2018年10月16日 (火)

貴重な映像と音源たっぷりのトークショー

レイジーキャッツのクレイジー・ナイト

日時 2018年10月9日(火) 19:30~ 会場 TOKUZO

今回の「ライブレポート」は正確に言うと音楽の「ライブ」レポートではありません。先日、クレイジーキャッツの音楽を取り上げた評論本「クレイジー音楽大全」を紹介しました(その時の感想記事はこちら)。その書籍発売を記念して行われたトークライブが今回紹介する「ライブ」。同書の著者である佐藤利明氏、音楽評論家の小川真一氏、そしてここでもよく紹介する戦前SP盤復刻レーベル「ぐらもくらぶ」の主宰者である保利透氏を迎えてのトークライブとなっていました。

実は前回「クレイジー音楽大全」を紹介した後、クレイジーキャッツの音源についても興味が沸き、植木等の音源を網羅的に収録した「植木等伝説」というCDを購入し聴いてみました。

さすがにかつて一世を風靡したグループとはいえ、もう50年以上前の話。さすがに今の耳で聴くと厳しいかな・・・と思って聴いてみたのですが、これが今の感覚で聴いても予想以上に楽しく、すっかりはまってしまいました。そのため一気にクレイジーキャッツに対する興味のわいた今日この頃、今回のトークライブについても楽しみにして足を運びました。

会場のTOKUZOはなかなかの盛況。たださすがにほとんどの方がクレイジーキャッツをリアルタイムで見ていた60代以上くらいの世代の方で、さすがにアラフォー世代はほとんどいなかったような・・・。まあ仕方ないですよね・・・(^^;;

さてトークライブは定刻通りにスタート。最初は昔、クレイジーキャッツが出演していたというサントリーのビールのCMが流れ、みんなで乾杯を唱和し、和気藹々とした雰囲気からスタート。最初はクレイジーキャッツ各メンバーの紹介と各々ソロ演奏の映像が流れます。ちなみにこの日はライブのためだけに門外不出の映像なども持ってきていたそうで、ここで見た映像はSNSなどでも内緒にしてほしいと言われてしまいました(笑)。

この日のトークライブは全2部制。最初の第1部は基本的に書籍「クレイジー音楽大全」に沿った内容。基本的に佐藤利明氏のトークによりすすんでいきます。主にハナ肇、植木等、谷啓のクレイジーキャッツ結成以前の活動からスタートし、クレイジーキャッツ結成、そして「しゃぼん玉ホリデー」で大ブレイクするまでの経緯が語られました。

内容は書籍にも書いてあることがメインなので、「音楽大全」を読んでいたら、「ああ、本にも書いてあったな」というエピソードが主。とはいえ、要所要所に当時の貴重な映像や音源が入ったり、特にクレイジーキャッツ結成以前のエピソードについては、ハナ肇や谷啓みずから語る音声も流れたりして、強く印象に残りました。

第1部で特に印象に残ったのはシングル「スーダラ節」のジャケットに記載された謎のアルファベットについてのエピソード。「クレイジー音楽大全」の表紙には「スーダラ節」のジャケット写真が用いられているのですが、この左下に「宮間利之とニュー・ハード・オーケストラ(WPT)」と記載されています。そして、このWPTが何かということが大きな謎だったそうです。それが最近、実はこれ、渡辺プロダクションのロゴをここに入れるという矢印での指示(WP(渡辺プロダクション)↑)が誤ってそのまま印刷されたということが判明したとか。誤植がそのまま残っているというのにその時代のおおらかさを感じます。

なお、1986年にリリースされた「新五万節」はこの「スーダラ節」のジャケットをそのままパロディーにしたジャケットになっているのですが(「クレイジー音楽大全」の裏表紙になっています)、例の部分には「ヤング大滝と実年マーチング・バンド(AOT)」と記載。こちらの「AOT」がなんなのか、こちらは謎のまま(ちなみにジャケットを作成したのはかの大滝詠一だそうですが)だそうで、今後の課題だそうです。

ほかにもパイロット版だけ残っているクレイジーキャッツ主演の幻の主演番組「どら猫キャプテン」の映像が流れたり、クレイジーキャッツ加入以前に植木等と谷啓が所属していたフランキー堺とシティ・スリッカーズの映像が流れたりと、興味深い映像を次々とみることが出来ました。

この第1部が約1時間半程度。この後10分弱の休憩をはさみ第2部となります。第2部は時間の許す限りクレイジーキャッツのヒット曲の映像を流しつつ、その曲にまつわるエピソードを語る内容に。こちらもかなり貴重な映像の連続。彼らの最初のレコーディング作「珍説ひつじ物語」や、歌詞の内容が問題となりすぐに回収となった「五万節」のオリジナルバージョンなども流れ、非常に興味深く聴くことが出来ました。

第2部は1時間強。計2時間半強のかなりボリュームのあるトークライブ。実はライブはほとんど佐藤利明氏の語りで小川真一氏と保利透氏はほとんど何も語らず終わってしまったのですが(^^;;ただ貴重なエピソードも満載。さらにクレイジーキャッツの話を嬉々として語る佐藤利明氏は心の底から本当にクレイジーが好きなんだろうなぁ・・・と感心しました。

そんな訳で非常に充実した2時間半。かなり楽しくお話を聴くことが出来ました。なによりも数多くの貴重な映像と音源でクレイジーキャッツの魅力により深く触れることが出来、ますます後追いながらもクレイジーキャッツにはまってしまいそうです。

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2018年10月15日 (月)

不倫騒動を皮肉った曲も登場

Title:好きなら問わない
Musician:ゲスの極み乙女。

例の不倫騒動以来、すっかりと「国民のヒール」的な状況になってしまった川谷絵音率いるゲスの極み乙女。いまだに時おり見受けられるバッシング記事にはいい加減うんざりさせられるのですが、そんな状況とは裏腹にむしろミュージシャンとしては脂がのってかなり充実しているように感じられます。前作「達磨林檎」もゲスの極み乙女。史上最高傑作といえる充実作となっていましたが、続く本作も文句なしの傑作アルバムに仕上がっていました。

