2019年2月16日 (土)

社会から疎外された人々を描く

Title:るつぼ
Musician:中村中

約3年ぶりとなる中村中のニューアルバムは、「意欲作」という表現がピッタリと来る作品になっています。まずジャケットからして、彼女の全裸に墨絵師の東學が蛾をペイントした、というかなり衝撃的な絵柄からまず大きなインパクトに。そして「現代の『おかしなこと』をテーマ」という今回の作品は、まさに彼女らしいといえる、現代社会の中で疎外感を感じる人たちの姿を描いた歌詞が大きなインパクトとなっていました。

例えば今回のアルバムで歌詞がまず印象に残るのが「箱庭」。オンラインゲームをテーマとしたこの作品は、よくありがちなゲームを否定的な文脈に使うのではなく、むしろ彼女自身、「現実が余りにも苦しいなら、ゲームの世界に居場所を求めても良い」とインタビューで述べているとおり、オンラインゲームの世界を肯定的に描いている点に彼女らしい独特の視点を感じます。

「きみがすきだよ」もおそらく人間関係の中で疎外された人にも微笑んでくれる異性に対する恋心を描写した歌詞で、そのあまりにも悲しい歌詞に胸が苦しくなってきます。「雨雲」も神様に救いを求める心の叫びがあまりにも痛々しい歌詞が大きなインパクトに。ほかの曲も彼女らしい、社会の中で疎外された人たちの言葉を描いた作品が並んでいます。こういうタイプの曲はいままでの彼女の曲の中でもよく見受けられたのですが、今回のアルバムはその傾向がより強くなっており、アルバムを聴いていて胸がとても痛くなってくるような作品になっていました。

ただもっともラストの「孤独を歩こう」はそんな「孤独」を肯定的に描く歌詞になっています。ある意味、「孤独」をそのまま肯定的に描いた歌詞も彼女らしさを感じるのですが、そんな楽曲をラストに配するあたり、このアルバムの「やさしさ」を強く感じさせる構成になっていました。

そして意欲的なのは決して歌詞の側面のみではありません。サウンド的にもかどしゅんたろう、えらめぐみなどの新進気鋭のミュージシャンが参加しており、ダイナミックなサウンドを取り入れた「羊の群れ」や、前述の「箱庭」はゲームのイメージさながらなエレクトロサウンドを取り入れたり、さらに「きみがすきだよ」ではトラップなどでよく聴かれるスネアのリズムが特徴的。歌詞にあった非常に切ない雰囲気のサウンドも大きなインパクトとなっています。

以前から常々、彼女はもっと売れるべきミュージシャンだ、と言っていたのですが、本作はまさにそんな思いをさらに強くする傑作アルバムに仕上がっていました。とにかく切ない歌詞が大きなインパクトですし、その世界観を上手く浮き上がらせるサウンドも実に見事。まさに彼女の思いの詰まったアルバムと言えるでしょう。是非とも聴いてほしい1枚です。

評価:★★★★★

中村中 過去の作品
私を抱いて下さい
あしたは晴れますように
少年少女
若気の至り
二番煎じ

聞こえる
世界のみかた
去年も、今年も、来年も、
ベター・ハーフ


ほかに聴いたアルバム

DEATH IN THE PYRAMID/The Mirraz

2017年は驚異的なペースでアルバムとミニアルバムをリリースし続けた彼ら。2018年になってそのペースも若干落ち着いたものの、8月にリリースされたアルバムから約4ヶ月で早くもリリースされた11枚目となるアルバム。 彼ららしいハイテンポで疾走感あるギターロックにこれでもかといほど言葉を詰め込んだ早口の歌詞が相変わらず。The Mirrazらしくて安心して聴けるアルバムといった感じが。ただ一方で少々マンネリ気味という印象は否めないのですが・・・。

評価:★★★★

The Mirraz 過去の作品
We are the fuck'n World
言いたいことはなくなった
選ばれてここに来たんじゃなく、選んでここに来たんだ
夏を好きになるための6の法則
OPPOTUNITY
しるぶぷれっ!!!
BEST!BEST!BEST!
そして、愛してるE.P.

ぼなぺてぃっ!!!
Mr.KingKong
バタフライエフェクトを語るくらいの善悪と頑なに選択を探すマエストロとMoon Song Baby
ヤグルマギク
RED JACKET
夏を好きになるための6つの法則 Part.2

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2019年2月15日 (金)

様々なタイプの音楽を(無理矢理)融合

Title:Maghreb United
Musician:Ammar 808

今回も2018年各種メディア「年間ベストアルバム」の後追いで聴いた1枚。今回はMusic Magazine誌「ワールドミュージック」部門の4位にランクインした作品。Ammar 808はタルグというチュニジア北西部の音楽を紹介するユニットのメンバーだったシンセ奏者ソフィアン・ベン・ユーセフが中心となった音楽プロジェクト。名前についている「808」では通称「ヤオヤ」と呼ばれる日本の音楽メーカー、ローランドが作ったリズムマシーンの名器、TR-808のこと。マグレブと呼ばれるアフリカ北西部の音楽を、このTR-808を用いてまとめ上げた作品が特徴的なミュージシャン、だそうです。

アルバムは、TR-808から取ったミュージシャン名さながらのリズムマシーンを前面に押し出した強烈なリズムが大きなインパクト。1曲目「Degdega」から強いリズムマシーンのビートにアラブ的なうねるボーカルがとにかく強烈なナンバーからスタートします。ミニマルなビートにうねるボーカルで軽くトリップ感が味わえる楽曲からいきなりスタートしたかと思えば、続く「Sidi kommi」もヘヴィーなリズムマシーンのビートにトライバルなパーカッションとハイテンポなコール&レスポンスがのり、とにかく強烈なトリップ感の味わえるナンバーになっています。

その後も基本的にTR-808の奏でる強烈なビートをリズムとしながら、トライバルなパーカッションにコール&レスポンスを中心とするボーカルを取り入れたナンバーが続きます。タイプ的にはアフリカ的なトライバルなリズムやコール&レスポンスを入れつつ、アラブ風の哀愁感あふれるこぶしを入れたボーカルも取り入れた雑多な雰囲気を強く感じます。楽器もゲンブリと呼ばれる北アフリカの弦楽器やマグレブ地方のフルートであるガスバ、ゾクラと呼ばれるマグレブ地方の管楽器など、雑多な楽器を取り入れています。

