2020年10月25日 (日)

実はポップ??

Title:ULTRA MONO
Musician:IDLES

イギリスはブリストル出身のポストロックバンドIDLESによる3枚目のアルバム。まずはこのジャケット写真がかなりシュールで見ているだけで笑えてくるのですが・・・(笑)。前作「Joy as an Act of Resistance」が大きな話題を呼び、なんと本作は全英チャートで1位を獲得するなど、名実ともに大ブレイクを記録。今や、大注目のロックバンドの一組となっています。

本作も前作と同様、疾走感あるリズムをバックとした分厚くへヴィーなサウンドがメイン。圧倒的な音圧で、とにかく「ロックを聴いた」という満足感をまずは覚える作品になっています。まさにアルバムの冒頭を飾る「War」などはその典型例とも言える作風。非常に重いバンドサウンドとシャウト気味なボーカルがまずはリスナーの耳に襲いかかってきます。

基本的にはアルバム全体を通じてサウンドは同じようなスタンス。荒々しいサウンドがインディーっぽさを感じる「Grounds」に、疾走感あるヘヴィーなバンドサウンドが魅力的な「Grounds」「Mr.Motivator」と楽曲は続いていきます。

「Kill Them With Kindness」では静かなピアノの音色からスタートし、少々驚かされますが、続いて力強いドラムのリズムとへヴィーなギター、さらにはシャウトという彼ららしいスタイルにシフト。アップテンポで疾走感ある「Ne Touche Pas Moi」はパンクロック的な要素も強い印象。ボーカルは相変わらずシャウト気味ながらも、どこかメロディアスさを感じさせるのが不思議なところです。

後半に至るまで基本的な楽曲構成に大きな変化はなく、よりメタリックさを感じる「Reigns」に、本作の中では珍しく、あまりシャウトが登場せずダウナーに聴かせる「A Hymn」、そしてラストは力強いバンドサウンドにボーカルのシャウトが印象的な、実にIDLESらしいと言える「Danke」で締めくくり。終始、分厚いバンドサウンドで力強く聴かせる構成のアルバムになっていました。

全12曲42分というアルバムの長さもちょうどよく一気に聴き切れてしまうアルバム。なんといっても最初にも書いたのですが、非常にヘヴィーで分厚いバンドサウンドと疾走感あるリズムが心地よく、いい意味で「ロックを聴いた」という満足感に浸れる作品だったと思います。一方で、ボーカルは終始シャウト気味。ただ、それにも関わらず、意外とそのバックにはしっかりとしたメロディーラインが流れており、「ポップ」と感じることが出来るあたりも大きな特徴と言えるかもしれません。おそらく、似たようなタイプの楽曲が並んでいながらも、最後まで飽きることがなく聴くことが出来るというのは、分厚いバンドサウンドが心地よい、といった面もあるのですが、それ以上にポップなメロディーラインがしっかりと楽曲の根底に流れているというのが大きな要素のようにも感じました。

前作同様、非常に楽しめた傑作アルバム。本作もまた、年間ベストクラスの傑作だったと思います。ロックが好きならば、まずは聴いておきたい傑作と言えるでしょう。しかし、こういういかにも「ロック然」としたアルバムがチャート1位とは・・・HIP HOP勢の前に失速気味と思われたロックですが、実はこういうバンドが売れるあたり、やはりロックを求めるリスナー層が多いのでは?最近、ポストロックバンドで勢いのあるバンドが少なくありませんが、その傾向はまだまだ続きそうです。

評価:★★★★★

IDLES 過去の作品
Joy as an Act of Resistance

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2020年10月24日 (土)

バンドとしての安定感も覚える新作

Title:You need the Tank-top
Musician:ヤバイTシャツ屋さん

相変わらず人気上昇中のロックバンド、ヤバTことヤバイTシャツ屋さんの、約2年10ヶ月ぶりとなるニューアルバム。この間、サンリオピューロランドでのワンマンライブを実施したり、コロナの影響で中止になってしまったのですが、志摩スペイン村でのライブが計画されたりと、相変わらず、ユーモラスかつ奇抜なアイディアでの活動が続いています。さらに本作では見事、自身初となるチャート1位を記録。その人気っぷりを見せつける結果となりました。

ヤバTは、もともとギターボーカルのこやまたくやがマキシマム ザ ホルモンを好きになったことからギターを独学ではじめたところからスタートしているのですが、そのこともありデス声も入れたハードコア風なサウンドながらも、ハードコアな部分以外は意外とポップなメロディーラインという、ホルモンの系統を引き継いだような音楽性が大きな特徴でした。ただ、前作「Tank-top Festival in JAPAN」ではそんなハードコア路線がちょっと後ろに下がり、パンクやギターロック路線がより前面に出てきた作風になっていました。

今回のアルバムに関してもハードコア色は後ろに下がり、パンクロック、ギターロック路線が目立つような構成になっています。「泡Our Music」のAメロの部分や「はやく返してDVD」のデス声のようなハードコア路線もしっかり残っているものの、全体的にはパンクロック路線がメイン。「NO MONEY DANCE」など、ダンサナブルなメロディーラインは、マキシマム ザ ホルモンの影響を強く感じるものの、サビの部分でハードコア路線にシフトすることなく、最後までリズミカルなギターロック路線に終始しています。

楽曲的にはどちらかというと10-FEETからの影響を強く感じるメロディアスパンクチューンの「sweet memories」やトランスのサウンドを入れた「日本の首都、そこは東京」など、バリエーションはさらに広がった感じ。基本的にはシンプルで疾走感あるギターロック路線がメインなのですが、ポップなメロとこの楽曲のバリエーション、さらには40分弱というアルバムの長さもあって、最後まで一気に聴いてしまうような構成になっていました。

歌詞も以前のような内輪受けや学生ノリのような作品が消えて、いい意味で広い層に支持されるように練られてきた感もあります。「珪藻土マットが僕に教えてくれたこと」やメンバーのもりもりもとをいじった「げんきもりもり!モーリーファンタジー」のような、正直、どーでもいいようなネタでユーモラスに聴かせる曲は相変わらずですが、これはこれで彼ららしいユーモアセンスが楽しい感じ。「NO MONEY DANCE」のような歌詞は、ちょっと今の若い世代の哀しい現実を垣間見れる感じもしました。

前作の路線を維持しつつ、いい意味でバンドとしての安定感も感じられる作品になっていたと思います。バンドとして、今後、この路線を維持していくのか、新たな一歩を踏み出すのか、そろそろちょっと分岐点のような感じもするのですが、ファンにとっては間違いなく、安心して楽しめる傑作アルバムだったと思います。今後も彼らの人気はまだ続きそうです。