特に今回のアルバムでは、例の騒動をかなり皮肉った当てつけとも思われる歌詞も登場。配信オンリーでリリースされた「あなたには負けない」では不倫騒動のスキャンダルを暴いた文芸春秋社とコラボして話題となりましたが(残念ながら本作には未収録ですが)、「戦ってしまうよ」も今回の騒動を彷彿とさせる内容になっていますし、さらにストレートなのが「僕は芸能人じゃない」はまさにそのまま今回の騒動を皮肉った内容に。川谷絵音が誰と恋愛しようが、自分の人生に何一つ関係ないくせにバッシングを続ける連中にとっては、バッシングが加速しそうな苛立たせそうな歌詞でしょうが、過剰なバッシングにいい加減飽き飽きしている人にとっては、ある意味かなり痛快な歌詞になっています。

さて、ゲスの極み乙女。といえば、当初は「ヒップホッププログレバンド」と自称し、ギターロックを軸にソウル、ファンク、HIP HOPなどの要素を入れた複雑、実験的なサウンドが大きな特徴となっていました。今回のアルバムでも1曲目「オンナは変わる」(これも不倫騒動を考えると意味深な歌詞ですが)ではファンキーなリズムを取り入れたり、11曲目にはインディーズ時代にリリースした「踊れないなら、ゲスになってしまえよ」に収録した「ホワイトワルツ」をadult ver.として収録。アダルティーでジャジーなアレンジに仕上げており、原曲の雰囲気をガラリと変えてきています。

ただアルバム全体としては哀愁感あふれたメロディーラインを前に押し出した、ある種の歌謡曲のテイストが強くなった作品となっていました。「はしゃぎすぎた街の中で僕は一人遠回りした」も切なさを感じらせるメロディーと歌詞が大きなインパクトとなっていますし、「もう切ないとは言わせない」も哀しげなメロディーラインが大きなインパクトとなっています。ゲスらしいメロディーラインに一ひねりを加えている部分もあるとはいえ、雰囲気としては川谷絵音率いる別バンド、indigo la Endに近づいているような印象すら受けました。

そしてこの彼らしい哀しさを帯びたメロディーラインが実に秀逸。indgo la Endの最新アルバム「PULSATE」も川谷絵音のコアな部分が表に出たような美しいメロディーラインが強い印象を与えてくれるアルバムでしたが、本作も同様にとろけるように美しいメロディーは彼のミュージシャンとしての本質的な部分があらわてきています。特にラストを飾る「アオミ」はちょっと80年代的なテイストも漂う美しいAORのサウンドとメロディーが素晴らしい傑作。個人的にはバックの「は~あ~」という女性のコーラスラインには鳥肌が立つほどの気持ちよさを感じます。

ちなみに本作ではアニメ「中間管理録トネガワ」の主題歌「颯爽と走るトネガワ君」も収録。アニメの内容に沿ったいかにもなアニメソングだっただけにアルバムに収録されたのはちょっと意外にも感じたのですが、こういう「飛び道具」的な曲でもアルバムの中で違和感なく聴けてしまうのも、ゲスの極み乙女。らしい魅力と言えるかもしれません。

そんな訳でミュージシャンとして非常に脂ののっていることを感じる傑作アルバム。前作に比べると前作に軍配が上がるかもしれませんが、それを差し引いても文句なしの傑作だったと思います。これからの活動も実に楽しみです。

評価:★★★★★

ゲスの極み乙女。 過去の作品
踊れないなら、ゲスになってしまえよ
みんなノーマル
魅力がすごいよ
両成敗
達磨林檎


ほかに聴いたアルバム

822/森山直太朗

前回、ベストアルバム「大傑作撰」で久しぶりに彼のアルバムを聴いたのですが、本作はベスト盤リリース後、はじめてリリースされたオリジナルアルバム。興味をもったのは最近、子どもとよく聴いているNHKの子ども向け番組「みいつけた」のエンディングテーマ「みんなおんなじ」が収録されていたから。番組のキャラクターが歌う部分もそのままになっていたのは個人的にはうれしかったのですが(笑)、ちなみにこの曲、メロディーが完全にKANの「愛は勝つ」なんですよね・・・。

もっとも森山直太朗の曲で気になる「いかにも文学的風な歌詞だけど、内容的には何も言っていない」歌詞は本作でも気になります。個人的には彼の書く歌詞はどうも好きになれません。一方でバラードばかりで単調だったメロディーラインは以前に比べてグッと進化した感じで、ミディアムテンポ中心の構成でも最後まで飽きずに聴くことが出来ました。悪いアルバムとは思わないけど・・・次聴くのは次のベスト盤でいいかな・・・。

評価:★★★★

森山直太朗 過去の作品
大傑作撰

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2018年10月14日 (日)

童謡百年

Title:童謡百年の歩み~メディアの変容と子ども文化~

いまからちょうど100年前の1818年(大正7年)7月1日、児童文学者の鈴木三重吉により児童雑誌「赤い鳥」が創刊されました。この雑誌は政府主導で推し進められた唱歌や説話に対して子ども本来の感性をはぐくむことを目的として童話・童謡を提唱し、いまでも知られる数多くの童話や童謡を世に生み出しました。この話は教科書にも載っている話なのでご存じの方も多いでしょう。今年は「赤い鳥」創刊からちょうど100年。そのため、「童謡百年」として様々なイベントなどが行われいるようです。

本作はそんな「童謡百年」の企画の一環として日本コロンビアからリリースされた全8枚組からなるCDボックス。もともとは「日本童謡史」として1981年にリリースされたものを大改訂した作品で、全240曲を収録。「童謡」のみならず「子供向けの楽曲」をテーマとして童謡が誕生する以前から子供たちが歌い継いでいた「わらべ歌」からNHKの「おかあさんといっしょ」や「みんなのうた」で誕生した曲、さらには「アニメソング」まで幅広い楽曲を収録しています。

個人的な事情で恐縮ですが、ここ最近、子どものために童謡やら「おかあさんといっしょ」などEテレ初のキッズソングをしょっちゅう聴くようになりました。ただそんな中、キッズソングを大人の耳で聴いて気が付いたのですが意外と・・・というよりも全く馬鹿に出来ない。子ども用の童謡やキッズソングは対象が子どもであるがゆえにいろいろと考えこまれた曲も多く、メロディーもシンプルであるがゆえによくよくできたポップソングが少なくありません。そんなこともあって今回、このCDボックスを聴いてみました。