マグレブの音楽を詳しく知っている訳ではありませんが、様々なタイプのあるマグレブの音楽を一絡げにして取り込んでいるのも大きな特徴のようで、確かにこのアルバムにも「Alech taadini」のようなアラビアンな笛が鳴り響く、アラブテイストの強いナンバーだったり、「Layli」のような手拍子とコール&レスポンスでポリリズム的なアフリカテイストの強いナンバーがあったりと楽曲にはバラエティー豊かなものを感じました。

様々な音楽を十把一絡げにして取り込んだ、ある種の猥雑さを感じる音楽性が大きな魅力に感じた本作。先日紹介したAdekunle Goldは西洋音楽的な要素をアフリカの音楽の中に上手く融合させていたのですが、今回のアルバムは、TR-808という西洋のリズムマシーンを自分たちのマグレブの音楽の中に無理やり押し込んだような印象(笑)(もっとも、TR-808は日本製なので、「西洋」というよりも「東洋」のものなのかもしれませんが)。ただ、リズムマシーンの取り込み方といい、様々なマグレブの音楽を融合させたやり方といい、この無理矢理さが大きな魅力に感じました。終始強烈なビートとトリップ感があるサウンドが楽しめた傑作アルバムでした。

評価:★★★★★

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2019年2月14日 (木)

こちらも新譜ラッシュ

今週のHot Albums

http://www.billboard-japan.com/chart_insight/

Hot100では新譜が目立った今週のチャートでしたが、アルバムチャートでも新譜が目立ちました。

そんな中、今週1位を獲得したのはavexのダンスグループAAAのメンバー、Nissy(西島隆弘)のソロベストアルバム「Nissy Entertainment 5th Anniversary BEST」が獲得しました。タイトル通り、ソロデビュー5周年のベストアルバム。たった5年、アルバム2枚しかリリースしていないのに2枚組のベストって何じゃそりゃって感じですが・・・。CD販売数1位、ダウンロード数9位、PCによるCD読取数13位ながらも総合で1位獲得となりました。オリコン週間アルバムランキングでも初動6万枚で1位獲得しています。

2位初登場は福山雅治「DOUBLE ENCORE」。MCを含めて収録したライブアルバム。4枚組というボリュームで、通常盤でも定価4,900円ということもあり2位に留まりました。CD販売数2位、ダウンロード数13位、PCによるCD読取数12位。オリコンでは初動4万9千枚で2位初登場。直近作はベストアルバム「福の音」で同作の初動17万8千枚(1位)からはさすがに大きくダウンしています。

3位も初登場。YUKI「forme」がランクイン。CD販売数は3位、PCによるCD読取数は10位だったもののダウンロード数で1位を獲得。比較的幅広い層からの支持をうかがわせます。オリコンでは初動売上2万2千枚で5位初登場。残念ながらオリジナルアルバムとしては2003年にリリースした「commune」以来のベスト3落ちとなってしまいました。直近作はシングルコレクション「すてきな15才」の1万6千枚(3位)で、そちらよりはアップ。ただ、オリジナルアルバムとしての前作「まばたき」の3万枚(1位)からはダウンしています。

続いて4位以下の初登場盤です。まず4位にはEve「おとぎ」がランクイン。ボーカロイドソフトを使い動画サイトに楽曲を発表する、いわゆるボカロPとして注目を集めているシンガー。今回は各種メディアでも大きなプッシュを受けています。ただ、「第2の米津玄師」的に売り出そうとする意図は見え隠れするようなないような・・・。CD販売数5位、ダウンロード数7位、PCによるCD読取数23位を獲得。オリコンでは初動売上2万枚で6位初登場。前作「文化」の7千枚(14位)から大きくアップしています。

5位には女性ボーカル+男性3人のロックバンド、ポルカドットスティングレイ「有頂天」がランクイン。CD販売数6位、PCによるCD読取数21位に対してダウンロード数3位を記録し、幅広い層の支持がうかがえます。オリコンでは初動売上1万5千枚で5位初登場。前作「一大事」の1万2千枚(4位)からアップしています。

6位初登場はスターダストプロモーション所属の男性アイドルグループM!LK「Time Capsule」。CD販売数4位、そのほかは圏外という結果に。オリコンでは初動売上2万2千枚で4位初登場。直近作は変名ユニットBLACK M!LKとしてリリースした「THE LOCK」で、同作の初動1万枚(6位)からは大幅アップ。M!LK名義の前作「王様の牛乳」の2万6千枚(3位)からはダウンとなっています。

8位にはNulbarich「Black Envelope」がランクイン。Suchmosと比較されることの多い、ロックにジャズやソウルの要素を取り込んだサウンドを奏でるバンド。CD販売数7位に対してダウンロード数6位と幅広い支持を伺えます。PCによるCD読取数は37位。オリコンでは初動8千枚で9位初登場。前作「H.O.T」の9千枚(7位)から微減となりました。

初登場ラストは10位にアメリカの女性シンガーソングライター、Ariana Grande「thank u,next」がランクイン。CD販売数は12位に留まりましたが、ダウンロード数は2位を獲得し見事ベスト10入りです。アリアナ・グランデといえば、最近、このアルバムに収録されている「7 rings」を「七輪」と日本語にしてタトゥーを掘ったところ突っ込みが殺到。もともと日本語を勉強するなど親日家だった彼女でしたが、この騒動のために日本語の勉強をやめてしまったという悲しい事態になってしまいました。周りに誰か「それは違うよ」という人がいなかったのか疑問にも思うのですが、異文化理解の難しさも感じます。オリコンでは初動5千枚で12位初登場。前作「Sweetener」の1万1千枚(5位)から大きくダウンしてしまっています。

新譜ラッシュとなった影響でロングヒット組は苦戦。まず先週2位だった星野源「POP VIRUS」は一気に7位にダウン。CD販売数は14位まで下がってしまいました。ただ、ダウンロード数は5位、さらにPCによるCD読取数は1位をキープしており、まだまだ巻き返しが期待されます。また、QUEEN「ボヘミアン・ラプソディ(オリジナル・サウンドトラック)」も4位から9位にダウン。こちらもCD販売数は9位、PCによるCD読取数は11位までダウンしたものの、ダウンロード数は4位を記録しており、まだまだロングヒットも期待できそうです。

今週のHot Albumsは以上。チャート評はまた来週の水曜日に!