評価:★★★★★

ヤバイTシャツ屋さん 過去の作品
We love Tank-top
Galaxy of the Tank-top
Tank-top Festival in JAPAN


ほかに聴いたアルバム

夏のせいep/RADWIMPS

全6曲入りのEP盤となったRADWIMPSの新作。伸びやかな歌声で愛を歌う、タイトルチューンである「夏のせい」をはじめとして、スケール感のあるミディアムチューンがメイン。コロナ禍の中で苦しむ人への応援歌として作成された「Light The Light」など、非常に特殊な状況となってしまった、この2020年だからこそリリースされたEP盤といった感のある作品に。基本的にはゆっくりと歌を聴かせるアルバムになっており、サウンド的には目新しさはなかったもののRADWIMPSらしいアルバムには仕上がっていました。

評価:★★★★

RADWIMPS 過去の作品
アルトコロニーの定理
絶対絶命
×と○と罰と
ME SO SHE LOOSE(味噌汁's)
君の名は。
人間開花
Human Bloom Tour 2017
ANTI ANTI GENERATION
天気の子
天気の子 complete version

Contrast/STUTS

前作「Eutopia」がMusic Magazine誌の「日本のラップ/HIP HOP」部門で年間1位を獲得するなど、高い評価を受けたトラックメイカーによるミニアルバム。ラップ・・・というよりも基本的にはトラックメイカーとしての活動がメインの彼。本作も前作同様、ラップの作品も収録されていますが、基本的にはメロウなトラックを聴かせるような作品が並ぶアルバムに。メロウで温度感の低い、比較的静かなトラックに惹かれるような作品が並びます。様々な音楽的な要素を取り込んだ前作と比べると、本作は比較的シンプルな作風になっているのですが、しっかりと聴かせるアルバムになっていました。

評価:★★★★★

STUTS 過去の作品
Eutopia

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2020年10月23日 (金)

知る人ぞ知る的な良質のバンドが並ぶ

LIVE MAGIC! 2020 ONLINE

会場 オンライン 日時 2020年10月18日(日)18:00~

コロナの中で、完全に開催が途絶えていたライブですが、ようやく少しずつ、有観客でのライブ開催が戻りつつあります。とはいえ、開催はまだまだ限定的。配信での開催がまだまだ続いています。ただ一方、ライブ配信での開催がゆえに、いままで行きたくても場所や日程の都合上、なかなかいけなかったライブイベントに、オンラインという形で参加できるようになるケースも少なくなく、先月のくるりの京都音博もそうですが、今回紹介するライブイベントもそう。ラジオDJや音楽評論家として活躍するピーター・バラカンが主催する音楽イベント。毎回、彼がセレクトする主にワールドミュージック系の、知る人ぞ知る、しかし非常にクオリティーの高いミュージシャンが参加しているイベントで、以前から参加したいと思いつつ、休日に東京での開催ということでなかなか参加できずにいました。しかし今年はコロナ禍の影響でオンラインでの開催に。2日間開催だったのですが、そのうち日曜日のイベントは時間的な余裕が出来、今回、オンラインという形ではじめてこのイベントに「参加」しました。

ライブは18時ちょうどからスタート。最初はピーター・バラカンがスタジオのようなところから登場し、簡単な挨拶からスタート。まずは過去のアーカイブの放送からスタート。最初はDereb The Ambassadorというエチオピアン・ジャズのグループから登場します。2018年のライブの映像で、軽快なリズムとサックスの音色が心地よい、アフロビート的なリズムにジャズの要素をちょっと加えたような楽曲が魅力的。いわばアフリカ音楽の要素を醸し出しつつも、一方ではあか抜けたようなサウンドを奏でており、このバランスがとても絶妙に楽しめる、そんなバンドでした。

この日はライブ映像の合間にピーター・バラカンのスタジオからの司会とバンドの紹介・解説が流れる構成。この途中のピーター・バラカンの司会の部分はライブ配信という形になっていました。また、ライブ映像の途中には、LIVE MAGIC!に毎年、ブースを出展する飲食店の取材映像なども入り、そういう面でもライブイベントらしさを出した構成になっていました。

続いてはOmar Sosa&Seckou Keitaという、キューバ出身の人気ピアニスト、オマール・ソーサと、セネガル人でロンドン在住のコラ演奏家、セク・ケイタによるユニット。2017年のイベントでの映像となるのですが、この日はさらにパーカッショニストが参加し、3人でのステージとなっていました。アフリカ系の音楽、かと思いきや、流れる水のような爽快感を覚えるサウンドがとても心地よい、非常に清涼感あふれるサウンドが特徴的。コラの音色に感じる、どこか壮大なアフリカ的な雰囲気が垣間見れる点も非常に魅力的で、独特の世界観をつくりあげていたグループでした。

3組目はFlor De Toloacheという女性5人組バンド。アコースティックギターにバイオリン、トランペット、トロンボーンという組み合わせの、アメリカはニューヨーク出身のラテングループ。こちらは2019年のライブ演奏となります。アコースティックなサウンドで、ラテン風のメランコリックな泣きメロを聴かせてくれるのが特徴的。あと、全員、胸元を大きくあけた服を着て、かなりセクシーな雰囲気だったのも印象的でした(笑)。

続いては中村まりwith高田漣による2018年のライブ演奏。高田漣はここでもアルバムを取り上げたことがありますし、よく知っているミュージシャンなのですが、中村まりは今回はじめて聴きます。アコギの弾き語りなのですが、中村まりは非常に伸びやかな表現力豊かな歌声が魅力的なボーカリストで、一気に気になる存在となりました。全2曲なのですが、うち2曲は高田漣の父親、高田渡の「コーヒーブルース」だったのですが、これも彼女の色にすっかり染めた、素晴らしいカバーとなっていました。

5組目はNoam Pikelny&Stuart Duncan。フィドルとバンジョーという組み合わせのユニットで、こちらも2018年のライブ演奏。アメリカンルーツミュージックをフィドルとバンジョーの軽快な音色で演奏したグループで、アコースティックな楽器2本のみの演奏ながらもしっかりとステージを沸かせたスケール感も感じる演奏を聴かせてくれました。