とにかくこのCDボックスで印象的なのはキッズソングを徹底的に網羅しようとする幅の広さ。前述の通り「わらべ歌」からスタートし、「アンパンマンのマーチ」「おどるポンポコリン」「ドラえもんのうた」まで収録されています。本作のCD8枚組はそれぞれがテーマ性をもって選曲されているのですが、特にDISC6は「テレビと童謡」をテーマにテレビから生まれたキッズソングを収録。ただ比較的最近誕生した曲が多いせいか、やはり戦前に生まれた童謡や唱歌と比べると、ポップソングとして耳なじみやすさを感じたのが印象的でした。

また収録曲は「童謡」に留まりません。DISC5「歌手と童謡」では歌手にスポットをあてて選曲。童謡歌手が歌う「歌謡曲」などもあったりして、曲の大半はキッズソングというよりは歌謡曲に近い曲でした。さらに美空ひばりの「河童ブギウギ」も収録されているのですが、その歌唱力はほかを圧倒しており、彼女の実力を感じさせます。

さらにDISC8「歴史の彼方から甦る童謡」では戦前のSP盤などの貴重な音源を収録。戦前にブームとなった浅草オペラの一環であるお伽歌劇の音源や戦時歌謡の曲まで収録されており、日本の童謡の歴史を徹底的に網羅しようとするこだわりも感じさせられました。

そんな非常に意欲的な企画であった本作。あらためて聴いて懐かしさを感じさせる曲も多々あり、また「子ども向け」だと馬鹿に出来ない名作も数多く、8枚という大ボリュームでありつつ一気に聴けてしまう素晴らしい企画になっていました。ただちょっと残念だった点がひとつありました。それは日本コロンビアの独自企画だったゆえに、コロンビアの音源のみが収録されていた点。そのため曲によってはオリジナルではなくカバー曲が収録されていました。

もっとも多くの童謡は必ずしも「オリジナル」がよく知られている訳ではないためカバー曲でも全く問題ありません。Eテレのキッズソングも、歌のおねえさん、おねえさんが変わるたびにカバーしていたりするので気になりません。ただ、たとえば「おどるポンポコリン」や「黒猫のタンゴ」、となりのトトロの「さんぽ」などオリジナル曲がよく知られている曲に関してはかなり違和感がありました。特に「おどるポンポコリン」はマナカナによるカバーなのですが、彼女たちの歌はまだしも、原曲の近藤房之助のパートがかなり酷く、聴いていて辛いものすらありました。

せっかくの企画なのでコロンビア単独ではなく多くのレコード会社の共同企画だったらおもしろかったんですけどね。でも「童謡」というテーマだとなかなか売上を確保できないので難しいのかなぁ。その点だけはちょっと残念でした。

そんなちょっと残念な点もありつつ、企画全体としてはかなりの力作であり、素晴らしい内容だったと思います。かなりのフルボリュームだったのですが、聴いてみて損のない内容。あらためて童謡、キッズソングの素晴らしさ、奥深さを感じさせてくれる作品でした。

評価:★★★★★

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2018年10月13日 (土)

話題のHIP HOP入門書第2弾

いまから7年前、一冊のHIP HOP入門書が大きな話題となりました。「文科系のためのヒップホップ入門」と名付けられたその本は、ヒップホップを「音楽」ではなく「場を楽しむゲーム」であると主張。少々極論気味とはいえ、HIP HOPの本質をずばり突いたような評論が大きな話題となりました。(その当時の当サイトの感想はこちら

そしてそれから早くも7年。ある意味「ようやく」という表現がピッタリかもしれません。HIP HOPを巡る動向が大きく変化する中、同書の第2弾が発売されました。それが今回紹介する「文科系のためのヒップホップ入門2」。前作と同様、ライターの長谷川町蔵氏と大和田俊之氏の会話を中心とした構成になっています。

本作の構成は前作がリリースされた移行、2012年から2014年までのHIP HOPの動向を1年ごとに紹介。またそれに挟む形でジャズ評論家の柳楽光隆氏を迎えて、「ジャズとヒップホップ」として近年急接近したジャズとヒップホップの関係を紹介しています。

そのため基本的には本作は前作を読んだ前提で話が進んでいきます。一応、前書きと第1章を復習的な章として設けてありますが、どちらかというと知識の振り返りといった感じで全くの初心者が本作から読み始めるとちょっと厳しい印象も。ゲームで言えば本作は前作の「パワーアップキット」といった感じでしょうか。

そんな本作ですが、著者のHIP HOP論については前作の延長。若干極論や単純化しているように感じる面がなきにしもあらずですが、シーンの本質をしっかりと突いた議論をしており違和感を覚えるような部分はありませんでした。ただ一方で構成面でもうちょっと工夫した方がよかったかも、と思う面が少なくありませんでした。

まずポジティブな面ですが、1年毎に紹介しているHIP HOPの動向。個人的にも6~7割程度は既に知っている話でした。ただ、それは要するに初心者レベルの話からスタートしているという意味。そういう意味でまさに「入門」にふさわしい内容になっていましたし、私が知らなかった3~4割の話も非常に興味深く聴けました。また私が知っている事項でもHIP HOPシーン全体から俯瞰した切り口もまた興味深いものがありました。

逆にネガティブな面なのですが、まず本人たちも指摘しているのですが、まずシーンの紹介が2014年までで終わっているというのは非常に厳しいものがあります。最近シーンを席巻しているトラップに全く触れられていませんし、ストリーミングが一般化した最近の動向にも触れられていません。ここらへん、あとがきでチラッと書いてはいるのですが、ここで紹介されているシーンと今のシーンに若干の乖離を感じてしまい、入門書としては大きなマイナスポイントのように感じます。

この点については著者も強く感じているようで、近日中に2015年から2017年のシーンを振り返る「3」を発売する予定だとか。この近刊に強く期待したいところです。もっとも2018年も既に9ヶ月が経過していますし、来年初頭に2018年のシーン動向を含めた形でリリースしてほしいとも思うのですが・・・。