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2019年2月13日 (水)

新曲も増えてきました。

今週のHot 100

http://www.billboard-japan.com/chart_insight/

年初からお正月モードで新譜が少なめのチャートが続いていましたが、2月も中旬に入り、徐々に新譜が増えてきました。

まず1位を獲得したのは先週に続きジャニーズ系。Kis-My-Ft2「君を大好きだ」が先週の85位からCDリリースに合わせて大幅ランクアップで1位獲得となりました。メンバーの北山宏光主演映画「トラさん~僕が猫になったワケ~」の主題歌となるロックバラード。CD販売数、PCによるCD読取数、Twitterつぶやき数で1位獲得。ラジオオンエア数も25位にランクインし、総合順位でも1位に輝いています。オリコンでは週刊シングルランキングで初動29万7千枚を売り上げ1位に。前作「君、僕。」の19万4千枚(1位)からアップしています。

2位にはIZ*ONE「好きと言わせたい」が先週の76位からCD販売にあわせてランクアップしこの位置に。日韓合同の女性アイドルグループで、日本からはAKBグループのメンバーも参加。本作がシングルとしてはデビュー作となるのですが、秋元康プロデュース&作詞の曲となっており、K-POPというよりも曲調的には完全にAKBの延長線上のような仕上がりとなっています。CD販売数2位、ダウンロード数11位、ストリーミング数25位。ほか、PCによるCD読取数7位、Twitterつぶやき数では2位と上位に食い込みましたが、ラジオオンエア数26位、You Tube再生回数57位と奮わず。オリコンでは初動売上22万1千枚で2位初登場。

3位はSaint Snow「Believe again」が初登場でランクイン。アニメキャラによるアイドルプロジェクト、ラブライブ!から映画「ラブライブ!サンシャイン!!The School Idol Movie Over the Rainbow」の挿入歌。ロック調のアイドルポップ。CD販売数3位、ダウンロード数6位、PCによるCD読取数2位、Twitterつぶやき数43位を獲得。オリコンでも初動売上7万枚で3位初登場。同映画からの挿入歌しては先週ランクインした松浦果南(諏訪ななか),黒澤ダイヤ(小宮有紗),小原鞠莉(鈴木愛奈)「逃走迷走メビウスループ」の8万1千枚(2位)からダウンしています。

続いては4位以下の初登場曲です。まず6位にロックバンドONE OK ROCK「Wasted Nights」が先週の14位からランクアップしベスト10初登場。映画「キングダム」主題歌のスケール感ミディアムテンポのロックチューン。2月13日にリリースされたアルバム「Eye of the Storm」からの先行配信ナンバーとなります。ダウンロード数7位、ストリーミング数4位、ラジオオンエア数で3位を記録。You Tube再生回数でも41位にランクインしています。

7位には伊集院北斗(神原大地),都築圭(土岐隼一),冬美旬(永塚拓馬),アスラン=ベルゼビュートII世(古川慎) 「Hallo,Freunde!」が初登場でランクイン。女性向けアイドル育成ゲーム「アイドルマスターSideM」からのキャラクターソング。CD販売数4位、PCによるCD読取数19位で、ほかは圏外と固定ファン以外に波及していないヒット形態に。オリコンでは同作を収録した「THE IDOLM@STER Side M WORLD TRE@SURE 06(Hello,Freunde!)」が初動売上3万3千枚で4位初登場。同シリーズの前作「THE IDOLM@STER SideM WORLD TRE@SURE 05(ALOHA! HAPPY CREATOR!)」の5千枚(15位)からアップしています。

初登場曲最後は10位にHYDE feat.YOSHIKI「ZIPANG」がランクイン。昨年、YOSHIKIの曲にHYDEが参加する形でシングル「Red Swan」がリリースされましたが、今回はHYDEのソロ曲にYOSHIKIがあくまでもピアニストとして参加した楽曲となっています。CD販売数8位、ダウンロード数23位、PCによるCD読取数20位、Twitterつぶやき数4位を記録。オリコンでは初動1万6千枚で7位初登場。前作「FAKE DIVING」(7位)から横バイとなっています。

初登場曲は以上。一方でロングヒット曲もまだまだがんばっています。米津玄師「Lemon」はベスト3からランクダウンしたものの今週も4位にランクイン。ダウンロード数及びカラオケ歌唱数は1位を、PCによるCD読取数は3位をキープしているほか、今週You Tube再生回数も1位にアップ。まだまだロングヒットは続きそう。ただ一方「Flamingo」は今週ついに11位にランクダウン。11月12日付チャートから続いたベスト10ヒットはとりあえずは14週連続で止まりました。

あいみょん「マリーゴールド」が4位から5位にダウン。一方「今夜このまま」は9位から8位にアップしています。こちらは相変わらずストリーミング数で「マリーゴールド」が1位、「今夜このまま」が2位のワンツーフィニッシュが続いています。

そしてDA PUMP「U.S.A.」はついに8位から9位にダウン。じわじわと順位を下げています。さすがにブームが終わった感は否めないのですが、You Tube再生回数は2位を維持しており、まだまだ中毒が抜けきれない方が少なくない模様。私も久しぶりにあのPV、見てみようかな。

そんな訳で今週のHot100は以上。明日はHot Albums。

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2019年2月12日 (火)

西洋的な要素とアフリカ的な要素が絶妙にバランス

Title:About 30
Musician:Adekunle Gold

毎年、各種メディアが選んだ前年度のベストアルバムのうち聴きのがしていたものを後追いで聴いているのですが、今年も1月以降、「2018年ベストアルバム」に選ばれた作品を後追いで聴いています。今日紹介するのは「Music Magazine」誌で2018年ワールドミュージック部門で1位に選ばれたアルバム。Adekunle Gold(アデクンレ・ゴールド)というのはナイジェリアの31歳のシンガーソングライター。これが2枚目のアルバムとなるのですが、ナイジェリアでは絶大な支持を得ているミュージシャンだそうです。