で、ここまでで約1時間が経過。19時からはピーター・バラカンがMCをつとめるInter FMとの同時放送という形になりました。

そしてここではじめて生演奏。スタジオに毎回、LIVE MAGIC!に参加しているというギタリスト濱口祐自が登場し、スタジオでの生演奏を披露してくれました。ライブがはじまってからMCでは関西弁でとにかくしゃべりまくる、いかにも関西人的なキャラなのですが(笑)、演奏がはじまると一転、ギターで魅力的な演奏を聴かせてくれます。最初はギターバンジョーでの軽快な演奏からスタートし、その後はブルージーな曲だったり、最後には自分のオリジナル「楽しい迷路」というシンプルでちょっとブルージーなギターインストを聴かせてくれたりと、全4曲のライブ演奏ながらも、比較的シンプルながらも表現力のあるギターサウンドをしっかりと聴かせてくれました。彼についてもはじめてその名前と演奏を聴いたのですが、これは一度、ライブでも見てみたいです。

その後はJack Broadbentというイギリスのシンガーソングライターによる2016年のライブ映像。1曲だけなのですが、Little Feetの「Willin'」を演奏して、しんみりとした泣きメロを聴かせてくれました。

そしてここで、この日のために収録された映像に。東京は羽村の工場の中で収録された映像なのですが、まずは元ちとせの登場。「朝花節」を披露してくれました。元ちとせのステージは久しぶりに見たのですが、以前と比べると、ボーカリストとして芯がより強くなり、力強さが増したような印象を受けるような演奏に。その歌唱力に惹きつけられるステージでした。

さらに個人的には一番のお目当てだった民謡クルセイダーズに。「虎女さま」を演奏してくれたのですが、サックスやパーカッションを入れた軽快で楽しいステージで、音源で聴く以上に開放感あふれるパフォーマンスになっていました。これは是非ともライブを見てみたいなぁ。そして最後は元ちとせと民謡クルセイダーズのコラボで「豊年節」へ。裏打ちのリズムで力強く、伸びやかな元ちとせのボーカルも強く印象に残ります。民謡クルセイダーズによる演奏もグルーヴ感あふれ、民謡をあらたに解釈したサウンドは見事。素晴らしいコラボとなっていました。

そしてQuarter To Africaというイスラエルの音楽グループから、テナーサックス奏者のヤキールによる、この日のためのメッセージビデオとサックスの短い演奏が届けられます。さらには、このQuarter To Africaによる2017年の演奏に。なんと日本の「炭坑節」をギター、トランペット、サックスなどでカバーした演奏となっており、民謡クルセイダーズにも通じるにような、ジャズやラテン的な要素も取り入れた演奏に。耳なじみある曲なのですが、一風変わった解釈での演奏が非常に魅力的でした。

で、ここでInter FMとの同時放送は終了。この後はライブ配信のみでイベントは続きます。

ここで再び、この日のイベントのみでの映像で、ポーランドの伝統音楽、マズルカを奏でるJanusz Prusinowski Kompaniaが登場します。彼らについては当サイトでもアルバムを取り上げたことのあるグループなのですが、1曲目はフィドルとチェロ(?)、フルートとタンバリンのような楽器を持っての演奏。マズルカの特徴としては3拍子の踊りがベースとなっているそうなのですが、明るく軽快なリズムとサウンドが楽しめる曲になっていました。

一方続く2曲目ではうってかわってトランペットとクラリネットのような縦笛、アコーディオンにチンドン屋のチンドン太鼓のような楽器での演奏となりました。こちらも明るく軽快でワクワクしてくるような演奏に。アルバムを聴いたときにも感じたのですが、このグループもライブで聴いたら楽しいだろうなぁ。いつか、ライブを見てみたいです。

そして最後はSouliveというアメリカのジャズファンクバンドによる2017年のライブ映像で「Tuesday Night Squal」という曲を。ギターやシンセの音色でフュージョン風でありつつもファンキーなリズムとグルーヴィーなサウンドが心地よいギターインストのナンバーになっていました。

そんな訳で、終了したのは20時半頃。みっちり2時間半に及ぶボリューミーな配信ライブでした。今回の「LIVE MAGIC!」。正直、期待していた生演奏はほとんどなく、事前に撮った映像または過去のライブ映像がメインで、その間にピーター・バラカンの紹介・解説でつなぐというスタイル。どちらかというと、ピーター・バラカンによる音楽番組を見ているような、そんな感じの配信ライブになっていました。

とはいえ、さすがは音楽に精通している彼のセレクトだけあって、参加しているミュージシャンはいずれも個性的で非常に魅力的。一般的によく知られているようなミュージシャンは少ないのですが、ただ一度ライブ映像を見ただけで、次は是非、生で見たくなるような、そんな素晴らしいライブ映像の連続で、非常に満足しました。なんといっても、これを「タダ」で見れるというのは非常にお得感もあり、とても楽しめた2時間半となりました。

以前から一度は参加してみたかったイベントライブなのですが、是非、やはり一度来年以降、参加したいなぁ。来年は、以前のように有観客のライブで開催されることを切に願っているのですが・・・。とりあえずは、今回のミュージシャンたちの音源を聴いてみたい!とても充実した内容のイベントでした。

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2020年10月22日 (木)

「鬼滅」効果

今週のHot Albums

http://www.billboard-japan.com/chart_insight/

Hot100と同時1位です。

今週1位を獲得したのは女性シンガーLiSA「LEO-NiNE」。CD販売数及びダウンロード数1位、PCによるCD読取数3位。ご存じ社会現象ともなっているアニメ「鬼滅の刃」の主題歌「紅蓮華」が大ヒット中のアニソンシンガーですが、同曲も収録したアルバムが初登場で1位を獲得しました。昨日も紹介しましたが、「鬼滅の刃」の映画版の主題歌「炎」がHot100で1位を獲得しており、Hot100との同時1位獲得となります。オリコン週間アルバムランキングでも初動売上6万6千枚で1位初登場。直近作が2枚同時リリースのベスト盤「LiSA BEST-Way-」「LiSA BEST-Day-」で、それぞれの初動売上4万2千枚(1位)、4万1千枚(2位)からアップ。オリジナルアルバムとしての前作「LiTTLE DEViL PARADE」の2万8千枚(4位)からもアップしています。

2位は米津玄師「STRAY SHEEP」が先週の4位からランクアップし、2週ぶりにベスト3返り咲き。11週連続のベスト10ヒットを記録しています。CD販売数は6位でしたが、ダウンロード数は2位、PCによるCD読取数は1位となっており、まだまだロングヒットは続きそう。