また「ジャズとヒップホップ」としてヒップホップに急接近した最近のジャズの動向についてもかなりのスペースを割いて紹介しているのですが、こちらは「入門」というには特に詳しい説明もなく次々とミュージシャンが紹介されており、全くの初心者にとっては若干敷居の高い内容になっています。またシーン的にはヒップホップというよりもむしろジャズシーンの話。確かに最近、ジャズシーンはヒップホップと接近し、次々と新しいミュージシャンが出てきていて活況を呈してきている感もして、本作のこの論説も非常に興味深く読むことが出来たのですが、若干HIP HOP入門という本作の趣旨からははずれているように感じました。

逆にこの「ジャズとヒップホップ」は別冊的に1冊の本としてまとめて、その分空いたスペースで、各年のHIP HOPの動向についての「今の視点からの振り返り」をやってほしかったように思います。まあ、おそらく著者の方にとってはかなりの負担になりそうなので、読者の勝手な要望なのですが(^^;;

ちなみに本作で一番印象に残ったのはHIP HOPの話以上にアメリカにおけるきゃりーぱみゅぱみゅの「失敗」と、K-POP、特にBTSの「成功」の話。海外の動向をしっかりと分析せずにシーンの規模を読み違えて失敗した日本と、アメリカの音楽的動向をしっかりと分析し、それに沿った曲をリリースした韓国。ある意味、昨今の日韓のグローバル企業の動向に類似しているようにも感じられました。BTSについては、なぜあれだけアメリカでヒットできたのか、ずっと不思議に思っていたのですが、その理由の一端がわかったような気がします(とはいっても、それを差し引いてもなぜあれだけ成功できたのか、いまだに少々不思議なのですが)。

そんな訳で、構成面でもうちょっと工夫してほしかったなぁ、と思う面はあるものの、2014年までのHIP HOPの動向についてよく理解できる内容になっており、前作を読んだ方には引き続きHIP HOPの動向を手っ取り早く理解するには最適な1冊になっていたと思います。逆に前作を読んでいない、という方にはちょっとお勧めしずらい内容。まずは前作を読んだ上で本作を読むことをお勧めします。

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2018年10月12日 (金)

「3」人組となった「3」枚目のアルバム

Title:3
Musician:Sweet Robots Against The Machine

テイ・トウワのソロプロジェクト、Sweet Robots Against The Machineがなんと3人組となって復活。オリジナルアルバムとしてはなんと約16年ぶりの新作となります。タイトル通り、「3」枚目となる本作。さらには「3」人組となってのアルバムとなるのですが、その3人がテイ・トウワと、最近ではMETA FIVEとして共に活動している砂原良徳、そしてバカリズムの3人・・・・・・え、バカリズム?

かなり意外な人選で驚いたのですが、じゃあこのバカリズムがどのようにアルバムに参加しているのか聴いてみると・・・基本的にこのアルバムではバカリズムがポエトリーリーディング、あるいは女性との会話を「ネタ」として披露しつつ、そのバックにテイ・トウワと砂原良徳のトラックが流れてくるスタイル。ちなみにゲストとして参加している女性陣も夏帆や麻生久美子とかなり豪華なメンバーが参加しています。

この楽曲にバカリズムのネタが全面的に展開しているスタイルは賛否両論あるようで、確かに主題であるはずのテイ・トウワや砂原良徳のトラックが単なる「伴奏」のようにも感じてしまいます。ただ、テイや砂原のトラックが楽曲としてバカリズムの「ネタ」としっかり組み合わさっており決して単純な「伴奏」とはなっていません。今回のアルバムではスポークン・ワードとテクノを融合させた「スポークン・テクノ」なるジャンルを提唱しているようですが、まさに話し言葉とサウンドがしっかりとマッチしており、ひとつの音楽のジャンルとして機能しているように感じます。

実際、おそらくバックのトラックだけをインストで聴くと物足りなさを感じそうですし、逆にバカリズムの「ネタ」だけを聴いていても物足りなさを感じてしまいそう。バカリズムのトークはサウンドに乗って展開していますし、サウンドはサウンドでそのトークに沿った、主張しすぎない、かといってもBGM的に完全に埋没している訳でもない、絶妙なバランスを保っています。

そのテイ・トウワと砂原良徳のトラック、クレジットを見る限りは両者が協力して作った、というよりは基本的にテイ・トウワが主導で、「非常識クイズ(Insane quiz)」「捨てられない街角(Boxes)」の2曲が砂原良徳が担当している感じ。両者ともラウンジ色の強いテクノでアルバム全体として統一感があり、清涼感あるサウンドが心地よい印象。あえていえばテイのサウンドはよりラウンジ色が強く、砂原は「非常識クイズ(Insane quiz)」はほどよいビート感が心地よく、また「捨てられない街角(Boxes)」はラテンテイストのサウンドをバックした男女デゥオの「歌謡曲」的なナンバーになっており、テイ・トウワの曲とはちょっと違った雰囲気の曲とすることによってアルバムの中でインパクトを出しています。

バカリズムのネタの方はシュールなネタがメイン。以前、土岐麻子のアルバムに参加したことがあり、その時の「ネタ」が正直言って非常に寒かったので、彼のネタは自分には合わないのかな、と思っていたのですが、今回のネタは素直におもしろかったです(笑)。こちらも比較的淡々とした感じに進んでおり、トラックに対して必要以上に主張しすぎず、ほどよくバランスを保っている感じになっていました。

そんな訳で単なるバカリズムのネタアルバムになっているのでは?という意見も散見されるのですが個人的にはしっかりと3人の個性が組み合わさった「スポークン・テクノ」の楽曲を収録しているアルバムに仕上がっていたと思います。スタイリッシュなサウンドとユニークなネタがほどよくバランスよく組み合わさった傑作でした。

評価:★★★★★

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2018年10月11日 (木)