楽曲のタイプとしては「ジュジュやハイライフを取り入れた音楽」の紹介されています。ハイライフは以前もここで紹介したことがあるのですが、ヨーロッパのギターや管楽器がアフリカにもたらされ、西洋やラテン音楽などの影響を受けつつ、ガーナで発展した音楽のジャンル。またジュジュはそのハイライフなどの音楽がヨルバ(ナイジェリアを含む西アフリカの地域)においてパーカッションなどを取り入れて発達した音楽のジャンルだそうです。

もともとハイライフという音楽はアフリカでも上流階級を中心に発展した音楽だそうで、それだけにかなり垢抜けているという印象を受けるのですが、このアルバムも1曲目の「Ire」は切ないメロディーラインに郷愁感を感じるナンバーなのですが、パーカッションのリズムにトライバルな要素を感じるものの爽快さを感じるサウンドには垢抜けたものを感じます。続く「Down With You」もDyoという女性シンガーとのデゥオなのですが、彼女の歌うメロディーはメロウさも感じられる都会的なナンバーに仕上がっています。

もっとも一方では続く「Mr.Foolish」ではシェウン・クティをゲストに招き、ホーンセッションを取り入れたアフロビート風のナンバーを披露。「Pablo Alakori」もパーカッションとコール&レスポンスでトライバルな要素の強いナンバーに仕上げているなど、都会的な洗練さと、アフリカ的なトライバルなリズム感を上手く同居させたアルバムに仕上げています。

さらに後半もアコースティックギターで聴かせる「Fame」はフォーキーなナンバーで、イギリスあたりのSSWの曲と言われても普通に信じてしまいそうなメロディアスなナンバーを聴かせたり、「There is a God」などもスケール感を感じさせつつ、アコギのアルペジオをバックにしんみりとメロディーを聴かせるナンバーを聴かせてくれるなど、アフリカ的というよりも西洋的な要素を強く感じるナンバーも並びます。

かと思えば「Mama」などはパーカッションで軽快なリズムを聴かせてくれますし、「Somebody」もメロウなメロディーラインでしんみり聴かせつつもバックではパーカッションのリズムがしっかりと鳴っていたりと、ある種「西洋的」に感じる部分とアフリカ的な感じる部分のバランスが絶妙に感じられました。

確かにこれはナイジェリアで人気となるのも納得ですし、また年間1位という結果にも納得。また、そのメロディーラインは純粋に歌モノとしてもワールドミュージックを普段聴かないような層まで十分アピールできるだけのメロディーセンスを持っており、ポップス好きまで広い層が楽しめそうな傑作アルバムだったと思います。またこれが2枚目のアルバムという若手ミュージシャンだけにこれからの活躍も楽しみです。

評価:★★★★★


ほかに聴いたアルバム

Carpenters With The Royal Philharmonic Orchestra/Carpenters

カーペンターズの17年ぶりの新作として話題となったアルバム。カーペンターズの代表曲を、リチャード・カーペンター指揮の下にロイヤル・フィルハーモニー管弦楽団の演奏によるリアレンジが加えられたアルバム。ロイヤル・フィルハーモニーによるリアレンジアルバムは、アレサ・フランクリンやビーチボーイズなどのアルバムもリリースされており、「恒例の企画」なのですが、カーペンターズという知名度、日本での人気やリチャード自ら指揮を執っているという話題性からも日本でも大きな話題となっています。

ただもともとストリングスのアレンジも少なくなかったカーペンターズの曲だけにオーケストラアレンジでもさほどイメージは変わっていません。というよりもオーケストラによるアレンジは必要最小限に抑えられており、特に日本のミュージシャンがオーケストラアレンジを加える時によくなりがちな、仰々しく大味なアレンジになることはなく、オーケストラのおいしい部分をしっかりと生かしたアレンジになっています。その分、「意外性」みたいなものはほとんどありませんが、カーペンターズのベスト盤的にも楽しめるアルバムに仕上がっており、ファンとしては安心して聴くことが出来るアルバムだったと思います。

評価:★★★★

Invasion of Privacy/CARDI B

こちらも2018年ベストアルバムの後追いで聴いた1枚。音楽ニュースサイトamassで主要メディアの年間ベストアルバムを集計していたのですが、この集計で5位にランクイン。以前から気になっていたアルバムだったのですが、遅ればせながら聴いてみました。

まずはこのジャケット写真で大きなインパクトのあるアルバム。このアルバムはアメリカビルボードチャートでも1位を獲得するなど高い人気を確保しています。サウンド的には今風のトラップの要素を取り入れたリズミカルなナンバー。ただ、ジャケット写真からも感じられるようなコミカルな要素も感じられる点がユニーク。またコミカルなポップスさを保ちつつも同時に物悲しさも感じる点が印象的。確かに非常に耳に残るインパクトある内容になっていました。これがアルバムとしてはデビュー作。いきなり大ブレイクとなりましたが、これからの活躍にも要注目です。

評価:★★★★★

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2019年2月11日 (月)

原点回帰のロックアルバム

Title:バタフライ・アフェクツ
Musician:ソウル・フラワー・ユニオン

ソウル・フラワー・ユニオンというとご存じの通り、もともとは中川敬率いるニューエスト・モデルと、伊丹英子らが参加していたメスカリン・ドライブが合体して誕生したバンド。このうちニューエスト・モデルといえば当初はパンクロックバンドとしてスタートしたものの、その後は骨太なロックサウンドを奏でるバンドへと進化。さらには末期からはトラッドや民謡などを取り入れて、ソウル・フラワー・ユニオンへとつながっていきます。そしてソウル・フラワー・ユニオンといえば、トラッドや民謡、さらにチンドンなどの大衆音楽とロックを見事に融合させた独特のサウンドを聴かせてくれていました。

そんな中リリースされた約4年ぶりのアルバムは、まず驚くべきことはニューエスト末期から彼らのサウンドの中心となっていたトラッドや民謡、チンドンといった要素を完全に排除。ニューエスト・モデルに回帰したような、ソウルやサイケの要素を取り込んだ骨太のロックサウンドを聴かせるアルバムに仕上げてきました。

サウンド的にもシンセの音などを取り入れているものの、基本的にはシンプルなバンドサウンドがメイン。そういう意味ではソウル・フラワー・ソウル史上、もっともシンプルかつロックらしいロックアルバムと言えるかもしれません。いままで大衆に根付いた音楽へのあくなき追及を続けていただけに、ここに来て、彼らの原点ともいえるロックに立ち返ったというのはちょっと意外な感じもしました。