3位には、先週、先行配信により10位にランクインしていた和楽器バンド「TOKYO SINGING」が、CDリリースによりCDの売上が加わったことによりランクアップしベスト3入り。CD販売数は2位。ただし、ダウンロード数は先週の1位から5位にダウン。PCによるCD読取数も16位に留まり、総合順位は3位に。オリコンは初動売上2万枚で5位初登場。前作はEP盤の「REACT」で、同作の初動売上1万6千枚(5位)からはアップ。オリジナルフルアルバムとしては前作の「オトノエ」の初動3万1千枚(2位)からはダウンしています。

続いて4位以下の初登場盤です。まず4位に韓国の女性アイドルグループBLACKPINK「THE ALBUM」が4位にランクイン。CD販売数は3位でしたが、ダウンロード数10位、PCによるCD読取数29位に留まり、総合順位はこの位置に。オリコンでは初動売上2万2千枚で4位初登場。前作「Kill This Love」の1万1千枚(5位)からアップしています。

7位には氷川きよし「生々流転」がランクイン。これで「せいせいるてん」と読むそうです。CD販売数は5位でしたが、配信は行っていないため対象外、PCによるCD読取数91位で総合順位は7位となっています。オリコンでは初動売上1万4千枚で7位初登場。前作「パピヨン-ボヘミアン・ラプソディ-」の1万6千枚(2位)から若干のダウンとなっています。

最後9位にはDREAMS COME TRUE「DOSCO prime」がランクイン。10月17日にオンラインで開催された「DREAMS COME TRUE WINTER FANTASIA 2020 ‒ DOSCO prime ニコ生 PARTY !!! ‒」の一環としてリリースされた、全編ドリカム自らの手によってディスコ仕様にアレンジされた楽曲12曲を収録された「ベスト盤」。CD販売数7位でしたが、配信なしのためダウンロード数圏外、PCによるCD読取数22位で総合順位は9位となりました。オリコンでは初動売上1万2千枚で8位初登場。前作「THE DREAM QUEST」の6万9千枚(1位)からはさすがに大きくダウンしています。

今週のHot Albumsは以上。チャート評はまた来週の水曜日に!

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2020年10月21日 (水)

史上初のダブル首位

今週のHot100

http://www.billboard-japan.com/chart_insight/

今週1位を獲得したのは、大ヒット中の映画の主題歌ナンバー。

今週1位を獲得したのはLiSA「炎」でした。社会現象レベルで大ヒットを記録している「劇場版『鬼滅の刃』無限列車編」主題歌。大ヒット中の「紅蓮華」と同じく、「鬼滅の刃」関連の楽曲で、CD販売数、ダウンロード数、ラジオオンエア数及びTwitterつぶやき数で1位獲得。ストリーミング数及びPCによるCD読取数で2位、You Tube再生回数で3位と軒並み上位にランクインし、総合順位も1位獲得となりました。オリコン週間アルバムランキングでは初動売上6万7千枚で1位を獲得。前作「unlasting」の2万6千枚(3位)からアップしています。

また今週「紅蓮華」も先週の8位から4位にランクアップ。通算41週目のベスト10ヒットを記録。特にCD販売数が28位から7位に大きくアップ。ストリーミング数も15位から6位にアップするなど、映画公開の効果が大きく出た結果となっています。ちなみにオリコンでも8位にランクアップし、ベスト10返り咲きを記録しています。

ちなみに今週アルバムチャートでも大ヒット中の「紅蓮華」が収録された彼女のニューアルバム「LEO-NiNE」が1位にランクイン。Hot100及びHot Albumsいずれも1位という結果となっています。このHot100とHot Albumsで同時に1位獲得というのは史上初ということ。LiSAの…という以上に「鬼滅の刃」人気のすさまじさを感じさせます。もっとも、この「LEO-NiNE」には「炎」が収録されておらず、ファンとしては2枚同時に買わざるを得ない戦略になっています。「鬼滅の刃」のファン層的には小中学生あたりも多いでしょうから、こういう販売戦略には若干、疑問を感じる部分もあるのですが…。

2位にはBTS「Dynatime」が先週の3位からランクアップ。ストリーミング数1位、You Tube再生回数2位は先週から変わらず。ダウンロード数も7位から4位にアップ。連続9週目のベスト10ヒット。ベスト3入りも6週連続となっています。

逆に先週2位だったYOASOBI「夜に駆ける」は今週3位にダウン。You Tube再生回数は1位をキープしましたが、先週共に2位だったストリーミング数及びダウンロード数はそれぞれ3位、6位にダウンしています。ただ、これでベスト10入りは26週連続、ベスト3入りも7週連続となっています。

続いて4位以下の初登場曲ですが、今週初登場は1曲のみ。それが7位に初登場したback number「エメラルド」。TBS系ドラマ「危険なビーナス」主題歌。配信限定のシングルとなっており、ダウンロード数2位、ストリーミング数27位、ラジオオンエア数3位、Twitterつぶやき数38位で総合順位が6位にランクイン。ダンサナブルなリズムに載るポップなメロが印象的なのですが、どこかメランコリックなところがback numberらしさと、いかにもドラマ主題歌になりそうな曲調だな、と感じさせるような曲になっています。

さて、今週もロングヒット曲がズラリと並んでいます。まずNiziU「Make you happy」は先週の4位からワンランクダウンの5位。16週連続のベスト10ヒット。ストリーミング数及びYou Tube再生回数がいずれも3位から4位にダウン。ダウンロード数も4位から7位と全体的に下落傾向になりました。

瑛人「香水」は5位から8位に大幅ダウン。ストリーミング数が6位から8位、You Tube再生回数も5位から6位にダウン。ただしカラオケ歌唱回数は14週連続の1位記録を続けています。ベスト10ヒットはこれで25週連続。

9位にはあいみょん「裸の心」が先週の6位からランクダウン。19週連続、通算20週目のベスト10ヒット。ただストリーミング数は4位から5位に今週もダウン。全体的にはそろそろ後のないチャートとなってきています。

さらに米津玄師「感電」は9位から10位にダウン。これで15週連続のベスト10ヒットとなりましたが、こちらも後がなくなってきました。ストリーミング数も5位から7位、You Tube再生回数も4位から7位にダウンしています。

また先週ベスト10に返り咲いたKing Gnu「白日」は今週11位にランクダウン。残念ながらベスト10返り咲きは1週で終わりました。

今週のHot100は以上。明日はHot Albums!

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2020年10月20日 (火)

やはりTHE HIVESは最高!!