ミスチルが堂々の1位獲得

今週のアルバムチャート

http://www.oricon.co.jp/rank/ja/

先週まで4週連続K-POPのアルバムが1位を獲得していましたが、今週は日本を代表するミュージシャンのアルバムが堂々の1位獲得です。

今週1位を獲得したのはMr.Children「重力と呼吸」。約3年4ヶ月ぶりとなるニューアルバムが堂々の1位。初動売上は30万9千枚で、前作「REFLECTION」の35万5千枚からは若干ダウンしてしまいました。もっとも前々作「[(an imitation) blood orange]」は初動53万枚だったので、前々作から前作にかけての大幅ダウンに比べると、下げ止まった感はありますが・・・。

2位3位はゲームのキャラソン。男性俳優育成ゲーム「A3!」からのキャラクターソング集「A3! VIVID SPRING EP」「A3! VIVID SUMMER EP」がそれぞれランクイン。初動売上はそれぞれ3万枚、2万7千枚。前作は同じく2作同時ランクインした「A3! Blooming AUTUMN EP」「A3! Blooming WINTER EP」で、前作の初動2万5千枚、2万4千枚からアップしています。

続いて4位初登場です。4位は氷川きよし「新・演歌名曲コレクション8-冬のペガサス-勝負の花道~オーケストラ」がランクイン。演歌の名曲のカバーと彼のオリジナルが収録された「名曲コレクション」シリーズの最新作。初動売上1万8千枚は前作「新・演歌名曲コレクション7-勝負の花道-」の2万2千枚(5位)からダウン。

5位には韓国の男性アイドルグループWINNER「EVERYD4Y」がランクイン。4月に韓国でリリースされた同名のアルバムの日本語ヴァージョン。初動売上は1万5千枚。前作は韓国でリリースされた同作をそのまま国内盤としてリリースした「EVERYD4Y -KR EDITION-」で、こちらの初動2千枚(22位)より大幅アップ。純然たるオリジナルアルバムの前作「OUR TWENTY FOR」の1万2千枚(5位)よりもアップしています。

6位は女性声優麻倉もも「Peachy!」がランクイン。声優ユニットTraySailのメンバーとして活動。またソロとしてもいままで4枚のシングルをリリースしていますが、ソロでのアルバムは本作が初。初動売上1万3千枚で見事ベスト10入りです。

7位にはゴスペラーズ「What The World Needs Now」がランクイン。オリコンでは9月26日リリースとされ、初登場ではなく先週からランクアップしてのベスト10入りという形になっていますが、これは9月26日に先行リリースという形でLP盤がリリースされていた影響。CDは10月3日付リリースなので、CDリリースにあわせてのベスト10入りとなりました。

最近はアルバムはLPと配信のみというミュージシャンが出てくる中、ゴスペラーズのようなメジャーどころもLPを優先するんですね。当然のごとくサブスクリプションでもリリースしていますし。LP盤の先行リリースというアルバム、今後は徐々に増えていきそうです。

なお、今週の売上枚数は1万2千枚ですが、こちらが事実上の初動売上。前作「Soul Renaissance」の1万5千枚(5位)からダウンとなっています。

初登場最後は8位。アルスマグナ「アルスミュージアム」がランクイン。ニコニコ動画の「踊ってみた」で人気を博した男性5人組グループ。初動売上1万2千枚は前作「アルスロットル」の1万枚(11位)からアップ。前々作「アルス上々↑↑↑」以来2作ぶりのベスト10入りとなりました。

今週の初登場は以上ですが、最後にロングヒット組。安室奈美恵「Finally」は今週、10位にダウン。残念ながら売上枚数も2万2千枚にダウンしています。ただこのアルバム、リリースが昨年の11月とそろそろ1年に迫ろうかという頃。いまだにベスト10に顔を見せる驚異的なヒットには驚かされます。

今週のアルバムチャートは以上。チャート評はまた来週の水曜日に!

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2018年10月10日 (水)

ジャニーズ系 vs AKB系

今週のHot 100

http://www.billboard-japan.com/chart_insight/

ジャニーズ系とAKB系が並びました。

まず1位はジャニーズ系。Kis-My-Ft2[君、僕。」が先週の84位からCDリリースにあわせてランクアップし、1位を獲得しました。コーワ「ホッカイロ新ぬくぬく当番」CMソング。CD販売数、PCによるCD読取数及びTwitterつぶやき数1位。ラジオオンエア数も6位とジャニーズ系の割には高順位となっています。オリコンでは初動19万4千枚で1位獲得。前作「LOVE」の17万5千枚(1位)よりアップしています。

2位はAKB48系。新潟を中心に活動を続けるNGT48「世界の人へ」がランクイン。CD販売数2位に対してダウンロード数が40位というのはCDをアイテムとして買う人が多いアイドル系らしい傾向。Twitterつぶやき数は3位を獲得していますが、ラジオオンエア数は35位、PCによるCD読取数は18位に留まっています。オリコンでは初動売上14万3千枚で2位初登場。前作「春はどこから来るのか?」の10万9千枚(1位)よりアップしています。

3位はDA PUMP「U.S.A.」。先週の2位からワンランクダウン。相変わらずストリーミング数及びYou Tube再生回数は1位と強さを見せています・・・が、なかなか1位になれないなぁ・・・。

続いて4位以下の初登場曲です。まず5位にはYOSHIKI feat.HYDE「Red Swan」がランクイン。テレビアニメ「進撃の巨人」Season3オープニング。YOSHIKIらしいクラシカルでスケール感ある楽曲をToshiではなくHYDEのボーカルで歌われているのがいい意味での違和感があります。GLAYとかLUNA SEAとかと異なり、ラルクとX JAPANはあまり接点がないように感じたためにこの組み合わせにもかなり意外な感じも。CD販売数6位、ダウンロード数3位、PCによるCD読取数6位を獲得。一方、ラジオオンエア数は44位、Twitterつぶやき数は20位に留まっています。オリコンでは初動売上2万1千枚で4位初登場。

そしてこちらも意外性ある組み合わせ。椎名林檎と宮本浩次による配信限定シングル「獣ゆく細道」が初登場でランクイン。日テレ系「news zero」テーマソング。椎名林檎の曲に宮本浩次が参加している形。宮本浩次自体、かなり癖のあるボーカリストなのですが、ある意味対照的な2人のボーカルの織りなす違和感が強いインパクトになっていました。