もっともそうは言っても最近のソウル・フラワーらしさがなくなってしまった・・・という訳ではありません。「この地上を愛で埋めろ」の祝祭色あるサウンドはまさにソウルフラワーらしさを感じますし、「愛の遊撃戦」もリズムから民謡っぽさを感じます。決してソウルフラワーになってからの大衆音楽路線を投げ捨てた訳ではなく、しっかり根底にはソウルフラワーが培ってきた音楽が流れています。ソウルフラワーとしての活動を経たからこそ作ることが出来たロックアルバムであることは間違いないかと思います。

さてそんな本作の歌詞、Twitterなどではポリティカルな発言が目立つ中川敬ですが、歌詞ではそんなに強く政治性を出してきていないのがユニークなところ。ただ、とはいえその歌詞からは中川敬の強烈なメッセージを感じることが出来ます。「この地上を愛で埋めろ」ではデマや差別に対するアンチを読み取れますし、「路地の鬼火」にも辺野古を彷彿とさせる描写も出てきます。

また「エサに釣られるな」もタイトル通り、権力者からのエサに釣られるなと歌う強いメッセージ性ある曲なのですが、「フェイクに釣られるな それはただの水」なんて表現は、ちょっと前に流行った水素水を皮肉った感じが。このように堅苦しいメッセージというよりは、どこかユーモラスを感じたり、また風景描写に郷愁感を感じたりするスタイルはいままでのソウルフラワーと何ら変わりませんでした。

そんな訳で、いままでのソウルフラワーユニオンとは少々異なった原点回帰の作風に、ちょっと戸惑った部分もあるのですが、ただ骨太のロックサウンドは文句なく魅力的。またきちんといままでのソウルフラワー路線も反映されており、単純なニューエストへの回帰ではなく、まさに今の彼らだからこそつくれたアルバムと言えるでしょう。またここに来てあらたな一歩を踏み出した彼ら。次のアルバムはどんな方向性になるのでしょうか。今から楽しみです。

評価:★★★★★

ソウル・フラワー・ユニオン 過去の作品
満月の夕~90's シングルズ
カンテ・ディアスポラ
アーリー・ソウル・フラワー・シングルズ(ニューエスト・モデル&メスカリン・ドライブ)
エグザイル・オン・メイン・ビーチ
キャンプ・バンゲア
キセキの渚
踊れ!踊らされる前に
アンダーグラウンド・レイルロード


ほかに聴いたアルバム

Catch The One/Awesome City Club

3月にリリースされたEP「Torso」に続くフルアルバム。「Torso」収録曲も2曲収録されています。軽快なエレクトロポップチューンが並び、ダンサナブルな楽しい曲がメイン。「Torso」同様にディスコチューンの影響が強いアルバムで、なによりも男性ボーカルメインの中に、上手く女性ボーカルをからませてくるバランスの上手さが光りました。メロディーのインパクトなども十分な一方、「Torso」と同様、ちょっとバリエーションや音楽的な目新しさという意味では物足りなさも。ただ純粋なポップアルバムとしては十分に楽しめた1枚でした。

評価:★★★★

Awesome City Club 過去の作品
Awesome City Club BEST
Torso

ネリネ/KANA-BOON

5月にリリースされたミニアルバムに続くKANA-BOONの新作は今回も「冬」をテーマとした5曲入りのミニアルバム。どの曲もメロディアスなギターロックで構成されており、シンプルな曲調になっています。恋人の日常を描いた暖かい雰囲気のラブソング「湯気」など冬らしさも感じつつ、ただ全体的にバンドとしての特徴はちょっと薄めか。悪くはなく、楽曲にそれなりにインパクトはあるのですが、よくありがちなギターロックという印象が否めませんでした。

評価:★★★★

KANA-BOON 過去の作品
DOPPEL
TIME
Origin
NAMiDA
KBB vol.1
アスター
KBB vol.2

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2019年2月10日 (日)

予想以上にエンタテイメント性あるステージ

Superorganism JAPAN TOUR 2019

会場 名古屋CLUB QUATTRO 日時 2019年1月23日(水) 19:00~

Superorganism

おそらく、今、最も注目を集めている新人バンドの一組、Superorganism。イギリスBBCの「Sound Of 2018」にノミネートされ、さらにデビューアルバムはアークティック・モンキーズなどでおなじみのDominoからリリース。徐々にその人気を伸ばしています。さらにこのバンド、イギリス、オーストラリア、ニュージーランドという多国籍のメンバーが参加していることでも話題となっており、特にボーカルOrono Noguchiは埼玉県出身の日本人ということでも、日本では大きな話題に。そんな彼女たちの来日ライブが行われ、2019年初ライブとしてさっそく足を運んできました。

そんな高い注目度を裏付けるようにライブはソールドアウト。会場内は超満員となっており、注目のバンドを一目見ようと数多くの音楽ファンが駆けつけていました。そんな中、比較的見やすい、ステージ正面のいい場所を確保。ライブがはじまるのを今か今かと待ちわびます。

ライブは19時を5分程度過ぎたところでスタート。最初はステージ後方全面をスクリーンとして突然、映像が流れ出します。そんな中で、メンバー全員銀色の帽子とマントをかぶる奇妙な格好で登場しました。バンドのメンバーは8人という大所帯。ステージ下手にバックコーラス兼ダンサーの3人が並び、ステージの後ろにはギターとシンセ、上手にドラムというちょっと不思議な感じのステージ配置となっていました。

そして映像はそのままバンドの名前を冠したナンバー「SPRORGNSM」からスタート。もともと様々な音がサンプリングされた自由度の高い音楽性がユニークなバンドなのですが、ただライブでは思ったよりもバンドの生音が前に出ていて、ロック的かつダイナミックな演奏に。予想していたよりも肉感の強いステージを聴かせてくれました。また、バックコーラス兼ダンサーの3人も妙にユニークなダンスを披露。バックに流れる映像を含めて、思った以上にステージを楽しめる「エンタテイメント性」のあるパフォーマンスを披露してくれました。

そのまま「Night Time」へと続くと簡単なMCに。ここでなぜかボーカルのオロノのMCはすべて英語で(笑)。ただ、観客からの呼びかけに対しては「うるせー」と一言日本語で返していました(笑)。

