった「NIGHT DANCER」もタイトル通り、リズミカルなダンスチューンなのですが、リズミカルなエレクトロビートをバックにメランコリックに聴かせる曲調は、ちょっと気だるさもあり、シティポップ風にまとめあげているダンスチューン。それに続く「Nagisa」は、今度は同じダンスチューンながらもホーンセッションやストリングスも入れた爽やかで鮮やかな曲調が特徴的な明るく楽しいポップチューン。かと思えば「でもね、たまには」ではファルセットボーカルにラップも入ったHIP HOP風のポップス。

他にも「ヒロイン」はちょっとジャズ風なサウンドにバンドサウンドを取り入れたポップスに仕上げていますし、「Shine Out」は完全にエレクトロ風なダンスチューン。最後を締めくくるデビューシングル「Have a nice day」はファルセットも入った爽やかでメランコリックなピアノポップ風にまとめています。

かなりバリエーションの富んだ曲調で、ほどよくソウル風、ジャズ風、ロック風な要素を取り入れて、全体的にはシティポップ風に聴かせる曲調が特徴的。あえて言えば、藤井風をもうちょっとポップにした感じといったところでしょうか。意外とバラエティー富んだ作風を楽しめる素直なポップスになっており、変に売りや今時を狙ったようなあざとさもありませんし、最近、よくありがちなとにかくマイナーコードのメランコリックな曲調を聴かせるようなメロディーラインもありません。

さらに驚きなのが彼、もともと2021年に「音楽経験0の素人がオリジナル曲を作ってみた」という動画投稿からその活動をスタートさせたようで、音楽活動を開始してから、まだわずか3年という経験しかないそうです。ただ、才能があれば、音楽経験が全くなくても、いきなり「名曲」を作れてしまうところが、大衆音楽のおもしろいところであり、怖いところであったりもします。音楽経験がほとんどない素人が、わずか3年でこれだけの曲を作れてしまうあたりが、かなりセンスの良さを感じました。

ただ一方で、やはり経験不足がマイナスに感じる部分もあり、それがさきほどから彼の音楽に対して「~~風」という表現をあえて使っている点。やはり聴いていて、あくまでも様々な音楽的な要素は「~~風」のような、風味を感じるだけであって、深い音楽的な素養という点では底の浅さは正直感じてしまいます。ここらへんは、良く出来たアルバムとはいえ彼のアキレス腱でもあり、このアルバムを傑作として大絶賛するにはちょっと躊躇してしまう、大きな要素だったりします。

もっとも、この「音楽的素養」なんてものは、いくらでも後付けで身に着けられるもの。まだ、デビューから3年という経験しかない彼ですが、今後、経験を積むことによって、どんどん音楽性は深化していく可能性も感じます。そういう意味では、まだまだ未熟さも感じるものの、末恐ろしい感じもするミュージシャン。音楽的なセンスは間違いなくあるだけに、これからのさらなる成長を期待したい、そう強く感じられるアルバムでした。

評価:★★★★


ほかに聴いたアルバム

アンジェラ・アキ sings「この世界の片隅に」/アンジェラ・アキ

2006年にリリースされたデビューアルバム「Home」が大ヒットを記録し、一躍人気ミュージシャンとなったシンガーソングライターのアンジェラ・アキ。紅白に6年連続出演するなど人気を博したものの、2014年にアメリカの音楽大学へ留学するために活動を休止しました。ただ、それから10年、久々の活動を再開。約12年ぶりとなるオリジナルアルバムが本作。ミュージカル「この世界の片隅に」に提供した曲を自ら歌ったアルバムとなります。

基本的にピアノの弾き語りでしんみりと聴かせるスタイル。太鼓を取り入れた曲があったり、ミュージカル俳優の海宝直人が参加した曲があったりと、ミュージカルでの使用を感じさせる曲もあったものの、ゆっくり力強いボーカルで歌い上げるスタイルは、かつてのアンジェラ・アキそのまま。いい意味で変わっていない彼女の姿を感じます。音楽大学の経験は、このアルバムを聴く限りだとあまり反映されていないのですが、ミュージカルへの楽曲提供など、今後は幅を広げて精力的に活動してくれそう。今後の彼女の活躍にも期待したいところです。