Title:Live At Third Man Records
Musician:THE HIVES

THE HIVESというバンド、ちょっと懐かしい名前なのですが覚えておられますでしょうか。スウェーデン出身のガレージロックバンドで、2002年にリリースされた、それまでの彼らの楽曲をまとめたコンピレーションアルバム「Your New Favorite Band」が世界中で大きな話題となりました。このアルバムがリリースされた2000年初頭は、世の中でいわば「ガレージロックリバイバル」と呼ばれたムーブメントが起きている最中。彼らはまさにそのリバイバルの波に乗って注目を集めたバンド、ということになります。

「ガレージロックリバイバル」というと、今、よく話題に上るのがThe StrokesやArctic Monkeys、さらにはThe White Stripesといったバンドでしょうか。THE HIVESも一時期、かなり人気を集めたバンドだったのですが、今となっては半分くらい忘れかけられているバンドといった感じもします。「Your New Favorite Band」リリース後のアルバム「Tyrannosaurus Hives」はイギリスのナショナルチャートでベスト10ヒットを記録したほか、世界的にもヒットを飛ばしたもののその後は失速。2013年にはベーシストのDr. Matt Destructionが健康上の理由から脱退。新メンバーThe Johan and Onlyが加入するものの、その活動は停滞気味となりました。

しかし、2019年には久々のシングルをリリースするなど、その活動が徐々に再開。そしてこのたび、彼らのキャリアにおいて初となるライブアルバムがリリースされました。本作は、昨年5月16日、アメリカはナッシュビルのBlue Roomというライブハウスで録音された音源を収録したもの。そのライブ音源を、同じガレージロックリバイバルの盟友(?)だった元The White Stripesのジャック・ホワイトが主宰するインディーレーベルThird Man Recordsからリリースされました。

個人的に、このガレージロックリバイバルで話題になったバンドの中で、一番はまったバンドが彼ら。特に「Your New Favorite Band」は2002年の私的洋楽ベストアルバムの2位とするなど、繰り返し聴いた大のお気に入りのアルバム。一時期はかなりはまりまくっていました。それだけに今回のライブアルバムも、最初は懐かしい・・・という感覚で聴き始めたのですが、聴いているうちに、また再びTHE HIVESにすっかりはまってしまいました。

あらためて感じるのですがTHE HIVESの魅力は徹底したキャッチー。メロディーラインのポピュラリティーも、同時期のガレージロックバンドの中ではずば抜けていましたし、ギターリフのフレーズも非常にポップで耳に残るキラーフレーズを連発していきます。今回のライブ盤でも「Main Offender」「Hate to Say I Told You So」など代表曲が収録されているのですが、一度聴いたら完全に耳に残り、思わず口ずさんでしまう・・・そんな楽曲でした。

また、ガレージロックバンドとしてシンプルでエッジの効いたサウンドを迫力たっぷりに聴かせる点も彼らの大きな魅力なのですが、ライブ音源ということもあり、そんな彼らのバンドとしても冴えまくった演奏を聴かせてくれています。このBlue Roomという会場はわずかキャパ250人という小さいライブハウスのようですが、そんな観客との距離も近い環境だからでしょうか、最近、さほど活動していなかったはずの彼らですが、メンバー全員、非常に息の合った迫力ある演奏を聴くことが出来ます。観客の歓声もしっかりとらえられており、その場の空気感がしっかりとおさまったライブアルバムになっていました。

ちなみに収録曲の中には「I'm Alive」という昨年発表した新曲も収録。かなりへヴィーなギターリフで迫力たっぷりに聴かせるミディアムチューンのナンバー。正直、疾走感のある彼らのかつての代表曲に比べると若干地味なのは否めないのですが、なにげにメロもギターリフも知らず知らずに耳に残る、彼ららしいキャッチーさはしっかりと備えた曲になっています。THE HIVESの魅力の健在さを示す曲だったと思います。

当日は全10曲演奏したみたいですが、今回はうち7曲を収録。7曲でわずか33分という長さなだけに、正直言って、全曲収録してほしかったなぁ・・・とも思うのですが・・・。ただ、THE HIVES最高!!!と叫びたくなる、久しぶりにTHE HIVESの魅力を再認識できたアルバムになっていました。本格的に活動を再開したのなら、次は是非、久しぶりとなるニューアルバムを、と強く期待してしまいライブアルバム。とりあえずはかつてTHE HIVESにはまった方にも久しぶりに思い出して聴いて欲しいアルバムです。

評価:★★★★★

THE HIVES 過去の作品
The Black and White Album
LEX HIVES


ほかに聴いたアルバム

What You Gonna Do When The Grid Goes Down?/Public Enemy

約3年ぶりになるPublic Enemyのニューアルバムは、トランプ大統領を痛烈に批判した「State Of The Union」など、相変わらず強烈な社会派のHIP HOPを、昔からの彼らのスタイルと変わらない強烈なビートにのせて綴るスタイル。良くも悪くも昔からの彼らのスタイルが貫かれている感じで、強烈なインパクトを受けるのは間違いありません。ある意味、ファンなら間違いなく安心して楽しめる1枚です。

評価:★★★★

Public Enemy 過去の作品
Nothing Is Quick In The Desert

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2020年10月19日 (月)

初のセルフタイトル

Title:ROVO
Musician:ROVO

ご存じ勝井祐二、山本精一ら、いずれもそれぞれがソロとしても目覚ましい活躍を続けるミュージシャンたちが結成し、活動を続けるバンド、ROVO。特にその圧巻のライブパフォーマンスには定評があり、フジロックをはじめとする数々のロックフェスへも参加。さらに毎年ゴールデンウイークには「MDT FESTIVAL」と名付けたイベントを開催し、多くの音楽ファンを魅了しています。

そんな彼らもさすがにこの新型コロナの影響で数多くのライブは中止に。「MDT FESTIVAL」も残念ながら中止となってしまいました。しかし、そんなコロナ禍の中で届けられたのは、なんと結成24年目にして初となるセルフタイトルのアルバム。「結成24年目にしてバンドの意思と楽曲と演奏が完全に一体化した最高傑作」と自ら評するような、自信作となっています。

そしてアルバムを聴き進めると、その自信の理由も納得の内容に仕上がっています。確かにこれは、セルフタイトルにふさわしい傑作アルバムに仕上がっていました。その最大の理由としては、いままでのアルバムに比べても圧倒するほどの楽曲のバリエーション。全6曲入りのアルバムに仕上がっているのですが、その6曲の要所要所に彼らの様々なアイディアがつまっており、聴くものを終始惹きつけてやみません。