そんなオロノの英語での曲紹介に続いて「It's All Good」へ。さらに東京の電車の発車アナウンスがサンプリングされた「Nai's March」と続き「Nobody Cares」へと続きます。基本的にローファイ気味なダウナーな楽曲がメインなので、会場は比較的まったりとした雰囲気に。ただ「Nobody Cares」も原曲以上に演奏はヘヴィーなアレンジになっており、しっかりと聴かせるステージとなっていました。

その後の「Reflections on the Screen」の後はMCに。今度はちゃんと日本語でのMCとなりました。ちなみにオロノはかなりのふてぶてしい感じのぶっきらぼうなキャラクターでした。まあ、予想通りなんですけど(笑)。

さらに「The Prawn Song」に続く「Relax」では会場全体で曲にあわせて一緒にしゃがんで、そしてジャンプするという指示が。正直、そんなに「アゲアゲ」な曲ではないのですが、この日一番盛り上がっていました。「こういうことやらせると日本人は上手い」というのはオロノ談(笑)。

そして早くも本編ラスト「Everybody Wants to Be Famous」で締めくくり。もちろんその後はアンコールが。比較的すぐにメンバーが再びあらわれてアンコールは「Something for Your M.I.N.D」で締めくくり。ここで2匹のしゃちの大きなビニール風船が登場。この2匹のしゃちが観客の上を舞って(個人的には去年見たレキシのライブを思い出したのですが(^^;;)、会場は盛り上がりつつライブは幕を閉じました。

で、この日のステージ、アンコール含めてわずか45分。お金払ってみたワンマンライブではおそらくいままでで一番短かったかも。もっとも、30分強のアルバム1枚しかリリースしていないバンドなので、これは予想の範囲内。アルバム収録曲は全部演ってくれたし、十分満足して会場を後にすることができました。

はじめてみた彼らのステージ。まずは予想していたよりも楽しめたステージでした。上にも書いた通り、意外と生音が前に押し出されたロッキンでダイナミックなステージになっており、音的にも楽しめたライブに。また、演奏に合わせてステージバックに流れる映像や、バックコーラス兼ダンサー3人のダンスも楽しく、予想以上にエンタテイメント性あるパフォーマンスを見せてくれました。

それだけに1時間に満たないステージとはいえ、満足度の十分高いライブでした。あまり盛り上がらなそうなダウナーな曲がメインながらも、なにげにみんなでジャンプしたり、しゃちの風船が舞ったりと、会場も十分に盛り上がっていました。

これからの活躍も非常に楽しみなバンド。彼らをクワトロみたいに小さな会場で見れたのは非常に貴重な経験だった・・・と思える日が来るといいなぁ・・・。

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2019年2月 9日 (土)

いきなり2作品連続でリリース

ここ最近、サニーデイ・サービスとして「DANCE TO YOU」「Popcorn Ballads」「the CITY」と立て続けに傑作アルバムをリリースし続ける曽我部恵一。さらに「the CITY」のリリースからわずか9ヶ月というスパンで、今度は曽我部恵一名義としてのアルバムをリリースしてきました。

Title:ヘブン
Musician:曽我部恵一

まず最初にリリースされたのが10曲入りとなるアルバムなのですが、これが全編ラップによるHIP HOPの作品となっているから驚きです。もともと「the CITY」などでもHIP HOP的な要素は入れており、彼のHIP HOPに対する興味は強くうかがわせたのですが、その結果、ここまでHIP HOPに振り切ったアルバムを1枚作ってくるというのは、かなり意外でした。

そんな彼のHIP HOPアルバムは、まさにHIP HOPの「外側」にいるミュージシャンが手探りの状態で作り上げた感のある作品。基本的にループするトラックで作り上げられたサウンドに、丁寧にライムしていくそのラップのスタイルは、まさに「HIP HOPはこんな感じでいいんでしょうか」と模索する曽我部恵一の姿が浮かんできます。サウンド的には決して「今風」という感じではありませんが、ただほほえましさすら感じました。

もっともサウンドはトライバルな雰囲気の「small town summer wind」からスタートし、不気味に鳴り響く鐘が印象的な「the light~夜明け前の明るさについて」、メロウなサウンドが心地よい「mixed night」など、しっかりと聴かせるナンバーが続いていきます。歌詞の世界観もサニーデイからの延長線上のような都会の男女をちょっとウェットで、でもクールな視点から描いた歌詞が印象的。一方でラストの「花の世紀」ではネット社会となり有名人が万人に監視されるようになった今の時代を皮肉めいて描いており、ちょっと不気味さも感じる歌詞も印象に残りました。

HIP HOPの「素人」らしい拙さも感じつつ、ただ一方でその「素人」感がひとつの味となっているアルバム。なによりも彼のその挑戦心あふれる心意気が強い印象を残した作品になっていました。HIP HOPは・・・という方でも曽我部恵一、サニーデイ・サービスが好きなら是非ともチェックしてほしいアルバムです。

評価:★★★★★

で、このアルバムリリースからわずか2週間。早くも次のアルバムをリリースしてきたから驚きです。

Title:There is no place like Tokyo today!
Musician:曽我部恵一

カーティス・メイフィールドの名盤「There's No Place Like America Today」へのオマージュともなるこのアルバムタイトル。ただし、アメリカへの批判を込めたカーティスの作品とは異なり、こちらは決して「東京」への批判とかではなく、東京の風景を彼なりの視点で描いた作品となっています。

全体的にはメロウでちょっと気だるさも感じる歌モノが並んだアルバム。しんみりメロウでダウナーなタイトルチューン「There is no place like Tokyo today!」はいきなり「スマホの画面」という今時の言葉からスタートし、夜の東京を漂っているような印象を受けるような作品に。続く「暴動」は軽快なエレクトロビートの作品。こちらも1曲目と同じく、「夜の東京」という印象を受ける、どこかダウナーな雰囲気の作品になっています。さらに続く「チャイ」はタイトル通り、エスニックな雰囲気が印象的なナンバー。こちらも多国籍の人が集う東京という街を描いた、と言えるかもしれません。

ただ一方本作の大きな特徴はHIP HOPの要素を多く取り込んでいる点。前のアルバムと同じタイトルとなる「ヘブン」ではアンビエントHIP HOPのような様相を持ったナンバーになっていますし、「bitter sweets for midnight life」もループするトラックがHIP HOP的な印象を強く受けます。