評価:★★★★

アンジェラ・アキ 過去の作品
ANSWER
LIFE
WHITE
SONGBOOK
BLUE
TAPESTRY OF SONGS-THE BEST OF ANGELA AKI

DON'T THINK,POP!!/及川光博

俳優としても精力的に活動を続けつつも、本業ミュージシャンとしてコンスタントにライブ活動と新作リリースを続けるミッチー。2年ぶりとなる新作は、よくモチーフとして取り上げられるブルース・リーの名セリフを元としたタイトルですが、タイトル通り、ミッチーらしいポップな曲が並ぶ作品。ただ、冒頭のタイトルチューン「DON'T THINK,POP!!」はGファンクを取り入れたようなかなりカッコいいファンクチューンになっており、続く「Amazing Love」も同じくファンキーにカッコよく聴かせてくれます。後半は、ちょっと平凡なJ-POP路線になってしまって尻つぼみ的な感じも否めませんが、全体的にはタイトル通り、考えるよりもポップなメロを楽しませてくれる楽曲に仕上がっています。久しぶりにライブにも行きたいなぁ。

評価:★★★★

及川光博 過去の作品
RAINBOW-MAN
美しき僕らの世界
喝采
銀河伝説
ファンタスティック城の怪人
さらば!!青春のファンタスティックス
男心DANCIN'
20 -TWENTY-
パンチドランク・ラヴ
FUNK A LA MODE
BEAT&ROSES
BE MY ONE
XXV
気まぐれサーカス

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2024年7月 8日 (月)

70年代ソウルを今に継承

Title:Ten Fold
Musician:Yaya Bey

Tenfoldyayabey

アメリカはニューヨーク、ブルックリン出身のシンガーソングライターでマルチアーティストとしても活躍するYaya Beyの約2年ぶりとなるニューアルバム。非常に高い評価を受けた前作「Remember Your North Star」ではじめて彼女のアルバムを聴き、そのオーガニックでメロウな作風に強く惹かれたのですが、今回のアルバムもまた、ムーディーでメロウなネオ・ソウルの楽曲に強く惹かれる傑作アルバムに仕上がっていました。

まず1曲目「crying through my teeth」のスタートから、思わず心の中でガッツポーズを取るソウルリスナーも多いのではないでしょうか。いきなりグルーヴィーなドラムとベースラインに彼女のファルセットボーカルからスタート。スモーキーでメロウな出だしは、まさにネオ・ソウルらしい作風。ハイトーンボーカルで包み込むように聴かせる彼女のボーカルに、まずは強く惹かれること間違いなしでしょう。

その後も軽快なリズムでダンサナブルな「sir princess bad bitch」や、ループするトラックが狂おしいほどメロウで美しい「chasing the bus」、グルーヴィーなドラムとベースとムーディーなボーカルの絡みが美しい「me and all my niggas」、ギターの音色がメロウに彩りを添える「career day」、ファンキーなギターにも耳がいく「carl thomas sliding down the wall」など、聴きどころたっぷりのネオ・ソウルの曲が続いていきます。全体的に、ドラムやベースラインなど重低音を重視したサウンドは、比較的音数も少なくシンプルにグルーヴ感を醸し出しており、そのサウンドに下支えされた、ファルセットを入れつつもメロウで、かつ力強さも感じるYaya Beyのボーカルも実に魅力的な作品に仕上がっています。

ダニー・ハザウェイなどを引き合いに出されることの多い彼女は、基本的に70年代あたりのソウルを継承しているスタイルが耳を惹くのですが、一方ではしっかりと今時のサウンドにもアップデートされており、基本的には「east coast mami」に代表されるような重低音を強調したサウンドメイキングは今風なサウンド。「all around los angeles」のように、リズムからラテンの影響を感じさせる軽快な曲もありますし、「so fantastic」では2022年に亡くなったラッパー、Grand Daddy I.U.も参加(なんと彼女の父親らしいです!)し、HIP HOPの要素も強い作品となっています。

このように適度に今風のサウンドにアップデートし、様々な曲調を取り入れつつも、ソウルミュージックをしっかりと継承し、そのボーカルを聴かせるという、ある意味、非常に理想的とも言える傑作アルバム。優しさと力強さを同居させる彼女のボーカルも実に魅力的で、ソウルミュージックが好きなら、是非とも聴いてほしいアルバムだと思います。今年を代表する傑作アルバムの1枚と言ってもいいかもしれません。そのグルーヴィーでメロウな楽曲に強く惹かれる作品でした。

評価:★★★★★

Yaya Bey 過去の作品
Remember Your North Star


ほかに聴いたアルバム

Almighty So 2/Chief Keef

Almightyso2

シカゴ・ドリルの代表的なラッパー、Chief Keefのニューアルバム。UKガラージや、ハウス系ミュージックにHIP HOPの要素を取り入れたグライムのサウンドを取り入れつつ、不穏な雰囲気で聴かせるトラックが特徴的だそうで、実際、全編、リズミカルなビートに不穏な雰囲気のサウンドやラップがのるスタイル。ダークな雰囲気が耳に残る1枚でした。

評価:★★★★

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