ほかに返り咲き組として先週12位だった欅坂46「アンビバレント」が今週8位にランクアップ。2週ぶりにベスト10返り咲きとなりました。

ロングヒット組では驚異のロングヒットを続ける米津玄師「Lemon」。今週も先週から引き続き4位をキープ。さらに今週、なんとダウンロード数が1位を獲得。ダウンロード数1位は7月16日付チャート以来13週ぶりとなります。いまだに人気が広がり続けている状況は驚くべき限りです。また先週8位だったMISIA「アイノカタチ feat.HIDE(GReeeeN)」はワンランクダウンで9位をキープ。ストリーミング数では2位を獲得しており、まだまだ強さを見せています。あと先週ベスト10に返り咲いた乃木坂46「ジコチューで行こう」は先週の10位から7位にアップ。これで7週目のベスト10ヒットとなりました。

今週のHot100は以上。明日はアルバムチャート。

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2018年10月 9日 (火)

「和」と「洋」の融合は戦前にも

Title:ダンスリヨウ みんなで踊ろう昭和戦前民謡ジャズ

今回は、度々こちらでも紹介する戦前のSP盤を復刻したアルバムをリリースするレーベル、ぐらもくらぶの新しいアルバムです。今回取り上げた曲は「ダンスリヨウ」の楽曲だそうです。ダンス理容?床屋さんの踊り??なんて思ってしまいそうですが、「リヨウ」は漢字で書くと「俚謡」、要するに民謡のこと。「ダンスリヨウ」という聞き慣れない言葉は一部のレーベルのみで用いた、決して一般的な名称ではなかったようですが、1930年代、というから昭和最初期に主に関西で民謡とその当時はやったジャズなどを融合させた流行ったダンス小唄がちょっとしたブームになった時期があったそうで、そんな楽曲を収録したアルバムだそうです。

戦前に「ジャズ」というと今で言うジャズに限らず、西洋由来のポップソングを幅広く「ジャズ」と呼んでいた模様。ちょっと前までギターやドラムが鳴っていれば、どんなポップスも「ロック」と呼んでいたのと似ているかもしれません。要するにこの「ダンスリヨウ」というのは民謡という「和」の要素とジャズという「洋」の要素を融合させたダンスミュージックという訳です。洋楽由来のポップスに和風な要素をまぜて「日本独自の音楽」を確立させようとする動きは最近でもよく見られ、例えばメジャーシーンでは和楽器バンドなどが話題になりましたし、音楽ファンの間では、同じように民謡にワールドミュージックの要素を加味した民謡クルセイダーズというバンドも注目されています。

戦前にもこういう民謡に洋楽的な要素を加えようとした動きがあった、という点も非常に興味深いのですが、もともとこの「ダンスリヨウ」に限らず日本の俗曲に洋楽の要素を加味しようとする動きは大正期からあったそうで、そういう意味では日本の伝統的な音楽と洋楽を融合させて日本独自の音楽を作ろうという試みは決してここ最近出てきた話ではなく、むしろ洋楽が日本に入ってきた最初期から続いている試みという訳なんですね。

さて、そんな民謡とジャズの融合という試みなのですが、思った以上にしっくりとはまっているのが興味深いところ。おそらく「外国に負けない日本独自のサウンドを」というよりも、純粋に普段聞き慣れている民謡を今風にアップデートさせようという試みだったのでしょう。そのためジャズという要素よりも民謡的な部分がより強く出ている曲もあり、ちょっと聴いただけだと「どこかジャズ風?」という民謡そのままの曲も少なくありません。

とはいえ「串本ブシ」ではいまでもなじみのあるフレーズに軽快なラテン風のアレンジがのり、モダンな雰囲気に仕上がっているのが実に魅力的ですし、続く「草津節」もパーカッションの音色が軽快で心地よいルンバ風のアレンジに。「浅草おけさ」なども二村定一のちょっとおどけた感じもするボーカルと軽快なブラスのアレンジにより垢抜けた楽曲に仕上がっています。

またユニークなのが「新磯節」「モダンこんぴら船々」など歌詞がその時代風にアップデートされている「民謡」も目立つこと。「新磯節」などは基本的に洋楽的な要素が薄く、民謡的な色合いが強いだけに、逆に歌詞が当世風なのが非常にユニークに感じます。また「木曾節 新日本八景」などは民謡の要素が強いのですが、強い太鼓のリズムが独特のグルーヴ感を出しており、図らずも民謡の持つ「レアグルーヴ」的な側面を押し出しているアレンジになっているのもユニークでした。

さらにラストを飾る「安来ルンバ」は玖馬ナショナル五重奏団という本場、キューバのバンドを迎え入れての録音。哀愁感たっぷりの演奏なのですが、本場キューバの演奏というだけあって心地よいリズムとラテン風のサウンドが今の耳でも十分に楽しめる曲に仕上がっています。ちなみに安来節はほかにもタンゴ風の「安来タンゴ」が収録されていますが、それだけなじみのある民謡だ、ということでしょうか。ちなみに「金毘羅船々」も上にも書いた「モダンこんびら船々」含め2曲収録。こちらは原曲からして軽快で、高揚感ある展開がダンスとも相性のよういナンバーなだけに「ダンスリヨウ」にもよく取り上げられたのでしょうか。

そんな訳で「和」と「洋」の融合の試みとして非常に興味深く聴けたコンピレーションアルバム。今の耳からしても十分に楽しめる曲も少なくありません。「民謡」に興味がある方も聴いて損はない1枚かと。今でいえば民謡クルセイダーズや例えばソウルフラワーユニオンあたりを好んで聴いている方なども要チェックかな。とても素晴らしい企画盤でした。

評価:★★★★★


ほかに聴いたアルバム

存在感/KREVA

昨年はKICK THE CAN CREWとしても実に14年ぶりとなるアルバムをリリースしたKREVA。ソロとして約1年半ぶりとなる新作は5曲入りのミニアルバム。自分自身について問いかけた「存在感」や、ある意味、身もふたもないこをとリリックにしつつ自分への戒めにも感じられる「健康」など、全体的にはパーソナルなことを綴ったラップが目立ちます。KICKとしての活動を再開したからこそソロではよりKREVAのパーソナルな部分を出してくということなのでしょうか。2019年はソロ活動15周年の年になるそうで、この作品はそのスタートアップだとか。これから1年間、KREVAの活動から目が離せなさそうです。