歌モノをベースとしながらHIP HOP的な要素を強く取り入れた本作は前作の「ヘブン」から引き続き、彼のHIP HOPへの興味を強く感じさせるアルバムになっていました。また、都会的とも言えるトラックに、都会の風景を気だるくウェットに描写した世界観は曽我部恵一作品に共通。もともと都会の描写が多かった彼ですが、本作ではそんな彼の世界観によりスポットがあてられた作品となりました。もちろん、こちらも傑作アルバム。あらためて彼の音楽への強い意欲を感じた作品でした。

評価:★★★★★

ちなみにこの2作品、どちらも「HIP HOPの要素が強い」という点で共通しています。じゃあ、なんで、ここ最近サニーデイ名義でのリリースが続いていたのに、曽我部恵一名義なんだろう・・・と考えると、まず昨年5月にメンバーの丸山晴茂が逝去した影響も大きいのでしょうね。残った2人のみで活動は続けているようですが、まだ「サニーデイ」として作品を作るインセンティブが薄いのかもしれません。

また、前作「the CITY」で挑戦的な音楽を取り入れた結果、賛否がわかれた、という点も大きいのかも。今、彼が興味を持っているHIP HOPという音楽はサニーデイ・サービスというバンドに求められている音楽から大きく異なってしまう点も、今回、あえてサニーデイではなく曽我部恵一名義とした大きな要素かもしれません。

そう考えると、今の彼の状況からすると、今後もしばらく「曽我部恵一」名義の作品が続くかも。もっとも、この2作が立て続けにリリースされたことから、今の彼には強い創作意欲がありそう・・・2019年も早くも次の曽我部恵一作品が聴けるかも?楽しみです。

曽我部恵一 過去の作品
キラキラ!(曽我部恵一BAND)
ハピネス!(曽我部恵一BAND)
ソカバンのみんなのロック!(曽我部恵一BAND)
Sings
けいちゃん
LIVE LOVE
トーキョー・コーリング(曽我部恵一BAND)
曽我部恵一 BEST 2001-2013
My Friend Keiichi


ほかに聴いたアルバム

Wayfarer/畠山美由紀

途中、カバーアルバムのリリースはあったもののオリジナルアルバムとしてはなんと約5年6ヶ月ぶりとなるニューアルバム。プロデューサーに冨田ラボを迎えた本作は、楽曲提供もいきものがかりの水野良樹にceroの髙城晶平、KIRINJI堀込高樹と豪華なメンバーがズラリと並んでいます。そんな楽曲のメロディーと彼女の歌声は暖かさを感じるポップソングが並んでいるのですが・・・ただ全体的にエレクトロなアレンジが多かった本作、このアレンジと彼女の歌声やメロディーがいまひとつミスマッチだったように感じます。若干オーバープロデュース気味でしたし、正直、彼女の歌声を生かすにはもうちょっとシンプルなアレンジの方がよかったのでは?冨田ラボとの相性の悪さを感じてしまった、少々惜しいアルバムになっていました。

評価:★★★★

畠山美由紀 過去の作品
わたしのうた(畠山美由紀withASA-CHANG&ブルーハッツ)
わが美しき故郷よ
rain falls

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2019年2月 8日 (金)

バンドとしての成長も感じられる新作

Title:Tank-top Festival in JAPAN
Musician;ヤバイTシャツ屋さん

おそらく今、最も注目を集めているロックバンドの一組であるヤバイTシャツ屋さん。2018年は1月にアルバムをリリースしましたが、そこからわずか11ヶ月。早くもニューアルバムが発売されました。1年の間に2枚ものアルバムものアルバムをリリースするあたり、彼らの勢いを感じさせます。

そんな彼らの新作ですが、基本的なスタイルは前作までと同様、今時の若者らしい醒めた視点を感じるユーモラスな歌詞をポップなメロコアやポップパンクにのせて勢いよく歌い上げるスタイル。京都出身のメンバーがいる彼ららしい「どすえ~おこしやす京都~」のような曲やら、はたまたローラーシューズを履いた子どもとぶつかった、ということだけをネタにした「かかとローラー」、タイトル通り、雑に動物を紹介するだけの「ざつにどうぶつしょうかい」など、脱力感満載の、下らない(決して悪い意味ではなく)ネタを歌詞に織り込むユニークな曲が展開していきます。さらに「本当は6曲目に収録する予定だった曲が、使用している企業名の許可が下りずボツになった」という本当か嘘かわからないネタをそのままフォークソング調のメロにのせた「大人の事情」なんて曲もあったりします。これ、本当だったらライブで本来、6曲目に収録する予定だった曲を聴けたりするのでしょうか(笑)。

ただ今回のアルバムは以前からの作品と比べると微妙にその作風に変化が見受けられました。まず1点目はいままでの楽曲に織り込まれていたハードコアやメタルの要素が薄くなり、よりポップス路線にシフトした点。「リセットマラソン」のようなデス声を聴かせるヘヴィーな曲もあるのですが、そのような曲はグッと減ってしまいました。個人的にはこのハードコアな要素をポップなメロに織り込む点も彼らの魅力だと思っていたので、ポップ路線へのシフトはちょっと残念でもあるのですが・・・。もっとも一方ではメロコア、ポップパンクに加え、スカ、フォーク、ギターロックなど曲の幅は以前より広がった印象も。そういう意味ではポップ路線へのシフトと同時に彼らなりの成長も感じられました。

もう1点は歌詞。いままでの作品は良くも悪くも学生ノリの内輪ノリ的な曲が多かったのですが、今回のアルバムに関しては少なくとも内輪ノリ的な曲はなくなりました。もちろん、基本的に良くも悪くも軽いノリというスタイルは変わらないのですが、ネタ的にはもうちょっと普遍性のある、幅広いリスナー層が楽しめるような題材に変わったように思います。これに関しては個人的に以前の内輪ネタ的な歌詞は好きではなかっただけに、この方向性は大歓迎です。

そんな訳で、基本的にいつものスタイルを維持しつつ、バンドとしての成長も感じられたアルバム。前作同様、また彼らのポップな楽曲を存分に楽しむことが出来ました。まだまだバンドとしての勢いの止まらない彼ら。2019年も彼らの活動から目を離せなさそうです。