まず1曲目「SINO RHIZOME」は、まるで心臓のリズムのような静かな音とシンバルに音色からスタート。この緊迫感ある序盤も耳を惹きますが、途中からはベースラインをファンキーに聴かせるグルーヴィーでちょっと黒さを感じるトランスナンバーへと展開していきます。続く「KAMARA」もヴァイオリンの奏でるメランコリックなメロがまずは耳に残ります。終始ダイナミックなバンドサウンドが重なりつつ、リズムと同時にメロディーも聴かせる楽曲に仕上がっています。

さらに驚かされるのは3曲目「ARCA」で、いきなりアコギの音色で静かにスタート。その後はROVOらしいエキゾチックなバイオリンの音色を聴かせつつ、ダイナミックなバンドサウンドが入ってくるのですが、後半につれて、狂乱度合が増していく展開に惹きつけられます。「AXETO」もメランコリックなバイオリンのメロが印象的なのですが、終始響く軽快でリズミカルなパーカッションのリズムが特徴的。バイオリンの音色と合わせて、どこかエキゾチックな異世界感を覚える楽曲が印象に残ります。

後半の「NOVOS」は郷愁感のあるメロの流れるサウンドに、どこかAOR的な雰囲気すら感じられる、ROVOとしての楽曲の振れ幅の広さを印象付けられる楽曲。さらにラストに流れる「SAI」も郷愁感漂いメロディーがとにかく印象的な楽曲となっており、とても心地よい気持ちを味わうことが出来ます。ただ締めくくりは重厚なサウンドでサイケな締めくくりになっているのがROVOらしいところ。全6曲1時間強。様々に変化する音の世界を楽しめるアルバムになっていました。

いままでのROVOの作品は、圧巻的なサウンドで攻めてくるような作品が多く、ライブを意識した作品が多かったように感じます。ただ、今回のアルバムに関しても、ライブを意識している一方で、それ以上にCD音源でリスナーに聴かせるというスタイルを意識しているような作品のようにも感じました。今回のアルバムが、もともとコロナの前から制作されたものか、それともコロナの最中に制作されたものかは不明なのですが、もし制作を開始したのがコロナ後であった場合は、ひょっとしたらライブをあまり意識しなかったからこそ、もっと「音」自体に純粋に向き合った結果なのかもしれません。

これまでもROVOの作品は傑作続きだったのですが、個人的に今回の作品は、そんな中でもさらに段違いの傑作アルバムだったと思います。彼らの言う通り、本作は彼らの最高傑作と言えるアルバムでしょう。非常にバリエーションの多い作風に、いままでの作品では感じられなかったROVOのメンバーの、奥深い実力を感じることが出来ました。年間ベストクラスの傑作アルバムです。

評価:★★★★★

ROVO 過去の作品
NUOU
ROVO Selected 2001-2004
RAVO
PHOENIX RISING
(ROVO×SYSTEM7)
PHOENIX RISING LIVE in KYOTO(ROVO×SYSTEM7)
PHASE
Phoenix Rising LP(ROVO and System7)
LIVE at MDT Festival 2015
XI


ほかに聴いたアルバム

今回は最近リリースされたtofubeatsの2作品をまとめて紹介。

TBEP/tofubeats

まずは全7曲入りの、タイトル通りのEP盤。基本的に配信限定のデジタルアルバムなのですが、一方、フィジカルではアナログ盤をリリース、というリリース形態が今風な感じ。今回はフロア志向の強いアルバムとなっており、テクノやハウス、ディスコなどの要素を多分に取り入れたアルバムになっています。そのためわかりやすいポップな歌モノこそありませんが、ダンスミュージックとはいえ根底にポップなメロディーは確実に流れており、ダンサナブルなビートと合わせて、非常に聴きやすい内容に。まさにtofubeats流のクラブ・ミュージックといった感の強い作品でした。

評価:★★★★★

RUN REMIXES/tofubeats

そしてこちらは2018年にリリースされたアルバム「RUN」の収録曲を、様々なミュージシャンがリミックスしたリミックスアルバム。こちらも配信オンリーのアルバムとなっています。基本的にはエレクトロ路線という点で共通していながらも、分厚いノイズを入れたり、キュートなポップチューンに仕上げたり、ボーカルにエフェクトをかけてくぐもった感じに仕上げたりとリミキサーに様々な作風に仕上げているのがユニーク。各リミキサーの個性を感じられるリミックスアルバムでした。

評価:★★★★

tofubeats 過去の作品
Don't Stop The Music
ディスコの神様
First Album
STAKEHOLDER
POSITIVE
POSITIVE instrumental

POSITIVE REMIXS
FANTASY CLUB
RUN

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2020年10月18日 (日)

美しいメロが際立つ

Title:Shore
Musician:Fleet Foxes

アメリカはシアトル出身のフォークロックバンド、Fleet Foxes。セルフタイトルのデビュー作で高い評価を受けて以降、毎回傑作アルバムをリリースし続けている彼ら。そんな彼らの約3年ぶりとなるニューアルバムは、このコロナ禍の中で、前日にリリースが突然発表されて配信リリースされたデジタルアルバムとなっています。ちなみにCDのリリースも予定されているみたいですが、リリースは来年の2月とか・・・コロナ関係なく、ある意味、今の時代らしいリリース形態となっています。

前作「Crack-Up」などがまさに典型例だったのですが、フォークロックの中に、幻想的なサイケフォークの要素を加えてドリーミーな作風となっているのが彼らの大きな魅力。今回のアルバムに関してもサイケフォーク的な要素を加えつつ、ただアルバム全体としてはフォークの要素が強い、比較的なシンプルなアレンジでメロディーを聴かせる曲が目立つ楽曲が並ぶ作品になっていました。

特にシンプルなアレンジでメロディーを聴かせるフォーキーな作品が並ぶのが前半。イントロ的な1曲目に続いて、事実上の1曲目となっている「Sunblind」は、アコースティックなギターを中心とした爽快なポップチューンになっていますし、続く「Can I Believe You」もバンドサウンドも入り、比較的ドリーミーなアレンジの要素も感じられるのですが、比較的シンプルなギターポップに。軽快なギターサウンドでポップに聴かせる「Jara」へと続き「Featherweight」は、まさにフォークロックの要素が全開。60年代的な要素すら感じられる哀愁感たっぷりに聴かせるメランコリックなポップチューンに仕上げられています。