評価:★★★★

KREVA 過去の作品
心臓
OASYS
GO
BEST OF MIXCD NO.2
SPACE
SPACE TOUR
KX
嘘と煩悩

YOURS/ビレッジマンズストア

名古屋発の5人組ガレージロックバンド。直近のミニアルバム「正しい夜明け」が非常に素晴らしい出来だったため初のフルアルバムとなる本作ももちろん聴いてみました。今回もとにかくエッジの効いたガレージロックがかっこいいアルバム。特に1曲目「Don't trust U20」はしゃがれ声のボーカルのシャウトと相成り、これぞロックといった楽曲に仕上がっています。

基本的にガレージロックをベースにメロディーはポップで歌謡曲的な要素も、というのは彼らの大きな魅力。今回もその魅力がフルに発揮されたアルバムになっていました。ただ前作に比べるとちょっとポップによりすぎている感じ。曲によっては平凡に感じてしまうナンバーもあり、惜しさも感じます。もっとゴリゴリのガレージロック寄りでもいいと思うのですが・・・。とはいえ、非常にかっこいいアルバムであることは間違いありません。今後も期待のバンドです。

評価:★★★★

ビレッジマンズストア 過去の作品
正しい夜明け

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2018年10月 8日 (月)

へヴィーなサウンドが素直にカッコいい

Title:NINTH
Musician:the GazettE

タイトル通り9作目のアルバムとなる、ヴィジュアル系ロックバンドthe GazettEの新作。前作「DOGMA」から約3年ぶりとなるニューアルバムで、ちょっと久々となる新譜。ただし、途中にベストアルバム「TRACE VOL.2」のリリースもあったため、さほど久々という印象は受け間視線。

the GazettEといえばヴィジュアル系バンドの中でも特にハードコアのテイストが強いバンド。今回のアルバムでもイントロ的な「99.999」からいきなりノイズが全開のへヴィーな楽曲からスタート。実質的な1曲目となる「Falling」も、最初は哀愁感ある耽美的なメロでスタートしつつ、いきなりへヴィーなサウンドとデス声でズシリとした楽曲に展開していきます。

その後も「NINTH ODD SMELL」「GUSH」といわゆるヴィジュアル系らしい耽美的なメロディーラインがバックに流れつつも、かなり分厚くハードコアなサウンドが流れる楽曲が続きます。

オリジナルアルバムでは前々作「BEAUTIFUL DEFORMITY」あたりから、ハードコア志向が強くなり、いわゆるヴィジュアル系的な雰囲気の強いメロディーよりも、へヴィーなサウンドを前に押し出した楽曲が目立つようになりました。今回のアルバムも基本的にその路線を引き継ぐようなスタイル。途中、「虚蜩」「その声は脆く」のようにメロディーを前に押し出したような曲もあるのですが、全体的にはへヴィーなバンドサウンドが前面に押し出された曲が並びます。

少々ナルシスティックに感じる鼻にかかったような歌い方と、歌謡曲的で哀愁感漂うメロディーラインという、いわゆるいかにもヴィジュアル系っぽいメロディーについてはおそらく好き嫌いが分かれそうに感じます。正直言うと個人的にも聴いていてあまり好みではありません。ただここ最近の彼らのアルバムもそうですし本作もそうですが、まずはカッコいいバンドサウンドが前に押し出された結果、そういった癖のあるメロディーの部分があまり気にならないレベルになっています。本作もそう。結果として最初から最後まで、おそらく普段ヴィジュアル系を聴かない、ハードコアが好きなリスナー層でも楽しめる作品になっていたと思います。

ただ一方で、このハードコア路線についても正直言うと、若干ありふれた感がありthe GazettEらしいサウンドという部分をあまり確立されていないような感じがするのも気になるところ。サウンドのパターンもあまり少なく、アルバムでも似たような雰囲気の曲も目立ちます。サウンド自体は非常にカッコよいと思うのですが、その点が気になりました。もちろん、メロディーとの組み合わせにより「彼ららしさ」はしっかり出ているとも言えるのですが・・・。

そんな訳でいい意味で「ヴィジュアル系」という枠組みに捕らわれずにハードコアバンドの作品として十分に楽しめそうな良作に仕上がっていた本作。いろいろと課題に感じる部分もありつつも、素直にサウンドのカッコよさを楽しめるアルバムでした。

評価:★★★★

the GazettE 過去の作品
TRACES BEST OF 2005-2009
DIM
TOXIC
DIVISION
BEAUTIFUL DEFORMITY
DOGMA
TRACES VOL.2


ほかに聴いたアルバム

Future Pop/Perfume

かなり久しぶりに聴いてみたPerfumeのニューアルバム。「Tiny Baby」のようなキュートなポップチューンもあったりして、J-POP路線は貫かれている一方、「FUSION」のようなインストナンバーもあったりして、歌よりも中田ヤスタカのサウンドが強調されているような印象も。結果、ポップスとしてのインパクトはちょっと薄くなったようなイメージがあるのですが、エレクトロのアルバムとしては強度が増している印象も。中田ヤスタカfeaturing Perfumeみたいな作品になってしまいそうな懸念もありますが。

評価:★★★★

Perfume 過去の作品
GAME

FREE TOKYO/SKY-HI

avexのダンスグループAAAのメンバーながらラッパーとしても活躍。最近ではラッパーとしての活動も高い評価を受けるようになったSKY-HIこと日高光啓の6曲入りのミニアルバム。日本語ラップの先駆者への敬意を綴った「FREE TOKYO」や自身のラッパーとしての決意を綴った「Name Tag」などリリックは比較的わかりやすく、かつしっかりと聴かせます。サウンド的にもトラップミュージックの要素を強く感じ、今時の要素が強い音。ラッパーとしてのスキルは言うまでもなく、間違いなく本格的なラップのアルバム。個人的にはちょっとラッパーとしてラップの迫力が弱いかな、という感じはしますが、今後の活躍にも期待したいところです。