評価:★★★★★

ヤバイTシャツ屋さん 過去の作品
We love Tank-top
Galaxy of the Tank-top


ほかに聴いたアルバム

SOIL/04 Limited Sazabys

本作ではオリコンチャートで初のベスト3入りを記録するなど、いまだに人気上昇中の4人組ロックバンドによる約2年ぶりの新作。ハイトーンボイスのボーカルに疾走感あるポップなメロのギターロックが心地よい作品で、以前に比べるとバンドの勢いもまし、キュートとも言えるメロディーラインもインパクトを増しています。これで彼らのアルバムを聴くのは3作目なのですが、徐々に勢いを増している感もあり、次回作が楽しみになってくる新作でした。

評価:★★★★

04 Limited Sazabys 過去の作品
CAVU
eureka

SUKIMASWITCH TOUR 2018"ALGOrhythm"/スキマスイッチ

ツアー毎にライブアルバムをリリースしているスキマスイッチの最新ライブアルバム。昨年、ニューアルバム「新空間アルゴリズム」を引っ提げた行った全国ツアー「SUKIMASWITCH TOUR 2018"ALGOrhythm"」の模様を収録したライブアルバム。ライブの雰囲気をそのまま収録しており、ファンならそれなりに楽しめるライブアルバムにはなっています。さらに今回、Disc2に収録されている「ゴールデンタイムラバー」「君の話」「スモーキンレイニーブルー」は原曲以上にファンキーなアレンジに仕上げており、ライブならではのアレンジの曲を聴ける楽しさもありました。

評価:★★★★

スキマスイッチ 過去の作品
ARENA TOUR'07 "W-ARENA"
ナユタとフカシギ
TOUR2010 "LAGRANGIAN POINT"
musium
DOUBLES BEST
TOUR 2012 "musium"

POP MAN'S WORLD~All Time Best 2003-2013~
スキマスイッチ TOUR 2012-2013"DOUBLES ALL JAPAN"
スキマスイッチ 10th Anniversary Arena Tour 2013“POPMAN'S WORLD"
スキマスイッチ 10th Anniversary“Symphonic Sound of SukimaSwitch"
スキマスイッチ
TOUR 2015 "SUKIMASWITCH" SPECIAL
POPMAN'S ANOTHER WORLD
スキマスイッチTOUR2016"POPMAN'S CARNIVAL"
re:Action
新空間アルゴリズム
スキマノハナタバ~Love Song Selection~

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2019年2月 7日 (木)

今週1位の男性アイドルは韓国から

今週のHot Albums

http://www.billboard-japan.com/chart_insight/

先週はアメリカの男性アイドルグループが1位を獲得しましたが、今週はおなじみ韓国の男性アイドルグループが1位を獲得しました。

今週1位は韓国の男性アイドルグループGOT7「I WON'T LET YOU GO」が獲得。ただ、全4曲入り+タイトルチューンのインストと実質的にはシングルのようなミニアルバム。CD販売数1位、ダウンロード数61位で総合順位では1位を獲得しています。オリコンでも週刊アルバムランキングで初動4万5千枚で1位を獲得。前作「TURN UP」の3万3千枚(3位)よりアップしています。

2位は先週と変わらず星野源「POP VIRUS」が獲得。CD販売数は10位までダウンしてしまいましたが、ダウンロード数及びPCによるCD読取数は1位をキープしており、まだまだ高い人気のほどがうかがえます。どこまでロングヒットを続けるのか、要注目です。

3位初登場はPoppin'Party「Poppin'on!」。漫画「BanG Dream!」から派生したプロジェクトにより登場したアニメキャラによるグループのデビューアルバム。CD販売数2位、ダウンロード数9位、PCによるCD読取数で15位を記録。総合では3位を獲得しています。オリコンでは初動1万7千枚で4位初登場。

続いて4位以下の初登場盤です。5位に中島美嘉「雪の華15周年記念ベスト盤 BIBLE」が初登場。タイトル通り、2003年に大ヒットを記録した中島美嘉の「雪の華」からリリース15年を記念してリリースされた3枚組のベストアルバム。2014年に2枚同時でリリースされた「TEARS」「DEARS」以来のベスト盤となります。CD販売数4位、ダウンロード数6位、PCによるCD読取数66位で総合順位はこの位置に。オリコンでは初動売上1万6千枚で6位初登場。直近のオリジナルアルバム「TOUGH」の9千枚(8位)からはアップ。ただベスト盤としての前作「TEARS」の3万4千枚(4位)、「DEARS」の3万枚(5位)からは大きくダウンしています。

6位にはfine「あんさんぶるスターズ! アルバムシリーズ fine」がランクイン。女性向けアイドル育成ゲームのアルバムシリーズ第9弾。CD販売数は3位だったものの、ダウンロード数及びPCによるCD読取数27位で総合順位はこの位置に。オリコンでは初動売上1万6千枚で5位にランクイン。同シリーズの第8弾、Valkyrie「あんさんぶるスターズ! アルバムシリーズ Valkyrie」の1万8千枚(5位)より若干のダウンとなりました。

7位にはモデルや俳優として活躍しているDEAN FUJIOKA「History In The Making」がランクインしてきました。フルアルバムでは2作目となるアルバム。CD販売数は5位でしたが、ダウンロード数22位、PCによるCD読取数は72位と奮わず、総合ではこの位置に。オリコンでは初動売上1万2千枚で8位初登場。前作「Cycle」の2千枚(45位)から大幅アップし、アルバムでは初のベスト10ヒットとなっています。

今週の初登場組は以上。ロングヒット組ではまずQUEEN「ボヘミアン・ラプソディ(オリジナル・サウンドトラック)」。残念ながら今週は3位から4位にダウン。CD販売数も2位から7位に大きくダウンしてしまいました。ただダウンロード数は3位から2位にアップしており、まだまだロングヒットは続きそう。一方「クイーン・ジュエルズ」は残念ながら今週12位にダウン。ベスト10ヒットはとりあえずは11週で終わりました。

一方、米津玄師「BOOTLEG」は4位から8位にダウン。CD販売数は10位から14位にダウン。ただ、ダウンロード数は5位から4位にアップ、PCによるCD読取数は2位をキープしており、まだまだベスト10ヒットは続きそうです。

今週のHot Albumsは以上。チャート評はまた来週の水曜日に!

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«ついに米津玄師は1位からダウン