一方後半に関してはホーンセッションやバンドサウンドが入り、分厚いサウンドで美しく聴かせるポップチューンが多いのが大きな魅力。「Maestranza」などはアコギを中心としたバンドサウンドながらも、伸びやかなボーカルでダイナミックに聴かせる楽曲構成になっていますし、ポップスさではこのアルバムの中で随一だったのが「Young Mama's Game」。メロディアスなギターロックナンバーで、美しいハーモニーで聴かせるメロディーラインが爽快で非常に心地よさを感じさせる楽曲に仕上がっています。

その後も重厚なハーモニーにシンセの音色も美しい「Quiet Air/Gioia」や、分厚いバンドサウンドがらも軽快なポップを聴かせる「Cradling Mother,Cradling Woman」など、美しいサウンドを分厚く聴かせつつ、ポップにまとめあげた楽曲が並びました。

全体的には美しいサウンドを聴かせつつも、主軸はメロディーと歌に置かれたそうな、そんなアルバムになっていたように感じます。そういう意味ではサイケさや幻想的な雰囲気は前作と比べると後退してしまったようにも感じますが、一方で美しいメロディーラインは今回も間違いなく健在。というよりもサウンドがシンプルになった結果、メロディーラインの美しさがより際立ったアルバムになったようにも感じます。前作とはまた異なった観点で、Fleet Foxesの魅力を存分に感じられる傑作アルバムだったと思います。

突然のリリースにビックリしてしまった本作ですが、サプライズかつ配信のみ(当初は)のアルバムといっても、彼らの魅力は全く落ちることはありませんでした。清涼感あふれるポップソングに終始聴き入ってしまう傑作。ポップミュージックが好きならば、まずは押さえておきたい傑作です。

評価:★★★★★

FLEET FOXES 過去の作品
Fleet Foxes+Sun Giant EP
HELPLESSNESS BLUES
Crack-Up
First Collection 2006-2009

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2020年10月17日 (土)

「彼女らしさ」をあらわした作品

Title:Alicia
Musician:Alicia Keys

今年1月に開催されたグラミー賞の表彰式に司会として抜擢されるなど、絶大な人気の元で積極的な活動を続けているミュージシャン、アリシア・キーズ。毎回、素晴らしい歌とその歌声を私たちに届けてくれる彼女ですが、約4年ぶりのニューアルバムとなる本作も、また素晴らしい傑作に仕上がっていました。

もともと本作は、今年3月頃のリリースを予定していた作品なのですが、新型コロナウイルスの影響によりリリースが延期となった作品。約半年ほど延期された9月にようやくのリリースとなりました。本作のアルバムタイトルはいわばセルフタイトル。ジャケットも彼女の顔写真を4方面から写した写真となっており、まさにこのアルバムは彼女そのものであるという力の入れようを感じさせる作品となっています。

ただ、アルバム自体は比較的シンプルなR&Bのポップチューンが並んでいます。前作「HERE」はジャケットからしてアフロヘアを前面に押し出した写真となっており、ブラックミュージックの要素の強い「黒い」アルバムに仕上がっていました。今回のアルバムももちろんソウルやゴスペルなどの影響を感じつつ、楽曲のスタイルとしてはポップミュージックの方向にシフトした感はあります。

とはいうものの、リズミカルなダンスチューンである「Time Machine」にしてもメロウな歌声を聴かせてくれますし、「Wasted Energy」もレゲエ的な要素も感じるトライバルなリズムが魅力的。女性シンガーJill Scottをフューチャーした、タイトルそのもの「Jill Scott」も、Jillの歌声でかわいらしさを表現しつつ、メロウなR&Bチューンに仕上げているなど、全体的にはソウル色も強く感じられる作風に。ポップ色が強すぎてちょっと物足りなさを感じた前々作「Girl On Fire」や、その前の「The Element Of Freedom」に比べると、グッとブラックミュージック寄りにシフトしている内容になっています。

ほかにも男性シンガーソングライターKhalidとのデゥオでメロディアスなポップを聴かせる「So Done」やアコギで哀愁感たっぷりに歌いあげるミディアムチューン「Gramercy Park」も魅力的なのですが、特に魅力的なのは終盤のバラードナンバー。後半はバラードナンバーが続くのですが、普通、同じようなテンポのバラードが続くと退屈にすら感じてしまうのですが、まったくダレることなく、最後まで聴かせることが出来るのは、彼女のソングライターとしての実力ももちろんですし、ボーカリストとしての表現力があるから、ということなのでしょう。

そんな中で特に印象に残るのが終盤に美しく、そして力強く聴かせるピアノバラード「Perfect Way To Die」。黒人差別に対してのプロテスト運動「Black Lives Matter」ムーブメントについてもメッセージを発信し続ける彼女ですが、本作は人種差別により警察から暴力や残虐的行為を受け命を落とした人々へのトリビュート・ソングだそうで、ピアノを中心としたシンプルなアレンジをバックに力強く歌い上げる彼女の歌声が胸をうちます。

以前は、比較的ジャケット写真にしても肌の色をあまり表に出さないようなジャケット写真が多かった彼女ですが、アフロヘアーを前面に押し出した前作「HERE」に続き、今回のジャケットも、彼女のブラウンの肌の色をしっかり前に押し出し、さらには「黒人的」ともいえるドラッドヘアを用いている彼女。まさに、このジャケット写真も、「Black Lives Matter」ムーブメントにメッセージを出し続ける彼女の活動とリンクするものがあります。

またメッセージ性といえばラストに収録されている「Good Job」も印象的。こちらも同じくピアノバラードで彼女の歌声を力強く聴かせるナンバーなのですが、新型コロナウイルスの中で奮闘している医療従事者などに対するメッセージソングとなっています。このアルバムの最後には、まさにこの2020年という年を象徴した曲が並んでいるのが大きな特徴的。最後の曲も非常に私たちの胸に響いてきます。

ジャケット写真といい、最後に並んだメッセージソングといい、まさに彼女のメッセージが強く伝わってくるアルバム。ある意味、R&B、ソウル寄りの曲もあれば、もっとポップ寄り、さらにはともすればカントリー風の曲まで登場するバリエーションも含めて、「彼女らしさ」を表現したアルバムと言えるかもしれません。そういう意味でもセルフタイトルらしいアルバムとも言えるでしょう。そしてそんなメッセージは、歌詞は直接わからなくても、その歌声で私たちにも突き刺さってきます。内容的には比較的シンプルなのですが、シンプルさ故に、より胸に響く傑作アルバムに仕上がっていました。

評価:★★★★★

Alicia Keys 過去の作品
As I Am
The Element Of Freedom
Girl On Fire
HERE

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2020年10月16日 (金)