評価:★★★★

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2018年10月 7日 (日)

初の「公式」ベスト盤

Title:STORY~HY BEST~
Musician:HY

メンバー全員が沖縄出身の男性4人、女性1人によるロックバンドHY。2000年結成の彼らの来る「結成20周年」に向けて「Road to 20th プロジェクト」が始動。その第一弾となるのがこの初となる「公式」ベストアルバムです。いくらなんでもまだ2018年の段階から結成20周年に向けてのプロジェクトをはじめるのは早すぎないか?と思うのですが、ちょっとイジワルな見方をしてしまうと一時期に比べて正直売上が落ち込んでいる彼ら。なんとか売上を喚起したいということなのでしょうか。

初の「公式」ベストアルバムという書き方をしているのは理由があって、彼ら、2014年に一度ベスト盤をリリースしています。ただこのベスト盤、よくありがちな原盤権を持っているレコード会社がミュージシャンに無断でリリースしたパターン。このベスト盤については彼らは完全否定した訳ではなく、「聴きたい方は、是非、聴いてください」と消極的なスタンスを取っていました。現在でも公式サイトを見るとこのベスト盤の存在には全く触れられておらず、「なかったこと」になっている模様です。

そして今回のアルバムはあきらかにこの2014年にリリースしたベストアルバム「HY SUPER BEST」を意識しています。今回はファン投票による上位の楽曲にメンバーが選んだ曲を加えてのベスト盤となっていますが、結果としてかなりの部分、収録曲が「HY SUPER BEST」と被ってしまっています。今回のアルバム、建付け的には「セルフカバー」という形を取っており、過去の曲をあらためてレコーディングした形になっているのですが、このレコーディングし直した曲は「HY SUPER BEST」の選曲対象となった2012年リリースのアルバム「Route29」以前の曲のみ。それ以降の曲に関しては過去の音源をそのまま使っている形になっています。

「HY SUPER BEST」を買った方や、ファンにとっては新録音が聴けるというのはうれしい試み。もっとも基本的にはアレンジを大きく変えている訳ではないため、新鮮味は薄いかもしれませんが。それでも初期ナンバーを今の彼らが歌い直しているのはファンとしてはうれしいところです。もっとも、あきらかに「HY SUPER BEST」を意識した新録音になっており、セルフカバーとしては中途半端。どうせならすべて新録音にすればよいのに、とも思ってしまいます・・・。

さて、そんなアルバムの感想ですが、正直言ってしまうと2014年に紹介した「HY SUPER BEST」の時に抱いた感想と全く変わりありません。決して悪くはないのですが、正直言うと無味無臭のJ-POP。「HY SUPER BEST」の感想で「公営の海水浴場の安いスピーカーから流れてきそう」と書いたのですが、決して聴いていてムカムカするような駄作ではない反面、思わず聴き入ってしまうような名曲という感じでもなく、そういう意味で公共の場のBGM向け、という印象を受けてしまいます。

そんな印象を受けるHYですが、それでもこのベスト盤を含めて毎作聴いてしまうのは、時々素晴らしい名曲を出してくるから。特に沖縄民謡の要素を入れ、かつ仲宗根泉がメインのボーカルを取るバラードナンバーは沖縄出身の彼ららしい個性を発揮した名曲になっているケースが多々あります。例えば今回のアルバムに収録されている曲でいえば「366日」「帰る場所」などがそのパターンでしょう。

特に「時をこえ」は歌詞の中で戦争の影を感じる社会派とも言える歌詞が特徴的。彼らのような典型的なJ-POPバンドですら、歌詞に戦争の話を取りいれてくるくらい、沖縄の方にとっては先の戦争の記憶がいまなお強く残っているということなのでしょうか。沖縄のバンドならではの名曲だと思います。

そうやって、時々、彼らしか歌えないような「名曲」をリリースしてくるだけに、アルバム全体としてはいまひとつと思っていても思わず聴いてしまう訳ですが・・・「HY SUPER BEST」の時の締めと同じになってしまいますが、そういう意味で非常に惜しく感じてしまいます。また是非、もっともっと多くの名曲を生み出してほしいのですが・・・。

評価:★★★

HY 過去の作品
Whistle
PARADE
Route29
HY SUPER BEST
GLOCAL

LOVER
Synchronicity(HY+BIGMAMA)
CHANCE


ほかに聴いたアルバム

SickSickSickSick/佐藤千亜妃

きのこ帝国のボーカリスト、佐藤千亜妃のソロデビュー作。バンドサウンドのきのこ帝国に対してソロではエレクトロサウンドという形でバンドとソロでの区別をつけているそうで、全体的にエレクトロ主体のポップチューンに。ここ最近、きのこ帝国の楽曲がポップ寄りにシフトしており賛否両論となっていますが、彼女の楽曲も比較的ポップなナンバーが並んでおり、例えばタイトルチューンの「SickSickSickSick」は90年代的なポップチューンになっていますし、「Bedtime Eyes」あたりはCharaからの影響を強く感じます。ただラストの「Prologue」では幻想的なサウンドを聴かせてくれたりして単純なポップアルバムとは一線を画している感じも。これからの活躍に要注目といった感じでしょうか。

評価:★★★★

BLACK BOX/大西ユカリ

なにわのゴッド姉ちゃん、大西ユカリのアルバムはなんとカバーアルバム。それも多くのソウルのスタンダードナンバーをカバー、ということで否応なく期待が高まったアルバム・・・なのですが、正直言うと期待していたほどではなかったかも。もちろん彼女の歌唱力は文句なしですし、感情たっぷりに歌い上げるその表現力も文句なし。そういう意味ではカバーとしては文句なし、なはずなのですが、いつもの彼女のオリジナルアルバムに比べるとちょっときれいすぎるというか、洗練されすぎているというのか。いつものアルバムのような泥臭いなにわのおばちゃんパワーがちょっと物足りないように感じました。

評価:★★★★

大西ユカリ 過去のアルバム
HOU ON
やたら綺麗な満月
直撃!韓流婦人拳(韓国盤)
直撃!韓流婦人拳

ニガイナミダが100リットル
肉と肉と路線バス
EXPLOSION

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