TRICERATOPSからのソロ作2枚

今回はロックバンドTRICERATOPSのメンバー2人によるソロ2作の紹介です。

Title:ALBUM.
Musician:和田唱

まずTRICEARTOPSのボーカリストであり、バンドのほぼ全ての曲の作詞作曲を担ってきた和田唱のソロ2枚目となるアルバム。まずはジャケット写真が非常に印象的。前作「地球 東京 僕の部屋」も彼が子どもの頃の写真をジャケット写真に使用しましたが、今回も彼が子どもの頃の写真。一緒に写っているのは言わずと知れた彼の母親で料理研究家の平野レミですね。で、写真を撮っているのは、今は亡き、彼の父親でイラストレーターの和田誠ということ。まさに彼の家族写真になっており、ちょっとほっこりとした気分になります。

さて、TRICERATOPSというと、シンプルなスリーピースのバンドサウンドを奏でるロックバンドなのですが、一方では和田唱の書くポップなメロディーラインも大きな魅力。また、和田唱はロック志向が強い一方で、大のポップス愛好家としても知られています。そんな彼のソロアルバムは、前作でもそうだったのですが、ロック志向の強いTRICERATOPSに対して、和田唱のポップス愛好家としての側面がより強く出ているアルバムになっていました。

まずは1曲目「ココロ」。アコギでしんみり聴かせる3拍子のポップスなのですが、暖かいメロディーラインに、彼のメロディメイカーとしての才がしっかりと反映された楽曲になっています。TRICERATOPSの頃に、個人的に大好きなKANとの交流があったりしたのですが、この曲、歌詞も含めて、そのKANからの影響を感じるような・・・?

その後もちょっとメロウでR&Bからの影響も感じる「世界が変わったアフタヌーン」や、打ち込みを入れたディスコチューン「薔薇のつぼみ」、ボッサ調の「Once Upon A Time」、明るい前向きな歌詞も印象的なラテン調のリズムが印象的な「Heiki Heiki」など、様々なバリエーションの曲が並んでおり、まさに和田唱のポップス好きな側面が強く反映された構成になっています。

前作「地球 東京 僕の部屋」と同様、おそらくトライセラではできないような曲のならぶ、実にソロらしいアルバムになっていまう。また、非常にフックを利かせたサビのメロディーが印象的なトライセラの曲と比べると、全体的にキャッチーなサビはあまり出会えず、若干地味といった感じになっているのもプライベイト色の強いソロ作ならでは、といった言い方も出来るかもしれません。ただ、前作以上にメロディーラインはよく出来た聴かせるポップなものが多く、和田唱のメロディーメイカーとしての才能はしっかりと伝わってきます。

そんな中でも「アイ」は疾走感あるアップテンポなポップチューンになっており、サビもしっかりキャッチーに仕上がっていて、サウンド的には打ち込みなのですが、そのままTRICERATOPSの曲として起用されても不思議ではない楽曲になっています。トライセラが好きな方ならおもわずにやけてしまうような楽曲ではないでしょうか。

和田唱らしさを実に感じるソロアルバムとなった本作。またメロディーメイカーとしての健在ぶりも感じられました。このポップなメロ、次はトライセラで、是非!ただ、こういうバラエティー豊富な曲をつくってくるのなら、ソロもバンドと同時並行で続けてもおもしろいのかも。

評価:★★★★★

和田唱 過去の作品
地球 東京 僕の部屋

Title:CHARGE
Musician:吉田佳史

で、こちらはTRICERATOPSのドラマ、吉田佳史のソロアルバム。全面的にシンセを取り入れたスペーシーな雰囲気のアルバムに。全曲インストの全7曲入り。ドラマーのソロアルバムなのですが、ドラムのリズムは比較的軽く、ドラムが前に出てくるというよりは、シンセ+ギターがメインのインストアルバムといった印象の作品となっています。

正直言ってしまうと、ドラマーとしてのプレイはしっかりと聴かせてくれる反面、例えばメロディーラインだとか、シンセの使い方はあまり面白味なない印象も・・・。全体的にフュージョンの色合いが強く、TRICERATOPSの音楽性とは一線を画している感じはしますし、「Gunnar」とか聴いていると、もともと彼自身がハードロック志向だったのではないか、といった印象も受けます。

まあ、ドラマーによるソロアルバムということで本来はドラムプレイを主軸として耳を傾けるべきでしょうし、そのように聴くと、それぞれ7曲、しっかりとしたバリエーションあるドラムプレイを聴くことが出来るアルバムであることは間違いないと思うのですが・・・。ただ、彼のやりたいことはしっかりと伝わったアルバムであることは間違いありません。次は是非、トライセラでのプレイを!

評価:★★★

そんな訳で、どちらの作品もソロらしく、それぞれのミュージシャンのやりたいことは伝わってくるアルバムだったと思います。そして、そんな中、TRICERATOPSの活動再開というニュースも!!これは、非常に楽しみ!次は待望のトライセラのニューアルバムということになるのでしょうか?それまで、このソロ作を聴きながら、来るべきトライセラの新作を心待ちにしていたいと思います!


ほかに聴いたアルバム

Barometz/安藤裕子

オリジナルフルアルバムとしては実に約4年2ヶ月ぶりとなる安藤裕子のニューアルバム。フルオリジナルアルバムとしての前作「あなたが寝てる間に」リリース後、一時期、曲が書けないとして、他のミュージシャンからの楽曲提供を受けた曲を集めた「頂き物」をリリースしたり、さらにはメジャーレコード会社を離れたりと、その方向性を模索。インディーズからセルフプロデュースのミニアルバム「ITALAN」をリリース後、メジャーシーンに復帰。待望のニューアルバムのリリースとなりました。

ただ、作風としては以前の安藤裕子とは少々異なる、彼女の新たな歩みを感じさせるアルバムで、わかりやすいメロディーラインが並んだポップスというよりは、エレクトロサウンドをふんだんに入れてファンタジックにまとめあげた作風に。ドリーミーでどこか気だるい雰囲気が特徴的で、いい意味で現実離れした作風がリスナーを別世界に誘う、そんなアルバムになっていました。基本的には前作「ITALAN」で模索した方向性の延長線上といった感じ。まだどこか模索中で安藤裕子としての輪郭がぼやけている部分もあるのですが、彼女の新たな一歩として、これからに期待したいアルバムでした。

評価:★★★★★

安藤裕子 過去の作品
クロニクル
THE BEST '03~'09
JAPANESE POP
大人のまじめなカバーシリーズ
勘違い
グッド・バイ
Acoustic Tempo Magic
あなたが寝てる間に
頂き物
ITALAN

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